以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本実施形態による排ガス浄化装置1を、内燃機関3とともに示している。この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、例えば車両(図示せず)に搭載された4気筒のディーゼルエンジンである。
エンジン3の各気筒3aには、吸気管4および排気管5が接続されるとともに、燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)6が、燃焼室3bに臨むように取り付けられている。このインジェクタ6は、燃焼室3bの天壁に配置されており、燃料タンク(図示せず)から供給された燃料を燃焼室3bに噴射する。インジェクタ6から噴射される燃料噴射量QINJは、後述するECU2によって設定されるとともに、ECU2からの制御信号によりインジェクタ6の開弁時間を変化させることによって、制御される。
エンジン3のクランクシャフト3cには、クランク角センサ10が設けられている。このクランク角センサ10は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、クランクシャフト3cの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、各気筒3aにおいてピストン3bが吸気行程開始時のTDC位置よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、本実施形態のようにエンジン3が4気筒の場合には、クランク角180゜ごとに出力される。
吸気管4には、エアフローセンサ11が設けられている。エアフローセンサ11は、吸気管4を介して気筒3aに吸入される吸入空気量GAIRを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
排気管5には、NOx触媒7が設けられている。このNOx触媒7は、酸化雰囲気の排ガスが流入したときに、排ガス中のNOxを捕捉するとともに、排ガス中の酸素を貯蔵する酸素貯蔵能力を有している。また、NOx触媒7は、還元雰囲気の排ガスが流入したときに、貯蔵した酸素を放出するとともに、捕捉したNOxを還元状態で放出することによって、NOxを還元浄化する。
また、排気管5には、NOx触媒7の上流側および下流側に、上流側空燃比センサ12および下流側空燃比センサ13がそれぞれ設けられている。これらの空燃比センサ12、13は、ジルコニアなどで構成されており、エンジン3に供給される混合気の空燃比がリッチ領域からリーン領域までの広範囲な領域において、排ガスの酸素濃度をリニアに検出する。これらの検出信号はECU2に出力される。
ECU2は、上流側空燃比センサ12および下流側空燃比センサ13の検出信号に基づいて、NOx触媒7の上流側における排ガスの空燃比(以下「上流側排ガス空燃比」という)AFEX1、およびNOx触媒7の下流側における排ガスの空燃比(以下「下流側排ガス空燃比」という)AFEX2を、それぞれ算出する。ここで、「排ガスの空燃比」とは、排ガス中の空気と可燃性気体の重量比をいう。このため、排ガスの空燃比は、排ガスが酸化雰囲気のときに大きくなり、還元雰囲気のときに小さくなる。
また、排気管5には、NOx触媒7の上流側とNOx触媒7のすぐ下流側に、上流側排ガス温度センサ14および下流側排ガス温度センサ15がそれぞれ設けられている。上流側排ガス温度センサ14は、NOx触媒7に流入する排ガスの温度TEX1を検出し、下流側排ガス温度センサ15は、NOx触媒7から流出する排ガスの温度TEX2を検出する。それらの検出信号はECU2に出力される。ECU2は、これらの排ガス温度TEX1、TEX2に基づき、NOx触媒7の温度(以下「触媒温度」という)TCATを算出する。
また、ECU2には、アクセル開度センサ16から、エンジン3を搭載した車両のアクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が出力される。
