JP2016095343A - 位相格子及びトールボット干渉計。 - Google Patents
位相格子及びトールボット干渉計。 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 容易に製造することができる構造を有する1/3デューティ位相格子を提供する。【解決手段】 位相格子4は、第1の位相変調パターン40と第2の位相変調パターン50とを備える。第1と第2の位相変調パターンのそれぞれは、位相遅延部(44、48)と位相基準部(42、46)とが、1:2又は2:1の幅で交互に配置された位相変調パターンである。位相遅延部に対する位相基準部の位相差は、第1の位相変調パターンにおいて−2(3n+1)π/3または−2(3n+2)π/3、第2の位相変調パターンにおいて−2(3m+1)π/3または−2(3m+2)π/3である。第1と第2の位相変調パターンが、第1の位相変調パターンの周期方向(x方向)と第2の位相変調パターンの周期方向(y方向)とが交差するように重なることにより、位相格子4の位相変調パターンが構成される。但し、nとmは0以上の整数である。【選択図】 図2
Description
本発明は、位相格子及びトールボット干渉計に関する。
近年、放射線強度パターンの被検体の有無に因る変化から、被検体による放射線の吸収強度や位相変調、散乱強度に関する情報(以下、これらの情報をまとめて、被検体情報とぶことがある)を取得することが試みられている。例えば、X線の回折格子を備えるトールボット干渉計を用いて、回折格子により回折された干渉パターンを検出し、被検体によるこの干渉パターンの変化から、被検体情報を取得する方法(トールボット干渉法)がある。
トールボット干渉法を用いた被検体の計測には、空間的に干渉性のあるX線源とX線の位相に周期的な変調を与える位相型の回折格子(以下、位相格子)が用いられることが多い。位相格子の構造は、干渉パターンの周期や周期の方向、コントラストを決定する。
特許文献1には、位相基準部と、位相基準部に対する位相差が−2π/3の位相遅延部と、位相基準部に対する位相差が−4π/3(つまり、2π/3)の位相進行部とが、2方向に周期的に配置された位相変調パターンを有する位相格子が記載されている。但し、位相基準部に対する位相差とは、位相基準部を透過したX線に対して、ある領域を透過したX線の位相がどの程度進行(位相差が正の場合)又は遅延(位相差が負の場合)しているかを指す。この位相格子の位相変調パターンは、x軸方向とy軸方向のそれぞれにおいて、位相基準部と、位相遅延部と、位相進行部とのうち2つが1:2の幅で配置されたパターンである。以下、このような変調パターンを有する2次元位相格子を、1/3デューティ位相格子と呼ぶことがある。また、2方向に周期を有する位相変調パターンを有する位相格子を、2次元位相格子と呼ぶことがある。
本発明者らによる検討の結果、上述の1/3デューティ位相格子が、一般的な2次元位相格子と比較してコントラストが高い干渉パターンを形成することが可能であることが明らかになった。尚、本明細書において一般的な2次元位相格子とは、位相基準部と、位相基準部との位相差がπ/2またはπの位相遅延部とが、2方向において1:1の幅で配置された位相変調パターンを有する2次元位相格子とする。
特許文献1には、1/3デューティ位相格子の構造と製造方法について、具体的には記載されていない。X線用の位相格子の製造方法として、X線透過率が高い材料の基板をエッチングする方法が知られているが、この方法を用いて1/3デューティ位相格子を実現するためには、3段階の厚みを実現するエッチングが必要であり、製造が困難であることが予想される。
そこで本発明は、X線透過率が高い材料の基板をエッチングして、3段階の厚みを実現するよりも容易に製造することができる構造を有する1/3デューティ位相格子を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての位相格子は、位相基準領域と、位相進行領域と、位相遅延領域とを備える位相格子であって、基板の第1の面に第1の位相変調パターンが配置されており、前記基板の前記第1の面と対向する第2の面に第2の位相変調パターンが配置されており、前記第1の位相変調パターンは、第1の位相基準部と、前記第1の位相基準部に対する第1の位相差が−2(3n+1)π/3または−2(3n+2)π/3である第1の位相遅延部とが、第1の方向において第1の幅の比で交互に配置された位相変調パターンであり、前記第2の位相変調パターンは、第2の位相基準部と、前記第2の位相基準部に対する第2の位相差が−2(3m+1)π/3または−2(3m+2)π/3である第2の位相遅延部とが、前記第1の方向と交差する第2の方向において第2の幅の比で交互に配置された位相変調パターンであり、前記第1の位相差が−2(3n+1)π/3のとき、前記第2の位相差は−2(3m+1)π/3であり、前記第1の位相差が−2(3n+2)π/3のとき、前記第2の位相差は−2(3m+2)π/3であり、前記位相基準領域と前記位相進行領域と前記位相遅延領域とは、前記第1の位相変調パターンと前記第2の位相変調パターンとが前記第1の方向と前記第2の方向とを有する平面と垂直に交差する第3の方向において重なることにより構成され、前記第1の幅の比と前記第2の幅の比とは、1:2又は2:1であり、前記第1の幅の比と前記第2の幅の比とが等しいことを特徴とする。但し、nとmは0以上の整数である。
本発明の一側面としての位相格子によれば、容易に製造することができる構造を有する1/3デューティ位相格子を提供することができる。
本発明のその他の側面については、以下で説明する実施の形態で述べる。
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の位相格子4は、図2に示すように、第1の位相変調パターン40と第2の位相変調パターン50とを組み合わせた構造を有する。第1の位相変調パターン40は、第1の位相遅延部44と第1の位相基準部42とが第1の方向(x方向)において交互に配置されたパターンである。一方、第2の位相変調パターン50は、第2の位相遅延部48と第2の位相基準部46とが第2の方向(y方向)において交互に配置されたパターンである。第1と第2の位相変調パターン(40、50)が重なることにより、1/3デューティ位相格子の位相変調パターン23が形成される。このように、第1と第2の位相変調パターンを組み合わせて位相格子4の位相変調パターン23を形成することにより、基板をエッチングする深さを切り替えて3段階の厚みを実現した構造を有する場合よりも容易に位相格子を製造することができる。以下、より詳細に本実施形態の位相格子について説明をする。
