配線間の容量を低く維持し、かつ密着性と絶縁特性に優れる改質層を形成するためには、できだけ改質層を薄く形成する必要がある。そのためには改質処理方法のアプローチのみではなく、改質される有機シロキサン膜の構造・組成・材料からのアプローチが必要であり、双方を勘案したプロセスフロー設計を行う必要があった。
本発明者らが環状有機シロキサン原料を用いた多層配線の形成方法に関して検討を行った結果、絶縁膜の信頼性と銅配線接続信頼性の双方を満たす好適な改質層の形成方法を見出した。
すなわち、少なくとも環状有機シロキサンと不活性キャリアガスとを反応室に供給し、プラズマ気相成長法によって得られる絶縁膜であって、少なくとも1層以上の前記絶縁膜が少なくともシリコン、酸素、炭素、からなる環状シロキサン構造を含む絶縁膜において、金属配線と接する、前記環状シロキサン構造を含む絶縁膜部に、絶縁膜内部よりも炭素原子量が少なく、酸素原子量が多い改質層を水素プラズマ処理によって形成することで、低配線間容量を維持したまま配線間のリーク電流を低減することができるようになる。
更に、デュアルダマシン溝に対して前記改質処理を行うことで、ビア底に露出した銅の還元処理と、絶縁膜表面の改質を同時に行うことができるようになる。
このような絶縁膜の信頼性の改善とビアCu接続の信頼性との双方を同時に満たす製造方法は、本発明による水素プラズ処理による改質層が見出されるまでは、予想し得なかった効果である。
すなわち、デュアルダマシン溝におけるビアホール底が開口され、ビア底に銅が露出した状態で本発明による水素プラズマ処理を行うことが有効である。更に、本発明による水素プラズマ処理を行うことで、前記環状シロキサン構造を含む絶縁膜表面に、絶縁膜内部よりも炭素原子量が少なく、酸素原子量が多い改質層を形成することで、前記環状シロキサン構造を含む絶縁膜と金属配線との密着性を向上することができるようになる。
特に、金属配線の主成分としては銅が用いられるが、銅の周囲を覆うバリアメタルと前記環状シロキサン構造を含む絶縁膜との密着性が向上する。特に、バリアメタルとしては高融点金属の窒素化合物、例えば、TaN、TiN、WN、TiWN、などを用いる場合に、前記環状シロキサン構造を含む絶縁膜表面の炭素量を減少させることで飛躍的に密着性が向上する。
これは、好適な環状有機シロキサンを含む絶縁膜に好適な改質処理を行うことで、環状構造に起因した高密度なシロキサンユニットを連続的に結合させ、高密度な改質層が形成されること、及びこの改質層が密着性と絶縁特性に優れる層を形成するために、水素プラズマ処理が好適であることとを、本発明者らが見出したことによるものである。
すなわち、好適なシロキサン構造を含む絶縁膜に対して、好適な改質処理によって脱炭素を行い、高密度な改質層を薄く形成し、膜内部への改質が進まないようにすることが、本発明の特徴である。
特に、溝下面の改質については金属配線との密着性を維持する上で不可欠な要素となる。この場合、前記水素プラズマ処理は、基板バイアスを印加して行うことで溝側壁に比べて溝下面の改質を促進することが可能となり、密着性と低配線容量化の両立を行うことができるようになる。
少なくとも1層以上の前記絶縁膜が少なくともシリコン、酸素、炭素、からなる環状シロキサン構造を含む絶縁膜において、シリコン原子数よりも、炭素原子数の多い膜組成が好ましいのは、軽元素である炭素が増えることで絶縁膜自体の比誘電率が低いことに加えて、改質処理による急激な炭素の引き抜きを抑制しつつ緻密化反応が進むため、ナノレベル厚の高密度な改質層が形成できるようになることを、発明者らが見出したためである。
特に不飽和炭化水素基と炭素原子数が3以上の炭化水素基との双方を含んでいる膜であることで、不飽和炭化水素基の強い結合エネルギにより脱炭素速度を低下させ、かつ炭素数の多い炭化水素基によって膜内部の炭化水素成分を多く保つことができるようになる。
また、ランダム型シロキサン構造に比べて、環状シロキサン構造において膜の比誘電率が低いにも関わらず、高密度な改質層が形成できるのは、員数の少ない環状構造ほどO−Si−Oの結合角度が小さいため、高密度なSiO構造が形成されやすいためである。
例えば、石英(6員環;2.65g/cm3)に対して、コーサイト(4員環;2.92g/cm3)が高密度であることが例として挙げられる。したがって、あらかじめ骨格として、高密度なO−Si−O構造を形成しやすい、環状シロキサンが膜内部に含まれていることにより、炭素を置換した酸素が環状ユニットを連続的に結合させ、容易に高密度かつ薄い改質層が形成できる。
