JP5332940B2 - セラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムとその製造方法 - Google Patents

セラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムとその製造方法 Download PDF

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本発明は、薄膜セラミックコンデンサグリーンシートを製造する際に使用するセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム及びその製造方法に関するものであって、詳細には、セラミックコンデンサグリーンシート上に内部電極を印刷し、所定の大きさに裁断したものを積層、焼成し、外部電極を取り付けることにより製造される積層セラミックコンデンサ、いわゆる、セラミックチップコンデンサの誘電体層を構成する薄膜セラミックコンデンサグリーンシートを製造する際、セラミックスラリーを塗布し、薄膜状のセラミックグリーンシートを形成するための高平滑性離型フィルム及びその製造方法に関する。
なお、本発明においてフィルム又はシートなどの表現を用いているが、フィルム又はシートあるいはフィルム状物又はシート状物という表現に特別の意味合いを持つものでもなく、いずれの場合をも意味するものである。
近年、電子部品の分野においては回路の高密度化に伴い、コンデンサ等の一層の小型化及び高性能化が望まれ、積層セラミック電子部品の小型化に伴い、セラミックグリーンシートに求められる厚さは数μmレベルとなっている。
積層セラミックコンデンサは、以下のように製造されている。
まず、離型性の搬送支持体上にセラミックコンデンサ用スラリーを均一に流延して、セラミックスラリーの薄膜層を形成し、そのセラミックスラリーの生シートを形成後、所定の大きさにカットし、所定の大きさにカットされたセラミック生シート上に電極ペーストを印刷し、乾燥後この生シートを重ねて圧着等を行った後、さらに所定の大きさにカットして焼成し、焼成後、外部電極ペーストを塗布し、焼き付けて製品とするか、又は、まず、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とを必要枚数だけ交互に複数積層させて、積層体を形成する。次に、この積層体を所定の寸法に切断して、グリーンチップを形成し、グリーンチップに対して脱バインダ処理、焼成処理、及びアニール処理を施し、コンデンサ素子本体を得る。この素子本体の両端部に一対の外部端子電極を形成することによって、積層セラミックコンデンサを形成している。
コンデンサの小型化、大容量化のためには、電極間に配する誘電体、すなわちセラミックグリーンシートの厚みを薄くすればする程、単位セラミックコンデンサを多数積層することが可能となり、容量を増やすことができることから、焼成前セラミックグリーンシートの厚みを薄くすることが求められる。
また、セラミックグリーンシートの表面が凹凸になると電気容量が面的に不均一となり、また、形状欠陥が生じることから、平滑にすることが求められ、そのため積層セラミックコンデンサに用いるセラミックコンデンサグリーンシート製造用離型フィルムの平滑性も数nmオーダーのものが必要となってきている。
さらに、セラミックグリーンシートが離型フィルムとの間の離型性が悪くなるとセラミックグリーンシートの薄膜化によりセラミックグリーンシートを剥離できず、あるいは剥離に時間がかかるなど歩留まりや生産性の低下を生じている。
このように、セラミックグリーンシートに求められるナノオーダーレベルで平滑化し、かつ薄膜化することは非常に困難であり、現状では誘電体層の欠陥によるショートや電極切れなどの問題が発生するなど、積層セラミックコンデンサの小型化及び大容量化には限界があった。
セラミックチップコンデンサに用いるセラミックグリーンシートの形成方法は、ポリエステルフィルム上にシリコーン離型層を設けてなる離型フィルム上にセラミック粉体、溶剤、バインダ及びその他の添加剤(可塑剤、分散剤、帯電防止剤など)を均一に分散させたセラミックスラリーをロールコーター方式やダイコーター方式により塗布し、乾燥してセラミックグリーンシートを作成し、そのシート上に内部電極を印刷し、所定の大きさに裁断したものを積層、焼成し、外部電極を取り付けることにより製造している(特許文献1)。
使用される離型フィルムは、ポリエステルフィルム上に硬化型シリコーン樹脂などの離型剤の溶剤塗液をロールコーター法やブレードコーター法などによるウェットコート方式で塗工膜を形成し、離型層とするものである。このような離型層を塗工してなる離型フィルムでは、コーティングむらにより面的な均一性や厚みの均一性に乏しく、また、基材フィルムと離型層の層間において離型層が剥離するあるいは転写する現象が認められ、セラミックグリーンシートの均一性、厚さ制御、破れ、剥離不良あるいはセラミックグリーンシートの印刷適正の低下、誘電体層の欠陥によるショートや電極切れなどの発生などの問題が生じ、今後さらに積層セラミックコンデンサの薄膜高容量化が進んでいく中で、離型フィルムの改善すべき課題となっている。そこで、離型剤を塗工し、離型層を形成するウェットコート方式の場合における課題を解決するものとして、本出願人の出願に係る、離型層に酸化珪素蒸着薄膜を使用する試みがされているが、前記したような薄膜セラミックグリーンシートを製造するには、まだ十分ニーズに応えるだけの機能及び性能を発揮し得る離型フィルムを提供するには至ってはいなかった。(特許文献2)。
特開2003−145678号 特開2002−210860号
本発明は、算術平均表面粗さ(Ra)(以下、単に[表面粗さ(Ra)」という)が10nm以下のポリエステルフィルムを基材に用いて、そのフィルム片側にプラズマ化学気相成長法(CVD法)により有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜を離型層とし、かつ形成してなる離型層の表面粗さ(Ra)が10nm以下であるセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムを提供することである。
ウェットコート式離型フィルムを、成形シート、その他等に使用すると、基材と離型性を有するシリコーン系樹脂皮膜との層間において剥離する現象が認められ、その両者の密着性を改良した離型フィルムが提案されているものの、依然として、離型層の密着性の面で満足し得るものではなく、不都合を来しているというのが実状である。
ウェットコート式離型フィルムにおいては、ポリエステル系樹脂フィルム等の基材の一方の面に形成された離型性を有するシリコーン系樹脂皮膜中には、しばしば、未反応のシリコーンモノマー等が残存する。そうすると、例えば、未反応シリコーンモノマー等が移行し、セラミックグリーンシートの物性等に問題を生じさせ、また、離型性を有するシリコーン系樹脂皮膜の表面が、空気中の塵埃等を吸着し、その離型性等の機能を低下させるなどの問題がある。
ウェットコート式離型フィルムでは、硬化型のシリコーン系樹脂組成物を塗布して離型性を有するシリコーン系樹脂皮膜を形成していることから、コーティングむら等により、非常に薄い均一な膜厚を有するシリコーン系樹脂皮膜を形成する必要があり、高度な技術を必要とし、離型フィルムの表面の離型性に不均一性を生じ、その使用に支障を来すという問題があり、歩留まりも高くなかった。さらに、コーティング後、溶剤等を回収するという後処理の問題もある。
従来、離型層を塗工により形成する場合、離型フィルムの表面粗さを10nm以下となるように調製することは、困難とされ、ウェットコート式離型シートでは、積層セラミックコンデンサの薄膜化の動きに応えるには限界があった。
また、蒸着層を離型層とする離型フィルムにあっては、密着性、均一性に優れた離型層が形成されるものの、セラミックグリーンシートの製造においては、依然として、密着性、離型性、均一性、さらには、薄膜化によるショートの発生割合の低減、コンデンサの小型化、高容量化という面で満足できるものではなかった。
本発明は、離型層としてウェットコート式ではなく、蒸着層を用い、基材と離型層との密着性に優れ、離型層が剥離することがなく、長期にわたりセラミックグリーンシートのキャリアシートとして使用でき、かつ、セラミックシートの均一性、均一な厚さ制御、破れ、剥離不良あるいはセラミックシートの印刷適正の低下、ピンホールの形成などのない離型性に優れたセラミックコンデンサグリーンシート形成用高平滑性離型フィルム及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、積層セラミックコンデンサに用いるためのセラミックグリーンシートを製造する際のキャリアシートとして用いられる離型フィルム又はシートにおける上記のような問題点を解決すべく種々検討の結果、有機珪素化合物モノマーをプラズマ化学気相成長法により化学気相成長させてなる有機珪素酸化物の連続蒸着膜の組成、及び離型層の表面粗さに着目することによりセラミックコンデンサグリーンシートを製造するための優れた機能、物性を発揮し得る離型フィルムを実現したものである。
