JP5407901B2 - フレキシブルフラットケーブル(ffc)製造用撥水性離型フィルム - Google Patents
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Description
具体的には、有機珪素化合物を蒸着原料とし、蒸着時に低酸素ガス雰囲気下、プラスチック基材を冷却保持した状態で、プラズマ化学気相成長を行い、炭素含有有機珪素酸化物の蒸着膜をプラスチック基材上に成膜することを特徴とするFFC製造用撥水性離型フィルムに関する。
しかし、従来の電線では、小型化した機器の狭い空間において、複雑化し、高密度化した電気回路、電子回路の電気接続に対応しきれなくなり、新たに電気配線の実装スペースを取らない、多芯数を一括して電気接続できる優れた配線手段としてFFCが導入された。
製造の際、難燃性接着性絶縁フィルムが熱ロール間に挟まれた時に、圧力及び熱により一部、軟化・溶融し、フィルム両端からあるいはPETフィルムに所定の間隔で形成された切除部からはみ出し、FFC製造装置であるロール部と直接接触し、ロールに付着し、そのはみ出した溶融樹脂が、送り込まれる絶縁フィルムがロールにより加熱加圧され、かつ挟持されるため、さらにロール上へ付着したり、あるいはロール上の樹脂が絶縁フィルムへ移行したりして、FFCの表面が連続的に荒れ、汚染が広がることがあるため、それを防止するため、FFC製造用離型フィルムが必要とされている。
特に、近年は、多機能化、微細化する電子機器の製造工程においては離型工程材料のクリーン性や耐熱、寸法安定性などが必要不可欠となっている。さらには、環境対応の観点から、使用後の離型材料の処理による環境負荷の低減も重要な機能の一つに数えられるようになっている。
により離型性を付与する場合は、たとえば、PET上に離型層としてシリコーンを積層したシリコーン積層体及びその製造方法(特許文献1)があるが、シリコーン積層体の場合、優れた離型性、低表面エネルギー、コーティング加工可能であるが、一方、長期間の大気暴露により重剥離化(表面特性が劣化する)が促進され、表面特性が変化するといった問題があり、また、離型層のシリコーンが剥離時に転移し、欠陥となる問題があった。
また、従来の塗工による離型層を用いた場合、離型層の転移、重剥離化による表面特性の変化により離型フィルムの離型性を長期に維持し、制御された撥水性を有する離型性層を調製することは困難とされ、均質でかつ均一な撥水性離型層として安定かつ確実に、かつ低コストでFFCを製造可能とする撥水性離型フィルムを形成するには未だ至っていない。
同時に発現でき、耐熱性を有する撥水性離型層を、安定かつ確実に低コストで提供するとともに、従来技術の問題点をも解消した撥水性離型フィルムを提供するものである。
そこで、本発明は、基材の一方の面に膜厚の均一性に優れた離型層を設けることができ、かつ、その離型層は、無機蒸着膜で形成され耐熱性であり、基材との密着性に優れ、転移がなく、さらに、その表面の平滑性に優れると共に濡れ性が悪く、均一な離型性を示し、熱ラミネートにより製造されるFFCを製造するのに極めて有用なFFC製造用撥水性離型フィルムを提供することである。
本発明は、少なくとも、有機珪素化合物の蒸気からなるモノマーガスを蒸着原料とし、キャリヤーガスとしてアルゴンガスまたはヘリウムガスからなる不活性ガス、及び酸素供給ガスとして低濃度の酸素ガスを含むガス組成物を調製し、当該ガス組成物を、プラスチックス基材フィルムの一方の面に、プラスチック基材を冷却保持した状態でPE−CVD法により化学気相成長させて成膜した有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を離型層とするものであって、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層は、その層中に炭素、水素、珪素、及び酸素の中の1種類あるいは2種類以上からなる化合物を少なくとも1種類以上を含有するように形成するもので、当該離型層を直接プラスチックス基材フィルムに形成して、FFC製造用離型フィルムとすることにより、当該離型フィルムを使用して通常の方法でFFCを製造したところ、製造されたFFCは離型フィルムから容易に剥離でき、しかも、離型層の付着もなく、表面平滑なフレキシブルフラットケーブルが製造できた。
上記FFC製造用撥水性離型フィルムは、膜厚が薄く一定で均一性に優れ、さらに、基材と極めて強固に密接着して転移せず、その密着性に優れ、かつ、その表面の平滑性に優れていると共に高い水接触角を有する撥水性が付与され、濡れ性が悪く、その結果、離型性にむらがなく均一な撥水性離型蒸着膜を有するものである。
