JP5339975B2 - X線位相イメージングに用いられる位相格子、該位相格子を用いたx線位相コントラスト像の撮像装置、x線コンピューター断層撮影システム - Google Patents

X線位相イメージングに用いられる位相格子、該位相格子を用いたx線位相コントラスト像の撮像装置、x線コンピューター断層撮影システム Download PDF

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Description

本発明は、X線位相イメージングに用いられる位相格子、該位相格子を用いたX線位相コントラスト像の撮像装置、X線コンピューター断層撮影システムに関する。
従来、X線の吸収能の違いを利用してコントラスト画像を得るX線透視画像技術が検討されてきた。
しかし、X線の吸収能は軽元素になればなるほど小さくなるため、生体軟組織やソフトマテリアルに対しては十分なコントラストが期待できないという問題がある。
そこで、近年、X線の位相シフトに基づいてコントラストを発生させる撮像方法が検討されている。この位相コントラストを利用したX線位相イメージング法の一つとして、タルボ干渉を用いた撮像方法がある。
図9にタルボ干渉法の構成例を示す。タルボ干渉法による撮像のためには、空間的に可干渉なX線源19、X線の位相を周期的に変調するための位相型回折格子(以下、位相格子と記す)21、検出器23が少なくとも必要である。
空間的に可干渉なX線は、位相格子21を透過した後のX線強度分布が位相格子21の形状を反映したものになる。
X線の空間的コヒーレント長が位相格子21のピッチよりも大きい場合、(d/λ)×a/8の位置に高コントラストの明暗周期像が現れる。
ここで、dは位相格子21のピッチ、λはX線の波長、aは奇数である。
なお、この明細書において位相格子のピッチとは、格子が並んでいる周期を指している。
それは、図10の位相格子の模式図に示されているように、ある格子とそれに隣接する格子との間における、中心部分同士の距離Cでもよいし、それら格子の端面同士の距離C’でもよい。
このように、格子の特定の距離において周期的に明暗周期像が形成される現象がタルボ効果である。そして、この明暗周期像を自己像と呼ぶ。位相格子の前に被検体20を配置すると、照射されたX線は被検体20により屈折する。そのため、被検体20を透過して屈折されたX線により形成された自己像を検出すれば、被検体20の位相像を得ることができる。但し、十分なコントラストで発生された自己像を検出するためには、空間分解能の高いX線画像検出器が必要となる。
このような場合、X線を吸収する材料で作製され、十分な厚みを持つ回折格子である吸収格子22を用いることができる。吸収格子22を自己像が形成される位置に配置すれば、この自己像と吸収格子22との重なりによりモアレ縞が発生する。つまり、位相シフトの情報はモアレ縞の変形として検出器23により観察することができる。
ところで、高分解能で観察したい場合、位相格子21のピッチは小さい方が好ましい。
一方、位相格子としては、X線の位相をπシフトさせるために必要な厚さ(高さ)が必要となる。なお、この明細書において位相格子の厚さ(高さ)とは、図10の位相格子の模式図に示されているように、Bで示される格子の長辺側である突条部の厚さ(高さ)を指している。また、突条部の幅とは、上記図10においてAで示される幅を指している。また、開口部の開口幅とは、上記図10においてA’で示されている突条部と突条部との間隔を指している。位相格子における「開口幅」と「突条部の幅」は、1:1で形成されるのが一般的である。
ここで、高分解能である位相格子21を作製するために、位相格子21のピッチを小さくしようとすると、突条部の幅及び開口幅も小さくせざるを得ない。
したがって、突条部の厚さ(高さ)/開口部の開口幅、あるいは突条部の厚さ(高さ)/突条部の幅によって規定されるアスペクト比が大きくなり、位相格子21を作製するのが困難になるという問題が生じる。
例えば、位相格子21の材料としてSiを用いた場合、20keVのX線における位相をπシフトさせるのに必要な厚みは29.2μm程度である。また、スリット状の位相格子21を作製する場合、求める分解能により2μm程度のピッチ、すなわち1μmの開口幅で作製することが求められることとなる。このとき、アスペクト比は30程度となり、大面積の回折格子を作製することは難しい。
そこで、特許文献1では、アスペクト比の低い部分格子を用いて、見かけ上のアスペクト比を高くした回折格子を作製している。具体的には、図11に示すように、容易に作製可能であるアスペクト比の低い部分格子30を縦方向に積層し、見かけ上のアスペクト比を高くした回折格子を作製している。
米国特許出願公開第2007/0183579号明細書