すなわち、有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、少なくとも、有機珪素化合物モノマーガスを原料として含み、キャリヤーガスとしてアルゴンガス又はヘリウムガスからなる不活性ガスを含み、更に、酸素供給源として酸素ガスを含むガス組成物を調製し、かつ、表面粗さ(Ra)が10nm以下である基材の表面に、プラズマ発生装置を利用するプラズマ化学気相成長法により化学気相成長させた有機珪素酸化物を主成分とする連続蒸着膜を形成したものである。ここで、有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、原料である有機珪素化合物が酸化し、有機珪素酸化物の連続蒸着膜として形成したものであり、有機珪素酸化物の連続蒸着膜の中に原料の有機珪素化合物等の有機成分が意図的に含有されるように化学気相成長を制御して形成することを意味し、その有機珪素酸化物の連続蒸着膜を離型層とすることにより、基材と離型層とは化学結合により極めて強固に密接着した蒸着層を形成することができ、密着性に優れ、かつ膜厚の均一性に優れた離型層を形成することができる。
さらに、化学気相蒸着による有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、均一な膜厚の薄膜を形成することが可能であり、表面粗さが(Ra)10nm以下に形成することが可能である。有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、離型性にむらがなく均一であり、また、真空中で成膜化することから、離型層の表面に塵埃等が付着するという問題もない、平滑性に優れ、かつ優れた表面特性を有するものである。そのような有機珪素酸化物の連続蒸着膜からなる離型層を有する離型フィルムを、積層セラミックコンデンサに用いるセラミックグリーンシートを製造するためのキャリアシートとして又は搬送支持体と一緒に用いることで、高平滑性で、均一な厚さ制御、破れ、剥離不良あるいはセラミックシートの印刷適正の低下、誘電体層の欠陥によるショートや電極切れなどの発生のない、薄膜状のセラミックグリーンシートを製造し得ることを見出して本発明を完成したものである。
本発明は、表面粗さ(Ra)が10nm以下であるプラスチック基材と、該基材の少なくとも一方の表面粗さが10nm以下に調製された面にCVD法により設けた有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を離型層とするものであって、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層が、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層中に有機珪素化合物に起因する有機成分を含有するようにCVD法により蒸着を行うものであり、有機成分を含む有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の表面粗さが10nm以下であることを特徴とする積層セラミックコンデンサに用いるセラミックコンデンサグリーンシート形成用高平滑性離型フィルムに関するものである。
また、離型フィルムの基材フィルムが、離型層を形成する面側の表面粗さ(Ra)で10nm以下である高平滑性を有する基材フィルムを用い、その基材フィルムの表面をコロナ放電処理し、その後、有機珪素系化合物を蒸着原料とし、CVD法により表面粗さ(Ra)が10nm以下である有機珪素酸化膜を形成することを特徴とするセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルの製造方法に関するものである。
本発明は、少なくとも、有機珪素化合物の蒸気からなるモノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス又はヘリウムガスからなる不活性ガスを含み、かつ、酸化のための酸素供給ガスとして、酸素ガス等の酸素原子を含む酸化用ガスとを含むガス組成物を調製し、表面粗さが10nm以下のプラスチック基材の表面に、プラズマ化学気相成長法により有機珪素酸化物の連続蒸着膜層からなる離型層を形成してなるものであって、該有機珪素酸化物の連続蒸着膜層中に有機珪素化合物に起因する有機成分を含有するように形成することにより、基材と離型層が極めて強固に密接着し、膜厚の均一性に優れた、表面粗さ(Ra)が10nm以下の離型性にむらがなく均一で、表面に塵埃等が付着することがない高平滑性離型層を有する離型フィルムを形成することができる。
本発明では、表面粗さが10nm以下の平滑な離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートを製造するので、平滑でかつ貫通孔のない薄膜なセラミックグリーンシートが形成できるから、誘電欠陥がなく、ショートのないセラミックグリーンシートが製造できる。結果、小型化した高容量の積層セラミックコンデンサを製造することができる。さらに、離型層がコーティング層の場合のように基材と離型層との間で離型層の剥離がなく、セラミックグリーンシートへの離型層の転移がなく、かつ離型層の表面が清浄であり、セラミックグリーンシートへの塵埃等が付着するという問題も生じず、高品質なセラミックグリーンシートを安定的に製造することができる。
本発明の高平滑性離型フィルムを用いた製造方法により、前記離型フィルム上にセラミックグリーンシート製造用スラリーを適用し、セラミックグリーンシートを製造するので、セラミックグリーンシートと離型フィルムを剥離する際、剥離にむらがなく、シートが均一で厚さが制御でき、破れ、剥離不良がなくあるいはセラミックグリーンシートの印刷適正の低下、貫通孔の形成がなく、表面凹凸も少なく、離型層の離型性を長期に維持でき、歩留まりが向上できる。そして極めて優れた特性を有する積層セラミックコンデンサ用セラミックグリーンシートを歩留まりがよく、従来よりも高品質なセラミックグリーンシートを効率よく、簡単に製造でき、しかも誘電体層の欠陥によるショートや電極切れなどの問題が発生することのない小型かつ高容量化した積層セラミックコンデンサを製造することができる。
積層セラミックコンデンサの概略図である。 本発明の離型フィルムの積層構造を示す一例である。 プラズマ化学気相成長装置を用いた離型層の形成を示す概略図である。
本発明について以下に図面等を用いて更に詳しく説明する。
本発明のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムを用いて製造された薄膜セラミックグリーンシートを用いた薄膜積層コンデンサの一例として図1にその概略的断面図を示す。
(積層セラミックコンデンサの全体構成)
まず、本発明に係る薄膜状のセラミックグリーンシート、すなわち、積層セラミックコンデンサの酸化物誘電体薄膜層又はセラミック薄膜層に対応するシート状物を用いた電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ3は、コンデンサ素子本体4と、第1外部電極7と、第2外部電極8とを有する。コンデンサ素子本体4は、酸化物の誘電体層5(以下、セラミック薄膜層と記す)と、内部電極6とを有し、セラミック薄膜層5の間に、これらの内部電極6が交互に積層されている。交互に積層される内部電極層6は、それぞれ、交互にコンデンサ素子本体4の幅方向のセラミック素子本体の第1端部4a、第2端部4bに引き出され、それらの外側に形成してある第1外部電極7、第2外部電極8の内側に対して電気的に接続される。
内部電極6は、Niを含む合金から形成され、合金の組成としては、特に限定されない。また、内部電極6を構成する導電材は、必ずしも合金である必要はない。
内部電極6の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1〜1μmである。
セラミック薄膜層5の主成分としては、特に限定されず、通常のチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム及び/又はチタン酸バリウムなどの誘電体材料が挙げられる。各セラミック薄膜層5の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
第1および第2外部電極7、8の材質は、特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられる。第1および第2外部電極7、8の厚みは、特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサ3の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ3が直方体形状の場合、そのサイズは、通常、縦(0.6〜5.6mm)×横(0.3〜5.0mm)×厚み(0.1〜1.9mm)程度である。
