JP5339239B2 - SiC基板の作製方法 - Google Patents
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Description
本発明は、SiC基板の作製方法に関し、詳しくは、準安定溶媒エピタキシャル法を用いたSiC基板の作製方法に関する。
近年の電気機器の高効率化に対する厳しいユーザの要求の下、半導体デバイスにおいても一層の耐圧特性を有する半導体材料の開発が進められている。特に、SiC(炭化ケイ素)はSi(ケイ素)に比べてバンドギャップが大きいことから、次世代のパワーデバイスへの応用を目指して盛んに開発がなされている。
SiC半導体デバイスを作成するための単結晶SiCを得る代表的な方法として、化学的気相蒸着法(CVD)、液相成長法、昇華法(改良レーリー法)等が知られている。その中でも、液相成長法は、比較的高い成長速度で高品位な単結晶SiCを得ることができる方法として知られている。しかし、この液相成長法は、1000℃を超える高温で、Si系フラックスを用いて行っているため、液(Si融液)中の対流制御や温度制御等が必要であり、これらの制御方法が大きな問題となっている。
上記の問題を解決する成長法として、準安定溶媒エピタキシャル法(以下、「MSE法」とも言う)(Metastable Solvent Epitaxy)が提案されている(例えば、特許文献1)。
このMSE法によるSiC成長につき、MSE法に用いられる単結晶SiC成長装置の主要部を模式的に示す図1により、具体的に説明する。図1に示すように、密閉された坩堝60の中には、上から順に、成長基板としての単結晶SiC基板10(種結晶)、極薄のSi層20(Si融点までは固体、Si融点以上では液体)、Si層20の厚みをコントロールする上部スペーサ40、原料供給側基板としての炭素原子供給基板30および下部スペーサ50が配置されている。
MSE法によるSiC成長は、高真空雰囲気下で行われ、まずはじめに、図示しない加熱手段を用いて坩堝60内の温度をSi融点(約1400℃)よりも高い所定の温度(SiC成長温度)まで昇温する。この昇温過程において、温度がSi融点を超えるとSi層20の固体Siが溶融してSi融液となる。次いで、この温度で、所定の時間保持して、単結晶SiC基板10上に単結晶SiCを成長させる。その後、温度を下げて、単結晶SiCが成長した単結晶SiC基板10を取り出す。
このように、単結晶SiC基板10と炭素原子供給基板30の間に極薄のSi層20(Si融液層)を介在させ、高温で加熱処理を行うことにより、単結晶SiC基板10上に単結晶SiCをエピタキシャル成長させることができる。
このMSE法は、前記の通り、単結晶SiC基板(SiC成長基板)と炭素原子供給基板(原料供給側基板)とに挟まれた極薄のSi融液層を形成させるため、Si融液中の対流を抑制できるという特徴がある。また、基板に挟まれた極薄のSi融液層を形成するため、Si融液の表面張力のみでこのSi融液層を保持することが可能となり、Si融液を保持する容器が不要となる。そして、SiC成長の駆動力が空間的温度差、時間的温度差によらないため、緻密な温度制御を行うことなく、均熱領域を容易に得ることができる。
このような優れた特徴を有するMSE法では、高温で加熱処理を行うことにより、結晶の成長速度を速くして厚膜を得ることができるだけでなく、欠陥の伝播を抑制する効果も得ることができるという特徴もあり、品質の高い単結晶SiCを作製することができる。しかし、単結晶SiCの成長後にSiが残っていると、温度の下降時にSiが凝固し、凝固時にSiが膨張するため、単結晶SiC基板に大きな応力が発生して、新たな欠陥を生じさせる。
従って、MSE法では、高温で単結晶SiCを成長させた後に、残ったSiを全て蒸発させることが必要となる。
従って、MSE法では、高温で単結晶SiCを成長させた後に、残ったSiを全て蒸発させることが必要となる。
しかしながら、上記のMSE法においては、Si蒸発時にSiC基板表面に凹凸が発生するため、取り出された単結晶SiC基板をそのままではデバイスに使用できず、研磨加工を施して平坦にする必要がある。
