JP5341703B2 - クランプ製作方向設計支援装置、クランプ製作方向設計支援方法、及び、クランプ製作方向設計支援プログラム - Google Patents

クランプ製作方向設計支援装置、クランプ製作方向設計支援方法、及び、クランプ製作方向設計支援プログラム Download PDF

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Description

本発明は、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するときのクランプ製作方向の設計を支援するクランプ製作方向設計支援装置、クランプ製作方向設計支援方法、及び、クランプ製作方向設計支援プログラムに関するものである。
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。
電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。電線は、所謂被覆電線である。コネクタは、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、電線の端部などに取りつけられかつ該電線の芯線と電気的に接続する。コネクタハウジングは、箱状に形成されかつ端子金具を収容する。
前記ワイヤハーネスを組み立てる際には、まず電線を所定の長さに切断した後、該電線の端部などに端子金具を取り付ける。必要に応じて電線同士を接続する。その後、端子金具をコネクタハウジング内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネスを組み立てる。
ワイヤハーネスの設計は、該ワイヤハーネスが配索される車両等の設計進行と平行して準備される。通常、ワイヤハーネスの経路レイアウトは車両等のメーカ(単に、カーメーカとよぶ)から要望が出され、これを受けた部品メーカがその要望を満たすワイヤハーネスを製造治具を用いて製造する。そして、頻繁に発生する設計変更に的確に対応し、布線板レイアウト及びこれにともなう経路レイアウト案の設計効率を向上させるワイヤハーネスの設計支援システム等が特許文献1に記載されている。
また、図14は、従来のワイヤハーネスの製造治具の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
この製造治具41は、長方形の幅広の基板42と、基板42上に立設された複数の布線治具43と、基板42に隣接して配置された部品棚44と、部品棚44上の部品ケース45とを少なくとも備えたものである。基板42と複数の布線治具43とで布線板46が構成されている。
布線板46は脚部47で傾斜状に支持されている。これは、作業者が奥行きの広い布線板46に対して電線48の布線作業を容易に且つ効率良く行えるようにするためである。布線板46を傾斜させない場合には奥側の布線治具43まで手が届かず、布線作業性が悪い。なお、奥行きの狭い布線板については傾斜状でなく水平に配置する。
布線とは電線48を一本づつ各布線治具43に沿って所要形状に配線することである。布線された複数本の電線48には保護チューブ49やプロテクタ等の部品が装着される。各電線48の端末には端子(図示せず)が圧着されており、各端子はコネクタハウジング内に挿入され、コネクタハウジングと端子とでコネクタ50が構成される。さらに、複数本の電線48がビニルテープ51で集束されて、ワイヤハーネス52が完成する。
このように完成したワイヤハーネス52は、自動車等に実装する場合、特許文献2等に示すクランプを用いて自動車等のパネルに取り付けることが知られている。詳細には、ワイヤハーネスの複数箇所にクランプを装着し、各クランプをパネルの配索経路に設けられた取り付け孔に取り付けることで、ワイヤハーネスをパネルに取り付けていた。
特開2004−46815号公報 特開2006−191755号公報
しかしながら、ワイヤハーネスの幹線をクランプで固定する場合、その近くで幹線から枝線が分岐していると、その分岐角度によっては幹線に過剰な捻れが生じてしまい、クランプを相手部材の穴に固定し難い、固定しても外れてしまう、クランプに多大な負荷がかかってしまう、等の問題が生じていた。ワイヤハーネスは複数の枝線が分岐しており、その分岐形状の多彩であるため、上述した問題が生じるか否かを、設計時等に設計者が判断するのは困難であった。しかも、立体形状のワイヤハーネスの布線板レイアウトを設計すると、立体形状のワイヤハーネスを折り曲げながら平面化することになるため、クランプの取付位置に生じる捻れ量を考慮するのは困難であった。
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、ワイヤハーネスに対するクランプの製作方向の設計を支援するクランプ製作方向設計支援装置、クランプ製作方向設計支援方法、及び、クランプ製作方向設計支援プログラムを提供することを課題としている。
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のクランプ製作方向設計支援装置は、図1の基本構成図に示すように、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するときのクランプ製作方向の設計を支援するクランプ製作方向設計支援装置であって、前記幹線における前記クランプの装着位置、前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記クランプの製作方向を示すクランプ情報を取得するクランプ情報取得手段M3と、前記枝線を前記枝装着位置に曲げたときの前記分岐位置における前記幹線の幹捻れ角度を、前記製造情報と前記物性情報と前記クランプ情報とに基づいて検出する幹捻れ角度検出手段M4と、前記検出した幹捻れ角度に対応した前記クランプのクランプ反力を検出するクランプ反力検出手段M5と、前記検出した幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて、前記クランプの装着位置に対応した前記幹線における前記分岐位置の幹モーメントを算出する幹モーメント算出手段M6と、前記算出した幹モーメントが予め定められたモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する判定手段M7と、前記判定手段M7が判定した判定結果に基づいて、前記クランプ製作方向の設計を支援する設計支援情報を生成して出力する設計支援情報生成手段M8と、を備えることを特徴とする。
