JP5355415B2 - 立方晶窒化ホウ素研磨成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、立方窒化ホウ素(CBN)研磨成形体に関する。
窒化ホウ素は、典型的には、3つの結晶形態、即ち立方窒化ホウ素(CBN)、六角窒化ホウ素(hBN)及びウルツ鉱型立方窒化ホウ素(wBN)で存在する。立方窒化ホウ素は、ダイアモンドの構造と類似の構造を有する窒化ホウ素の硬質亜鉛混合物形態である。CBN構造において、原子間に形成する結合は強く、主に四面体の共有結合である。
CBNは、機械加工具等に広い商業的用途を有する。CBNを研磨車及び切断工具等における研磨粒子として使用するか、又は従来の電気メッキ技術を用いて工具本体に接着して、工具インサートを形成することができる。
CBNを、PCBN(多結晶CBN)としても知られるCBN成形体として接着形態で使用することもできる。CBN成形体は、CBN粒子の焼結塊を含む。CBN含有量が成形体の少なくとも70体積%であるときは、多量のCBN対CBNの接触(CBN−to−CBN contact)が存在する。CBN含有量がより小さいとき、例えば、成形体の40から60体積%の範囲内にあるときは、直接的なCBN対CBN接触の程度が限定される。
CBN成形体は、一般には、本来的に不可欠なセラミックであるバインダも含むことになる。成形体のCBN含有量が70体積%未満であるときは、マトリックス相、即ち非CBN相は、典型的には、通常は本来的にセラミックでもある追加的又は二次的な硬質相も含むことになる。好適なセラミック硬質相の例は、(新IUPAC形式による)第4、5又は6族の遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及び炭素窒化物、酸化アルミニウム及びそれらの混合物である。マトリックス相は、CBNを除く組成物のすべての成分を構成する。
CBN成形体は、良好な耐摩耗性を有する傾向があり、熱的に安定しており、高い熱伝導性、良好な耐衝撃性を有し、工作物と滑動接触したときの摩擦係数が小さい。基板(焼結処理時にPCBN層に一体的に接着された基板)を有する又は有さないCBN成形体は、しばしば、使用される特定の切断又は掘削工具の所望の大きさ及び/又は形状に切断され、次いで蝋付け技術を用いて工具本体に取りつけられる。
CBN成形体を工具インサート又は工具の形成において工具本体に機械的に直接固定することができる。しかし、多くの用途では、成形体を基板/支持材料に接着し、支持成形体構造を形成し、次いで支持成形体構造を工具本体に機械的に固定することが好ましい。基板/支持体材料は、典型的には、コバルト、ニッケル、鉄或いはそれらの混合物又は合金などのバインダと接着されるセメント金属炭化物である。金属炭化物粒子は、炭化タングステン、チタン又はタンタル粒子又はそれらの混合物を含むことができる。
多結晶CBN成形体及び支持成形体構造を製造するための既知の方法は、CBN粒子の未焼結塊を、粉末化マトリックス相と一緒に、高温及び高圧(HpHT)条件、即ちCBNが結晶学的又は熱力学的に安定した条件に好適な時間にわたって曝すことを含む。
使用される高温及び高圧力の典型的な条件は、1100℃以上の範囲の温度範囲及び2GPa以上のオーダの圧力である。これらの条件を維持するための時間は、典型的には、約3から120分間である。
CBN含有量が少なくとも70体積%のCBN成形体は、高CBN PCBN材料として知られる。それらは、灰色鋳鉄、白色鋳鉄、粉末金属鋼、工具鋼及び高マンガン鋼の機械加工のための切断工具の製造に広く採用されている。切断速度、給送及び切断深さなどの使用条件に加えて、PCBN工具の性能は、工作物の幾何学構造、特に、当技術分野で「連続切断」として知られる、工具が長時間にわたって工作物に一定に嵌合するかどうか、又は当技術分野で「中断切断」として広く知られる、工具が断続的に工作物に嵌合するかどうかに依存することが広く知られている。
典型的には、高CBN PCBN材料は、灰色鋳鉄、白色鋳鉄、高マンガン鋼及び粉末金属鋼の粗面化及び仕上げ処理に使用される。
この分野における広範囲な研究の後、これらの異なる切断様式、機械加工処理及び異なる種類の工作物材料は、工具の切縁を含むPCBN材料に対して全く異なる要求をもたらすことが発見された。典型的には、これらの用途分野における高性能に対応するPCBN材料は、高い耐摩耗性、高い耐衝撃性、高い熱伝導性、良好なクレータ耐摩耗性及び高い耐熱性、即ちこれらの特性を高温で維持する能力を有するべきである。切断工具先端は、機械加工時に1100℃付近の温度に達し得る。