例えば、図1に示す装置を用いて、図5に示す温度プロファイルでMSE成長を行って得られた単結晶SiC基板を図6に示す。図6に示すように、得られた単結晶SiC基板表面には、10μm程度の大きな凹凸ができている。なお、図5における各加熱時間は、1800℃まで昇温する時間が3時間、1800℃を保持する時間が4時間、常温まで降温する時間が10時間であり、1800℃を保持している間に、SiC基板の表面にSiC結晶を成長させると共に、Siを全て蒸発させている。また、図6において、10は前記した単結晶SiC基板であり、11はMSE成長した単結晶SiCであり、18が表面に生じた凹凸である。
得られた単結晶SiCをデバイスに使用するためには、前記したように、凹凸を研磨して平坦にする必要がある。しかし、表面に大きな凹凸があるため、光学的な、即ち非破壊の膜厚測定が困難となり、研磨代を正確に割り出すことができない。大きな凹凸があれば研磨量も多くなり、単結晶SiCが薄くなるため、コストが上昇する。そして、場合によっては、研磨により単結晶SiCの全てが研磨されてしまう恐れもある。
このため、MSE法を用いて、SiC基板に、充分な膜厚でかつ大きな凹凸を有しない単結晶SiCを成長させる技術の開発が望まれていた。
本発明は、以上の課題を解決することを目的としてなされたものであり、MSE法でSiC基板に単結晶SiCを高温で成長させる工程と、残ったSiを完全に蒸発させる工程を設けたものである。以下、各請求項の発明を説明する。
請求項1に記載の発明は、
準安定溶媒エピタキシャル法を用いたSiC基板の作製方法であって、
SiC結晶成長温度で、SiC基板の表面に所定の厚さのSiC結晶を成長させる結晶成長工程の後に、
前記SiC結晶成長温度とSi融点の中間の温度で、Si融液を蒸発させるSi蒸発工程
を有していることを特徴とするSiC基板の作製方法である。
準安定溶媒エピタキシャル法を用いたSiC基板の作製方法であって、
SiC結晶成長温度で、SiC基板の表面に所定の厚さのSiC結晶を成長させる結晶成長工程の後に、
前記SiC結晶成長温度とSi融点の中間の温度で、Si融液を蒸発させるSi蒸発工程
を有していることを特徴とするSiC基板の作製方法である。
本発明者は、従来のMSE法を用いて、前記したSi融液蒸発時におけるSiC基板表面の凹凸の発生につき実験を行い、発生する凹凸の大きさがSi融液蒸発の温度に比例することを見出した。即ち、1800℃程度の温度では10μm以上の大きな凹凸が発生し、1600℃程度の温度では1μm程度の凹凸しか発生しないことが分かった。
即ち、従来のMSE法では、結晶の成長速度を速くして厚膜のSiC結晶を得るために高温で加熱処理を行い、そのまま続けてSi融液の蒸発を行っているため、表面に大きな凹凸が発生することが分かった。
本請求項の発明においては、この知見に基づき、従来のMSE法のように結晶成長工程とSi蒸発工程を同じ温度で行うのではなく、高温で行う結晶成長工程とSiC結晶成長温度よりも低い温度で行うSi蒸発工程とに明確に分けているため、高温で行う結晶成長工程においては充分にSiC成長を行って所望の厚さのSiC結晶を速い成長速度で得ることができ、SiC結晶成長温度よりも低い温度で行うSi蒸発工程においてはSiC結晶に大きな凹凸が発生することを抑制しながらSi融液を蒸発させることができる。
その結果、充分な膜厚でありながら、表面に大きな凹凸を有しないSiC結晶を得ることができる。このようなSiC結晶は、前記した非破壊の膜厚測定が容易であり、研磨代の制御が十分可能となるため、材料ロスとなる研磨量の低減と研磨作業時間の短縮化を図ることができ、コストの低減が可能となる。
なお、本請求項の発明におけるSiC結晶成長温度は、SiC基板の大きさや所望するSiC結晶の厚さ等に基づき適宜設定すればよいが、温度が高すぎると、基板としてのSiCや、炭素原子供給源として多結晶SiCを用いる場合のSiCが昇華する等の弊害が新たに発生するため、1700〜2200℃程度が好ましい。
