JP5354084B2 - 非水電解質電池 - Google Patents
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Description
また、特許文献2(特開2000−133216号公報)には、アルミラミネートフィルムに矩形状の絞り成形が施され、発電要素を収納する空間を形成することにより余分なスペースを最小限とした電池が開示されている。
また、特許文献4(特開2000−100404号公報)では、フィルムで封口した電池を電池収納容器に収納することで、収納された電池を圧迫する電池パックが開示されている。
また、特許文献5(特開平6−111799号公報)には、極板群の周辺に空間部分を保持させて合成樹脂製の気密シートで包覆して密封した電池が開示されている。
またこの種の電池の多くは、極板群から成る発電要素をラミネートフィルム等の薄型外装体に収納しており、電池の薄型小型化に有利な構造となっている。ラミネートフィルムは、金属箔およびシール材としての高分子樹脂層が積層された構成となっており、例えば300℃以下のヒートシールによってシール材を溶着させ内容物を密閉することが可能であり、レーザー溶接などの金属溶接を必要としない新しいタイプの電池外装体として注目されている。
また特に、ラミネートフィルムを外装体とする電池では一般に減圧封止を行うことが多く、封止不良により外気が侵入すると減圧状態を保てなくなるという不都合が生じる。
特許文献1で提案されているものは、ガス発生時に暴発などをさせずに「安全に電池を死なせる」方法である。すなわち、発電要素が外気に触れると性能が低下する場合であっても、電池のフィルム接着部を開放して外気にさらしてしまうものである。この方法では、電池使用中のガス発生が微量でも、それが長期にわたった場合内圧上昇とともにガスが蓄積し、内圧が閾値を超えると、通常使用時であっても安全弁を作動させてしまい、ガス放出の後開口した安全弁から外気が侵入する。非水電解質電池の場合は水分を含む外気が電池内部に侵入すると、性能が著しく劣化して使用不能状態に至る。前記の閾値がもし低い値であったなら、短い期間で電池が自動的に使用不能状態に至ってしまう。
また、特許文献4の例のように、電池パックによる力学的な押さえを行ったとしても、上述したようにガスが発生し続けて内圧が上昇すると、極板の積層方向に対しても外装体が太鼓腹状に膨張しようとする力が働いてしまい、パックケースを押し広げてしまうため、やはり極板密着性が維持できないおそれがある。
一方、従来知られている扁平形状のフィルム外装電池の個々を水平な向きとして上下方向に積み重ね、それらを直列接続して組電池を構成する場合、以下に述べるような問題点が生じる。
ここで、前述のNRタイプかつ片側引出しタイプの電池を上下方向に積み重ねて直列接続する場合を考え、前述した直列接続に際して好ましいリード端子位置関係にする方法を考えてみる。
一方、リード端子封止性の観点からは、図26(a)の形態では、ガスが発生してもガスが上にたまりリード端子封止部近傍に電解液が存在したままとなってリード端子封止性に不利な影響のある向きの電池が必ず存在することになる。
以上述べたように、これまでに提案されてきたフィルム外装電池では、積み重ねて直列接続する際に、接続抵抗低減性、量産利便性、および耐漏液性の全てを同時にベターとなる方に選択することができなかった。
以上述べたように、ラミネートフィルムをヒートシールしてなる外装体を用いた電池は、缶タイプよりも生産能率の点で優れる反面、缶タイプに比べて耐熱性に劣るため、その改善が望まれていた。
なお、参考技術は、第1に第1外装体要素と、極板が積層されてなる発電体を収容しかつ電解液を有するカップ状成形部を有する第2外装体要素を、前記カップ状成形部より外側で互いに貼り合わせて封止され、前記第2外装体要素が下側に位置するように据え付けられた据付型電池において、前記両外装体の前記貼り合わせ封止部に位置する正極リード端子および負極リード端子の少なくとも一方の高さが前記極板群の最も上の極板の高さより低くないことを特徴とする単位電池(以下第1発明という)であり、第2に第1外装体要素と、極板が積層されてなる発電体を収容しかつ電解液を有するカップ状成形部を有する第2外装体要素を、前記カップ状成形部より外側で互いに貼り合わせて封止され、前記第2外装体要素が下側に位置するように据え付けられた据付型電池において、電流取り出しのための正極リード端子および負極リード端子が前記貼り合わされた前記両外装体の一つの端辺と、対向する逆側の端辺とからそれぞれ引き出されることを特徴とする単位電池(以下第2発明という)であり、第3に極板が積層されてなる発電体に電極リードを設けた電池本体を、該電極リードが外部と通電可能となるよう露出させてフィルムで密封封止したフィルム外装電池であって、前記密封した内部容積を前記極板の積層方向以外の方向へ膨張させるよう前記フィルムを変形可能に形成したことを特徴とするフィルム外装電池(以下第3発明という)である。
第1発明の電池においては、その外形は通常扁平な形状であり、扁平面を水平にして据え付られ、極板群の極板面は前記扁平面と平行であり、前記正極リード端子および負極リード端子が経由している封止部の面は、扁平面と略平行であってかつ極板群の最も上の極板と略同じ高さもしくはそれより上に位置している。
従ってこの電池内にガスが発生した際、ガスは上に集まるため、リード端子封止部近傍にガスが溜まることになり、リード端子封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化が防止できる。
こうして、積み重ねて直列接続する際の接続抵抗低減性、量産利便性、および耐漏液性を同時に良好とすることができる。
この第3発明の変形例として、単電池を積み重ねた組電池の隣接する2つの単電池のうち下側の電池のリード端子封止部近傍の第1外装体要素の上部の少なくとも一部に、前記リード端子封止部近傍の第1外装体要素が上側に変形可能とするための隙間が存在するようにする形態がある。
第4発明は金属板の少なくとも一方の面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属部材と、金属面が露出した金属面露出部材と、がシール材を介して封着された外装体を有し、前記樹脂被覆金属部材に設けられた凹部に発電要素が収納された非水電解質電池であって、前記樹脂被覆金属部材の縁部が、前記金属面露出部材の折り返し部により覆われたことを特徴とする非水電解質電池を提供するものである。
この本発明によれば、発電要素を収納する部材として樹脂被覆金属部材を用いているため、発電要素収納のための凹部を所望の寸法に容易に形成することができる。このため、優れた生産性および品質安定性の電池を得ることができる。また、樹脂被覆金属部材を用いた場合に懸念されるヒーターへの樹脂のこびりつきの問題に関しても、縁部表面を金属面露出部材の折り返し部により覆うことによって解消しており、生産性の向上が図られるとともに、優れたシール性が安定的に実現される。さらに、縁部表面を金属面露出部材の折り返し部により覆う構造により、電池の内圧が上昇した際に封口が破れにくくなる。
更に第4発明の実施の形態は前記外装体の全部又は一部を構成するフィルムを特定するもので、本発明者らは、前述の電池等で使用可能な外装体の内面層やヒートシール部に用いる新しいシール材を、耐電解液性、耐熱性およびガスバリア性といった観点から鋭意検討した結果、特定の材料を用いることにより、第4発明の実施の形態に至ったものである。