さらに、PE−CVD法を用いることにより、プラスチック基材、特に耐熱性の低い材料や一般の物理蒸着では蒸着困難な低表面エネルギーの材料にも強固に密着した蒸着膜を形成できることから、任意のプラスチック材料を選択し、透明な撥水蒸着膜を形成させることが可能であり、これにより、求められる機械物性やコストに合わせて種々の基材を選択することができることとなり、設計自由度が極めて高い製造方法として利用できるメリットがあることを見出して本発明を完成したものである。
て成膜された有機珪素酸化物の連続蒸着膜の優位性は、PET、ポリオレフィンなど蒸着可能な基材フィルムであれば、特に、材料を選ばず、密接着性で剥離し難く、ヒートシール樹脂との離型性においても優れた撥水性離型フィルムを確実に制御して製造することができるものであり、設計自由度が極めて高く、所望の物性、性能のものを安価に製造することができる。
また、有機珪素化合物をPE−CVD法により低酸素雰囲気下で珪素酸化物蒸着膜を形成し、有機珪素酸化物中の炭素含有量が大きい膜が形成されるものであり、エチル基(−CH2−CH3)、メチル基(−CH3)が末端として残り、Si−OH基が少なくなることで、撥水性がある(水接触角の数値が大きい値)離型性となり疎水性の膜を得ることができる。
本発明の撥水性離型フィルムによれば、撥水性炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜の厚みがナノメートルレベルからマイクロメートルレベルまで正確に任意の膜厚レベルで制御して形成することが可能であり、離型性が維持でき、かつ転移性もほとんどなく、しかも、撥水性をも制御可能である安定的な連続蒸着膜を形成することができる。
また、本発明のFFC製造用離型フィルムにおいては、熱ロールによる熱ラミネートを行う際の使用環境の厳しい状態下にあって、求められる耐熱性、離型性及び撥水性に加えて、省資源、省エネあるいは廃棄処理にも優れたものである。すなわち、炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜をCVD法により形成したものであり、ハロゲン系元素を含有せず、基材フィルムと離型層との間に化学結合が形成され、優れた密着性が発揮され、基材フィルムと離型層とは密着性に優れ、剥離しにくく、かつ離型層表面に疎水性基が存在し、被離型材と離型層との剥離力が小さく、離型層の離型性を長期に維持できるものである。
なお、本発明において、フィルムとは、シート、フィルム、フィルム状物又はシート状物のいずれの場合も意味するもので、特別な意味を与えるものではない。
当該蒸着膜(2a)である撥水性離型層を形成するプラズマ化学気相成長法は、例えば、図2に示すようなプラズマ化学気相成長蒸着装置を用い、真空チャンバ内で基材フィルムをプラズマ化学気相成長する雰囲気下に順次送り出し、巻き取り式のプラズマ化学気相成長方式を適用し、連続的に撥水性離型蒸着膜形成することができるものである。
本発明にかかるFFC製造用撥水性離型フィルムは、広範な用途に利用可能であるが、特に、FFC製造用に適した撥水性離型フィルムである。
本発明にかかるFFC製造用撥水性離型フィルムにおいて、使用する材料、方法等について説明する。
さらに、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸延伸処理してもよい。
料の浪費となり、資源及び環境のコストが高くなる。
本発明における一般的な添加剤としては、離型フィルムの基材として必要な機能を維持するため、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を使用することができる。
本発明にかかる蒸着膜の形成方法は、有機珪素化合物の蒸着原料モノマーガスを含有するガス組成物を使用し、所定の蒸着条件下、PE−CVD法により有機珪素酸化物の連続蒸着膜を所定の搬送速度で送られるプラスチック基材の一方の面に化学気相成長させて形成するものである。
本発明の方法では、低酸素濃度でガス組成物の供給量を変更するだけで、形成される有機珪素酸化物の連続蒸着膜中に、有機珪素化合物に起因する有機成分を含有し、かつ、Si−C結合の含有量を高濃度に調整してなる均一で十分な撥水性を有する離型層を形成することができ、本発明にかかるFFC製造用撥水性離型フィルムを確実に簡単に製造することができる。
有機珪素酸化物の連続蒸着膜層に含有する化合物としては、特に、CH3部位を持つハイドロカーボンを基本構造とするものを多く含有するものが撥水性離型層として好ましいものである。
具体例を挙げると、CH32部位を持つハイドロカ−ボンを挙げることができる。
本発明においては、有機珪素化合物として、特に、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を原料として使用することが、その取り扱い性、形成された有機珪素酸化物の蒸着膜の撥水性等の特性から、特に、好ましい。