また、Si融液を蒸発させる温度は、設定されたSiC結晶成長温度に応じて適宜設定されるが、1450〜1700℃程度が好ましい。
請求項2に記載の発明は、
前記結晶成長工程における雰囲気圧力が、Si融液の飽和蒸気圧よりも高く、
前記Si蒸発工程における雰囲気圧力が、Si融液の飽和蒸気圧よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載のSiC基板の作製方法である。
前記結晶成長工程における雰囲気圧力が、Si融液の飽和蒸気圧よりも高く、
前記Si蒸発工程における雰囲気圧力が、Si融液の飽和蒸気圧よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載のSiC基板の作製方法である。
前記の通り、従来のMSE法では全ての工程を高真空雰囲気下で行っているため、SiCの結晶成長と並行してSi融液の蒸発が行われる。そのため、所望する厚さまでSiCの結晶成長が行われる前に、Si融液が完全に蒸発してしまう恐れがある。このような場合には、高温でSi融液の蒸発が完了することとなり、前記の通り、SiC結晶表面に大きな凹凸が発生する。さらに、SiC成長が停止するため、所望の厚さのSiC結晶を得ることもできない。
本請求項の発明においては、結晶成長工程における雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも高くしてSi融液の蒸発を抑制しているため、高温で行われる結晶成長工程においてSi融液が完全に蒸発し、SiC結晶表面に大きな凹凸が発生するということが抑制される。また、所望する厚さまで確実にSiC成長を行うことができる。そして、SiC結晶成長温度よりも低い温度で行うSi蒸発工程において、雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも低くすることにより、Si融液を速やかに完全に蒸発させることができる。
なお、結晶成長工程における雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも高くする方法としては、Arガス等の不活性ガス(但し、窒素はSiCに取り込まれてしまうため好ましくない)や水素ガス、あるいはこれらの混合ガスを導入する方法等が好ましく採用される。
また、結晶成長工程における雰囲気圧力としては、前記した好ましい結晶成長温度を考慮すると、一般に、100Pa以上が好ましく、Si蒸発工程における雰囲気圧力としては、300Pa以下が好ましい。
請求項3に記載の発明は、
前記結晶成長工程に先立って、
真空雰囲気下で、SiC結晶成長温度とSi融点の中間の温度まで昇温してSi融液を形成させるSi融液形成工程と、
前記Si融液形成工程における温度を所定時間保持するSi融液形成温度保持工程と
を有しており、
前記Si融液形成温度保持工程において、前記結晶成長工程において用いられる雰囲気圧力まで不活性ガス(窒素を除く)、水素ガス、あるいはこれらの混合ガスを導入する
ことを特徴とする請求項2に記載のSiC基板の作製方法である。
前記結晶成長工程に先立って、
真空雰囲気下で、SiC結晶成長温度とSi融点の中間の温度まで昇温してSi融液を形成させるSi融液形成工程と、
前記Si融液形成工程における温度を所定時間保持するSi融液形成温度保持工程と
を有しており、
前記Si融液形成温度保持工程において、前記結晶成長工程において用いられる雰囲気圧力まで不活性ガス(窒素を除く)、水素ガス、あるいはこれらの混合ガスを導入する
ことを特徴とする請求項2に記載のSiC基板の作製方法である。
請求項2における結晶成長工程における雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも高くする方法として、不活性ガス(窒素を除く)や水素ガスあるいはこれらの混合ガスを導入することが好ましい。
しかし、Si融液が形成される前に不活性ガスや水素ガスを導入した場合、Si融液の形成時、Si融液中に不活性ガスや水素ガスの気泡が含まれてしまう。即ち、Si融液層が、均一なSi融液層とならず、気泡が含有されたSi融液層となる。気泡が含有されたSi融液層により結晶成長を行った場合、均一なSiC結晶を得ることができない。
