JP5354084B2 - 非水電解質電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解質電池に関するものである。また、自動車、バイク、自転車などの移動車輌に据え付ける場合や、無停電電源や分散型電力貯蔵システムなどに用いられる据え置き設置型の電源に用いる場合のように、電池の上下方向が常に一定に保たれ、あるいはシール性が良好な非水電解質電池に関する。
従来、熱融着性のフィルムを外装体として用いた電池としては、金属層および熱融着性樹脂層とが積層されたフィルム、すなわちラミネートフィルムにより、極板群を被包し、2本の電極取り出しリード端子を引き出した状態でこれを挟むようにしてラミネートフィルムの熱融着性樹脂層同士を向かい合わせて熱融着することにより密封封止した構成のものが知られている。この種の電池は薄型化が容易であるというメリットがあり、実際、開示されているもののほとんどが、次に例示するように扁平な形状をしている。
例えば特許文献1(特開平10−55792号公報)では、フィルム外装型の電池において、フィルム接着部の一部に剥離強度の弱い部分を設けることにより、ガスの発生で内圧が異常上昇したときに、この剥離強度の弱い部分からガスを開放する方法が提案されている。
また、特許文献2(特開2000−133216号公報)には、アルミラミネートフィルムに矩形状の絞り成形が施され、発電要素を収納する空間を形成することにより余分なスペースを最小限とした電池が開示されている。
また、特許文献3(特開平11−260408号公報)には、ユニットセルを外装体で外装した後で減圧封止することにより、大気圧を利用して極板密着性を維持する方法が記載されている。
また、特許文献4(特開2000−100404号公報)では、フィルムで封口した電池を電池収納容器に収納することで、収納された電池を圧迫する電池パックが開示されている。
また、特許文献5(特開平6−111799号公報)には、極板群の周辺に空間部分を保持させて合成樹脂製の気密シートで包覆して密封した電池が開示されている。
この種の電池は外形形状の裏表に着目すると、以下の2タイプに分けられる。すなわち、極板群を収容するため予め成形部を設けたフィルム外装体を、電池の裏表の両方に用いるもの(図23(a))、あるいは、このような成形部を有さない平面状もしくは袋状のフィルムで極板を覆ったものが一つのタイプ(以下Rタイプ)であり、もう一つは成形部を有さない平面状のフィルムと成形部を有するフィルムを対向させて極板群を収容して貼り合わせたもの(図23(b)、以下NRタイプ)である。Rタイプは電池の裏表がないタイプであり、NRタイプは裏表があるタイプである。
またこの種の電池のリード端子の引き出し方に着目すると、これまでに開示されてきた構成のほとんどは、図23のように一つの端辺から同じ方向に向けて正極リード端子および負極リード端子を引き出した形となっている(以下片側引出しタイプという)。
またこの種の電池の多くは、極板群から成る発電要素をラミネートフィルム等の薄型外装体に収納しており、電池の薄型小型化に有利な構造となっている。ラミネートフィルムは、金属箔およびシール材としての高分子樹脂層が積層された構成となっており、例えば300℃以下のヒートシールによってシール材を溶着させ内容物を密閉することが可能であり、レーザー溶接などの金属溶接を必要としない新しいタイプの電池外装体として注目されている。
ラミネートフィルムを用いた電池は、従来外装体の主流であった成形金属缶を用いた場合と比べて極めて低コストかつ高能率で生産できるという利点を有する。金属缶の成形の場合は、潤滑油を用いるため多量の洗浄液を用いて洗浄する必要があり、工程時間が長くなるが、ラミネートフィルムは高分子樹脂層を有するため、深絞り成形時にダイスやポンチとの摩擦が緩和され、潤滑油を必ずしも必要としないため、工程時間を短縮でき、インライン成形が可能となる。すなわちロール状に巻き取られた状態からラミネートフィルムを順次引き出してカップ状に深絞り成形を行い、その直後に洗浄工程を経ずに成形部への発電要素の収納工程に移ることが可能で、生産効率が極めて良い。
他の外装体を用いた場合と同様、ラミネートフィルムを外装体とする電池においても、電池内部への外気の侵入や電池内の電解液の漏洩が起きないようシール部分の封止信頼性が確保されることが要求される。特に非水電解液を含む電池(以下非水電解質電池とも称する)ではシール信頼性は重要な問題である。シール不良があった場合、外気の成分により電解液が劣化し、電池性能が著しく劣化する。
また特に、ラミネートフィルムを外装体とする電池では一般に減圧封止を行うことが多く、封止不良により外気が侵入すると減圧状態を保てなくなるという不都合が生じる。
この種の電池の外装体のシール材に着目すると、従来、電池用ラミネートフィルムとして提案されてきたもののほとんどは、内面のシール材としてポリオレフィン系の材料を用いている。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの酸変成物である。ポリオレフィン系材料が多用されている理由の一つは、他の種類の樹脂よりも概して比較的ガスバリア性が良く、かつ非水電解液に対する耐性があるためである。
特開平10−55792号公報 特開2000−133216号公報 特開平11−260408号公報 特開2000−100404号公報 特開平6−111799号公報
上に述べたようなフィルム外装型電池においては、リード端子引き出し封止部が他の部分と比べて封止劣化しやすく、対処が不十分であると液漏れがこの場所から起こりやすいとしばしば言われてきている。電解液が漏れると電池周囲が汚染されたり、電池周辺回路に液が飛散し、回路の誤動作などの不具合を引き起こす恐れがある。本発明者らの検討によれば、リード端子引き出し封止部の封止劣化は、外装体フィルムの熱融着性樹脂層とリード端子表面との接着界面が電解液成分による攻撃を受けることにより促進されることがわかった。
自動車、バイク、自転車などの移動車輌に据え付ける場合や、無停電電源や分散型電力貯蔵システムなどに用いられる据え置き設置型の電源として電池を用いる場合、常に電池には一定の向きの重力が加わることとなる。本発明者らの検討によれば、NRタイプの電池を、成形外装体側(以下表側という)を上に向けて使用した場合と、下に向けて使用した場合とで比較すると、長期使用や過酷な環境で使用すると、上に向けた場合の方が漏液しやすいことがわかった。
それは以下に述べるメカニズムを考えている。電池内に存在する電解液は極板間だけでなく、電池内部側から見たリード端子封止部近傍にも存在し、リード端子/外装体接着界面(後述の図24のAの部分)を電解液が攻撃する。電池が規格範囲外の高温で使用されたりすると、その攻撃が接着劣化を引き起こし、剥離を進行させることがある。またさらに規格範囲外の電圧が印加されたりすると、電解液溶媒の電気分解などによりガス種が発生し、内圧が上昇することがある。リード端子封止部近傍に電解液が存在する状態で内圧が上昇すると、接着界面に液圧がかかり、接着劣化や剥離進行を促進する恐れがある。NRタイプの電池を、表側を上に向けて使用した場合、電池内にガスが発生した際に、ガスは上に集まってしまうため、リード端子封止部近傍は依然として電解液で濡れたままとなり、上述した接着界面への液圧上昇、接着劣化、剥離進行を促進することにつながる。
前記したガス発生は、上記した電解液溶媒の電気分解以外にも、充電時に規格範囲外の電圧が印加されたり、規格範囲外の温度環境で使用されるなどした場合等の異常発生時に起こることがある。基本的には規格内で使用してガスを発生させないようにすることが理想であるが、電池の制御回路の一時的な制御エラーや、瞬間的な大電流発生、電池の冷却不足などによる突発的または一時的な高温発生などにより、通常使用のつもりであっても電池の使用用途によっては、電池内部での微量のガス発生の原因を完全に0にすることが困難となる場合がある。
上記のように、基本的には電池内部でガスを発生させないようにすることが理想ではあるが、もし電池内部で微量であってもガスが発生すると、長期にわたる使用のうちにガスが蓄積されていくことがある。こうして電池内部にガスが蓄積されると、発電体を被包するフィルムによる密封封止が解けたり、外装体の設計次第ではガスの圧力により破裂したりといった事態を引き起こす恐れもある。使用される発電体が外気と接触すると性能が低下する可能性を有する場合には、その性能低下を引き起こしてしまう問題もある。この性能低下は、状況によっては電池が使用不能に陥ったり、充放電特性が急激に悪化したりすることもあるものである。
こうした観点から上記したそれぞれの従来技術を見てみると、以下に示すような問題点を挙げることができる。
特許文献1で提案されているものは、ガス発生時に暴発などをさせずに「安全に電池を死なせる」方法である。すなわち、発電要素が外気に触れると性能が低下する場合であっても、電池のフィルム接着部を開放して外気にさらしてしまうものである。この方法では、電池使用中のガス発生が微量でも、それが長期にわたった場合内圧上昇とともにガスが蓄積し、内圧が閾値を超えると、通常使用時であっても安全弁を作動させてしまい、ガス放出の後開口した安全弁から外気が侵入する。非水電解質電池の場合は水分を含む外気が電池内部に侵入すると、性能が著しく劣化して使用不能状態に至る。前記の閾値がもし低い値であったなら、短い期間で電池が自動的に使用不能状態に至ってしまう。
一方、特許文献2に記載されている電池には安全弁が設けられていない。この場合、封止が良好であれば内部でガスが発生してもかなりの内圧になるまで持ちこたえると考えられる。しかしながら、特許文献2での提案は、体積効率を向上させることを目的として、発電体の形(サイズ)に外装体の成形形状を合わせることで、発電体と外装体間の隙間を最小限にすることを目的とするものであり、発電体の体積と外装体の成形された容積はほぼ同じとなる。図25を用いて説明すると、図25(a)に示すように電池内部に余裕空間がほとんど存在しない構成となり、ガスが発生するとすぐに外装体が図25(b)に示すように太鼓腹状に変形することとなる。外装体材質はアルミラミネートであるため弾性変形による伸びをほとんど示さず、従ってわずかずつでもガスが発生し続けると内圧が上昇し続けることとなる。こうして発生した高い内圧は、最終的には図25(b)に示すように外装体封止部を引き剥がそうとする強い力Fを引き起こすこととなり、ついには外装体開裂に至ることとなる。すなわちこの例の非水電解質電池を長期使用すると、微量のガスが少しずつ発生した場合、内圧が上昇しやすいためにガスの蓄積による外装体開裂が起こりやすく、上記のような使用不能状態を引き起こすことがある。
また、特許文献3には、減圧封止することにより大気圧を利用して極板密着性を維持することが記載されているが、電池内部に余裕空間がないため、ガスが発生するとすぐに外装体が上記のように太鼓腹状に変形し、大気圧による押さえ力が消失し極板密着性が容易に損なわれてしまう。つまりこの例の電池を長期使用すると、微量のガスが少しずつ発生した場合、極板密着性が損なわれることによる電池性能劣化が起こりやすくなる。
また、特許文献4の例のように、電池パックによる力学的な押さえを行ったとしても、上述したようにガスが発生し続けて内圧が上昇すると、極板の積層方向に対しても外装体が太鼓腹状に膨張しようとする力が働いてしまい、パックケースを押し広げてしまうため、やはり極板密着性が維持できないおそれがある。
また、特許文献5に記載されている密閉型蓄電池は、未成形の(凹部が設けられていない)気密シートを利用したものである。外装体を凹型などの内部容積を膨張させるよう変形可能な形に予め形成しているのでなければ、極板の積層方向における密着を維持した上での十分なガス受容性をもたらす外装体湾曲形状が得られない。すなわち、内部容積を極板の積層方向以外の方向へ膨張させるよう変形可能に形成されたものでなければ、ガスが発生して蓄積された場合に極板の積層方向における密着を維持できないおそれがある。
さらに、組電池においては、従来次に述べるような課題があった。移動車輌のパワー供給源や据え置き電源装置用電池などの場合、素電池を積み重ねたり並べたりして相互接続した組電池を用いることが多い。その際、電池搭載スペースの形状的な理由や、種々の理由により、素電池の形状を扁平なものとし、向きを水平として積み重ねて設置する必要性が生ずることがある。また、扁平な形状で組電池を形成する際、扁平面を対向させて積み重ねると隣接する電池同士の端子が近接するため電気的な接続がしやすく、好都合である。ここで、前述したような扁平形状のフィルム外装電池の個々を水平な向きとして上下方向に積み重ねた場合、リード端子封止性の観点からは、次に述べるような問題点が生じる。すなわち、積み重ねられ間に挟まれた電池は体積的に膨れることが困難になり、ガスが発生すると内圧が上昇しやすくなるため、対処が不十分であると上述したメカニズムによるリード端子封止部劣化が起こりやすくなる。
以上述べたように、フィルム外装電池において、リード端子引出し封止部からの電解液の漏液を防止する封止信頼性(以下、リード端子封止性、あるいは耐漏液性)の向上が望まれていた。また、これまでに提案されてきたフィルム外装電池では、積み重ねて組電池とする際に、そのリード端子封止性において不利な影響が働いていた。
一方、従来知られている扁平形状のフィルム外装電池の個々を水平な向きとして上下方向に積み重ね、それらを直列接続して組電池を構成する場合、以下に述べるような問題点が生じる。
積み重ねた電池を直列に接続しようとする場合、一つの電池の正極リード端子と、接続しようとするもう一つの電池の負極リード端子とが隣接するように積み重ねることが好ましい。なぜなら、リード端子同士を直接接触させて接続することや、そうでなくても充分短い長さの導電体で接続することが可能になるので、電池間の接続抵抗を極力少なくすることができ、パワー出力の損失を極力少なくすることができるためである。
ここで、前述のNRタイプかつ片側引出しタイプの電池を上下方向に積み重ねて直列接続する場合を考え、前述した直列接続に際して好ましいリード端子位置関係にする方法を考えてみる。
図26にその様子を一つの例として示す。図26(a)は、成形外装体側(以下表側という)と平面の外装体の側である反対側(以下裏側という)の上下を互い違いにして積み重ねたものである。この場合、電池の表側から見て正極リード端子(負極リード端子)が左側(右側)に引き出されている電池のみを用いることができる。一方、図26(b)は、全ての電池の表側を下向きにして積み重ねた場合であるが、この場合、表側から見て正極リード端子(負極リード端子)が左側(右側)に引き出されている電池と、その逆(正極右、負極左)の電池を交互に積み重ねることになる。
ここで電池を量産することを考えた場合、正極/負極リード端子の左右が異なる2タイプの電池を作り分けるとなると、製造装置が2ライン必要となったり、1ラインの装置設定を手動または自動で随時変えて使い分けられるようにしなければならないなどの装置コスト上の問題や、2タイプの電池を互いに取り違えやすいといった製品管理上の問題があるので、なるべく避けることが好ましい。その観点からは、図26(b)のような形態は困難を伴うということが言える。
一方、リード端子封止性の観点からは、図26(a)の形態では、ガスが発生してもガスが上にたまりリード端子封止部近傍に電解液が存在したままとなってリード端子封止性に不利な影響のある向きの電池が必ず存在することになる。
以上述べたように、これまでに提案されてきたフィルム外装電池では、積み重ねて直列接続する際に、接続抵抗低減性、量産利便性、および耐漏液性の全てを同時にベターとなる方に選択することができなかった。
更に前述したラミネートフィルムのシール材では、これまでに使われていたポリオレフィン系樹脂はいずれも融点が200℃以下であり、例えば電池が200℃以上の熱に晒されたり、電池内部から200℃以上の熱が発生した場合、シール材が溶融し、封口を維持することが困難であった。
単に融点の高い樹脂をシール材として用いる構成はこれまでにも開示されており、シール材の例示としてポリエチレンテレフタレートを挙げている公報もある(特開2000−353500号公報等)。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートは必ずしも充分なガスバリア性を有しないため、ラミネートフィルムを利用する利点を充分に享受することが困難となる。ラミネートフィルムを用いることによる利点の一つは、減圧封止により発電要素が大気圧によって加圧され、この結果、電極間密着性が向上することにある。ポリエチレンテレフタレートフィルムのように、充分なガスバリア性を有しないシール材を用いた場合、外気が侵入して長期的には徐々に封止内部の減圧度が失われ、発電要素加圧力が減少して電極間密着性が悪化し、電池特性劣化を引き起こす場合がある。