本実施形態の位相格子は、図1((a)、(b))に示すように、位相遅延領域20と位相進行領域22と位相基準領域24とを有する位相変調パターン23を有する。位相進行領域22を透過したX線は、位相基準領域24を透過したX線よりも、位相が2π/3進行し、位相遅延領域20を透過したX線は、位相基準領域24を透過したX線よりも、位相が2π/3遅延する。本発明及び本明細書において、位相変調パターン23の位相は−πからπにラップされるものとして扱う。例えば、位相差が6π/3=2πである場合は位相差がないとみなし、位相差が−4π/3や8π/3である場合は位相差が+2π/3(2π/3進行)とみなす。また、逆に位相差が+4π/3や−8π/3である場合、位相差が−2π/3(2π/3遅延)とみなす。図1に示した模式図は変調パターンの一部を示しており、全体を示すわけではない。また、位相遅延領域20と位相進行領域22と位相基準領域24との一部または全部をまとめて、位相変調領域と呼ぶことがある。
位相変調パターン23において、2種類の位相変調領域が第1と第2の方向のそれぞれにおいて交互に配置されている。例えば、図1(a)のa−a’断面においては、位相変調領域のうち、位相遅延領域20と位相基準領域24とが交互に配置され、b−b’断面においては、位相変調領域のうち、位相進行領域22と位相基準領域24とが交互に配置されている。尚、a−a’断面、b−b’断面共に第1の方向と平行な方向である。また、図1(a)のc−c’断面においては、位相変調領域のうち、位相遅延領域20と位相基準領域24とが交互に配置され、d−d’断面においては、位相変調領域のうち、位相進行領域22と位相基準領域24とが交互に配置されている。尚、c−c’断面、d−d’断面共に第2の方向と平行な方向である。このように、第1の方向と平行な断面においても、第2の方向と平行な断面においても、2種類の位相変調領域が交互に配置されている。 図1(a)は、正方格子状に配列した位相遅延領域20の間隙に、チェッカー状の位相基準領域24と正方格子状の位相進行領域22が配置された位相変調パターン23を示している。位相変調領域は矩形である。また、位相遅延領域20は第1の方向においては、第1の方向における周期(以下、第1の周期と呼ぶことがある)f1の2/3の幅を有し、第2の方向においては、第2の方向における周期(以下、第2の周期と呼ぶことがある)f2の2/3の幅を有する。位相進行領域22は、第1の方向においては第1の周期f1の1/3の幅、第2の方向においては第2の周期f2の1/3の幅を有する。位相基準領域24は、第1の方向においては第1の周期f1の1/3の幅と第2の周期f2の2/3の幅、または第1の方向においては第1の周期f1の2/3の幅と第2の方向においては第2の周期f2の1/3の幅を有する。 図1(b)に示した位相変調パターン23も、正方格子状に配列した位相遅延領域20の間隙に、正方格子状の位相進行領域22とチェッカー状の位相基準領域24が配置されている。但し、位相遅延領域20と位相進行領域22との大きさが、図1(a)に示した変調パターンにおける位相遅延領域20と位相進行領域22との大きさと逆である。
図1に示した1/3デューティ位相格子は、位相基準領域120と位相進行領域122とでメッシュ状の変調パターンを形成する2次元位相格子(図8)と比べて、形成できる干渉パターンのコントラストが高くなることが発明者らの検討で明らかになった。また、図1に示した各位相変調パターンによって、位相格子から干渉パターンまでの距離が異なるため、干渉計全体の設計に応じて適宜位相変調パターンを選択することができる。なお、位相変調パターン23における位相変調領域の一辺の長さ、及び厚みは、干渉パターンを形成できる程度であれば製造上の誤差を含んでいてもよい。具体的には、位相変調部の一辺の長さ及び厚みの誤差を、設計値の±10%以内に収めると、干渉パターンのコントラストの低下を約2%以下に収めることができるため、好ましい。
本実施形態の位相格子4が有する位相変調パターン23は、第1の位相変調パターン40と、第2の位相変調パターン50とを組み合わせることで実現することができる。第1の位相変調パターン40の、第1の方向における第1の位相基準部42と第1の位相遅延部44との幅の比(第1の幅の比と呼ぶことがある)は、1:2又は2:1である。また、第1の位相基準部42に対する第1の位相遅延部44の位相差(第1の位相差と呼ぶことがある)は−2(3n+1)π/3または−2(3n+2)π/3(但し、nは上述のように、0以上の整数を示す)である。第2の位相変調パターン50も同様であり、第2の位相変調パターン50の、第2の方向における第2の位相基準部46と第2の位相遅延部48との幅の比(第2の幅の比と呼ぶことがある)は、1:2又は2:1である。また、第2の位相遅延部48に対する第2の位相基準部46の位相差(第2の位相差と呼ぶことがある)は−2(3m+1)π/3または−2(3m+2)π/3(但し、mは0以上の整数)である。第2の幅の比が第1の幅の比と等しい場合、第1の位相差が−2(3n+1)π/3のときは第2の位相差も−2(3m+1)π/3であり、第1の位相差が−2(3n+2)π/3のときは第2の位相差も−2(3m+2)π/3である。第2の幅の比が第1の幅の比とが異なる(逆)の場合、第1の位相差が−2(3n+1)π/3のときは第2の位相差は−2(3m+2)π/3であり、第1の位相差が−2(3n+2)π/3のときは第2の位相差は−2(3m+1)π/3である。
第1の位相遅延部44と第1の位相基準部42との位相差は、第1の位相遅延部44と第1の位相基準部42とで、透過するX線の位相速度が異なることで発生する。図2に示した第1の位相変調パターン40において、第1の位相遅延部44は開口部であり、第1の位相基準部42は突条部であるが、位相差が上述の通りであれば、第1の位相遅延部44と第1の位相基準部42との形状は特に問わない。第2の位相遅延部48と第2の位相基準部46についても同様である。
本実施形態の位相格子4が有する位相変調パターン23は、第1の位相変調パターン40と、第2の位相変調パターン50とを組み合わせることで実現することができる。第1の位相変調パターン40の、第1の方向における第1の位相基準部42と第1の位相遅延部44との幅の比(第1の幅の比と呼ぶことがある)は、1:2又は2:1である。また、第1の位相基準部42に対する第1の位相遅延部44の位相差(第1の位相差と呼ぶことがある)は−2(3n+1)π/3または−2(3n+2)π/3(但し、nは上述のように、0以上の整数を示す)である。第2の位相変調パターン50も同様であり、第2の位相変調パターン50の、第2の方向における第2の位相基準部46と第2の位相遅延部48との幅の比(第2の幅の比と呼ぶことがある)は、1:2又は2:1である。また、第2の位相遅延部48に対する第2の位相基準部46の位相差(第2の位相差と呼ぶことがある)は−2(3m+1)π/3または−2(3m+2)π/3(但し、mは0以上の整数)である。第2の幅の比が第1の幅の比と等しい場合、第1の位相差が−2(3n+1)π/3のときは第2の位相差も−2(3m+1)π/3であり、第1の位相差が−2(3n+2)π/3のときは第2の位相差も−2(3m+2)π/3である。第2の幅の比が第1の幅の比とが異なる(逆)の場合、第1の位相差が−2(3n+1)π/3のときは第2の位相差は−2(3m+2)π/3であり、第1の位相差が−2(3n+2)π/3のときは第2の位相差は−2(3m+1)π/3である。
