JP5330676B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、サイドウォール部に取り付けた歪センサにより測定した歪によって、タイヤに作用する力を検出する検出方法に用いる空気入りタイヤに関する。
近年、走行中の自動車の安定性、安全性を確保するため、ABS(アンチロックブレーキシステム)、TCS(トラクションコントロールシステム)、VSC(ビークルスタビリティコントロール)などの種々の車両制御システムが開発されている。そして、これらシステムを制御するためには、走行中のタイヤの転動状況を正確に把握することが必要となる。
そこで本出願人は、下記の特許文献1において、サイドウォール部に3つ以上の歪センサを取り付け、前記サイドウォール部の歪みを所定の3位置にて同時に測定することにより、その歪出力によって、タイヤに作用する前後力Fx、横力Fy、及び上下荷重Fzの3つの力をそれぞれ推定する技術を提案している。そして、この特許文献1では、前記歪センサの取り付け方法として、
(1)タイヤを加硫成形する前に、歪センサを、サイドウォール部の内部に埋め込む、或いはサイドウォール部の内面又は外面に貼り付け、その後の加硫による加硫接着によって取り付ける、又は
(2)加硫後のサイドウォール部の内面又は外面に、歪センサを、接着剤による接着によって取り付ける、ことが開示されている。
特開2005−126008号公報
しかし、前者の場合、加硫熱及び加硫圧力によって、歪センサに故障をもたらす恐れを招くとともに、加硫時のゴム流動によって取付位置が変動するなど正確な取付位置が得られ難く、力の検出精度を損ねるという問題がある。他方、後者の場合、接着剤の弾性率が歪みの測定値に大きく影響してしまい、力の検出精度及び信頼性を低下させるという問題がある。
又何れの場合にも、タイヤに歪センサが一体固定されるため、複数個のうちの一つの歪センサが故障した場合にも、タイヤごと交換する必要が生じるなど、経済性を損ねるという問題がある。
そこで本発明は、歪センサを、加硫熱や加硫圧力に起因する故障を招くことなく、かつ正確な位置に取り付けでき、しかも接着剤の影響による検出精度や信頼性の低下を抑制しうるとともに、歪センサの交換を可能として経済性を高めうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、サイドウォール部の歪を測定した歪出力を出力してタイヤに作用する力を検出するために用いる歪センサを具える空気入りタイヤであって、
トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスの外側に配されかつ外面がサイドウォール表面をなすサイドウォールゴムとを少なくとも有し、しかも前記サイドウォールゴムの外面に、歪センサ取付け用の有底のセンサ取付け穴を凹設したタイヤ本体、
及びゴム弾性材からなるゴム基体内に、磁石とこの磁石に向き合う磁気センサ素子とを埋設したブロック状の歪センサを具えるとともに、
前記歪センサは、前記センサ取付け穴内に、嵌め合いにて嵌入されることにより該歪センサの周壁面と、前記センサ取付け穴の周壁面とが隙間なく圧接し、
前記歪センサは、前記ゴム基体のヤング率E1を、前記サイドウォールゴムのヤング率E2以下とし、
前記歪センサ及び前記センサ取付け穴は、前記センサ取付け穴の底面から前記サイドウォール表面に向かって、前記サイドウォール表面に沿った断面積が漸減する楔状であることを特徴としている。
又請求項2の発明では、前記歪センサは、前記ゴム基体のヤング率E1を、前記サイドウォールゴムのヤング率E2未満としたことを特徴としている。
又請求項の発明では、前記磁気センサ素子は、ホール素子であることを特徴としている。
又前記ヤング率は、JISK6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の試験方法に準拠して測定した300%伸張時の弾性率を意味する。
本発明は叙上の如く、歪センサとして、ゴム弾性材からなるゴム基体内に、磁石とこの磁石に向き合う磁気センサ素子とを埋設したブロック状のものを用いるとともに、この歪センサを、サイドウォールゴムの外面に凹設したセンサ取付け穴内に、嵌め合いにて嵌入している、
ここで、ゴムはポアソン比が約0.49であり、歪みに対してほとんど体積変化を示さない特性を有する。従って、サイドウォール部が変形し、前記センサ取付け穴が、例えば一方向に引張りによる伸張変形を受けた場合には、センサ取付け穴は、前記一方向と直交する他方向には、圧縮変形を起こす。このとき、センサ取付け穴内に嵌入される歪センサは、ゴム弾性材を用いて形成されるため、センサ取付け穴の前記圧縮変形によって付勢され、他方向に圧縮変形を起こすとともに、この圧縮変形に伴い前記一方向には伸張変形を起こすことになる。即ち、前記歪センサは、センサ取付け穴の周壁面とは、接着されていなくても、センサ取付け穴の伸張、圧縮の変形に追従して、自在に変形することができ、従って、サイドウォール部の歪みを、接着剤の影響を受けることなく高精度で測定できる。
又前記センサ取付け穴は、タイヤを加硫成形する際の加硫金型によって形成しうるため、歪センサを正確な位置に取り付けしうる。又タイヤの加硫成形後に歪センサを取り付けるため、加硫熱や加硫圧力に起因する歪センサの故障を防止することができる。又歪センサは、センサ取付け穴に嵌入して取り付けられるため、故障した歪センサの交換を可能とする他、摩耗寿命となった空気入りタイヤから歪センサを取り外して再使用しうるなど経済性を高めることができる。
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1空気入りタイヤの断面図である。
図1において、空気入りタイヤ1は、本例では、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6を有するタイヤ本体10と、このタイヤ本体10のサイドウォール表面に設けられたセンサ取付け穴20内に嵌入される歪センサ21とから構成される。