次に、本発明にかかる積層セラミックコンデンサ用高平滑性離型フィルムの層構成の一例について図面を用いて説明する。図2は、本発明にかかる積層セラミックコンデンサの薄膜セラミックグリーンシート形成用高平滑性離型フィルムについてその層構成の一例を示す概略的断面図である。
本発明にかかるセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムとしては、図2に示すように、基材1と、該基材1の一方の面に設けた有機珪素酸化物の離型層2とからなるものである。
本発明において、積層セラミックコンデンサの小型化、高容量化のため積層セラミックコンデンサを構成するセラミックグリーンシートに求められる厚みは数μmレベルである。このような膜厚レベルとなると、製造されるセラミックグリーンシート1枚1枚の表面粗さが積層セラミックコンデンサの小型化、高容量化に大きく関わってくることから、本発明は、そのセラミックグリーンシートの表面粗さを制御する手段として、離型フィルムの表面粗さに着目し、離型フィルムの表面粗さを10nm以下に制御するため、離型層に有機珪素酸化物の連続蒸着膜を採用し、かつ表面粗さを10nm以下のプラスチック基材を採用することにより実現し、本発明に至ったものである。
本発明では、厚み精度や平滑性が求められる積層セラミックコンデンサに用いる薄膜のセラミックグリーンシートを製造するために用いるものであるので、離型層2aの表面粗さを10nm以下に制御した離型層2を形成することができること、また、離型層に求められる離型性及び耐衝撃性に加えて、省資源、省エネあるいは廃棄処理をも考慮し、さらには、セラミックグリーンシートと離型層との剥離力が小さく、基材フィルムと離型層とは密着性に優れ、かつ剥離しにくく、離型層が有する離型性を長期に維持できることなどを同時に実現できることが求められることから、本発明の離型層2には、有機珪素酸化物の蒸着膜を利用したものであって、基材フィルムと離型層との間に化学結合が形成され、優れた密接着性が発揮されるCVD法により形成された有機珪素酸化物の連続蒸着膜を採用したものである。
本発明において、重要なことは、有機珪素酸化物の連続蒸着膜の離型層2中に、C−H結合又はSi−C結合を有する化合物、蒸着原料のモノマーである有機珪素化合物やそれらの誘導体などの有機成分を化学結合等によって含有させること、すなわち、CH3基及び/又はC25基を残すようにCVD法で形成した撥水性を示す有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することである。
この有機成分の存在により撥水性が付与され、離型性が有機珪素酸化物の連続蒸着膜層に付与されることとなる。有機珪素酸化物の連続蒸着膜層に含有する化合物としては、特に、CH3部位を持つハイドロカーボンを基本構造とするものを多く含有するものが離型層として好ましいものである。
離型フィルムの離型層を形成する基材は、離型層の連続蒸着膜層の厚みがナノオーダーに薄膜化された場合、基材の表面粗さがそのまま離型層の表面粗さとして表れるとが本発明の実施例から明らかであることから、基材の表面が高平滑性であることが求められ、基材を選択する場合、基材の表面粗さに着目して選定する必要がある。
具体的には、基材として少なくとも表面粗さ(Ra)が10nm以下に調製された表面平滑性を有することが必要とされ、本発明の離型フィルムの基材は、プラスチック基材であって、表面粗さ(Ra)が10nm以下となるように調製したものである。
本発明にかかるセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムを構成する基材としては、離型フィルムを構成する基本素材となること、更に基材フィルムに離型層を構成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を設けることから、機械的、物理的及び化学的性質等において優れた性質を有し、特に、強度を有し、強靱であり、かつ、耐熱性を有する基材フィルム又はシートを使用することができる。
本発明において、基材フィルム又はシートとしては、表面粗さが10nm以下のものであれば使用可能であり、一般的には、プラスチック基材あるいは紙又は表面を機能処理した紙基材を用いることができる。
プラスチック基材として使用できる材料としては、具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、(ポリ(メタ)アクリル系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂等の各種樹脂フィルムないしシートを挙げることができる。なかでも、セラミックシートの成形用の離型基材に利用するものであり、耐熱性、機械的性質、寸法安定性、密着性、価格等の点から、本発明においては、特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、又は、ポリアミド系樹脂のフィルムないしシートが好ましい。また、基材として、上記の2種以上の樹脂を用いて2層以上の積層フィルム又はシートであってもよい。
本発明のフィルム又はシートの製造方法として、特に限定されるものではなく、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、インフレーション法等の従来から一般に知られているフィルム又はシートの製法を適宜採用して製造することができる。また、2種以上の樹脂を使用して多層成膜化する方法、更には、2種以上の樹脂を使用し、成膜化する前に混合して成膜化する方法等により、多層化してもよい。
さらに、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸延伸処理してもよい。
本発明の基材において、フィルム又はシートの膜厚としては、特に限定されないが、10〜100μm、より好ましくは20〜50μm程度が好ましい。基材の厚みが離型層の厚み又はセラミックグリーンシートの厚みに対する比率が薄くなると、離型層を形成する際、さらには、セラミックグリーンシートを塗工する際、基材の寸法安定性の低下や、CVD法処理又はセラミックスラリーの塗工などの製造時の温度、気流、支持状況などの製造状況の影響を受け易く、基材フィルム又はシートの平坦性や平滑状態の維持に支障を来す恐れがある。厚みが100μmを超えるとオーバースペックとなり材料の浪費となり、資源及び環境のコストが高くなる。
本発明において、成膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。その添加量としては、表面粗さが10nm以下とすることが求められることから、表面粗さに影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
本発明における一般的な添加剤としては、離型フィルムの基材として必要な機能を維持するため、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を使用することができる。
本発明において、基材フィルム又はシートの表面に、離型層を構成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜との密接着性を向上させるために、必要に応じて、予め、所望の表面処理をすることができる。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を施すことができる。
基材フィルム又はシートと離型層を構成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層との密接着性を改善するための方法として、プラズマCVD法により形成される有機珪素酸化物の連続蒸着膜と基材との密接着性が低下しない限りにおいて、例えば、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を形成することもできる。上記の前処理のコート材としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂等を使用することができる。
本発明のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの離型層を形成する方法について、以下説明する。
離型層を形成するプラズマ化学気相成長法としては、例えば、図3に示すような蒸着層を形成する基材にプラズマ化学気相蒸着を行なう雰囲気下に順次送り出し、巻き取り式のプラズマ化学気相成長方式を適用し、連続的にセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムを製造することができる。
