JP5332914B2 - シリコンインゴットの切断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ワイヤソーを用いたシリコンインゴットの切断方法に関し、特には、シリコンインゴットの切断時に排出された廃スラリーから砥粒やクーラントを回収し、再使用した再生スラリーを用いてシリコンインゴットを切断する方法に関する。
近年、ウエーハの大型化が望まれており、この大型化に伴い、インゴットの切断には専らワイヤソーが使用されている。
ワイヤソーは、ワイヤ(高張力鋼線)を高速走行させて、ここにスラリーを掛けながら、ワーク(例えばシリコンインゴットが挙げられる。以下、単にインゴットと言うこともある。)を押し当てて切断し、多数のウエーハを同時に切り出す装置である(特許文献1参照)。
ここで、図6に一般的なワイヤソーの一例の概要を示す。
図6に示すように、ワイヤソー101は、主に、インゴットを切断するためのワイヤ102、ワイヤ102を巻回した溝付きローラ103(ワイヤガイド)、ワイヤ102に張力を付与するための機構104、切断されるインゴットを送り出す機構105、切断時に、SiC微粉等の砥粒をクーラントに分散して混合したスラリーを供給するための機構(ノズル106)等で構成されている。
ワイヤ102は、一方のワイヤリール107から繰り出され、トラバーサ108を介してパウダクラッチ(定トルクモータ109)やダンサローラ(デッドウェイト)(不図示)等からなる張力付与機構104を経て、溝付きローラ103に入っている。ワイヤ102はこの溝付きローラ103に300〜400回程度巻回された後、もう一方の張力付与機構104’を経てワイヤリール107’に巻き取られている。
また、溝付きローラ103は鉄鋼製円筒の周囲にポリウレタン樹脂を圧入し、その表面に一定のピッチで溝を切ったローラであり、巻回されたワイヤ102が、駆動用モータ110によって予め定められた周期で往復方向に駆動できるようになっている。
なお、インゴットの切断時には、図7に示すようなインゴット送り機構105によって、インゴットは溝付きローラ103に巻回されたワイヤ102に送り出される。このインゴット送り機構105は、インゴットを送りだすためのインゴット送りテーブル111、LMガイド112、インゴットを把持するインゴットクランプ113、スライスあて板114等からなっており、コンピュータ制御でLMガイド112に沿ってインゴット送りテーブル111を駆動させることにより、予めプログラムされた送り速度で先端に固定されたインゴットを送り出すことが可能である。
そして、溝付きローラ103、巻回されたワイヤ102の近傍にはノズル106が設けられており、切断時にはこのノズル106から、溝付きローラ103、ワイヤ102にスラリーを供給できるようになっている。そして、切断後には廃スラリーとして排出される。
このようなワイヤソー101を用い、ワイヤ102にワイヤ張力付与機構104を用いて適当な張力をかけて、駆動用モータ110により、ワイヤ102を往復方向に走行させ、スラリーを供給しつつインゴットをスライスすることにより、所望のスライスウエーハを得ている。
ところで、上記のようなワイヤソー101から排出された廃スラリーに関して、コスト等の問題から、そのまま系外へと排出するのではなく、廃スラリー中から砥粒およびクーラントを回収して再使用することが望まれている。
図8に、従来における、廃スラリーから砥粒およびクーラントを回収し、再使用するための処理を施すシステム(再使用化システム)の一例を示す。
このシステムは、主に、デカンタ型遠心分離機(1次デカンタ)、1次分離液タンク、デカンタ型遠心分離機(2次デカンタ)、2次分離液タンク、新スラリータンク、調合タンク、再生スラリータンク、デイタンクからなっている。
それぞれの役割を、ワイヤソーから排出される廃スラリーの流れに沿って説明すると、まず、ワイヤソーから排出された廃スラリーは、1次デカンタで、廃スラリーを1次遠心分離して1次分離液(主にクーラントや細かな砥粒)と再使用可能な砥粒を含む固形分(1次ケーキ)に分離される。分離された1次分離液は一旦1次分離液タンクに回収され、その一部が2次デカンタへと送られる。残りの1次分離液は廃スラジとして廃棄される。
