JP2010221337A - 使用済み研削液の再利用方法 - Google Patents

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慎一 小坂
Yutaka Makino
豊 牧野
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Abstract

【課題】加工機から排出された使用済み研削液から微細な切り粉やワイヤー磨耗粉等をほぼ完全に除去し、分散液を高い回収率で回収して再利用することができる使用済み研削液の再利用方法を提供する。
【解決手段】砥粒と分散液と切り粉とを含む使用済み研削液を、第1の分離手段3で遠心分離して砥粒を回収し、次に第2の分離手段4でより高速で遠心分離して切り粉を分離し、更に第3の分離手段5で膜分離して分散液を回収し、回収された分散液を第1の分離手段3で回収された砥粒と調合して研削液として再利用する。第3の分離手段5としては膜孔径が0.01〜1μmのセラミック膜を使用することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、研削加工機から排出される使用済み研削液から、砥粒と分散液とを回収して再利用する技術に関するものである。
各種の金属体を切断するワイヤソー等の加工機においては、砥粒をオイル系の分散液中に分散させた研削液が大量に使用されている。砥粒としては粒径が数十μmのSiC砥粒が広く用いられており、分散液としては例えばポリエチレングリコールを主体とするクーラントが用いられている。使用済み研削液をそのまま外部に排出することは経済的に好ましくなく、また環境保全の点からも好ましくない。そこで従来からその再利用方法が開発されている。
使用済み研削液中には、砥粒と分散液のほかに多量の切り粉が混入している。またワイヤソーを用いた場合にはワイヤー磨耗粉も混入している。このため使用済み研削液の再利用を行うためには、切り粉やワイヤー磨耗粉を分離し、砥粒と分散液とを回収する必要がある。
そこで特許文献1には、ワイヤソーから排出された使用済み研削液を遠心分離機で処理して砥粒を回収し、その分離液を不織布等からなるフィルターで処理して分散液を回収する方法が提案されている。
また特許文献2には、ワイヤソーから排出された使用済み研削液を第1の分離手段で処理して砥粒を回収し、その分離液を第2の分離手段で処理して分散液を回収する方法が提案されている。なお分離手段としては、遠心分離機や液体サイクロンが使用されている。
特開平9−168971号公報 特開平11−33913号公報
しかし上記した特許文献1の方法では、不織布等からなるフィルターを使用している。このために微細な切り粉やワイヤー磨耗粉などを十分に除去することができず、これらが回収された分散液中に混入するため、分散液の回収率が低くなるという問題があった。
また上記した特許文献2の方法では、第2の分離手段として遠心分離機や液体サイクロンを使用している。このため特許文献1と同様に微細な切り粉やワイヤー磨耗粉などを十分に除去することができず、やはり分散液の回収率が低くなるという問題があった。なおこれらの特許文献中には明記されていないが、従来法による分散液の回収率は50〜60%程度と想定される。
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、使用済み研削液から微細な切り粉やワイヤー磨耗粉等をほぼ完全に除去し、分散液を高い回収率で回収して再利用することができる使用済み研削液の再利用方法を提供することである。
上記の課題を解決するためになされた本発明は、砥粒と分散液と切り粉とを含む使用済み研削液を、第1の分離手段で遠心分離して砥粒を回収し、次に第2の分離手段でより高速で遠心分離して切り粉を分離し、更に第3の分離手段で膜分離して分散液を回収し、回収された分散液を第1の分離手段で回収された砥粒と調合して研削液として再利用することを特徴とするものである。
なお本発明においては、第3の分離手段として、膜孔径が0.01〜1μmの分離膜を使用することが好ましい。また第3の分離手段として、セラミック膜を使用することが好ましい。さらに膜分離を30〜50℃に加熱された状態で行うことが好ましく、膜分離液を20〜25℃に冷却したうえで砥粒と調合することが好ましい。
本発明の使用済み研削液の再利用方法においては、使用済み研削液を、第1の分離手段で遠心分離して砥粒を回収し、次に第2の分離手段でより高速で遠心分離して切り粉を分離し、更に第3の分離手段で膜分離する。このため、遠心分離によっては分離することができなかった粒径が1μm程度の微細な切り粉やワイヤー磨耗粉等を、分離膜によって完全に分離することができる。従って本発明によれば使用済み研削液中から分散液を、95%以上の回収率で回収することが可能となる。