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェースなどから成るマイクロコンピュータ(いずれも図示せず)で構成されている。前述した各種のセンサ10〜16からの検出信号はそれぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。ECU2は、これらの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じて、各種の制御を実行する。
この制御には、インジェクタ6の燃料噴射量QINJの制御を含むエンジン制御や、NOx触媒7に捕捉されたNOxを放出させることにより、NOx触媒7のNOx捕捉性能を回復させるための再生制御、NOx触媒7に捕捉されたSOxを脱離することにより、NOx触媒7のNOx捕捉性能を回復させるためのサルファパージ制御などが含まれる。
なお、本実施形態では、ECU2が、サルファパージ制御手段、運転状態検出手段、SOx脱離速度算出手段、SOx脱離速度補正手段、SOx脱離量算出手段、設定パラメータ取得手段、所定期間設定手段、およびサルファパージ終了決定手段に相当する。
図2は、上述したサルファパージ制御処理のメインフローを示す。本処理は、所定の周期ΔTで実行される。本処理では、まずステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、NOx触媒7に捕捉されているSOx捕捉量QSOxを算出する。その算出処理については後述する。
次に、サルファパージフラグF_SOxPRGが「1」であるか否かを判別する(ステップ2)。この答がNOで、サルファパージ運転中でないときには、ステップ1で算出したSOx捕捉量QSOxが、サルファパージ運転の開始判定用の所定のしきい値QREFSよりも大きいか否かを判別する(ステップ3)。この答がNOで、QSOx≦QREFSのときには、そのまま本処理を終了する。
一方、ステップ3の答がYESで、SOx捕捉量QSOxがしきい値QREFSを上回ったときには、サルファパージフラグF_SOxPRGを「1」にセットし(ステップ4)、サルファパージ運転を開始する。このサルファパージ運転は、エンジン3の排気行程の初期にインジェクタ6から燃料を噴射するポスト噴射を行うことで、未燃燃料を還元剤として排気管5に排出させ、排ガスを還元雰囲気に制御することによって、行われる。このサルファパージ運転により、高温状態のNOx触媒7に排ガス中の還元剤が供給されることによって、NOx触媒7に捕捉されていたSOxが還元され、NOx触媒7から脱離される。
一方、前記ステップ2の答がYESで、サルファパージ運転中のときには、SOx捕捉量QSOxが、サルファパージ運転の終了判定用の所定のしきい値QREFEよりも小さいか否かを判別する(ステップ5)。この答がNOで、QSOx≧QREFEのときには、そのまま本処理を終了し、サルファパージ運転を継続する。
一方、ステップ5の答がYESで、SOx捕捉量QSOxがしきい値QREFEを下回ったときには、サルファパージフラグF_SOxPRGを「0」にセットする(ステップ6)ことによって、サルファパージ運転を終了し、本処理を終了する。
図3は、図2のステップ1で実行されるNOx触媒7のSOx捕捉量QSOxの算出サブルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ11において、今回の処理サイクル相当分のNOx触媒7へのSOx流入量dQSOxINを算出する。このSOx流入量dQSOxINの算出は、例えば、排ガス流量QEXと、上流側空燃比センサ12で検出された上流側排ガス空燃比AFEX1に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、行われる。なお、排ガス流量QEXは、吸入空気量GAIRおよびエンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。
次に、今回の処理サイクル相当分のNOx触媒7からのSOx脱離量dQDeSOxを算出する(ステップ12)。その算出処理については後述する。次に、算出したSOx流入量dQSOxINとSOx脱離量dQDeSOxとの差を、今回の処理サイクル相当分のSOx捕捉量dQSOxとして算出する(ステップ13)。そして、算出したSOx捕捉量dQSOxを前回までに算出されたSOx捕捉量QSOxに加算することによって、今回のSOx捕捉量QSOxを算出し(ステップ14)、本処理を終了する。