2次デカンタにおいて、送られてきた一部の1次分離液を2次遠心分離して廃スラジと再使用可能な2次分離液(主にクーラント)に分離する。分離された2次分離液は一旦2次分離液タンクに回収される。
その後、調合タンクにおいて、分離されて回収された2次分離液と1次ケーキに、新スラリータンクからの新砥粒と新クーラント、さらに比重調整のための新クーラントを加えて再生スラリーを調合する。調合した再生スラリーは、再生スラリータンクに保管された後、デイタンクを通じてワイヤソーに供給される。
このようにして廃スラリーから砥粒やクーラントを回収し、再生スラリーの一部として再使用することができる。
ここで、1次分離液に関して、上記のように全てではなく、一部のみを2次デカンタに送っていた。これは、全てを再生化しようとすると再生スラリーを用いて切断した時にワイヤソーによる切断品質が低下するためであり、その切断品質を維持するために、一定比率分を常に廃スラジとして系外に排出し、新品のスラリーを系内に供給する必要があった。この排出比率は経験的に決められており、1次分離液のおよそ70質量%に該当する。
したがって、2次デカンタへ送られる1次分離液は30質量%程度であり、さらに2次デカンタで一部が廃スラジとして分離され、系外へ排出されるので、再使用可能な2次分離液は、1次デカンタで分離された1次分離液の10〜20質量%程度しか得られなかった。
このため、再生スラリーを調合するにあたって、系外へと排出された分と同量の新たな砥粒やクーラント(特にはクーラント)を補給する必要がある。特には、クーラントの大部分を補給しなければならない。これらの砥粒やクーラントの補給がスライスウエーハの製造原価を押し上げていた。
一方、2次デカンタへ送る1次分離液の量を30質量%よりも多くすると、ワイヤソーによる切断品質が落ちてしまい、所望レベルの品質のスライスウエーハを得ることができなかった。
特開平9−262826号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、廃スラリーから砥粒およびクーラントを回収して再使用した再生スラリーを供給しながら、ワイヤソーによりシリコンインゴットを切断するにあたって、切断品質の低下を防ぐとともに、回収率を向上させることでコストの増加を抑制しながら切断することができる方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、ワイヤソーによりシリコンインゴットを切断するときに排出された廃スラリーを1次遠心分離して1次分離液と再使用可能な砥粒を含む固形分に分離し、前記1次分離液の少なくとも一部を2次遠心分離して廃スラジと再使用可能な2次分離液に分離し、該2次分離液と前記砥粒を含む固形分を回収し、新たな砥粒とクーラントを加えて再生スラリーを調合した後、該再生スラリーをワイヤソーに供給しつつシリコンインゴットを切断するシリコンインゴットの切断方法であって、前記2次遠心分離において、前記1次分離液の50質量%以上の量の2次分離液を分離して回収するとともに、前記再生スラリーを調合するときにシリコン濃度を6質量%以下にし、該再生スラリーをワイヤソーに供給することを特徴とするシリコンインゴットの切断方法を提供する。
このように、本発明のシリコンインゴットの切断方法においては、2次遠心分離において、1次分離液の50質量%以上の量の2次分離液を分離して回収するので、10〜20質量%程度しか回収できなかった従来に比べて、特には再生スラリーを調合する際の新スラリー(特には新クーラント)の量を著しく低減することができる。したがって、新スラリーに要する費用を大幅に低減することができ、スライスウエーハの製造コストを低減することができ、安価なものを提供することが可能である。
さらには、本発明は、再生スラリーを調合するときにシリコン濃度を6質量%以下にし、該再生スラリーをワイヤソーに供給するので、ワイヤソーによる切断品質の低下を招くシリコン(切断時に廃スラリーに混じるシリコン屑)が少ない再生スラリーをワイヤソーに供給することができる。そのため、切断品質の低下を防ぐことができ、高品質のスライスウエーハを提供することができる。