したがって、ガス組成物は、上記のモノマー材料のほかのガス成分として、通常の蒸着法において行っているような高濃度で酸素ガスを供給することを止め、低酸素状態にする必要がある。撥水性は、CH3基及び/又はC2H5基の存在量で制御可能であり、酸素供給源を制御することで、あるいは撥水膜(撥水基)の密度を制御することで、撥水性すなわち離型性が制御可能となる。
上記以外でも蒸着過程の条件、基材の表面形状等を変化させることにより、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層中に含有される有機成分の種類、量等を変化させることができる。
キャリアーガスとして、アルゴンガスまたはヘリウムガス等の希ガス、又は窒素ガス、あるいはそれらの混合ガスなどの不活性ガスを含有させることができる。
さらに、プラスチック基材にプラズマ化学気相成長を適用する方法としては、一般的には、プラズマ発生装置内でロール状のプラスチック基材を巻き取りながら、あるいはプラズマ発生装置内をプラスチック基材が通過することにより、プラスチック基材上にプラズマ化学気相成長させ、有機珪素酸化物の撥水性離型蒸着膜を形成することができる。
のが好ましく、そして、xが1.0〜1.4の範囲内にあって、yが1.5〜2.1の範囲内にあるのが好ましい。
一般的には、有機成分の含有量が20〜80%位、好ましくは、30〜60%位が望ましいものである。含有率が、20%未満であると、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の離型性が低下し、あるいは、その耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げ等により、擦り傷、クラック等が発生し易く、その安定性を維持することが困難になり、また、80%を越えると、離型性、蒸着膜の密着性も低下して好ましくない。
また、蒸着膜が撥水性及び離型性を発揮するためには、少なくとも10Å以上の撥水性蒸着膜の厚みが必要である。撥水性蒸着膜の厚みが10Å未満だと連続した蒸着膜として存在しなくなる。
具体的には、その膜厚としては、5〜200nmが好ましく、膜厚が200nm、さらには、400nmより厚くなると、剛性を増すため膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、膜厚が5nm以下であると、蒸着膜の平面密度が低下して基材フィルムが表面に露出することとなり、剥離性が低下し、離型層自体が被離型材へ付着し、離型層が剥離する可能性が増加する。さらに、2nm未満であると、離型層として離型性の効果を奏することが困難になることから好ましくないものである。
することにより、膜厚を厚くすることができ、また、蒸着する速度を遅くすることにより膜厚を薄くすることができる。
本発明においては、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層としては、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の1層だけではなく、その2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する有機珪素化合物も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を構成することもできる。
本発明においては、プラズマ化学気相成長装置11の真空チャンバ12内に配置された巻き出しロール13から基材フィルム1を繰り出し、所定の速度で冷却・電極ドラム15周面上に搬送する。ガス供給装置及び原料揮発供給装置16等から酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、かつ原料である有機珪素化合物の蒸着用モノマーガス等を揮発させ、供給し、蒸着用混合ガス組成物を調製しながら原料供給ノズルを介して真空チャンバ内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、上記冷却・電極ドラムの周面上に搬送された基材フィルムの上に、グロー放電プラズマによって発生したプラズマを照射して、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を成膜化する。
なお、混合ガス中の有機珪素化合物、希ガス、及び不活性ガス等の含有量は、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層に求める性質に応じて任意の組成で変更することができる。