図4は、図3のステップ12で実行されるSOx脱離量dQDeSOxの算出サブルーチンを示す。本処理では、まずステップ21において、サルファパージフラグF_SOxPRGが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、サルファパージ運転中でないときには、ステップ26に進み、SOx脱離速度VDeSOxを値0に設定する。このSOx脱離速度VDeSOxは、NOx触媒7からの単位時間当たりのSOx脱離量に相当する。
前記ステップ21の答がYESで、サルファパージ運転中のときには、サルファパージフラグの前回値F_SOxPRGZが「1」であるか否かを判別する(ステップ22)。この答がNOのとき、すなわち今回の処理サイクルがサルファパージ運転の開始直後に相当するときには、ディレイ時間TSOxDLYを算出する(ステップ23)。
このディレイ時間TSOxDLYは、ディレイ期間の長さを定めるものであり(図7参照)、サルファパージ運転の開始後に、還元雰囲気の排ガスがNOx触媒7に到達するまでのむだ時間と、NOx触媒7に到達した排ガス中の還元剤がNOx触媒7に貯蔵されていた酸素による酸化によって消費されるのに要する時間との和に相当する。したがって、サルファパージ運転の開始後、このディレイ時間TSOxDLYが経過した時に、NOx触媒7からのSOxの脱離が実際に開始されることになる。このディレイ時間TSOxDLYの算出は、例えば、排ガス流量QEXおよびSOx捕捉量QSOxなどに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、行われる。
次に、ディレイ期間中であることを表すために、ディレイ期間フラグF_DLYを「1」にセットする(ステップ24)とともに、アップカウント式のディレイタイマのタイマ値(以下「ディレイタイマ値」という)TMDLYを0にリセットした(ステップ25)後、前記ステップ26に進み、SOx脱離速度VDeSOxを値0に設定する。
一方、前記ステップ22の答がYESで、今回の処理サイクルがサルファパージ運転の開始直後でないときには、ディレイ期間フラグF_DLYが「1」であるか否かを判別する(ステップ27)。この答がYESのときには、ディレイタイマ値TMDLYがディレイ時間TSOxDLY以上であるか否かを判別する(ステップ28)。この答がNOで、ディレイ期間中のときには、前記ステップ26に進み、SOx脱離速度VDeSOxを値0に設定する。
一方、前記ステップ28の答がYESで、TMDLY≧TSOxDLYのときには、ディレイ期間が終了したとして、ディレイ期間フラグF_DLYを「0」にセットする(ステップ29)。また、ディレイ期間に続くランプ期間に移行したことを表すために、ランプ期間フラグF_RAMPを「1」にセットする(ステップ30)とともに、アップカウント式のランプタイマのタイマ値(以下「ランプタイマ値」という)TMRPを0にリセットした(ステップ31)後、前記ステップ26を実行する。上記のランプ期間は、サルファパージ運転によって供給された還元雰囲気の排ガスがNOx触媒7中に拡散し、SOxの脱離反応が本格化するまでの拡散時間に相当する。
一方、前記ステップ27の答がNOで、ディレイ期間がすでに終了しているときには、ステップ32に進み、ランプ期間以降におけるSOx脱離速度VDeSOxを算出する。その算出処理については後述する。
次に、前記ステップ26または32で算出されたSOx脱離速度VDeSOxに、本処理の実行周期ΔTを乗算することによって、今回の処理サイクル相当分のSOx脱離量dQDeSOxを算出し(ステップ33)、本処理を終了する。
図5は、上記ステップ32で実行される、ランプ期間以降におけるSOx脱離速度VDeSOxの算出サブルーチンを示す。本処理では、まずステップ41において、ランプ期間フラグF_RAMPが「1」であるか否かを判別する。この答がYESで、ランプ期間中のときには、ランプ期間フラグの前回値F_RAMPZが「1」であるか否かを判別する(ステップ42)。この答がNOのとき、すなわち今回の処理サイクルがランプ期間の開始直後に相当するときには、ランプ時間TRAMPを算出する(ステップ43)。