使用に際して上記挙動を提供する特性の組合せは、70体積%を超える高いCBN含有量、並びにCBNと高強度の結合を形成することになるバインダ相、高い靱性を有するとともに、その特性を高温で保持することになる材料によって唯一達成され得る。
高CBN含有量のPCBN材料に対する従来のPCBN材料設計アプローチは、CBNと反応するとともに、バインダ相として安定したセラミック化合物を形成する金属系出発材料を使用することであった。高圧力及び高温焼結PCBN材料は、実質的に無孔であり、性質上セラミックである。セラミック材料は、高い耐摩耗性、高い熱伝導性、良好なクレータ耐摩耗性を有するが、それらの固有の脆性の結果として耐衝撃性に欠けることが知られている。
主な問題は、主にバインダ相の弱さにより、工具が破壊又は剥離によって破局的に機能低下することであり、高生産性に対する市場の要求の増大によって悪化する。これは、典型的には、工具の定期的な交換を必要とする工具の寿命低下をもたらす。これは、次に、典型的には、望ましくない生産コストの増加をもたらす。
CBNは、高CBN含有量のPCBN材料の最も重要な構成要素である。それは、硬度、強度、靱性、高い熱伝導性、高い耐摩耗性、及び鉄ベアリング材料との滑動接触の際の低摩擦を提供する。したがって、バインダ相の主な機能は、構造におけるCBN粒子に対する高強度接着を提供するとともに、複合体におけるCBN特性を、特にCBN相の脆性を補償する上で、補完することである。
より効率的に機能する、即ち耐摩耗性、熱伝導性、耐衝撃性及び耐熱性の向上を示す改良型CBN系材料を開発することが望ましい。
本発明によれば、立方窒化ホウ素成形体(PCBN)は、少なくとも70体積%の量で存在する立方窒化ホウ素粒子の多結晶塊と、性質上金属であるバインダ相とを含む。
本発明に不可欠なのは、バインダ相が性質上金属であることである。換言すれば、バインダ相は、性質上金属が支配的である。したがって、PCBNを製造する元になる組成物に存在する金属は、最終的な焼結PCBN材料において本質的に金属形態を維持する。
典型的には、バインダ相の少なくとも50体積%、より好ましくは60体積%が金属である。
バインダ相は、成形体が、少なくとも0.350×10のウェーバーの比飽和磁力を有するように、磁性挙動を示すものが好ましい。
本発明の好ましい形態によれば、バインダ相は、性質上超合金であるバインダ相である。特に、バインダ相は、好ましくは、
ニッケル、鉄及びコバルトの群から選択される少なくとも40、好ましくは少なくとも50重量%の第1の元素の1種又は複数種と、
クロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオビウム、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンの第1の群の合金化元素から選択される第2の元素の2種以上(このグループの元素は、典型的には、該合金の5から60重量%を含むことになる)と
を含む合金から実質的になる。合金バインダは、炭素、マンガン、硫黄、珪素、銅、リン、ホウ素、窒素及び錫の第2の群の合金化元素から選択される第3の元素の1種又は複数種をさらに含むことができる。
本明細書及び特許請求の範囲に用いられている「から実質的になる」という用語は、バインダが合金を含み、他のあらゆる元素が、バインダの実質的な合金、好ましくは超合金特性に影響を与えない微量又は少量だけ存在することを意味する。
以上に定義した好ましい超合金特性を含む立方窒化ホウ素成形体は、以下のような特徴的なバインダ構造を有する。
X線回折分析によれば、(CBN以外の)最大強度の回折ピークは、支配的なCo、Fe又はNi合金構成要素に対応する金属ピークである。このピークは、純粋のCo、Ni又はFeの最大強度の回折ピークのいずれの側においても1.5度(2θ)以下しかずれていない。
(蛍光X線及びエネルギー分散分光法などの特性決定法を用いた)元素分析によれば、バインダ相は、以上に定義した第2の元素の少なくとも2種以上の検出可能な量をさらに含む。存在する場合、第3の元素の1種又は複数種も検出可能になる。