また、金属配線及び接続プラグの周囲を囲むように改質層を形成するためには、金属配線及び接続プラグと接する配線層間絶縁膜、ハードマスク膜、ビア層間絶縁膜のいずれもが少なくともシリコン、酸素、炭素からなるシロキサン構造を含む絶縁膜とし、かついずれも炭素数3以上の側鎖とビニル基の双方を含む原料から形成した絶縁膜構造とする。
例えば、原料分圧をプラズマ励起中に変化させることで、低分圧条件にてビア層間絶縁膜を形成し、高分圧条件にて配線層間絶縁膜を形成し、低圧条件にて比較的に密着性と膜強度に優れるハードマスク膜とビア層間絶縁膜を形成することができる。
または、炭素数3以上の側鎖とビニル基の双方を含むシロキサン原料を2種類以上用いて比率を変化させて成膜することで、ビア層間絶縁膜はC/Si比が1.4程度で比誘電率2.7、配線層間絶縁膜はC/Si比が2.9程度で比誘電率2.4、ハードマスク膜はC/Si比1.2で比誘電率3.0としたSiOCH膜をそれぞれ形成することで、いずれの絶縁膜にも本発明による改質層を形成することができるようになる。この場合、改質層は配線の上面を除いて、配線を囲むように形成され、より密着性の改善ができるようになる。
一般に絶縁膜内の炭素量が多いと金属配線との密着性は低下する傾向にあるが、本発明における絶縁膜を用い、更に水素プラズマ処理を用いることで、絶縁膜の低誘電率化、リーク電流の低減、密着性の向上を達成することができるようになる。
前記シロキサン構造が、絶縁膜内部の単位体積あたりの炭素原子数が酸素原子数よりも多いことを特徴とする。また、炭素原子の結合状態としては、少なくとも炭素数3個以上を有する炭化水素基と不飽和炭化水素基の双方を含むことを特徴とする。
前記シロキサン構造が、酸素原子とシリコン原子とからなる環状シロキサン構造を含むことが好ましい。前記環状シロキサンが3員環構造であり、前記環状シロキサン構造を含む絶縁膜の密度が1.2g/cm3以下であることを特徴とする。
このような絶縁膜から形成される、好適な改質層としては、少なくとも1層以上の前記絶縁膜が少なくともシリコン、酸素、炭素、からなるシロキサン構造を含む絶縁膜である多層配線において、前記環状シロキサン構造を含む絶縁膜と金属配線との界面の少なくとも一部に、環状シロキサン構造を含む絶縁膜内部よりも炭素原子量が少なく、酸素原子量が多い改質層が形成されていることを特徴とする。
前記界面部分が、金属配線との界面であることを特徴とする。前記改質層は炭素原子数よりも酸素原子数が多いことを特徴とする。前記改質層は炭素原子数よりも酸素原子数と窒素原子数の和数が多いことを特徴とする。前記改質層の厚さは20nm以下であることを特徴とする。前記改質層の密度が2.0g/cm3以上であることを特徴とする。
前記絶縁膜が、配線部位のハードマスク膜と、配線部位の配線層間絶縁膜と、ビアプラグ部位のビア層間絶縁膜とからなる前記多層配線において、前記ハードマスク膜と、前記配線層間絶縁膜と、前記ビア層間絶縁膜とのいずれもが、シリコン、酸素、炭素、からなるシロキサン構造を含む絶縁膜であり、前記絶縁膜内部よりも炭素原子数が、配線層間絶縁膜>ビア層間絶縁膜>ハードマスク膜、の順に少ない多層配線において、前記ハードマスク膜、前記配線層間絶縁膜及び前記層間ビア絶縁膜のいずれにも、前記金属との界面に前記改質層が形成され、該改質層の組成が、それぞれ対応する前記絶縁膜内部よりも、単位体積あたりの炭素原子数が少なくかつ酸素原子数が多いことを特徴とする。
このような好適な改質層の形成方法としては、前記絶縁膜上にハードマスク膜を形成する工程と、前記ハードマスク膜上にフォトレジストを塗布し溝パターニングする工程と、前記レジストをマスクにドライエッチングによって前記ハードマスク膜内に溝を形成する工程と、第一の酸素アッシングによって前記フォトレジストを除去させる工程と、前記ハードマスク膜をマスクにドライエッチングによって前記絶縁膜内に溝を形成する工程と、前記溝に対して改質処理を行うことにより改質層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
前記改質処理が脱炭素化処理であることを特徴とする。前記脱炭素処理が水素プラズマであることを特徴とする。前記改質処理を行う水素プラズマは、水素とAr、又は水素とHeの混合ガスであることを特徴とする。前記改質処理を行うプラズマは、基板バイアスを印加して行うことを特徴とする。前記処理を水素雰囲気中で行うことを特徴とする。前記改質処理を水素アニールにより行うことを特徴とする。前記ドライエッチングのエッチングガスが、少なくともAr、O2、CF4の混合ガスであることを特徴とする。
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明する。