このランプ時間TRAMPは、ランプ期間の長さを定めるものであり(図7参照)、図6の算出サブルーチンによって算出される。本処理では、まずステップ51において、ランプ時間TRAMPの基本値TBASEを算出する。この基本値TBASEの算出は、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって行われる。なお、要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて算出される。
次に、NOx触媒7のSOx捕捉量QSOxに応じ、所定のテーブルを検索することによって、SOx捕捉量補正係数KQSOxを算出する(ステップ52)。図示しないが、このテーブルでは、SOx捕捉量補正係数KQSOxは、SOx捕捉量QSOxが大きいほど、NOx触媒7でのSOxの脱離反応が行われやすくなるため、より小さな値に設定されている。
次に、NOx触媒7の劣化度合DCATDに応じ、所定のテーブルを検索することによって、触媒劣化補正係数KCATDを算出する(ステップ53)。図示しないが、このテーブルでは、触媒劣化補正係数KCATDは、劣化度合DCATDが高いほど、NOx触媒7でのSOxの脱離反応が行われにくくなるため、より大きな値に設定されている。なお、NOx触媒7の劣化度合DCATDは、NOx触媒7の再生制御中に検出された上流側排ガス空燃比AFEX1に対する下流側排ガス空燃比AFEX2の遅れの度合に応じて求めたNOx触媒7の酸素貯蔵能力などに基づいて、算出される。
次に、触媒温度TCATに応じ、所定のテーブルを検索することによって、触媒温度補正係数KCATTを算出する(ステップ54)。図示しないが、このテーブルでは、触媒温度補正係数KCATTは、触媒温度TCATが高いほど、NOx触媒7でのSOxの脱離反応が行われやすくなるため、より小さな値に設定されている。
次に、上流側排ガス空燃比AFEX1に応じ、所定のテーブルを検索することによって、空燃比補正係数KAFEXを算出する(ステップ55)。図示しないが、このテーブルでは、空燃比補正係数KAFEXは、上流側排ガス空燃比AFEX1が小さいほど、NOx触媒7に流入する排ガス中の還元剤量が多く、NOx触媒7でのSOxの脱離反応が行われやすくなるため、より小さな値に設定されている。
最後に、次式(1)により、ステップ51で算出した基本値TBASEに、ステップ52〜55で算出した4つの補正係数を乗算することによって、ランプ時間TRAMPを算出し(ステップ56)、本処理を終了する。
TRAMP=TBASE×KQSOx×KCATD×KCATT×KAFEX
・・・(1)
図5に戻り、前記ステップ43に続くステップ44では、SOxの最終脱離速度VDeSOxFを算出する。この最終脱離速度VDeSOxFは、ランプ期間が終了した時に到達する本来のSOx脱離速度VDeSOxに相当する(図7参照)。
この最終脱離速度VDeSOxFの算出は、エンジン3の運転状態を表すパラメータ、例えばエンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDや、NOx触媒7の状態を表すパラメータ、例えばSOx捕捉量QSOx、劣化度合DCATDおよび触媒温度TCATの少なくとも1つに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、行われる。なお、上記のパラメータに加えて、上流側排ガス空燃比AFEX1を用いてもよい。
次に、次式(2)により、ランプ期間TRAMPおよびランプタイマ値TMRPを用いて、最終脱離速度VDeSOxFを補正することにより、ランプ期間中のSOx脱離速度VDeSOxを算出し(ステップ45)、本処理を終了する。
VDeSOx=VDeSOxF×TMRP/TRAMP ・・・(2)