第1の位相遅延部44と第1の位相基準部42との位相差は、第1の位相遅延部44と第1の位相基準部42とで、透過するX線の位相速度が異なることで発生する。図2に示した第1の位相変調パターン40において、第1の位相遅延部44は開口部であり、第1の位相基準部42は突条部であるが、位相差が上述の通りであれば、第1の位相遅延部44と第1の位相基準部42との形状は特に問わない。第2の位相遅延部48と第2の位相基準部46についても同様である。
図3((a)〜(d))に、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)の断面の例を示す。図3に示した第1又は第2の位相変調パターン(40、50)は、基板をエッチングすることによって作製することができる。エッチングによって形成する凹部の深さ(凸部52の高さに一致)hは、位相格子4を透過するX線のうち、代表的なエネルギーのX線に着目し、所望の位相差が生じるように決定すればよい。透過するX線が複数のエネルギーの場合は、すべてのエネルギーで所望の位相差が満たされるものではない。実用上においては、設計者が設定したX線のエネルギーに基づいて凹部の深さhが決定される。また、図3に示した第1又は第2の位相変調パターン(40、50)においては、凸部52同士が凸部52と同じ材料の支持構造で連結しているが、図2のように各々の凸部52は独立していてもよい。また、支持構造が凸部52と異なる材料であっても良いし、位相基準部と位相遅延部とを異なる材料で構成することで、位相差を生じさせても良い。図3(a)、(b)は、第1又は第2の位相遅延部(44、48)と第1又は第2の位相基準部(42、46)との位相差が2π/3の場合を示す。凹部において位相に2π/3の遅延(すなわち、−2(3×0+1)π/3=−2π/3の位相変調)が生じるため、凸部が位相基準部であり凹部が位相遅延部とみなせる。一方、図3(c)、(d)は、第1又は第2の位相遅延部(44、48)と第1又は第2の位相基準部(42、46)との位相差が4π/3の場合を示す。一般に、位相は−π〜πにラップされるものとして扱う。例えば、3πはπであり、且つ、−πでもある。よって、凹部において位相に4π/3の遅延(すなわち−4π/3の位相変調)が生じる場合、位相に2π/3の進行が生じるとみなすこともできる。しかしながら、本発明および本明細書では、第1と第2の位相変調パターンにおいて、凸部を位相基準部とし、凹部を4π/3位相が遅れている位相遅延部として説明する。
図3(a)、(c)は、位相基準部と位相遅延部の幅の比が1:2となり、図3(b)、(d)は、位相基準部と位相遅延部の幅の比が2:1となる。図3(b)又は(c)に示した位相変調パターン同士を第1と第2の位相変調パターン(40、50)として組み合わせると、図1(a)に示す位相変調パターンとなる。一方、図3(a)又は(d)に示した位相変調パターン同士を第1と第2の位相変調パターン(40、50)として組み合わせると、図1(b)に示す位相変調パターンとなる。
第1の位相変調パターン40と第2の位相変調パターン50とは、第1の方向と第2の方向とが交差するように、第3の方向において重なる。X線進行方向の少なくとも一部が、第3の方向と一致するように使用することで、X線は、第1と第2の位相変調パターンを透過し、図1に示したような位相変調パターンによる位相変調を受ける。尚、第3の方向は、第1の位相変調パターンの周期方向である第1の方向(x方向)と第2の位相変調パターンの周期方向である第2の方向(y方向)とを有する平面と垂直に交差する方向(z方向)とする。
本発明及び本明細書において、上述のように、位相変調パターン23の位相は−πからπにラップされるものとして扱う。例えば、位相差が6π/3=2πである場合は位相差がないとみなし、位相差が−4π/3や8π/3である場合は位相差が+2π/3(2π/3進行)とみなす。また、逆に位相差が+4π/3や−8π/3である場合、位相差が−2π/3(2π/3遅延)とみなす。第1の位相差が−4π/3であり、第2の位相差が−4π/3である場合、第1の位相遅延部と第2の位相遅延部とが重なる領域の位相差は−4π/3−4π/3=−8π/3であり−2π/3にラップされる。そして、位相格子の位相変調パターン23において位相遅延領域20として機能する。同様に、第1の位相遅延部40と第2の位相基準部46とが重なる領域と、第1の位相基準部42と第2の位相遅延部48とが重なる領域とは、位相格子の位相変調パターン23において、位相差が−4π/3=2π/3であり、位相進行部22として機能する。同様に、第1の位相差が−2π/3であり、第2の位相差が−2π/3である場合、位相格子の位相変調パターン23において位相基準領域に対する位相遅延部の位相差は−4π/3=2π/3である。
上述のように、位相変調パターン23において、位相は−π〜πにラップされ、位相基準領域24に対する位相遅延領域20の位相を−2π/3、位相進行領域22の位相を2π/3としている。これは位相基準領域24を基準にした相対位相を示しているものであって、位相基準領域24の絶対的な位相変調量が必ずしも0で有る必要はない。例えば、位相基準領域24に相当する領域での物理的に生じる位相変調量が2π/3であってもよく、その場合、位相遅延領域20での位相変調量は0、位相進行領域22での位相変調量は4π/3となればよい。位相変調領域の相対的な位相差が維持されていればよい。
第1と第2の位相変調パターンは、図4のように、同じ基板60の対向する面(第1の面62と第2の面64)に配置されていても良いし、図5のように、異なる基板(第1の基板66、第2の基板70)に配置されていても良い。但し、異なる基板に配置されている場合は、第1の位相変調パターン40が配置されている第1の基板66と、第2の位相変調パターン50が配置されている第2の基板70とが互いに固定されていることが好ましい。第1と第2の基板とが互いに固定されていれば、X線トールボット干渉計に組み込んだ際に、1つの部材としてアライメントができ、第1と第2の基板のそれぞれをアライメントする必要がないためである。尚、本発明及び本明細書においては、一方が移動したときに、もう一方もその移動に伴って移動する状態にあるとき、それらは互いに固定されているとみなす。また、移動とは、平行移動と回転移動とを含む。例えば、第1の基板のみに力を作用させることで第1の基板を回転させた場合、第1の基板の回転に伴って、第2の基板も移動するとき、第1の基板と第2の基板とが互いに固定されているとみなす。