外装体として金属缶を用い、レーザー溶接などによって金属を直接溶接させて封止した電池の場合は、従来のラミネートフィルム外装と比べてシール耐熱性に対する懸念は少ないが、局所的な金属溶接によって完全な密閉封止を行うことは高度な技術を必要とするため、ヒートシールタイプの外装体の場合に比べて封止不良発生の防止にはコストがかかる。またとりわけ上述したように、深絞り成形時の洗浄工程が、缶タイプでは必要、ラミネートフィルムでは不要であり、生産効率の点でもラミネートフィルム外装タイプは有利である。
以上述べたように、ラミネートフィルムをヒートシールしてなる外装体を用いた電池は、缶タイプよりも生産能率の点で優れる反面、缶タイプに比べて耐熱性に劣るため、その改善が望まれていた。
本発明の目的は、ヒーターへの樹脂のこびりつきを防止し生産性の向上を図るとともに、優れたシール性を安定的に実現することができる非水電解質電池を提供することにある。
本発明は、金属板の少なくとも一方の面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属部材と、金属面が露出した金属面露出部材と、がシール材を介して封着された外装体を有し、前記樹脂被覆金属部材に設けられた凹部に発電要素が収納された非水電解質電池であって、前記樹脂被覆金属部材の縁部が、前記金属面露出部材の折り返し部により覆われたことを特徴とする非水電解質電池(以下第4発明という)である
なお、参考技術は、第1に第1外装体要素と、極板が積層されてなる発電体を収容しかつ電解液を有するカップ状成形部を有する第2外装体要素を、前記カップ状成形部より外側で互いに貼り合わせて封止され、前記第2外装体要素が下側に位置するように据え付けられた据付型電池において、前記両外装体の前記貼り合わせ封止部に位置する正極リード端子および負極リード端子の少なくとも一方の高さが前記極板群の最も上の極板の高さより低くないことを特徴とする単位電池(以下第1発明という)であり、第2に第1外装体要素と、極板が積層されてなる発電体を収容しかつ電解液を有するカップ状成形部を有する第2外装体要素を、前記カップ状成形部より外側で互いに貼り合わせて封止され、前記第2外装体要素が下側に位置するように据え付けられた据付型電池において、電流取り出しのための正極リード端子および負極リード端子が前記貼り合わされた前記両外装体の一つの端辺と、対向する逆側の端辺とからそれぞれ引き出されることを特徴とする単位電池(以下第2発明という)であり、第3に極板が積層されてなる発電体に電極リードを設けた電池本体を、該電極リードが外部と通電可能となるよう露出させてフィルムで密封封止したフィルム外装電池であって、前記密封した内部容積を前記極板の積層方向以外の方向へ膨張させるよう前記フィルムを変形可能に形成したことを特徴とするフィルム外装電池(以下第3発明という)である
以下本発明を詳細に説明する。
第1発明の電池においては、その外形は通常扁平な形状であり、扁平面を水平にして据え付られ、極板群の極板面は前記扁平面と平行であり、前記正極リード端子および負極リード端子が経由している封止部の面は、扁平面と略平行であってかつ極板群の最も上の極板と略同じ高さもしくはそれより上に位置している。
従ってこの電池内にガスが発生した際、ガスは上に集まるため、リード端子封止部近傍にガスが溜まることになり、リード端子封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化が防止できる。
第2発明の組電池では、電流取り出しのための正極リード端子および負極リード端子が前記両外装体の一つの端辺と、対向する逆側の端辺とからそれぞれ引き出されている。従ってこれらの単電池を、隣接する単電池の前記正極リード端子および負極リード端子が逆方向を向くように上下方向に積み重ねると、接続すべき正極リード端子および負極リード端子が近接し、容易に相互に電気的に接続でき、前記複数の単電池から成る電池群としての据付型組電池が得られる。
この構成の組電池では、上下方向に複数の電池を積み重ね、直列接続する際、従来知られている片側引出しタイプの電池のようにリード端子の極性の配置が逆の2種類の電池を使わずとも、1種類のみの電池を、裏表の上下をすべて揃えた状態で、1段ずつ交互にリード端子の極性が反対向きとなるように積み重ねることによって、一つの電池の正極リード端子と、接続しようとするもう一つの電池の負極リード端子を隣接させることができる。こうして、低抵抗で電池間を直列接続することができ、相互接続された電池群のすべての電池を、極板群収納部分を下に向けた状態にできることから全ての電池に対してベターな耐漏液性を付与することができる。
こうして、積み重ねて直列接続する際の接続抵抗低減性、量産利便性、および耐漏液性を同時に良好とすることができる。
前記第3発明は、発生するガス圧で外装体要素であるフィルムを変形できるようにして、内部でガスが発生して蓄積された場合であっても、成形時に電池内側方向に変形させたフィルムが元に戻ることにより、発電体に対して極板の積層方向以外の方向である部分にガスを貯め込むことができ、積層された極板の間の密着を維持し易くするとともに内圧を上昇しにくくさせることができる。
この第3発明の変形例として、単電池を積み重ねた組電池の隣接する2つの単電池のうち下側の電池のリード端子封止部近傍の第1外装体要素の上部の少なくとも一部に、前記リード端子封止部近傍の第1外装体要素が上側に変形可能とするための隙間が存在するようにする形態がある。
この構成の組電池では、隙間が存在するために、電池内部でガスが発生してもリード端子封止部近傍の第1外装体要素が上側に変形することが可能となり、その内側にガスを収容することが可能となって、リード端子封止部周囲にガスが溜まりやすくなり、リード端子封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化が防止できる。
第4発明は金属板の少なくとも一方の面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属部材と、金属面が露出した金属面露出部材と、がシール材を介して封着された外装体を有し、前記樹脂被覆金属部材に設けられた凹部に発電要素が収納された非水電解質電池であって、前記樹脂被覆金属部材の縁部が、前記金属面露出部材の折り返し部により覆われたことを特徴とする非水電解質電池を提供するものである。
この本発明によれば、発電要素を収納する部材として樹脂被覆金属部材を用いているため、発電要素収納のための凹部を所望の寸法に容易に形成することができる。このため、優れた生産性および品質安定性の電池を得ることができる。また、樹脂被覆金属部材を用いた場合に懸念されるヒーターへの樹脂のこびりつきの問題に関しても、縁部表面を金属面露出部材の折り返し部により覆うことによって解消しており、生産性の向上が図られるとともに、優れたシール性が安定的に実現される。さらに、縁部表面を金属面露出部材の折り返し部により覆う構造により、電池の内圧が上昇した際に封口が破れにくくなる。
更に第4発明の実施の形態は前記外装体の全部又は一部を構成するフィルムを特定するもので、本発明者らは、前述の電池等で使用可能な外装体の内面層やヒートシール部に用いる新しいシール材を、耐電解液性、耐熱性およびガスバリア性といった観点から鋭意検討した結果、特定の材料を用いることにより、第4発明の実施の形態に至ったものである。
第4発明の実施の形態によれば、発電要素および該発電要素を収納する外装体を備え、該外装体の少なくとも一部がシール材を介して封着された非水電解質電池であって、前記シール材は、芳香族ポリエステル樹脂と、ガスバリア性樹脂とを含んでなることを特徴とする非水電解質電池が提供される。
この電池は、外装体の少なくとも一部がシール材を介して封着された構成を有しており、生産能率の良いヒートシールタイプの外装体を採用することができる。また、高い耐熱性と良好な成形性を有する芳香族ポリエステル樹脂と、ガスバリア性樹脂とを含むシール材を用いているため、高温に晒されても封口が維持され、かつ、減圧状態が長期的に維持される長寿命の非水電解質電池を実現することができる。
なお、第4発明の実施の形態においては、外装体の少なくとも一部がシール材を介して封着されるが、その他の部分については、他の手段により封着されていてもよいし、上記シール材とは異なる種類のシール材により封着されていてもよい。なお、外装体の封着部すべてにシール材が配置された構成とすれば、より信頼性の高い電池が得られる。
上記非水電解質電池において、外装体の縁部表面が金属からなる構成を採用することができる。外装体の縁部はヒートシール時において加熱部材の当接面となるが、この縁部表面を金属で構成することにより、ヒーターへの樹脂のこびりつきを防止し生産性の向上を図るとともに、優れたシール性を安定的に実現することができる。
この非水電解質電池において、前記樹脂被覆金属部材の少なくとも一方の面が、金属接着性樹脂層により被覆された構成とすることができる。金属接着性樹脂層としては、エチレンテレフタレート単位を含む共重合ポリエステル樹脂等を用いることができる。また、この非水電解質電池において、シール材を、上述したように、芳香族ポリエステル樹脂と、ガスバリア性樹脂とを含んでなる構成とすることができる。
第4発明の非水電解質電池において、外装体に接続するリード端子をさらに有し、該リード端子の引き出し部がシール材により覆われた構成を採用することができる。リード端子は通常、複数設けられるが、これらすべてについて、その引き出し部をシール材により覆い、封口した構成を採用することが望ましい。リード端子の引き出し部は、液漏れやガスの流出が生じやすい箇所であるため、この箇所をシール材により覆うことによって、一層長寿命化を図ることができる。さらに、このシール材を、上述したように、芳香族ポリエステル樹脂と、ガスバリア性樹脂とを含んでなる構成とすれば、電池内部の減圧状態をより長期的に維持し、さらなる長寿命化を図ることができる。なお、リード端子引き出し部を覆うシール材と、その他の箇所において外装体を封着するのに用いられるシール材とは、同一材料で構成されていても異なる材料で構成されていてもよい。
第1発明の構成とすることによりリード端子封止部の電解液濡れがさらに効果的に抑制でき、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化がさらに効果的に防止できる。
更に第2発明よれば、上下方向に複数の電池を積み重ね、直列接続する際、従来知られている片側引出しタイプの電池のようにリード端子の極性の配置が逆の2種類の電池を使わずとも、1種類のみの電池を、裏表の上下をすべて揃えた状態で、1段ずつ交互にリード端子の極性が反対向きとなるように積み重ねることによって、一つの電池の正極リード端子と、接続しようとするもう一つの電池の負極リード端子を隣接させることができる。こうして、低抵抗で電池間を直列接続することができ、相互接続された電池群のすべての電池を、極板群収納部分を下に向けた状態として耐漏液性を付与することができる。
こうして、積み重ねて直列接続する際の接続抵抗低減性、量産利便性、および耐漏液性を同時に良好とすることができる。
次に第3発明のフィルム外装電池及びその電池に用いる挟持器並びに電池製造方法によれば、フィルムにより密封した内部容積を極板の積層方向以外の方向へ膨張させるよう、フィルムを変形可能に形成したことにより、内部でガスが発生した場合であってもそのガスを極板の積層方向以外の方向へ収容でき、この収容により内圧を上昇しにくくさせることができるとともに、内部容積が極板の積層方向へ膨張しようとする圧力が働くことを抑制することができる。こうして内圧を上昇しにくくさせることにより安全性に優れるとともに、内部容積が極板の積層方向へ膨張することを抑制することにより極板密着性が長期間維持され、電池特性が長期にわたって安定な電池を得ることができる。
また、第3発明によれば、フィルムにおける発電体に対して極板の積層方向以外の方向である少なくとも一部に凸型を形成してから、その凸型部を減圧封止により反転させることにより、上記のガスを収容し易く、かつ収容できる容積を大きくすることができる。
更に、発電体より底面積の大きい凹部をフィルムに形成した後、減圧封止によりフィルムを変形させることにより、上記のガスを収容し易く、かつ収容できる容積を大きくすることができる。
更に、外装体であるフィルムにおける、電池本体を挟むことにより向かい合って一対として接した部分のうち発電体近傍である少なくとも一部が、発電体に対して極板の積層方向である部分への内部容積の膨張を抑制するように接合されたことにより、内部でガスが発生した場合であっても、積層された極板間の密着を維持しやすくすることができる。この密着の維持により、電池特性を長期にわたって安定させることができる。
更に、極板間の密着を維持するようにすることにより、内部でガスが発生した場合であっても、積層された極板間の密着を維持しやすくすることができる。この密着の維持により、電池特性を長期にわたって安定させることができる。
更に、発電体が積層方向に押さえられるように挟持器でフィルム外装電池を挟持することにより、内部でガスが発生した場合であっても、積層された極板間の密着を維持しやすくすることができる。この密着の維持により、電池特性を長期にわたって安定させることができる。
更に、電池の一時的異常発生や長期使用により発生したガスが内部に蓄積されても、封止時に電池内側方向に変形したフィルムの湾曲部が元に戻ることにより、フィルムに形成した凹部や湾曲部における容積と発電体の体積との差による余裕空間にガスを貯め込むことができ、極板の積層方向への密着性を維持しながら内圧を上昇しにくくさせることができる。この内圧上昇の抑制により、安全性に優れ、また極板密着性が長期間維持され電池特性が長期にわたって安定な電池を得ることができる。
更に第4発明によれば、ヒーターへの樹脂のこびりつきを防止し生産性の向上を図るとともに、優れたシール性を安定的に実現することができる非水電解質電池が得られる。
第1発明及び第2発明の実施の形態の一例としての据付型単電池を示す断面図。 図1の据付型単電池を直列接続した組電池の外観の模式図。 図2におけるA−A’の模式的断面図。 第2発明の一実施態様である組電池を例示する断面図。 第3発明の第1の実施形態としてのフィルム外装電池に押さえ板を設けた状態の模式的断面。 図5の電池を上から眺めた模式的平面図。 (a)、(b)及び(c)は、図5及び6のフィルム外装電池の一連の製造工程例を示す図。 (a)、(b)及び(c)は、第3発明の実施形態であるフィルム外装電池の製造工程を示す断面の模式図。 第3発明の他の実施形態である外装電池を示し、(a)は減圧封止前の上から見た平面図、(b)、(c)は下部フィルムを上にした斜視図で、(b)が減圧封止前、(c)が減圧封止後を示す斜視図。 第3発明の更に他の実施形態であるフィルム外装電池の平面図。 第4発明の一実施形態であるシート状外装体を有する非水電解質電池の模式的斜視図。 図11のA−A’線縦断面図。 図11のB−B’線縦断面図。 図11のC−C’線縦断面図。 第4発明の実施形態におけるリード端子の外装体による封止予定部を例示する縦断面図。 第4発明の他の実施形態を模式的に表す断面図。 第4発明の更に他の実施形態を模式的に表す断面図。 第4発明の他の実施形態を模式的に表す断面図。 実施例7におけるシート状外装体を有する非水電解質電池のリード端子封止状況を示す縦断面図。 図19の電池をパックケースに収納した状態を示す縦断面図。 実施例2においてフィルム外装電池の凹型成形部を設けた側を上に向けた状態を示す斜視図。 実施例2のフィルム外装電池をパックケースに収納した状態を示す縦断面図。 (a)、(b)はそれぞれ従来の単電池を示す斜視図。 (a)、(b)はそれぞれ従来の単電池におけるリード端子と外装体の接着部を示す断面図。 (a)、(b)はそれぞれ従来の単電池の内部を示す断面図。 (a)、(b)はそれぞれ従来の単電池を接続した組電池を構成する際の接続状態を示す断面図。
次に本発明の実施の形態の据付型電池について図面を参照して説明する。
[第1発明及び第2発明の実施形態]
まず第1発明及び第2発明で使用可能な電池の各構成要素について詳述する。
[リード端子]
リード端子(電極リード)は、材質としてはAl、Cu、燐青銅、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレスなどが使用でき、必要ならば焼き鈍し処理を施されたものでもよい。形状としては平板状が好ましく、厚さとしては20μm〜2mmの範囲であることが好ましい。クランク状に曲げてあってもよい。
[外装体]