バインダ相は、好ましくは、少量の好適な酸化物も含む。酸化物は、存在する場合、好ましくは、バインダ相に通じて分散され、バインダ相特性、特に高温特性を確実に向上させる上で役立つと考えられる。好適な酸化物の例は、希土類酸化物、酸化イットリウム、第4、5、6族の酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素及びサイアロンとして知られる酸化窒化アルミニウム珪素から選択される。酸化物相は、好ましくは、微細であり、典型的には、粒径がサブミクロンの粒子として存在する。
酸化物は、存在する場合、好ましくは、バインダ相と酸化物の混合物の5量パーセント未満の量で存在する。バインダ相に存在する少量の酸化物は、バインダ相の金属的性質又は特性に影響を与えない。他のセラミック層も、バインダ相の実質的に金属的性質又は特性に影響を与えない微量だけ存在する。
立方窒化ホウ素成形体は、典型的には、70から95体積%のCBN、好ましくは70から90、最も好ましくは75から85体積%のCBNを含む。典型的には、CBNの平均粒径は、サブミクロンから約10μmの範囲である。多様な粒径分布を任意選択に有するより粗いcBNの粒径を使用することができる。
さらに本発明によれば、立方窒化ホウ素成形体(PCBN)を製造するのに好適な組成物は、立方窒化ホウ素粒子の微粒子塊、微粒子金属バインダ、及び任意選択に、サブミクロン、即ち1μm以下であってもよい粒径を有し、存在する場合、金属バインダと酸化物の混合物の5量%未満の量で存在する好適な酸化物を含む。酸化物は、好ましくは、上記の酸化物である。
微粒子金属バインダは、好ましくは、性質上超合金である合金を製造するのに必要とされる金属構成要素を含む。
本発明の別の態様によれば、立方窒化ホウ素成形体(PCBN)は、上記の組成物を、該組成物から成形体を製造するのに好適な高温の条件に曝すことによって製造される。
合金組成物のXRDスキャンである。 当該合金組成物から製造された焼結PCBNである。 従来技術のPCBN材料の焼結組成物の基準XRDスキャンである。
本発明は、CBN成形体に関し、より具体的には、多結晶CBN、及び実質的に性質上金属であり、好ましくは性質上超合金であるバインダ相、並びに任意選択に少量の好適な酸化物、好ましくは酸化イットリウムを含むCBN成形体に関する。
該成形体は、CBN成分が最も重要な構成要素であり、硬度、強度、靱性、高い熱伝導性、高い耐摩耗性、及び鉄ベアリング材料と接触した際の低摩擦係数を提供する高CBNのPCBN材料である。立方窒化ホウ素成形体は、典型的には、70から95体積%のCBN、好ましくは70から90、最も好ましくは75から85体積%のCBNを含む。CBN含有量が95体積%を超える場合、バインダ相は、高比率の脆弱セラミック反応生成物が形成されるため、CBN粒子との高強度結合を効率的に形成できない。一方、CBN含有量が70体積%未満である場合、金属が支配的なバインダ相が鉄系工作物材料と相互作用して、切断効率を低下させ、研磨、接着及び化学的摩耗を増大させる。
本発明の別の本質的な特徴は、性質上金属が支配的なバインダ相である。好ましくは、バインダ相は、性質上超合金である金属を有する。超合金は、高温及び耐腐食用途に向けて設計される特定の種類の鉄、ニッケル、コバルト合金である。それらは、PCBNのためのバインダ系として使用されることがこれまで知られていなかった。このバインダ相は、好ましくは、多結晶CBNの構造内に化学的に均一な組成物の金属合金又は混合物を含むことによって、材料の全体的な特性を向上させる。
CBN成形体に耐熱性、耐摩耗性及び耐衝撃性の優れた特性を与えるのは、当該バインダ相の存在である。
バインダ相は、好ましくは、
ニッケル、鉄及びコバルトの群から選択される第1の元素の1種又は複数種の少なくとも40量%と、
クロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオビウム、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンの合金化元素から選択される2種以上の第2の元素と
を含む合金から実質的になる。合金バインダは、炭素、マンガン、硫黄、珪素、銅、リン、ホウ素、窒素及び錫の第2の群の合金化元素から選択される第3の元素の1種又は複数種をさらに含むことができる。
