JP5335218B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、高電圧、高容量であり、充放電サイクル性能,高温貯蔵時の電池膨れの抑制などに優れた非水電解液を有する非水電解液二次電池に関するものである。
非水電解液二次電池は、高電圧(作動電圧4.2V)、高エネルギー密度という特徴を持つことから、携帯情報機器分野などにおいて広く利用され、その需要が急速に拡大している。現在、携帯電話、ノート型パソコンをはじめとするモバイル情報化機器用の標準電池としてのポジションが確立されている。当然ながら、携帯機器などの高性能化と多機能化に伴い、その電源としての非水電解液二次電池に対しても更なる高性能化(例えば、高容量化と高エネルギー密度化)が求められている。この要求に応えるために種々の方法、例えば、電極の充填率の向上による高密度化、現行の活物質(特に負極)の利用深度の向上、新規高容量の活物質の開発などが行われている。そして、現実に非水電解液二次電池がこれらの方法によって確実に高容量化されている。
今後、更なる高容量化を図るために、正極活物質の利用率の向上や高電圧材料の開発が求められている。この中で、特に充電電圧の上昇による正極活物質の利用深度の向上が注目されている。例えば、作動電圧が4.2V級のリチウムイオン電池の活物質であるコバルト複合酸化物(LiCoO)は、現在のLi基準で4.3Vまで充電すると充電容量が約155mAh/gであるのに対し、4.50Vまで充電すると約190mAh/g以上である。このように充電電圧の向上で正極活物質の利用率が大きくなる。
しかし、電池の高電圧化に伴って、電池の容量やエネルギー密度が向上する一方で、電池安全性や充放電サイクル特性の低下、高温貯蔵時における膨れなどの問題が発生する。
従来から、電池の安全性や充放電サイクルの低下、電池の膨れなどの問題を解決する技術は種々提案されている。例えば、既に実用化されている非水電解液二次電池には、主にエチレンカーボネートなどの環状エステルと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状エステルとの混合溶媒を有する非水電解液が用いられているが、この非水電解液中に、ビニレンカーボネートおよび特定の環状硫酸エステルなどの添加剤を加えることで、非水電解液二次電池に生じる上記の問題を解決する技術がある(例えば、特許文献1〜4参照)。上記の添加剤を含有する非水電解液を有する非水電解液二次電池を充電すると、負極表面に上記添加剤由来の緻密な皮膜が形成され、この皮膜により非水電解液中の有機溶媒と負極との反応が継続的に抑制される。そのために、その後の充放電サイクルの進行に伴う電池容量の低下やガス発生による電池の膨れを抑制することができ、電池の充放電サイクル特性などを改善することができると考えられている。
また、非水電解液二次電池のような二次電池や一次電池の非水電解液に、環状スルトン誘導体および酸無水物を添加したものを使用し、電池内でのガス発生による膨れを抑えて、高温雰囲気化での使用に適した電池を提供する技術も提案されている(特許文献5)。さらに、高電圧化された非水電解液二次電池の電解液に環状硫酸エステル誘導体または環状スルホン酸エステル誘導体を添加することも提案されている(特許文献6)。
特開平10−189042号公報 特開2003−151623号公報 特開2003−308875号公報 特開2004−22523号公報 特開2004−47413号公報 特開2006−344390号公報
ところが、上記特許文献1〜5の技術は、電池の充電状態における正極の電位が、例えばLi基準で4.35V以上のような、高電圧となる場合については想定しておらず、これらの技術を適用するだけでは、こうした高電圧に充電される二次電池における充放電サイクル特性の低下抑制や高温貯蔵時における膨れ抑制を、十分に達成できるものではない。
また、特許文献6の技術は、マンガンを構成元素とする活物質に対して好適な効果を有するが、コバルト酸リチウムなどのリチウム含有コバルト複合酸化物に対しては、まだ検討の余地が残されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全性、充放電サイクル特性および高温貯蔵特性に優れ、高電圧での充電に適した非水電解液二次電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の非水電解液二次電池は、層状構造のリチウム含有複合酸化物を活物質とする正極、負極、セパレータおよび非水電解液を備え、満充電時の正極の電位がLi基準で4.35V以上4.5V以下となる非水電解液二次電池であって、上記非水電解液として、ビニルエチレンカーボネートまたはその誘導体と、下記一般式(1)で表される環状硫酸エステル誘導体または下記一般式(2)で表される環状スルホン酸エステル誘導体とを含有する電解液を用いたことを特徴とするものである。
(化1)
Figure 0005335218
(化2)
Figure 0005335218
〔上記一般式(1)中、Rは水素、またはフッ素置換基を有していてもよい炭素数が1〜4のアルキル基を表し、nは0か1である。また、上記一般式(2)中、Rは水素、またはフッ素置換基を有していてもよい炭素数が1〜4のアルキル基を表し、mは0、1または2である。〕