上記した従来例の特許文献1では、低アスペクト比の部分格子30を積層することにより、見かけ上の突条部の高さを高くし、高アスペクト比である回折格子を作製している。
しかしながら、特許文献1の回折格子は、アスペクト比の低い回折格子を多層化することで見かけ上のアスペクト比を増大させているが、ピッチは小さくされておらず同一のままであり、したがって高分解能化はなされていない。
本発明は、上記課題に鑑み、アスペクト比の低い回折格子を用い、挟ピッチ化を図ることが可能となるX線位相イメージングに用いられる位相格子を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の位相格子を用いたX線位相コントラスト像の撮像装置、該撮像装置を有するX線コンピューター断層撮影システムを提供することを目的とする。
第一の本発明は、X線位相イメージングに用いられる位相格子であって、入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている突条部と、該突条部の幅と同一の開口幅を有する開口部と、が周期的に周期方向に配列されている回折格子がn個(n≧2)積層されており、m番目(m=2、3、・・・n)に積層されている前記回折格子の突条部は、m−1番目に積層されている前記回折格子の突条部に対して、前記周期方向に1/2nピッチずらして形成されていることを特徴とする
第二の本発明は、X線位相イメージングに用いられる位相格子であって、入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている第1の突条部と、該第1の突条部の幅と同一の開口幅を有する第1の開口部と、が周期的に周期方向に配列されている第1の回折格子と、前記第1の突条部と同一の幅を有する第2の突条部と、前記第1の開口部と同一の開口幅を有する第2の開口部と、が周期的に周期方向に配列されている第2の回折格子と、を有し、前記第1の回折格子と前記第2の回折格子とは積層されており、前記第1の回折格子の前記周期方向と前記第2の回折格子の前記周期方向とが直交していることを特徴とする。
本発明によれば、アスペクト比の低い回折格子を用い、挟ピッチ化を図ることが可能となるX線位相イメージングに用いられる位相格子を実現することができる。また、本発明によれば、上記の位相格子を用いたX線位相コントラスト像の撮像装置、該撮像装置を有するX線コンピューター断層撮影システムを実現することができる。
本発明の実施形態1における2層のライン状回折格子をずらして相互に積層したX線位相イメージングに用いられる1次元位相格子の構成例を説明する図である。 図1で示した1次元位相格子を透過したX線の位相差を示す図。 (a)本発明の実施形態1における基板を形成する材料と突条部を形成する材料とが異なる回折格子の構成例を説明する図。(b)本発明の実施形態1における基板の一部を加工して回折格子を形成した構成例を説明する図。 (a)本発明の実施形態1における、2つの回折格子を互いの突条部が対向するように形成した位相格子の構成例を説明する図。(b)本発明の実施形態1における基板の表裏を加工して作製した回折格子を用いた構成例を説明する図。 (a)本発明の実施形態2における2層のライン状回折格子の一方を、他方と直交するように積層したX線位相イメージングに用いられる2次元位相格子の構成例について説明する図。(b)図5(a)で示した位相格子を透過したX線の位相差を示す図。 (a)本発明の実施形態2における2層の千鳥格子状回折格子を積層して構成された2次元位相格子の構成例を示す図。(b)本発明の実施形態2における2次元位相格子をX線源の方向からみた図。(c)図6(a)で示した2次元位相格子を透過したX線の位相差を示す図。 本発明の実施形態2における直交した1組のライン状回折格子を配置した構成例を示す図。 (a)本発明の実施形態3における3層の回折格子からなるX線位相イメージングに用いられる位相格子の構成例について説明する図。(b)図8(a)で示した位相格子を透過したX線の位相差を示す図。 従来例であるX線位相像を得るためのタルボ干渉計を説明する図。 X線位相イメージングに用いられる位相格子及び回折格子におけるピッチ、突条部の厚さ(高さ)、突条部の幅、開口幅を説明するための模式図。 従来例である特許文献1に開示されている回折格子を説明するための図。
つぎに、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係る位相格子は第1の回折格子と第2の回折格子を有する。第1の回折格子は入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている第1の突条部と、第1の突条部の幅と同一の開口幅を有する第1の開口部とが周期的に配列されている。第2の回折格子は、第1の突条部と同一の幅を有する第2の突条部と、第1の開口部と同一の開口幅を有する第2の開口部とが周期的に配列されている。第2の回折格子は第1の回折格子の上に、ずらして形成されている。なお、本発明に係る位相格子において「同一」とは、タルボ干渉法によって撮像を行うことができる範囲であれば、製造上の誤差を含んでいてもよい(以下同様である)。