微粒子立方窒化ホウ素粒子、選択された微粒子形態の金属バインダ、及び任意選択に好適な酸化物を含む組成物を、成形体を製造するのに好適な高温及び高圧条件に曝すことによって、本発明の立方窒化ホウ素成形体を製造することができる。使用される高温及び高圧(HpHT)の典型的な条件は、1100℃以上の範囲の温度、及び2GPa以上、より好ましくは4GPa以上のオーダの圧力である。これらの条件を維持するための時間は、典型的には、約3から120分間である。
追加的な金属又は金属合金は、成形体製造時に別の供給源から未結合組成物を浸透させることができる。金属又は金属合金の他の供給源は、典型的には、高温及び高圧条件の適用前に、組成物を配置する表面上のセメント炭化物基板からの鉄、ニッケル又はコバルトなどの金属を含むことになる。
本発明のCBN成形体は、典型的には、バインダ相の以下の特性を示すことになる。
金属が支配的な特性
本発明のCBN成形体は、性質上金属が支配的なバインダを有する。当技術分野で知られているたいていの高CBN含有量のPCBN材料と対照的に、本発明の出発又は未焼結混合物における金属バインダ相材料は、in situで窒化物及びホウ化物などの支配的なセラミック相を形成するためにHpHT条件でCBN粒子と顕著に反応しない。
PCBNを製造するための従来技術の反応経路は、性質上セラミックが支配的なバインダ相、例えば(米国第4,666,466号に記載のものなどの)アルミニウム金属系バインダ系をもたらし、アルミニウム金属は、ほぼ全面的にCBNと反応して、窒化及びホウ化アルミニウムを含むバインダ系を生成する。この種の反応プロセス及び得られる生成物は、十分に焼結された又はセメント化されたPCBN材料を製造する上で重要であると思われている。得られたセラミック相は、典型的には、焼結前に導入された金属相よりはるかに望ましい物理及び化学特性をPCBN複合体構造に有することになる。したがって、焼結PCBNを維持する出発材料に存在する、金属が支配的な特性を有するバインダ相は、以下の理由により、通常望ましくないと思われる。
これらの金属は、典型的には、性能に悪影響を与えることなく、PCBN材料の支配的な部分を形成するための適切な耐摩耗性を有さない。
金属が残留していることは、典型的には、CBN粒子との不完全な反応を示唆することになるため、CBNとバインダ相との結合が不十分である。
理論に縛られることを望むことなく、CBN粒子と十分に反応して、材料を効果的に焼結する合金化元素が含まれるため、本発明、特にその好ましい形態におけるバインダ相の金属的特性に順応できることが予測された。同時に、これらの合金化元素及びさらなる添加物は、それらがPCBNそのものの材料特性に積極的に寄与するように、バインダの特性をさらに向上させることも見出された。
X線回折分析などの構造的に敏感な技術を用いて、バインダ相の金属的性質を容易に確立することができる。金属の単純な元素の存在がそれらの分種化を示さない場合には、X線回折を用いて、Fe、Ni及び/又はCoなどのバインダの重要元素の構造的、即ち金属的性質を特定することができる。
したがって、本発明のCBN成形体材料の標準的なX線回折分析は、それらの好ましい形態において、Fe、Ni又はCoの金属相の少なくとも1つに対応する強いバインダピークを示す。これは、合金における支配的な金属である。したがって、この金属構成要素のピークは、CBNピーク以外に観察された最強のピークになる。他の元素との合金化、及びバインダ系内で生じるCBNとの反応に伴う構造的シフトは、典型的には、このピークを純粋の金属の基準と相対的により小さい又は大きい2θ値までわずかに変位させることになる。この変位は、純粋の金属ピークからいずれかの方向に1.5度(2θ)未満、より好ましくは1.0度(2θ)未満になる。
さらなる合金化材料の存在
バインダ相金属のさらなる好ましい要件は、それが、クロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオビウム、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンの群から選択される少なくとも2種の第2の元素を含むことである。これらの添加物の累積重量百分率は、典型的には、バインダ合金の5から60重量%になる。
蛍光X線又はエネルギー分散分光法などの好適な元素分析技術を用いて、これらの元素の存在を容易に確認することができる。
バインダ合金は、炭素、マンガン、硫黄、珪素、銅、リン、ホウ素、窒素及び錫の群から選択される少なくとも1つのさらなる合金化元素をさらに含むことができる。
磁気特性