上記請求項1に記載した本発明のクランプ製作方向設計支援装置によれば、製造情報取得手段M1によって製造情報、物性情報取得手段M2によって物性情報、クランプ情報取得手段M3によってクランプ情報がそれぞれ取得されると、枝線を枝装着位置に曲げたときの分岐位置における幹線の幹捻れ角度が、幹捻れ角度検出手段M4によってそれらの情報に基づいて検出される。そして、該幹捻れ角度に対応したクランプ反力が、クランプ反力検出手段M5によって検出されると、クランプの装着位置に対応した幹線における分岐位置の幹モーメントが、幹モーメント算出手段M6によって幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて算出される。なお、クランプ反力は、そのクランプ反力許容範囲に収まっていることを前提とする。そして、判定手段M7によって幹モーメントがモーメント許容範囲に収まっているか否かが判定され、該判定結果に基づいた設計支援情報が設計支援情報生成手段M8によって生成されて、設計を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に出力される。なお、本発明のクランプ製作方向とは、クランプをワイヤハーネスに取り付ける(装着する)クランプ方向である。そして、クランプ製作方向は、クランプを車体等に装着する装着方向とは異なる方向となっている。
請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載のクランプ製作方向設計支援装置において、前記モーメント許容範囲内に前記幹モーメントが収まるように、前記クランプの装着位置から前記分岐位置までの分岐距離と前記枝線の太さとに基づいて、前記クランプの製作方向を調整する調整角度を算出する調整角度算出手段M9を有し、前記設計支援情報生成手段M8は、前記判定手段M7による判定結果と前記算出した調整角度とに基づいて前記設計支援情報を生成する手段であることを特徴とする。
上記請求項2に記載した本発明のクランプ製作方向設計支援装置によれば、調整角度算出手段M9によってモーメント許容範囲内に幹モーメントが収まるように、クランプの製作方向を調整する調整角度が算出されると、該調整角度と判定手段M7による判定結果と基づいた設計支援情報が設計支援情報生成手段M8によって生成されて出力される。
請求項3記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1又は2に記載のクランプ製作方向設計支援装置において、前記幹線は、前記クランプの装着位置の両側の各々で前記枝線が複数分岐しており、前記幹モーメント算出手段M6は、前記クランプの装着位置から両側の前記分岐位置の各々にわたる前記幹線の幹モーメントを算出する手段であり、前記判定手段M7は、前記算出した両側の幹モーメントが前記モーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する手段であることを特徴とする。
上記請求項3に記載した本発明のクランプ製作方向設計支援装置によれば、幹モーメント算出手段M6によってクランプの装着位置からその両側の分岐位置の各々にわたる幹線の幹モーメントが算出されると、それらの幹モーメントがモーメント許容範囲に収まっているか否かが判定手段M7によって判定される。
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載のクランプ製作方向設計支
援方法は、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するときのクランプ製作方向の設計を、前記いずれかのクランプ製作方向設計支援装置を用いて支援するクランプ製作方向設計支援方法であって、前記製造情報取得手段が、前記幹線における前記クランプの装着位置、前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得工程と、前記物性情報取得手段が、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得工程と、前記クランプ情報取得手段が、前記クランプの製作方向を示すクランプ情報を取得するクランプ情報取得工程と、前記幹捻れ角度検出手段が、前記枝線を前記枝装着位置に曲げたときの前記分岐位置における前記幹線の幹捻れ角度を、前記製造情報と前記物性情報と前記クランプ情報とに基づいて検出する幹捻れ角度検出工程と、前記クランプ反力検出手段が、前記検出した幹捻れ角度に対応した前記クランプのクランプ反力を検出するクランプ反力検出工程と、前記幹モーメント算出手段が、前記検出した幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて、前記クランプの装着位置に対応した前記幹線における前記分岐位置の幹モーメントを算出する幹モーメント算出工程と、前記判定手段が、前記算出した幹モーメントが予め定められたモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する判定工程と、前記設計支援情報生成手段が、前記判定した判定結果に基づいて、前記クランプ製作方向の設計を支援する設計支援情報を生成して出力する設計支援情報生成工程と、を備えることを特徴とする。
上記請求項4に記載した本発明のクランプ製作方向設計支援方法によれば、製造情報、物性情報、クランプ情報をそれぞれ取得すると、枝線を枝装着位置に曲げたときの分岐位置における幹線の幹捻れ角度をそれらの情報に基づいて検出する。そして、該幹捻れ角度に対応したクランプ反力を検出すると、クランプの装着位置に対応した幹線における分岐位置の幹モーメントを、幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて算出する。そして、幹モーメントがモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定し、該判定結果に基づいた設計支援情報を生成して、設計を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に出力する。
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項5記載のクランプ製作方向設計支援プログラムは、図1の基本構成図に示すように、幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するときのクランプ製作方向の設計を支援するクランプ製作方向設計支援装置のコンピュータを、前記幹線における前記クランプの装着位置、前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記クランプの製作方向を示すクランプ情報を取得するクランプ情報取得手段M3と、前記枝線を前記枝装着位置に曲げたときの前記分岐位置における前記幹線の幹捻れ角度を、前記製造情報と前記物性情報と前記クランプ情報とに基づいて検出する幹捻れ角度検出手段M4と、前記検出した幹捻れ角度に対応した前記クランプのクランプ反力を検出するクランプ反力検出手段M5と、前記検出した幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて、前記クランプの装着位置に対応した前記幹線における前記分岐位置の幹モーメントを算出する幹モーメント算出手段M6と、前記算出した幹モーメントが予め定められたモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する判定手段M7と、前記判定手段M7が判定した判定結果に基づいて、前記クランプ製作方向の設計を支援する設計支援情報を生成して出力する設計支援情報生成手段M8と、して機能させるためのクランプ製作方向設計支援プログラムである。