ここで、突条部の厚さとは、図10において、Bで示される格子の長辺側である突条部の厚さ(高さ)である。突条部の幅とは、図10においてAで示される格子の短辺側である突条部の幅である。開口幅とは、図10においてA’で示されている格子と格子との間隔である。また、突条部の幅Aと開口幅A’は同一の長さである。
第2の回折格子は、第1の回折格子の上に、第1の突条部と第2の突条部とが完全一致しないようにずらして形成されていればよい(図1)。ここで、第1の突条部と第2の突条部とが完全一致する場合とは、第1の突条部の端面と第2の突条部の端面とが同一平面にある場合のことである。なお、突条部の端面とは、突条部の幅を規定する面のことである。すなわち、第1の回折格子が有する第1の突条部と第1の開口部とが配列されている周期方向と、第2の回折格子が有する第2の突条部と第2の開口部とが配列されている周期方向とが同一方向であってもよく、第2の回折格子が第1の回折格子に対してその周期方向に1/4ピッチずらして形成されていてもよい。さらに、第1の突条部と第1の開口部とが配列されている周期方向と、第2の突条部と第2の開口部とが配列されている周期方向とが直交していてもよい(図5(a))。
また、第1の回折格子が、基板の一方の面側に形成され、第2の回折格子は、基板の他方の面側に、1/4ピッチずらして形成されていてもよい(図4(b))。
また、第1の回折格子は、第1の方向と第1の方向と直交する第2の方向に2次元配列されている方形の前記第1の開口部を有し、第2の回折格子は、第1の方向と、第2の方向に2次元配列されている方形の前記第2の開口部を有していてもよい。このような第1及び第2の回折格子を用いる場合、第2の回折格子は、第1の回折格子の上に、第1の方向及び第2の方向に1/4ピッチずらして形成されていてもよい(図6(a))。
また、別の本発明に係る位相格子は、n個の回折格子が積層されている。各々の回折格子は、入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている突条部と、突条部の幅と同一の開口幅を有する開口部とが周期的に1次元配列されている。また、m番目(m=2,3,・・・n)の回折格子の突条部が、m−1番目の回折格子の突条部に対して、1次元配列の周期方向に1/2nピッチずらして形成されている。
上記の構成を有する位相格子であれば、位相格子に入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる領域と、位相をπシフトさせないで透過させる領域とが周期的に配列されるため、個々の回折格子と比べて、X線の位相を変調する領域のピッチを狭くすることができる。
(実施形態1)
以下、本発明に係る位相格子の一例について説明する。
実施形態1においては、入射するX線に対して2層のライン状回折格子を周期方向にずらして積層することで、個々の回折格子よりもピッチを狭くした構造を有するX線位相イメージングに用いられる1次元位相格子の構成例について説明する。
図1に、第1の回折格子と第2の回折格子とをずらして積層した1次元位相格子の構成例を示す。本実施形態の1次元位相格子において、ライン状回折格子とは、互いに平行な直線状の突起構造(突条部)と、突条部の幅と同一の開口幅を有する開口部とが周期的に配列された構造を意味している。
本実施形態において、ライン状回折格子における突条部は、X線1が透過する方向に対し垂直な方向の「幅」と該X線の透過する方向と同方向の「厚さ」を有し、該厚さは前記入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている。そして、上記2層のライン状回折格子を積層する際には、2層目の回折格子3(第2の回折格子)を、1層目の回折格子2(第1の回折格子)の周期方向に1/4ピッチずらして形成する。
図1のように、X線1は突条部が配列されている平面に対して垂直な方向から入射する。この1次元位相格子に入射して透過するX線のうち、突条部を透過しないX線の位相は変化せず、突条部1層分を透過したX線の位相はπシフトし、突条部2層分を透過したX線の位相は2πシフトする。このとき、1次元位相格子を透過したX線の位相は図2に示すように、入射したX線の位相が変化していない領域6と、位相がπシフトしている領域5と、位相が2πシフトしている領域4を形成する。ここで、突条部2層分を透過することにより2πシフトしたX線の位相は、突条部を透過しない部分(位相が0シフトする部分)の位相と同じである。