なお、第4発明の実施の形態においては、外装体の少なくとも一部がシール材を介して封着されるが、その他の部分については、他の手段により封着されていてもよいし、上記シール材とは異なる種類のシール材により封着されていてもよい。なお、外装体の封着部すべてにシール材が配置された構成とすれば、より信頼性の高い電池が得られる。
こうして、積み重ねて直列接続する際の接続抵抗低減性、量産利便性、および耐漏液性を同時に良好とすることができる。
更に、発電体より底面積の大きい凹部をフィルムに形成した後、減圧封止によりフィルムを変形させることにより、上記のガスを収容し易く、かつ収容できる容積を大きくすることができる。
更に、極板間の密着を維持するようにすることにより、内部でガスが発生した場合であっても、積層された極板間の密着を維持しやすくすることができる。この密着の維持により、電池特性を長期にわたって安定させることができる。
更に、電池の一時的異常発生や長期使用により発生したガスが内部に蓄積されても、封止時に電池内側方向に変形したフィルムの湾曲部が元に戻ることにより、フィルムに形成した凹部や湾曲部における容積と発電体の体積との差による余裕空間にガスを貯め込むことができ、極板の積層方向への密着性を維持しながら内圧を上昇しにくくさせることができる。この内圧上昇の抑制により、安全性に優れ、また極板密着性が長期間維持され電池特性が長期にわたって安定な電池を得ることができる。
まず第1発明及び第2発明で使用可能な電池の各構成要素について詳述する。
リード端子(電極リード)は、材質としてはAl、Cu、燐青銅、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレスなどが使用でき、必要ならば焼き鈍し処理を施されたものでもよい。形状としては平板状が好ましく、厚さとしては20μm〜2mmの範囲であることが好ましい。クランク状に曲げてあってもよい。
外装体としては、電池の上側が任意の形状、下側が極板群を収容できる大きさのカップ状成形部を有していればとくに制限はないが、これらを貼り合わせる対向面が熱融着性であることが好ましい。例えば、厚さ10μm〜1mmの母材板に厚さ3μm〜200μmの熱融着性樹脂を貼りつけたものが使用できる。母材板としては、Al、Ti、Ti系合金、Fe、ステンレス、Mg系合金、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等が使用できる。また熱融着性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。外装体の厚さが柔軟性を有するフィルム程度の厚さである場合、カップ状成形部としては、成形予定部の周囲の外装体を滑り可能な状態で押さえながらポンチとダイスでフィルムを押し込んで成形する絞り成形(深絞り成形)が好ましい。なお、成形予定部の周囲のフィルムを滑らせずに固定して、ダイスでフィルムを引っ張り伸ばして成形する張り出し成形法で凹部を形成しても良い。また、射出成形法で凹部を持つ外装体を作製してもよい。外装体の厚さが剛性を有する程度の厚さである場合、カップ状成形部の形成方法としては、プレス成形、鋳造法などが使用できる。
蓋側外装体としてはフィルム状のもの、すなわち、金属箔、樹脂薄膜、これらの積層体などで例示される柔軟性を有する薄い部材であることが好ましい。
極板群の構成としては、平板状の正極、負極、セパレータを積層したものが好ましい。正極は放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、(i)LiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2等の金属酸化物、(ii)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子、(iii)一般式(R−Sm)n(Rは、脂肪族、または芳香族であり、Sは、硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、S−トリアジン−2,4,6−トリチオール等)等の二次電池の正極材料として従来公知のものが使用できる。また、正極に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。これらの結着剤としてはポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が、機能性材料としては電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。負極は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、天然黒鉛、石炭・石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン、石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン、金属リチウムやAlLi等のリチウム合金など、二次電池の負極活物質として従来公知のものが使用できる。
以上はリチウムイオン二次電池としての材料系であるが、本発明は鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池にも応用しうるものである。また、リード端子、外装体、発電体などの構成要素は、第3発明、第4発明の実施形態で述べている構成要素と組み合わせてもよい。
図1は、第1発明及び第2発明の実施の形態の一例としての据付型単電池の断面を示し、図2は図1の据付型単電池を直列接続した組電池の外観を模式的に示す図であり、図3は図2におけるA−A’の模式的断面である。
この構成の電池においては、電池内にガスが発生した際、ガスは上に集まるため、リード端子封止部近傍にガスが溜まることになり、リード端子封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化が防止できる。
また、上記の方法の他に、電池間にスペーサを挟みこむ方法でも、同様な隙間9を形成することができる。すなわち、L2がもしL1と同等であっても、L1より長さが短いスペーサを電池間に挟むことにより、そのスペーサの横の傍らには隙間が形成され、同様にリード端子封止部周囲にガスが溜まりやすくなり、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することを抑制できる。ただし、スペーサの分だけ厚さ方向でスペース効率の損失となるため、好ましくは図3のような構成とすることが好ましい。
第3発明で使用可能な電池の各構成要素について詳述する。