上記請求項5に記載した本発明のクランプ製作方向設計支援プログラムを実行したコンピュータは、製造情報、物性情報、クランプ情報をそれぞれ取得すると、枝線を枝装着位置に曲げたときの分岐位置における幹線の幹捻れ角度をそれらの情報に基づいて検出する。そして、コンピュータは該幹捻れ角度に対応したクランプ反力を検出すると、クランプの装着位置に対応した幹線における分岐位置の幹モーメントを、幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて算出する。そして、コンピュータは幹モーメントがモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定し、該判定結果に基づいた設計支援情報を生成して、設計を支援するために例えば通信装置、表示装置、プリンタ、等に出力する。
以上説明した本発明によれば、枝線を枝装着位置に曲げたときの分岐位置における幹線の捻れ角度とそのクランプ反力を検出し、これらからクランプの装着位置に対応した幹線における分岐位置の幹モーメントを算出し、該幹モーメントがモーメント許容範囲に収まっているか否かの判定結果に基づいて設計を支援するようにしたことから、幹線におけるクランプの装着位置の近くで枝線が分岐していても、該枝線を曲げた際に幹モーメントがモーメント許容範囲に収まっているか否かの判定結果に基づいてクランプ製作方向の設計を支援することができるため、クランプに多大な負荷がかかってしまうことを防止できる。従って、クランプが相手部材の取付穴に取り付けられない、取り付けても外れてしまう、クランプが負荷によって壊れてしまう、等の問題が発生することを防止できるため、設計の信頼性を向上させることができる。そして、モーメント許容範囲を変化させるようにすれば、製品の仕様等に適した設計を支援することができる。さらに、クランプが適切な製作方向に設計されていれば、作業者等はクランプを相手部材に取り付ける際に、その取り付け方向を調整する等の作業が不要となるため、作業性の向上に貢献することができる。
また、モーメント許容範囲内に幹モーメントが収まるようにクランプの製作方向を調整する調整角度を算出することで、より一層的確な設計を支援することができるため、設計者は設計支援情報を参照することで、クランプの製作方向をどの方向にどれだけずらせば良いのかを、容易且つ正確に判断することができる。
さらに、クランプの装着位置からその両側の分岐位置の各々にわたる幹モーメントを算出し、それらが幹モーメントがモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定することで、クランプ装着位置の両側で幹線から枝線が分岐していても、その幹捻れ角度を考慮した設計を支援することができるため、設計者はより一層適切な設計を行うことができる。
本発明に係るクランプ製作方向設計支援装置の基本構成を示す構成図である。 ワイヤハーネスの3次元形状の一例を示すで図であり、(a)は全体図、(b)は(a)中の部分Aの拡大図をそれぞれ示している。 本発明に係る幹線、枝線、曲げポイントを説明するための図である。 クランプ製作方向設計支援装置の概略構成の一例を示す構成図である。 クランプ製作方向設計支援プログラムと各種情報の一例を説明するための図である。 ワイヤハーネスを布線板に展開したときの布線平面形を示す布線レイアウトの一例を示す図である。 幹線におけるクランプの装着位置と枝線に分岐位置との関係を説明するための図である。 クランプ角度による反力を測定例を説明するための図である。 クランプ製作方向と幹モーメントとモーメント許容範囲との関係例1を説明するための図であり、(a)は幹捻れ角度と幹線上位置との関係を示し、(b)は幹モーメントとモーメント許容範囲との関係を示している。 クランプ製作方向と幹モーメントとモーメント許容範囲との関係例2を説明するための図であり、(a)は幹捻れ角度と幹線上位置との関係を示し、(b)は幹モーメントとモーメント許容範囲との関係を示している。 クランプ製作方向と幹モーメントとモーメント許容範囲との関係例3を説明するための図であり、(a)は幹捻れ角度と幹線上位置との関係を示し、(b)は幹モーメントとモーメント許容範囲との関係を示している。 クランプ製作方向と幹モーメントとモーメント許容範囲との関係例4を説明するための図であり、(a)は幹捻れ角度と幹線上位置との関係を示し、(b)は幹モーメントとモーメント許容範囲との関係を示している。 図4中のCPUが実行する製作方向設計支援処理の一例を示すフローチャートである。 従来の布線治具を用いた布線装置の一形態を示す図である。
以下、本発明に係るクランプ製作方向設計支援装置を用いてワイヤハーネス(W/H)を布線板に展開したときの布線平面形を示す布線レイアウトの設計を支援する場合の一実施の形態を、図2〜図11の図面を参照して説明する。
ワイヤハーネスWは、図2(a)に示すように、3次元形状(立体形状)で車両等に配索される。ワイヤハーネスWは、複数の電線(電線束)W1と、該電線W1の端部などに取り付けられるコネクタW2と、を有している。電線W1は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。コネクタW2は、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。
ワイヤハーネスWは、図2(b)及び図3に示すように、幹線Wmと、該幹線Wmから分岐する枝線Wbと、を有している。そして、本最良の形態では、幹線Wmから枝線Wbが分岐する分岐点P11〜P15と、幹線Wmを折り曲げる折り曲げ点P16を曲げポイントP1とする場合について説明する。つまり、分岐点P11〜P15に対する曲げポイントP1では、幹線Wmが基準電線、枝線Wbが曲げ対象電線にそれぞれ相当し、また、折り曲げ点P16に対応する曲げポイントP1では、幹線Wmが基準線及び曲げ対象電線に相当している。
枝線Wbは、幹線Wm(装着経路)に対して装着角度θbeで分岐(交叉)している。つまり、3次元形状のワイヤハーネスWにおいて、各枝線Wbに対して装着角度θbeがそれぞれ設定されている。装着角度θbeは、カーメーカー等から指示されたワイヤハーネスWの経路に基づいて設計されている。