以上により、入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる回折格子を多層化することで得られるX線位相格子は、個々の回折格子と比較してX線の位相を変調する領域のピッチを狭くすることができる。例えば、図1で示した2層構造の回折格子が有するピッチは、第1または第2の回折格子が有するピッチの1/2になる。
なお、上記の実施形態では、位相差πの領域の幅と、位相差0または2πの領域の幅とが等しくなるように、周期方向に1/4ピッチずらして積層した。しかし、位相格子として用いる場合には、上記2つの領域の幅は等しくなくても良い。例えば、第1と第2の回折格子の突条部の幅および開口幅が同一であれば、突条部および開口部をずらして両回折格子を積層することにより、個々の回折格子のピッチよりも狭ピッチ化を図ることができる。
なお、上記実施形態のように、位相差πの領域の幅と、位相差0または2πの領域の幅を等しくすれば、コントラストの高いX線位相コントラスト像を得ることができる点において好ましい。また、X線源から検出器までの距離が十分大きいため、光路長の差は無視することもできる。
上記位相格子を構成する個々の回折格子は、基板の表面または基板の内部またはその両方に形成することができる。このとき、回折格子は、突条部7を形成する材料と基板8を形成する材料とが異なっていても良いし(図3(a))、基板の一部を加工して突条部を形成しても良い(図3(b)の回折格子9)。また、図3(b)に示す回折格子は非貫通構造であるが、貫通していても良い。貫通していれば基板によるX線の吸収が無いのでX線の利用効率が向上する。
また、図4(a)のように回折格子9を形成した基板を2枚以上積層しても良いし、図4(b)のように基板の表裏を加工して作製した回折格子10を用いても良い。例えば、第1の回折格子が基板の一方の面側に形成され、第2の回折格子が基板の他方の面側に、その周期方向に1/4ピッチずらして作製するようにしても良い。
回折格子の積層時には、回折格子同士が接するように加工済み基板を積層することが好ましいが、離れていても良い。回折格子同士が離れている場合、基板は互いに平行になるように積層する。
また、アライメントを行うため基板に予めアライメントマークを作製しても良い。
その他のアライメントの方法として、X線顕微鏡により回折格子を拡大観察して位置合わせをすることもできる。
また、空間的に可干渉なX線を照射しタルボ効果により得られる自己像を観察しながら位置合わせをしても良い。位置合わせした後の位相格子は固定しても良いし、そのままX線位相像の観察を行っても良い。位相格子の固定時には、エポキシ樹脂などの接着剤や金−金接合、クランプなどを用いた機械的な固定などにより行うことができる。
基板にはX線照射時にX線の吸収が少ない材料を使用することが好ましい。
形状は薄板状で、表裏が鏡面であればコントラストは良好と成る。例えばSiやGaAs、Ge、InPといった半導体ウェハー、ガラス基板などを使用することができる。
X線の吸収はSiより大きいが、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの樹脂基板を用いることもできる。
回折格子を形成するためには、フォトリソグラフィー法やドライエッチング法、スパッタや蒸着・CVD・無電解めっき・電解めっきといった各種成膜法、ナノインプリント法などを用いることができる。つまり、フォトリソグラフィー法でレジストパターンを形成した後に、ドライエッチングまたはウェットエッチングで基板に加工しても良いし、リフトオフ法で基板上に回折格子を付与することもできる。また、ナノインプリント法により基板又は基板上に成膜した材料を加工しても良い。
本実施形態の1次元位相格子を用いることによって、空間的に可干渉なX線源、検出器と組み合わせることでタルボ干渉計として用いることができる。
その際、吸収格子を用いてモアレ縞を形成した後に検出器を用いて出力を検出しても良い。
また、従来のコンピューター断層撮影システムに用いられているガントリ内に、本発明のX線位相像の撮像装置を組み込むことで患者のX線位相断層像を得ることができる。
(実施形態2)
実施形態2においては、上記実施形態1とは積層の方向が異なる2次元位相格子の構成例について説明する。図5(a)に、本実施形態における2次元位相格子の構成例について説明する図を示す。
本実施形態の2次元位相格子は、1層目の回折格子2(第1の回折格子)の周期方向と2層目の回折格子3(第2の回折格子)の周期方向とが直交するように積層することで形成されている。第1及び第2の回折格子は、入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている突条部と、突条部の幅と同一の開口幅を有する開口部とが周期的に配列された構造であり、突条部の幅および開口幅は互いに同一である。