高電圧で充電された非水電解液二次電池では、正極活物質である金属酸化物が高電位状態で非常に強い酸化性を示すため、正極表面において非水電解液の溶媒として用いた有機溶媒と反応し、これを分解する。本発明者らは鋭意検討した結果、このような非水電解液溶媒の分解反応が、高電圧で充電された非水電解液二次電池における充放電サイクル特性の低下や高温貯蔵時における膨れの発生の原因であることを突き止めた。そして、ビニルエチレンカーボネートまたはその誘導体と、特定構造の環状硫酸エステル誘導体や環状スルホン酸エステル誘導体とを非水電解液に含有させることで、上述の非水電解液溶媒の分解反応を抑制して、高電圧で充電される非水電解液二次電池において、充放電サイクル特性と高温貯蔵特性の向上を達成し、また、過充電時における電池の信頼性を向上させることにも成功し、本発明を完成させたのである。本発明は、特に、層状構造のリチウム含有コバルト複合酸化物や、その構成元素の一部が他の元素で置換された複合酸化物において、上記特性を改善することを目的とする。
本発明によれば、優れた安全性、充放電サイクル特性および高温貯蔵特性を備え、高電圧での充電に適する非水電解液二次電池を提供できる。
本発明の非水電解液二次電池では、満充電時の正極の電位が、Li基準で4.35V以上である。本発明の電池では、このように充電時の正極の電位を高くすることにより、正極活物質の利用率を高めて、電池容量の向上を達成している。充電状態における正極電位の上限は特に限定されず、活物質の安定性や、集電体(後述する)と非水電解液溶媒の耐電圧性に応じて適宜設定すればよい。一般的には、Li基準で4.V以下であることが好まし。ちなみに、非水電解液二次電池の開路電圧は、正極の電位と負極の電位との組み合わせによって決まり、例えば、高結晶の炭素材料を用いた負極を有する場合、正極電位がLi基準で4.35Vであると、電池の開路電圧は約4.25Vとなる(すなわち、正極電位と、電池の開路電圧とは、約0.1Vの差がある)。

なお、本発明でいう「満充電時の正極の電位」とは、電池を設計電気容量まで充電した状態での正極の電位を意味している。
本発明の電池に係る正極は、例えば、正極活物質に導電助剤やポリフッ化ビニリデンなどの結着剤などを適宜添加し、これらをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に溶解・分散させた正極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を、アルミニウム箔などの集電体の片面または両面に塗布し、溶剤を除去して帯状の成形体(正極合剤層)に形成したものが用いられる。ただし、正極の作製方法は上記例示のもののみに限られることはない。
正極活物質には、リチウム(Li)を吸蔵・放出可能な化合物であり、且つ層状構造のリチウム含有複合酸化物を用いる。
層状構造のリチウム含有複合酸化物としては、高容量化の点からコバルト酸リチウムに代表されるリチウム含有コバルト複合酸化物が好ましく、高電圧充電時の安定性の点から、AlおよびMgより選ばれる少なくとも1種の元素を含むリチウム含有コバルト複合酸化物がより好ましく、Coの一部がAlやMgで置換されたLiCo1− (0.95<x≦1.05、0.005<y≦0.1、M:AlおよびMgより選ばれる少なくとも1種の元素を含む置換元素)で表わされる複合酸化物が特に好ましく用いられる。また、上記置換元素Mには、さらに、Ge、Ti、Zrなどの元素が含まれてもよい。
また、正極活物質には、上記のリチウム含有コバルト複合酸化物と共に、層状構造あるいはスピネル構造の他の活物質を併用することもできる。このような活物質としては、LiNiO(0<x≦1.1)やその構成元素の一部がCo、Ge、Ti、Zr、Al、Mgなどの元素で置換されたリチウム含有ニッケル複合酸化物;LiNi1/3Mn1/3Co1/3またはLiNi5/12Mn5/12Co1/6(いずれも、0<z≦1.1)やその構成元素の一部がGe、Ti、Zr、Al、Mgなどの元素で置換されたリチウム含有マンガン・ニッケル・コバルト複合酸化物;LiMnやその構成元素の一部がGe、Ti、Zr、Al、Mg、Co、Niなどの元素で置換されたスピネル構造のリチウム含有マンガン複合酸化物;Li4/3Ti5/3やその構成元素の一部がGe、Zr、Al、Mg、Co、Niなどの元素で置換されたスピネル構造のリチウム含有チタン複合酸化物などが挙げられる。これらの活物質は、2種以上を併用したり複合化して用いてもよい。また、リチウム含有コバルト複合酸化物を用いず、他の活物質のみを用いてもよいが、使用する正極活物質全量中、上記層状構造のリチウム含有コバルト複合酸化物が、例えば、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。なお、正極活物質の全て(すなわち、100質量%)が、上記リチウム含有コバルト複合酸化物であっても構わない。正極活物質全量中における上記リチウム含有コバルト複合酸化物の含有量を一定以上とすることで、この活物質を使用することによる効果がより顕著となる。
なお、正極における正極合剤層中の組成としては、例えば、正極活物質の含有量が90〜98質量%、導電助剤の含有量が1〜5質量%、結着剤の含有量が1〜5質量%であることが好ましい。