図4に示す断面図において、第1の位相変調パターン40と第2の位相変調パターン50との間に非パターン部58が存在するが、位相格子は非パターン部58を有さなくてもよい。第1と第2の位相変調パターンの間に、非パターン部が存在しないと、非パターン部58に因るX線の吸収がないので、X線の利用効率が向上する。例えば、予め基板60の厚さを第1の位相基準部42の厚みと第2の位相基準部46の厚みとを足した厚みにしておき、第1の面のエッチングにより第1の位相遅延部を、第2の面のエッチングにより第2の位相遅延部を形成すればよい。第1と第2の位相変調パターンのアライメントを行うために、第1と第2の位相変調パターンの少なくともいずれかの外周部に予めアライメントマークを作製しても良い。また、基板の裏面を観察しながらアライメント可能な装置を用い、第1の面に配置された第1の位相変調パターンの端の第1の位相基準部42と、第2の位相変調パターンの各第2の位相基準部の端部を仮想的に繋いだ直線とで位置合わせをすることもできる。図5(a)のように、第1と第2の基板(66、70)は離間していても良いし、図5(b)〜(e)のように、第1と第2の基板が接していても良い。また、図5(f)のように、第1と第2の基板が接着層72を介して接していても良い。但し、第1と第2の基板同士が離れている場合、第1と第2の基板は互いに平行になるように積層することが好ましい。また、図5(b)、(d)〜(f)のように、第1の基板のうち、第1の位相変調パターン40が配置された面と、第2の基板のうち、第2の位相変調パターン50が配置された面とが向かい合うように第1と第2の基板を積層することが好ましい。以下、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)が配置された面をパターン面と呼ぶことがある。発散X線(コーンビームやファンビーム)を照射した場合、遮蔽格子又は検出器上の干渉パターンは拡大されて周期が長くなる。このとき、第1と第2の位相変調パターン間のz方向における距離が長いと、第1と第2の位相変調パターン同士で拡大率に差が生じるため、第1の方向における周期と、第2の方向における周期との差も大きくなるためである。しかしながら、第1と第2の位相変調パターンの距離が0.5mmよりも小さい場合や、干渉パターンの周期が第1と第2の方向とで異なっていても被検体の情報が取得できる場合は、図5(c)のように、パターン面と対向する面同士が向かい合っていても良い。また、第1と第2の基板の厚さが0.5mm以上であり、干渉パターンの周期を第1と第2の方向とでそろえたい場合は、発散X線による干渉パターンの拡大率を考慮して第1と第2の位相変調パターンの周期を調整すれば良い。具体的には、下記式が成立すれば、第1と第2の干渉パターンの周期を等しくすることができる。
f2×(L2a+L2b)÷L2a=f1×(L1a+L1b)÷L1a
但し、X線源と第1の位相変調パターンとの距離をL1a、X線源と第2の位相変調パターンとの距離をL2a、第1の位相変調パターンの周期をf1、第2の位相変調パターンの周期をf2とする。また、第1の位相変調パターンと干渉パターンとの距離をL1b、第2の位相変調パターンと干渉パターンとの距離をL2bとする。尚、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と干渉パターンとの距離とは、干渉パターンが形成される位置に遮蔽格子を配置して干渉パターンとは別の強度分布を形成する場合、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と遮蔽格子との距離とする。尚、遮蔽格子を用いて形成される強度分布は、モアレ縞と呼ばれるが、遮蔽格子の周期を干渉パターンの周期と等しくし、強度分布の周期と干渉パターンの周期とを等しくしても良い。また、遮蔽格子を用いず、干渉パターンを直接検出する場合は、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と干渉パターンとの距離は、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と、検出器との距離とする。尚、第1と第2の位相変調パターン(40、50)の距離により生じる拡大率の差は、図4のように、1つの基板の第1と第2の面のそれぞれに第1と第2の位相変調パターンを配置する場合でも同様に生じる。よって、この場合であっても、第1と第2の位相変調パターンの距離が0.5mm以上であり、干渉パターンの周期を第1と第2の方向とでそろえたい場合は、上記式が成立するように第1の周期と第2の周期とを調整する。
f2×(L2a+L2b)÷L2a=f1×(L1a+L1b)÷L1a
但し、X線源と第1の位相変調パターンとの距離をL1a、X線源と第2の位相変調パターンとの距離をL2a、第1の位相変調パターンの周期をf1、第2の位相変調パターンの周期をf2とする。また、第1の位相変調パターンと干渉パターンとの距離をL1b、第2の位相変調パターンと干渉パターンとの距離をL2bとする。尚、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と干渉パターンとの距離とは、干渉パターンが形成される位置に遮蔽格子を配置して干渉パターンとは別の強度分布を形成する場合、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と遮蔽格子との距離とする。尚、遮蔽格子を用いて形成される強度分布は、モアレ縞と呼ばれるが、遮蔽格子の周期を干渉パターンの周期と等しくし、強度分布の周期と干渉パターンの周期とを等しくしても良い。また、遮蔽格子を用いず、干渉パターンを直接検出する場合は、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と干渉パターンとの距離は、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)と、検出器との距離とする。尚、第1と第2の位相変調パターン(40、50)の距離により生じる拡大率の差は、図4のように、1つの基板の第1と第2の面のそれぞれに第1と第2の位相変調パターンを配置する場合でも同様に生じる。よって、この場合であっても、第1と第2の位相変調パターンの距離が0.5mm以上であり、干渉パターンの周期を第1と第2の方向とでそろえたい場合は、上記式が成立するように第1の周期と第2の周期とを調整する。
図5(b)のように、第1と第2の位相変調パターンが向かい合うように第1と第2の基板を積層した場合に、外観からパターンを識別することができない。そこで、図5(d)のように、第1又は第2の基板の、外部へ露出される面に識別部74を配置しておくと、外観からパターンを識別することができる。また、識別部がアライメントマークを有すれば、干渉計へ取り付ける場合に、アライメントマークを利用した位相格子のアライメントが可能となる。アライメントマークは、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)のように、X線の位相を変調するパターンでも良いし、X線吸収係数が高いパターン(例えば円や多角形)でも良い。また、レーザ光を用いてアライメントを行う干渉計であれば、単純な鏡面でも良い。アライメントマークのパターンが周期性を有していてもよい。またアライメントマークのパターンの周期方向と位相変調パターンの周期方向が同じでも良い。
また、図5(e)のように、第1と第2の位相変調パターンのそれぞれが、第1と第2の基板のそれぞれの凹部に配置されていても良い。このように、第1と第2の位相変調パターンを基板の凹部に配置することで、第1と第2の基板のパターン面同士が向かい合うように第1と第2の基板を積層した場合、第1と第2の位相変調パターンの間に空間68が存在する。よって、第1と第2の位相変調パターンが接することによる、第1と第2の位相変調パターンの損傷を防ぐことができる。図5(f)のように、第1と第2の位相変調パターンの外部に接着層72を設け、この接着層を介して第1と第2の基板が接している場合であっても、第1と第2の位相変調パターンの間には空間68が存在するため、同様の効果を得ることができる。