一方、前記ステップ42の答がYESで、今回の処理サイクルがランプ期間の開始直後でないときには、ランプタイマ値TMRPがランプ時間TRAMP以上であるか否かを判別する(ステップ46)。この答がNOで、ランプ期間中のときには、前記ステップ45に進み、式(2)によってランプ期間中のSOx脱離速度VDeSOxを算出する。
上記のように、この式(2)は、VDeSOxF/TRAMPを傾きとし、ランプ期間への移行後の経過時間を表すランプタイマ値TMRPを変数とする一次関数である。したがって、SOx脱離速度VDeSOxは、ランプ期間において、その開始時における値0から終了時における最終脱離速度VDeSOxFまで、線形に増加するように算出される。
一方、前記ステップ46の答がYESで、TMRP≧TRAMPのときには、ランプ期間が終了したとして、ランプ期間フラグF_RAMPを「0」にセットする(ステップ47)とともに、SOx脱離速度VDeSOxを算出し(ステップ48)、本処理を終了する。
また、前記ステップ47の実行により、ランプ期間が終了した後には、前記ステップ41の答がNOになるので、その場合にも、前記ステップ48に進み、SOx脱離速度VDeSOxを算出する。このランプ期間終了後のSOx脱離速度VDeSOxの算出は、最終脱離速度VDeSOxFの場合と同様、エンジン3の運転状態やNOx触媒7の状態を表すパラメータ、さらには上流側排ガス空燃比AFEX1に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、行われる。
図7は、本実施形態のサルファパージ制御処理によって得られるSOx脱離速度VDeSOxの算出例を示している。この例では、図2の処理によって、時点t1でサルファパージ運転が開始されており、それに応じ、t1以前においては、SOx脱離速度VDeSOxは値0に設定されている(図4のステップ26)。サルファパージ運転が開始されると(t1)、ディレイ期間に移行し、その直後においてディレイ時間TSOxDLYが算出される(ステップ23)。このディレイ期間では、SOx脱離速度VDeSOxは値0に設定される(ステップ26)。
その後、ディレイ時間TSOxDLYが経過すると(t2)、ランプ期間に移行し、その直後においてランプ時間TRAMPおよび最終脱離速度VDeSOxFが算出される(図5のステップ43、44)。このランプ期間では、SOx脱離速度VDeSOxは、式(2)によって算出され(ステップ45)、それにより、その開始時における値0から終了時における最終脱離速度VDeSOxFまで、線形に増加する。
その後、ランプ時間TRAMPが経過すると(t3)、ランプ期間が終了し、その後、SOx脱離速度VDeSOxは、エンジン3の運転状態やNOx触媒7の状態などに応じて算出される(ステップ48)。また、サルファパージ運転の終了に伴い(t4)、SOx脱離速度VDeSOxは、値0に設定される(ステップ26)。
なお、図7中の破線は、本実施形態と比較するための従来例を示している。この従来例では、SOx脱離速度VDeSOxは、サルファパージ運転によるSOxの脱離の開始直後から、本来のSOx脱離速度VDeSOxFとして算出される。このため、本実施形態と比較して、SOx脱離速度VDeSOxがハッチング部分の面積の分だけ過大に算出され、それに応じて、SOx脱離量QDeSOxも過大に算出されることになる。
以上のように、本実施形態によれば、サルファパージ運転中に最終的に到達する本来のSOx脱離速度である最終脱離速度VDeSOxFを算出する(ステップ44)とともに、NOx触媒7からのSOxの脱離が開始された後のランプ期間において、最終脱離速度VDeSOxFを減少側に補正することによって、SOx脱離速度VDeSOxを算出する(ステップ45)。
したがって、前述したSOxの脱離特性、すなわち、、脱離の開始後、還元雰囲気の排ガスがNOx触媒中に拡散した後に、SOxの脱離速度が本来の脱離速度に達するという特性に合致するように、SOx脱離速度VDeSOxを精度良く算出することができる。その結果、算出されたSOx脱離速度VDeSOxに応じて、SOx脱離量dQDeSOxを精度良く算出することができる。
また、ランプ期間のSOx脱離速度VDeSOxを、一次関数である式(2)により、ランプ期間の開始時におけるSOx脱離速度VDeSOxの値(=0)と、ランプ期間の終了時におけるSOxの最終脱離速度VDeSOxFとを単純に直線で結ぶようにして算出するので、その演算負荷を軽減することができる。