本発明に係る高平滑性離型フィルムを製造する方法は、例えば、基材として、求められる物性を有するプラスチック材料を選択し、特に、本発明において、基材フィルムの表面粗さがセラミックグリーンシートの表面粗さに直接影響することから、表面粗さが10nm以下のプラスチック基材を選択し、そのプラスチック基材の一方の面に、少なくとも有機珪素化合物の蒸着原料モノマーガスと酸素ガスとを含有するガス組成物を使用し、プラズマ化学気相成長法により化学気相成長させて、有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成するもので、形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜中には、有機珪素化合物に起因する炭素含有の有機成分を含有し、かつ、Si−C結合の含有量を調整してなる離型層を形成することにより、本発明にかかる離型層を有する離型フィルム又はシートを製造する。
本発明の離型層は、メチル基又はエチル基を含む珪素化合物材料を用い、これをCVD法で成膜しなければ、有機珪素酸化物の蒸着膜中にメチル基又はエチル基を導入することはできない。
そこで、本発明の有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成するために使用する有機珪素化合物の蒸着原料モノマーとしては、メチル基あるいはエチル基を含み、且つSiを主鎖とする、次のようなモノマー材料、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン(MTMOS)、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。
しかしながら、撥水性を有するSiO2膜を形成するモノマー材料には、上記の例に関わらず、Si原子とCH3基及び/又はC25基を含む有機化合物で、常温で適当な蒸気圧を持ち、CVD法を実施することが可能な材料であれば、どのような材料でも構わない。
本発明においては、有機珪素化合物として、特に、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を原料として使用することが、その取り扱い性、形成された有機珪素酸化物の蒸着膜の撥水性等の特性から、好ましい。
CVD法によりメチル基及び/又はエチル基を導入する条件は、前記した材料を使用することに加え、Si原子とCH3基及び/又はC25基を含むモノマー材料と酸素ガスを含む混合ガスの組成比を、モノマー材料100重量部に対して酸素ガス10重量部〜1000重量部とすることである。酸素ガスが10重量部未満だとSiO2膜を形成することができず、また酸素ガスが1000重量部を超えるとSiO2膜の中にメチル基又はエチル基が含まれなくなり、撥水性が失われ、離型性が低下するので好ましくない。また、撥水性、離型性が発揮されるためには、少なくとも10Å以上の蒸着膜の厚みが必要である。撥水性蒸着膜の厚みが10Å未満だと連続膜として存在しなくなる。
CVD法により撥水性が付与されたSiO2膜を形成するためには、ガス組成物には、上記のモノマー材料のほかに、酸素ガスを導入する必要がある。酸素ガスの代わりに酸化性を持つガス、例えばオゾンガスや笑気ガス(N2O)などを使用することも可能であるが、成膜効率やコストの面から酸素ガスが最も好ましい。
CVD法に用いるガス組成物には、モノマーガスと酸素ガスのほかに、モノマー蒸気を効率よく真空槽内に導入するためのガス(キャリアーガス)や、プラズマを発生させたり、プラズマを増強させたりする目的のガスを増強して導入することも必要に応じて使用される。
キャリヤーガスとして、アルゴンガス又はヘリウムガスからなる不活性ガスを含有させることができる。
本発明のCVD法で使用するプラズマ発生装置には、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、又は、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。
また、プラスチック基材にプラズマ化学気相成長を適用する方法としては、一般的には、プラズマ発生装置内でロール状のプラスチック基材を巻き取りながら、あるいはプラズマ発生装置内をプラスチック基材が通過することにより、連続的に有機珪素酸化物の連続蒸着膜をプラズマ化学気相成長させ、離型フィルムを製造することができる。
本発明において、離型フィルムの有機珪素酸化物の離型層の厚みとしては、5〜50nmの範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
厚みが5nm以下であると、蒸着膜の平面密度が低下して基材フィルムが表面に露出することとなり、剥離性が低下し、離型層自体がセラミックグリーンシートへ付着剥離する可能性が増加する。一方、50nmより厚くなると、剛性が増してきて、その膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくない。
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が基材の一方の面に密着し、緻密で柔軟性に富む連続蒸着膜を形成したものである。有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、通常、一般式SiOx(ただし、xは、0〜2の数を表す)で表される珪素酸化物を主体とする連続蒸着膜であって、透明性の点から、一般式SiOx (ただし、xは、1〜2の数を表す)で表される珪素酸化物を主体とし、離型性の点から有機成分を含有するものである。
また、有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、前記珪素酸化物を主体とし、少なくとも1種以上の有機成分を化学結合等により含有する連続蒸着膜からなるもので、有機成分としては、例えば、C−H結合を有する化合物、Si−C結合を有する化合物、又は原料の蒸着モノマーガスである有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有するように形成したものである。
具体例を挙げると、CH3 2部位を持つハイドロカーボンを挙げることができる。上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層中に含有される有機成分の種類、量等を変化させることができる。
有機珪素酸化物の連続蒸着膜に含有される有機成分の含有量としては、0.1〜80%位、好ましくは、5〜60%位が望ましいものである。含有率が、0.1%未満であると、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の離型性が低下し、あるいは、その耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げ等により、擦り傷、クラック等が発生し易く、その安定性を維持することが困難になり、また、80%を越えると、離型性等が低下し、また、蒸着膜の密着性も低下して好ましくない。
本発明では、有機珪素酸化物の連続蒸着膜において、上記有機成分の含有量が、有機珪素酸化物の連続蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少させることが好ましく、これにより、有機珪素酸化物の連続蒸着膜の表面においては、上記有機成分により離型性及び耐衝撃性等を高めることができ、他方、樹脂フィルムとの界面においては、上記有機成分の含有量が少なく、−SiO−による化学結合がプラスチック基材との間で形成されるために、プラスチック基材と珪素酸化物の連続蒸着膜との密着性が強固なものとなるという利点を有するものである。
本発明において、離型層を構成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層中の有機成分の含有比C/Siは、例えば、X線光電子分光装置(X−ray PhotoelectronSpectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用いて分析する方法を利用して、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の元素分析を行うことより求めることができ、C/Si比により離型層の特性(物性)を確認することができる。
離型層を構成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜中に含有される、上記化合物の含有量により、C/Si比が変動するもので、有機珪素酸化物の連続蒸着膜中に、炭素原子含有量が、少なくなると、C/Si比は低下することになるので、結果的に、撥水基であるメチル基(CH3 )の存在が少なくなることを意味し、離型性等が低下するという理由により好ましくない。また、炭素原子含有量が多くなると、C/Si比が大きくなると、膜の硬度、強度等が低下し、剥がれ落ちる減少が生じるという理由により好ましくないものである。有機珪素化合物の連続蒸着層中のC/Si比は、好ましくは1.8〜2.7である。
本発明において、有機珪素酸化物の連続蒸着膜の膜厚としては、膜厚20nm〜100nmの範囲であれば特に問題はなくい。