このように、本発明のシリコンインゴットの切断方法であれば、従来よりも多くの2次分離液(主にクーラント)を再使用することができてコストを低減することができるにも関わらず、再生スラリーを用いて切断するときの切断品質が低下するのを抑制することが可能である。
このとき、前記2次遠心分離する少なくとも一部の1次分離液を、50℃以上に昇温して2次遠心分離するのが好ましい。
従来法では、通常室温(25℃)程度で1次分離液を2次遠心分離にかけていたが、このように50℃以上に昇温すれば、1次分離液の粘度を効果的に下げることができ、そのために2次遠心分離の際に効率良くシリコン屑や砥粒をクーラントから分離することができ、再使用可能な2次分離液をより多く得ることができる。
また、前記1次分離液の70質量%以上を2次遠心分離することができる。
従来では、切断品質の維持のために、再使用化の際に、1次分離液の70質量%程度を廃スラジとして廃棄し、多くても30質量%程度しか2次遠心分離の工程にかけることができなかった。しかしながら、本発明においては、切断品質を維持しつつ、70質量%以上を2次遠心分離にかけることができ、従来よりも、より多くの2次分離液を得て再使用することができる。このため、コストをより低減することができる。
また、前記1次遠心分離および2次遠心分離のとき、デカンタ型遠心分離機を用いることができる。
このようにデカンタ型遠心分離機を用いるのであれば、廃スラリーの再使用化にあたって従来からよく用いられているものであり、新たな装置の導入のために余計なコストを費やすこともない。
以上のように、本発明のシリコンインゴットの切断方法によれば、従来に比べて、再使用可能な2次分離液をより多く回収して再使用することができ、再生クーラントを調合する際に追加する比重調整用クーラント(新クーラント)の量を低減することができ、スライスウエーハの製造コストの増加を抑制することができる。しかも、再生スラリーにおいて、切断品質を低下させる原因となるシリコンの濃度が低いので、再生スラリーを用いても切断品質が低下することなく高品質のスライスウエーハを得ることができる。
本発明の切断方法に使用することができる廃スラリーの再使用化システムの一例を示す概略図である。 本発明の切断方法に使用することができるワイヤソーの一例を示す概略図である。 本発明の切断方法に使用することができるデカンタ型遠心分離機の一例を示す概略図である。 1次分離液タンクの構成の一例を示す概略図である。 切断開始時に供給する廃スラリー中のシリコン濃度と、その切断によって得られたスライスウエーハのWarpの値との関係を示すグラフである。 従来の切断方法に使用されるワイヤソーの一例を示す概略図である。 インゴット送り機構の一例を示す概略図である。 従来の再使用化システムの一例を示す概略図である。
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来より、図8に示すように、廃スラリーから再使用可能な砥粒およびクーラントを回収し、これらに新砥粒およびクーラントを補給して再生スラリーを調合していた。
しかしながら、特にクーラントの回収にあたって、1次デカンタから回収した1次分離液について、切断品質の問題から70質量%程度を廃棄する必要があり、せいぜい30質量%程度しか2次デカンタへ送ることができないため、回収できるクーラントの量は少なく、10〜20質量%程度であった。そのため、補給する新クーラント等の量が多く、コスト面で問題があった。
本発明者らは、スライスウエーハの製造コストの低減のため、2次遠心分離において、1次分離液から回収して再使用する2次分離液の量を増やすことに着目し、同時に、再生スラリー中の切断品質を低下させる原因を具体的に解明して取り除けば、コスト面と品質面の問題を同時に解決することができると考えた。
そこで、まず、本発明者らは、再生スラリーにおける切断品質を低下させる原因について鋭意研究を行った。その結果、シリコン、すなわち、シリコンインゴットを切断した際に発生するシリコン屑が原因であることを発見した。
さらに調査を行ったところ、再生スラリー中のシリコン濃度が6質量%以下、特には4質量%以下であれば、再生スラリーを用いて切断されたスライスウエーハを一定レベルの切断品質にすることができることを見出した。この6質量%以下、特には4質量%以下のシリコン濃度を維持すれば、廃スラリーから再生スラリーを繰り返し得てシリコンインゴットの切断に用いることができる。