外装体としては、電池の上側が任意の形状、下側が極板群を収容できる大きさのカップ状成形部を有していればとくに制限はないが、これらを貼り合わせる対向面が熱融着性であることが好ましい。例えば、厚さ10μm〜1mmの母材板に厚さ3μm〜200μmの熱融着性樹脂を貼りつけたものが使用できる。母材板としては、Al、Ti、Ti系合金、Fe、ステンレス、Mg系合金、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等が使用できる。また熱融着性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。外装体の厚さが柔軟性を有するフィルム程度の厚さである場合、カップ状成形部としては、成形予定部の周囲の外装体を滑り可能な状態で押さえながらポンチとダイスでフィルムを押し込んで成形する絞り成形(深絞り成形)が好ましい。なお、成形予定部の周囲のフィルムを滑らせずに固定して、ダイスでフィルムを引っ張り伸ばして成形する張り出し成形法で凹部を形成しても良い。また、射出成形法で凹部を持つ外装体を作製してもよい。外装体の厚さが剛性を有する程度の厚さである場合、カップ状成形部の形成方法としては、プレス成形、鋳造法などが使用できる。
蓋側外装体とカップ成形外装体は、個別に作製されたものであってもよいが、一枚のフィルムを折り返して、一部を蓋側外装体として、別の部分をカップ成形外装体として用いてもよい。
蓋側外装体としてはフィルム状のもの、すなわち、金属箔、樹脂薄膜、これらの積層体などで例示される柔軟性を有する薄い部材であることが好ましい。
[極板群(発電体)]
極板群の構成としては、平板状の正極、負極、セパレータを積層したものが好ましい。正極は放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、(i)LiMnO、LiMn、LiCoO、LiNiO等の金属酸化物、(ii)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子、(iii)一般式(R−Sm)n(Rは、脂肪族、または芳香族であり、Sは、硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、S−トリアジン−2,4,6−トリチオール等)等の二次電池の正極材料として従来公知のものが使用できる。また、正極に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。これらの結着剤としてはポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が、機能性材料としては電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。負極は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、天然黒鉛、石炭・石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン、石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン、金属リチウムやAlLi等のリチウム合金など、二次電池の負極活物質として従来公知のものが使用できる。
極板群に含まれる電解液としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、m−クレゾール等の二次電池の電解液として利用可能な極性の高い塩基性溶媒にLiやK、Na等のアルカリ金属のカチオンとClO 、BF 、PF 、CFSO 、(CFSO、(CSO、(CFSO、(CSO等のハロゲンを含む化合物のアニオンからなる塩を溶解したものが挙げられる。また、これらの塩基性溶媒からなる溶剤や電解質塩を単独、あるいは複数組み合わせて用いることもできる。また、電解液を含むポリマーゲルとしたゲル状電解質としてもよい。また、スルホラン、ジオキサン、ジオキソラン、1,3−プロパンスルトン、テトラヒドロフラン、ビニレンカーボネートなどを微量添加してもよい。
以上はリチウムイオン二次電池としての材料系であるが、本発明は鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池にも応用しうるものである。また、リード端子、外装体、発電体などの構成要素は、第3発明、第4発明の実施形態で述べている構成要素と組み合わせてもよい。
次に図面に基づいて第1発明及び第2発明の実施形態について説明する。
図1は、第1発明及び第2発明の実施の形態の一例としての据付型単電池の断面を示し、図2は図1の据付型単電池を直列接続した組電池の外観を模式的に示す図であり、図3は図2におけるA−A’の模式的断面である。
図1〜図3を参照すると、第1発明及び第2発明の据付型電池の実施の形態として、極板群(発電体)3が、蓋側外装体(第1外装体要素)1およびカップ成形外装体(第2外装体要素)2により被包され、極板群の周囲(6の部分)の外装体同士が貼り合わされて密封封止されている。この封止部は鍔状であり、電池形状が矩形ならば4つの端辺あるいは3つの端辺に位置する。そのうちの一つの端辺と、対向する逆側の端辺とに位置する鍔状封止部を経由して正極リード端子51および負極リード端子52が引き出されている(61の部分)。電池内部の少なくとも極板群内には電解液が含まれている。ここでは、カップ成形外装体2が常に下に向くようにして電池を据え付けている。
正極リード端子51および負極リード端子52の封止部経由部分61の形成方法としては、これらのリード端子を引き出した状態で、カップ成形外装体2の端辺と蓋側外装体1の端辺とでこれらリード端子を挟むようにして、外装体同士を熱融着することにより形成することができる。こうして、外装体とリード端子表面は接着された状態となり、密封封止が可能となる。
この構成の電池においては、電池内にガスが発生した際、ガスは上に集まるため、リード端子封止部近傍にガスが溜まることになり、リード端子封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化が防止できる。
なお、第1発明及び第2発明において「据え付ける」とは、自動車、バイク、自転車などの移動車輌に据え付ける場合や、無停電電源や分散型電力貯蔵システムなどに用いられる据え置き設置型の電源に用いられる場合のように、上下が略常に一定である機器に搭載する場合や、地面や床・壁などの建物の一部に直接あるいは筐体を介して固定することを指し、腕時計や携帯電話等のように上下が一定しない機器に搭載することは含まない。
第1発明及び第2発明の据付型電池は、その外形が図1〜図3に示すように扁平な形状であり、扁平面を水平にして据え付られ、極板群の極板面は前記扁平面と平行であることが好ましい。また本実施形態では、正極リード端子51および負極リード端子52が経由している鍔状封止部61の面が、扁平面と略平行であってかつ極板群の最も上の極板と略同じ高さもしくはそれより上に位置している。こうすることにより、リード端子封止部61の電解液濡れがさらに効果的に抑制でき、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化がさらに効果的に防止できる。また、蓋側外装体1がフィルムからなるものであれば、上側にフィルムが膨らむことによりそこにガスを収容することができ、リード端子封止部61の電解液濡れがさらに効果的に抑制でき、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化がさらに効果的に防止できる。
第1発明及び第2発明の電池は組電池にした際、図2、図3からわかるように、以下の利点を有する。すなわち、上下方向に複数の電池を積み重ね、直列接続する際、従来知られている片側引出しタイプの電池のようにリード端子の極性の配置が逆の2種類の電池を使わずとも、1種類のみの電池を、図2、図3で示すように、裏表の上下をすべて揃えた状態で、1段ずつ交互にリード端子の極性が反対向きとなるように積み重ねることで、一つの電池の正極リード端子と、接続しようとするもう一つの電池の負極リード端子を隣接させることができる。こうして、低抵抗で電池間を直列接続することができ、相互接続された電池群のすべての電池を、極板群収納部分を下に向けた状態にできることから全ての電池に対してベターな耐漏液性を付与することができる。
図3の例ではさらに、電池内部空間のリード端子引き出し方向の長さL1が、カップ成形外装体の天面の同方向の長さL2より長くなっている。それにより、カップ成形外装体の外側の9の部分に隙間9が形成されている。この隙間の存在により、電池内部でガスが発生しても、9の下の蓋側外装体、すなわちリード端子封止部近傍の外装体が上側に変形することにより、この内側にガスを収容することができるようになる。その様子を図4に示す。隙間9が存在していた部分で蓋側外装体が膨れて99のようなガス収容部分が形成される。それにより、リード端子封止部周囲にガスが溜まりやすくなり、リード端子封止部61の電解液濡れがさらに効果的に抑制でき、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化がさらに効果的に防止できる。
L2は、極板群の長さと略等しいことが好ましい。L1とL2の差は、6mm以上40mm以下であることが好ましい(片側3mm以上20mm以下)。6mm未満であると、溶接部4の作製が困難となる。40mmを超えると、スペース効率的に好ましくない。
また、上記の方法の他に、電池間にスペーサを挟みこむ方法でも、同様な隙間9を形成することができる。すなわち、L2がもしL1と同等であっても、L1より長さが短いスペーサを電池間に挟むことにより、そのスペーサの横の傍らには隙間が形成され、同様にリード端子封止部周囲にガスが溜まりやすくなり、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することを抑制できる。ただし、スペーサの分だけ厚さ方向でスペース効率の損失となるため、好ましくは図3のような構成とすることが好ましい。
図4の99のような膨れを形成するためには、柔軟性の観点から、蓋側外装体はフィルムからなることが好ましい。
[第3発明の実施形態]
第3発明で使用可能な電池の各構成要素について詳述する。
[リード端子]
リード端子(電極リード)は、材質としてはAl、Cu、燐青銅、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレスなどが使用でき、必要ならば焼き鈍し処理を施されたものでもよい。厚さとしては20μm〜2mmの範囲であることが好ましく、クランク状に曲げてあってもよい。電池の4辺のうち1辺の封止部のみから2本の端子を引き出してもよいし、図5に示すように正極リードと負極リードとを互いに対向する向きに、封止部113aを経由して引き出してもよい。この場合封止部113aの引き出した部分は、発電体の上端と略同じ高さか、またはそれより高い箇所でもよい。この上下の高さは、図5の断面における上下であり、凹型成形部を設けたフィルム(図5での下部フィルム232)を重力方向(下側)に向けて極板群が水平となるように電池を設置する。このように設置することにより、電解液は下に溜まりガスは上に集まるため、ガス発生時にリード端子112を設けて封止した部分(以下、リード封止部)近傍にガスが貯まることになり、リード封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子112とフィルムとの接着界面を攻撃することによる剥離劣化が防止できる。また仮にリード封止部での密封封止が破れたとしても、すぐに電解液噴出とはならず、ガス開放のみとすることができ、電解液噴出による周囲の汚染や電池周辺回路に液が飛散することによる不具合を防止することができる。
このようなリード端子112の引き出し方をとった場合、外装体であるフィルムの少なくとも一部が電池内側方向に変形しているという第3発明の特徴と相乗効果が働き、湾曲状態であったフィルムが元に戻ることにより形成される空間に電解液を受け入れることができ、リード封止部が電解液で濡れることをより確実に防止できる。この防止効果は、図5に示すように正極リードと負極リードとを互いに対向する向きにリード封止部を経由して引き出した場合、外装体(フィルム)としては成形体と非成形体とを向かい合わせて貼り合わせた構成とし、成形体側(凹型成形部を設けたフィルムの側)を重力方向(下側)に向けて極板群が水平となるように電池を設置することにより得られる。建築物などの据え置き型や、自動車、自転車などに据え付ける場合のように、電池の上下方向を変えずに使用される場合にこの構成は都合がよい。なお、上記効果は電解質が固体状や半固体状やゲル状ではなく液状の時に最も有効である。
[外装体]
外装体としてはフィルム状のもの、すなわち、金属箔、樹脂薄膜、これらの積層体などで例示される柔軟性を有する薄い部材が使用でき、本明細書ではフィルムと呼んでいる。厚さとしては、10〜300μmが好ましく、さらに好ましくは、50〜200μmである。10μm未満であると、電池外装体としての力学的強度に乏しく、容易に破断するなどの不都合が生じ、300μmを超えると、柔軟性に乏しくなり、内圧を上昇させずにガスを受容することにおいて不都合となる。凹型成形部の形成は、成形予定部の周囲のフィルムを滑り可能な状態で押さえながらポンチとダイスでフィルムを押し込んで成形する絞り成形(深絞り成形)が好ましい。なお、成形予定部の周囲のフィルムを滑らせずに固定して、ダイスでフィルムを引っ張り伸ばして成形する張り出し成形法で凹型成形部を形成してもよい。また、射出成形法で凹型成形部を持つ外装体を作製してもよい。
[発電体]
発電体の構成、形態は、極板が積層されたものであれば特に限定されず、例えば正極、負極、セパレータからなり、平板状のものから、単純に2組以上積層したもの、長尺状のものを巻回したもの、さらには扁平に巻回したもの等であってよい。正極となる極板の材料は、放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、(i) LiMnO2 、LiMn24 、LiCoO2 、LiNiO2 等の金属酸化物、(ii)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子、(iii) 一般式(R−Sm)n(Rは、脂肪族、または芳香族であり、Sは、硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2、5−ジメルカプト−1、3、4−チアジアゾール、S−トリアジン−2、4、6−トリチオール等)等の二次電池の正極材料として公知のものであってよい。また、正極に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。これらの結着剤としてはポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が挙げられ、機能性材料としては電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。負極となる極板の材料は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、天然黒鉛、石炭・石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン、石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン、金属リチウムやAlLi等のリチウム合金など、二次電池の負極活物質として公知のものであってよい。
発電体に含まれる非水系電解質溶液としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、m−クレゾール等の二次電池の電解液として利用可能な極性の高い塩基性溶媒にLiやK、Na等のアルカリ金属のカチオンとClO4 - 、BF4 - 、PF6 - 、CF3 SO3 - 、(CF3 SO22- 、(C25 SO22- 、(CF3 SO23- 、(C25 SO23- 等のハロゲンを含む化合物のアニオンからなる塩を溶解したものであってよい。また、これらの塩基性溶媒からなる溶剤や電解質塩を単独、あるいは複数組み合わせて用いることとしてもよい。また、電解液を含むポリマーゲルとしたゲル状電解質としてもよい。また、スルホラン、ジオキサン、ジオキソラン、1,3−プロパンスルトン、テトラヒドロフラン、ビニレンカーボネートなどを微量添加してもよい。