鉄、ニッケル、コバルト、及び希土類のいくつか(ガドリニウム、ジスプロシウム)は、強磁性と呼ばれる独特の磁気挙動を示すことがよく知られている。材料を、外的に加えられた磁場に対するそれらの応答によって、反磁性、常磁性又は強磁性に分類することができる。これらの磁気応答は、強度が大きく異なる。反磁性は、すべての材料の特性であり、加えられた磁場に対抗するが、非常に弱い。常磁性は、存在する場合、反磁性より強く、加えられた磁場の方向で、加えられた磁場に比例する磁力を生成する。強磁性効果は、非常に大きく、ときには加えられた磁場を超える大きさの磁力を生成するため、反磁性効果又は常磁性効果よりはるかに大きい。
本発明のPCBNは、性質上金属であり、好ましくは、実質的な量の鉄、ニッケル及びコバルトの1種又は複数種を含むバインダ相を含む。したがって、PCBNは、典型的には、少なくとも0.350×10ウェーバーの比飽和磁力を有するような磁性挙動を示す。
比飽和磁力は、強磁性相を特徴づけ、基本的には、サンプルの構造及び形状に無関係である。強磁性材料が磁場にあるときは、磁化されている。その磁力の値は、加えられる磁場とともに増加し、次いで最大値に達する。比飽和磁力は、材料の質量による磁気モーメントの最大値の比である。磁気モーメントの測定は、サンプルを磁場から導出し、コイルにおける誘導e.m.f(起電力)を測定することによって達成される。積分は、磁場で飽和されたことを前提に、サンプルの比飽和磁力値に比例する。
微細酸化物の任意選択の存在
少量の好適な微細酸化物を添加することにより、本発明のPCBN材料をさらに改善できることも見出された。酸化物は、存在する場合、バインダ相を通じて通常均一に分散され、バインダ相特性、特に高温特性を確実に向上させる上で役立つと考えられる。
好適な酸化物の例は、希土類酸化物、酸化イットリウム、第4、5、6族の酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素及びサイアロンとして知られる酸化窒化アルミニウム珪素から選択される。酸化物相は、典型的には、粒径がサブミクロンの粒子として存在する。好ましい酸化物添加量は、(バインダの)5重量%未満、より好ましくは(バインダの)3重量%未満である。
本発明の立方窒化ホウ素成形体は、典型的には、灰色鋳鉄、高クロム白色鋳鉄、高マンガン鋼及び粉末金属鋼などの硬質鉄材料の機械加工に使用される。
次に、以下の非限定的な実施例に関連して本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
本発明の材料の向上した性能
材料A
合金粉末を約1重量%のサブミクロン(即ち75ナノメートル)のY粉末とともに摩擦粉砕した。合金粉末の組成は、以下の通りであった。
Figure 0005355415
合金粉末は、粒子の80体積%が5μm未満であった出発粒径分布を有する。続いて、粉末混合物を、エタノール中で、2μmの平均粒径を有するCBN粉末と高速剪断混合して、スラリーを製造した。混合物における全体的なCBN含有量は、約93体積%であった。CBN含有スラリーを真空下で乾燥させ、セメント炭化物基板上で生の成形体に形成した。真空熱処理後、生の成形体を約5.5GPaの圧力及び約1450℃の温度で焼結して、セメント炭化物基板に接着した多結晶CBN成形体を製造した。このCBN成形体は、これ以降、材料Aと称する。
材料B:比較例
平均粒径がそれぞれ1μm、5μm及び1μmのコバルト、アルミニウム、タングステン粉末をCBNとともにボールミル粉砕した。33重量%のコバルト、11重量%のアルミニウム及び56重量%のタングステンがバインダ混合物を形成する。平均粒径が約1.2μmの立方窒化ホウ素(CBN)粉末を、92体積%のCBNを達成する割合でバインダ混合物に添加した。セメント炭化物粉砕媒体を使用して、粉末混合物をヘキサンとともに10時間にわたってボールミル粉砕した。摩擦粉砕後、スラリーを真空下で乾燥させ、セメント炭化物基板によって支持される生の成形体に成形した。材料を約5.5GPa及び約1480℃で焼結して、多結晶CBN成形体を製造した。このCBN成形体は、これ以降、材料Bと称する。
ワイヤEDM又はレーザを使用してサンプル片を材料A及びBの各々から切り出し、粉砕して切断インサートを形成した。切断インサートをK190(商標)焼結PM工具鋼の連続的仕上げ旋削で試験した。工作物材料は、PCBN切断工具に対する研磨力が非常に強い微細Cr−炭化物を含んでいた。試験は、切断パラメータが以下の通りである乾燥切断条件で実施された。