さらに、ランプ時間TRAMPを、エンジン回転数NE、要求トルクPMCMD、NOx触媒7のSOx捕捉量QSOx、劣化度合DCATDおよび触媒温度TCAT、さらには上流側排ガス空燃比AFEX1に応じて、設定する(図6)。したがって、エンジン3の運転状態や、NOx触媒7の状態、NOx触媒7に流入する排ガスの空燃比を良好に反映させながら、ランプ期間の長さを適切に設定でき、それにより、SOx脱離速度VDeSOxをより精度良く算出することができる。
また、最終脱離速度VDeSOxFを、ランプ時間TRAMPの算出に用いたのと同様のパラメータを用いて算出する(ステップ44)。したがって、エンジン3の運転状態や、NOx触媒7の状態、NOx触媒7に流入する排ガスの空燃比を良好に反映させながら、最終脱離速度VDeSOxFを適切に算出することができる。さらに、ディレイ時間TSOxDLYを、排ガス流量QEXおよびSO捕捉量QSOxなどに応じて設定するので(ステップ23)、ランプ期間の開始タイミングを適切に設定することができる。
以上から、サルファパージ運転中のSOx脱離速度VDeSOxを非常に精度良く算出でき、それに応じてSOx脱離量dQDeSOxを精度良く算出することができる。
また、本実施形態では、上記のように精度良く算出されたSOx脱離量dQDeSOxを用いて、NOx触媒7のSOx捕捉量QSOxを算出し(ステップ12〜14)、さらにこのSOx捕捉量QSOxに基づいて、サルファパージ運転の終了タイミングを決定する(ステップ5、6)。したがって、従来と異なり、サルファパージ運転中のSOx脱離速度VDeSOxを過大に評価することなく、NOx触媒7からSOxが十分に脱離した最適なタイミングで、サルファパージ運転を終了させることができる。その結果、サルファパージ運転の終了時に多量のSOxが残留することがなくなり、それにより、NOx触媒のNOx捕捉性能を確実に回復させるとともに、排ガス特性を良好に維持することができる。
次に、図8および図9を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、前述した第1実施形態と比較し、ランプ期間におけるSOx脱離速度VDeSOxの算出方法が異なっており、具体的には、ランプ期間を複数のランプ区間に区分し、それらのランプ区間ごとにSOx脱離速度VDeSOxを算出するものである。図8は、第1実施形態による図5の処理に代えて実行される、SOx脱離速度VDeSOxの算出処理を示す。
本処理では、まずステップ61および62において、図5のステップ41および42と同様、ランプフラグF_RAMPおよびその前回値F_RAMPZが「1」であるか否かをそれぞれ判別する。ステップ61の答がYES、かつステップ62の答がNOで、今回の処理サイクルがランプ期間の開始直後に相当するときには、ランプ期間を区分した複数のランプ区間の順番を表す区間番号nを値1にセットする(ステップ63)。また、ランプ時間TRAMPを、図6の算出処理によって算出する(ステップ64)とともに、算出したランプ時間TRAMPを所定の区間数NDで除することによって、各ランプ区間に対応するランプ時間(以下「分割ランプ時間」という)TRAMPDを算出する(ステップ65)。
次に、SOx脱離速度VDeSOxを値0に設定する(ステップ66)とともに、ランプ区間の開始時におけるSOx脱離速度VDeSOxの値(以下「区間初期値」という)VDeSOxSnを、値0に設定する(ステップ67)。
次に、最終脱離速度VDeSOxFnを算出し(ステップ68)、本処理を終了する。この最終脱離速度VDeSOxFnは、ランプ期間の終了時に到達するSOx脱離速度VDeSOxを、各ランプ区間の開始時において算出するものであり、第1実施形態のステップ44と同様、エンジン3の運転状態を表すパラメータ、およびNOx触媒7の状態を表すパラメータなどに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。なお、ステップ63で区間番号n=1が設定されているため、ステップ67および68では、第1ランプ区間に対する区間初期値VDeSOxS1および最終脱離速度VDeSOxF1が算出される。