なお第3発明は、電池以外の薄型のデバイスやその他各種物品において利用が可能であり、電気二重層コンデンサ、電解コンデンサ、各種センサー等の、フィルム外装体が適用可能な各種デバイスにおいても、同様な効果を得ることができる。また、リード端子、外装体、発電体などの構成要素は、第1発明、第2発明、第4発明の実施形態で述べている構成要素と組み合わせてもよい。
次に図面に基づいて第3発明の実施形態について説明する。
図5は、第3発明の第1の実施形態としてのフィルム外装電池に押さえ板を設けた状態の断面を模式的に示す図である。図6は同電池を上から眺めた外観を模式的に示す図である。図5、図6に示すように、第3発明の第1の実施形態としてのフィルム外装電池1は、正極、負極のそれぞれに対応するリード端子(電極リード)112を発電体(発電要素)111に設けてなる電池本体がフィルム(外装体)113により被包され、それぞれのリード端子112を外部へ露出させるように密封封止されている。この発電体111は、シート状の正極板と、負極板といった極板と、セパレータとが積層されて構成される。上記の密封封止は、この極板などの積層方向でない方向に余裕を持たせた範囲である封止部113aでフィルム113をヒートシールすることにより行われている。このフィルム113は、上部フィルム231と、下部フィルム232とからなり、上記したヒートシールはリード端子112により上記した電池本体が電池外部と通電可能となるようにこの2枚のフィルムでリード端子112をはさんで行われる。
なお、上記した積層の順番は、正極板と負極板との間にセパレータを挟む順番に限定されず、例えば正極板と負極板とをそれぞれセパレータを挟んで複数枚ずつ重ねたり、積層の最上部と最下部の両方が正極板または負極板の何れか一方になるよう重ねたりといった順番でもよい。
また、本明細書においてフィルムとは曲げ変形に対して柔軟性を有する薄い部材を指し、第3発明においては、金属箔単独、あるいは一般にラミネートフィルムと呼ばれる金属箔と樹脂フィルムの積層体が好ましい。
上部フィルム(上部外装体)231は減圧封止前には凹部を有していない(凹部を予め形成していない)平面状のものを用いている。下部フィルム(下部外装体)232は、発電体111を収納するための凹部を予め形成したものを用いている。この形成された凹部を、以下に凹型成形部と呼ぶ。この凹型成形部は、容積が発電体111の体積よりも大きくなるよう形成される。すなわち、この凹型成形部は、発電体111における極板などの積層方向と直交する方向へ発電体111より底面積が大きくなるように形成されている。
このフィルム外装電池101は、上部フィルム231と下部フィルム232とをヒートシールすることによる密封封止を減圧下で(電池内部が減圧状態となるよう)行うことにより減圧封止されている。この減圧封止により、上部フィルム231の一部である湾曲部231bが電池内側方向に湾曲しており、また下部フィルム232も、発電体の外側の余剰の凹型成形部に位置する湾曲部232bの部分で電池内側方向に湾曲して潰れている。
外装体の凹型成形部と発電体の形やサイズの関係について、図7を用いて本発明の電池の製造方法の一例とともにさらに詳しく説明する。図7は、第3発明の第1の実施形態としてのフィルム外装電池101の製造工程例を示す図である。
まず図7(a)、(b)に示すように、下部フィルム232に予め形成してある凹型成形部に発電体111を載置する。発電体111から伸びる集電箔には、予め正極、負極それぞれに対応するリード端子112を溶接部112aの部分で溶接しておく(図7(b)ではリード端子を省略してある)。凹型成形部の形成時の容積(以下、成形容積という)は、図7の例では、凹型成形部の縦横深さの積であるy・x・dで計算される。発電体111の体積は、次のようなサイズとすることにより、上記成形容積よりも小さくしている。すなわち、発電体111の横方向(図7(b)における上下方向)のサイズはxとほぼ同等としているが、縦方向のサイズおよび厚さ方向はそれぞれy、dよりも小さいサイズとしている。
ここで、上記の成形容積は、発電体111の体積の1.15倍以上2倍以下の範囲であることが好ましい。1.15倍未満であると、ガスを貯め込める充分な余裕がなく、第3発明の効果は得られにくい。2倍を超えると、無駄なスペースを取りすぎることとなり、体積エネルギー密度の観点から好ましくない。ただし、発電体111の極板積層方向と直交する方向へ発電体111より底面積が大きい(y・xが大きい)凹型成形部が下部フィルム232に形成してあれば、必ずしも成形容積が発電体111の体積よりも大きくなくてもよい(例えばdが発電体111の厚さよりも小さい場合など)。
次に図7(c)で示すように、上部フィルム131として凹部を形成しない平面状のフィルムを上からかぶせる。この時点では、下部フィルム232の凹型成形部と発電体111のサイズの関係が上述したようであるために、発電体111の上と横に余剰空間が存在する。次に外装体のヒートシールを減圧下で行った後、大気開放すると、大気圧により前記余剰空間を形成する下部フィルム232の凹型成形部が電池内側方向に押しつぶされる。このようにして図5に示すように、上部フィルム231、下部フィルム232に湾曲部231b、232bを有する電池を得る。
以上のように製造することにより、電池の一時的異常発生や長期使用により内部にガスが蓄積した場合であっても、減圧封止時に電池内側方向に変形したフィルム、すなわち図5における231bおよび/または232bの部分が元に戻ることにより、外装体フィルムの凹型成形部における容積と発電体111の体積との差による余裕空間にガスを貯め込むことができ、内圧をほとんど上昇させずにガスを貯め込むことができる。
この効果は、下部フィルム232の凹型成形部の形成時の形状すなわち自然の形が、電池作製時に減圧封止により内側方向に変形し、いわば不自然な形となるために得られる効果である。すなわち、電池内部でガスが発生したとしても、上部フィルム231や下部フィルム232が自然な形に戻りながらガスを貯め込むので、内圧をほとんど上昇させずにガスを貯め込むことができる。
従来提案では、スペース効率重視でフィルム(外装体)の成形容積と発電体の体積をほぼ同じとすることが好ましいとされてきた。このほぼ同じとする場合、内部でガスが発生すると、フィルムは当初の成形容積以上に、すなわち太鼓腹状に膨らまざるを得ない上、発生ガス量が少なくても内圧が上昇しやすかった。
図5〜図7の例では、発電体111の厚さおよび長さをそれぞれ下部フィルム232の凹型成型部の成形深さおよび成形長さより小さくしているが、本発明においては、発電体111の長さのみを外装体の成形長さより小さくしてもよい。また、発電体111の横幅を外装体の成形横幅より小さくしてもよい。発電体111の長さまたは横幅を外装体の成形長さまたは成形横幅より小さくした場合、発電体111の横に湾曲部232bがあるために、図5に示すように発電体111を電池の厚さ方向(極板の積層方向)に押さえ板101Cで押さえても第3発明の効果には影響しない。なお、力学的に押さえる場合は、湾曲部がフィルムにおける押さえ板101Cが接していない領域にあることが好ましい。なぜなら、押さえ板101Cによってフィルムの湾曲部が外側に変形することが阻害されてガス収容量が制限されることのないようにするためである。このような電池押さえを行うことにより、発電体111における極板などの密着を維持できる効果を得ることもできることとなる。
一方、この押さえ板101Cを用いない場合、231bの湾曲部にガスを収容したときに231bの湾曲部による大気圧押さえがなくなっても極板間の密着性が維持されるように、極板間が接着されていることが好ましい。
極板間を接着する方法には、極板とセパレータとの間に接着層を設けて接着する方法や、極板とセパレータとを多孔質のものとし、孔中に充填する電解質を、極板の孔中とセパレータの孔中とで連続した固体、半固体またはゲル状として極板とセパレータとを一体化して実質的に接着する方法などが挙げられる。
極板間を接着する方法は具体的には、正極内部の細孔と、負極内部の細孔と、これらの間に位置する多孔質セパレータとの3つの領域にわたる連続体となるように接着ポリマーを形成する方法(特開2000−306569号公報)や、ポリマー溶液をセパレータに塗布し、極板と貼り合わせて乾燥させることにより極板とセパレータを接着する方法(特開平10−172606号公報)、ゲル化前の前駆体を含む電解液を極板積層体に含浸し、積層状態で電解液をゲル化(半固体化)させる方法等が挙げられる。
図5に示す例では、電池の厚さ方向(極板の積層方向)を押さえ板101Cで力学的に押さえている。なお、図5では押さえ板101Cを固定する手段または力を加える手段を省略しているが、電池を取り囲む剛性パックケースに押さえ板を取りつけてもよく、剛性パックケースそのもので電池を押さえてもよく、ばね、ゴム、空気袋などの弾性体や、エアシリンダーなどにより押さえ板1Cに力を加えても良い。剛体からなる定寸ケースで押さえてもよい。このような電池の板押さえは、発電体11が極板群からなる場合に、極板間の密着を維持するための手段の一つ(挟持器)として位置付けられる。
フィルムにおける凹型成形部の一部が電池内側方向に潰れており、かつフィルムの外側から発電体111を力学的に押さえた構成とすることにより、電池の長期使用により内部にガスが蓄積したとしても、前記電池内側方向に潰れた部分、すなわち図5における232bの部分が元に戻ることにより、内圧を上昇させずに発電体111の極板間の密着を維持したままガスを貯め込むことができる。この効果は、発電体111の横(発電体に対して極板の積層方向以外の方向である少なくとも一部)にフィルムの湾曲部が設けられた場合、すなわち電池を力学的に押さえる板が接触していない面の外装体部分に湾曲部が設けられた場合に得ることができる。
図8は第3発明の第2の実施形態と第3の実施形態としてのフィルム外装電池の製造工程を示す断面の模式図である。図8(a)、(b)が第2の実施形態としてのフィルム外装電池2を示すものであり、(a)が減圧封止前、(b)が減圧封止後である。図8(c)は、第3の実施形態としてのフィルム外装電池の下部フィルム332を示す図である。以下、第1の実施形態と共通する部分については同一の符号とし、説明を省略する。
この図8(a)に示すように、下部フィルム332における凹型成形部の発電体111と接しない領域の少なくとも一部(図8(a)の332b)を、減圧封止前の当初、電池外側方向に膨らんだ形状に予め成形することとしてもよい。ガス発生による内圧の上昇によって外装体の減圧封止による内側変形部分が膨れる大きさは、フィルムが伸びない範囲に限定されてしまう。特にラミネートフィルムでは金属箔を含むため殆ど伸びない。そこで、この図8(a)、(b)に示す第2の実施形態のようにあらかじめ電池外側に膨らむ方向に下部フィルム332を伸ばしておくことによって、内圧上昇時のガス受容量を増やすことができる。
電池外側に膨らむ方向にフィルムを予め伸ばしておくと、フィルム内において電池外側に向く面が多く伸びるため、膨らむ方向への変形グセをフィルムに内在させておくことができ、内圧を増加させずに発生したガスを受容させようとする第3発明の目的にとって都合がよい。なぜなら、電池内部でガスが発生したとしても、フィルムが成形当初の形状である自然な形に戻りながらガスを貯め込むので、内圧をほとんど上昇させずにガスを貯め込むことができるからである。その一方、フィルムの一部に電池内側方向に向く窪み成形部を持たせた場合、その部分はフィルム内において電池内側に向く面が多く伸びるため、上記のような膨らむ方向への変形グセはついておらず、第3発明の目的に合致しない。
第3発明においては電池外側に膨らむ方向にフィルムを予め伸ばしておいて、減圧封止時に大気圧によって外装体を収縮させ図8の(b)のようにしてもよいが、第3の実施形態として図8(c)に示すように、電池外側に膨らむ方向に予め成形した(電池の外側に向かって凸型に形成した)下部フィルム432の湾曲部432bを、電池組み立て前に予め反転変形させておき、その後発電体111を収納、減圧封止、といった手順を取ってもよい。こうして形成した場合の内側に向くフィルム変形部は、最初から内側に向く窪みを形成した場合と異なり、見掛け上内側に向いていても膨らむ方向への変形グセを持ったものであるため、第3発明の目的に合致する。なお、第3の実施形態としての反転変形を可能にするためには、電池外側に膨らむ方向への下部フィルム432の成形の際、その凸部(湾曲部432b)と平坦部の境界線が曲面ではなく平面に含まれるようにするなど、成形形状に特定の条件が必要になる。
図9は第3発明の第4の実施形態としてのフィルム外装電池104を示す図である。図9(a)は減圧封止前の上から見た平面図、図9(b)、(c)は凹型成型部を設けた下部フィルム532を上にした斜視図であり、(b)が減圧封止前、(c)が減圧封止後である。この図9に示すように、フィルムのヒートシールによる密封封止の形状(封止部143aの形状)の少なくとも一部が、電池内側に向けて凸部を有した構造であってもよい。すなわち、下部フィルム532に予め電池内側に向けた凸部を発電体近傍に位置するよう形成し、その凸部の先端を発電体111の近傍である封止凸部143a’、すなわち上部フィルム531の向かい合って一対として接する部分に融着(接合)させることとしてもよい。フィルムの外側から発電体111を極板の積層方向に押さえ板などで押さえた構成となっていない場合、発電体111の周囲がガスの発生による内圧で膨らむと発電体111と接する領域も膨らんでしまい、発電体111の極板間の密着性が劣化する恐れがある。そこで発電体111に対して極板の積層方向である部分への内部容積の膨張を抑制するため、発電体111よりも一回り外側に封止部143aを設け、その封止部143aの一部を発電体111付近まで凸形状で延ばした封止凸部143a’を設けている。この封止凸部143a’のための凸部を下部フィルム532に予め形成して減圧封止を行うことにより、発電体111の近傍に上部フィルム531と下部フィルム532とが接合された部分を設けることができ、内圧上昇時における極板の積層方向への内部容積の膨らみを規制することができる。
図10は、第3発明の第5の実施形態としてのフィルム外装電池105を上から見た平面図である。この図10に示すように、発電体111近傍のヒートシール部(接合部)を封止部153aと独立して設けてもよい。すなわち、発電体111よりも一回り外側でフィルム周囲を密閉するヒートシール部である封止部153aと独立して、発電体111の近傍に極板の積層方向である部分への内部容積の膨張を抑制するように部分融着部153a’を設けることとしてもよい。こうして発電体111近傍の少なくとも一部に部分融着部153a’を設けることにより、発電体111の極板の積層方向への膨張を規制することができる。
従来提案されてきた構成では、スペース効率重視でフィルムの凹型成型部における容積と発電体の体積をほぼ同じとしているため、発生ガス量が少なくても内圧が上昇しやすく、電池の外部から極板の積層方向に押さえ板などで押さえたとしても、内部でガスが発生するとガスの蓄積で上昇した強い圧力でフィルムが太鼓腹状に強く膨張しようとし、押さえ板を押し広げてしまうため、極板密着性が維持できなかった。
第3発明においては、発電体の極板間の密着を維持するための方法として上記の他に、積層された極板を巻回して発電体111を作成する方法を用いてもよい。この方法は、例えば極板などを巻き芯の周りに巻回した後、巻き芯を抜き取ることにより巻回された極板群による発電体111を作成し、その発電体111に対して極板の積層方向以外の方向である少なくとも一部に、内部容積を膨張させるよう変形可能に形成した部分を上述した各実施形態の何れかに示すように設けるものである。
また、極板群(極板などが積層されてなる発電体)を粘着テープで積層方向に止める方法を用いてもよい。この方法は、極板群における積層方向以外の方向である部分を含む少なくとも一部に粘着テープを貼りつけて積層方向に止めてから、上述した各実施形態の何れかに示すようにフィルムで密封封止するものである。また、極板を積層方向に押さえることができればこれらの方法に限定されず、他の方法を用いて上述した各実施形態の何れかに示すフィルム外装電池の発電体を極板の積層方向に押さえることとしてもよい。
上述した特許文献5(特開平6−111799号公報)には、極板群の周辺に空間部分を保持させて合成樹脂製の気密シートで密封した電池が開示されているが、この電池は上述したように未成形の(凹型成形部が設けられていない)シートを利用したものである。