なお、上記のシリコン濃度の6質量%という臨界値は、以下のような調査を行って求めた。
まず、図6に示すようなワイヤソー(TOYO製)を用い、SiC微粉等からなる新砥粒(信濃電気精錬製)および、プロピレングリコール(PG)混合液からなる新クーラント(大智化学製)による新スラリー(比重1.58)をそのままワイヤソーに供給しつつ、シリコンインゴット(長さ:平均244mm、直径:300mm)を切断する。
以降は、切断時に排出された廃スラリーを供給しつつ、次のシリコンインゴットを切断する工程を繰り返し行った。
そして、以上のような調査を2回行った。
図5に、切断開始時に供給する廃スラリー中のシリコン濃度と、その切断によって得られたスライスウエーハのWarpの値との関係を示す。この関係から、一定レベルの切断品質を維持可能な廃スラリー中のシリコン濃度の臨界値を判定した。
なお、切断品質の基準として、スライスウエーハのWarpの値が11μm以下を良品と判定した。このような値であれば市場の要求に応える品質のものとすることができるからである。
図5に示すように、廃スラリーを繰り返し用いる(シリコン濃度が上昇する)ことでWarpの値が上昇し、切断品質が悪化していくのが分かる。また、Warpの値を11μm以下に抑えることができるのは、ワイヤソーに供給する廃スラリー中のシリコン濃度が6質量%以下であることが分かる。この6質量%を超えると、Warpの値は11μmを超え、8質量%程度になると13μm、さらには20μmと高い値を示してしまう。
このように、高品質のスライスウエーハを提供するには、切断時に供給するスラリー中のシリコン濃度を6質量%以下に抑える必要がある。また、特には切断時に供給するスラリー中のシリコン濃度を4質量%以下とすれば、確実にWarpを改善でき、より高品質にすることができることが分かる。
以上のように、切断品質の低下の原因が、切断時に発生して廃スラリー中に混入するシリコン屑であることが分かったため、本発明者らは廃スラリーからこのシリコン屑を効率良く取り除く方法についてさらに調査した。
その結果、例えば2次遠心分離する1次分離液の温度等の調節によって、より効率的にシリコン屑を取り除き、再使用可能なクーラントを2次分離液として回収でき、1次分離液から、その50質量%以上もの量の2次分離液を得ることができることを見出した。これは、従来の10〜20質量%程度という数値に比べて飛躍的に大きい。
このように回収する2次分離液の量を多くすることができれば、系外へ排除した分を補充するために必要な新クーラント等の量を少なくすることができる。しかも、上記のようにシリコン屑がよく取り除かれているため、再生スラリーにおいてシリコン濃度を6質量%以下、特には4質量%以下にするために別個に新クーラントを補給する必要があるとしても、その量も少なくすることができる。場合によっては、系外へ排除した分の量を補充するだけで、シリコン濃度を6質量%以下にすることも十分可能である。
本発明者らは、以上のことを見出して本発明を完成させた。
以下、ワイヤソーを用いた本発明のシリコンインゴットの切断方法について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、図1に、本発明のシリコンインゴットの切断方法に用いることができ、ワイヤソーでシリコンインゴットを切断したときに排出された廃スラリーから砥粒およびクーラントを回収し、再使用するための処理を施すシステム(再使用化システム)の一例の概略を示す。
図1に示す再使用化システム20は、主に、シリコンインゴットを切断するためのワイヤソー1、該ワイヤソー1から排出される廃スラリーを1次遠心分離して1次分離液と再使用可能な砥粒を含む固形分(1次ケーキとも言う。主に砥粒)に分離するためのデカンタ型遠心分離機(1次デカンタ21)、分離された1次分離液を回収する1次分離液タンク22、1次分離液の一部を2次遠心分離して廃スラジと再使用可能な2次分離液(主にクーラント)に分離するためのデカンタ型遠心分離機(2次デカンタ23)、2次分離液を回収するための2次分離液タンク24、再生スラリーを調合するときに加える新砥粒および新クーラントを有する新スラリータンク25、分離されて回収された2次分離液と1次ケーキ、および新スラリータンク25からの新砥粒および新クーラント、比重調整のための新クーラントを調合して再生スラリーを調合するための調合タンク26、調合された再生スラリーを保管するための再生スラリータンク27、そして、ワイヤソー1に再生スラリーを供給するデイタンク28からなっている。