低誘電率絶縁膜とは、例えば配線材を絶縁分離する膜(層間絶縁膜)であり、半導体素子を接続する多層配線間の容量を低減するため、シリコン酸化膜(比誘電率4.2)よりも比誘電率の低い材料を指す。特に、多孔質絶縁膜としては、例えば、シリコン酸化膜を多孔化して、比誘電率を小さくした材料や、HSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン(Hydrogen Silsesquioxane))膜、又はSiOCH、SiOC(例えば、Black DiamondTM、CORALTM、AuroraTM)などを多孔化して、比誘電率を小さくした材料などがある。これらの膜の更なる低誘電率化を進めるため、環状シロキサン原料を用いた成膜技術などが検討されつつあるところである。
環状シロキサンとは、Si−Oを1ユニットとした数えた環状のユニットとした場合、例えば3員環とは(SiO)3からなる6角形分子構造を意味する。4員環とは(SiO)4からなる8角形分子構造を意味する。環状有機シロキサンとは、前記環状シロキサン構造の側鎖に、炭化水素基を有する分子構造を意味する。炭化水素基の例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、などがある。このような環状シロキサン原料は、多孔質な絶縁膜を形成するのに有効であるが、本発明においては、必ずしも多孔質膜に限定するわけではない。なお、絶縁膜の組成は、単位体積あたりに含まれる原子数の比とする。
プラズマ気相成長法とは、例えば、気体状の原料を減圧下の反応室に連続的に供給し、プラズマエネルギによって、分子を励起状態にし、気相反応、又は基板表面反応などによって基板上に連続膜を形成する手法である。原料分子にあらかじめ、ビニル基のような反応性の高い側鎖を導入することでモノマーの反応性を向上させる場合を、プラズマ重合法と呼ぶ場合もある。
ダマシン配線とは、あらかじめ形成された層間絶縁膜の溝に、金属配線を埋め込み、溝内以外の余剰な金属を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)などにより除去することで形成される埋め込み配線をさす。Cuによりダマシン配線を形成する場合には、Cu配線の側面及び外周をバリアメタルで覆い、Cu配線の上面を絶縁性バリア膜で覆う配線構造が一般に用いられる。ダマシン配線には、接続孔に金属のコンタクトプラグを形成した後に配線溝を形成する「シングルダマシン配線法」と、接続孔及び配線溝を形成した後に金属を一度に埋め込む「デュアルダマシン配線法」とがある。
金属配線とは、例えばCuを主成分とする。金属配線の信頼性を向上させるため、Cu以外の金属元素がCuからなる部材に含まれていても良く、Cu以外の金属元素がCuの上面や側面などに形成されていても良い。
CMP法とは、多層配線形成プロセス中に生じるウェハ表面の凹凸を、研磨液をウェハ表面に流しながら回転させた研磨パッドに接触させて研磨することによって平坦化する方法である。ダマシン法による配線形成においては、特に、配線溝又はビアホールに対し金属を埋設した後に、余剰の金属部分を除去し、平坦な配線表面を得るために用いる。
バリアメタルとは、配線を構成する金属元素が層間絶縁膜や下層へ拡散することを防止するために、配線の側面及び底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜を示す。例えば、配線がCuを主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、タイタン(WTi)、炭窒化タングステン(WCN)のような高融点金属やその窒化物等、又はそれらの積層膜が使用される。
絶縁性バリア膜とは、Cu配線の上面に形成され、Cuの酸化や絶縁膜中へのCuの拡散を防ぐ機能、及び加工時にエッチングストップ層としての役割を有する。例えば、SiC膜、SiCN膜、SiN膜などが用いられている。
半導体基板とは、半導体装置が構成された基板であり、特に単結晶シリコン基板上に作られたものだけでなく、SOI(Silicon on Insulator)基板やTFT(Thin film transistor)液晶製造用基板などの基板も含む。
ハードマスクとは、層間絶縁膜の低誘電率化による強度低下により、直接CMPを行うのが困難な場合に、層間絶縁膜上に積層し、保護する役割の絶縁膜をさす。
パッシベーション膜とは、半導体素子の最上層に形成され、外部からの水分などから半導体素子を保護する役割を有する。本発明では、プラズマCVD法で形成したシリコン酸窒素化膜(SiON)や、ポリイミド膜などが用いられる。