上記層状構造のリチウム含有コバルト複合酸化物を用いた正極では、電位が4.35V以上となるように充電されても、例えば常温下では構造的、熱的に安定である。しかしながら、正極がこのように高電位に充電されている状態で、例えば60℃以上の高温下で貯蔵すると、正極活物質と非水電解液溶媒との反応により、正極活物質中のCoが非水電解液溶媒中に溶出し、負極表面に析出する。このような反応により、電池内でのガス発生、負極反応性の低下が生じ、電池の膨れ、充放電サイクル特性などの低下が生じやすいため、電池の高温貯蔵特性は必ずしも十分とはいえない。しかしながら、本発明では、非水電解液中に、ビニルエチレンカーボネートまたはその誘導体と、特定構造の環状硫酸エステル誘導体または環状スルホン酸エステル誘導体とを含有させることで、正極表面での活物質と非水電解液溶媒との反応を制御して、正極活物質からのCoの溶出や該Coの負極表面での析出を大幅に抑制できるため、電池の充放電サイクル特性を良好にすることに加えて、高温貯蔵時における電池の膨れを抑制し、良好な電池特性を維持できるというように高温貯蔵特性を高めることができる。
本発明の電池に係る非水電解液は、電解液溶媒である有機溶媒に、電解質塩を溶解させて調製される溶液が用いられる。また、非水電解液は、ビニルエチレンカーボネートまたはその誘導体と共に、下記一般式(1)で表される環状硫酸エステル誘導体および下記一般式(2)で表される環状スルホン酸エステル誘導体のいずれか一方、または双方を含有している。これらの環状硫酸エステル誘導体や環状スルホン酸エステル誘導体を含有する非水電解液は、予め有機溶媒に電解質塩を溶解した溶液中に環状硫酸エステル誘導体や環状スルホン酸エステル誘導体を添加して溶解させて調製してもよく、有機溶媒に、環状硫酸エステル誘導体や環状スルホン酸エステル誘導体を電解質塩と共に添加し、溶解させて調製してもよい。
(化1)
Figure 0005335218
(化2)
Figure 0005335218
〔上記一般式(1)中、Rは水素、またはフッ素置換基を有していてもよい炭素数が1〜4のアルキル基を表し、nは0か1である。また、上記一般式(2)中、Rは水素、またはフッ素置換基を有していてもよい炭素数が1〜4のアルキル基を表し、mは0、1または2である。〕
上記ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体は、負極表面のSEI(固体電解質界面)形成添加剤として作用するものであると同時に、正極表面で反応しにくく、ガス発生の原因となりにくい添加剤である。従来においては、負極のSEI形成添加剤としてビニレンカーボネートが一般に用いられてきたが、4.2V程度の通常の充電より高電位(およそ4.3V以上)で正極活物質と反応して分解するため、高い電圧で充電された電池を高温で貯蔵した場合には、この分解に伴って発生するガスにより電池内圧が上昇するといった問題が生じやすかった。また、前記分解により負極でのSEI形成効果が低減するため、負極に電気化学的還元性が高い高結晶性の黒鉛を用いた場合には、負極表面で非水電解液溶媒が還元分解されやすくなるという問題も生じていた。
一方、本発明に用いるビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体は、ビニレンカーボネートに比べて正極表面で酸化分解しにくいことにより、負極表面のSEI形成効果が得られやすく、しかも、上記環状硫酸エステル誘導体または上記環状スルホン酸エステル誘導体を非水電解液にさらに含有させているため、正極活物質とビニルエチレンカーボネートとの反応を抑制することができ、特に高温貯蔵時において、正極でのガス発生を抑制すると共に、負極に高結晶性の黒鉛を用いた場合でも、負極での反応を抑制し、電池性能を総合的に向上させることができる。
上記ビニルエチレンカーボネートの誘導体としては、水素原子がフッ素原子または炭素数が1〜4のアルキル基で置換された化合物を例示することができる。ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
本発明の電池の製造に用いる非水電解液全量中の、上記ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体の含有量(2種以上を併用する場合は、その合計含有量)は、上記環状硫酸エステル誘導体または上記環状スルホン酸エステル誘導体との共存下において、0.2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上であって、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。非水電解液中におけるビニルエチレンカーボネートの含有量が少なすぎると、これらを用いることによる効果が小さくなることがあり、多すぎると、形成されるSEI皮膜が厚くなって抵抗を高めてしまうため、高性能の電池を構成し難くなる。
一方、上記環状硫酸エステル誘導体や上記環状スルホン酸エステル誘導体は、正極の表面改質剤として機能するものである。すなわち、上記環状硫酸エステル誘導体や上記環状スルホン酸エステル誘導体は、正極表面で、正極と溶媒との反応よりも先に酸化して皮膜を形成する。これにより、正極表面の非水電解液溶媒に対する活性点が潰されるため、非水電解液溶媒やビニルエチレンカーボネートの正極表面での電気化学的酸化による分解が防止され、ビニルエチレンカーボネートまたはその誘導体の添加効果が高まり、電池の充放電サイクル特性の低下や、高温貯蔵特性の低下が抑制される。
上記環状硫酸エステル誘導体を表す上記一般式(1)におけるR、および上記環状スルホン酸エステル誘導体を表す上記一般式(2)におけるRは、それぞれ水素または炭素数が1〜4のアルキル基であり、該アルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。なお、これらのアルキル基の有する水素原子の一部または全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。