また、積層時にアライメントを行うため、基板に予めアライメントマークを作製しても良い。アライメントマークは基板の面内のパターンでも良いし、アライメントマークとして基板の外径を加工する、またはオリエンテーションフラット(以下、オリフラ)を用いてもよい。その他のアライメントの方法として、X線顕微鏡や超音波顕微鏡により回折格子を拡大観察して位置合わせをすることもできる。また、空間的に可干渉なX線を照射し、トールボット効果により得られる干渉パターンを観察しながら位置合わせをしても良い。
基板にはX線の吸収が少ない材料の基板を使用することが好ましい。例えばシリコンやガリウムヒ素、ゲルマニウム、インジウムリンといった半導体ウェハーやガラスウェハーを使用することができる。また、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの樹脂性基板を用いることもできる。形状は薄板状で、表裏が鏡面であればコントラストが良好と成るため好ましい。
積層した第1と第2の基板同士を固定する場合、エポキシ樹脂などの接着剤や金−金接合などによる間接接合、陽極接合やシリコンフュージョン接合などの直接接合、クランプなどを用いた機械的な固定などにより行うことができる。接着材を用いて接合する場合、第1と第2の位相変調パターンが形成されていない領域にのみ接着剤を塗布することが好ましい。こうすることで、第1と第2の位相変調パターンの一部に接着剤が流れ込み、接着剤の有無により位相差が生じ、位相変調のパターンが乱れるのを防ぐことができる。加えて、図5(f)のように接着剤で形成される接着層で第1と第2の基板が接するため、第1と第2の位相変調パターン同士の接触によるパターンの損傷を抑制することができる。
シリコンフュージョン接合を行う場合、接合前のシリコン基板を熱酸化してもよい。シリコン基板表面に熱酸化膜があることで、接合界面から発生する水分子に起因したボイドの発生を抑制することができる。また、接合後の基板をアニールしても良いし、しなくても良い。シリコン基板の場合、アニールすることでボイドの発生を抑制する効果が期待でき、接合強度も強まる。一方、基板の厚さが異なる場合は、アニールしないことで、接合後の反りを軽減することができる。第1と第2の位相変調パターンが基板の内側にある(図5(b)、(d)〜(f))場合であり、基板の内側に空間がある場合は、その空間を空気や窒素などのガスで満たしても良いし、真空でもよい。ガスを満たし、空間を1気圧にすることで、大気圧の影響で生じる反りを軽減することができる。一方で、真空にすることで、空間でのX線の吸収を軽減することができる。尚、ここで指す空間とは、図5(e)〜(f)のような、第1と第2の位相変調パターンの間の空間68だけでなく、第1又は第2の位相変調パターン(40、50)中の空間のこともさす。例えば、図3のように、位相基準部が凸部を有する場合、位相基準部同士の間隙のことも含む。
パターンを形成するために、フォトリソグラフィー法やウェットエッチング法、ドライエッチング法、スパッタや蒸着・CVD・無電解めっき・電解めっきといった各種成膜法、ナノインプリント法などを用いることができる。つまり、フォトリソグラフィー法でレジストパターンを形成した後に、ドライエッチングまたはウェットエッチングで基板に加工しても良いし、リフトオフ法で基板上に回折格子を付与することもできる。また、ナノインプリント法により基板又は基板上に成膜した材料を加工しても良い。本実施形態の位相格子4を検出器14と組み合わせることで、トールボット干渉計100を構成することができる。トールボット干渉計は、空間的に可干渉なX線源と組み合わせてトールボット干渉法による被検体6の計測を行うことができる。トールボット干渉計100は、遮蔽格子12を備えていても良い。干渉パターンが形成される位置に遮蔽格子を配置することで、干渉パターンと異なる強度分布を形成し、この強度分布を検出器14が検出しても良い。また、空間的に非干渉なX線を射出するX線発生手段2に線源格子10を組み合わせたX線源200を用いることで、図6のようにトールボット・ロー干渉計として用いても良い。トールボット・ロー干渉計は、トールボット干渉計の一種であり、干渉パターンのコントラストを向上させるためにロー効果を利用するものである。X線源200で発生するX線のエネルギーは、位相格子4の設計エネルギーと同じことが望ましいが、異なっていても良い。一般的なX線管から発生するX線は有限なエネルギースペクトルを有しており、設計エネルギーがスペクトル内に有れば良い。
[実施例1]
実施例1においては、同一基板の第1と第2の面のそれぞれに、第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置した2次元位相格子の製造方法について説明する。本実施例においては、まず、4インチ径の両面(第1と第2の面)を研磨した150μm厚のシリコンウェハーの第1の面をレジストコートする。そして、フォトリソグラフィー法により60mm角のエリアに線幅1μm、間隙2μmのスリット状レジストパターンを作製する。このとき、スリットの4隅に長さ10μmの十文字レジストパターンも同時に作製する。次に、シリコンのDeep Reactive Ion Etching(以下、Deep−RIEという)により、幅1μm、間隙2μmで深さが17μmのスリット構造およびスリットの4隅に長さ10μmの十文字パターンを作製する。これにより、基板の第1の面に第1の位相変調パターン(スリット構造に対応)とアライメントパターン(十文字パターンに対応)とが配置される。その後にレジストを除去する。
実施例1においては、同一基板の第1と第2の面のそれぞれに、第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置した2次元位相格子の製造方法について説明する。本実施例においては、まず、4インチ径の両面(第1と第2の面)を研磨した150μm厚のシリコンウェハーの第1の面をレジストコートする。そして、フォトリソグラフィー法により60mm角のエリアに線幅1μm、間隙2μmのスリット状レジストパターンを作製する。このとき、スリットの4隅に長さ10μmの十文字レジストパターンも同時に作製する。次に、シリコンのDeep Reactive Ion Etching(以下、Deep−RIEという)により、幅1μm、間隙2μmで深さが17μmのスリット構造およびスリットの4隅に長さ10μmの十文字パターンを作製する。これにより、基板の第1の面に第1の位相変調パターン(スリット構造に対応)とアライメントパターン(十文字パターンに対応)とが配置される。その後にレジストを除去する。