フィルム(外装体)に凹型成形部が予め形成されていなければ、図5における232bに示すような、十分なガス受容性のある外装体湾曲形状が得られない。フィルムに凹型成形部が予め形成されていれば、上述したように湾曲部232bは減圧封止時に電池内側方向に湾曲し、ガス受容状態では外側方向に凸となり、逆方向に湾曲するためそれだけ多くのガスを貯め込める。この特開平6−111799号公報の例のように、未成形の(凹型成形部が設けられていない)シートを外装体とした場合、減圧状態時にはフィルムはほぼ平面形状であり、ガスが貯まった状態で外装体が外側方向へ凸変形したとしても、その凸変形による容積差は本発明を実施した場合よりはるかに少なく、受容できるガスの量が少なくなるものである。
[第4発明の実施形態]
第4発明で使用可能な電池の各構成要素について詳述する。
[リード端子]
リード端子は、材質としてはAl、Cu、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレスなどが使用でき、必要ならば焼き鈍し処理を施されたものでもよい。厚さとしては20μm〜2mmの範囲であることが好ましい。表面が油分等などで汚染されていることは好ましくなく、脱脂処理を行うことが好ましい。またシール材との密着性を高めるため何らかの表面処理を施すことも好ましく、例えば化学的エッチング処理等による粗面化や、部分アミノ化フェノール系重合体と燐酸化合物とチタン化合物とからなる皮膜、燐酸亜鉛系皮膜等による耐食性皮膜下地処理や、チタニウム系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤などによる表面処理などで例示される表面処理を行うことも好ましい。
[外装体]
外装体としては各種金属平板を用いることができ、素材としてはAl、Cu、Ni、Ti、Fe、真鍮、ステンレス、スチール系等が使用できる。金属平板の厚さは、例えば20〜1000μmである。第4発明においては、図11〜図14で表されるように、発電要素をスペース効率良く収納するため、深絞り成形された外装体が好ましく用いられる。この場合、例えば板厚30〜500μmのAl板やスチール板の片面または両面に厚さ5〜100μmの熱可塑性樹脂(金属接着性樹脂に相当する)が被覆されたラミネートフィルムあるいはラミネート薄板を用いれば、オイルフリーでの深絞り成形などが可能になり、電池製造プロセスへのインライン加工なども可能になるので好ましい。第4発明においては特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物により両面が被覆された金属平板を少なくとも発電要素収納部分の外装体に用いることが好ましく、中でも特にポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物層の厚さは5〜50μmが好ましく、金属平板は50〜500μmのAl板が好ましい。また金属表面は油分等などで汚染されていることは好ましくなく、脱脂処理を行うことが好ましい。また熱可塑性樹脂との密着性を高めるため何らかの表面処理を施すことも好ましく、例えば化学的エッチング処理等による粗面化や、部分アミノ化フェノール系重合体と燐酸化合物とチタン化合物とからなる皮膜、燐酸亜鉛系皮膜等による耐食性皮膜下地処理や、チタニウム系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤などによる表面処理などで例示される表面処理を行うことも好ましい。
第4発明においては図11〜図14での下部外装体や、図16での上部・下部外装体のように、樹脂で被覆されていない金属平板を外装体の一部または全部として用いることもできる。この金属平板と発電要素とを電気的に接続し、端子としての機能と外装体としての機能を兼用させてもよい。
図11〜図14で示される例では、リード端子取り出し片でない片の封口部において、折り返した下部外装体の間に上部外装体を挟むようにして、下部外装体と上部外装体がシール材203を介して融着封口されているので、図16、図17の場合に比べて電池の内圧が上昇した際に封口が破れにくくなる。
またこの封口構造は、この例のように片側の外装体として両面に樹脂を被覆したラミネート板を使う場合に都合がよい。すなわち、深絞り成形を行うことを考慮すると、プロセスオイルフリー・洗浄不要化の観点から両面樹脂被覆ラミネート板を片側の外装体に用いることが好ましいが、その場合に図16のように下部外装体を折り返さずにシール材を介して単純に2枚を対向させて、その上下にヒーターを押し当ててヒートシールを行うと、上側ヒーターにより電池表面(電池外側)に被覆している樹脂まで溶融させてしまうため、ヒーターに樹脂がこびりつく等の生産上の不都合が生じる。そこで図11〜図14で示すように、熱接着封止時のヒータ当接面の被覆樹脂層が、金属面露出部材で保護されている封口構造にすれば、ヒーターに樹脂面が直接接することがないので、上記の生産上の不都合が生じない。
従来提案されてきたラミネートフィルム外装電池においては、シール材よりも高融点の樹脂を電池最外層側に被覆したラミネートフィルムを用い、シール材の融点以上、最外層樹脂の融点以下の温度でヒートシールすれば、ヒーターに樹脂がこびりつくことはないが、第4発明の場合、シール材の融点が高く、ヒートシール温度を高くせざるを得ないため、最外層樹脂としてその温度に耐えうる適当な樹脂を選択することが困難であり、ヒーターに樹脂がこびりつく問題を回避するためには、熱接着封止時のヒータ当接面の被覆樹脂層が、金属面露出部材で保護されている封口構造にすることが好ましい。
なお、ラミネートシートの被覆樹脂保護のための金属面露出部材としては、下部外装体と別の金属部材を用意し、上部外装体と下部外装体との熱接着端部を覆うように折り曲げて熱接着させてもよい(図18)。
なお、外装体は、図11〜図16に示したような、複数の部材を封着した構造に限定されず、一枚のシート部材を捲回した構成や、一枚のシート部材を折り返した構成を採用することもできる。
[シール材]
第4発明におけるシール材は芳香族ポリエステル樹脂と、この芳香族ポリエステル樹脂のガスバリア性樹脂とを含んでなることが好ましい。シール材は、図11〜図15におけるシール材203や図16におけるシール材203のように、2層構造や3層構造であってもよく、その場合、一部の層はガスバリア性樹脂を必ずしも含んでいなくても良い。もちろんガスバリア性樹脂含有樹脂からなる単一層であってもよい。
ここで言うガスバリア性樹脂としては、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレートや芳香族ポリアミドが好ましく用いられる。なぜならこれらは、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂と融点が比較的近く、溶融混練した際に均質性に優れ部分的なリークパスも生じにくく、優れた外気遮断性能を有するためであり、かつ芳香族系ポリマーであることから耐溶剤性、すなわち耐電解液性に優れるためである。上記の観点から、芳香族ポリアミドの中でも特にキシレン基またはキシリレン基を含有するポリアミドが好ましく用いられる。シール材全体に対するガスバリア性樹脂の含有量は、5〜50重量%が好ましく、10〜30重量%がさらに好ましい。
ガスバリア性樹脂とともに使用する芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレートが好ましい。熱溶着性に優れるためヒートシール時に封止性がよく、優れたガスバリア性が得られるからである。
ポリアルキレンテレフタレートのエステル形成単位を構成するジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が例示される。またジオール側に芳香環を持つ場合は、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸類、テトラリンジカルボン酸類等のジカルボン酸も使用できる。
一方、エステル形成単位を構成するジオールとしては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の如き脂肪族グリコール、または1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,6−シクロヘキサンジオール等の如き脂環族グリコール、またはビスフェノールA等の芳香族グリコールが例示される。
本発明に使用するキシリレン基含有ポリアミドは、キシリレンジアミン成分とジカルボン酸成分とを重縮合反応させて得られるポリアミドである。
キシリレンジアミン成分とは、ジアミン成分としてメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等のキシリレンジアミンを主成分とするものであり、本発明においてメタキシリレンジアミンを70モル%以上含有するジアミン成分が好ましく、特にメタキシリレンジアミンを80モル%以上含むものがガスバリア性の点から好ましい。
キシリレンジアミン成分中には、他のジアミン成分として、上記パラキシリレンジアミン以外にテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン類等を使用することもできる。
ジカルボン酸成分とは、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸を主成分とするジカルボン酸成分であり、炭素数が6〜12であるα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸が好適に使用される。ジカルボン酸成分に使用できるものとして、具体的にはアジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、その他テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類も本発明の機能を損なわない程度に配合して使用することができる。
第4発明において、芳香族ポリエステル樹脂と、芳香族ポリエステル樹脂のガスバリア性樹脂とは、溶融状態で混合して得ることができるが、固体の状態で混合したものを溶融混練してフィルム状に成形してシール材としてもよい。たとえば、押出機、射出成形機等の一般にプラスチックに用いられる成形機中で溶融混練することができる。
シール材は、芳香族ポリエステル樹脂と、芳香族ポリエステル樹脂のガスバリア性樹脂とからなるガスバリア性樹脂層と、他の樹脂層の積層構造とすることができる。他の樹脂層としては、金属接着性樹脂層を適宜配置することができる。ガスバリア性樹脂組成物からなる層の厚さは、10〜100μmが好ましい。金属接着性樹脂層を有する場合は、金属接着性樹脂層の厚さは5〜50μmが好ましい。金属接着性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等が例示される。ポリエチレンテレフタレート単独樹脂でもよく、別の成分がブレンドされていてもよいがその場合ブレンド量は0〜50重量%であることが好ましい。またエチレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステル樹脂でもよく、その場合エチレンテレフタレート単位以外の共重合成分は0〜50重量%であることが好ましい。ブレンド成分や共重合成分としては例えば、(ポリ)ブチレンテレフタレート、(ポリ)エチレンイソフタレート、(ポリ)エチレンセバケート、(ポリ)エチレンアジペート、ポリ(オリゴ(オキシテトラメチレン)−テレフタレート)等のオキシアルキレン繰り返し単位を有するポリエステルなどが挙げられる。
第4発明においては、シール材を外装体の少なくとも内面の一部あるいは全面に予め被覆しておいてもよい。ラミネートシートの被覆樹脂層そのものがガスバリア性樹脂を含み、シール材としての機能を兼用するものであれば、シール材フィルムを別途用意することなく、ラミネートシート同士を直接熱接着して封口することができる(図18)。
[発電要素]
発電要素204の構成、形態は特に限定されず、例えば正極、負極、セパレータからなり、平板状のものから、単純に2組以上積層したもの、長尺状のものを巻回したもの、さらには扁平に巻回したもの等が用いられる。正極は放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、
(i)LiMnO、LiMn、LiCoO、LiNiO等の金属酸化物、
(ii)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子、
(iii)一般式(R−S
(Rは、脂肪族、または芳香族であり、Sは、硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2、5−ジメルカプト−1、3、4−チアジアゾール、S−トリアジン−2、4、6−トリチオール等)等の二次電池の正極材料として従来公知のものが使用できる。また、正極に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。これらの結着剤としてはポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が、機能性材料としては電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。負極は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、天然黒鉛、石炭・石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン、石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン、金属リチウムやAlLi等のリチウム合金など、二次電池の負極活物質として従来公知のものが使用できる。
発電要素に含まれる非水系電解質溶液としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、m−クレゾール等の二次電池の電解液として利用可能な極性の高い塩基性溶媒にLiやK、Na等のアルカリ金属のカチオンとClO 、BF 、PF 、CFSO 、(CFSO、(CSO、(CFSO、(CSO等のハロゲンを含む化合物のアニオンからなる塩を溶解したものが挙げられる。また、これらの塩基性溶媒からなる溶剤や電解質塩を単独、あるいは複数組み合わせて用いることもできる。また、電解液を含むポリマーゲルとしたゲル状電解質としてもよい。また、スルホラン、ジオキサン、ジオキソラン、1,3−プロパンスルトン、テトラヒドロフラン、ビニレンカーボネートなどを微量添加してもよい。
なお、第4発明は、電池以外の薄型のデバイスやその他各種物品において利用が可能であり、電気二重層コンデンサ、電解コンデンサ、各種センサー等の、シート状外装体が適用可能な各種デバイスにおいても、同様な効果を得ることができる。また、リード端子、外装体、発電体(発電要素)などの構成要素は、第1発明、第2発明、第3発明の実施形態で述べている構成要素と組み合わせてもよい。
次に図面に基づいて第4発明の実施形態について説明する。
図11は第4発明の一実施形態としての、シート状外装体を有する非水電解質電池の外観を模式的に示す図であり、図12、図13、および図14はそれぞれ図11のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に相当する断面図である。
図11〜図14を参照するに、本発明のフィルムシール型非水電解質電池の一実施形態として、非水系の電解質溶液を含む発電要素204が外装体(201、202)の内部に封入されており、上部外装体201は、金属層212の両面に金属接着性樹脂層211が熱接着されたものであり、発電要素の収納スペースの確保およびリード端子引出しのため、カップ状に深絞り成形されている。下部外装体202は樹脂被覆されていない金属平板からなり、リード端子取り出し辺でない辺の上部外装体とのシール部分において折り返されている。このシール部分においては、折り返した下部外装体の間に上部外装体を挟むようにして、下部外装体と上部外装体がシール材203を介して融着封口されている(図12)。ここでシール材203は、金属接着性樹脂層231と、ガスバリア性樹脂層232とが熱溶着により積層した構成となっている。両層は同じかまたは異なるポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物からなり、少なくともガスバリア性樹脂層232が、ガスバリア性樹脂を含んでいる。シール材203の金属接着性樹脂層側は下部外装体の金属面に熱接着されており、ガスバリア性樹脂層側は上部外装体の被覆樹脂層(金属接着性樹脂層211)に熱溶着されている。リード端子205は、発電要素204に電気的に接続されており、電池内部から外部へ、外装体の封口部分を経由して引き出されている(図14)。リード端子の封口部分では(図13)、リード端子と外装体との間、および上下外装体の間は、前述と同様の2層構造のシール材203によって封口されている。リード端子の外装体による封止予定部には、図15のように予めシール材を熱接着させておくことが好ましい。ここでのシール材としても前述の2層構造のシール材203を用いることができ、この場合金属接着性樹脂層をリード端子側に熱接着させる。また外装体のリード端子引出し部は、図13に示すようにリード端子の厚みを考慮してリード端子の通る部分にニゲを有する形に成形されていることが好ましい。こうすることにより、リード端子部の熱融着封止時に外装体中の金属層とリード端子とが接触してショートすることが効果的に防止できる。