上記環状硫酸エステル誘導体の具体例としては、エチレングリコール硫酸エステル、1,2−プロパンジオール硫酸エステル、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、1,2−ブタンジオール硫酸エステル、1,3−ブタンジオール硫酸エステル、1,2−ペンタンジオール硫酸エステル、1,3−ペンタンジオール硫酸エステル、1,3−ヘキサンジオール硫酸エステル、1,3−ヘプタンジオール硫酸エステルなどが挙げられる。これらの環状硫酸エステル誘導体は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、エチレングリコール硫酸エステル、1,2−プロパンジオール硫酸エステル、1,3−プロパンジオール硫酸エステルが特に好ましい。
また、上記環状スルホン酸エステル誘導体の具体例としては、1,3−プロパンスルトン、1,2−プロパンスルトン、1,2−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−ペンタンスルトンなどが挙げられる。これらの環状スルホン酸エステル誘導体は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、1,3−プロパンスルトン、1,2−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンが特に好ましい。なお、上記環状硫酸エステル誘導体の1種以上と、上記環状スルホン酸エステル誘導体の1種以上を併用することもできる。
本発明の電池の製造に用いる非水電解液全量中の、上記環状硫酸エステル誘導体または上記環状スルホン酸エステル誘導体の含有量(上記環状硫酸エステル誘導体と上記環状スルホン酸エステル誘導体を併用している場合には、その合計含有量)は、0.2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上であって、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であることが好ましい。非水電解液中における上記環状硫酸エステル誘導体や上記環状スルホン酸エステル誘導体の含有量が少なすぎると、これらを用いることによる効果が小さくなることがあり、多すぎると、正極との反応によって形成される皮膜が厚くなって抵抗を高めてしまうため、高性能の電池を構成し難くなる。
非水電解液における有機溶媒は高誘電率のものが好ましく、例えば、エーテル類、エステル類などが好適であり、例えば、誘電率が30以上のエステル類を含有していることがより好ましい。このように誘電率が高いエステル類としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、イオウ系エステル(エチレングリコールサルファイトなど)などが挙げられる。中でも環状エステルが好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネートが特に推奨される。
また、上記溶媒以外にも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの極性鎖状カーボネート(低粘度の極性鎖状カーボネート);プロピオン酸メチルなどの鎖状のアルキルエステル類;リン酸トリメチルなどの鎖状リン酸トリエステル;3−メトキシプロピオニトリルなどのニトリル系溶媒;などの有機溶媒を用いることができる。
さらに、フッ素系の溶媒も用いることができる。フッ素系の溶媒としては、例えば、H(CF)OCH、COCH、H(CF)OCHCH、H(CF)OCHCF、H(CF)CHO(CF)Hなど、または、CFCHFCFOCH、CFCHFCFOCHCHなどの直鎖構造の(パーフロロアルキル)アルキルエーテル、若しくは、イソ(パーフロロアルキル)アルキルエーテル、すなわち、2−トリフロロメチルヘキサロロプロピルメチルエーテル、2−トリフロロメチルヘキサフロロプロピルエチルエーテル、2−トリフロロメチルヘキサフロロプロピルプロピルエーテル、3−トリフロロオクタフロロブチルメチルエーテル、3−トリフロロオクタフロロブチルエチルエーテル、3−トリフロロオクタフロロブチルプロピルエーテル、4−トリフロロデカフロロペンチルメチルエーテル、4−トリフロロデカフロロペンチルエチルエーテル、4−トリフロロデカフロロペンチルプロピルエーテル、5−トリフロロドデカフロロヘキシルメチルエーテル、5−トリフロロドデカフロロヘキシルエチルエーテル、5−トリフロロドデカフロロヘキシルプロピルエーテル、6−トリフロロテトラデカフロロヘプチルメチルエーテル、6−トリフロロテトラデカフロロヘプチルエチルエーテル、6−トリフロロテトラデカフロロヘプチルプロピルエーテル、7−トリフロロヘキサデカフロロオクチルメチルエーテル、7−トリフロロヘキサデカフロロオクチルエチルエーテル、7−トリフロロヘキサデカフロロヘキシルオクチルエーテルなどが挙げられる。さらに、上記のイソ(パーフロロアルキル)アルキルエーテルと、上記の直鎖構造の(パーフロロアルキル)アルキルエーテルを併用することもできる。