次に、パターン形成した基板の第2の面にレジストコートし、第1の面に配置された4個の十文字パターンをアライメントマークとし、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成する。レジストパターンは、線幅1μm、間隙2μmのスリット状レジストパターンであり、このレジストパターンの周期方向が、第1の位相変調パターンの周期方向である第1の方向と直交するように、レジストパターンを作製する。その後、Deep−RIEにより幅1μm、間隙2μmで深さが17μmのスリット構造を、第2の面にも作製する。これにより、図1(b)に示す位相変調パターンを有する2次元位相格子が得られる。この2次元位相格子は、20keVのX線に対して±2π/3の位相シフトを発生する。つまり、20keVのX線が位相変調パターンに入射したときに、位相遅延領域を透過したX線は位相基準領域を透過したX線に対して位相が2π/3遅延している。同様に、位相進行領域を透過したX線は位相基準領域を透過したX線に対して位相が2π/3進行している。
[実施例2]
実施例2においては、第1と第2の基板のそれぞれに第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置した2次元位相格子の製造方法について説明する。実施例1とは、同一の基板の第1と第2の面ではなく、第1と第2の基板の片面に第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置する点で異なるが、その他の点は同様である。実施例1と同様に、4インチ径の両面研磨した150μm厚のシリコンウェハー表面に幅1μm、間隙2μmで深さ17μmのスリット構造および十文字パターンを作製する。但し、十文字パターンは、第1の基板と第2の基板との両方に作製する。第1と第2の基板のそれぞれのうち、第1又は第2の位相変調パターンを配置した面をプラズマ処理により活性化し、その後、水酸基を付与する処理を行う。次に、第1と第2の基板のパターン面とを向い合せにし、十文字パターンをアライメントマークとして、位置合わせを行う。この際、第1の位相変調パターンの周期方向である第1の方向と第2の位相変調パターンの周期方向である第2の方向とが直交するように回転方向をアライメントする。その後、1気圧の窒素雰囲気中で第1と第2の基板同士を接触・加圧し、接合を行う。これにより、図1(a)に示す位相変調パターンを有し、20keVのX線に対して±2π/3の位相シフトを発生する2次元位相格子が得られる。
実施例2においては、第1と第2の基板のそれぞれに第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置した2次元位相格子の製造方法について説明する。実施例1とは、同一の基板の第1と第2の面ではなく、第1と第2の基板の片面に第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置する点で異なるが、その他の点は同様である。実施例1と同様に、4インチ径の両面研磨した150μm厚のシリコンウェハー表面に幅1μm、間隙2μmで深さ17μmのスリット構造および十文字パターンを作製する。但し、十文字パターンは、第1の基板と第2の基板との両方に作製する。第1と第2の基板のそれぞれのうち、第1又は第2の位相変調パターンを配置した面をプラズマ処理により活性化し、その後、水酸基を付与する処理を行う。次に、第1と第2の基板のパターン面とを向い合せにし、十文字パターンをアライメントマークとして、位置合わせを行う。この際、第1の位相変調パターンの周期方向である第1の方向と第2の位相変調パターンの周期方向である第2の方向とが直交するように回転方向をアライメントする。その後、1気圧の窒素雰囲気中で第1と第2の基板同士を接触・加圧し、接合を行う。これにより、図1(a)に示す位相変調パターンを有し、20keVのX線に対して±2π/3の位相シフトを発生する2次元位相格子が得られる。
[実施例3]
実施例3においては、第1と第2の基板(66、70)のそれぞれに第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置した2次元位相格子の製造方法について説明する。実施例2とは、第1と第2の基板を接合するのではなく、第1と第2の基板を、ホルダーにクランプで固定する点で異なる。4インチ径の両面研磨した150μm厚のシリコンウェハー表面に幅1μm、間隙2μmで深さ17μmのスリット構造を作製する工程は実施例2と同じである。但し、図7(a)のように、第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを、第1と第2の基板のそれぞれのオリフラ(67、69)に対して、第1と第2の方向(x方向、y方向)のそれぞれが45°傾く(つまり、45°で交差する)ように形成する。第1と第2の位相変調パターンのそれぞれをこのように配置すると、第1と第2の基板のオリフラを重ね合わせれば、第1と第2の方向が直交するため、オリフラをアライメントマークとして用いることができる。第1と第2の方向が直交しない位相変調パターンを得たい場合は、第1と第2の基板のオリフラのそれぞれに対して、第1と第2の方向とが、第1と第2の方向とのなす角の1/2傾くように第1と第2の位相変調パターンを配置すればよい。但し、このようにオリフラをアライメントマークとして用いる場合、図7(b)のようにパターン面同士が向かい合うか、パターン面と対向する面同士が向かい合うように第1と第2の基板を積層する。パターン面とパターン面と対向する面とが向かい合うように第1と第2の基板を積層すると、第1と第2の方向が交差しない。このように第1と第2の基板を積層すると、第1と第2の位相変調パターンのそれぞれが配置された第1と第2の基板同士を区別する必要がない。つまり、図7(a)、(b)においては、右側の基板が第1の位相変調パターンが配置された第1の基板であり、左側の基板が第2の位相変調パターンが配置された第2の基板であるが、左側を第1の基板、右側を第2の基板とすることもできる。加えて、オリフラを利用するため、アライメントマークを別途配置する必要がない。尚、第1の基板と第2の基板とのオリフラ同士が重なり合わなくても、パターン面側から見たときに第1と第2の基板とのオリフラ同士が平行であれば、第1と第2の基板とのオリフラ同士が重なり合うときと同じ角度で第1と第2の方向が交差する。但し、第1と第2の位相変調パターンが配置されている領域が、第1と第2の基板の中心に対して対称に広がっている場合、第1と第2の基板のオリフラ同士が重なり合う方が、第1と第2の位相変調パターンが重なる領域が広くなる。加えて、ある平面をアライメント平面とし、アライメント平面に第1と第2の基板のオリフラを突き当てることで第1と第2の基板のアライメントを行うことができる。よって、図7(c)のように、第1と第2の基板のオリフラ同士は重なり合うことが好ましく、このとき、第1と第2の基板のオリフラは、アライメント平面と接している。アライメント平面は、第3の方向に対して平行な面であることが好ましいが、仮想的な面であっても良い。