リード端子(電極リード)は、材質としてはAl、Cu、燐青銅、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレスなどが使用でき、必要ならば焼き鈍し処理を施されたものでもよい。厚さとしては20μm〜2mmの範囲であることが好ましく、クランク状に曲げてあってもよい。電池の4辺のうち1辺の封止部のみから2本の端子を引き出してもよいし、図5に示すように正極リードと負極リードとを互いに対向する向きに、封止部113aを経由して引き出してもよい。この場合封止部113aの引き出した部分は、発電体の上端と略同じ高さか、またはそれより高い箇所でもよい。この上下の高さは、図5の断面における上下であり、凹型成形部を設けたフィルム(図5での下部フィルム232)を重力方向(下側)に向けて極板群が水平となるように電池を設置する。このように設置することにより、電解液は下に溜まりガスは上に集まるため、ガス発生時にリード端子112を設けて封止した部分(以下、リード封止部)近傍にガスが貯まることになり、リード封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子112とフィルムとの接着界面を攻撃することによる剥離劣化が防止できる。また仮にリード封止部での密封封止が破れたとしても、すぐに電解液噴出とはならず、ガス開放のみとすることができ、電解液噴出による周囲の汚染や電池周辺回路に液が飛散することによる不具合を防止することができる。
外装体としてはフィルム状のもの、すなわち、金属箔、樹脂薄膜、これらの積層体などで例示される柔軟性を有する薄い部材が使用でき、本明細書ではフィルムと呼んでいる。厚さとしては、10〜300μmが好ましく、さらに好ましくは、50〜200μmである。10μm未満であると、電池外装体としての力学的強度に乏しく、容易に破断するなどの不都合が生じ、300μmを超えると、柔軟性に乏しくなり、内圧を上昇させずにガスを受容することにおいて不都合となる。凹型成形部の形成は、成形予定部の周囲のフィルムを滑り可能な状態で押さえながらポンチとダイスでフィルムを押し込んで成形する絞り成形(深絞り成形)が好ましい。なお、成形予定部の周囲のフィルムを滑らせずに固定して、ダイスでフィルムを引っ張り伸ばして成形する張り出し成形法で凹型成形部を形成してもよい。また、射出成形法で凹型成形部を持つ外装体を作製してもよい。
発電体の構成、形態は、極板が積層されたものであれば特に限定されず、例えば正極、負極、セパレータからなり、平板状のものから、単純に2組以上積層したもの、長尺状のものを巻回したもの、さらには扁平に巻回したもの等であってよい。正極となる極板の材料は、放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、(i) LiMnO2 、LiMn2 O4 、LiCoO2 、LiNiO2 等の金属酸化物、(ii)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子、(iii) 一般式(R−Sm)n(Rは、脂肪族、または芳香族であり、Sは、硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2、5−ジメルカプト−1、3、4−チアジアゾール、S−トリアジン−2、4、6−トリチオール等)等の二次電池の正極材料として公知のものであってよい。また、正極に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。これらの結着剤としてはポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が挙げられ、機能性材料としては電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。負極となる極板の材料は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、天然黒鉛、石炭・石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン、石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン、金属リチウムやAlLi等のリチウム合金など、二次電池の負極活物質として公知のものであってよい。
図5は、第3発明の第1の実施形態としてのフィルム外装電池に押さえ板を設けた状態の断面を模式的に示す図である。図6は同電池を上から眺めた外観を模式的に示す図である。図5、図6に示すように、第3発明の第1の実施形態としてのフィルム外装電池1は、正極、負極のそれぞれに対応するリード端子(電極リード)112を発電体(発電要素)111に設けてなる電池本体がフィルム(外装体)113により被包され、それぞれのリード端子112を外部へ露出させるように密封封止されている。この発電体111は、シート状の正極板と、負極板といった極板と、セパレータとが積層されて構成される。上記の密封封止は、この極板などの積層方向でない方向に余裕を持たせた範囲である封止部113aでフィルム113をヒートシールすることにより行われている。このフィルム113は、上部フィルム231と、下部フィルム232とからなり、上記したヒートシールはリード端子112により上記した電池本体が電池外部と通電可能となるようにこの2枚のフィルムでリード端子112をはさんで行われる。
また、本明細書においてフィルムとは曲げ変形に対して柔軟性を有する薄い部材を指し、第3発明においては、金属箔単独、あるいは一般にラミネートフィルムと呼ばれる金属箔と樹脂フィルムの積層体が好ましい。
このフィルム外装電池101は、上部フィルム231と下部フィルム232とをヒートシールすることによる密封封止を減圧下で(電池内部が減圧状態となるよう)行うことにより減圧封止されている。この減圧封止により、上部フィルム231の一部である湾曲部231bが電池内側方向に湾曲しており、また下部フィルム232も、発電体の外側の余剰の凹型成形部に位置する湾曲部232bの部分で電池内側方向に湾曲して潰れている。
まず図7(a)、(b)に示すように、下部フィルム232に予め形成してある凹型成形部に発電体111を載置する。発電体111から伸びる集電箔には、予め正極、負極それぞれに対応するリード端子112を溶接部112aの部分で溶接しておく(図7(b)ではリード端子を省略してある)。凹型成形部の形成時の容積(以下、成形容積という)は、図7の例では、凹型成形部の縦横深さの積であるy・x・dで計算される。発電体111の体積は、次のようなサイズとすることにより、上記成形容積よりも小さくしている。すなわち、発電体111の横方向(図7(b)における上下方向)のサイズはxとほぼ同等としているが、縦方向のサイズおよび厚さ方向はそれぞれy、dよりも小さいサイズとしている。
この効果は、下部フィルム232の凹型成形部の形成時の形状すなわち自然の形が、電池作製時に減圧封止により内側方向に変形し、いわば不自然な形となるために得られる効果である。すなわち、電池内部でガスが発生したとしても、上部フィルム231や下部フィルム232が自然な形に戻りながらガスを貯め込むので、内圧をほとんど上昇させずにガスを貯め込むことができる。
極板間を接着する方法には、極板とセパレータとの間に接着層を設けて接着する方法や、極板とセパレータとを多孔質のものとし、孔中に充填する電解質を、極板の孔中とセパレータの孔中とで連続した固体、半固体またはゲル状として極板とセパレータとを一体化して実質的に接着する方法などが挙げられる。