一方、前記ステップ62の答がYESで、今回の処理サイクルがランプ期間の開始直後でないときには、ステップ69に進み、次式(3)によってSOx脱離速度VDeSOxを算出する。
VDeSOx
= VDeSOxSn+(VDeSOxFn−VDeSOxSn)
×TMRP/(TRAMPD×(ND−n+1)) ・・・(3)
この式(3)は、VDeSOxSnを切片、(VDeSOxFn−VDeSOxSn−1)/(TRAMPD×(ND−n+1))を傾き、ランプタイマ値TMRPを変数とする一次関数である。したがって、SOx脱離速度VDeSOxは、各ランプ区間において、その区間初期値VDeSOxSnからそのランプ区間で算出された最終脱離速度VDeSOxFnに向かって、線形に増加するように算出される(図9参照)。
次に、ランプタイマ値TMRPが分割ランプ時間TRAMPD以上であるか否かを判別する(ステップ70)。この答がNOで、ランプ区間中のときには、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ70の答がYESで、TMRP≧TRAMPDのときには、今回のランプ区間が終了したとして、今回の区間番号nが区間数NDに等しいか否かを判別する(ステップ71)。
このステップ71の答がNOのときには、区間番号nをインクリメントし(ステップ72)、ランプ区間を更新する。また、そのときのSOx脱離速度VDeSOxを、更新したランプ区間の区間初期値VDeSOxSnとして設定する(ステップ73)。また、最終脱離速度VDeSOxFnを算出する(ステップ74)とともに、ランプタイマ値TMRPを0にリセットし(ステップ75)、本処理を終了する。
以上の処理により、各ランプ区間において、区間初期値VDeSOxSnおよび最終脱離速度VDeSOxFnの算出と、それらを用いた式(3)によるSOx脱離速度VDeSOxの算出が実行される。
一方、前記ステップ71の答がYESで、n=NDが成立したときには、ランプ期間が終了したとして、ランプフラグF_RAMPを「0」にセットする(ステップ76)とともに、SOx脱離速度VDeSOxを算出し(ステップ77)、本処理を終了する。また、このステップ76の実行により、その後は、前記ステップ61の答がNOになるので、その場合にも、前記ステップ77に進み、SOx脱離速度VDeSOxを算出する。このランプ期間終了後のSOx脱離速度VDeSOxの算出は、第1実施形態と同様、エンジン3の運転状態やNOx触媒7の状態を表すパラメータ、さらには上流側排ガス空燃比AFEX1に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、行われる。
図9は、本実施形態のサルファパージ制御処理によって得られるSOx脱離速度VDeSOxの算出例を示している。この例では、エンジン3およびNOx触媒7の条件は、図7に示した第1実施形態の場合と同じであり、ランプ区間数NDは3に設定されている。サルファパージ運転の開始以前(t1以前)および開始後のディレイ期間(t1〜t2)では、図7の場合と同様、SOx脱離速度VDeSOxは値0に設定される。
ディレイ期間からランプ期間に移行すると(t2)、その直後において、ランプ時間TRAMP、分割ランプ時間TRAMPD、第1ランプ区間に対する区間初期値VDeSOxS1および最終脱離速度VDeSOxF1が算出される(図8のステップ64〜68)とともに、SOx脱離速度VDeSOxが、式(3)によって算出される(ステップ69)。したがって、SOx脱離速度VDeSOxは、第1ランプ区間では、その区間初期値VDeSOxS1(=0)から最終脱離速度VDeSOxF1に向かって、線形に増加する。また、第1ランプ区間は、SOx脱離速度VDeSOxが最終脱離速度VDeSOxF1に達する前に終了し、この終了時のSOx脱離速度VDeSOxが、次の第2ランプ区間の区間初期値VDeSOxS2として算出される。