Figure 0005355415
切断インサートを(Vb−最大値として測定される)過度の側面摩耗の結果としての破損点まで試験した。これらの試験を3つの異なる切断距離の最大値で実施した。概して、側面摩耗と切断距離の関係は直線的であることが見出された。0.3mmの最大側面摩耗を試験の破損値として選択した。次いで、全体的な切断距離を、0.3mmにおける正規化された最大側面摩耗結果から計算した。
Figure 0005355415
表1の結果によれば、性質上超合金である組成物から製造された材料Aである多結晶CBN成形体は、従来技術の組成物から製造された材料Bである多結晶CBN成形体より長い工具寿命を有していた。
(実施例2)
様々な合金系の適性
サンプルC
(約50/50重量比の)2つの異なる合金粉末を約1重量%のサブミクロンのY粉末とともに摩擦粉砕した。第1の合金粉末の組成は、材料Aに使用された合金粉末と同じであった。第2の合金粉末の組成は、以下の通りであった。
Figure 0005355415
続いて、粉末混合物を、エタノール中で、約1.2μmの平均粒径を有するCBN粉末とともに高速剪断混合して、スラリーを製造した。混合物における全体的なCBN含有量は、約82体積%であった。CBN含有スラリーを真空下で乾燥させ、生の成形体に成形した。真空熱処理後、生の成形体を約5.5GPaの圧力及び約1450℃で焼結して、多結晶CBN成形体を製造した。このCBN成形体は、これ以降、材料Cと称する。ワイヤEDM又はレーザを使用してサンプル片を材料Cから切り出し、実施例1で用いた試験方法に従って試験した。表2は、材料Bである従来技術のサンプルの結果と比較した場合のこの結果を示す。
Figure 0005355415
表2の結果によれば、性質上超合金である組成物から製造された多結晶材料Cは、従来技術の組成物から製造された材料Bである多結晶CBN成形体より長い工具寿命を有していた。
サンプルD
合金粉末をヘキサンとともに約4時間摩擦粉砕し、乾燥させた。続いて、粉末を、エタノール中で、約1.2μmの平均粒径を有するCBN粉末と高速剪断混合して、スラリーを製造した。混合物における全体的なCBN含有量は、93.3体積%であった。合金粉末の組成は、以下の通りであった。
Figure 0005355415
CBN含有スラリーを真空下で乾燥させ、セメント炭化物基板上の生の成形体に成形した。真空熱処理後、生の成形体を約5.5GPaの圧力及び約1450℃で焼結して、セメント炭化物基板に接着した多結晶CBN成形体を製造した。このCBN成形体は、これ以降、材料Dと称する。
材料E
微細酸化物粒子を添加せず、合金組成が以下の通りであったことを除いては、材料Aと同様にして材料Eを製造した。
Figure 0005355415
ワイヤEDM又はレーザを使用して、サンプル片を材料B、D及びEの各々から切り出し、粉砕して切断インサートを形成した。調製した切断インサートに、Vanadis10(商標)焼結及び冷却処理工具鋼の連続的仕上げ旋削を施した。工作物材料は、研磨Cr、Mo及びV−炭化物を含み、PCBN切断工具に対する研磨力が非常に強いことが認められた。切断パラメータが以下の通りである乾燥切断条件で試験を実施した。
Figure 0005355415
850mの切断距離後に最大側面摩耗を測定した。
Figure 0005355415
表3の結果によれば、性質上超合金である組成物から製造された2つの多結晶CBN成形体、即ち材料D及びEは、摩耗傷の大きさがより小さいため、従来技術の組成物から製造された材料Bである多結晶CBN成形体より良好な性能を有していた。
(実施例3)
バインダの典型的な磁気特性の実証
材料F
第2の合金粉末の代わりに、平均粒径が1μmのコバルト粉末を使用したことを除いては、実施例2の材料Cと同様にして材料Fを調製した。
材料G
平均CBN粒径が1.2μmであることを除いては、実施例1の材料Aと同様にして材料Gを調製した。
ワイヤEDM又はレーザを使用してサンプル片を実施例1及び2の材料B、C並びに材料F及びGから切り出した。ワイヤEDM機械加工を用いて、セメント炭化物層を除去することによって、セメント炭化物支持層を含むそれらのサンプル片をさらに処理し、切断面を磨いて、EDM表面損傷を除去した。