フィルムにおける凹型成形部の一部が電池内側方向に潰れており、かつフィルムの外側から発電体111を力学的に押さえた構成とすることにより、電池の長期使用により内部にガスが蓄積したとしても、前記電池内側方向に潰れた部分、すなわち図5における232bの部分が元に戻ることにより、内圧を上昇させずに発電体111の極板間の密着を維持したままガスを貯め込むことができる。この効果は、発電体111の横(発電体に対して極板の積層方向以外の方向である少なくとも一部)にフィルムの湾曲部が設けられた場合、すなわち電池を力学的に押さえる板が接触していない面の外装体部分に湾曲部が設けられた場合に得ることができる。
この図8(a)に示すように、下部フィルム332における凹型成形部の発電体111と接しない領域の少なくとも一部(図8(a)の332b)を、減圧封止前の当初、電池外側方向に膨らんだ形状に予め成形することとしてもよい。ガス発生による内圧の上昇によって外装体の減圧封止による内側変形部分が膨れる大きさは、フィルムが伸びない範囲に限定されてしまう。特にラミネートフィルムでは金属箔を含むため殆ど伸びない。そこで、この図8(a)、(b)に示す第2の実施形態のようにあらかじめ電池外側に膨らむ方向に下部フィルム332を伸ばしておくことによって、内圧上昇時のガス受容量を増やすことができる。
また、極板群(極板などが積層されてなる発電体)を粘着テープで積層方向に止める方法を用いてもよい。この方法は、極板群における積層方向以外の方向である部分を含む少なくとも一部に粘着テープを貼りつけて積層方向に止めてから、上述した各実施形態の何れかに示すようにフィルムで密封封止するものである。また、極板を積層方向に押さえることができればこれらの方法に限定されず、他の方法を用いて上述した各実施形態の何れかに示すフィルム外装電池の発電体を極板の積層方向に押さえることとしてもよい。
フィルム(外装体)に凹型成形部が予め形成されていなければ、図5における232bに示すような、十分なガス受容性のある外装体湾曲形状が得られない。フィルムに凹型成形部が予め形成されていれば、上述したように湾曲部232bは減圧封止時に電池内側方向に湾曲し、ガス受容状態では外側方向に凸となり、逆方向に湾曲するためそれだけ多くのガスを貯め込める。この特開平6−111799号公報の例のように、未成形の(凹型成形部が設けられていない)シートを外装体とした場合、減圧状態時にはフィルムはほぼ平面形状であり、ガスが貯まった状態で外装体が外側方向へ凸変形したとしても、その凸変形による容積差は本発明を実施した場合よりはるかに少なく、受容できるガスの量が少なくなるものである。
第4発明で使用可能な電池の各構成要素について詳述する。
リード端子は、材質としてはAl、Cu、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレスなどが使用でき、必要ならば焼き鈍し処理を施されたものでもよい。厚さとしては20μm〜2mmの範囲であることが好ましい。表面が油分等などで汚染されていることは好ましくなく、脱脂処理を行うことが好ましい。またシール材との密着性を高めるため何らかの表面処理を施すことも好ましく、例えば化学的エッチング処理等による粗面化や、部分アミノ化フェノール系重合体と燐酸化合物とチタン化合物とからなる皮膜、燐酸亜鉛系皮膜等による耐食性皮膜下地処理や、チタニウム系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤などによる表面処理などで例示される表面処理を行うことも好ましい。
外装体としては各種金属平板を用いることができ、素材としてはAl、Cu、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレス、スチール系等が使用できる。金属平板の厚さは、例えば20〜1000μmである。第4発明においては、図11〜図14で表されるように、発電要素をスペース効率良く収納するため、深絞り成形された外装体が好ましく用いられる。この場合、例えば板厚30〜500μmのAl板やスチール板の片面または両面に厚さ5〜100μmの熱可塑性樹脂(金属接着性樹脂に相当する)が被覆されたラミネートフィルムあるいはラミネート薄板を用いれば、オイルフリーでの深絞り成形などが可能になり、電池製造プロセスへのインライン加工なども可能になるので好ましい。第4発明においては特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物により両面が被覆された金属平板を少なくとも発電要素収納部分の外装体に用いることが好ましく、中でも特にポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物層の厚さは5〜50μmが好ましく、金属平板は50〜500μmのAl板が好ましい。また金属表面は油分等などで汚染されていることは好ましくなく、脱脂処理を行うことが好ましい。また熱可塑性樹脂との密着性を高めるため何らかの表面処理を施すことも好ましく、例えば化学的エッチング処理等による粗面化や、部分アミノ化フェノール系重合体と燐酸化合物とチタン化合物とからなる皮膜、燐酸亜鉛系皮膜等による耐食性皮膜下地処理や、チタニウム系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤などによる表面処理などで例示される表面処理を行うことも好ましい。
またこの封口構造は、この例のように片側の外装体として両面に樹脂を被覆したラミネート板を使う場合に都合がよい。すなわち、深絞り成形を行うことを考慮すると、プロセスオイルフリー・洗浄不要化の観点から両面樹脂被覆ラミネート板を片側の外装体に用いることが好ましいが、その場合に図16のように下部外装体を折り返さずにシール材を介して単純に2枚を対向させて、その上下にヒーターを押し当ててヒートシールを行うと、上側ヒーターにより電池表面(電池外側)に被覆している樹脂まで溶融させてしまうため、ヒーターに樹脂がこびりつく等の生産上の不都合が生じる。そこで図11〜図14で示すように、熱接着封止時のヒータ当接面の被覆樹脂層が、金属面露出部材で保護されている封口構造にすれば、ヒーターに樹脂面が直接接することがないので、上記の生産上の不都合が生じない。
なお、ラミネートシートの被覆樹脂保護のための金属面露出部材としては、下部外装体と別の金属部材を用意し、上部外装体と下部外装体との熱接着端部を覆うように折り曲げて熱接着させてもよい(図18)。
なお、外装体は、図11〜図16に示したような、複数の部材を封着した構造に限定されず、一枚のシート部材を捲回した構成や、一枚のシート部材を折り返した構成を採用することもできる。
第4発明におけるシール材は芳香族ポリエステル樹脂と、この芳香族ポリエステル樹脂のガスバリア性樹脂とを含んでなることが好ましい。シール材は、図11〜図15におけるシール材203や図16におけるシール材203のように、2層構造や3層構造であってもよく、その場合、一部の層はガスバリア性樹脂を必ずしも含んでいなくても良い。もちろんガスバリア性樹脂含有樹脂からなる単一層であってもよい。
ガスバリア性樹脂とともに使用する芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレートが好ましい。熱溶着性に優れるためヒートシール時に封止性がよく、優れたガスバリア性が得られるからである。
キシリレンジアミン成分とは、ジアミン成分としてメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等のキシリレンジアミンを主成分とするものであり、本発明においてメタキシリレンジアミンを70モル%以上含有するジアミン成分が好ましく、特にメタキシリレンジアミンを80モル%以上含むものがガスバリア性の点から好ましい。