なお、曲げポイントP1については、布線板30(図6参照)内に収まるように折り曲げる折り曲げ点、枝線Wbから孫線が分岐する分岐点P13,14などの種々異なる曲げ対象電線の基準点と設定することができる。そして、支援対象とする曲げポイントP1の設定は、設計者に選択させる、自動的に算出するなど種々異なる実施形態とすることができる。
図4において、クランプ製作方向設計支援装置10は、周知であるパーソナル・コンピュータ(パソコン)を用いており、予め定めたプログラムに従って装置全体の動作の制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11を有している。このCPU11には、バスBを介してCPU11のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM12、CPU11の処理作業に必要な各種データを格納する作業エリア等を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM13が接続されている。
CPU11には、記憶装置14がバスBを介して接続されており、この記憶装置14にはハードディスク装置、大容量のメモリなどが用いられる。記憶装置14は、図5に示すように、クランプ製作方向設計支援プログラムP、経路情報D1、製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4、等の各種情報を記憶する記憶領域を有している。クランプ製作方向設計支援プログラムPは、CD−ROM等からインストールされたり、ネットワークを介してダウンロードされて記憶装置14に記憶される。
クランプ製作方向設計支援プログラムPは、幹線Wmと該幹線Wmから分岐する枝線Wbを有するワイヤハーネスWを相手部材に組み付ける時に用いるクランプC(例えば図7参照)を、前記ワイヤハーネスWに装着するときのクランプ製作方向の設計を支援するクランプ製作方向設計支援装置10のCPU(コンピュータ)11を、前記幹線Wmにおける前記クランプCの装着位置、前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段M1と、前記ワイヤハーネスW及び前記クランプCの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段M2と、前記クランプCの製作方向を示すクランプ情報を取得するクランプ情報取得手段M3と、前記枝線Wbを前記枝装着位置に曲げたときの前記分岐位置における前記幹線の幹捻れ角度を、前記製造情報と前記物性情報と前記クランプ情報とに基づいて検出する幹捻れ角度検出手段M4と、前記検出した幹捻れ角度に対応した前記クランプCのクランプ反力を検出するクランプ反力検出手段M5と、前記検出した幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて、前記クランプの装着位置に対応した前記幹線における前記分岐位置の幹モーメントを算出する幹モーメント算出手段M6と、前記算出した幹モーメントが予め定められたモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する判定手段M7と、前記判定手段M7が判定した判定結果に基づいて、前記クランプ製作方向の設計を支援する設計支援情報を生成して出力する設計支援情報生成手段M8と、して機能させるためのクランプ製作方向設計支援プログラムとなっている。
経路情報D1は、図2に示すワイヤハーネスWを示すCAD(computer aided design)などの3次元形状データと、ワイヤハーネスWの回路図データと、前記クランプCのクランプ位置データと、を有している。経路情報D1は、ワイヤハーネスWの品番等に対応して設けられており、布線レイアウトの設計に応じて予め定められたデータベースから取得して記憶したり、記憶装置14に記憶しておくなど種々異なる実施形態とすることができる。
製造情報D2は、製造に用いる布線板30の種類等を示す識別データと、幹線Wm、枝線Wb、クランプC、等の位置を示す位置データと、布線板30の大きさ示す寸法データ(例えば、縦900mm×横1400mmなど)と、布線可能領域データと、を有している。そして、製造情報D2は、ワイヤハーネスWの品番等に対応して設けられている。
物性情報D3は、ワイヤハーネスW及びクランプの品番、サイズ、物性、形状、等の各種データを有している。なお、物性データは、ワイヤハーネスWにおける幹線Wm、枝線Wbの曲げ特性、強度、等を示すデータとなっている。物性情報D3は、経路情報D1に関連付けられている。より詳細には、物性情報D3は、幹線Wmに対応したデータとして、長さLt、直径Dt、ヤング率Et、ポアソン比γt、装着位置Pt(Xt,Yt,Zt)等のデータを有している。物性情報D3は、枝線Wbに対応したデータとして、長さLb、直径Db、ヤング率Eb、ポアソン比γb、装着位置Pb(Xb,Yb,Zb)等のデータを有している。物性情報D3は、クランプCに対応したデータとして、サイズDc、装着位置Pc(Xc,Yc,Zc)、等のデータを有している。
クランプ情報D4は、ワイヤハーネスWに対するクランプCの製作方向角θを示すデータを有している。そして、クランプ情報D4は、例えば、前記クランプCが相手部材に装着されたときに何kgまで耐えることができるかの保持力(クランプにかかる最大の反力)等の最大許容反力Mを示すデータを有している。クランプ情報D4は、物性情報D3に関連付けられている。なお、前記クランプCは、公知であるように、ワイヤハーネスWに装着する装着部と、該装着部の外周面に一体に設けられて車体等の相手部材の挿入口に挿入される挿入部と、を有し、合成樹脂等によって形成されている。
また、CPU11には、入力装置15、通信装置16、表示装置17等がバスBを介して接続されている。そして、入力装置15は、キーボード、マウス等を有しており、設計者等の操作に応じた入力データをCPU11に出力する。通信装置16は、LANカード、携帯電話用モデム等の通信機器を用いている。そして、通信装置16は、受信した情報をCPU11に出力するとともに、CPU11から入力された情報を指示された送信先に送信する。
表示装置17は、周知である液晶ディスプレイ、CRT等の各種表示器が用いられる。そして、表示装置17は、CPU11の制御によって各種情報を表示する。つまり、表示装置17は、それらの各種情報に基づいて分岐レイアウトの設計を支援する各種画面を表示して、設計者の設計を支援する。
次に、幹線Wmに設けたクランプCの両側で枝線Wbが分岐している構成における製作方向調整の一例を、図7の図面を参照して以下に説明する。
図7において、ワイヤハーネスWは、幹線Wmの分岐位置P21,P22の各々で枝線Wbが分岐している。クランプCを固定するクランプ位置P31は、分岐位置P21,P22の間に位置している。そして、幹線Wmにおいて、分岐位置P21からクランプ位置P31までが分岐距離Lt1、クランプ位置P31から分岐位置P22までが分岐距離Lt2となっている。幹線Wmは、分岐距離Lt1部分が直径Dt1、分岐距離Lt2部分が直径Dt2となっている。