PVD法とは、通常のスパッタリング法でもよいが、埋め込み特性の向上や、膜質の向上や、膜厚のウェハ面内均一性を図る上では、例えばロングスロースパッタリング法やコリメートスパッタリング法、イオナイズドスパッタリング法、などの指向性の高いスパッタリング法を用いることもできる。合金をスパッタする場合には、あらかじめ金属ターゲット内に主成分以外の金属を固溶限以下で含有させることで、成膜された金属膜を合金膜とすることができる。本発明中では、主にダマシンCu配線を形成する際のCuシード層や、バリアメタル膜を形成する際に使用することができる。
TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)寿命とは、絶縁破壊に至るまでの時間を加速試験によって予測する手法である。例えば、配線間のTDDB寿命を測定する場合には、櫛形のTEG(Test Element Group)を用い、所定の温度(例えば125℃)の測定条件で配線間に1〜4MV/cm程度の比較的高い電界を印加し、配線間に流れるリーク電流をモニタする。電界印加開始時間から絶縁破壊までの時間を計測することで、TDDB寿命の優劣を比較することができる。
m−ELT(modified Edge Liftoff Test)試験とは、試料にエポキシ層を塗布し、120℃程度で硬化処理を行った後、試料を冷却する。冷却により生じたエポキシ層の残留の応力によって、試料の各層の端面に引き剥がし力が加わり、剥離箇所を画像処理で検出しその時の温度を記録する。剥離時の温度からエポキシ層の残留応力値がわかるので、剥離時に放出されるエネルギがエポキシ層に保存された弾性エネルギにほぼ等しいと仮定し、テスト薄膜に加えられる応力強度(剥離強度)を計算する手法である。値が大きいほど密着性に優れると判断できる。
(第一実施形態)
本発明においては、層間絶縁膜として好適な低誘電率絶縁膜を、少なくとも環状有機シロキサン原料を反応室に供給し、プラズマ気相成長法によって絶縁膜を形成する環状シロキサン構造を含む絶縁膜に対して、好適な改質層を形成することで、配線間容量の低減と、絶縁信頼性確保を両立することができる。本発明にて形成した配線構造として、半導体素子が形成された半導体基板上の多層配線に用いた場合の配線構造について、詳しく説明する。
概要を説明すると、本実施形態の多層配線の形成方法は、ともにシロキサン構造を含むビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44を金属配線41a上に形成する第一の工程(図1[1])と、ビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44の一部に金属配線41aに達する凹部としてのデュアルダマシン溝48を形成する第二の工程(図1[2]〜図2[2])と、ビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44とデュアルダマシン溝48内で露出した金属配線41aとに水素プラズマ処理を施すことにより、ビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44の表面に改質層49を形成するとともに金属配線金属配線41aの表面を還元する第三の工程(図3[1])と、を含むことを特徴とする。以下に、各工程について詳しく説明する。
図1[1]に示すように、半導体素子が形成された半導体基板50上にバリアメタル膜40a、金属配線41a、絶縁性バリア膜42が積層されており、その上に、ビア層間絶縁膜43、配線層間絶縁膜44、ハードマスク膜45a,45bが形成されている。請求項1に記載の(第一の)絶縁膜は配線層間絶縁膜44であり、(第二の)絶縁膜はビア層間絶縁膜43である。ここで、ビア層間絶縁膜43と配線層間絶縁膜44とを分けて示したが、同一の材料から構成しても良い。
配線層間絶縁膜44は、3員環又は4員環からなる環状有機シロキサン構造の原料を用い、He、Ar、Ne、Xe、Rnなどからなる不活性キャリアガスを用いて反応室に供給し、高周波電力を引加することで成膜を行うことができる。
例えば、ビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44は、少なくともシリコン、酸素、炭素、水素からなる環状有機シロキサン原料を用い、本発明に係る方法にて形成した低誘電率絶縁膜である。そのような原料としては、例えば[化3]又は[化4]で示される環状有機シロキサンであることが好ましい。これらの原料は構造中に不飽和炭化水素基を含むため、成膜プラズマ中での炭素の側鎖炭素の脱離を抑制し、絶縁膜内に多くの炭素を取り込むことができるようになる。
それらの膜厚は50〜200nm程度が良い。原料分圧をプラズマ励起中に変化させることで、密着性に優れる層などを挿入しても良い。