なお、廃スラリー等を遠心分離する装置としては特に限定されないが、特には、上記のようにデカンタ型遠心分離機を用いることができる。デカンタ型遠心分離機であれば、従来より廃スラリーの再生化に用いられているため、新たな設備に要する費用を軽減することができ、また、適切に廃スラリー中のシリコン屑を分離することができる。
次に、図2にワイヤソー1の一例を示す。
図2に示すようにワイヤソー1は、主に、インゴットを切断するためのワイヤ2、溝付きローラ3、ワイヤ張力付与機構4、インゴット送り機構5、スラリー供給機構(ノズル6)で構成されている。
これらのワイヤ2、溝付きローラ3、ワイヤ張力付与機構4、インゴット送り機構5、ノズル6は、例えば、図6の従来の切断方法に使用されるワイヤソー101と同様のものとすることができる。
ただし、ノズル6は、廃スラリーから回収した砥粒およびクーラントを再使用した再生スラリーを供給できるように、上記図1の再使用化システムのデイタンク28に接続されている。
ワイヤ2の種類や太さ、溝付きローラ3の溝ピッチ、さらには他の機構における構成等は特に限定されるものではなく、従来法に従い、所望の切断条件となるようにその都度決定することができる。
例えば、ワイヤ2は、幅0.13mm〜0.18mm程度の特殊ピアノ線からなるものとし、(所望のウエーハ厚さ+切り代)の溝ピッチを有する溝付きローラ3とすることができる。
また、図3にデカンタ型遠心分離機(1次デカンタ21および2次デカンタ23)の一例を示す。
このデカンタ型遠心分離機は、高速回転可能で円錐部を有する外筒30を備え、その内部に遠心分離するスラリーを供給するための内筒31が設けられている。また、内筒31には螺旋状の羽根32が設けられており、内筒31と共に回転可能となっている。さらに、外筒30の円錐部側の一端には、遠心分離された固形分を排出するための固形分排出口33が設けられており、反対側の他端には遠心分離された分離液を排出するための分離液排出口34が設けられている。なお、固形分排出口33と分離液排出口34の高さ位置の差をダム高さという。
デカンタ型遠心分離機における廃スラリーの分離の仕組みは以下の通りである。
内筒31を通して外筒30内に供給された廃スラリーは、外筒30が高速回転することによってより重い固形分と分離液に分離される。固形分は外筒30の内壁に沈殿し、回転する螺旋状の羽根32によって固形分排出口33の側へ運ばれ、固形分排出口33から排出される(1次デカンタ21では1次ケーキとして、2次デカンタ23では廃スラジとして排出される)。一方、分離液は分離液排出口34から排出される(1次デカンタ21では1次分離液として、2次デカンタ23では2次分離液として排出される)。
また、図4に1次分離液タンク22の構成の一例を示す。
1次分離液タンク22の数は特に限定されず、図4に示すように、例えば2つのタンク22a、22bからなるものとすることができる。すなわち、1次デカンタ21により分離された1次分離液を回収するタンク22aと、実際に2次デカンタ23へ送られる一部の1次分離液を保管するタンク22bである。なお、2次デカンタへ送らない残りの1次分離液は廃スラジとして系外へ排出することができる。
これらのタンク22a、22bにはヒータ35が取り付けられており、1次デカンタ21で分離され、2次デカンタ23へ送られる1次分離液を所望の温度に調節することができる。ヒータ35は特に限定されず、例えば抵抗加熱によるもの等が挙げられ、配置する数等も限定されない。
また、新スラリータンク25、調合タンク26、再生スラリータンク27、デイタンク28等は、例えば従来のものと同様のものとすることができる。
次に、図1に示す再使用化システム20を用い、本発明のシリコンインゴットの切断方法を実施する手順について説明する。
まず、ワイヤソー1に新砥粒および新クーラントからなる新スラリーを供給しつつ、シリコンインゴットを切断する。この切断手順は、例えば従来と同様の方法で行うことができる。