具体的には、その膜厚としては、5〜50nmが好ましい。膜厚が5nm以下だと、蒸着膜の平面密度が低下し、離型フィルムの基材フィルムの表面粗さの影響を受け、基材が露出することとなり、離型性が低下し、離型層が剥がれ易くなり好ましくない。50nm以上だと、蒸着層の厚みを形成するための工程において、平面的に均一な表面粗さを有する、平滑な表面が得にくくなるとともに、蒸着層の厚みが厚くなり、セラミックグリーンシート形成時に収縮などによるクラックが入り易くなる。必要以上に厚くすることは、蒸着膜の形成速度と関係し、生産性の低下、コスト高にもなる。
離型層の蒸着膜の膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、測定することができる。また、上記の有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚を変更するには、蒸着時の条件として連続蒸着膜層の体積速度を大きくすること、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くすること及び基材の搬送速度を遅くすることにより、膜厚を厚くすることができ、また蒸着する速度を遅くすることにより膜厚を薄くすることができる。
本発明の低温プラズマ化学気相成長法による有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の形成方法について、図面を例示して説明する。
図3は、上記のプラズマ化学気相成長法による有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成するために用いる低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
本発明においては、プラズマ化学気相成長装置11の真空チャンバ12内に配置された巻き出しロール13から基材1を繰り出し、該基材1を、補助ロール14を介して所定の速度で冷却・電極ドラム15周面上に搬送する。
ガス供給装置16、17及び原料揮発供給装置18等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物の蒸着用モノマーガス等を供給し、蒸着用混合ガス組成物を調製しながら原料供給ノズル19を通して真空チャンバ12内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、上記冷却・電極ドラム15の周面上に搬送された基材1の上に、グロー放電プラズマ20によって発生したプラズマを照射して、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を成膜化する。なお、冷却・電極ドラム15は、真空チャンバ12の外に配置されている電源21から所定の電力を印加する。また、冷却・電極ドラム15の近傍には、マグネット22を配置してプラズマの発生を促進している。また原料を供給する原料揮発供給装置18は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置16、17から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスは原料供給ノズル19を介して真空チャンバ12内に導入するもので、混合ガス中の有機珪素化合物、酸素ガス、及び、不活性ガス等の含有量は、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層に求める性質に応じて任意の組成に変更することが可能である。
そして、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成した基材1は、所定の巻き取りスピードで補助ロール23を介して巻き取りロール24に巻き取って、本発明にかかるプラズマ化学気相成長法による有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成した基材とするものである。なお、図中、25は真空ポンプを表す。
上記の例示は、プラズマCVD法の一例を示すものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもないことである。図示しないが、本発明において、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層としては、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の1層だけではなく、その2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種又は2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を構成することもできる。
次に、プラズマCVD法における蒸着条件について説明すると、本発明において、真空チャンバ12内を真空ポンプ25により減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr、好ましくは真空度1×10-3〜1×10-7Torrに調整することが好ましい。
プラズマの生成については、冷却・電極ドラム15に電源21から所定の電圧が印加され、真空チャンバ12内の原料供給ノズル19の開口部と冷却・電極ドラム15との近傍でグロー放電プラズマ20が生成する。このグロー放電プラズマ20は混合ガスの中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、基材1を一定速度で搬送することで、グロー放電プラブマ20が、冷却・電極ドラム15周面上の基材1の上に、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成するものである。
本発明において、また、基材1の搬送速度は、形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚、密度、生産性等に関係し、通常は10〜500m/分、好ましくは50〜350m/分に調整することが好ましい。またプラズマ発生電圧は、形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚、密度、生産性等に関係し、搬送速度と密接に関係しており、一概に明確に規定できないが、離型層として密接着性の連続蒸着膜を形成することが必要であることから、通常は1.0〜5.0kwに調整することが好ましい。
上記プラズマ化学気相成長装置11において、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の形成は、基材1の上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながら式SiOxの形で連続蒸着膜状に形成されるので、当該形成される有機珪素酸化物の蒸着膜は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続蒸着膜層となるものである。したがって、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層は基材との密着性に優れ、さらに、膜厚の均一性も高く、また、真空中で成膜化することからその表面に塵埃等が付着することはなく、均一な離型性を有する優れた特性を有する蒸着膜を形成することができるものである。
本発明においては、プラズマにより基材1の表面が清浄化され、基材1の表面に極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される有機珪素酸化物の連続蒸着膜層と基材1との密着性が高いものとなるという利点を有する。
また、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは1×10-2〜1×10-3Torrに調整することから、従来の真空蒸着法により酸化珪素の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であることから、基材1を原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度も安定化しやすく、成膜プロセスが安定する。
本発明においては、本発明にかかる高平滑性離型フィルムを積層セラミックコンデンサー用の薄膜セラミックグリーンシートを製造する際に使用する工程紙として用いたものである。
(セラミックグリーンシートの製造)
セラミックグリーンシートの製造について説明する。セラミックグリーンシートは、完成後の積層セラミックコンデンサ3(図1)において、誘電体層5を構成するものである。
まず、セラミックグリーンシートの材料である誘電体ペーストを準備する。誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、又は水系ペーストで構成される。