測定セットアップ「シグマメーターD6025TR」を使用して、材料B、C、F及びGの比飽和磁力(o)値を測定した。複数回の測定を行い、得られた測定値の標準偏差を表4に要約する。
Figure 0005355415
実施例の材料C、F、Gは、セラミックバインダ相が支配的な従来技術の材料の材料Bと比較すると、合金中実質的な量のニッケル及びコバルトを含む金属的特性を有していた。表2によれば、材料C、F及びGは、従来技術の材料の材料Bと比較すると、それらのバインダ相が金属的特性を有するため、はるかに高い比飽和磁力を有していた。
(実施例4)
バインダのX線回折特性
材料H
ヘキサンを使用して、合金粉末を約4時間にわたって摩擦粉砕し、乾燥させた。続いて、粉末を、約1.3μmの平均粒径を有するCBN粉末と高速剪断混合して、スラリーを製造した。混合物における全体的なCBN含有量は、約85体積パーセントであった。合金粉末の組成は、以下の通りであった。
Figure 0005355415
CBN含有スラリーを真空下で乾燥させ、生の成形体に成形した。真空熱処理後、生の成形体を約5.5GZPaの圧力及び約1400℃で焼結して、多結晶CBN成形体を製造した。CBN成形体は、これ以降、材料Hと称する。
材料I
合金粉末の組成が以下の通りであったことを除いては、材料Hと同様にして材料Iを調製した。
Figure 0005355415
材料J
合金粉末の組成が以下の通りであったことを除いては、材料Hと同様にして材料Jを調製した。
Figure 0005355415
材料K
合金粉末の組成が以下の通りであったことを除いては、材料Hと同様にして材料Kを調製した。
Figure 0005355415
次いで、製造されたCBN成形体材料のX線検査を、40kV及び45mAの発電器設定のCu放射線に適合された垂直回折計を使用して実施した。
典型的には、0.02度(2θ)のステップサイズ及びステップ当たり5秒間の分析時間でXRD走査を実施した。焼結前後の合金の最大強度ピークの強度及びピーク位置を、Ni、CO又はFeの最大強度ピーク位置と比較して測定し、合金における卑金属、即ちNi又はCoの最大強度ピーク位置と、焼結材料の(CBNを除く)最大強度ピーク位置とのピーク位置の差を度(2θ)で計算する。
この分析の結果を表5に要約する。合金の最大強度ピーク位置は、焼結後にわずかにシフトする。このシフトは、合金とCBN粒子の間でいくつかの反応が生じることを示す。ピーク位置がより大きい2θ値に移動する場合には、これは、焼結後に、合金化元素のいくつかがCBNと反応した、且つ/又はホウ素及び窒素が合金相に溶解できることを示し得る。しかし、X線回折分析により、最初に導入された合金相は、依然として焼結材料において維持し、(連続高強度ピークによって示されるように)バインダの主要な部分を依然として形成することが示される。
さらに、合金の最大強度XRDピークの2θ位置は、純粋な金属の最大強度ピークの2θ位置に近い(これらの値を参照のために表5に示す−合金相の主要構成成分がNiである場合、純粋のNi XRDピークを基準等として使用すべきである)。
Figure 0005355415

すべてのピーク位置を度(2θ)で引用し、強度をカウント毎秒とする。
図1は、材料Jに使用された出発合金粉末のXRD走査を示す図である。この分析によれば、合金化は、合金のためのマトリックス相である純粋のニッケルからのピークシフトとして確認され、元素の合金化は、表5に示されるように、純粋のニッケルピーク位置からの約0.68度(2θ)のXRDピークシフトを引き起こす。
図2は、材料J(即ち、CBNとの後HpHT焼結)のXRD走査を示す図である。超合金の一次XRDピークは、純粋のNiピークからわずかに変位し、焼結CBN複合体材料内において、CBNを除く最大強度ピークを依然として構成する。さらに、図2における低強度ピークを、超合金とCBNの相互作用及び偶発的不純物の結果として主に形成される相に帰することができる。
図3は、基準として、焼結された従来技術の材料BのXRD走査を示す図である。金属コバルト、タングステン及びアルミニウムを金属形態で出発粉末に導入したが、最終構造は、これらの金属相の存在が有意に減少し、WC、WBCo等のセラミック相が実質的に形成されていることを示している。これらの非金属相がバインダ組成物を支配していることがXRD走査から明らかである。
(実施例5)
サブミクロンの酸化物の添加の影響
材料L