また、砥粒やクーラントは特に限定されないが、例えば、従来のように、砥粒としてはSiC微粉等を用いることができ、クーラントとしてはプロピレングリコール(PG)混合液を用いることができる。また、砥粒とクーラントの混合割合も限定されず、例えば、1対1の割合とすることができる。これらは目的に応じて適宜決定することができる。
切断時に排出された廃スラリーは、1次デカンタ21へ送られて1次遠心分離される。この1次遠心分離によって、主に砥粒を含む固形分(1次ケーキ)と1次分離液に分離する。
このとき、1次デカンタ21への廃スラリーの供給流量や1次デカンタ21におけるダム高さ、回転数(廃スラリーにかける遠心力)等、適宜設定することができる。廃スラリー中において、比較的比重が大きい砥粒(SiC)が多く含まれる1次ケーキを固形分排出口33から効率良く排出できるようにその都度適切に決定すれば良い。
ここで分離した1次ケーキは調合タンク26に送られる。一方、1次分離液はタンク22aに送られる。
次に、タンク22a中の1次分離液のうち、50質量%以上(あるいは全て)を、タンク22bを通して2次デカンタ23へ送り2次遠心分離する。このとき、2次デカンタ23に送らない残りの1次分離液は廃スラジとして系外に排出する。
ここで、従来法では、切断品質の維持のため、経験的に約70質量%もの1次分離液を系外に排出していた。しかしながら、上記のように、本発明者らの調査によって、切断品質を低下させる原因がシリコン屑であることが分かった。そこで、2次デカンタ23でシリコンを効率良く分離すれば、多くの2次分離液を再使用することができることを想到したので、本発明においては、例えば、系外へ排出するのは30質量%以下に抑え、70質量%以上もの1次分離液を2次デカンタ23に送ることが可能である。
切断品質の低下の原因が不明であった従来では、単にコスト削減のために2次デカンタ23へ1次分離液を単に多く送ることを試みても、2次分離液を多く得ることができるものの、シリコン濃度が高く、切断品質が悪化してしまう。
あるいは、2次分離液を多く得たものの、切断品質の維持のために、再生スラリー中における2次分離液の割合が低くなるように調節する必要が生じ、すなわち新クーラント等を大量に補給する必要があり、結局コストが高くなってしまう。このため、実質的には、大量の1次分離液を2次遠心分離にかけることはできず、30質量%程度以下であり、結局のところ、せいぜい1次分離液の10〜20質量%程度の2次分離液しか得られなかった。
このような従来法における問題点を改善するように、2次デカンタ23において、シリコン屑等の固形分を廃スラジとして効率良く分離する。
この2次デカンタにおける2次遠心分離の条件は特に限定されないが、効率良くシリコンを分離できるように、例えば、1次分離液の温度をヒータ35を用いて50℃以上に昇温することが挙げられる。
通常では室温(25℃)程度で2次遠心分離にかけられるが、50℃以上に昇温することによって、1次分離液の粘度を下げることができ、その結果、2次遠心分離時の固形分の沈降速度が増し、2次デカンタ23でのシリコン屑を含む固形分(廃スラジ)の分離・除去量を向上させることができる。
例えば、25℃のときと比較して、30℃、40℃、50℃、60℃では、1次分離液の粘度がそれぞれ、3/4、1/2、1/3、1/4程度になり、シリコン屑等の固形分の沈降速度や除去量をそれぞれ、4/3倍、2倍、3倍、4倍とすることができる。
所望とする除去率や2次デカンタ23等の仕様に合わせて適切な温度に設定することができる。ただし、2次デカンタ23へ送る1次分離液の総量を、従来に比べて例えば2.3倍以上(70質量%/30質量%)とするのであれば、その分、除去すべきシリコンの総量も増すので、従来に比べて3倍以上の量を除去することが可能な50℃以上がより好ましい。
また、2次デカンタ23への1次分離液の供給流量や2次デカンタ23におけるダム高さ等を調節することによっても、シリコンの除去率を高めることができる。例えば、供給流量を小さくしたり、ダム高さを低くすることで、2次デカンタ23内での1次分離液の2次遠心分離にかける時間を相対的に長くし、より効率的にシリコン等の固形分を分離することができる。