そして、有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成した基材フィルムは、所定の巻き取りスピードで巻き取りロール14に巻き取って、本発明にかかる有機珪素酸化物の連続蒸着膜をプラズマ化学気相成長法により形成した基材フィルムとするものである。
上記の例示は、プラズマ化学気相成長法の一例を示すものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもないことである。
また、基材1の搬送速度は、形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚、密度、生産性等に関係し、通常は10〜500m/min、好ましくは、20〜100m/minに調整することが好ましい。また、プラズマ発生電圧は、形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚、密度、生産性等に関係し、特に、有機珪素化合物との反応あるいは有機珪素化合物の分解を生じないマイルドな条件下、通常5〜20kwに調整することが好ましい。
次に、本発明のFFC製造用撥水性離型フィルムを使用したFFCの製造方法の一例を説明する。
図3に示すようなFFC連続製造装置9を用い、支持ローラに所定の間隔を隔てて配列、支持された複数の導体5と、前記導体を上下両面から挟むようにポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるベースフィルム3に接着剤層が設けられている絶縁フィルム4を連続的に供給して、一対の回転熱圧着ロール8,8間を通過させ、熱圧着ラミネートすることにより一体的に固定し、フレキシブルフラットケーブル6を製造する。その際、上下両面の絶縁フィルムと回転熱圧着ロールとの間に本発明のFFC製造用撥水性離型フィルムAを離型層2が絶縁フィルム側に来るように供給して熱圧着し、製造されたFFCをロールに巻き取る。ここで、上側の面の絶縁フィルムは、絶縁層として限定されないが、20〜60μmの熱可塑性フィルムを厚さ12〜50μmのポリエステルフィルムに積層したものが好ましく、また、所定の間隔で導体露出窓部7が形成されているものを用いる。
ここで、FFCを構成する導体は平角導体として形成されるもので、その材質は導電性材料であれば任意であり、例えば、スズメッキ平角軟銅線等を使用することができる。導体の寸法や数も任意である。例えば、導体の厚みは35〜100μm、幅は0.3〜0.8mm程度である。
また、CVD法により有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することから基材フィルムとの密着性に優れかつナノオーダーの膜厚みで優れた離型性を有する離型フィルムが得られることから、塗工型の離型フィルムに見られるような離型層の製品への転移が起きず、製品の後処理、製品の品質管理などの面で優れ、歩留まりも向上し、かつ撥水性離型フィルムの使用期間が長くなり、製造コストも低減できる。
本発明における実施例は、下記測定又は評価方法を用いて各種測定又は観察を行い、評価した。以下に実施例の物性値の測定方法及び評価方法を説明する。
(1)水接触角の測定
製造したFFC製造用撥水離型フィルムの撥水離型層表面の撥水性を評価するため、作成したFFC製造用撥水離型フィルムの表面に対する水の接触角を、接触角試験機(協和界面科学株式会社製:DropMaster700)装置を用いて、異なる場所で5回測定を実施し、5回の平均値を以て接触角の測定値を求めた。
試料調製:製造したFFC製造用撥水離型フィルム(38μm)の離型層側と貼り合わせ用基材としてフレキシブルフラットケーブルの絶縁材原反を重ね合わせてフラットケーブルラミネーターでヒートシールして貼り合わせ、剥離強度試験としてORIENTIC
TENSILON RTC−1310Aを用い、試験片として15mm巾に切り出した離型フィルム付きフラットケーブル試験片を剥離速度50mm/minにてT字剥離を行い、剥離強度を測定した。
試料調製:製造したFFC製造用撥水離型フィルム(38μm)とフレキシブルフラットケーブルの絶縁材原反2枚とを重ね合わせ、フラットケーブルラミネーターの熱ロールを用いて熱ラミネートして貼り合わせ、離型フィルム付きフラットケーブル試験片を形成し、耐熱性、熱収縮性、しわにならないなどの外観を観察して評価した。
評価するに当たり、○:良好、△:しわ発生、×:しわと熱収縮が両方発生、で評価した。
離型層の転移性
離型層の転移性については、フレキシブルフラットケーブルの絶縁材原反を重ね合わせ、熱ロールを用いて熱シールする際に、熱ロールと絶縁材原反との間にFFC製造用撥水離型フィルムを介在させて加熱温度℃、厚さ20μmのFFCを形成した。FFC製造用撥水離型フィルム付きFFCを形成後、FFCと離型フィルムを剥離させた。