図16は、第4発明の他の実施形態を模式的に表す断面図であり、電池における断面位置は図12の位置と同じである。この場合、上部外装体201、下部外装体202共に樹脂被覆されていない金属平板を用いている。外装体間に挟み込むシール材203は金属接着性樹脂層231/ガスバリア性樹脂層232/金属接着性樹脂層231の3層構造となっており、一方の面と他方の面の金属接着性樹脂層がそれぞれ上部外装体と下部外装体に熱接着されている。また、下部外装体は折り返し構造となっていない。上部外装体は発電要素の収納スペースの確保およびリード端子引出しのため、カップ状に深絞り成形されている。
図17は第4発明の更に他の実施形態を模式的に表す断面図であり、電池における断面位置は図12の位置と同じである。この場合、上部外装体201、下部外装体202共に樹脂被覆されていない金属平板を用いている。外装体間に挟み込むシール材203はガスバリア性樹脂からなる均一組成のものである。シール材203は上部外装体と下部外装体とに熱接着されている。
図18は第4発明の更に他の実施形態を模式的に表す断面図であり、電池における断面位置は図12の位置と同じである。この場合、上部外装体201、下部外装体202共に、金属層の両面にガスバアリア性樹脂からなる均一組成の樹脂層を被覆したものを用いている。上部外装体と下部外装体との封口部は、他のフィルム材を介さずに直接熱接着されている。すなわち、両外装体の被覆樹脂は電池封止のためのシール材としての機能を兼用している。金属部材209が、上部外装体と下部外装体との熱接着端部を覆うように折り曲げて熱接着されている。この例では図示していないが、リード端子に予め熱接着させるシール樹脂もガスバリア性樹脂からなる均一組成のものを用いている。
上述した例のうち、図17および図18の例では、シール材のガスバリア性樹脂は金属接着性機能も有していることが望ましい。他の2つの例ではガスバリア性樹脂層は必ずしも金属接着性機能を有していなくてもよい。
[実施例]
以下、第1発明〜第4発明の詳細について実施例を用いて具体的に説明するが、第1発明〜第4発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質導電性付与材、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の重量比でNMPに混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、正極集電体となる厚さ20ミクロンのアルミニウム箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃で2時間真空乾燥させた。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを未塗布部を含めて矩形に切り出したものを8枚用意した。
活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするものである。このようにして、合計の理論容量が3Ahとなる正極を用意した。
一方、アモルファスカーボン粉末、ポリフッ化ビニリデンを91:9の重量比でNMPに混合、分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、負極集電体となる厚さ10ミクロンの銅箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃2時間真空乾燥した。なお、このとき負極層の単位面積あたりの理論容量と正極層の単位面積あたりの理論容量を1:1となるように活物質層の膜厚を調整した。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し真空乾燥した。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを正極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズに、未塗布部を含めて矩形に切り出したものを9枚用意した。
活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするものである。このようにして負極を用意した。
上記のようにして用意した正極と負極の間に、負極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズの矩形の、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を持つマイクロポーラスセパレーター(ヘキストセラニーズ社製、セルガード2300)を介して積層した。電極の最外側は負極となるようにし、その負極のさらに外側にセパレータを設置した(セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/・・・・・・/負極/セパレータ、という順番)。正極の活物質未塗布部と負極の活物質未塗布部とは対向する側となるような向きに揃えた。次に、正極リード端子となる厚さ0.1mm、幅50mm、長さ50mmのアルミニウム板と、正極8枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。同様に負極リード端子となる厚さ0.1mm、幅50mm、長さ50mmのニッケル板と、負極9枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。なお、正極リード端子および負極リード端子は、上記の溶接接続に先立ち、外装体による封止予定部に予め30μmの厚さのフィルム状の酸変成ポリプロピレンからなるシール材を熱融着しておき、かつまた図2に示されるものと同じように、クランク状に曲げておくことにより、電極積層体の上面よりもわずかに上の位置で水平に引き出されるようにした。
一方、外装体用のラミネートフィルムとして、ナイロン25μm、軟質アルミニウム40μm、酸変成ポリプロピレン30μmの積層体からなるフィルムを準備し、所定のサイズに切り出し、カップ状に深絞り成形した。ポンチが当たる側は酸変成ポリプロピレンが被覆されている側(以下シール面という)とした。深絞り成形の深さは電極積層体の厚さよりわずかに大きい深さとした。ポンチのサイズは電極積層体の面のサイズと略同じとし、ダイスのサイズはリード引き出し方向には片側10mmずつ、直交する方向には1mmずつポンチよりも大きいサイズとした。このようにして側面が斜めとなり皿状となるような形状のカップ成形外装体を得た。
この成形後、帽子のつばのようになっているカップの周囲のフィルムを、10mm幅の辺となるように残してトリミングした。このようにして成形したラミネートフィルムのカップ成形部に、上記の電極積層体を収納した。収納の際には、リード端子引き出し面を上に向け、電極面を水平にした状態の積層体を、シール面を上に向けたラミネートフィルムのカップ内に収納した。トリミングされたフィルムのつば部の2箇所に、リード端子が乗るようにした。
次に上記のラミネートフィルムを成形せずに所定のサイズに切り出しただけのものを、上記の発電要素が収納されたカップ成形部の上にシール面を内側に向けて蓋をするように置いた。この蓋のサイズは上記の成形・トリミング後のサイズと同じサイズとし、重ねたときに一致するようにした。
次にトリミングされたフィルムのつば部の上を経由して引き出されているリード端子をフィルムつば部と蓋とで挟むようにして、リード端子引き出し部二箇所をヒートシールし、次いでリード端子引き出し部でない辺(以下長辺A、長辺Bという)のうち一辺(以下長辺Aという)をヒートシールした。なお、リード端子引き出し部のヒートシール条件は、リード端子とラミネートフィルム内アルミ箔との短絡が起きないように注意して設定した。
次に、長辺Aを下にして傾け、最後の未シール部である長辺Bの隙間から、電極積層体に電解液を注液した。電解液は1mol/リットルのLiPF6を支持塩とし、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶媒(重量比50:50)を溶媒とするものである。注液量は、発電要素の体積の5%に相当する量とした。注液後、減圧脱泡を行った。最後に、真空シール機を用いて減圧状態で長辺Bのヒートシールを行い、電池を完成させた。なお、減圧シールにより、蓋側の外装体が図2の1に示したようにわずかに内側に凹んだ。
このようにして作製した電池3個を図1、図2のように積み重ね、金属部材7にリードを溶接することにより図2のように相互接続し、3個直列接続した組電池を得た。図2の上下に従う上下関係で組電池を固定し、この組電池を60℃90%相対湿度環境下に30日間保存する高温高湿試験に供し、リード端子引き出し部からの漏液状況を観察した。漏液判定は、リード端子引き出し部の根元に液体や析出物が認められるかどうかで判定した。電池3個の正負極の計6本のリード端子の1つでも漏液が発生したら「漏液」と判定した。
<比較例1>
実施例1において、組電池を図2と上下を逆にして固定し、実施例1と同じ高温高湿試験に供した。
<比較例2>
図3(a)の形態の電池を以下のように作製した。
実施例1と同様に電極を活物質未塗布部を含めて矩形に切り出した後、活物質未塗布部の75%を、残りの25%の部分が片側の長辺に寄った耳状となるように切り取った。この耳が、正極と負極とで短辺方向に反対側(長辺方向としては同じ側)に集まるように、セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/・・・・・・/負極/セパレータ、という順番で積層した。次に、正極リード端子となる厚さ0.1mm、幅10mm、長さ50mmのアルミニウム板と、正極8枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。同様に負極リード端子となる厚さ0.1mm、幅10mm、長さ50mmのニッケル板と、負極9枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。なお、正極リード端子および負極リード端子は、上記の溶接接続に先立ち、外装体による封止予定部に予め30μmの厚さのフィルム状の酸変成ポリプロピレンからなるシール材を熱融着しておいた。
一方、外装体用のラミネートフィルムとして、ナイロン25μm、軟質アルミニウム40μm、酸変成ポリプロピレン30μmの積層体からなるフィルムを準備し、所定のサイズに切り出し、カップ状に深絞り成形した。ポンチが当たる側は酸変成ポリプロピレンが被覆されている側(以下シール面という)とした。深絞り成形の深さは、電極積層体の厚さの半分とした。成形後、帽子のつばのようになっているカップの周囲のフィルムを、10mm幅の辺となるように残してトリミングした。
このようにして成形したラミネートフィルムのカップ成形部に、上記の電極積層体を収納した。収納の際には、電極面を水平にした状態の積層体を、シール面を上に向けたラミネートフィルムのカップ内に収納した。トリミングされたフィルムのつば部に、リード端子が乗るようにした。長辺方向において同じ側にリード端子が引き出されているので、正負極のリード端子が一つの短辺のつば部(以下リード引き出し辺)に乗るようにした。
次に上記と同じように成形しトリミングしたラミネートフィルムを、上記の発電要素が収納されたカップ成形部の上にシール面を内側に向けて蓋をするように置いた。
次にトリミングされたフィルムのつば部の上を経由して引き出されているリード端子を上下のフィルムつば部で挟むようにして、リード引き出し辺をヒートシールし、次いでリード端子引き出し部でない辺(以下長辺A、長辺B、対向辺という)のうち長辺Aおよび対向辺をヒートシールした。
次に、長辺Aを下にして傾け、最後の未シール部である長辺Bの隙間から、電極積層体に電解液を注液した。電解液は1mol/リットルのLiPF6を支持塩とし、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶媒(重量比50:50)を溶媒とするものである。注液量は、発電要素の体積の5%に相当する量とした。注液後、減圧脱泡を行った。最後に、真空シール機を用いて減圧状態で長辺Bのヒートシールを行い、電池を完成させた。
このようにして作製した電池3個を、長辺方向において同じ側にリード引き出し辺を揃え、かつ正負極が互い違いになるように裏表を交互として積み重ねて、金属部材によって電池を相互接続して(接続形態は図4と同様)3個直列接続した組電池を得た。この組電池を実施例1と同様に平置きにして固定し、実施例1と同じ高温高湿試験に供した。
<高温高湿試験の結果>
以上のようにして用意した実施例1、比較例1、比較例2の組電池をこの順番で高温高湿試験に供した結果を表1に示す。なお、各電池とも、電池内部でガスが発生しているのが確認された。
Figure 0005354084
<考察>
2つの比較例に対し実施例では漏液が発生しなかった理由としては、実施例では正極リード端子および負極リード端子が経由している封止部の面が極板群の最も上の極板よりわずかに上に位置しているため、電池内で発生したガスが上に集まり、リード端子封止部近傍にガスが溜まり、リード端子封止部が電解液で濡れず、電解液がリード端子/外装体接着界面を攻撃することによる剥離劣化が抑制されたためと推測される。
それに対し比較例1、比較例2では、電池内にガスが発生してもリード端子封止部は依然として電解液に浸された状態であるため、剥離劣化が進行して漏液に至ったと考えられる。
<実施例2>
スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質導電性付与材、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の重量比でNMPに混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、正極集電体となる厚さ20ミクロンのアルミニウム箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃で2時間真空乾燥させた。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを未塗布部を含めて矩形に切り出したものを8枚用意した。活物質未塗布部はリード端子12への接続予定部とするものである。このようにして、合計の理論容量が3Ahとなる正極を用意した。
一方、アモルファスカーボン粉末、ポリフッ化ビニリデンを91:9の重量比でNMPに混合、分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、負極集電体となる厚さ10ミクロンの銅箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃2時間真空乾燥した。なお、このとき負極層の単位面積あたりの理論容量と正極層の単位面積あたりの理論容量を1:1となるように活物質層の膜厚を調整した。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し真空乾燥した。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを正極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズに、未塗布部を含めて矩形に切り出したものを9枚用意した。活物質未塗布部はリード端子12への接続予定部とするものである。このようにして負極を用意した。