また、上記非水電解液に電池の性能を向上させることができる各種の添加剤を添加してもよい。例えば、C=C不飽和結合を有する化合物を電解液中に添加すると、電池の充放電サイクル特性の低下を更に抑制できる場合がある。このような不飽和結合を有する化合物としては、例えば、H(CFCHOOCCH=CH、F(CFCHCHOOCCH=CHなどのフッ素化された脂肪族化合物、フッ素含有芳香族化合物、ビニレンカーボネートなどが挙げられる。
非水電解液に用いる電解質塩としては、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、トリフロロメタンスルホン酸塩に代表される含フッ素化合物の塩、イミド塩などが好適である。このような電解質塩の具体例としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO(Rfはフルオロアルキル基を表す)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、電池の充放電特性が良好となる点で、LiPFやLiBFが好ましい。こうした含フッ素リチウム塩はアニオン性が大きく、かつイオン解離しやすいので上記溶媒に溶解しやすいからである。
非水電解液中の電解質塩の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5mol/l以上であることが好ましく、より好ましくは0.8mol/l以上であって、1.7mol/l以下であることが好ましく、より好ましくは1.2mol/l以下である。
本発明の非水電解液二次電池は、上記の正極および上記の非水電解液を有していればよく、その他の構成については特に制限はなく、従来公知の非水電解液二次電池で用いられている各構成が採用可能である。
すなわち、本発明の非水電解液二次電池に係る負極も特に制限はなく、従来公知の非水電解液二次電池で採用されている負極を用いることができる。例えば、負極活物質に、必要に応じて導電助剤や、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンラバーなどの結着剤などを適宜添加し、これらを水などの溶剤に溶解・分散させた負極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を、銅箔などの集電体の片面または両面に塗布し、溶剤を除去して帯状の成形体(負極合剤層)に形成したものが用いられる。ただし、負極の作製方法は上記例示のもののみに限られることはない。
負極活物質としては、リチウムを吸蔵・放出可能なものが使用でき、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料;Si、Snなどのリチウムと合金化可能な元素で構成される金属または該元素を含有する合金あるいは酸化物;などが用いられる。
上記負極活物質の中でも、(002)面の面間隔d002が0.340nm以下の黒鉛、またはリチウムと合金化可能な元素で構成される金属、あるいは、該元素を含有する合金若しくは酸化物が好ましく、d002が0.337nm以下の黒鉛が特に好ましい。このような活物質を用いることにより、電池の更なる高容量化を実現できるからである。d002の下限値は特に限定されないが、理論的には約0.335nmである。
002が0.340nm以下の黒鉛においては、その結晶構造におけるc軸方向の結晶子の大きさLcは、3nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることが更に好ましい。このようなLcを有する場合にはリチウムの吸蔵・放出がより容易になるからである。Lcの上限は特に限定されないが、通常200nm程度である。また、上記黒鉛の平均粒径は、3μm以上、より好ましくは5μm以上であって、15μm以下、より好ましくは13μm以下であることが望ましく、また、その純度は99.9%以上であることが好ましい。このような粒子径や純度を有する上記黒鉛であれば、特性にも支障なくコストも安く、入手が容易だからである。なお、本明細書における上記黒鉛におけるd002およびLcは、X線回折法により測定される値である。
なお、負極における負極合剤層中の組成としては、例えば、結着剤の使用を必要とする負極活物質を用いる場合には、負極活物質の含有量が90〜98質量%、結着剤の含有量が1〜5質量%であることが好ましい。また、導電助剤を用いる場合には、負極合剤層中の導電助剤の含有量が、例えば1〜5質量%であることが好ましい。
本発明の非水電解液二次電池において、正極と負極を仕切るためのセパレータも特に制限はなく、従来公知の非水電解液二次電池で採用されている各種セパレータを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂で構成される微孔性セパレータが好適に用いられる。
次に、本発明の非水電解液二次電池を、図面に基づいて説明する。なお、図面で示す非水電解液二次電池は、本発明の一例に過ぎず、本発明の非水電解液二次電池は、これらの図面に図示するものに限定される訳ではない。図1は、本発明の非水電解液二次電池の一例を示す外観斜視図であり、図2は、図1のI−I線の断面図である。なお、下記説明では、正極、負極、セパレータおよび非水電解液については、上で説明したものと同様のものが使用されるので、その詳細な説明は省略する。
図1において、非水電解液二次電池1は、角形の電池ケース2と蓋板3とを備えている。電池ケース2はアルミニウム合金などの金属で形成され、電池の外装材となるものであり、この電池ケース2は正極端子を兼ねている。蓋板3もアルミニウム合金などの金属で形成され、電池ケース2の開口部を封口している。また、蓋板3には、ポリプロピレンなどの合成樹脂で形成された絶縁パッキング4を介して、ステンレス鋼などの金属で形成された端子5が設けられている。