特に第3の分離手段として膜孔径が0.01〜1μmの分離膜を使用することにより、粒径が1μm程度の微細な切り粉やワイヤー磨耗粉等を、必要な処理流量を確保しながら完全分離することができる。
また第3の分離手段として膜強度の高いセラミック膜を使用することにより、切り粉やワイヤー磨耗粉による膜破壊が生じるおそれがなく、安定した運転が可能である。
また膜分離を30〜50℃に加熱された状態で行うことにより、使用済み研削液の粘度を下げることができるので、実用的な膜分離速度を確保することができる。
さらに膜分離を加熱された状態で行った後は、膜分離液を20〜25℃に冷却することにより、研削液本来の機能である研磨部の冷却効果を生じさせることができる。なお砥粒と混合した後に冷却すると冷却器が砥粒によって磨耗するため、冷却したうえで砥粒と調合することが好ましい。
本発明の実施形態を説明するフローシートである。 第3の分離手段である分離膜の説明図である。
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は本発明の実施形態を説明するフローシートであり、1は研削液を用いて金属その他の物品を加工する加工機である。加工機1の種類および加工対象物は特に限定されるものではないが、代表的には金属切断用のワイヤソーである。
研削液はSiC砥粒等の砥粒をオイル系の分散液中に分散させたものである。砥粒の粒径は10〜50μmである。分散液は水溶性オイルまたは鉱物油系オイルであり、例えば、ポリエチレングリコールを主体としたクーラントオイルである。しかし砥粒の種類や分散液の種類は目的に応じて適宜変更することができることはいうまでもない。このような研削液を用いて研削を行うと微細な切り粉が発生する。またワイヤソーを用いた場合にはワイヤー磨耗粉も発生する。これらは全て研削液中に取り込まれるので、加工機1から排出された使用済み研削液は、砥粒と分散液と切り粉とを含み、更にワイヤー磨耗粉を含むことがある。
砥粒のサイズは前記のとおり10〜50μmであるが、切り粉のサイズは通常は1〜10μmである。またワイヤー磨耗粉は0.1〜1μmである。このように使用済み研削液中に含まれる固形分はサイズが異なりまた比重も異なるので、使用済み研削液槽2に貯留したうえ、3段階の分離手段を用いて分離回収を行う。
第1の分離手段3は1次デカンターと呼ばれる周知の遠心分離機である。遠心分離機は遠心力Gの大きさによって分離される粒径が異なり、ここでは200〜800Gで遠心分離を行うことによって、粒径の大きい砥粒を先ず分離して回収する。
砥粒が分離された使用済み研削液は、次に第2の分離手段4である2次デカンターと呼ばれる遠心分離機で処理される。この遠心分離機は先の1次デカンターよりも高速運転され、1000〜3000Gで遠心分離を行って切り粉を分離回収する。なおワイヤー磨耗粉のうちサイズの大きいものも回収される。しかし数μm以下の切り粉やワイヤー磨耗粉の大部分は分離されず、液中に残存したままである。
従来はこの段階で終わっていたことが多いのであるが、本発明ではさらに第3の分離手段5である分離膜を用いて膜分離を行い、第2の分離手段4を通過した使用済み研削液から切り粉やワイヤー磨耗粉をほぼ完全に除去する。実用的な分離膜には有機膜とセラミック膜とがあるが、有機膜は膜強度が低いため切り粉やワイヤー磨耗粉によって膜破壊が生じるおそれがある。このためセラミック製の分離膜を使用することが好ましい。
また、分離膜としてその膜孔径が0.01〜1μmのものを使用することが好ましい。膜孔径が0.01μmよりも小さいと膜面の透過流束が低く、実用的な処理液流量を得ることが困難であり、逆に膜孔径が1μmよりも大きいと切り粉やワイヤー磨耗粉を完全に除去しきれないためである。
図2は第3の分離手段5の具体的な構成を示す説明図であり、11は内部にセラミック製の分離膜を収納した膜モジュールであり、処理すべき液量に対応させて多数本が並列に設置されている。各膜モジュール11の内部にはモノリス型のセラミック膜12が複数本ずつ収納されている。このモノリス型のセラミック膜12は、多孔質の円柱状セラミック基材に液流路となる多数の貫通孔をレンコンのように形成し、各貫通孔の内周面に膜孔径が0.01〜1μmのセラミック製分離膜を形成した構造のものである。
第2の分離手段4を通過した使用済み研削液は昇圧ポンプ13により昇圧されたうえ循環ポンプ14を経由して、膜モジュール11の下端から供給され、クロスフローろ過が行われる。すなわち、使用済み研削液はモノリス型のセラミック膜12の貫通孔を流れる間に膜ろ過され、切り粉やワイヤー磨耗粉は膜表面に堆積するが、分離液は膜面を透過し処理液タンク15に取り出される。また貫通孔の上端に達した使用済み研削液は、循環用配管16を経由して循環ポンプ14の入口側に返送される。この間に使用済み研削液の供給量とろ過された処理液量とをバランスさせることが好ましい。