シール材は、芳香族ポリエステル樹脂と、芳香族ポリエステル樹脂のガスバリア性樹脂とからなるガスバリア性樹脂層と、他の樹脂層の積層構造とすることができる。他の樹脂層としては、金属接着性樹脂層を適宜配置することができる。ガスバリア性樹脂組成物からなる層の厚さは、10〜100μmが好ましい。金属接着性樹脂層を有する場合は、金属接着性樹脂層の厚さは5〜50μmが好ましい。金属接着性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等が例示される。ポリエチレンテレフタレート単独樹脂でもよく、別の成分がブレンドされていてもよいがその場合ブレンド量は0〜50重量%であることが好ましい。またエチレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステル樹脂でもよく、その場合エチレンテレフタレート単位以外の共重合成分は0〜50重量%であることが好ましい。ブレンド成分や共重合成分としては例えば、(ポリ)ブチレンテレフタレート、(ポリ)エチレンイソフタレート、(ポリ)エチレンセバケート、(ポリ)エチレンアジペート、ポリ(オリゴ(オキシテトラメチレン)−テレフタレート)等のオキシアルキレン繰り返し単位を有するポリエステルなどが挙げられる。
発電要素204の構成、形態は特に限定されず、例えば正極、負極、セパレータからなり、平板状のものから、単純に2組以上積層したもの、長尺状のものを巻回したもの、さらには扁平に巻回したもの等が用いられる。正極は放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、
(i)LiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2等の金属酸化物、
(ii)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子、
(iii)一般式(R−Sm)n
(Rは、脂肪族、または芳香族であり、Sは、硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2、5−ジメルカプト−1、3、4−チアジアゾール、S−トリアジン−2、4、6−トリチオール等)等の二次電池の正極材料として従来公知のものが使用できる。また、正極に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。これらの結着剤としてはポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が、機能性材料としては電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。負極は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、天然黒鉛、石炭・石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン、石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン、金属リチウムやAlLi等のリチウム合金など、二次電池の負極活物質として従来公知のものが使用できる。
図11は第4発明の一実施形態としての、シート状外装体を有する非水電解質電池の外観を模式的に示す図であり、図12、図13、および図14はそれぞれ図11のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に相当する断面図である。
上述した例のうち、図17および図18の例では、シール材のガスバリア性樹脂は金属接着性機能も有していることが望ましい。他の2つの例ではガスバリア性樹脂層は必ずしも金属接着性機能を有していなくてもよい。
以下、第1発明〜第4発明の詳細について実施例を用いて具体的に説明するが、第1発明〜第4発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質導電性付与材、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の重量比でNMPに混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、正極集電体となる厚さ20ミクロンのアルミニウム箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃で2時間真空乾燥させた。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを未塗布部を含めて矩形に切り出したものを8枚用意した。
一方、アモルファスカーボン粉末、ポリフッ化ビニリデンを91:9の重量比でNMPに混合、分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、負極集電体となる厚さ10ミクロンの銅箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃2時間真空乾燥した。なお、このとき負極層の単位面積あたりの理論容量と正極層の単位面積あたりの理論容量を1:1となるように活物質層の膜厚を調整した。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し真空乾燥した。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを正極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズに、未塗布部を含めて矩形に切り出したものを9枚用意した。
活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするものである。このようにして負極を用意した。
この成形後、帽子のつばのようになっているカップの周囲のフィルムを、10mm幅の辺となるように残してトリミングした。このようにして成形したラミネートフィルムのカップ成形部に、上記の電極積層体を収納した。収納の際には、リード端子引き出し面を上に向け、電極面を水平にした状態の積層体を、シール面を上に向けたラミネートフィルムのカップ内に収納した。トリミングされたフィルムのつば部の2箇所に、リード端子が乗るようにした。
次にトリミングされたフィルムのつば部の上を経由して引き出されているリード端子をフィルムつば部と蓋とで挟むようにして、リード端子引き出し部二箇所をヒートシールし、次いでリード端子引き出し部でない辺(以下長辺A、長辺Bという)のうち一辺(以下長辺Aという)をヒートシールした。なお、リード端子引き出し部のヒートシール条件は、リード端子とラミネートフィルム内アルミ箔との短絡が起きないように注意して設定した。
このようにして作製した電池3個を図1、図2のように積み重ね、金属部材7にリードを溶接することにより図2のように相互接続し、3個直列接続した組電池を得た。図2の上下に従う上下関係で組電池を固定し、この組電池を60℃90%相対湿度環境下に30日間保存する高温高湿試験に供し、リード端子引き出し部からの漏液状況を観察した。漏液判定は、リード端子引き出し部の根元に液体や析出物が認められるかどうかで判定した。電池3個の正負極の計6本のリード端子の1つでも漏液が発生したら「漏液」と判定した。