ビア層間絶縁膜43は、成膜条件や混合ガス原料を追加したり、入れ替えたりすることで、配線層間絶縁膜44よりも炭素成分の少ないSiOCH層としても良い。ハードマスク膜45aは、配線層間絶縁膜44の成膜条件を変更したり、混合ガス原料を追加したり、入れ替えたりすることで、配線層間絶縁膜44よりも炭素成分の少ないSiOCH層としてもよい。
例えば、配線層間絶縁膜44としては、[化3]からなる原料を気化し、プラズマ気相成長法を用いて形成した環状シロキサンを含む絶縁膜を用い、ビア層間絶縁膜43及びハードマスク膜45aとしては、[化5]からなる原料を気化し、プラズマ気相成長法を用いて形成したシロキサンを含む絶縁膜を選択し、これらを連続成長させることもできる。
このような不飽和炭化水素と炭素分子量3以上のアルキル基を有する原料を用いて形成した絶縁膜を用いることで、水素プラズマ処理によって絶縁膜と金属との界面に好適な改質層を形成することが容易となる。
ハードマスク膜45bは、シリコン酸化膜とする。必要に応じてハードマスク45bを削除しても良い。
金属配線41aは、Cuを主成分とし、金属配線の信頼性を向上させるため、Cu以外の金属元素がCuからなる部材に含まれていても良く、Cu以外の金属元素がCuの上面や側面などに形成されていても良い。金属配線41aとしては、Cuターゲットを用いたスパッタ法や、CVD法、又は、それらの方法で形成したCu膜を電極として用いた電解めっき法などにより形成することができる。また、主成分以外の金属元素としては、アルミニウム、錫、チタン、タングステン、銀、ジルコニウム、インジウム、及びマグネシウムの中から少なくとも一つを選択し、添加することも有効である。また、Cu以外の金属、例えば、タングステン(W)や、CoWPなどの化合物を密着層として、又はCu配線と絶縁性バリア膜の間に挿入することも有効である。
バリアメタル膜40aは、スパッタ法やCVD法や、ALCVD(Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法などを用いて形成することができる。例えば、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、タイタン(WTi)、窒化タイタン(WTiN)、炭窒化タングステン(WCN)のような高融点金属やその窒化物等、又はそれらの積層膜が使用される。特に、Ta/TaN(=上層/下層)の積層膜を用いることが好ましい。
絶縁性バリア膜42は、SiN、SiCN、SiC膜などからなり、その膜厚が20〜50nmであり、プラズマCVD法により形成される。
ハードマスク膜45a,45bは、SiO2、SiON、SiC、SiCN、などを用いることができ、膜厚は50〜200nm程度とすることが好ましい。
ここでは、3員環状有機シロキサン[化3]を用いて形成した配線層間絶縁膜44を例に説明する。以上のビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44を形成する工程が、特許請求の範囲における第一の工程に相当する。
続いて、図1[2]に示すように、フォトレジストを用いたパターニングとドライエッチングによって、ビアホール46を形成する。そして、その上に、有機膜51、低温酸化膜52、ARC(Antireflective Coatings)53、フォトレジスト54を順次積層し、フォトレジスト54をパターニングする。
続いて、図2[1]に示すように、フォトレジスト54をマスクにしてドライエッチングを施すことによって、ハードマスク45a,45b内に配線溝であるハードマスク溝47を転写形成する。このとき、フォトレジスト54の灰化プロセスにはO2プラズマアッシングを用いて、効率的かつ完全にフォトレジスト54を除去することができる。その時点では配線層間絶縁膜44はほとんどエッチングされていないため、後に形成される配線溝の側壁はO2プラズマに暴露されていない。
続いて、図2[2]に示すように、ハードマスク膜45a,45bをマスクにしてドライエッチングを施すことによって、配線層間絶縁膜44内に配線溝であるデュアルダマシン溝48を形成する。
このときの配線層間絶縁膜44のドライエッチング方法に関して詳しく説明する。例えば、テトラフルオロカーボン(CF4)とアルゴン(Ar)、窒素(N2)とを任意の割合で混合したものをエッチングガスとして用い、平行平板型のドライエッチング装置を用いてエッチングを行うことができる。
具体的には、平行平板型の8インチ用エッチング装置を用い、ガス流量比Ar/N2/CF4/O2=300/100/25/6sccmにて、基板間距離(GAP)=35mm、圧力50mTorr(6.65Pa)、上部電極周波数60MHz、上部電極パワー1000W、下部電極周波数13.56MHz、下部電極パワー100Wにて行うことができる。