図2において、非水電解液二次電池1は、正極6と、負極7と、セパレータ8とを備えている。正極6と負極7はセパレータ8を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回構造の電極巻回体9として、電池ケース2内に非水電解液と共に収納されている。ただし、図2では、煩雑化を避けるため、正極6や負極7の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や、非水電解液などは図示していない。また、電極巻回体9の内周側の部分は断面にしていない。
また、電池ケース2の底部にはポリテトラフルオロエチレンシートなどの合成樹脂シートで形成された絶縁体10が配置され、電極巻回体9からは正極6および負極7のそれぞれの一端に接続された正極リード体11と負極リード体12が引き出されている。正極リード体11、負極リード体12は、ニッケルなどの金属から形成されている。端子5にはポリプロピレンなどの合成樹脂で形成された絶縁体13を介して、ステンレス鋼などの金属で形成されたリード板14が取り付けられている。
蓋板3は電池ケース2の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池ケース2の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。
なお、図2では、正極リード体11を蓋板3に直接溶接することによって、電池ケース2と蓋板3とが正極端子として機能し、負極リード体12をリード板14に溶接し、リード板14を介して負極リード体12と端子5とを導通させることによって、端子5が負極端子として機能するようになっているが、電池ケース2の材質などによっては、その正負が逆となる場合もある。
上記電池ケース2としては、金属製の角形ケースを用いたが、その他に金属製の円筒ケース、または金属(アルミニウムなど)ラミネートフィルムからなるラミネートケースなどを用いることもできる。
上記非水電解液二次電池1の製造方法は特に限定されないが、電池ケース2に正極6、負極7、セパレータ8および非水電解液を収納した後であって電池を完全に密閉する前に、充電を行うことが好ましい。これにより、正極や負極の皮膜形成に伴って充電初期に発生するガスや電池内の残留水分を電池外に除去することができる。電池を密閉する前に行う充電では、充電電気量が電池の設計電気容量の10〜50%の範囲となるよう充電条件を設定するのが望ましく、充電電流は、0.1C(mA)〜0.4C(mA)程度〔C:設計電気容量(mAh)〕とするのがよい。充電終了後には、電池を封止して密閉し、さらに所定の充電を行えばよい。
本発明の非水電解液二次電池は、高電圧での充電が可能であり、高容量であり、且つ安全性、充放電サイクル特性および高温貯蔵特性に優れている。よって、本発明の非水電解液二次電池は、こうした特性を活かして、携帯電話、ノート型パソコンなどのモバイル情報機器の駆動電源用の二次電池としてだけではなく、様々な機器の電源として幅広く利用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
以下に示すようにして電極の作製と非水電解液の調製を行い、図1および図2に示したものと同様の構造の非水電解液二次電池を作製した。
<電極の作製>
正極は次のようにして作製した。まず、層状構造リチウム含有複合酸化物であるLi1.02Co0.945Al0.05Mg0.005(正極活物質)94質量部に、導電助剤としてカーボンブラックを3質量部加えて混合し、この混合物にポリフッ化ビニリデン3質量部をNメチルピロリドンに溶解させた溶液を加えて混合して正極合剤含有スラリーとし、70メッシュの網を通過させて粒径が大きなものを取り除いた。この正極合剤含有スラリーを厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗付して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを136μmにした後、切断し、アルミニウム製のリード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
負極は次のようにして作製した。負極活物質としては、以下の方法により合成された高結晶の人造黒鉛を用いた。すなわち、コークス粉末100質量部、タールピッチ40質量部、炭化ケイ素14質量部、およびコールタール20質量部を、空気中において200℃で混合した後に粉砕し、窒素雰囲気中において1000℃で熱処理し、さらに窒素雰囲気中において3000℃で熱処理して黒鉛化させて人造黒鉛とした。得られた人造黒鉛は、BET比表面積が4.0m/gで、X線回折法によって測定されるd002は0.336nm、c軸方向の結晶子の大きさLcは48nm、全細孔容積は1×10−3/kgであった。
この人造黒鉛を用い、バインダーとしてスチレンブタジエンラバーを用い、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを用い、これらを質量比98:1:1の割合で混合し、さらに水を加えて混合して負極合剤含有ペーストとした。この負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを138μmにした後、切断し、ニッケル製のリード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