このため、初期の昇温過程は真空雰囲気下で行うことが好ましい。また、SiC結晶成長温度とSi融点の中間の温度まで昇温させ、この温度を保持しながら結晶成長工程において用いられる雰囲気圧力まで不活性ガス(窒素を除く)、水素ガス、あるいはこれらの混合ガスを導入し、その後SiC結晶成長温度まで昇温することにより、安定した結晶成長を行うことができる。
請求項4に記載の発明は、
投入されるSi量が、所定の厚さのSiC結晶を得るに必要なSi量に加えて、
前記結晶成長工程におけるSi融液の蒸発量を超える量を追加した量であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のSiC基板の作製方法である。
投入されるSi量が、所定の厚さのSiC結晶を得るに必要なSi量に加えて、
前記結晶成長工程におけるSi融液の蒸発量を超える量を追加した量であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のSiC基板の作製方法である。
本請求項の発明においては、所定の厚さのSiC結晶を得るに必要なSi量に加えて、結晶成長工程において予測されるSi融液の蒸発量を超えるSi量を仕込んでいるため、全ての工程を高真空雰囲気下で行っても、結晶成長工程においてSi融液が完全に蒸発してしまうことがない。このため、高温でのSi融液の完全な蒸発を避けることができ、SiC結晶表面に大きな凹凸が生じることがない。
本発明によれば、MSE法を用いて、SiC基板に、表面に大きな凹凸を有しない充分な膜厚の単結晶SiCを成長させることができる。また、SiC表面の研磨量の低減と研磨作業時間の短縮化を図ることができ、コストの低減が可能となる。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、高温真空雰囲気下で充分にSiC成長をさせた後、SiC結晶成長温度よりも低い温度で残ったSi融液の蒸発を行って、単結晶SiCが成長した単結晶SiC基板を得るものである。
本実施の形態は、高温真空雰囲気下で充分にSiC成長をさせた後、SiC結晶成長温度よりも低い温度で残ったSi融液の蒸発を行って、単結晶SiCが成長した単結晶SiC基板を得るものである。
1.単結晶SiCの作製
以下の工程により単結晶SiCを作製した。
以下の工程により単結晶SiCを作製した。
(1)SiC成長装置の構成
まず、図1に示すように、密閉された坩堝60の中に、上から順に、単結晶SiC基板10、Si層20、上部スペーサ40、炭素原子供給基板30および下部スペーサ50を配置する。これは従来のMSE法と同様である。但し、Si層20には、所定の厚さのSiC結晶を得るに必要なSi量を充分に上回る量の固体Siを配置しておく。
まず、図1に示すように、密閉された坩堝60の中に、上から順に、単結晶SiC基板10、Si層20、上部スペーサ40、炭素原子供給基板30および下部スペーサ50を配置する。これは従来のMSE法と同様である。但し、Si層20には、所定の厚さのSiC結晶を得るに必要なSi量を充分に上回る量の固体Siを配置しておく。
(2)各工程における坩堝の温度と炉内の雰囲気
次に、図示しない加熱手段を用いて坩堝60内を加熱する。図2に本実施の形態における温度プロファイルを示す。
次に、図示しない加熱手段を用いて坩堝60内を加熱する。図2に本実施の形態における温度プロファイルを示す。
イ.初期昇温工程
まず、300Paの真空雰囲気下で、30℃/minの昇温速度で室温から1800℃まで昇温させる。この昇温により、Si融点(約1400℃)を超えた時点で固体Siは溶融して気泡を含まないSi融液層が形成される。
まず、300Paの真空雰囲気下で、30℃/minの昇温速度で室温から1800℃まで昇温させる。この昇温により、Si融点(約1400℃)を超えた時点で固体Siは溶融して気泡を含まないSi融液層が形成される。
ロ.結晶成長工程