このような膜ろ過が進行すると次第に膜面への堆積物量が増加し、膜差圧が上昇する。そこで定期的にあるいは膜差圧が所定値に達したときに逆洗ポンプ17によって処理液タンク15内の処理液を膜面に対して逆方向に流し、逆洗を行う。逆洗液は切り粉やワイヤー磨耗粉を高濃度に含有するものであり、ドレン配管18から外部に排出される。
上記のような第3の分離手段5を用いれば、第2の分離手段4を通過した使用済み研削液に含まれる切り粉やワイヤー磨耗粉を完全に分離することができる。処理液として取り出された分散液は図1に示される研削液調合槽6において、第1の分離手段3で回収された砥粒と調合され、再び加工機1に送られて研削液として再利用される。なお、研削液調合槽6に新分散液や新砥粒も投入される。
なおこの実施形態では、第3の分離手段5の直前に加熱手段7が設置され、また第3の分離手段5の直後に冷却手段8が設置されている。これらはいずれも熱交換器とすることができる。加熱手段7は第2の分離手段4を通過した使用済み研削液を30〜50℃に加熱し、使用済み研削液の粘性を低下させることによって膜分離速度を向上させ、実用的な処理液流量を確保する役割を果たすものである。加熱温度がこの範囲よりも低いと粘性低下が不十分であり、加熱温度をこの範囲よりも高くすると加熱コストが嵩むこととなる。
また冷却手段8は、加熱された研削液をクーラントとして使用するに適した20〜25℃に冷却するためのものである。この冷却は砥粒との調合後に行うことも可能であるが、砥粒を含有する液を冷却手段8の内部に流すと砥粒による磨耗が発生するため、研削液調合槽6の手前に冷却手段8を設置しておくことが好ましい。なお、好ましい冷却温度を20〜25℃としたのは、この温度範囲よりも低温に冷却することは冷却コストが嵩み、この温度範囲よりも高温では研削液として使用するに適さないためである。
以上に説明した本発明によれば、使用済み研削液から微細な切り粉やワイヤー磨耗粉等をほぼ完全に除去し、分散液を回収して再利用することができる。実験によれば、第2の分離手段4を通過した段階における使用済み研削液の固形分濃度は5.2% であり、分散液の回収率は55%(45%は廃棄)であったが、第3の分離手段によって得られた処理液の固形分濃度は1.0%以下であり、分散液の回収率は90%に達した。このため切り粉やワイヤー磨耗粉とともに廃棄される分散液量は10% であり、廃棄分を従来の1/5 にまで低減させることが可能となった。
また、従来は新規クーラントとして45%量を補充していたが、本発明では第3の分離手段5を追加することにより、10%量の補充で十分となり、新規クーラントの補充量を従来の1/5にまで低減することが可能となった。これにより加工コストを大きく低減することが可能となった。
さらに調合研削液の固形分濃度は、従来は3%程度であったのが、本発明では第3の分離手段5を追加することにより、1.0%以下に低減できた。このため研削効率が改善し、且つ安定したことによって、被研削物の加工不良(欠け、たわみ)が低減でき、加工品質を向上させることができた。
1 加工機
2 使用済み研削液槽
3 第1の分離手段
4 第2の分離手段
5 第3の分離手段
6 研削液調合槽
7 加熱手段
8 冷却手段
11 膜モジュール
12 セラミック膜
13 昇圧ポンプ
14 循環ポンプ
15 処理液タンク
16 循環用配管
17 逆洗ポンプ
18 ドレン配管

Claims (5)

  1. 砥粒と分散液と切り粉とを含む使用済み研削液を、第1の分離手段で遠心分離して砥粒を回収し、次に第2の分離手段でより高速で遠心分離して切り粉を分離し、更に第3の分離手段で膜分離して分散液を回収し、回収された分散液を第1の分離手段で回収された砥粒と調合して研削液として再利用することを特徴とする使用済み研削液の再利用方法。
  2. 第3の分離手段として、膜孔径が0.01〜1μmの分離膜を使用することを特徴とする請求項1記載の使用済み研削液の再利用方法。
  3. 第3の分離手段として、セラミック膜を使用することを特徴とする請求項1記載の使用済み研削液の再利用方法。
  4. 膜分離を30〜50℃に加熱された状態で行うことを特徴とする請求項1記載の使用済み研削液の再利用方法。
  5. 膜分離液を20〜25℃に冷却したうえで砥粒と調合することを特徴とする請求項4記載の使用済み研削液の再利用方法。
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