<非水電解液の調製>
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびビニルエチレンカーボネート(VEC)の体積比10:10:30:1の混合溶媒にLiPFを1.0mol/lの濃度で溶解させたものに、1,3−プロパンスルトンを、非水電解液の全質量に対して1.0質量%となるように添加したものを用いた。なお、得られた非水電解液全量中のVECの量は、2.1質量%である。
<電池の作製>
上記帯状の正極を、厚みが20μmの微孔性ポリエチレンセパレータ(空隙率:41%)を介して、上記帯状の負極に重ね、渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回構造の電極巻回体とし、この電極巻回体をポリプロピレン製の絶縁テープで固定した。次に、アルミニウム合金製で外寸が縦(厚み)4.0mm、横34mm、高さ50mmの角形の電池ケースに上記電極巻回体を挿入し、リード体の溶接を行うとともに、アルミニウム合金製の蓋板を電池ケースの開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けた電解液注入口から上記非水電解液を注入し、1時間静置した。なお、本実施例の非水電解液二次電池では、4.4Vまで充電した場合(正極の電位がLi基準で4.5V)の設計電気容量は、820mAhとした。ちなみに上記の非水電解液二次電池の4.2Vまで充電した場合(正極の電位がLi基準で4.3V)の設計電気容量は、720mAhである。
次に、上記電池を露点−30℃のドライルーム内で以下の条件で充電を行った。すなわち、充電は、充電量が電池の設計電気容量(820mAh)の25%(205mAh)となるように、0.25CmA(205mA)の定電流で1時間行った。この間、電池内から発生するガスを上記電解液注入口から電池ケースの外に自然放出させた。充電終了後に電解液注入口を封止して電池内部を密閉状態にした。作製した電池を0.3CmA(246mA)で4.1Vになるまで充電してから、60℃で12時間貯蔵した。その後、0.3CmA(246mA)で4.4Vになるまで充電してから、さらに4.4Vの定電圧で3時間充電し、1CmA(820mA)で3Vまで放電し、評価用電池(非水電解液二次電池)とした。
実施例2〜4
実施例1の1,3−プロパンスルトンに代えて、1,2−プロパンスルトン(実施例2)、1,4−ブタンスルトン(実施例3)、1,2−プロパンジオール硫酸エステル(実施例4)を用いた以外は実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を作製した。
比較例1
非水電解液に、1,3−プロパンスルトンおよびビニルエチレンカーボネートを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を作製した。
比較例2〜5
実施例1〜4のビニルエチレンカーボネートに代えて、ビニレンカーボネートを用いた以外は、それぞれ実施例1〜4と同様にして、比較例2〜5の非水電解液二次電池を作製した。
実施例1〜4および比較例1〜5の非水電解液二次電池について、下記の各評価を行った。結果を表1および表2に示す。
<高温貯蔵特性>
実施例1〜4および比較例1〜5の各電池を、20℃において410mA(0.5C)で4.4Vになるまで充電し、さらに4.4Vの定電圧で3時間充電して満充電とし、この時の電池の厚みを測定した。その後、20℃において1Cで3Vまで放電して貯蔵前の放電容量を測定した。また、実施例1と同じ構成の電池について、上記の充電条件のうち、充電電圧のみを4.2Vに変更して、これを参考例とした。
次に、上記各電池を、上記と同様にして充電した後、恒温槽中において80℃で5日間貯蔵した。貯蔵後の電池を20℃まで自然冷却し、電池の厚みを測定して、貯蔵前の電池ケースの厚みとの比較から、高温貯蔵による電池の膨れを求め、高温貯蔵特性を評価した。
<充放電サイクル特性>
実施例1〜4および比較例1〜5の各電池について、上記高温貯蔵特性試験を行っていない別の電池を、20℃において、0.5Cで4.4Vになるまで充電し、さらに4.4Vの定電圧で3時間充電して満充電とし、その後、1Cで3Vまで放電する充放電サイクルを200回繰り返し、1サイクル目の放電容量と200サイクル目の放電容量を測定した。続いて、1サイクル目の放電容量と200サイクル目の放電容量を用いて、下記式により容量維持率を算出し、充放電サイクル特性を評価した。
容量維持率(%)
=(200サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
また、実施例1と同じ構成の電池について、上記の充電条件のうち、充電電圧のみを4.2Vに変更して、これを参考例とした。
<安全性試験>
実施例1〜4および比較例1〜5の各電池について、上記の各試験を行っていない別の電池を、20℃において、0.5Cで4.4Vになるまで充電し、さらに4.4Vの定電圧で3時間充電して満充電とし、これらの電池について、最大電圧12Vで1Cの電流値で3時間充電すると同時に、電流、電圧、電池温度をモニターしながら電池の異常挙動の有無を確認した。安全性試験は、各実施例、比較例毎に3個の電池について実施した。また、実施例1と同じ構成の電池について、上記の充電条件のうち、充電電圧のみを4.2Vに変更して、これを参考例とした。