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、これらを混合して用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度の粉末として用いられる。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシートの厚みよりも粒径の小さい粉末を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが用いられるが、好ましくはポリビニルブチラールなどのブチラール系樹脂が用いられる。
また、有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も特に限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。また、水系ペーストにおけるビヒクルは、水に水溶性バインダを溶解させたものである。水溶性バインダとしては特に限定されず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。誘電体ペースト中の各成分の含有量は特に限定されず、通常の含有量は、たとえばバインダは1〜5重量%程度、溶剤又は水は10〜50重量%程度とすればよい。
誘電体ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。ただし、これらの総含有量は、10重量%以下とすることが望ましい。バインダ樹脂として、ブチラール系樹脂を用いる場合には、可塑剤は、バインダ樹脂100重量部に対して、25〜100重量部の含有量であることが好ましい。可塑剤が少なすぎると、セラミックグリーンシートが脆くなる傾向にあり、多すぎると、可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
次に、ドクターブレード法などにより、上記誘電体ペーストをキャリアシートA(本発明の離型フィルム又はシート)上に塗布し、セラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートの厚さは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度である。セラミックグリーンシートは、形成後に乾燥される。セラミックグリーンシートの乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜5分である。
本発明のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムをセラミックグリーンシートの製造における工程紙に使用することにより、高平滑性離型フィルムの表面離型層がシリコーン樹脂を離型剤とする離型フィルムに比べて、離型層の厚みをオングストローム単位の制御した厚みで簡単に形成することができ、かつ離型剤が無機材料系の有機珪素酸化物の連続蒸着膜からなることから、離型フィルムの廃棄処理に際し環境を破壊するような原因物質を発生させない。
CVD法により有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することから基材フィルムとの密着性に優れかつナノオーダーの膜厚で優れた離型性を有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層による離型フィルムが得られることから、塗工型の離型フィルムに見られるような離型層の製品への転写が起きず、製品の後処理、製品の品質管理などの面で優れ、セラミックシートの均一性、厚さ制御、破れ、剥離不良あるいはセラミックグリーンシートの印刷適正の低下、誘電体層の欠陥によるショートや電極切れなどの発生がなく、歩留まりも向上し、かつセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの使用期間が長くなり、製造コストも低減できる。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。
(内部電極層用膜の形成)
この内部電極層用膜は、完成後の積層セラミックコンデンサ3(図1)において、内部電極層6を構成することとなる。
まず、図1に示すように、第1支持シートとしてのキャリアシートAを準備し、その上に離型層2(2a)を形成する。次に、離型層2(2a)の表面に内部電極6を所定パターンで形成する。形成される内部電極6の厚さは、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.1〜0.5μm程度である。内部電極膜6aの形成方法としては、特に限定されないが、スパッタリング法又は蒸着法などの薄膜法あるいはスクリーン印刷法、グラビア印刷法などの印刷法が挙げられる。
(積層工程)
次に、上述の方法で形成した内部電極6及びセラミックグリーンシートを積層する工程について説明する。
まず、キャリアシートA(離型フィルム又はシート)の表面に接着層を形成し、接着層転写用シートを準備する。キャリアシートAは、すべて同じシートで構成される。次に、キャリアシートA上に形成された接着層を内部電極6の表面に押し付け、加熱加圧する。その後、キャリアシートAを剥がすことにより、接着層が内部電極6の表面に転写される。その後、キャリアシートA上に形成された内部電極6を、接着層を介してセラミックグリーンシート5の表面に押し付け、加熱加圧する。そして、キャリアシートAを剥がすことにより、内部電極6が、セラミックグリーンシート5の表面に転写される。
転写時の加熱温度及び加圧力は、一般的には、加熱温度が40〜100℃、また、加圧力が、0.1〜15MPaで行われる。加圧は、プレスによる加圧でも、カレンダロールによる加圧でもよい。
上述した方法によって、一対のセラミックグリーンシート5及び内部電極6を有する積層ユニットを複数作製する。この積層ユニット同士を積層し、内部電極6とセラミックグリーンシート5とが交互に多数積層された積層体を形成する。なお、この積層を行う際に、各積層ユニットからキャリアシートAを剥がす。
この積層体における積層方向の両端面に外層用セラミックグリーンシートを積層した後、積層体に対して最終的な加熱、加圧を行い、製造した積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成する。最終加圧時の圧力は、好ましくは10〜200MPaである。また、加熱温度は、40〜100℃が好ましい。
次に、セラミックグリーンチップに対して脱バインダ処理を行い、その処理後、セラミックグリーンチップを酸素分圧10-10 〜10-2Pa、1000〜1300℃の温度雰囲気下で、焼成して、焼成体を形成する。
セラミックグリーンチップの焼成後に得られた焼成体をアニール処理して、コンデンサ素子本体4を形成し、得られたコンデンサ素子本体に対して、例えば、バレル研磨、サンドプラスト等にて端面研磨を施し、各端面に端子電極用ペーストを焼きつけて第1外部電極7及び第2外部電極8を形成する。
このようにして製造された積層セラミックコンデンサ3は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
形成した積層セラミックコンデンサは、高平滑性離型フィルムの表面粗さが10nm以下を実現したことにより、製造されるセラミックグリーンシートの表面の表面粗さを10nm以下とすることができる。ミクロンオーダーの厚みのセラミックグリーンシートとして平滑で表面粗さが10nm以下であって、貫通孔のないものが製造できることにより、セラミックグリーンシートの薄膜化が可能となり、その結果、従来の積層セラミックコンデンサに比べて多数積層でき、高密度化が可能となり、コンデンサ容量を従来のものより高容量化することができる。
以下に、具体的な実施例に則して、各種測定を行い、評価することで、本発明をさらに詳細に説明する。
(測定方法)
(1)炭素含有率の測定
X線光電子分析装置(島津製作所製ESCA3400)を使用し、最表面から深さ方向に3.0nmイオンエッチングし、エッチングされた蒸着層の元素分析から炭素含有率を算出した。
(2)離型層の転移性
離型層の転移性については、下記組成にて調製したセラミックスラリーをドクターブレードコーターにより離型フィルムの離型面上に均一に塗工し、オーブン中、80℃で乾燥して厚さ2.0μmのセラミックグリーンシート層を形成後、真空吸着機でセラミックグリーンシート層を吸引して離型フィルムから剥離させた。
セラミックグリーンシートを剥離させた後、離型したセラミックグリーンシートを直径30mmの円状に裁断し、セラミックグリーンシートの離型層側の表面への離型層の転移を確認するため、蛍光X線分析装置(リガク製RIX2000)を用いて剥離前後における離型フィルムの表面のSi強度を測定し、剥離前後のSi強度の変化を調べた。セラミックグリーンシート層形成前の離形層側のSi強度と比較することにより、離型層の転移性(転移していれば、Si強度が低下する)を評価する。
〔セラミックスラリーの組成〕
チタン酸バリウム(セラミック粉体) 100部
ポリビニルブチラール(バインダ) 10部
フタル酸ジオクチル(可塑剤) 5部