実施例3においては、第1と第2の基板(66、70)のそれぞれに第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを配置した2次元位相格子の製造方法について説明する。実施例2とは、第1と第2の基板を接合するのではなく、第1と第2の基板を、ホルダーにクランプで固定する点で異なる。4インチ径の両面研磨した150μm厚のシリコンウェハー表面に幅1μm、間隙2μmで深さ17μmのスリット構造を作製する工程は実施例2と同じである。但し、図7(a)のように、第1と第2の位相変調パターンのそれぞれを、第1と第2の基板のそれぞれのオリフラ(67、69)に対して、第1と第2の方向(x方向、y方向)のそれぞれが45°傾く(つまり、45°で交差する)ように形成する。第1と第2の位相変調パターンのそれぞれをこのように配置すると、第1と第2の基板のオリフラを重ね合わせれば、第1と第2の方向が直交するため、オリフラをアライメントマークとして用いることができる。第1と第2の方向が直交しない位相変調パターンを得たい場合は、第1と第2の基板のオリフラのそれぞれに対して、第1と第2の方向とが、第1と第2の方向とのなす角の1/2傾くように第1と第2の位相変調パターンを配置すればよい。但し、このようにオリフラをアライメントマークとして用いる場合、図7(b)のようにパターン面同士が向かい合うか、パターン面と対向する面同士が向かい合うように第1と第2の基板を積層する。パターン面とパターン面と対向する面とが向かい合うように第1と第2の基板を積層すると、第1と第2の方向が交差しない。このように第1と第2の基板を積層すると、第1と第2の位相変調パターンのそれぞれが配置された第1と第2の基板同士を区別する必要がない。つまり、図7(a)、(b)においては、右側の基板が第1の位相変調パターンが配置された第1の基板であり、左側の基板が第2の位相変調パターンが配置された第2の基板であるが、左側を第1の基板、右側を第2の基板とすることもできる。加えて、オリフラを利用するため、アライメントマークを別途配置する必要がない。尚、第1の基板と第2の基板とのオリフラ同士が重なり合わなくても、パターン面側から見たときに第1と第2の基板とのオリフラ同士が平行であれば、第1と第2の基板とのオリフラ同士が重なり合うときと同じ角度で第1と第2の方向が交差する。但し、第1と第2の位相変調パターンが配置されている領域が、第1と第2の基板の中心に対して対称に広がっている場合、第1と第2の基板のオリフラ同士が重なり合う方が、第1と第2の位相変調パターンが重なる領域が広くなる。加えて、ある平面をアライメント平面とし、アライメント平面に第1と第2の基板のオリフラを突き当てることで第1と第2の基板のアライメントを行うことができる。よって、図7(c)のように、第1と第2の基板のオリフラ同士は重なり合うことが好ましく、このとき、第1と第2の基板のオリフラは、アライメント平面と接している。アライメント平面は、第3の方向に対して平行な面であることが好ましいが、仮想的な面であっても良い。
シリコンウェハーの外形に合せた凹部(落とし込み)を形成したホルダーに、第1と第2の基板のオリフラを突き当てて、第1と第2の基板を取り付ける。このとき、第1と第2の基板は、パターン面と対向する面同士が接触するように取り付ける。オリフラが突き当てられた状態で、金属製の支持棒で2つの基板をホルダーに押さえつける。これにより、20keVのX線に対して±2π/3の位相シフトを発生する2次元位相格子が得られる。尚、本実施例では、第1と第2の基板同士が接触するように第1と第2の基板を互いに固定したが、第1と第2の基板同士は離間されていても良い。
f1 第一の周期
f2 第二の周期
20 位相遅延領域
22 位相進行領域
24 位相基準領域
f2 第二の周期
20 位相遅延領域
22 位相進行領域
24 位相基準領域
Claims (12)
- 位相基準領域と、位相進行領域と、位相遅延領域とを備える位相格子であって、
基板の第1の面に第1の位相変調パターンが配置されており、
前記基板の前記第1の面と対向する第2の面に第2の位相変調パターンが配置されており、
前記第1の位相変調パターンは、第1の位相基準部と、前記第1の位相基準部に対する第1の位相差が−2(3n+1)π/3または−2(3n+2)π/3である第1の位相遅延部とが、第1の方向において第1の幅の比で交互に配置された位相変調パターンであり、
前記第2の位相変調パターンは、第2の位相基準部と、前記第2の位相基準部に対する第2の位相差が−2(3m+1)π/3または−2(3m+2)π/3である第2の位相遅延部とが、前記第1の方向と交差する第2の方向において第2の幅の比で交互に配置された位相変調パターンであり、
前記第1の位相差が−2(3n+1)π/3のとき、前記第2の位相差は−2(3m+1)π/3であり、
前記第1の位相差が−2(3n+2)π/3のとき、前記第2の位相差は−2(3m+2)π/3であり、
前記位相基準領域と前記位相進行領域と前記位相遅延領域とは、前記第1の位相変調パターンと前記第2の位相変調パターンとが前記第1の方向と前記第2の方向とを有する平面と垂直に交差する第3の方向において重なることにより構成され、
前記第1の幅の比と前記第2の幅の比とは、1:2又は2:1であり、
前記第1の幅の比と前記第2の幅の比とが等しいことを特徴とする位相格子。
但し、nとmは0以上の整数である。 - 位相基準領域と、位相進行領域と、位相遅延領域とを備える位相格子であって、
基板の第1の面に第1の位相変調パターンが配置されており、
前記基板の前記第1の面と対向する第2の面に第2の位相変調パターンが配置されており、
前記第1の位相変調パターンは、第1の位相基準部と、前記第1の位相基準部に対する第1の位相差が−2(3n+1)π/3または−2(3n+2)π/3である第1の位相遅延部とが、第1の方向において第1の幅の比で配置された位相変調パターンであり、
前記第2の位相変調パターンは、第2の位相基準部と、前記第2の位相基準部に対する第2の位相差が−2(3m+1)π/3または−2(3m+2)π/3である第2の位相遅延部とが、前記第1の方向と交差する第2の方向において第2の幅の比で交互に交差する第2の方向に配置された位相変調パターンであり、
前記第1の位相差が−2(3n+1)π/3のとき、前記第2の位相差は−2(3m+2)π/3であり、
前記第1の位相差が−2(3n+2)π/3のとき、前記第2の位相差は−2(3m+1)π/3であり、
前記位相基準領域と前記位相進行領域と前記位相遅延領域とは、前記第1の位相変調パターンと前記第2の位相変調パターンとが前記第1の方向と前記第2の方向とを有する平面と垂直に交差する第3の方向において重なることにより構成され、
前記第1の幅の比と前記第2の幅の比とは、1:2又は2:1であり、
前記第1の幅の比と前記第2の幅の比とが異なることを特徴とする位相格子。
但し、nとmは0以上の整数である。 - 前記第1の面と前記第2の面との少なくともいずれかにはアライメントマークが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の位相格子。
- 第1の基板に前記第1の位相変調パターンが配置されており、