1次分離液の温度調節に加えて、これらの2次デカンタ23での条件の調整を同時に行うことによって、より一層効率的な分離が可能となる。
以上のようにして2次遠心分離を行うことにより、1次分離液から分離した固形分(シリコン屑を多く含む)である廃スラジを系外に排出し、2次分離液(主にクーラント)を2次分離液タンク24に送る。そして、調合タンク26において、1次ケーキ、2次分離液、また新スラリータンク25からの新クーラントおよび新砥粒、さらには比重調整のためのクーラントを合わせることによって再生クーラントを調合する。
上記のように、本発明においては、従来に比べて著しく多くの1次分離液を2次遠心分離にかけることができ(特には70質量%以上)、したがって、1次分離液の50質量%以上の量の2次分離液を分離して回収することが可能である(従来では10〜20質量%)。したがって、特には、系外へ排出した分を補給するための新クーラントの量を従来に比べて抑えることができ、コストを大幅に低減することができる。
しかも、切断品質を低下させるシリコン濃度の調整の点においても、2次遠心分離でそのシリコンを効率的に分離しており、そのため2次分離液におけるシリコン濃度は抑えられているので、最終的にシリコン濃度を6質量%以下、特には4質量%以下に下げるために要する新クーラントの量を低減することができる。2次デカンタ23でのシリコンの除去率の効率化により、系外へ排出した分のために補給する新クーラントの量だけで、シリコン濃度調整のために別個に新クーラントを補給することなく、再生クーラントにおけるシリコン濃度を6質量%以下、特には4質量%以下にすることもできる。
なお、再生クーラントにおけるシリコン濃度に関して、4質量%以下であれば、図5に示すように、さらにWarpの値が小さい高品質のスライスウエーハを得ることができる。所望のスライスウエーハの品質条件に応じて、補給する新クーラント等に要するコストを考慮した上で、その都度、シリコン濃度が6質量%以下の適切な値となるように再生スラリーを調合することができる。
なお、再生スラリーにおけるシリコン濃度が6質量%以下、特には4質量%以下になっていることを確認するため、ワイヤソー1に供給される再生スラリーを定期的にサンプリングを行う。その再生スラリー中に分散されたシリコンを抽出し、質量を測定してシリコン濃度を算出する。
そして、調合した再生スラリーを再生スラリータンク27に送り、デイタンク28を通してワイヤソー1に再生スラリーを供給し、シリコンインゴットを切断する。ここで得られた廃スラリーを、再度、再使用化システム20にかけ、再使用して再生スラリーを調合し、ワイヤソー1に供給し、次々にシリコンインゴットを切断することができる。
このとき、上記のように、再生スラリー中のシリコン濃度は6質量%以下、特には4質量%以下であるので、切断品質が低減することなく、一定レベルの品質(Warpの値が11μm以下)を維持したスライスウエーハを得ることができる。しかも製造コストを従来に比べて大幅に低減することができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
図1に示す再使用化システムを用いて、本発明のシリコンインゴットの切断方法を実施した。すなわち、まず、ワイヤソー1(TOYO製)を用い、SiC微粉等からなる新砥粒(信濃電気精錬製)および、プロピレングリコール(PG)混合液からなる新クーラント(大智化学製)による新スラリー(比重1.58)を供給しつつ、シリコンインゴット(長さ:平均244mm、直径:300mm)を切断する。
次に、切断時に排出された廃スラリーを1次デカンタ21により1次遠心分離し、得られた1次分離液の70質量%の量を2次デカンタ23により2次遠心分離した。
1次デカンタおよび2次デカンタとしては、共に、石川島汎用機サービス株式会社製のHS−205Lを用いた。
1次遠心分離の条件としては、遠心力:400G、ダム高さ:15mm、廃スラリーの供給流量:2.1L/min、供給温度:25℃、
2次遠心分離の条件としては、遠心力:3000G、ダム高さ:2mm、廃スラリーの供給流量:1.2L/min、供給温度:50℃とした。
得られた2次分離液と1次遠心分離により得られた1次ケーキを回収し、調合タンク26で新砥粒および新クーラントと合わせて再生スラリーを調合し、再生スラリーを得た。