FFCを剥離させた後、FFC製造用撥水離型フィルムからFFCの剥離フィルム側の表面への離型層の転移を確認するため、蛍光X線分析装置(リガク製RIX2000)を用いて剥離前後における離型フィルムの表面のSi強度を測定し、剥離前後のSi強度の変化を調べた。FFC形成前の離形層側のSi強度と比較することにより、離型層の転移性(転移していれば、Si強度が低下するので、その転移の有無を評価)を評価する。
燃焼廃棄性とは大気中への有害ガス(ハロゲン系ガス)の発生及び燃焼残渣の有無で評価した。フッ素樹脂は有害なハロゲンガスの発生があり、離型層がシリコーン樹脂では、難燃性で焼却処理がし難く、残渣も多い
(実施例1)
基材フィルムとして、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ製「PTH」、PET#12、表面粗さ(Ra)50nmの片面にコロナ処理を施したものを用い、該2軸延伸ポリエステルフィルムを巻取り式PE−CVD法蒸着装置の繰り出し側に、コロナ処理面が被蒸着面となるように設置し、その後、該基材フィルムを巻き出し、巻上げ張力を1.4N/mに設定し、巻取り式PE−CVD法蒸着装置の容器を密閉し、排気ポンプ用いて減圧するとともに、蒸着ドラムの冷却装置の出口側温度を0℃に冷却した。
装置内圧力をキャパシタンスマノメーターにより測定し、0.3Paに到達した段階で、蒸着モノマーとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を採用し、液体状態で流量を計量し、その供給ラインの流量を1000sccm(スタンダードシーシーパーミニッツ、1atm、0℃あるいは、25℃など一定温度で規格化されたslmを意味する。)に、また、装置内の雰囲気ガスとしてヘリウムを用い、その供給ラインの流量を1000sccmに、酸素ガスを100sccmに、それぞれ設定し、PE−CVD法蒸着装置の真空チャンバ内へ供給し、PE−CVD法蒸着装置の容器内の真空圧力を3.0Paに調整した。
上記のとおり設定したPE−CVD法蒸着装置の動作が安定化した後、下記PE−CVD法の蒸着条件として、印加電圧:40KHzの交流電源8kW、フィルムの搬送速度:30m/min、成膜圧力:3.0Pa、基材保持温度:0℃で、ヘキサメチレンジシロキサンを蒸着原料としたプラズマ化学気相成長を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ放電処理面に施し、厚さ8nmの有機珪素酸化物の蒸着膜を成膜し、炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜を有する撥水離型フィルムを製造した後、基材フィルムの搬送を停止させ、捲き取り部の撥水離型フィルムを回収し、所定の物性測定を実施した。
成膜した蒸着膜の組成は、C:29.53、O:40.28、Si:30.19、O/Si:1.33であった。
基材: 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(「ユニチカ製PET#25」)
蒸着面: コロナ放電処理
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)
雰囲気ガス: Heガス
導入ガス比: HMDSO:O2:He=1.0:0.1:1.0[slm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、8kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 3.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
次いで、図3に示す如くローラ上に複数法の導体(半田メッキ軟銅)を長手方向に沿って同一平面状に所定間隔をもって並設し、整列状態にして走行させ、その上部及び下部より厚さ12μmのポリエステルフィルムと厚さ40μmの不飽和ポリエステル難燃性接着剤層との絶縁性フィルムを供給するとともに、該絶縁性フィルムと重ね合わせるように本発明の実施例1で製造した撥水性離型フィルムの有機珪素酸化物の連続蒸着膜層が絶縁性フィルム側に来るように供給し、FFC製造用撥水性離型フィルムで絶縁性フィルムをサンドイッチしたのち熱圧着ロールにより加熱融着して一体化させ、フレキシブルフラットケーブルを製造した。FFC製造において、本発明の撥水性離型フィルムは、特に、フレキシブルフラットケーブルを製造するにおいて、絶縁材の熱シール一体化時に離型層の転移がなく、離型性があり、高温熱ロール適正、シリコーン転移性及び燃焼廃棄性にも優れており、全般的に優れた物性、性能を示した。