このとき、ハードマスク45bをマスクにエッチングを行うことによって、フォトレジスト54をマスクに加工する場合と比べて溝のライン・エッジ・ラフネスを改善できる利点がある。以上の図1[2]〜図2[2]の工程が特許請求の範囲における第二の工程に相当する。
続いて、図3[1]に示すように、エッチング後の側壁の改質処理を行うことで改質層49を形成する。この時点では既に溝パターニング用のフォトレジスト54は完全に除去されているため、改質に好ましい条件で改質処理を行うことができる。
このとき、好ましい改質処理条件としては、H2プラズマ処理を行うのが良い。処理時間はプラズマ条件にもよるが、5〜30秒程度にすることが好ましい。過剰なプラズマ処理は、溝側壁及び溝底の脱炭化を促進するため好ましくない。
具体的には、H2プラズマ照射は、平行平板型のin−situエッチング装置を用い、基板間距離(GAP)=30mm、圧力10mTorr(1.33Pa)、上部電極周波数60MHz、上部電極パワー600W、下部電極周波数13.56MHz、下部電極パワー100Wにて水素ガスのみで5秒間処理を行うことができる。
このとき、H2プラズマ照射を行うガス系は、H2/Ar、H2/Heなどの混合ガスを用いても良い。
具体的には、プラズマ照射は、平行平板型のin−situアッシング装置を用い、ガス流量比はH2/He=200/300sccm、基板間距離(GAP)=40mm、圧力20mTorr(2.66Pa)、上部電極周波数60MHz、上部電極パワー500W、下部電極周波数13.56MHz、下部電極パワー100Wにて処理を行うことができる。
なお、H2プラズマ処理を行う装置はin−situエッチング装置に限定するものではなく、バリアメタルを成膜するスパッタチャンバ等に併設されたチャンバで行うことも可能である。
このとき、典型的な例として配線層間絶縁膜44の側壁と溝下面に改質層49が形成されるが、それ以外の部分に改質層が形成されていても良い。例えば、溝底のビア層間絶縁膜43や、ビアホール46の側壁などにも改質層49が形成されていても良い。
例えば、ビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44に環状シロキサンを含む絶縁膜を用いていた場合には、溝側壁、溝下面、ビア側壁、の改質層49は密度が高く20nm以下にて形成される。一方、ビア層間絶縁膜43にそれ以外のSiOCH絶縁膜を用いた場合には、ビア側壁及び溝下面には30〜50nmの改質層49が形成される場合がある。
このようにして、金属配線41bのとの接続界面に改質層49が形成されることで、金属配線41bと配線層間絶縁膜44又はビア層間絶縁膜43との密着性を向上することができるようになる。これは、改質層に対するバリアメタルの密着性が、改質層無しの構造に比べて向上するためである。これは、改質層の組成において、酸素数が炭素数よりも多いために、バリアメタルとの密着が向上したためである。
このとき、ビア下のCuが露出した状態で改質処理を行うため、水素プラズマ処理を行うことで、ビア下の酸化Cuの還元と、絶縁膜表面(溝側壁、溝下面、ビア側面)の脱炭素による改質を同時に行うことができるようになる。以上の図3[1]の工程が特許請求の範囲における第三の工程に相当する。
最後に、図3[2]に示すように、デュアルダマシン溝48内に、バリアメタル膜40b及び金属配線41bを埋め込み、CMP法によって余剰の配線を除去し、デュアルダマシン配線が形成される。
このようにして作製した多層配線の配線間リーク電流を、すなわちライン/スペース=100nm/100nm、対向長5cmのTEGにおける室温での配線間リーク電流を測定したところ、改質層無しと比較して約3桁、配線間のリーク電流が低減できていることを確認した。
すなわち、酸素数よりも炭素数の多い環状型SiOCH膜においては、リーク電流の低減が必須であり、本発明による好適な改質層の形成によって、配線性能を維持したまま、絶縁信頼性を確保できるようになる。
このようにして作製した多層配線の配線間の組成分析をTEM−EELSにて行った結果、水素プラズマ処理によって改質層を形成した場合には絶縁膜表面(溝側壁、溝下面、ビア側面)に15nm以下の改質層が形成されていることを確認した。改質層の組成は炭素に比べて酸素が多いことがわかる。
シリコン基板上に配線層間絶縁膜を形成し、擬似的に水素プラズマ処理を行い、表面に形成された改質層の評価をXRRを用いて行ったところ、改質層の密度が2.0g/cm3以上であることを確認した。