Figure 0005335218
表1から明らかなように、実施例1の電池では、高電圧での充電においても、従来の4.2Vで充電を行った参考例の電池と同程度の充放電サイクル特性、および、高温貯蔵特性を実現することができるため、高容量化に適しており、また、過充電時の異常挙動がなく安全性にも優れていた。これに対し、実施例1と同じ構成の電池について、充電電圧を4.2Vにして充電した参考例では、実施例1に比べて10%以上容量が低下した。また、非水電解液に添加剤を含有していない比較例1の電池では、容量維持率が低く、貯蔵後の膨れも大きく、充放電サイクル特性および高温貯蔵特性が劣っていた。また、電池の温度が大きく上昇する異常が認められた。
Figure 0005335218
また、表2から明らかなように、前述した一般式(1)で表される環状硫酸エステル誘導体または一般式(2)で表される環状スルホン酸エステル誘導体とビニルエチレンカーボネートを共存させた実施例の各電池では、高電圧での充電を行っても、優れた充放電サイクル特性および高温貯蔵特性が得られた。一方、リチウム含有コバルト複合酸化物を正極活物質として用いたことにより、SEI形成添加剤として作用するビニルエチレンカーボネートをビニレンカーボネートに変更した比較例の各電池では、容量維持率が低下し、高温貯蔵での膨れが大きくなり、添加剤の効果が十分に得られなかった。
実施例5
非水電解液の全質量に対する1,3−プロパンスルトンの添加量を、表3に示すように変化させた以外は実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を作製した。
実施例6
非水電解液の全質量に対するビニルエチレンカーボネートの添加量を、表4に示すように変化させた以外は実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を作製した。
実施例5および6の非水電解液二次電池のそれぞれについて、前記と同様の試験を行った。結果を表3および表4に示す。
Figure 0005335218
Figure 0005335218
表3より明らかなように、非水電解液中の環状スルホン酸エステル誘導体(1,3−プロパンスルトン)の含有量は、0.2質量%以上とすることによりその効果が明確となる。一方、5質量%以下とすることにより、ガス発生などの副作用が抑制され、より優れた効果を確保することができる。
また、表4より明らかなように、非水電解液中のビニルエチレンカーボネートの含有量は、0.2質量%以上とすることによりその効果が明確となる。一方、5質量%以下とすることにより、ガス発生などの副作用が抑制され、より優れた効果を確保することができる。
本発明の非水電解液二次電池の一例を示す外観斜視図である。 図1のI−I線断面図である。
符号の説明
1 非水電解液二次電池
2 電池ケース
3 蓋板
4 絶縁パッキング
5 端子
6 正極
7 負極
8 セパレータ
9 電極巻回体
10 絶縁体
11 正極リード体
12 負極リード体
13 絶縁体
14 リード板

Claims (6)

  1. 層状構造のリチウム含有複合酸化物を活物質とする正極、負極、セパレータおよび非水電解液を備え、満充電時の正極の電位がLi基準で4.35V以上4.5V以下となる非水電解液二次電池であって、
    上記正極の活物質として、リチウム含有コバルト複合酸化物を含有し、
    上記非水電解液として、ビニルエチレンカーボネートまたはその誘導体と、下記一般式(1)で表される環状硫酸エステル誘導体または下記一般式(2)で表される環状スルホン酸エステル誘導体とを含有する電解液を用いたことを特徴とする非水電解液二次電池。
    Figure 0005335218
    Figure 0005335218
    〔上記一般式(1)中、Rは水素、またはフッ素置換基を有していてもよい炭素数が1〜4のアルキル基を表し、nは0か1である。また、上記一般式(2)中、Rは水素または、フッ素置換基を有していてもよい炭素数が1〜4のアルキル基を表し、mは0、1または2である。〕
  2. 上記正極活物質全量中、上記リチウム含有コバルト複合酸化物の割合が10質量%以上である請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 上記リチウム含有コバルト複合酸化物が、AlおよびMgより選ばれる少なくとも1種の元素を含む請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 上記非水電解液全量中の、ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体の含有量が、0.2〜5質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
  5. 上記非水電解液全量中の、環状硫酸エステル誘導体および環状スルホン酸エステル誘導体の含有量が、0.2〜5質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
  6. 上記負極の活物質として、(002)面の面間隔が0.337nm以下の黒鉛を含有する請求項1〜のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
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