実施例1において、組電池を図2と上下を逆にして固定し、実施例1と同じ高温高湿試験に供した。
図3(a)の形態の電池を以下のように作製した。
実施例1と同様に電極を活物質未塗布部を含めて矩形に切り出した後、活物質未塗布部の75%を、残りの25%の部分が片側の長辺に寄った耳状となるように切り取った。この耳が、正極と負極とで短辺方向に反対側(長辺方向としては同じ側)に集まるように、セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/・・・・・・/負極/セパレータ、という順番で積層した。次に、正極リード端子となる厚さ0.1mm、幅10mm、長さ50mmのアルミニウム板と、正極8枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。同様に負極リード端子となる厚さ0.1mm、幅10mm、長さ50mmのニッケル板と、負極9枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。なお、正極リード端子および負極リード端子は、上記の溶接接続に先立ち、外装体による封止予定部に予め30μmの厚さのフィルム状の酸変成ポリプロピレンからなるシール材を熱融着しておいた。
このようにして成形したラミネートフィルムのカップ成形部に、上記の電極積層体を収納した。収納の際には、電極面を水平にした状態の積層体を、シール面を上に向けたラミネートフィルムのカップ内に収納した。トリミングされたフィルムのつば部に、リード端子が乗るようにした。長辺方向において同じ側にリード端子が引き出されているので、正負極のリード端子が一つの短辺のつば部(以下リード引き出し辺)に乗るようにした。
次に上記と同じように成形しトリミングしたラミネートフィルムを、上記の発電要素が収納されたカップ成形部の上にシール面を内側に向けて蓋をするように置いた。
次に、長辺Aを下にして傾け、最後の未シール部である長辺Bの隙間から、電極積層体に電解液を注液した。電解液は1mol/リットルのLiPF6を支持塩とし、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶媒(重量比50:50)を溶媒とするものである。注液量は、発電要素の体積の5%に相当する量とした。注液後、減圧脱泡を行った。最後に、真空シール機を用いて減圧状態で長辺Bのヒートシールを行い、電池を完成させた。
このようにして作製した電池3個を、長辺方向において同じ側にリード引き出し辺を揃え、かつ正負極が互い違いになるように裏表を交互として積み重ねて、金属部材によって電池を相互接続して(接続形態は図4と同様)3個直列接続した組電池を得た。この組電池を実施例1と同様に平置きにして固定し、実施例1と同じ高温高湿試験に供した。
以上のようにして用意した実施例1、比較例1、比較例2の組電池をこの順番で高温高湿試験に供した結果を表1に示す。なお、各電池とも、電池内部でガスが発生しているのが確認された。
2つの比較例に対し実施例では漏液が発生しなかった理由としては、実施例では正極リード端子および負極リード端子が経由している封止部の面が極板群の最も上の極板よりわずかに上に位置しているため、電池内で発生したガスが上に集まり、リード端子封止部近傍にガスが溜まり、リード端子封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化が抑制されたためと推測される。
それに対し比較例1、比較例2では、電池内にガスが発生してもリード端子封止部は依然として電解液に浸された状態であるため、剥離劣化が進行して漏液に至ったと考えられる。
スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質導電性付与材、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の重量比でNMPに混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、正極集電体となる厚さ20ミクロンのアルミニウム箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃で2時間真空乾燥させた。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを未塗布部を含めて矩形に切り出したものを8枚用意した。活物質未塗布部はリード端子12への接続予定部とするものである。このようにして、合計の理論容量が3Ahとなる正極を用意した。
次にトリミングされたフィルムのつば部の上を経由して引き出されているリード端子12をフィルムつば部と蓋とで挟むようにして、リード端子を外部へ通電可能に引き出す部分(リード封止部)二箇所をヒートシールし、次いでリード封止部がない辺(以下長辺A、長辺Bという)のうち一辺(以下長辺Aという)をヒートシールした。長辺Aのヒートシールの際には、厚さ5μm、10mm角の正方形のPETフィルムを挟み込むことにより、内圧異常上昇時に剥離してガスを開放する安全弁として機能する部分を設けた。図21の164の部分がそれを指している。
最後に、真空シール機を用いて減圧状態で長辺Bのヒートシールを行い、電池を完成させた。なお、最終シールを行った後、真空シール機の内部の大気開放を行ったところ、大気圧によりフィルムの余剰部分(8mm、3mm、8mm、3mmの部分)が内側に凹んだ。特にカップ成形した側のフィルム(下部フィルム)の凹みが大きかった。その様子を図21に示す。図21は、この実施例2のフィルム外装電池206の成形体側(凹型成形部を設けた側)を上に向けた場合の斜視図である。湾曲部732bとして示した面(部分)が凹んでいる。
このようにして作製した実施例2のフィルム外装電池206を図22のようにしてパックケース(挟持器)106C2に収納した。向きは成形体側(凹型成形部を設けた側)を下に向けた状態で収納した。このパックケース106C2には発電体111の縦横サイズとほぼ同じサイズの押さえ板106C1が設けられており、この押さえ板106C1は外側のパックケース106C2に押さえ板106C1よりも細い柱で取りつけられている。パックケース106C2が有するこの柱は、図22では模式的に2本となっているが、実際には2×2=4本であってよい。パックケース106C2はポリエステル樹脂製、押さえ板106C1はベークライト製である。パックケース106C2の弾性により、押さえ板106C1を経由して、フィルム外装電池106が極板の積層方向に加圧状態で挟持され、発電体111の極板密着性が保たれている。
実施例2と同じフィルム外装電池206を、パックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例1と同様な過充電サイクル試験を行ったところ、フィルムの湾曲部731b、732bが徐々に当初の状態に戻り、200サイクル目あたりからフィルム全体が外側に徐々に膨らんでいった。さらに続けると内圧が上昇し約400サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。湾曲部731b、732bが当初の状態に戻るまでは、充放電サイクル容量はほとんど変化しなかったが、フィルム全体が膨らみ始めると同時に、充放電サイクル容量も徐々に低下していった。安全弁164が働く直前の容量は初期容量の20%まで低下していた。