図7中の一点破線で示す枝線製造線R11は、幹線Wmの分岐位置P21から分岐する枝線Wbを製造する際の製造時位置となっている。同様に、枝線製造線R12は、幹線Wmの分岐位置P22から分岐する枝線Wbを製造する際の製造時位置となっている。そして、枝線Wbの各々は、ワイヤハーネスWの車両(相手部材)に対する装着時に、装着位置P41,P42に向けて曲げられる。そして、枝線Wbは、設計上では直線状の設計経路Ldとなるが、実際の枝線Wbは直線状にはならずに、弓状に曲がって図7に示す装着時経路Lrとして配索される。
弓状に曲がった枝線Wbの各々に接し且つ分岐位置P21,P22を通る接線R21,R22を設定する。そして、接線R21,R22と枝線製造線R11,R12とに挟まれた挟角が、枝線Wbを配索した時に幹線Wmの捻れにより生じる角度である幹捻れ角度α,βとする。また、枝線Wbが装着されたとき(曲げられたとき)、クランプCには図7中の矢印で示すクランプ反力Mが生じる。そして、本発明では、クランプ反力Mを軽減するように、クランプCがワイヤハーネスWに装着された角度を、調整するクランプCの調整角度dθとして求める。なお、図7中のγは、クランプCに車両に対する装着方向θeとクランプCの製作方向θとの角度差を示している。また、調整角度dθは、製作方向θとクランプCの理想の製作方向θmとの角度差を示している。クランプCの理想の製作方向θmとは、クランプCにほとんど反力Mのかからない状態を意味している。
次に、クランプ反力Mと幹捻れ角度α,βの検出方法の一例を説明する。そして、本実施形態では、試験結果と公知である有限要素法(FEM)解析を用いてクランプ反力Mと幹捻れ角度α,βを求める場合について説明する。
まず、複数種類(例えば、ワイヤハーネスの種類、材質、構成、等)のワイヤハーネスWに対して、複数種類のクランプCの各々を装着し、クランプCの反力測定用センサーが取り付け穴に設けられた相手部材に、そのクランプCを実際に取り付ける。そして、その状態でワイヤハーネスWの枝線Wbを、図8に示すように、上述した装着位置P41,P42を徐々に変化させて、幹捻れ角度α,βを検出すると共に、反力測定用センサーが検出した力をクランプ反力Mとして収集する。なお、図8において、縦軸はクランプ反力[Kg*cm]、横軸は枝装着角度[゜]をそれぞれ示している。
続いて、FEM解析ソフトウェアを用いて、クランプCの装着によるクランプCの反力を算出する。なお、FEM解析は、設計対象物を数学的にモデル化し、その数学モデルに関する挙動を解析するシミュレーションである。そして、FEM解析を用いて計算された線状物体の形状は、解析の過程で線状物体の捻れや曲げなどの力学的影響が考慮されるので、実際の線状物体が取り付けられたときの形状に非常に近い形状を再現できることが知られている。
FEM解析のパラメータとしては、枝線Wbの装着位置Pb、長さLb、直径Db、ヤング率Eb、ポアソン比γbと、幹線Wmの長さLt、直径Dt、ヤング率Et、ポアソン比γtと、が挙げられる。そして、FEM解析ソフトウェアは、FEMの大変形解析を行うことで、クランプCに生じるクランプ反力Mを算出する。
このように求めたクランプ反力Mと幹捻れ角度α,βは、表1に示すように、ワイヤハーネスW及びクランプCに関連付けられ、データベース化された測定情報DB1として記憶装置14等に記憶される。そして、該測定情報DB1は、枝属性と幹属性とクランプ属性とに分類されており、それらに幹捻れ角度α,βを関連付けている。各属性は、上述したパラメータによって構成している。よって、該測定情報DB1から幹捻れ角度α,βを抽出する場合は、各属性の中から検出対象となるワイヤハーネスW及びクランプCに類似した属性の項目(No)を抽出することができる。なお、本実施形態では、測定情報DB1を用いて幹捻れ角度α,βを求める場合について説明するが、上述したパラメータから幹捻れ角度α,βを算出するソフトウェアを用いるなど種々異なる実施形態とすることができる。
Figure 0005341703
続いて、FEM解析ソフトウェアを用いて、幹線Wm内の分布を幹モーメントMa,Mbを求める。なお、幹モーメントMaは幹線Wmの分岐距離Lt1部分、幹モーメントMbは幹線Wmの分岐距離Lt2部分に対応したモーメント(幹線Wm内の力分布)となっている。そして、図9(a)は、幹線Wmにおける分岐位置P21,P22に対応した幹捻れ角度α,βと幹線Wmのクランプ位置P31におけるクランプ装着方向θeとの関係を示している。そして、図9(b)は、幹線Wmにおけるクランプ位置P31を中心として分岐位置P21,P22の幹モーメントMa,Mbとモーメント許容範囲Qとの関係を示している。
なお、モーメント許容範囲Qは、クランプCのクランプ装着方向θeで幹線WmをクランプCで固定する場合に、過剰な捻れが幹線Wmのクランプ位置P21〜P22の間に生じるか否かを判定するための範囲である。そして、モーメント許容範囲Qは幹線Wmの分岐位置P21,P22及びクランプCの特性に適した範囲が予め定められ、上述した測定情報DB1の各項目に関連付けられている。
図9(a)において、クランプCの製作方向θに対し、分岐位置P21,P22の各々が幹捻れ角度α,βである場合、クランプ位置P31に過剰なモーメントが生じていないと、分岐位置P21,P22の幹捻れ角度α,βを結ぶ直線T上近傍に、クランプ位置P31の捻れ角度γが位置付けられる。ところが、図9(a)に示すように、クランプ位置P31の捻れ角度γは直線T上の近傍にはない。そして、図9(b)に示すように、クランプ位置P31から分岐位置P21を参照すると幹モーメントMaが生じており、また、クランプ位置P31から分岐位置P22を参照すると幹モーメントMbが生じている。そして、図9(a)に示す分岐位置P21とクランプ位置P31との勾配が、図9(b)に示す幹モーメントMaの値となる。また、図9(a)に示すクランプ位置P31と分岐位置P22との勾配が、図9(b)に示す幹モーメントMbの値となる。
幹モーメントMa,Mbとその差であるモーメントMcは、予め定められたモーメント許容範囲Qから逸脱していることから、現状のクランプCの製作方向θと装着方向θeでは、幹線WmをクランプCで固定する場合に、過剰な捻れが生じるため、クランプCの製作方向θを調整する必要があると判定できる。即ち、幹モーメントMa,Mbの双方をモーメント許容範囲Q内に収める必要がある。