その後、分割ランプ時間TRAMPDが経過し、ランプ区間が更新されるのに応じて、各ランプ区間において、区間初期値VDeSOxSnおよび最終脱離速度VDeSOxFnの算出と、それらを用いた式(3)によるSOx脱離速度VDeSOxの算出が実行される。以上の結果、SOx脱離速度VDeSOxは、ランプ期間の各ランプ区間において、区間初期値VDeSOxSnからそのランプ区間で算出された最終脱離速度VDeSOxF3nに向かって、線形に増加するように算出され、最終的に最終脱離速度VDeSOxF3に収束する。
以上のように、本実施形態によれば、ランプ期間を複数のランプ区間に区分し、それぞれのランプ区間の開始時に、ランプ期間の終了時におけるSOxの最終脱離速度VDeSOxFnを算出するとともに、ランプ区間ごとに、最終脱離速度VDeSOxFnを補正し、SOx脱離速度VDeSOxを算出する。したがって、ランプ期間の途中においてエンジン3の運転状態やNOx触媒7の状態が変化した場合でも、その変化に応じて最終脱離速度VDeSOxFnをきめ細かく算出し、補正することによって、SOx脱離速度VDeSOxをさらに精度良く算出することができる。また、その補正式として、一次関数である式(3)を用いるので、補正のための演算負荷を軽減することができる。
図10は、第2実施形態の変形例を示している。同図に示すように、この変形例では、ランプ期間を区分した複数のランプ区間ごとに、その開始時において、そのランプ区間の終了時におけるSOxの最終脱離速度VDeSOxDFnを算出するとともに、SOx脱離速度VDeSOxは、線形に増加し、各ランプ区間の終了時に最終脱離速度VDeSOxDFnに収束するように算出される。その結果、SOx脱離速度VDeSOxは、ランプ期間において、その開始時における値0と各ランプ区間の最終脱離速度VDeSOxDF1〜3を順に直線で結び、線形に増加するように算出される。したがって、この変形例によっても、前述した第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、ランプ時間TRAMPを設定する際に、エンジン3の運転状態を表すエンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに加え、設定パラメータとして、NOx触媒7のSOx捕捉量QSOx、劣化度合DCATDおよび触媒温度TCATと、上流側排ガス空燃比AFEX1を用いている。本発明は、これに限らず、設定パラメータとして、これらの少なくとも1つを用いてもよく、あるいは、NOx触媒7や排ガスの状態を表す他の適当なパラメータを用いてもよい。
また、第2実施形態では、複数のランプ区間の区間数NDが所定値(=3)であるが、この区間数NDを増やしてもよく、あるいは、ランプ期間全体の長さ(ランプ時間TRAMP)に比例するように設定し、分割ランプ時間TRAMPDをほぼ一定になるようにしてもよい。さらに、複数のランプ区間を互いに同じ長さに設定しているが、例えば、より後ろ側のランプ区間ほど、その長さを短く設定してもよく、それにより、ランプ期間の終了時における最終脱離速度VDeSOxFnへのSOx脱離速度VDeSOxの収束性を高めることができる。あるいは、ランプ期間において、ランプ区間を設定するのに代えて、SOx脱離速度VDeSOxをその演算周期ごとに直接、算出してもよく、それにより、ランプ期間におけるSOx脱離速度VDeSOxを可能な限りきめ細かく精度良く算出することができる。
さらに、実施形態では、ランプ期間におけるSOx脱離速度VDeSOxの算出を、演算負荷の軽減などのために、式(2)または(3)で表される一次関数を用いて行っているが、実際のSOxの脱離特性を実験などによってあらかじめ求め、その脱離特性をモデル化した関数を用いてもよく、それにより、SOx脱離速度VDeSOxをさらに精度良く算出することができる。
また、実施形態では、NOx触媒に還元雰囲気の排ガスを供給するサルファパージ運転を、インジェクタ6から燃料を噴射するポスト噴射によって行っているが、これに限らず、排気管5に燃料またはアンモニアを還元剤として直接、供給することによって行ってもよい。
さらに、実施形態は、本発明を車両に搭載されたディーゼルエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。