実施例2の作成工程により、以下のようにしてセパレータと極板とが接着されて一体となった極板積層体を発電体111として有するフィルム外装電池を作製した。1,2−ポリブタジエン(JSR製、商品名RB810、1,2結合の比率90%、融点71℃、平均分子量10数万)が5重量%、ラウロイルパーオキサイドが0.1重量%溶解したトルエン溶液を、スプレーによってセパレータに吹き付け、乾燥させることにより、セパレータの両面に点状にポリマー接着剤層を形成した。顕微鏡で観察すると、面積割合にして2%程度の被覆率でセパレータ表面にポリマー接着剤が付着していた。こうして準備した接着剤塗布セパレータを用いて、実施例2と同様に、極板と共に積層した。次にこの積層体を卓上熱プレス機で熱プレスした。条件は予備加熱80℃5分、その後本プレスを圧力5kg/cm2 、温度80℃、時間5分とした。次に1kg/cm2 に圧力をゆるめ、温度は80℃のまま、12時間加熱し続けた。以上の工程により、正極、負極、およびセパレータが互いに強く接着した極板積層体一体化物が得られた。以下、実施例2と同様にしてフィルム外装電池を作製した。
実施例4において、発電体111の周囲の8mm、3mm、8mm、3mmの部分の余剰を、2mm、0mm、2mm、0mmと、ほとんど隙間が無くなる寸法となるように絞り成形したフィルムを用いた。その他は実施例4と同様にして、正極、負極、およびセパレータが互いに強く接着した極板積層体を有するフィルム外装電池を作製した。発電体111の横にはフィルムの湾曲部がほとんど形成されなかったが、カップ成形ではない方のフィルム(上部フィルム)の天面がリード封止部よりも内側に低くなっていた。
このフィルム外装電池をパックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例2と同様な過充電サイクル試験を行ったところ、フィルムの湾曲部が徐々に当初の状態に戻り、100サイクル目あたりからフィルム全体が外側に徐々に膨らんでいった。さらに続けると内圧が上昇し約200サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。安全弁が働くまで、充放電サイクル容量はほとんど変化しなかった。
実施例5において、極板間を接着せずに実施例2と同様に単に積層した極板積層体を発電体111として有するフィルム外装電池を作製した他は、実施例5と同様に作製した。
このフィルム外装電池をパックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例2と同様な過充電サイクル試験を行ったところ、フィルムの湾曲部が徐々に当初の状態に戻り、100サイクル目あたりから外装体全体が外側に徐々に膨らんでいった。さらに続けると内圧が上昇し約200サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。外装体全体が膨らみ始めると同時に、充放電サイクル容量も徐々に低下していった。安全弁が働く直前の容量は初期容量の30%まで低下していた。
実施例2において、外装体の絞り成形の寸法を、発電体111の周囲の8mm、3mm、8mm、3mmの部分の隙間が無くなる縦横サイズとし、かつ発電体111の厚さと同一の絞り深さとした。また、リード引き出し高さを、フィルムの天面よりわずかに内側となるようにした。その他は実施例2と同様にして、フィルムが内側に湾曲した部分(湾曲部)が存在しないフィルム外装電池を作製した。
このフィルム外装電池を、実施例2と同様にして押さえ板で加圧した状態で、実施例2と同様にして過充電サイクル試験を行ったところ、サイクル初期から外装体全体が外側に徐々に膨らんでいき、45サイクルあたりから電池内圧により押さえ板が外側に押され、パックケース全体がわずかに外側にゆがんだ。50サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。押さえ板が外側に押されはじめた45サイクルあたりから充放電サイクル容量が急激に低下した。
実施例4において、外装体の絞り成形の寸法を、発電体111の周囲の8mm、3mm、8mm、3mmの部分の隙間が無くなるような縦横サイズとし、かつ発電体111の厚さと同一の絞り深さとした。また、リード引き出し高さを、外装体の天面よりわずかに内側となるようにした。その他は実施例4と同様にして、極板間が接着され一体化した極板積層体を持ち、かつ外装体が内側に湾曲した部分が存在しないフィルム外装電池を作製した。
このフィルム外装電池を、実施例4と同様にパックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例2と同様にして過充電サイクル試験を行ったところ、サイクル初期から外装体全体が外側に徐々に膨らんでいき、70サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。安全弁が働くまで、充放電サイクル容量はほとんど変化しなかった。
実施例2と比較例3とを比較すると、フィルムにガスを収容できる余裕部分が形成されている場合は形成されていない場合と比べて、安全弁が働くまでのサイクル数が大幅に多く、すなわちガス発生から内圧上昇に至るまでの期間が長いことがわかる。このことから、そのフィルム外装電池に一時的な異常がもし起こって内部でわずかずつガスが発生したとしても、そのガスの蓄積余裕量が大幅に向上していることがわかる。また、比較例3ではガスが発生した際に、押さえ板を外側に押し広げてパックケースがゆがむほどの膨れが発生し、極板を積層方向に押さえる力が消失して極板密着状態が損なわれたことによるサイクル容量低下が起こっているが、実施例1では最後まで極板密着状態が維持され、容量低下がほとんど起こらなかった。
実施例5では、発電体111の横の部分(発電体に対して積層方向以外の方向である少なくとも一部)にはガスを収容できる余裕部分がほとんどないが、天面、すなわち上部フィルムに減圧封止によって形成されている内側変形部分が余裕部分となり、その内側変形部分が元に戻ることによりガスを収容することができたため、200サイクルまで持ちこたえたと考えられる。また実施例4と実施例5とを比較すると、発電体111の横の部分(発電体に対して積層方向以外の方向である少なくとも一部)にガスを収容できる余裕部分が有るか無いかで、持ちこたえられるサイクル数が異なることがわかる。
実施例5と実施例6とで比較すると、極板を接着した場合としなかった場合で、電池外側からパックケースによる極板の積層方向への加圧を行わない場合のガス発生時の特性悪化度合いが異なることがわかる。
なお、これらの実施例の結果は、電池通常使用範囲外の電圧を故意に印加した場合の結果ではあるが、電池の実際の使用において、電池の制御回路の一時的な制御エラーや、瞬間的な大電流発生、電池の冷却不足などによる突発的・一時的な高温発生などによる微量のガス発生の蓄積が起こった場合も、上記の実施例における考察と同様なことが言えると考えられる。