このとき、配線層間絶縁膜内部は、少なくともシリコン、酸素、炭素、からなる環状シロキサン構造を含む絶縁膜であり、TEM−EELSの結果から、前記絶縁膜の炭素原子量が酸素原子量の2倍以上であることがわかる。15nm以下の改質層において炭素量と酸素量が逆転していることが本発明の特徴である。
したがって、本発明に係る製造方法を用いることにより、層間絶縁膜の低誘電率化と高絶縁信頼化を同時に達成し、かつ、高密着性を有することで、ひいては配線の性能を向上させ、高速かつ低消費電力のLSIを高信頼性で形成することが可能となる。
(第二実施形態)
図4に示すように、半導体基板11上に半導体素子としてMOSFET10が形成され、TiN膜32を介してシリコン酸化膜12a及び接続プラグとしてタングステン33が形成されている。その上には、第一実施形態と同様に、バリアメタル膜としてTa/TaN膜31a〜31e、金属配線としてCuAl膜30a〜30e、絶縁性バリア膜としてSiCN膜28a〜28e、配線層間絶縁膜として環状型SiOCH膜29a〜29e、改質層49a〜49eなどが形成され、多層配線構造となっている。更にその上には、Ta/TaN膜31f、CuAl膜30f、SiCN膜28f,28g、シリコン酸化膜12b,13、シリコン酸窒化膜34、Ti/TiN膜35a,35b、AlCu膜36などが形成されている。
CuAl膜30a〜30eと接する環状型SiOCH膜29a〜29eに、環状型SiOCH膜29a〜29eよりも炭素原子量が少なく酸素原子量が多い改質層49a〜49eが形成されている。改質層49a〜49eの厚さは10〜20nm程度に制御されている。
ここで、金属配線材は、Cuを主成分とし、金属配線材の信頼性を向上させるため、Cu以外の金属元素がCuからなる部材に含まれていても良く、Cu以外の金属元素がCuの上面や側面などに形成されていても良い。PVD法により成膜した厚さ40nmのCu層をシード層として、電解めっき法によりCuを形成した。PVD法によって形成されCu層には、内部に1.2atm%以下のAlを含む。絶縁性バリア膜としてのSiCN膜28a〜28gは、膜厚が30nmであり、プラズマCVD法により形成した。
配線層間絶縁膜としての環状型SiOCH膜29a〜29eは、環状有機シロキサン原料[化3]を用いて、プラズマ気相成長法により形成したものであり、比誘電率が2.4であり、厚さがビア層間部分も含めて250nmである。このような層間絶縁膜としての環状型SiOCH膜29a〜29eから構成されるデュアルダマシン溝内に、金属配線としてのCuAl膜30a〜30e及びバリアメタル膜としてのTa/TaN膜31a〜31eが埋め込まれている。Ta/TaN膜31a〜31fは、PVD法で形成したTa(15nm)/TaN(5nm)(=上層/下層)の積層膜を用いた。
金属配線材としては、1.2atm%のAlを含むCuターゲットを用いてPVD法によりシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成した。各配線層の高さは、CuAl膜30a〜30eを170nm、CuAl膜30fを300nmとした。また、Cu−CMP時に、配線層間絶縁膜の表面を保護するために、ハードマスク膜などを挿入した構造としても良い。ハードマスク膜としては、シリコン酸化膜、シリコン炭化膜、シリコン炭素窒素膜、などであり、配線層間絶縁膜よりも比誘電率が高く、機械強度に優れることが好ましい。そのため、比誘電率3.0程度のSiOCH膜などを用いて良い。
上層の配線にはAlを用いており、PVD法によってTi/TiN35a、Al−Cu36、Ti/TiN35bを形成した。各金属膜の厚さは、Ti/TiN35aが0.3μm程度、Al−Cu36が1.5μm、Ti/TiN35bが0.3μmとした。このとき、溝状ビアホール内には金属を連続的に埋め込んだ。その上層はパッシベーション膜としてのシリコン酸窒化膜34によって覆った。
以上の配線構造を用いると、改質層の導入によって、配線間の容量と絶縁信頼性の両立することができるようになる。また、配線間隔70nmの櫛形のTEGを用いて配線間のTDDB試験を行ったところ、125℃にて2.5MV/cm電界を印加したところ、絶縁寿命は120時間以上となり、十分なTDDB耐性を有することを確認した。
また、このようなデバイスを形成後、ウェハをダイシングし、チップを切り出したのち、セラミックパッケージ上にマウント、樹脂封止を行った。チップサイズは25mm□とし、−65℃〜150℃の温度サイクル試験を1000サイクルまで行ったところ、本発明による改質層によって密着性が向上し、50チップ中、一つも剥がれが観察されなかったのに対して、改質層を形成しない条件では、密着性に劣るためチップの角から若干の剥がれが生じるサンプルが2チップ発生することを確認した。