第2の基板に前記第2の位相変調パターンが配置されており、
前記第1の基板と前記第2の基板とが互いに固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位相格子。 - 前記第1の基板のうち、前記第1の位相変調パターンが形成された面と、
前記第2の基板のうち、前記第2の位相変調パターンが形成された面と、
が向かい合うように前記第1の基板と前記第2の基板とが固定されていることを特徴とする請求項4に記載の位相格子。 - 前記第1の基板のうち、前記第1の位相変調パターンが形成された面と対向する面と、
前記第2の基板のうち、前記第2の位相変調パターンが形成された面と対向する面と、
が向かい合うように前記第1の基板と前記第2の基板とが固定されていることを特徴とする請求項4に記載の位相格子。 - 前記第1の基板と前記第2の基板との少なくともいずれかにはアライメントマークが設けられていることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の位相格子。
- 前記第1の基板と前記第2の基板とのそれぞれは、オリエンテーションフラットを有するウェハーであり、
前記第1の位相変調パターンは、前記第3の方向から前記第1の基板をみたときに、前記第1の方向と前記第1の基板の前記オリエンテーションフラットとが交差するように配置されており、
前記第2の位相変調パターンは、前記第3の方向から前記第2の基板をみたときに、前記第2の方向と前記第2の基板の前記オリエンテーションフラットとが交差するように配置されており、
前記第1の基板と前記第2の基板とは、
前記第1の基板のオリエンテーションフラットと前記第2の基板のオリエンテーションフラットとがアライメント平面と接するように固定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の位相格子。 - 第3の方向において、前記第1の位相変調パターンと、前記第2の位相変調パターンとの間に間隙があり、
前記第1の位相変調パターンの周期と、前記第2の位相変調パターンの周期とが異なることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の位相格子。 - X線源からのX線の位相を変調して干渉パターンを形成する位相格子と、
前記干渉パターンを形成するX線の少なくとも一部を検出する検出器とを備え、
前記位相格子は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の位相格子であるX線トールボット干渉計。 - X線源からのX線の位相を変調して干渉パターンを形成する位相格子と、
前記干渉パターンを形成するX線を検出する検出器とを備え、
前記位相格子は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の位相格子であり、
前記X線源と前記第1の位相変調パターンとの距離をL1a、
前記第1の位相変調パターンと前記検出器の距離をL2a、
前記X線源と前記第2の位相変調パターンとの距離をL1b、
前記第2の位相変調パターンと前記検出器の距離をL2b、
前記第1の位相変調パターンの周期をf1、
前記第2の位相変調パターンの周期をf2、とすると、
下記式が成立することを特徴とするX線トールボット干渉計。
f2×(L2a+L2b)÷L2a=f1×(L1a+L1b)÷L1a - X線源からのX線の位相を変調して干渉パターンを形成する位相格子と、
前記干渉パターンを形成するX線の一部を遮蔽する遮蔽格子と、
前記遮蔽格子からのX線を検出する検出器とを備え、
前記位相格子は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の位相格子であり、
前記X線源と前記第1の位相変調パターンとの距離をL1a、
前記第1の位相変調パターンと前記遮蔽格子の距離をL2a、
前記X線源と前記第2の位相変調パターンとの距離をL1b、
前記第2の位相変調パターンと前記遮蔽格子の距離をL2b、
前記第1の位相変調パターンの周期をf1、
前記第2の位相変調パターンの周期をf2、とすると、
下記式が成立することを特徴とするX線トールボット干渉計。
f2×(L2a+L2b)÷L2a=f1×(L1a+L1b)÷L1a
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014229908A JP2016095343A (ja) | 2014-11-12 | 2014-11-12 | 位相格子及びトールボット干渉計。 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014229908A JP2016095343A (ja) | 2014-11-12 | 2014-11-12 | 位相格子及びトールボット干渉計。 |
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---|---|
JP2016095343A true JP2016095343A (ja) | 2016-05-26 |
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ID=56071672
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JP2014229908A Pending JP2016095343A (ja) | 2014-11-12 | 2014-11-12 | 位相格子及びトールボット干渉計。 |
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JP (1) | JP2016095343A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112147729A (zh) * | 2019-06-28 | 2020-12-29 | 株式会社三丰 | 光栅部件及其制造方法 |
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2014
- 2014-11-12 JP JP2014229908A patent/JP2016095343A/ja active Pending
Cited By (3)
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CN112147729A (zh) * | 2019-06-28 | 2020-12-29 | 株式会社三丰 | 光栅部件及其制造方法 |
JP2021006780A (ja) * | 2019-06-28 | 2021-01-21 | 株式会社ミツトヨ | 格子部品およびその製造方法 |
JP7319106B2 (ja) | 2019-06-28 | 2023-08-01 | 株式会社ミツトヨ | 格子部品およびその製造方法 |
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