次に、真空雰囲気下で、前記の1800℃の温度を6時間保持する。このとき、単結晶SiC基板10上で単結晶SiCがエピタキシャル成長する。
次に、真空雰囲気下で、前記の1800℃の温度を6時間保持する。このとき、単結晶SiC基板10上で単結晶SiCがエピタキシャル成長する。
ハ.Si融液蒸発工程
その後、5℃/minの降温速度で1800℃から1600℃まで降温させ、さらに1600℃の温度を9時間保持する。このとき、残っていたSi融液が全て蒸発する。
その後、5℃/minの降温速度で1800℃から1600℃まで降温させ、さらに1600℃の温度を9時間保持する。このとき、残っていたSi融液が全て蒸発する。
ニ.降温および取り出し工程
次に、1℃/minの降温速度で1600℃から室温まで降温させて、単結晶SiCが成長した単結晶SiC基板10を取り出す。
次に、1℃/minの降温速度で1600℃から室温まで降温させて、単結晶SiCが成長した単結晶SiC基板10を取り出す。
2.作製した単結晶SiCの表面の凹凸
得られた単結晶SiC基板における単結晶SiCの表面状態を図3に示す。図3において、10は単結晶SiC基板であり、11はMSE成長した単結晶SiCであり、18が表面に生じた凹凸である。図3に示すように、本実施の形態において、単結晶SiCの表面の凹凸は1μm程度であり、表面が極めて平坦であることが確認できた。
得られた単結晶SiC基板における単結晶SiCの表面状態を図3に示す。図3において、10は単結晶SiC基板であり、11はMSE成長した単結晶SiCであり、18が表面に生じた凹凸である。図3に示すように、本実施の形態において、単結晶SiCの表面の凹凸は1μm程度であり、表面が極めて平坦であることが確認できた。
これは、予め充分な固体Siが配置され、結晶成長工程の完了時でもSi融液が残っており、Si融液の完全な蒸発が、結晶成長温度よりも低温のSi蒸発工程において行われたために、単結晶SiCの表面に大きな凹凸が発生することが抑制されたことによる。
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、結晶成長工程における雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも高くし、Si蒸発工程における雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも低くして単結晶SiCが成長した単結晶SiC基板を得るものである。
本実施の形態は、結晶成長工程における雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも高くし、Si蒸発工程における雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧よりも低くして単結晶SiCが成長した単結晶SiC基板を得るものである。
以下、本実施の形態における各工程のうち、前記第1の実施の形態と相違する工程のみを説明する。なお、図4に本実施の形態における温度プロファイルを示す。
(1)各工程における雰囲気および温度
イ.初期昇温工程
まず、300Paの真空雰囲気において30℃/minの速度で室温から1500℃まで昇温させ、固体Siを完全に融解させてSi融液層を形成する。
イ.初期昇温工程
まず、300Paの真空雰囲気において30℃/minの速度で室温から1500℃まで昇温させ、固体Siを完全に融解させてSi融液層を形成する。
ロ.Arガス導入工程
次に、前記の1500℃の温度を1時間保持し、この間にArガスを導入して雰囲気圧力を、1800℃におけるSi融液の飽和蒸気圧(約600Pa)よりも充分に高い740hPaとする。なお、図7にSiの飽和蒸気圧と温度との関係をグラフで示す。
次に、前記の1500℃の温度を1時間保持し、この間にArガスを導入して雰囲気圧力を、1800℃におけるSi融液の飽和蒸気圧(約600Pa)よりも充分に高い740hPaとする。なお、図7にSiの飽和蒸気圧と温度との関係をグラフで示す。