なお、本実施形態はデュアルダマシン構造に関して詳しく説明したが、シングルダマシン配線に関しても同様に適用できる。また、本発明は、改質層の形成によって、低配線間容量と高絶縁信頼性を両立し、かつ密着性の向上が必要な多層配線の配線構造とその製造方法に関するものであれば、あらゆるものに適用することが可能であり、その利用の可能性において何ら限定するものではない。更に、幾つかの好適な実施の形態に関連付けして本発明を説明したが、これら実施の形態は単に実例を挙げて発明を説明するためのものであって、限定することを意味するものではないことが理解できる。
例えば本発明者によってなされた発明の背景となった利用分野であるCMOS回路を有する半導体製造装置技術に関して詳しく説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、フラッシュメモリ、FRAM(Ferro Electric Random Access Memory)、MRAM(Magnetic Random Access Memory)、抵抗変化型メモリ等のようなメモリ回路を有する半導体製品、マイクロプロセッサなどの論理回路を有する半導体製品、又はそれらを同時に掲載した混載型の半導体製品にも適用することができる。また、本発明は、少なくとも一部に埋め込み型合金配線構造を有する半導体装置、電子回路装置、光回路装置、量子回路装置、マイクロマシンなどにも適用することができる。
また、でき上がりからも本発明による改質層の形成を確認することができる。具体的には、配線層間膜はTEM−EELS測定により、金属配線周囲の配線層間絶縁膜を分析することで改質層の組成を確認することができる。ビア層間絶縁膜と配線層間絶縁膜との界面を分析することで確認することができる。
また、半導体製造装置内部に記憶された、マイクロコンピュータの制御プログラムを確認することでも、本発明による改質層の形成を確認することができる。例えば、環状型SiOCH膜のエッチング中にレジスト灰化シーケンスとは別に水素プラズマ処理シーケンスが含まれるように組まれたプログラムを用いているか、又はそのプログラムが記憶されているかどうかで、特定を行うことができる。又は、配線形成工程フローにて、エッチングでの溝加工後に改質させる工程が工程フローに記載されているかどうかで、特定を行うことができる。
本明細書を読んだ後であれば、当業者にとって等価な構成要素や技術による数多くの変更及び置換が容易であることが明白であるが、このような変更及び置換は、添付の請求項の真の範囲及び精神に該当するものであることは明白である。以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
なお、本発明は、次のように表現することもできる。(1)半導体基板上の絶縁膜に配線溝及びビアホールが形成され、該配線溝及び該ビアホールに金属を充填させた配線及び接続プラグが複数積層され、前記絶縁膜の少なくとも一部が、第一の絶縁膜から構成された多層配線において、少なくとも1層以上の前記第一の絶縁膜が、シリコン、酸素、炭素からなるシロキサン構造を含む絶縁膜であり、前記第一の絶縁膜内部のシロキサン構造は炭素原子数がシリコン原子数よりも多く、前記第一の絶縁膜と前記金属との界面に、前記第一の絶縁膜内部よりも炭素原子数が少なく、かつ酸素原子数が多い改質層が形成されていることを特徴とする半導体装置の形成方法において、前記シロキサン構造を含む絶縁膜上にハードマスク膜を形成する工程と、前記ハードマスク膜上にフォトレジストを塗布し溝パターニングする工程と、前記フォトレジストをマスクにドライエッチングによって前記ハードマスク膜内に溝を形成する工程と、酸素アッシングによって前記フォトレジスト膜を除去する工程と、前記ハードマスク膜をマスクにドライエッチングによって前記シロキサン構造を含む絶縁膜内に溝を形成する工程と、前記溝の水素プラズマ処理によって改質処理を行う工程と、を有することを特徴とする多層配線の形成方法。(2)前記水素プラズマ処理が、水素とヘリウムの混合ガスを用いたプラズマ処理であることを特徴とする前記(1)に記載の多層配線の形成方法。(3)前記水素プラズマ処理が、水素とアルゴンの混合ガスを用いたプラズマ処理であることを特徴とする前記(1)に記載の多層配線の形成方法。(4)前記水素プラズマ処理は、基板バイアスを印加して行うことを特徴とする前記(1)〜(3)記載の多層配線の形成方法。(5)前記シロキサン構造を含む絶縁膜が、少なくとも前記[化3]又は[化4]の原料を用いたプラズマ重合法によって形成することを特徴とする前記(1)〜(4)に記載の多層配線の形成方法。