ここで、回折格子が積層されている方向からX線1を入射すると、位相格子による入射X線1の位相変化は図5(b)に示すようになる。このときの上記2次元位相格子のピッチ11は、図5(b)に示した位相格子の対角線方向であり、個々の回折格子のピッチと比較して狭くなる。
本実施形態における2次元位相格子を構成する個々の回折格子は、ライン状には限定されるものではなく、2次元構造の回折格子を多層化したものでも良い。2次元構造の回折格子として、例えば、千鳥格子状回折格子12を挙げることができる。ここで、千鳥格子状とは、方形(正方形または長方形)の開口部14が第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向に周期的に配列した構造を意味している。また、直交したライン状とは、平行かつ等間隔の複数のラインを直交して配置した構造を意味している。突起構造はライン部でもライン間隙部でもどちらでも良い。
本実施形態において、多層化する際には、2次元構造の回折格子を周期方向及び周期方向に対して直交する方向にずらして、多層構造体を作製する。図6(a)に1層目の千鳥格子状回折格子12の上に2層目の千鳥格子状回折格子13を形成した回折格子の斜視図、図6(b)に上面図を示す。この例では、周期方向(第1の方向)及び周期方向に対して直交する方向(第2の方向)に、1/4ピッチずつずらして積層されている。前述のように、位相差2πのX線は、位相変化を受けていないX線と同位相である。これにより図6(c)に示すように、個々の回折格子よりも狭ピッチなX線位相イメージング用の位相格子を得ることができる。
また、2次元構造の回折格子は、図7に示すように、方形の開口部が第1の方向と第1の方向と直交する第2の方向に2次元配列された回折格子を、第1の方向及び第2の方向に1/4ピッチずらして積層したもの、であっても良い。
(実施形態3)
実施形態3においては、3層以上の回折格子を積層して多層化したX線位相イメージングに用いられる位相格子の構成例について説明する。図8(a)に、本実施形態における3層の回折格子からなるX線位相イメージングに用いられる位相格子を示す。
本実施形態における位相格子は、これらの回折格子が、下層の回折格子に対しその周期方向に1/6ピッチずらして積層して構成される。例えば、1層目の回折格子2に対し、2層目の回折格子を1/6ピッチ、3層目の回折格子17を更に1/6ピッチずらして積層して構成される。各々の回折格子は、入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている突条部と、突条部の幅と同一の開口幅を有する開口部とが周期的に1次元配列された構造であり、突条部の幅および開口幅は互いに同一である。
本実施形態に係る位相格子を透過するX線の位相変化を基板の垂直方向から見た様子を図8(b)に示す。X線の位相が3πシフトすることは、位相がπシフトすることと同じであるため、位相がπシフトしている領域5と位相が3πシフトしている領域18の位相とは同じである。また、位相が2πシフトしている領域4は、X線が位相変化せずに透過する領域とX線の位相は同一である。これにより、個々の回折格子が有するピッチと比べて、X線の位相を変調する領域のピッチを狭くすることができる。すなわち、回折格子を3層積層することによりX線位相イメージング用の位相格子が有するピッチを、個々の回折格子が有するピッチの1/3とすることができる。
なお、本実施形態では、回折格子を3層積層させた場合について説明したが、n個(n≧2)の回折格子を積層させて位相格子を構成してもよい。n個の回折格子を積層させて位相格子を作製する場合、m番目(m=2、3、・・・n)の回折格子の突条部が、m−1番目に積層されている回折格子の突条部に対して、1次元配列の周期方向に1/2nピッチずらして形成する。回折格子をn層積層することによりX線位相イメージング用の位相格子が有するピッチは、個々の回折格子が有するピッチの1/nとなり、狭ピッチ化が図られる。
また、本実施形態では回折格子を3層以上積層した1次元の位相格子について説明したが、回折格子を3層以上積層することにより、2次元位相格子を作成しても良い。
本発明の実施形態においては、上記した実施形態1から3のいずれかのX線位相イメージングに用いられる位相格子をX線位相コントラスト像の撮像装置に用いることにより、X線位相コントラスト像の撮像が可能となる撮像装置を実現することができる。
また、このようなX線位相コントラスト像の撮像装置を備えたX線コンピューター断層撮影システムを実現することができる。
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、1次元位相格子として互いに平行な直線状の突起構造(突条部)と、突条部の幅と同一の開口幅を有する開口部とが周期的に配置されたライン状回折格子の構成例について説明する。