そこで、図10(a)に示すように、クランプ位置P31の捻れ角度γが前記直線T上近傍となるような調整角度dθを求め、製作方向θから調整角度dθ分だけ調整した方向を調整製作方向θmとする。すると、図10(b)に示すように、クランプ位置P31から分岐位置P21,P22を参照すると、幹モーメントMa,Mbはほとんどなくなり、モーメントMcは零になる(Mc=0)。そして、分岐位置P21〜P22間に勾配がある、即ち、捻れているため、図10(b)に示すグラフにも幹モーメントの値は存在している。しかし、クランプ位置P31には、クランプCに対する反力は発生していない。よって、クランプCの製作方向θを調整製作方向θmに変更することで、幹線WmをクランプCで固定する場合に、過剰な捻れが生じることを防止できる。
また、図10では調整製作方向θmを理想的な方向にすることで、分岐位置P21,P22の双方の幹捻れ角度を解消するようにしている。さらに、本発明はモーメント許容範囲Qに収まれば、分岐位置P21,P22のどちらかに捻れが残った調整製作方向θmとすることもできる。その一例を以下に説明する。
まず、図11(a)に示すように、クランプ位置P31の捻れ角度γが前記直線Tの近傍となるような調整角度dθ’(dθ>dθ’)を求め、装着角度θから調整角度dθ’分だけ調整した方向を調整製作方向θm’とする。すると、図11(b)に示すように、クランプ位置P31から分岐位置P21,P22を参照すると、幹モーメントMa,Mbはぎりぎりモーメント許容範囲Q内に収まっている。よって、調整角度dθ’も本発明の有効な調整製作方向θm’を求めることができる。
また、図12(a)に示すように、クランプ位置P31の捻れ角度γを調整した際に、前記直線Tを越えて当該直線Tの近傍に位置付ける場合でも、図12(b)に示すように、クランプ位置P31から分岐位置P21,P22を参照すると、幹モーメントMa,Mbはぎりぎりモーメント許容範囲Q内に収まっている。そして、図11(b)と比較しても、幹モーメントMa,Mbは小さくなっていることから、調整角度dθ’’を求めて、本発明の有効な調整製作方向θm’’を求めることができる。よって、図11,12に示す調整角度dθ’,dθ’’で製作方向θを調整しても、幹線WmをクランプCで固定する場合に、過剰な捻れが生じることを防止できる。
また、クランプ反力Mを低減するためのクランプCの調整角度dθは、例えば以下のようにシミュレーションで計算することができる。まず、幹線Wmの分岐位置P21,P22の幹捻れ角度α,βをFEM解析ソフトウェアで算出する。そして、幹捻れ角度α,βと幹線Wmの形状を示すパラメータ(Lt1,Lt2,Dt1,Dt2)を用いた算出ソフトウェアでクランプCの調整角度dθを算出する。このとき、幹線Wmは図7に示すような形状において、幹線Wmの分岐距離Lt1,Lt2が等しく、その部分の直径Dt1,Dt2の各々が等しい場合は、調整角度dθ=(α+β)/2−γとなる。
このようにクランプCの調整角度dθを算出し、該調整角度に対応したクランプ反力Mcと幹捻れ角度α,βと幹モーメントMa,Mbを算出し、幹モーメントMa,Mbがモーメント許容範囲Qに収まるか否かを判定する。そして、モーメント許容範囲Q内に収まる幹モーメントMa,Mbに対応した調整角度dθが、理想的なクランプCの製作方向を示すことになる。
次に、上述したCPU11がクランプ製作方向設計支援プログラムPを実行したときの製作方向設計支援処理の一例を、図13のフローチャートを参照して以下に説明する。なお、説明を簡単化するために、図7に示すように、クランプCの装着位置P31の両側に分岐位置P21,P22がある場合について説明する。
CPU11は、記憶装置14に記憶しているクランプ製作方向設計支援プログラムPを実行すると、ステップS11(製造情報取得手段に相当)において、設計支援対象のワイヤハーネスWに対応した経路情報D1及び製造情報D2を記憶装置14等から取得してRAM13に記憶し、その後ステップS12の処理に進む。なお、設計支援対象のワイヤハーネスWは、表示装置17に入力画面、選択画面、等を表示させて、設計者等に入力、選択させる。
CPU11は、ステップS12(物性情報取得手段に相当)において、前記取得した製造情報D2に関連付けられた物性情報D3を記憶装置14等から取得してRAM13に記憶し、ステップS13(クランプ情報取得手段に相当)において、前記取得した物性情報D3に関連付けられたクランプ情報D4を記憶装置14等から取得してRAM13に記憶し、その後ステップS14の処理に進む。
CPU11は、ステップS14(幹捻れ角度検出手段に相当)において、前記取得した製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4から上述したパラメータを抽出し、該パラメータを用いて前記FEM解析ソフトウェアを実行して幹捻れ角度α,βを検出する。そして、CPU11は、ステップS15(クランプ反力検出手段に相当)において、前記検出した幹捻れ角度α,βに対応したクランプ反力Mを記憶装置14等の測定情報DB1の中から検索してRAM13に記憶し、その後ステップS16の処理に進む。
CPU11は、ステップS16(幹モーメント算出手段に相当)において、前記FEM解析により枝装着による幹線Wm内の分布を幹モーメントMa,Mbを算出し、該幹モーメントMa,Mbをクランプ反力Mに関連付けてRAM13に記憶し、その後ステップS17の処理に進む。
CPU11は、ステップS17(判定手段に相当)において、設計支援対象のワイヤハーネスWに対応したモーメント許容範囲Qを取得し、該モーメント許容範囲Q内に該幹モーメントMa,Mbが収まっているか否かを、クランプ反力がクランプ反力許容範囲に収まっている状態で判定する。なお、モーメント許容範囲Q内に収まっているか否かの判定条件としては、例えば、幹モーメントMa,Mbの双方がモーメント許容範囲Q内に収まっているか否かとしたり、幹モーメントMa,Mbの何れか一方がモーメント許容範囲Q内に収まっているか否かなどのように、任意に定めることができる。そして、CPU11は、モーメント許容範囲Q内に収まっていると判定した場合(S17でYes)、ステップS19の処理に進む。一方、CPU11は、モーメント許容範囲Q内に収まっていないと判定した場合(S17でNo)、ステップS18の処理に進む。
CPU11は、ステップS18(調整角度算出手段に相当)において、クランプCの製作方向角θを徐々に変化させて、各装着角度θに対応した幹モーメントMa,Mbを上述したように算出し、該幹モーメントMa,Mbがモーメント許容範囲Q内に収まっているかを判定し、調整したクランプCの製作方向θと調整製作方向θmとの差を調整角度dθとし、その判定結果を調整角度用判定結果として各々関連付けてRAM13の調整角度領域に記憶し、その後ステップS19の処理に進む。
CPU11は、ステップS19(設計支援情報生成手段に相当)において、ステップS17の判定結果と、RAM13の調整角度領域に調整角度dθ及びその判定結果が記憶されている場合はそれらのデータとに基づいて、クランプ製作方向の設計を支援するための設計支援情報をRAM13に生成し、該設計支援情報の表示要求を表示装置17に出力することで、表示装置17によって設計支援情報が表示され、その後本フローチャートの処理を終了する。なお、設計支援情報の一例としては、判定結果や図9〜12に示す幹内力分布図、等を表示して設計を支援するための情報となっている。