微細酸化物粒子を添加しなかったことを除いては、材料Aと同様にして材料Lを製造した。実施例1の材料Aに記載したのと同じ組成で、7重量%の合金粉末含有量を用いた。材料A、B(従来技術)、L及び(実施例6の)材料Oに対して、実施例1に記載したのと同じ機械加工試験を行った。材料Oは、材料A及びLと同じ方法によって調製されたが、ZrO添加物を含む。
表6の性能データにより、酸化物添加物を含まない材料Lは、従来技術の材料B、並びに(Yを含む)材料Aより性能が優れるが、(ZrOを含む)同等のサンプル材料Oより優れるものではないことが示される。これにより、耐摩耗性に対する微細酸化物の添加の影響は正であり得るが、場合によっては、それと同等に、負の影響がないか、又は小さいことが示される。いずれの場合も、本発明の材料は、従来技術の材料より性能が優れていた。
Figure 0005355415
(実施例6)
好適な微細酸化物の添加
以下に規定する種類及び量の代替的な微細酸化物を代用したことを除いては、実施例1の材料Aと同様にして材料MからSを調製した。それぞれの場合において、実施例1の場合のように、酸化物を合金粉末とともに摩擦粉砕した。
Figure 0005355415
次いで、材料MからS及び従来技術の材料の材料Bを実施例1に記載したのと同じ機械加工試験条件に曝した。切断インサートを約1000mの切断距離に対して試験し、最大側面摩耗(Vb−max)を測定した。機械加工試験は、切断工具性能を示し、材料をそれらの耐摩耗性についてランク付けする。
表7において明らかなように、様々な量及び種類の酸化物相を本発明の材料に添加することにより、従来技術の材料の材料Bと比較した場合、材料MからSにおける測定されたより小さい側面摩耗傷サイズによって示される摩耗性能の実質的な向上がもたらされた。
Figure 0005355415

Claims (8)

  1. (a) 少なくとも70体積パーセントの量で存在する立方晶窒化ホウ素粒子の多結晶塊と、
    (b) ニッケルである第1の元素を含む合金と、クロム、モリブデン、タングステン、ランタン、セリウム、イットリウム、ニオビウム、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、アルミニウム及びチタンから選択される第2の元素の2種以上を含む残りの合金とから実質的になるバインダであって、前記バインダ重量に対して、第1の元素が少なくとも40重量パーセントで第2の元素の2種以上の累積重量百分率が5から60重量%である前記バインダと、
    (c) バインダと酸化物の混合物の5重量パーセント未満の量で存在し、そして、希土類酸化物、酸化イットリウム、第4、5、6族の金属の酸化物、酸化珪素及び酸化窒化アルミニウム珪素から選択され、更に、前記バインダ中に分散されている酸化物と、
    を含んでなる、立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
  2. 前記バインダが超合金特性を有している、請求項に記載の立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
  3. 前記バインダが、炭素、マンガン、硫黄、珪素、銅、リン、ホウ素、窒素及び錫から選択される第3の元素の1種又は複数種を更に含む、請求項1又は2に記載の立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
  4. 前記バインダが、前記バインダ重量に対して少なくとも50重量パーセントの第1の元素を含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
  5. 70から95体積%のCBNを含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
  6. 70から90体積%のCBNを含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
  7. 75から85体積%のCBNを含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
  8. 前記CBN粒子の平均粒径が、サブミクロンから10ミクロンの範囲である、請求項1からまでのいずれか一項に記載の立方晶窒化ホウ素研磨成形体。
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