その後、再生スラリーをワイヤソー1に供給しつつ、同様のシリコンインゴットの切断を行った。
各工程におけるクーラント、砥粒、シリコン、鉄の割合の変移を表1に示す。ここでは、廃スラリーの合計を100質量%として、各要素の割合を示している。なお、このように廃スラリーの合計を基準としているため、再生スラリーの合計が100質量%からずれている。
Figure 0005332914
表1に示すように、1次分離液に対して、およそ52質量%(2次分離液の合計(21.2質量%)/1次分離液の合計(40.6質量%)×100)の2次分離液を回収することができた。従来法では10〜20質量%程度しか回収できないことを考慮すると、格段に2次分離液の回収率が向上していることが分かる。したがって、本発明であれば、新クーラントの補給量を十分に低減することができることが分かる。
また、2次遠心分離で効率良くシリコンを除去し、2次分離液中のシリコン濃度はおよそ7質量%程度(2次分離液のSi(1.5質量%)/2次分離液の合計(21.2質量%)×100)であった。したがって、新クーラントの補給に関しては、系外へ排出した分を補給するだけで済み、再生スラリー中のシリコン濃度はおよそ4.4質量%(再生スラリーのSi(4.3質量%)/再生スラリーの合計(98.5質量%)×100)となり、十分にシリコン濃度を6質量%以下にすることができた。しかも、元の廃スラリー中のシリコン濃度(5.8質量%)よりも低く抑えることができた。
なお、再生スラリーを用いて切断したスライスウエーハのWarpの値は10μmであり高品質であった。
また、2次遠心分離の条件において供給温度を55℃とし、それ以外の条件は実施例と同様にして実験を行ったところ、1次分離液に対して、およそ65質量%の2次分離液を回収することができた。再生スラリー中のシリコン濃度は4.0質量%となり、スライスウエーハのWarpの値は9μmとなり、さらに高品質のウエーハを得ることができた。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…ワイヤソー、 2…ワイヤ、 3…溝付きローラ、
4…ワイヤ張力付与機構、 5…インゴット送り機構、 6…ノズル、
20…再使用化システム、 21…1次デカンタ、 22…1次分離液タンク、
22a、22b…タンク、
23…2次デカンタ、 24…2次分離液タンク、 25…新スラリータンク、
26…調合タンク、 27…再生スラリータンク、 28…デイタンク、
30…外筒、 31…内筒、 32…螺旋状の羽根、
33…固形分排出口、 34…分離液排出口、 35…ヒータ。

Claims (3)

  1. ワイヤソーによりシリコンインゴットを切断するときに排出された廃スラリーを1次遠心分離して1次分離液と再使用可能な砥粒を含む固形分に分離し、前記1次分離液の少なくとも一部を2次遠心分離して廃スラジと再使用可能な2次分離液に分離し、該2次分離液と前記砥粒を含む固形分を回収し、新たな砥粒とクーラントを加えて再生スラリーを調合した後、該再生スラリーをワイヤソーに供給しつつシリコンインゴットを切断するシリコンインゴットの切断方法であって、
    前記2次遠心分離において、前記2次遠心分離する少なくとも一部の1次分離液を、50℃以上に昇温して2次遠心分離し、かつ、前記1次分離液の50質量%以上の量の2次分離液を分離して回収するとともに、
    前記再生スラリーを調合するときにシリコン濃度を6質量%以下にし、かつ、該再生スラリーを定期的にサンプリングしてシリコン濃度を確認し、
    前記調合した再生スラリーをワイヤソーに供給しつつシリコンインゴットを切断してWarpの値が11μm以下のスライスウエーハを製造することを特徴とするシリコンインゴットの切断方法。
  2. 前記1次分離液の70質量%以上を2次遠心分離することを特徴とする請求項1に記載のシリコンインゴットの切断方法。
  3. 前記1次遠心分離および2次遠心分離のとき、デカンタ型遠心分離機を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコンインゴットの切断方法。
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