上記のようにして用意した正極と負極との間に、負極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズの矩形の、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を持つマイクロポーラスセパレーター(ヘキストセラニーズ社製、セルガード2300)を介して積層した。積層された極板の最外側は負極となるようにし、その負極のさらに外側にセパレータを設置した(セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/・・・・・・/負極/セパレータ、という順番)。正極の活物質未塗布部と負極の活物質未塗布部とは対向する側となるような向きに揃えた。次に、正極リード端子となる厚さ0.1mm、幅50mm、長さ50mmのアルミニウム板と、正極8枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。同様に負極リード端子となる厚さ0.1mm、幅50mm、長さ50mmのニッケル板と、負極9枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。なお、正極リード端子および負極リード端子は、上記の溶接接続に先立ち、外装体による封止予定部に予め30μmの厚さのフィルム状の酸変成ポリプロピレンからなるシール材を熱融着しておき、かつまた図5に示されるものと同じように、クランク状に曲げておくことにより、極板積層体の上面よりもわずかに上の位置で水平に引き出されるようにした。
一方、外装体用のラミネートフィルムとして、ナイロン25μm、軟質アルミニウム40μm、酸変成ポリプロピレン30μmの積層体からなるフィルムを準備し、所定のサイズに切り出し、カップ状に深絞り成形した。ポンチが当たる側は酸変成ポリプロピレンが被覆されている側(以下シール面という)とした。深絞り成形の容積(ポンチの面積と絞り深さの積)は、発電体111(上記の極板積層体のうちリード端子を含まない部分)の体積の124%とした。深絞り成形の縦サイズおよび横サイズ(ポンチの縦サイズおよび横サイズ)はそれぞれ発電体111のそれらより16mmおよび6mm大きくした。絞り深さは発電体111の厚さ(極板積層体の積層方向の厚さ)よりもわずかに深くした(クランク状に曲げられ水平になっている2つのリード端子を含む平面と、極板積層体の底面との距離と同等にした)。成形後、帽子のつばのようになっているカップの周囲のフィルムを、10mm幅の辺となるように残してトリミングした。このようにして成形したラミネートフィルムのカップ成形部(凹型成形部)に、上記の極板積層体を収納した。収納の際には、リード端子引き出し面を上に向け、極板面を水平にした状態の積層体を、シール面を上に向けたラミネートフィルムのカップ内に収納した。トリミングされたフィルムのつば部の2箇所に、リード端子が乗るようにした。極板積層体の周囲に8mm、3mm、8mm、3mmの隙間ができるように、カップの中央に極板積層体を置いた。
次に、上記のラミネートフィルムを成形せずに所定のサイズに切り出しただけのものを、上記の発電体11が収納されたカップ成形部(凹型成形部)の上にシール面を内側に向けて蓋をするように置いた。この蓋のサイズは上記の成形・トリミング後のサイズと同じサイズとし、重ねたときに一致するようにした。
次にトリミングされたフィルムのつば部の上を経由して引き出されているリード端子12をフィルムつば部と蓋とで挟むようにして、リード端子を外部へ通電可能に引き出す部分(リード封止部)二箇所をヒートシールし、次いでリード封止部がない辺(以下長辺A、長辺Bという)のうち一辺(以下長辺Aという)をヒートシールした。長辺Aのヒートシールの際には、厚さ5μm、10mm角の正方形のPETフィルムを挟み込むことにより、内圧異常上昇時に剥離してガスを開放する安全弁として機能する部分を設けた。図21の164の部分がそれを指している。
次に、長辺Aを下にして傾け、最後の未シール部である長辺Bの隙間から、極板積層体に電解液を注液した。電解液は1mol/リットルのLiPF6 を支持塩とし、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶媒(重量比50:50)を溶媒とするものである。注液量は、発電体の体積の5%に相当する量とした。注液後、減圧脱泡を行った。
最後に、真空シール機を用いて減圧状態で長辺Bのヒートシールを行い、電池を完成させた。なお、最終シールを行った後、真空シール機の内部の大気開放を行ったところ、大気圧によりフィルムの余剰部分(8mm、3mm、8mm、3mmの部分)が内側に凹んだ。特にカップ成形した側のフィルム(下部フィルム)の凹みが大きかった。その様子を図21に示す。図21は、この実施例2のフィルム外装電池206の成形体側(凹型成形部を設けた側)を上に向けた場合の斜視図である。湾曲部732bとして示した面(部分)が凹んでいる。
またカップ成形していない方のフィルム(上部フィルム)も、上記と同じ8mm、3mm、8mm、3mmの部分がわずかに凹み、さらに、発電体111の厚みよりもわずかに深く絞り成形したその差の分、カップ成形していない方の外装フィルムの天面がリード封止部よりも内側に低くなっていた。
このようにして作製した実施例2のフィルム外装電池206を図22のようにしてパックケース(挟持器)106C2に収納した。向きは成形体側(凹型成形部を設けた側)を下に向けた状態で収納した。このパックケース106C2には発電体111の縦横サイズとほぼ同じサイズの押さえ板106C1が設けられており、この押さえ板106C1は外側のパックケース106C2に押さえ板106C1よりも細い柱で取りつけられている。パックケース106C2が有するこの柱は、図22では模式的に2本となっているが、実際には2×2=4本であってよい。パックケース106C2はポリエステル樹脂製、押さえ板106C1はベークライト製である。パックケース106C2の弾性により、押さえ板106C1を経由して、フィルム外装電池106が極板の積層方向に加圧状態で挟持され、発電体111の極板密着性が保たれている。
このフィルム外装電池106に対し、電圧3V−4.8V、電流3Aの充放電サイクル試験を行った。充電時は4.8Vまで定電流充電した後4.8Vで2時間保つ方法で行い、放電は定電流放電とした。4.8Vは電池通常使用範囲外の電圧であるため、この充放電サイクル試験を以下に過充電サイクル試験という。過充電サイクル試験を続けたところ、下部フィルム732の湾曲部732bが徐々に当初の状態(絞り成形時の形)に戻り、さらにその後この湾曲部731b、732bが外側に徐々に膨らんだ。押さえている外装体部分(フィルムの押さえ板106C1と接する部分)は全く膨らまなかった。さらに続けると膨らんだ部分のフィルムが張りつめた状態となり内圧が上昇し、約300サイクル後に安全弁164が働き、ガスが開放された。安全弁164が働くまで充放電サイクルにおける放電容量はほとんど変化しなかった。
<実施例3>
実施例2と同じフィルム外装電池206を、パックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例1と同様な過充電サイクル試験を行ったところ、フィルムの湾曲部731b、732bが徐々に当初の状態に戻り、200サイクル目あたりからフィルム全体が外側に徐々に膨らんでいった。さらに続けると内圧が上昇し約400サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。湾曲部731b、732bが当初の状態に戻るまでは、充放電サイクル容量はほとんど変化しなかったが、フィルム全体が膨らみ始めると同時に、充放電サイクル容量も徐々に低下していった。安全弁164が働く直前の容量は初期容量の20%まで低下していた。
<実施例4>
実施例2の作成工程により、以下のようにしてセパレータと極板とが接着されて一体となった極板積層体を発電体111として有するフィルム外装電池を作製した。1,2−ポリブタジエン(JSR製、商品名RB810、1,2結合の比率90%、融点71℃、平均分子量10数万)が5重量%、ラウロイルパーオキサイドが0.1重量%溶解したトルエン溶液を、スプレーによってセパレータに吹き付け、乾燥させることにより、セパレータの両面に点状にポリマー接着剤層を形成した。顕微鏡で観察すると、面積割合にして2%程度の被覆率でセパレータ表面にポリマー接着剤が付着していた。こうして準備した接着剤塗布セパレータを用いて、実施例2と同様に、極板と共に積層した。次にこの積層体を卓上熱プレス機で熱プレスした。条件は予備加熱80℃5分、その後本プレスを圧力5kg/cm2 、温度80℃、時間5分とした。次に1kg/cm2 に圧力をゆるめ、温度は80℃のまま、12時間加熱し続けた。以上の工程により、正極、負極、およびセパレータが互いに強く接着した極板積層体一体化物が得られた。以下、実施例2と同様にしてフィルム外装電池を作製した。
このフィルム外装電池をパックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例2と同様な過充電サイクル試験を行ったところ、フィルムの湾曲部731b、732bが徐々に当初の状態に戻り、200サイクル目あたりから外装体全体が外側に徐々に膨らんでいった。さらに続けると内圧が上昇し約400サイクルで安全弁164が働き、ガスが開放された。安全弁164が働くまで、充放電サイクル容量はほとんど変化しなかった。
<実施例5>
実施例4において、発電体111の周囲の8mm、3mm、8mm、3mmの部分の余剰を、2mm、0mm、2mm、0mmと、ほとんど隙間が無くなる寸法となるように絞り成形したフィルムを用いた。その他は実施例4と同様にして、正極、負極、およびセパレータが互いに強く接着した極板積層体を有するフィルム外装電池を作製した。発電体111の横にはフィルムの湾曲部がほとんど形成されなかったが、カップ成形ではない方のフィルム(上部フィルム)の天面がリード封止部よりも内側に低くなっていた。
このフィルム外装電池をパックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例2と同様な過充電サイクル試験を行ったところ、フィルムの湾曲部が徐々に当初の状態に戻り、100サイクル目あたりからフィルム全体が外側に徐々に膨らんでいった。さらに続けると内圧が上昇し約200サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。安全弁が働くまで、充放電サイクル容量はほとんど変化しなかった。
<実施例6>
実施例5において、極板間を接着せずに実施例2と同様に単に積層した極板積層体を発電体111として有するフィルム外装電池を作製した他は、実施例5と同様に作製した。
このフィルム外装電池をパックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例2と同様な過充電サイクル試験を行ったところ、フィルムの湾曲部が徐々に当初の状態に戻り、100サイクル目あたりから外装体全体が外側に徐々に膨らんでいった。さらに続けると内圧が上昇し約200サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。外装体全体が膨らみ始めると同時に、充放電サイクル容量も徐々に低下していった。安全弁が働く直前の容量は初期容量の30%まで低下していた。
<比較例3>
実施例2において、外装体の絞り成形の寸法を、発電体111の周囲の8mm、3mm、8mm、3mmの部分の隙間が無くなる縦横サイズとし、かつ発電体111の厚さと同一の絞り深さとした。また、リード引き出し高さを、フィルムの天面よりわずかに内側となるようにした。その他は実施例2と同様にして、フィルムが内側に湾曲した部分(湾曲部)が存在しないフィルム外装電池を作製した。
このフィルム外装電池を、実施例2と同様にして押さえ板で加圧した状態で、実施例2と同様にして過充電サイクル試験を行ったところ、サイクル初期から外装体全体が外側に徐々に膨らんでいき、45サイクルあたりから電池内圧により押さえ板が外側に押され、パックケース全体がわずかに外側にゆがんだ。50サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。押さえ板が外側に押されはじめた45サイクルあたりから充放電サイクル容量が急激に低下した。
<比較例4>
実施例4において、外装体の絞り成形の寸法を、発電体111の周囲の8mm、3mm、8mm、3mmの部分の隙間が無くなるような縦横サイズとし、かつ発電体111の厚さと同一の絞り深さとした。また、リード引き出し高さを、外装体の天面よりわずかに内側となるようにした。その他は実施例4と同様にして、極板間が接着され一体化した極板積層体を持ち、かつ外装体が内側に湾曲した部分が存在しないフィルム外装電池を作製した。
このフィルム外装電池を、実施例4と同様にパックケースに収納せず押さえ板による加圧を行わないで、実施例2と同様にして過充電サイクル試験を行ったところ、サイクル初期から外装体全体が外側に徐々に膨らんでいき、70サイクルで安全弁が働き、ガスが開放された。安全弁が働くまで、充放電サイクル容量はほとんど変化しなかった。
<考察>
実施例2と比較例3とを比較すると、フィルムにガスを収容できる余裕部分が形成されている場合は形成されていない場合と比べて、安全弁が働くまでのサイクル数が大幅に多く、すなわちガス発生から内圧上昇に至るまでの期間が長いことがわかる。このことから、そのフィルム外装電池に一時的な異常がもし起こって内部でわずかずつガスが発生したとしても、そのガスの蓄積余裕量が大幅に向上していることがわかる。また、比較例3ではガスが発生した際に、押さえ板を外側に押し広げてパックケースがゆがむほどの膨れが発生し、極板を積層方向に押さえる力が消失して極板密着状態が損なわれたことによるサイクル容量低下が起こっているが、実施例1では最後まで極板密着状態が維持され、容量低下がほとんど起こらなかった。
実施例2と実施例3とを比較すると、極板間を接着させない場合、第3発明のフィルム外装電池をパックケース(挟持器)による極板の積層方向への加圧状態で用いた方が、内部でガスが発生しても電池特性を悪化させずに使用を継続できることがわかる。また一方で実施例3と実施例4とを比較すると、極板間を接着させた場合には、電池外側からパックケースによる加圧を行わなくとも、ガス発生時の特性悪化を抑制できることがわかる。
実施例5では、発電体111の横の部分(発電体に対して積層方向以外の方向である少なくとも一部)にはガスを収容できる余裕部分がほとんどないが、天面、すなわち上部フィルムに減圧封止によって形成されている内側変形部分が余裕部分となり、その内側変形部分が元に戻ることによりガスを収容することができたため、200サイクルまで持ちこたえたと考えられる。また実施例4と実施例5とを比較すると、発電体111の横の部分(発電体に対して積層方向以外の方向である少なくとも一部)にガスを収容できる余裕部分が有るか無いかで、持ちこたえられるサイクル数が異なることがわかる。
また、実施例5と実施例6では、共に発電体111の横の部分にはガスを収容できる余裕部分がほとんどないが、天面、すなわち上部外装体に減圧封止によって形成されている内側変形部分が元に戻ることによりガスを収容することができたため、200サイクルまで持ちこたえたと考えられる。それと比較し、比較例4では縦・横・天面とも余裕のない外装体サイズのため、ガスが収容できる余裕がなく、70サイクルまでしか持たなかったと考えられる。
実施例5と実施例6とで比較すると、極板を接着した場合としなかった場合で、電池外側からパックケースによる極板の積層方向への加圧を行わない場合のガス発生時の特性悪化度合いが異なることがわかる。
実施例4と比較例4を比較すると、発電体111の横の部分(発電体に対して積層方向以外の方向である少なくとも一部)にはガスを収容できる余裕部分が有る場合では無い場合に比べ、持ちこたえられるサイクル数が大幅に向上していることがわかる。
なお、これらの実施例の結果は、電池通常使用範囲外の電圧を故意に印加した場合の結果ではあるが、電池の実際の使用において、電池の制御回路の一時的な制御エラーや、瞬間的な大電流発生、電池の冷却不足などによる突発的・一時的な高温発生などによる微量のガス発生の蓄積が起こった場合も、上記の実施例における考察と同様なことが言えると考えられる。
なお、上述した一連の実施形態では、発電体111の体積よりも容積の大きい凹型成形部を2枚のフィルムの片方に形成することとして説明しているが、極板の積層方向以外の方向に電池の内部容積を膨張させるよう変形可能に形成するのであればこの形成方法に限定されず、例えば高さが発電体111より低い凹型成形部であってもよい。この低い凹型成形部を設ける場合であっても、密封封止の際に内部を減圧すること(減圧封止)によりフィルムが変形するため、湾曲部232bの成型形状によっては同様の効果をもたらすことが可能である。また、例えば凹型成形部を両方のフィルムに設けてもよい。