以上の説明からも明らかなように、CPU11がクランプ製作方向設計支援プログラムPを実行することで、請求項中の製造情報取得手段M1、物性情報取得手段M2、クランプ情報取得手段M3、幹捻れ角度検出手段M4、クランプ反力検出手段M5、幹モーメント算出手段M6、判定手段M7、設計支援情報生成手段M8、等の各種手段としてCPU11(コンピュータ)が機能することになる。
次に、上述したクランプ製作方向設計支援装置10の動作(作用)の一例を以下に説明する。
ワイヤハーネスWのクランプCの製作方向を設計する際に、クランプ製作方向設計支援装置10は設計者等によって起動される。クランプ製作方向設計支援装置10は、設計者に設計支援対象のワイヤハーネスWを識別するための識別情報等を入力させる。クランプ製作方向設計支援装置10は、当該識別情報等に対応した経路情報D1、製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4、等を収集する。
クランプ製作方向設計支援装置10は、図7に示すように、経路情報D1に基づいて、幹線WmにおけるクランプCの装着位置P31とその両側に分岐位置P21,P22を特定する。なお、この特定方法については、設計者等にクランプCの装着位置P31を選択させ、該装着位置P31に対応した分岐位置P21,P22をクランプ製作方向設計支援装置10が自動で特定したり、選択者等にクランプCの装着位置P31及び分岐位置P21,P22の双方を選択させる、等の種々異なる実施形態とすることができる。
クランプ製作方向設計支援装置10は、特定したクランプCの装着位置P31及び分岐位置P21,P22に対応した前記パラメータを、製造情報D2、物性情報D3、クランプ情報D4等から抽出する。クランプ製作方向設計支援装置10は、前記パラメータを用いてFEM解析ソフトウェアを実行して、枝線Wbを枝装着位置P41,P42(図7参照)に曲げたときの装着位置P31に対する幹捻れ角度α,βを検出し、該幹捻れ角度α,βに対応したクランプCのクランプ反力Mを検出する。
続いて、クランプ製作方向設計支援装置10は、検出した幹捻れ角度α,β及びクランプ反力Mに基づいて、前記クランプCの装着位置P31から両側の分岐位置P21,P22にわたる幹線Wmの幹モーメントMa,Mbを算出する(図9参照)。そして、クランプ製作方向設計支援装置10は、幹モーメントMa,Mbが前記モーメント許容範囲Q内に収まっているか否かを、クランプ反力がクランプ反力許容範囲に収まっている状態で判定し、収まっていると判定した場合は、その判定結果を示す設計支援情報を生成し、これを表示装置17に出力することで、表示装置17が設計支援情報を設計者等に対して表示する。よって、設計者等はその設計支援情報を参照することで、現状のクランプCの製作方向で問題がないことを確認することができる。
また、クランプ製作方向設計支援装置10は、幹モーメントMa,Mbが前記モーメント許容範囲Q内に収まっていないと判定した場合、モーメント許容範囲Q内に幹モーメントMa,Mbが収まるように、クランプCの装着位置P31から前記分岐位置P21,P22までの分岐距離と枝線Wbの太さとに基づいて、クランプCの製作方向θを調整し、クランプCの調整角度dθを算出する。そして、クランプCの調整角度dθは、モーメント許容範囲Q内に収まっている幹モーメントMa,Mbに対応した角度となっており、角度範囲とすることもできる。
クランプ製作方向設計支援装置10は、幹モーメントMa,Mbが前記モーメント許容範囲Q内に収まっていないとの判定結果と、算出したクランプCの調整角度dθと、を示す設計支援情報を生成し、これを表示装置17に出力することで、表示装置17が設計支援情報を設計者等に対して表示する。よって、設計者等はその設計支援情報を参照することで、クランプ装着角度dθに基づいてクランプCの製作方向θをどのくらい、どの方向に調整すれば良いのかの判断材料とすることができる。そして、その製作方向θを調整して調整製作方向θmにすることで、ワイヤハーネスWを相手部材に装着する際に、クランプCで固定できない、クランプCに多大な負荷がかかってしまう、等の問題発生を防止できる。
以上説明した本発明によれば、枝線Wbを枝装着位置P41,P42に曲げたときの分岐位置P21,P22における幹線の捻れ角度α,βとそのクランプ反力Mを検出し、これらからクランプCの装着位置P31に対応した幹線Wmにおける分岐位置P21,P22の幹モーメントを算出し、該幹モーメントMa,Mbがモーメント許容範囲Qに収まっているか否かの判定結果に基づいて設計を支援するようにしたことから、幹線Wmにおけるクランプの装着位置の近くで枝線Wbが分岐していても、該枝線Wbを曲げた際に幹モーメントMa,Mbがモーメント許容範囲Qに収まっているか否かの判定結果に基づいてクランプCの製作方向θの設計を支援することができるため、クランプCに多大な負荷がかかってしまうことを防止できる。従って、クランプCが相手部材の取付穴に取り付けられない、取り付けてもクランプCが外れてしまう、クランプCが負荷によって壊れてしまう、等の問題が発生することを防止できるため、設計の信頼性を向上させることができる。そして、モーメント許容範囲Qを変化させるようにすれば、製品の仕様等に適した設計を支援することができる。さらに、クランプCが適切な製作方向に設計されていれば、作業者等はクランプを相手部材に取り付ける際に、その取り付け方向を調整する等の作業が不要となるため、作業性の向上に貢献することができる。
また、モーメント許容範囲Q内に幹モーメントMa,Mbが収まるようにクランプCの製作方向θを調整する調整角度dθを算出することで、より一層的確な設計を支援することができるため、設計者は設計支援情報を参照することで、クランプCの製作方向θをどの方向にどれだけずらせば良いのかを、容易且つ正確に判断することができる。
さらに、クランプCの装着位置P31からその両側の分岐位置P21,P22の各々にわたる幹モーメントを算出し、それらが幹モーメントMa,Mbがモーメント許容範囲Qに収まっているか否かを判定することで、幹線WmにおけるクランプCの装着位置P31の両側で幹線Wmから枝線Wbが分岐していても、その幹捻れ角度α,βを考慮した設計を支援することができるため、設計者はより一層適切な設計を行うことができる。
なお、上述した実施形態では、幹線Wmにおけるクランプの装着位置P31の両側で枝線Wbが分岐している場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、装着位置P31から一方の分岐位置P21が離れており(例えば、幹捻れが生じない程度)、他方の分岐位置P22のみが近くに存在する場合、その近くの分岐位置P22のみを考慮して幹モーメントを算出するような実施形態とすることもできる。