また、上述した一連の実施形態では、フィルムが上部フィルムと下部フィルムからなることとして説明しているが、上記した電池本体を密封封止できればこの2枚であることに限定されず、他の枚数であってもよい。たとえば、1枚のフィルムを180゜折り返して用いてもよい。
スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質導電性付与材、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の重量比でNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、正極集電体となる厚さ20ミクロンのアルミニウム箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃で2時間真空乾燥させた。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを未塗布部を含めて矩形に切り出したものを8枚用意した。活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするものである。このようにして、合計の理論容量が3Ahとなる正極を用意した。
次に所定のサイズの矩形の厚さ100μmのアルミニウム板を、上記の発電要素が収納されたカップ成形部の上に蓋をするように置いた。このアルミニウム板のサイズは上記のカップ成形ラミネートフィルムよりも横幅が左右10mmずつはみ出る大きさとした。このアルミニウム板の横部分を左右10mmずつ折り返し、上記のカップ成形ラミネートフィルムを挟みこんだ。その際に、シール材を挟みこんだ。その様子は図12に示される通りである。なお、図では、実際の配置と上下方向が逆となっている。
なお、MXナイロンとPETをブレンドした樹脂膜は、両者を溶融混練してペレットを作製し、このペレットから、一軸押出機を用いTダイ法により得たものを用いた。
この状態で、常温で電池を満充電状態にした後、周囲の温度を徐々に210℃まで昇温していったところ、実施例7の電池は、封口が維持され、いずれの箇所からも液漏れが起こらなかった。この結果は、シール材が優れたガスバリア性および耐熱性を有するため、減圧封止状態が良好に維持されたことによるものと考えられる。
また、図20と電池の上下を逆にして(カップ成形ラミネートフィルム側を下にして)同様の実験を行っても、結果は同じであった。
ガスバリア性樹脂として、MXナイロンを用いる代わりにポリエチレンナフタレートを用いた他は実施例7と同様にして電池を作製し、実施例7で述べた昇温漏れ試験を同様に行ったが、電池の上下に関わらず、いずれの箇所からも液漏れが起こらなかった。この結果は、シール材が優れたガスバリア性および耐熱性を有するため、減圧封止状態が良好に維持されたことによるものと考えられる。
カップ状に絞り成形するラミネートとして、厚さ50mmのアルミニウム箔の両面に、厚さ8μmの酸変成ポリプロピレンをラミネートしたものを用い、リード端子の封止予定部に熱接着させるシール材および上下外装体同士のヒートシール時に挟み込むシール材として、ポリプロピレン膜30μmと、酸変成ポリプロピレン膜8μmとを熱融着させたものを用いた以外は、実施例7と同様にして電池を作製した。
また、図20と電池の上下を逆にして(カップ成形ラミネートフィルム側を下にして)同様の実験を行ったところ、約170℃の温度でリード端子封止部からわずかながらガスが漏れが発生した。
実施例7、実施例8、比較例5で用いたシール材(それぞれPET/MXナイロンブレンド膜、PET/ポリエチレンナフタレートブレンド膜、ポリプロピレン/酸変成ポリプロピレン積層膜)の酸素透過係数を測定したところ、その比は1:3:80であった。測定方法は、ASTM D3985、JIS K7126に準拠した。
以上の結果から、比較例5の電池は170℃以上の温度に晒されると封口が維持できないのに対し、実施例7、8の電池では200℃以上の温度に晒されても封口が維持されることがわかる。また、シール材のガスバリア性も、比較例5に比べて実施例7、8では著しく向上しており、比較例5の電池よりも実施例7、8の電池の方が、電池の減圧状態が大幅に長期的に維持されると考えられる。
2:カップ成形外装体
3:極板群
4:溶接部
51:正極リード端子
52:負極リード端子
6:封止部
61:リード封止部
7:接続手段
8:電解液
9:隙間
99:ガス膨れ部
L1:内部空間長さ
L2:カップ成形外装体天面長さ
101:フィルム外装電池
111:発電体
112:リード端子(電極リード)
112a:溶接部
113:フィルム(外装体)
113a,143a,153a:封止部
231,331,531:上部フィルム(上部外装体)
231b:湾曲部
232,332,532,732:下部フィルム(下部外装体)
232b,332b,532b,732b:湾曲部
101C,106C1:押さえ板
106C2:パックケース(挟持器)
143a’:封止凸部
153a’:部分融着部
164:安全弁
201:上部外装体
211:金属接着性樹脂層
212:金属層
202:下部外装体
203:シール材
231:金属接着性樹脂層
232:ガスバリア性樹脂層
204:発電要素
205:リード端子
206:シールアタッチメント
207:バネ性クリップ
208:パックケース
281:押さえ板
209:金属部材
Claims (8)
- 金属板の少なくとも一方の面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属部材と、金属面が露出した金属面露出部材と、がシール材を介して封着された外装体を有し、前記樹脂被覆金属部材に設けられた凹部に発電要素が収納された非水電解質電池であって、前記樹脂被覆金属部材の縁部が、前記金属面露出部材の折り返し部により覆われたことを特徴とする非水電解質電池。
- 請求項1に記載の非水電解質電池において、前記樹脂被覆金属部材の少なくとも一方の面が、金属接着性樹脂層により被覆されたことを特徴とする非水電解質電池。
- 請求項2に記載の非水電解質電池において、前記金属接着性樹脂層が、エチレンテレフタレート単位を含む共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする非水電解質電池。
- 請求項1乃至3いずれかに記載の非水電解質電池において、前記シール材は、芳香族ポリエステル樹脂と、ガスバリア性樹脂とを含んでなり、該ガスバリア性樹脂は、ポリアルキレンナフタレートまたは芳香族ポリアミドであることを特徴とする非水電解質電池。
- 請求項4に記載の非水電解質電池において、前記ガスバリア性樹脂がポリエチレンナフタレートであることを特徴とする非水電解質電池。
- 請求項4に記載の非水電解質電池において、前記芳香族ポリアミドが、キシレン基またはキシリレン基を含有するポリアミドであることを特徴とする非水電解質電池。
- 請求項4乃至6いずれかに記載の非水電解質電池において、前記芳香族ポリエステル樹脂が、ポリアルキレンテレフタレートであることを特徴とする非水電解質電池。
- 請求項1乃至7いずれかに記載の非水電解質電池において、前記外装体に接続するリード端子をさらに有し、該リード端子の引き出し部が前記シール材により覆われたことを特徴とする非水電解質電池。
Priority Applications (1)
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