本実施例においては、まず、4インチ径の両面研磨200μm厚シリコンウェハー表面にレジストコート後、フォトリソグラフィー法により60mm角のエリアに線幅2μm間隙2μmのレジストパターンを作製する。次に、ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング(Deep Reactive Ion Etching;以下、Deep−RIEと記す)によりつぎのような加工を行う。すなわち、幅2μm間隙2μmで深さが29μmのスリット構造を作製した後にレジストを除去する(図3(b)参照)。
次に、2枚のウェハー表面に同様のパターンを作製する。パターンが接するように2枚の加工済みシリコンウェハーを張り合わせる(図4(a)参照)。このとき、スリット構造が互いに平行になるようにし、スリットの周期方向のずれ量が1μmになるようにする。
アライメント時には、20keVのX線をウェハーの垂直構造から照射し、位相格子からd/(8λ)=8mmの位置に検出器を置き、1μmピッチの濃淡パターンが得られるようにする。
以上の方法により、2μmピッチで、入射するX線の位相をπシフトさせて透過させることのできる、X線位相イメージング用位相格子を作製することができる。
この位相格子をタルボ干渉計の位相格子として用い、位相格子から8mm離れた位置に1μmピッチの吸収格子を位相格子と平行に配置することで、X線位相像の観察が実現できる。
[実施例2]
実施例2においては、同一基板を用い、千鳥格子状の回折格子による2次元位相格子を形成した構成例について説明する。本実施例においては、まず、4インチ径の両面を研磨した200μm厚のシリコンウェハー表面にレジストコート後、フォトリソグラフィー法により60mm角のエリアに線幅2μm、間隙2μmのスリット状レジストパターンを作製する。このとき、スリットの4隅に10μmΦの円形レジストパターンも同時に作製する。
次に、Deep−RIEにより、幅2μm、間隙2μmで深さが29μmのスリット構造およびスリットの4隅に10μmΦの円形パターンを作製する。そして、その後にレジストを除去する。
次に、パターン形成した面の裏面にレジストコートし、4個の10μmΦの円形パターンをアライメントマークとし、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成する。これにより、予めドライエッチングで形成したSiスリットパターンと直交するように線幅2μm、間隙2μmのスリット状レジストパターンを形成する。
その後、Deep−RIEにより幅2μm、間隙2μmで深さが29μmのスリット構造を、裏面にも形成する。これにより、ライン状格子に対して45°の角度を成す、2.8μmピッチの千鳥格子状の回折格子による2次元位相格子が得られる。
[実施例3]
実施例3においては、異なる基板を用い、千鳥格子状の回折格子による2次元位相格子を形成した構成例について説明する。
本実施例においては、まず、4インチ径の両面を研磨した200μm厚のシリコンウェハー表面にレジストコート後、フォトリソグラフィー法により60mm角のエリアに1辺4μmの正方形の開口部を千鳥格子状に作製する。
次に、Deep−RIEにより29μm深さまでエッチングする。2枚のウェハー表面に同様のパターンを作製する(図6(a))。パターンが接するように2枚の加工済みシリコンウェハーを張り合わせる。このとき、正方形の縦線および横線が2枚のウェハー間で平行になるようにし、縦線方向および横線方向に対して2μmずらして積層する。これにより一辺が2μmの千鳥格子状の位相格子を得ることができる。
[実施例4]
実施例4においては、回折格子を3層積層して形成した位相格子の構成例について説明する。
本実施例においては、まず、4インチ径の両面を研磨した150μm厚シリコンウェハー表面にポリメチルメタクリレート(PMMA)をコートした後、UVナノインプリント法により60mm角のエリアに線幅9μm、間隙9μmで深さ29μmの凹凸パターンを作製する。これにより、3枚のシリコンウェハーに同様のパターンを作製する。
次に、パターンが接するように2枚の加工済みシリコンウェハーを張り合わせる。このとき、スリット構造が互いに平行になるようにし、スリットの周期方向のずれ量が1/3ピッチ、すなわち3μmになるようにする。
次に、張り合わせた2枚の基板に、残りの1枚を貼り付ける。3枚目の基板のアライメント時には、X線顕微鏡により位相格子を拡大観察し、全てのスリット構造が平行になるようにする。また、3枚目の基板が、3枚目の基板に接する基板に形成したスリット構造に対し、スリットの周期方向のずれ量が3μmになるようにする。この時、両端の基板に形成したスリット構造が透過するX線に対し重なり合わないようにする。