基材として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ製のエンブレット「PTH」、表面粗さ(Ra)>300nm)の片面にコロナ処理を施したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、プラズマ化学気相成長により有機珪素酸化物の連続蒸着膜を有するFFC製造用撥水離型フィルムを得た。該撥水離型フィルムを用いて実施例1と同様にFFCを製造した。
離型フィルムとして二軸延伸PETフィルム(ユニチカ製のエンブレット「PTH」使用、12μm、表面粗さ(Ra)50nm)を用いて、実施例1と同様にFFCを製造した。
離型フィルムとしてフタムラ化学製無延伸CPPフィルム(FHK2 25μm)を用
いて、実施例1と同様にFFCを製造した。
離型フィルムとして東レ製二軸延伸PETフィルム(E7002 25μm)を用いて、実施例1と同様にFFCを製造した。
離型フィルムとして旭硝子製フッ素樹脂フィルム(アフレックス 25μm)を用いて、実施例1と同様にFFCを製造した。
その結果は、以下のとおりである。
実施例と比較例1を比較すると、本発明では有機珪素化合物中のメチル基などの有機成分の存在により、メチル基等の疎水性基に起因して水接触角が大きくなり、有機珪素酸化物の連続蒸着膜の離型性が大きくなって、離型フィルムとして適正な離型性が発揮される。
また、実施例1と2の水接触角を比較してみると、蒸着膜の組成が同じであり、表面粗さが異なることからみて、表面粗さが大きい材料の方が、表面積が大きいため撥水性蒸着膜の効果が強くなることがわかった。
そして、実施例と従来の離型フィルムとして知られているものをFFC製造に用いた比較例の結果と比べて明らかなように、FFC製造時の使用環境の厳しい条件下においてでさえ、酸素雰囲気の条件下で優れた撥水性及び離型性を示す有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜を離型層としたFFC製造用離型フィルムを用いることにより、比較例2のように熱ロールによるFFC絶縁フィルムの熱ラミネート時に、カール、熱収縮が見られることなく、高温熱ロール適正に優れている。また、従来型の水接触角が大きいシリコーン樹脂を離型層とする比較例3に見られるようなシリコーン成分の転移がなく、ヒートシール性の樹脂との離型性においても優れているものであった。
また、FFC製造時、離型フィルムとして長期間にわたり安定して離型性を維持でき、
離型フィルムとして廃棄する量が少なくすることができ、ランニングコスト面で有利なものであり、さらには、離型層の膜厚はnmオーダーと薄く、材料が有機珪素酸化物の蒸着膜であって燃焼時に二酸化珪素となり、環境面での適正に優れているものである。
本発明の離型フィルムは、FFC製造において離型フィルムに求められる性能を十分に満たす、非常に優れた性能を示すことがわかった。
1:基材フィルム
2(2a):離型層、有機成分を含有する有機珪素酸化物蒸着膜
3:補強シート
4:絶縁シート
5:複数の導体
6:フレキシブルフラットケーブル
7:導体露出窓部
8:熱圧着ロール
9:FFC連続製造装置
11:プラズマ化学気相成長装置
12:真空チャンバ
13:巻き出しロール
14:巻き取りロール
15:冷却・電極ドラム
16:原料揮発供給装置
Claims (3)
- 2枚の絶縁性フィルムの間に複数本の導体を一定間隔で配置し、両端部で一定長導体を露出したフレキシブルフラットケーブルを製造する際に絶縁性フィルムに重ねて熱圧着ロールにより挟持され、2枚の絶縁性フィルムを熱融着させる離型層を有するFFC製造用撥水性離型フィルムであって、該離型層が、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着原料とし、低酸素ガス雰囲気下、プラスチック基材上にCH 3 基及び/又はC 2 H 5 基を含む有機成分が30〜60%含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜をプラズマ化学気相成長させて成膜したものであることを特徴とするFFC製造用撥水性離型フィルム。
- 低酸素ガス雰囲気が、希ガス又は希ガス以外の不活性ガスの存在するガス雰囲気下であることを特徴とする請求項1に記載のFFC製造用撥水性離型フィルム。
- プラスチック基材が、二軸延伸ポリエステル系フィルム又は二軸延伸ポリアミド系フィルムであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のFFC製造用撥水性離型フィルム。
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