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
10 クランプ製作方向設計支援装置
M1 製造情報取得手段
M2 物性情報取得手段
M3 クランプ情報取得手段
M4 幹捻れ角度検出手段
M5 クランプ反力検出手段
M6 幹モーメント算出手段
M7 判定手段
M8 設計支援情報生成手段
M9 調整角度算出手段
C クランプ
W ワイヤハーネス
Wm 幹線
Wb 枝線

Claims (5)

  1. 幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するときのクランプ製作方向の設計を支援するクランプ製作方向設計支援装置であって、
    前記幹線における前記クランプの装着位置、前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段と、
    前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段と、
    前記クランプの製作方向を示すクランプ情報を取得するクランプ情報取得手段と、
    前記枝線を前記枝装着位置に曲げたときの前記分岐位置における前記幹線の幹捻れ角度を、前記製造情報と前記物性情報と前記クランプ情報とに基づいて検出する幹捻れ角度検出手段と、
    前記検出した幹捻れ角度に対応した前記クランプのクランプ反力を検出するクランプ反力検出手段と、
    前記検出した幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて、前記クランプの装着位置に対応した前記幹線における前記分岐位置の幹モーメントを算出する幹モーメント算出手段と、
    前記算出した幹モーメントが予め定められたモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段が判定した判定結果に基づいて、前記クランプ製作方向の設計を支援する設計支援情報を生成して出力する設計支援情報生成手段と、
    を備えることを特徴とするクランプ製作方向設計支援装置。
  2. 前記モーメント許容範囲内に前記幹モーメントが収まるように、前記クランプの装着位置から前記分岐位置までの分岐距離と前記枝線の太さとに基づいて、前記クランプの製作方向を調整する調整角度を算出する調整角度算出手段を有し、
    前記設計支援情報生成手段は、前記判定手段による判定結果と前記算出した調整角度とに基づいて前記設計支援情報を生成する手段であることを特徴とする請求項1に記載のクランプ製作方向設計支援装置。
  3. 前記幹線は、前記クランプの装着位置の両側の各々で前記枝線が複数分岐しており、
    前記幹モーメント算出手段は、前記クランプの装着位置から両側の前記分岐位置の各々にわたる前記幹線の幹モーメントを算出する手段であり、
    前記判定手段は、前記算出した両側の幹モーメントが前記モーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクランプ製作方向設計支援装置。
  4. 幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するときのクランプ製作方向の設計を、請求項1〜3いずれか1項に記載されたクランプ製作方向設計支援装置を用いて支援するクランプ製作方向設計支援方法であって、
    前記製造情報取得手段が、前記幹線における前記クランプの装着位置、前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得工程と、
    前記物性情報取得手段が、前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得工程と、
    前記クランプ情報取得手段が、前記クランプの製作方向を示すクランプ情報を取得するクランプ情報取得工程と、
    前記幹捻れ角度検出手段が、前記枝線を前記枝装着位置に曲げたときの前記分岐位置における前記幹線の幹捻れ角度を、前記製造情報と前記物性情報と前記クランプ情報とに基づいて検出する幹捻れ角度検出工程と、
    前記クランプ反力検出手段が、前記検出した幹捻れ角度に対応した前記クランプのクランプ反力を検出するクランプ反力検出工程と、
    前記幹モーメント算出手段が、前記検出した幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて、前記クランプの装着位置に対応した前記幹線における前記分岐位置の幹モーメントを算出する幹モーメント算出工程と、
    前記判定手段が、前記算出した幹モーメントが予め定められたモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する判定工程と、
    前記設計支援情報生成手段が、前記判定した判定結果に基づいて、前記クランプ製作方向の設計を支援する設計支援情報を生成して出力する設計支援情報生成工程と、
    を備えることを特徴とするクランプ製作方向設計支援方法。
  5. 幹線と該幹線から分岐する枝線を有するワイヤハーネスを相手部材に組み付ける時に用いるクランプを、前記ワイヤハーネスに装着するときのクランプ製作方向の設計を支援するクランプ製作方向設計支援装置のコンピュータを、
    前記幹線における前記クランプの装着位置、前記枝線の分岐位置、前記枝線の枝装着位置を示す製造情報を取得する製造情報取得手段と、
    前記ワイヤハーネス及び前記クランプの物性を示す物性情報を取得する物性情報取得手段と、
    前記クランプの製作方向を示すクランプ情報を取得するクランプ情報取得手段と、
    前記枝線を前記枝装着位置に曲げたときの前記分岐位置における前記幹線の幹捻れ角度を、前記製造情報と前記物性情報と前記クランプ情報とに基づいて検出する幹捻れ角度検出手段と、
    前記検出した幹捻れ角度に対応した前記クランプのクランプ反力を検出するクランプ反力検出手段と、
    前記検出した幹捻れ角度及びクランプ反力に基づいて、前記クランプの装着位置に対応した前記幹線における前記分岐位置の幹モーメントを算出する幹モーメント算出手段と、
    前記算出した幹モーメントが予め定められたモーメント許容範囲に収まっているか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段が判定した判定結果に基づいて、前記クランプ製作方向の設計を支援する設計支援情報を生成して出力する設計支援情報生成手段と、
    して機能させるためのクランプ製作方向設計支援プログラム。
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