また、上述した一連の実施形態では、フィルムが上部フィルムと下部フィルムからなることとして説明しているが、上記した電池本体を密封封止できればこの2枚であることに限定されず、他の枚数であってもよい。たとえば、1枚のフィルムを180゜折り返して用いてもよい。
また、上述した一連の実施例では、フィルム外装電池を極板の積層方向に加圧状態で挟持する挟持器を、柱を有するパックケースとして説明しているが、フィルム外装電池を極板の積層方向に加圧状態で挟持することができればこれに限定されず、例えばフィルム外装電池が建築物などに設置される据え置き型のものである場合、その建築物などと一体化した構造物であってもよい。すなわち、弾性変形可能な弾性部を有し、その弾性により上記の加圧状態での挟持ができるものであれば形状や構造は限定されない。この弾性部は上記実施例に示すように挟持器全体を弾性変形可能な材料により作成してもよく、また、一部に弾性変形可能な弾性部を有するものであってもよい。
<実施例7>
スピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質導電性付与材、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の重量比でNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、正極集電体となる厚さ20ミクロンのアルミニウム箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃で2時間真空乾燥させた。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを未塗布部を含めて矩形に切り出したものを8枚用意した。活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするものである。このようにして、合計の理論容量が3Ahとなる正極を用意した。
一方、アモルファスカーボン粉末、ポリフッ化ビニリデンを91:9の重量比でNMPに混合、分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、負極集電体となる厚さ10ミクロンの銅箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃2時間真空乾燥した。なお、このとき負極層の単位面積あたりの理論容量と正極層の単位面積あたりの理論容量を1:1となるように活物質層の膜厚を調整した。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し真空乾燥した。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。これを正極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズに、未塗布部を含めて矩形に切り出したものを9枚用意した。活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするものである。このようにして負極を用意した。
上記のようにして用意した正極と負極の間に、負極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズの矩形の、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を持つマイクロポーラスセパレーター(ヘキストセラニーズ社製、セルガード2300)を介して積層した。電極の最外側は負極となるようにし、その負極のさらに外側にセパレータを設置した(セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/・・・・・・/負極/セパレータ、という順番)。正極の活物質未塗布部と負極の活物質未塗布部とは対向する側となるような向きに揃えた。次に、正極リード端子となる厚さ0.1mm、幅50mm、長さ50mmのアルミニウム板と、正極8枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。同様に負極リード端子となる厚さ0.1mm、幅50mm、長さ50mmのニッケル板と、負極9枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。なお、正極リード端子および負極リード端子は、上記の溶接接続に先立ち、外装体による封止予定部に予めシール材(後述)を図15に示されるように熱接着により形成しておいた。
一方、厚さ50mmのアルミニウム箔の両面に、ポリエチレンテレフタレート(以下PETという)88重量%、ポリエチレンイソフタレート12重量%からなる共重合ポリエステル樹脂からなる厚さ8μmの樹脂膜をラミネートしたラミネートフィルムを、所定のサイズに切り出し、カップ状に深絞り成形した。深絞り成形の容積(ポンチの面積と絞り深さの積)は、発電要素(上記の電極積層体のうちリード端子を含まない部分)の体積の110%とした。但し、絞り深さは発電要素の厚さと同等としている。このようにして成形したラミネートフィルムのカップ成形部に、上記の電極積層体を収納した。
次にこの電極積層体に電解液を注液した。電解液は1mol/リットルのLiPF6を支持塩とし、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(重量比50:50)を溶媒とするものである。注液量は、発電要素の体積の5%に相当する量とした。
次に所定のサイズの矩形の厚さ100μmのアルミニウム板を、上記の発電要素が収納されたカップ成形部の上に蓋をするように置いた。このアルミニウム板のサイズは上記のカップ成形ラミネートフィルムよりも横幅が左右10mmずつはみ出る大きさとした。このアルミニウム板の横部分を左右10mmずつ折り返し、上記のカップ成形ラミネートフィルムを挟みこんだ。その際に、シール材を挟みこんだ。その様子は図12に示される通りである。なお、図では、実際の配置と上下方向が逆となっている。
シール材としては、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合させて得られるナイロン(以下MXナイロンという)20重量%(ガスバリア性樹脂)、PET80重量%をブレンドした樹脂膜30μmと、PET88重量%、ポリエチレンイソフタレート12重量%からなる共重合ポリエステル樹脂からなる樹脂膜8μmとを熱融着させたものを用いた。ここで、MXナイロンをブレンドした方がガスバリア性樹脂層、ポリエチレンイソフタレートを共重合させた方が金属接着性樹脂層に対応する。
なお、MXナイロンとPETをブレンドした樹脂膜は、両者を溶融混練してペレットを作製し、このペレットから、一軸押出機を用いTダイ法により得たものを用いた。
次に上記のアルミニウム板の左右の折り返し部分を、300℃のヒーターで加熱加圧することで、シール材を溶融させ、封口した。次に、厚さ0.5mm、幅12mmの2枚の銅板からなるシールアタッチメントをリード端子封止予定部に外側から挟み込むようにバネ性クリップで固定して設置した。その様子を図19に示す。なお、銅版の一方にはリード端子の通る部分に深さ0.1mmのニゲが形成されている。また図示していないが、リード端子封止予定部に当接する部分のシールアタッチメント表面はフッ素樹脂による離型性のコーティングが施されている。このシールアタッチメントの外側から、320℃のヒーターで加熱加圧することで、シールアタッチメントおよびリード端子封止予定部におけるシール材を溶融させ、リード端子の封止を行った。封止部の幅は電極リード引出し部、引き出さない部分のいずれも10mmである。正極リード端子を先に封止し、次に真空シール機を用いて周囲を減圧状態にして負極リード端子の封止を行った。正極リード封止時、負極リード封止時とも、シールアタッチメントは放冷によりシール材の融点以下に温度が下がってからはずした。減圧状態で負極リード端子封止を行った後、真空シール機の内部の大気開放を行ったところ、大気圧により電池外装体の一部がへこんだ。このへこみは、外装体の絞り成形サイズよりも発電要素サイズが小さくかつ減圧封止したことによってのみ形成し得るものであり、なんらかの異常で電池内部でガスが発生した際に、ガスを収納できる余地となる。
なお、上述したような、シールアタッチメントを利用した封止方法や、外装体の絞り成形サイズよりも発電要素サイズを小さくしかつ減圧封止することにより、大気圧により電池外装体の一部をへこませる方法は、従来知られている外装体、すなわちシール材としてポリエチレン、ポリプロピレン、これらの酸変成物などといったポリオレフィン系材料を用いた外装体などで封止した電池においても利用できる。また、シールアタッチメントとしては、次の方法に適していれば特に限定はない。すなわち、熱融着性樹脂を内面に有するフィルムからなる外装体の端辺で、電池要素側から外部へ引き出された状態のリード端子を挟み、さらにその外側から、リード端子封止予定部に当接するように金属製部材を着脱可能な手段で固定し、この金属製部材ごと加熱してリード端子封止予定部におけるシール材すなわち熱融着製樹脂を溶融させ、リード端子の封止を行う方法であり、シールアタッチメントとしては、ここでいう金属製部材としての用途に適していればよく、熱伝導性に優れるアルミニウムか銅が好ましい。加熱後、前記金属製部材が熱融着製樹脂の融点以下まで降温してから前記金属製部材を取り外すと、熱融着製樹脂が充分固まるまで目的物を押さえつけた状態に固定できるので、強固に熱融着封止することができる。またシールアタッチメントには、リード端子の通る部分に凹んだ形状のニゲが形成されていることが好ましい。またシールアタッチメントの表面には、離型性付与手段が施されていることが好ましく、その例としてはシリコーン樹脂、フッ素樹脂、あるいはこれらの樹脂の中にガラスクロスを含むもの、が挙げられる。
このようにして作製した実施例7の電池を図20のようにしてパックケースに収納した。このパックケースは発電要素の縦横サイズとほぼ同じサイズの押さえ板を有しており、押さえ板は外側のパックケースに押さえ板よりも細い柱で取りつけられている(図では模式的に柱は1本となっているが、実際には2×2=4本である)。パックケースおよび押さえ板はポリエステル樹脂製である。外側のパックケースの弾性により、押さえ板を経由して、電池が加圧状態で挟持されている。
この状態で、常温で電池を満充電状態にした後、周囲の温度を徐々に210℃まで昇温していったところ、実施例7の電池は、封口が維持され、いずれの箇所からも液漏れが起こらなかった。この結果は、シール材が優れたガスバリア性および耐熱性を有するため、減圧封止状態が良好に維持されたことによるものと考えられる。
また、図20と電池の上下を逆にして(カップ成形ラミネートフィルム側を下にして)同様の実験を行っても、結果は同じであった。
<実施例8>
ガスバリア性樹脂として、MXナイロンを用いる代わりにポリエチレンナフタレートを用いた他は実施例7と同様にして電池を作製し、実施例7で述べた昇温漏れ試験を同様に行ったが、電池の上下に関わらず、いずれの箇所からも液漏れが起こらなかった。この結果は、シール材が優れたガスバリア性および耐熱性を有するため、減圧封止状態が良好に維持されたことによるものと考えられる。
<比較例5>
カップ状に絞り成形するラミネートとして、厚さ50mmのアルミニウム箔の両面に、厚さ8μmの酸変成ポリプロピレンをラミネートしたものを用い、リード端子の封止予定部に熱接着させるシール材および上下外装体同士のヒートシール時に挟み込むシール材として、ポリプロピレン膜30μmと、酸変成ポリプロピレン膜8μmとを熱融着させたものを用いた以外は、実施例7と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した比較例5の電池を図20のようにしてパックケースに収納した。このパックケースは発電要素の縦横サイズとほぼ同じサイズの押さえ板を有しており、押さえ板は外側のパックケースに押さえ板よりも細い柱で取りつけられていた。パックケースおよび押さえ板はポリエステル樹脂製であった。外側のパックケースの弾性により、押さえ板を経由して、電池が加圧状態で挟持されていた。
この状態で、常温で電池を満充電状態にした後、周囲の温度を徐々に210℃まで昇温していったところ、比較例5の電池は、約170℃の温度でリード端子封止部からわずかながら液漏れが発生した。この結果は、シール材が充分なガスバリア性および耐熱性を有していないため、良好な減圧封止状態が維持されなかったことによるものと考えられる。
また、図20と電池の上下を逆にして(カップ成形ラミネートフィルム側を下にして)同様の実験を行ったところ、約170℃の温度でリード端子封止部からわずかながらガスが漏れが発生した。
<ガスバリア性評価>
実施例7、実施例8、比較例5で用いたシール材(それぞれPET/MXナイロンブレンド膜、PET/ポリエチレンナフタレートブレンド膜、ポリプロピレン/酸変成ポリプロピレン積層膜)の酸素透過係数を測定したところ、その比は1:3:80であった。測定方法は、ASTM D3985、JIS K7126に準拠した。
<考察>
以上の結果から、比較例5の電池は170℃以上の温度に晒されると封口が維持できないのに対し、実施例7、8の電池では200℃以上の温度に晒されても封口が維持されることがわかる。また、シール材のガスバリア性も、比較例5に比べて実施例7、8では著しく向上しており、比較例5の電池よりも実施例7、8の電池の方が、電池の減圧状態が大幅に長期的に維持されると考えられる。
1:蓋側外装体
2:カップ成形外装体
3:極板群
4:溶接部
51:正極リード端子
52:負極リード端子
6:封止部
61:リード封止部
7:接続手段
8:電解液
9:隙間
99:ガス膨れ部
L1:内部空間長さ
L2:カップ成形外装体天面長さ
101:フィルム外装電池
111:発電体
112:リード端子(電極リード)
112a:溶接部
113:フィルム(外装体)
113a,143a,153a:封止部
231,331,531:上部フィルム(上部外装体)
231b:湾曲部
232,332,532,732:下部フィルム(下部外装体)
232b,332b,532b,732b:湾曲部
101C,106C1:押さえ板
106C2:パックケース(挟持器)
143a’:封止凸部
153a’:部分融着部
164:安全弁
201:上部外装体
211:金属接着性樹脂層
212:金属層
202:下部外装体
203:シール材
231:金属接着性樹脂層
232:ガスバリア性樹脂層
204:発電要素
205:リード端子
206:シールアタッチメント
207:バネ性クリップ
208:パックケース
281:押さえ板
209:金属部材

Claims (8)

  1. 金属板の少なくとも一方の面が樹脂層で被覆された樹脂被覆金属部材と、金属面が露出した金属面露出部材と、がシール材を介して封着された外装体を有し、前記樹脂被覆金属部材に設けられた凹部に発電要素が収納された非水電解質電池であって、前記樹脂被覆金属部材の縁部が、前記金属面露出部材の折り返し部により覆われたことを特徴とする非水電解質電池。
  2. 請求項1に記載の非水電解質電池において、前記樹脂被覆金属部材の少なくとも一方の面が、金属接着性樹脂層により被覆されたことを特徴とする非水電解質電池。
  3. 請求項2に記載の非水電解質電池において、前記金属接着性樹脂層が、エチレンテレフタレート単位を含む共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする非水電解質電池。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の非水電解質電池において、前記シール材は、芳香族ポリエステル樹脂と、ガスバリア性樹脂とを含んでなり、該ガスバリア性樹脂は、ポリアルキレンナフタレートまたは芳香族ポリアミドであることを特徴とする非水電解質電池。
  5. 請求項4に記載の非水電解質電池において、前記ガスバリア性樹脂がポリエチレンナフタレートであることを特徴とする非水電解質電池。
  6. 請求項4に記載の非水電解質電池において、前記芳香族ポリアミドが、キシレン基またはキシリレン基を含有するポリアミドであることを特徴とする非水電解質電池。
  7. 請求項4乃至6いずれかに記載の非水電解質電池において、前記芳香族ポリエステル樹脂が、ポリアルキレンテレフタレートであることを特徴とする非水電解質電池。
  8. 請求項1乃至7いずれかに記載の非水電解質電池において、前記外装体に接続するリード端子をさらに有し、該リード端子の引き出し部が前記シール材により覆われたことを特徴とする非水電解質電池。
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