溶剤(トルエン/イソプロピルアルコール=1/1) 100部
(3)算術平均表面粗さ(平均表面粗さ)の測定
セラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの離型層表面の平滑性を評価するため、作成した高平滑性離型フィルムの表面を非接触式3次元表面粗さ計(Zygo社製、NewViewTM7000)を用いて、視野範囲0.11mm×0.11mmにわたって、異なる場所20箇所で測定を実施し、その算術平均表面粗さ(Ra)の測定値を求めた。
(4)セラミックグリーンシート層のピンホール及び貫通していないが窪んだ部分の数
上記(2)の組成にて調製したセラミックスラリーをドクターブレードコーターにより離型フィルムの離型面上に均一に塗工し、オーブン中、80℃で乾燥して厚さ2.0μmのセラミックグリーンシート層を形成後、真空吸着機で該グリーンシート層を吸引して離型フィルムから剥離させた。
セラミックグリーンシートを剥離させた後、セラミックグリーンシートを10cm×10cmに裁断し、同シート中のピンホール(貫通孔)及び貫通していない窪んだ部分(未貫通孔)を拡大顕微鏡で観察してその数を数えた。
本発明について、以下に実施例を挙げて更に具体的に説明する。
(実施例1)
基材として、厚さ50μmの表面粗さ(Ra)の実測値が4.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4100)を使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着後、下記に示す蒸着条件で、上記基材フィルムの片側コロナ処理面に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着材料としたプラズマ化学気相成長法を用いて厚さ10nm、表面粗さ4.2nm、表層から3.0nmまでのC/Si比が2.7の酸化珪素膜の平滑層を形成して本発明にかかる高平滑性離型フィルムを得た。
(蒸着条件)
蒸着材料;ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
反応ガス;酸素、ヘリウム
蒸着面;コロナ処理面
導入ガス量;HMDSO:酸素ガス:ヘリウム=10:1:10(単位:slm)
出力;2.3kW
成膜速度;100m/min
成膜圧力;1.8×10-2torr
(実施例2)
基材として、厚さ50μmの表面粗さ(Ra)の実測値が4.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4100)を使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着後、下記に示す蒸着条件で、上記基材フィルムの片側コロナ処理面に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着材料としたプラズマ化学気相成長法を用いて厚さ10nm、表面粗さ4.0nm、表層から3.0nmまでのC/Si比が1.8の酸化珪素膜の平滑層を形成して本発明にかかる高平滑性離型フィルムを得た。
(蒸着条件)
蒸着材料;ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
反応ガス;酸素、ヘリウム
導入ガス量;HMDSO:酸素ガス:ヘリウム=10:0.5:10(単位:slm)
出力;3.1kW
蒸着面;コロナ処理面
成膜速度;100m/min
成膜圧力;2.7×10-2Pa
(実施例3)
基材として、厚さ50μmの表面粗さ(Ra)の実測値が4.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4100)を使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着後、下記に示す蒸着条件で、上記基材フィルムの片側コロナ処理面に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着材料としたプラズマ化学気相成長法を用いて厚さ36nm、表面粗さ4.4nm、表層から3.0nmまでのC/Si比が2.4の酸化珪素膜の平滑層を形成して本発明にかかる高平滑性離型フィルムを得た。
(蒸着条件)
蒸着材料;ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
反応ガス;酸素、ヘリウム
導入ガス比;HMDSO:酸素:ヘリウム=10:0.5:10
出力;2.1kW
蒸着面;コロナ処理面
成膜速度;30m/min
成膜圧力;1.6×10-2Pa
(実施例4)
基材として、厚さ25μmの表面粗さ(Ra)の実測値が30nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A5100)を使用し、そのコロナ処理面に下記アンカーコート剤をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ2.1μm、表面粗さ8.4nmの平滑層を形成した。これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着後、下記に示す蒸着条件で上記基材フィルムのアンカーコート層を形成した平滑面に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着材料としたプラズマ化学気相成長法を用いて厚さ10nm、表面粗さ8.5nm、表層から3.0nmまでのC/Si比が2.7の酸化珪素膜の平滑層を形成して本発明にかかる高平滑性離型フィルムを得た。
(蒸着条件)
蒸着材料;ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
反応ガス;酸素、ヘリウム
導入ガス比;HMDSO:酸素:ヘリウム=10:0.5:10
出力;2.1kW
蒸着面;コロナ処理面
成膜速度;100m/min
成膜圧力;1.8×10-2Pa
(比較例1)
基材として、厚さ50μm、表面粗さ(Ra)の実測値が4.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4100)を使用し、該基材フィルムの片側コロナ処理面に、下記に示す蒸着条件で基材フィルムの片側コロナ処理面に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着材料としたプラズマ化学気相成長法を用いて厚さ10nm、表面粗さ4.1nm、表層から3.0nmまでのC/Si比が1.5の酸化珪素膜を形成して離型フィルムを得た。
(蒸着条件)
蒸着材料;ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
反応ガス;酸素、ヘリウム
導入ガス量;HMDSO:酸素ガス:ヘリウム=10:0.5:10(単位:slm)
出力;4.3kW
蒸着面;コロナ処理面
成膜速度;100m/min
成膜圧力;2.8×10-2Pa
(比較例2)
基材として、厚さ25μmの表面粗さ(Ra)の実測値が30nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A5100)を使用し、そのコロナ処理面に下記アンカーコート剤をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ1.2μm、表面粗さ15nmの平滑層を基材表面に作製した。これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着後、下記に示す蒸着条件で、上記基材フィルムのアンカーコート層を形成した平滑面に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着材料としたプラズマ化学気相成長法を用いて厚さ10nm、表面粗さ23nm、表層から3.0nmまでのC/Si比が2.7の酸化珪素膜を形成してセラミックコンデンサグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
(蒸着条件)
蒸着材料;ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
反応ガス;酸素、ヘリウム
導入ガス比;HMDSO:酸素:ヘリウム=10:0.5:10
出力;1.9kW
蒸着面;コロナ処理面
成膜速度;100m/min
(比較例3)
基材として、厚さ50μm、表面粗さ(Ra)の実測値が4.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4100)を使用し、該基材フィルムの片側コロナ処理面に、シリコーン樹脂材料として溶剤型剥離紙用の末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサンからなる付加反応硬化型シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン(株)製LTC750A)を当該シリコーン樹脂100部に硬化剤として白金硬化触媒SRX−212(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.8部を配合した5重量%トルエン溶液の離型剤を調製し、グラビアロールコート法によりPET表面に4g/m2(Wet)の塗工量で塗布後、加熱温度140℃で加熱乾燥して、坪量が0.3g/m2となる離型層の厚さであって、表面粗さ27nmのシリコーン樹脂離型層の塗工型離型フィルムを得た。