この時の断面図を図8(b)に示す。積層後に20keVのX線をウェハーに対して垂直な方向から照射すると、位相格子からd/(8λ)=72mm(タルボ長)の位置に3μmピッチの濃淡パターンが得られる。これにより、線幅9μm間隙9μmのパターンを3層積層することで、6μmピッチでπシフトする位相格子が得られる。
1 X線
2 1層目の回折格子
3 2層目の回折格子
4 位相が2πシフトしている領域
5 位相がπシフトしている領域
6 入射したX線の位相が変化していない領域
7 入射したX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている突条部
8 基板
9 基板の一部を加工して突条部を形成した回折格子
10 基板の表裏を加工して作製した回折格子
11 2次元位相格子のピッチ
12 1層目の千鳥格子状回折格子
13 2層目の千鳥格子状回折格子
14 方形の開口部
15 1層目の直交したライン状回折格子
16 2層目の直交したライン状回折格子
17 3層目の回折格子
18 位相がπシフトしている領域
19 X線源
20 被検体
21 位相格子
22 吸収格子
23 検出器

Claims (7)

  1. X線位相イメージングに用いられる位相格子であって、
    入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている突条部と、該突条部の幅と同一の開口幅を有する開口部と、が周期的に周期方向に配列されている回折格子が、n個(n≧2)積層されており、
    m番目(m=2、3、・・・n)に積層されている前記回折格子の突条部は、m−1番目に積層されている前記回折格子の突条部に対して、前記周期方向に1/2nピッチずらして形成されていることを特徴とするX線位相イメージングに用いられる位相格子。
  2. X線位相イメージングに用いられる位相格子であって、
    入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている第1の突条部と、該第1の突条部の幅と同一の開口幅を有する第1の開口部と、が周期的に周期方向に配列されている第1の回折格子と、
    前記第1の突条部と同一の幅を有する第2の突条部と、前記第1の開口部と同一の開口幅を有する第2の開口部と、が周期的に周期方向に配列されている第2の回折格子と、を有し、
    前記第1の回折格子と前記第2の回折格子とは積層されており、
    前記第1の回折格子の前記周期方向と前記第2の回折格子の前記周期方向とは同一方向であり、
    前記第2の突条部は、前記第1の突条部に対して、前記周期方向に1/4ピッチずらして形成されていることを特徴とするX線位相イメージングに用いられる位相格子。
  3. 前記第1の回折格子は、基板の一方の面側に形成され、
    前記第2の回折格子は、前記基板の他方の面側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のX線位相イメージングに用いられる位相格子。
  4. X線位相イメージングに用いられる位相格子であって、
    入射するX線の位相をπシフトさせて透過させる厚さに形成されている第1の突条部と、該第1の突条部の幅と同一の開口幅を有する第1の開口部と、が周期的に周期方向に配列されている第1の回折格子と、
    前記第1の突条部と同一の幅を有する第2の突条部と、前記第1の開口部と同一の開口幅を有する第2の開口部と、が周期的に周期方向に配列されている第2の回折格子と、を有し、
    前記第1の回折格子と前記第2の回折格子とは積層されており、
    前記第1の回折格子の前記周期方向と前記第2の回折格子の前記周期方向とが直交していることを特徴とするX線位相イメージングに用いられる位相格子。
  5. 前記第1の回折格子は、第1の方向と該第1の方向と直交する第2の方向とに周期的に配列されている方形の前記第1の開口部を有し、
    前記第2の回折格子は、前記第1の方向と前記第2の方向とに周期的に配列されている方形の前記第2の開口部を有し、
    前記第2の開口部は、前記第1の開口部に対して、前記第1の方向に1/4ピッチ、かつ、前記第2の方向に1/4ピッチずらして形成されていることを特徴とする請求項2に記載のX線位相イメージングに用いられる位相格子。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のX線位相イメージングに用いられる位相格子を有することを特徴とするX線位相コントラスト像の撮像装置。
  7. 請求項6に記載のX線位相コントラスト像の撮像装置を有することを特徴とするX線コンピューター断層撮影システム。
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