このように、真空雰囲気で昇温させてSi融液層を形成してからArガスを導入することにより、Si融液層に気泡が含まれることが抑制できる。また、結晶成長工程に先立って、結晶成長工程において用いられる雰囲気圧力までArガスを導入しているため、安定した結晶成長を行うことができる。
ハ.結晶成長工程
次に、雰囲気圧力を740hPaに保った状態で、30℃/minの速度で1500℃から1800℃まで昇温し、その後1800℃で6時間保持して、単結晶SiC基板上に単結晶SiCをエピタキシャル成長させる。このとき、雰囲気圧力がSi融液の飽和蒸気圧より高いため、Si融液の蒸発が抑制され、充分に結晶成長させることができる。
次に、雰囲気圧力を740hPaに保った状態で、30℃/minの速度で1500℃から1800℃まで昇温し、その後1800℃で6時間保持して、単結晶SiC基板上に単結晶SiCをエピタキシャル成長させる。このとき、雰囲気圧力がSi融液の飽和蒸気圧より高いため、Si融液の蒸発が抑制され、充分に結晶成長させることができる。
ニ.Si融液蒸発工程
その後、5℃/minの降温速度で1800℃から1600℃まで降温し、Si融液を蒸発させるために、Arガスを排気し真空雰囲気にする。そして1600℃の温度を9時間保持し、残っていたSi融液を全て蒸発させる。
その後、5℃/minの降温速度で1800℃から1600℃まで降温し、Si融液を蒸発させるために、Arガスを排気し真空雰囲気にする。そして1600℃の温度を9時間保持し、残っていたSi融液を全て蒸発させる。
(2)作製した単結晶SiCの表面の凹凸
得られた単結晶SiC基板における単結晶SiCの表面の凹凸は、第1の実施の形態の場合と同様に小さいことが確認できた。
得られた単結晶SiC基板における単結晶SiCの表面の凹凸は、第1の実施の形態の場合と同様に小さいことが確認できた。
これは、結晶成長工程において雰囲気圧力をSi融液の飽和蒸気圧より高くすることにより結晶成長工程におけるSi融液の蒸発が抑制され、Si融液の完全な蒸発が、結晶成長温度よりも低温のSi蒸発工程において行われたために、単結晶SiCの表面に大きな凹凸が発生することが抑制されたことによる。
10 単結晶SiC基板
11 単結晶SiC
18 単結晶SiCの表面
20 Si層
30 炭素原子供給基板
40 上部スペーサ
50 下部スペーサ
60 坩堝
11 単結晶SiC
18 単結晶SiCの表面
20 Si層
30 炭素原子供給基板
40 上部スペーサ
50 下部スペーサ
60 坩堝
Claims (4)
- 準安定溶媒エピタキシャル法を用いたSiC基板の作製方法であって、
SiC結晶成長温度で、SiC基板の表面に所定の厚さのSiC結晶を成長させる結晶成長工程の後に、
前記SiC結晶成長温度とSi融点の中間の温度で、Si融液を蒸発させるSi蒸発工程
を有していることを特徴とするSiC基板の作製方法。 - 前記結晶成長工程における雰囲気圧力が、Si融液の飽和蒸気圧よりも高く、
前記Si蒸発工程における雰囲気圧力が、Si融液の飽和蒸気圧よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載のSiC基板の作製方法。 - 前記結晶成長工程に先立って、
真空雰囲気下で、SiC結晶成長温度とSi融点の中間の温度まで昇温してSi融液を形成させるSi融液形成工程と、
前記Si融液形成工程における温度を所定時間保持するSi融液形成温度保持工程と
を有しており、
前記Si融液形成温度保持工程において、前記結晶成長工程において用いられる雰囲気圧力まで不活性ガス(窒素を除く)、水素ガス、あるいはこれらの混合ガスを導入する
ことを特徴とする請求項2に記載のSiC基板の作製方法。 - 投入されるSi量が、所定の厚さのSiC結晶を得るに必要なSi量に加えて、
前記結晶成長工程におけるSi融液の蒸発量を超える量を追加した量であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のSiC基板の作製方法。
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