(アンカーコート剤の調製)
なお、実施例4及び比較例2において、基材表面粗さを所望の表面粗さのものにするため基材フィルムの表面にアンカーコート処理を施した。そのアンカーコート処理に使用したアンカーコート剤は以下のとおり調製した。
平均分子量25,000、水酸基価80mgKOH/gのアクリルポリオールをメチルエチルケトン(MEK)/酢酸エチルの混合溶剤(混合比1:1)で希釈し、液中の固形分濃度が10%になるよう調製した主剤に対し、固形分75%のトリレンジイソシアネートを含有する酢酸エチル溶液を硬化剤として、主剤100部に対して硬化剤10部添加し、平滑層形成用アンカーコート剤を調製した。
上記実施例及び比較例において製造されたセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムについて、上記した測定方法に従い、表面粗さ、離型層の転移性、セラミックグリーンシート層のピンホール及び貫通していないが窪んだ部分の数について測定した。
表1は、実施例及び比較例で製造した離型シートを用いてグリーンシートを実際に製造して、グリーンシートをスラリー状態で適用し、焼成し、剥離した前後の離型層の蛍光X線分析を行い、Si強度を測定し、離型層の材料成分の珪素の量の変化を観察した結果を以下にまとめた。
ここで、基材:表面粗さは、基材フィルムの表面粗さそのもの又は基材フィルムの表面にアンカーコート剤を塗布することで表面粗さを調整して求める表面粗さにしたものを実測して基材の表面粗さとし、そのような表面粗さを有する基材に蒸着層を形成し、その表面粗さを実測したものを離型層の表面粗さという。
Figure 0005332940
表2は、実施例1〜4及び比較例1〜3で製造した離型フィルムを用いてセラミックコンデンサグリーンシートを製造し、離型フィルムの離型層表面の実測表面粗さと貫通孔又は未貫通孔の数を上記測定方法により計測し、その結果をまとめたものである。
Figure 0005332940
この結果によれば、CVD法による蒸着層を離型層とするものについては、実施例1〜4も比較例1、2も共にセラミックグリーンシートを成形後、剥離した時の離型層の転移は見られない。一方、比較例1の離型層のC/Si値が低い値すなわち有機成分が少なく撥水性が低下した条件で形成した蒸着層では、撥水性が低下することによりセラミックグリーンシートと離型層の層間の離型性が低下し、セラミックグリーンシート表面にピンホールが形成されやすくなったものと見られる。また、比較例2の基材の表面粗さが10nmを超えるものの例として調製したものでは、離型層が蒸着層であっても層間でのアンカー効果などによりセラミックグリーンシートが剥離しにくくなり、ピンホールも未貫通孔も形成され、セラミックコンデンサに用いるセラミックグリーンシートとして好ましい結果が得られなかった。
従来のシリコーン層を離型層とする比較例3は、基材の表面粗さが本発明の条件を満たしていても離型層の表面粗さが大きく、ピンホール及び未貫通孔が非常に多いセラミックグリーンシートが形成された。
一方、実施例1〜4に見られるように、離型層が有機成分を本発明の範囲で含有した撥水性が適度に付与されたもので、10nm以下の表面粗さの高平滑性離型フィルムを用いることにより、未貫通孔の形成はあるもののピンホールのない、面状に均一なセラミックグリーンシートが得られた。
本発明は、積層セラミックコンデンサに用いる薄膜セラミックグリーンシート製造用高平滑離型フィルム又はシート及びその製造方法に関するもので、積層セラミックコンデンサなどの薄膜電子部品の製造、汎用離型シート、成形用キャリアシート等に利用できる。
A:キャリアシート(離型フィルム又はシート)
1:基材
2(2a):離型層、有機成分含有有機珪素酸化物蒸着膜
3:積層セラミックコンデンサ
4:コンデンサ素子本体(素子本体)
4a、4b:セラミック素子本体の第1又は第2端部
5:誘電体層(セラミック薄膜層);セラミックグリーンシート
6:内部電極
7、8:第1及び第2外部電極
11:プラズマ化学気相成長装置
12:真空チャンバ
13:巻き出しロール
14:補助ロール
15:冷却・電極ドラム
16、17:ガス供給装置
18:原料揮発供給装置
19:原料供給ノズル
20:グロー放電プラズマ
21:電源
22:マグネット
23:補助ロール
24:巻き取りロール
25:真空ポンプ

Claims (11)

  1. 積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層を形成するための薄膜セラミックグリーンシートを製造するために用いるセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムにおいて、基材フィルム上の離型層が、該基材フィルムに直接、プラズマ化学気相蒸着法(CVD法)により有機成分を含むように制御された有機珪素酸化物の連続蒸着膜であって、最表面から3nmにおけるC/Si比が1.8〜2.7であり、かつ該有機珪素酸化物の連続蒸着膜の表面粗さが算術平均表面粗さ(Ra)で10nm以下であることを特徴とするセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム。
  2. 基材フィルムが、有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成する面側の算術平均表面粗さ(Ra)が10nm以下のプラスチックスフィルムである請求項1に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム。
  3. 有機成分を含む有機珪素酸化物の連続蒸着膜が、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着モノマー材料として用いたものである請求項1又は2に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム。
  4. 有機成分を含む有機珪素酸化物の連続蒸着膜が、ヘキサメチルジシロキサンを蒸着モノマー材料として用いたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム。
  5. CVD法が、低温プラズマ化学気相成長法である請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム。
  6. 離型層の厚みが5〜50nmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム。
  7. 基材フィルムが2軸延伸ポリエステルフィルムである請求項1〜6のいずれか1項記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム。
  8. 積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層を形成するための薄膜セラミックグリーンシートを製造するために用いるセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの製造方法において、基材フィルムが、離型層を形成する面側の算術平均表面粗さ(Ra)で10nm以下である高平滑性を有する基材フィルムであって、該基材フィルム上に有機珪素化合物を蒸着原料とし、CVD法により化学気相蒸着し、最表面から3nmにおけるC/Si比が1.8〜2.7であり、かつ算術平均表面粗さ(Ra)が10nm以下である有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することを特徴とするセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの製造方法。
  9. CVD法が、低温プラズマ化学気相成長法である請求項8に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの製造方法。
  10. 離型層の厚みが5〜50nmである請求項8又は9に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの製造方法。
  11. 基材フィルムが2軸延伸ポリエステルフィルムである請求項8〜10のいずれか1項に記載のセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの製造方法。
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