前記タイヤ本体10は、加硫金型により加硫成形された既加硫のタイヤであって、前記カーカス6の外側には、外面Gsがサイドウォール表面をなすサイドウォールゴム3Gが配される。
なお前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して例えば70〜90°の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aから形成される。このカーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間に跨るプライ本体部6aの両側に、前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部6bを一連に具える。又前記プライ本体部6aとプライ折返し部6bとの間には、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外方にのびる断面三角形状のビード補強用のビードエーペックスゴム8を配設している。
又前記トレッド部2の内部かつカーカス6の半径方向外側には、トレッド補強用のベルト層7がタイヤ周方向に巻装される。前記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜35゜の角度で配列した2枚以上、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから形成され、各ベルトコードがプライ間相互で交差することにより、ベルト剛性を高め、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して強固に補強している。なお本例では、前記ベルト層7の半径方向外側には、高速走行性能および高速耐久性等を高める目的で、バンドコードを周方向に対して5度以下の角度で配列させたバンド層9を設けている。
次に、前記サイドウォールゴム3Gは、ゴム硬度Hs(デュロメータA硬さ)が、例えば48〜53の軟質のゴムからなり、カーカス6を外傷から被覆保護する。そして、このサイドウォールゴム3Gの外面Gsには、歪センサ21取付け用のセンサ取付け穴20を少なくとも1個以上、好ましくは3個以上、さらに好ましくは6個以上凹設している。なお複数個のセンサ取付け穴20を形成する場合には、図2に示すように、タイヤ軸心を中心とした同一円周線i上に等間隔を隔てて配置することが、測定制御の簡便性等の観点から好ましい。なお同図には、8個のセンサ取付け穴20を同一円周線i上に等間隔を隔てて形成した場合を例示している。
ここで、前記センサ取付け穴20は、図3に拡大して示すように、前記外面Gsに平行な底面22と、この底面22の周囲を囲む周壁面23とを具え、本例では、この周壁面23が、4つの壁面部23aからなりかつ各壁面部23a及び底面22が長方形をなす直方体形状にて形成される場合を例示している。このようにセンサ取付け穴20を直方体形状で形成することにより、歪センサ21を、正確な姿勢で安定させて取り付けることができるとともに、このセンサ取付け穴20の変形を、歪センサ21に正確に伝えることが可能となり、歪みの測定精度をより向上させることができる。
又前記センサ取付け穴20は、図4に概念的に示すように、その直方体形状の巾中心線c1をタイヤ半径方向線に対して30〜60°、より好ましくは40〜50°、さらに好ましくは45°の角度θにて形成される。
次に、前記歪センサ21として、図5〜7に示すように、ゴム弾性材からなるゴム基体13内に、磁石11と、この磁石11に間隔を有して向き合う磁気センサ素子12とを埋設したブロック状のものが採用される。この歪センサ21は、前記センサ取付け穴20内に嵌め合いにて嵌入されることが必要であり、従って、歪センサ21は、前記センサ取付け穴20よりも嵌め合い代だけ大きい断面形状(センサ取付け穴20の深さ方向と直角な断面形状)にて形成される。本例では、前記センサ取付け穴20が直方体形状にて形成されることから、前記歪センサ21も嵌め合い代だけ大きい断面形状の直方体形状にて形成される。これにより、歪センサ21は、その周壁面25と、センサ取付け穴20の前記周壁面23とが隙間なく圧接した状態で取り付けられる。なお前記嵌め合い代としては特に規制されないが、例えば、センサ取付け穴20の寸法(長さ)に対して0%より大かつ5%以下の範囲とするのが好ましい。
前記歪センサ21の磁気センサ素子12としては、ホール素子、及びMR素子(磁気抵抗効果素子)、TMF−MI素子、TMF−FG素子、アモルファスセンサ等が採用でき、特にコンパクトさ、感度、取り扱い易さ等の観点からホール素子が好適に採用できる。
前記歪センサ21として、図5(A)、(B)の如く、1つの磁石11と1つの磁気センサ素子12とで形成した1−1タイプ、又図6(A)、(B)の如く、1つの磁石11と複数(n個、例えば2個)の磁気センサ素子12とで形成した1−nタイプ、又図7(A)、(B)の如く、複数(n個、例えば2個)の磁石11と1つの磁気センサ素子12とで形成したn−1タイプのものが使用できる。図中の符号12sは磁気センサ素子12の受感部面12s、符号11sは磁石11の磁極面を示し、又符号Nは、歪センサ21のゲインが最大となるゲイン最大線を示している。何れの場合にも、前記ゲイン最大線Nは、歪センサ21の直方体形状の巾中心線c2と一致させることが好ましく、これにより、歪センサ21をセンサ取付け穴20に取り付けた際、前記ゲイン最大線Nを、タイヤ半径方向線に対して前記角度θで傾斜させることができる。これにより、剪断歪を含むサイドウォール部3の歪を測定しうるため、タイヤに作用する力の検出精度を高めることができる。
なお各歪センサ21には、測定された歪の歪出力を、車両に設ける車両制御システムの電子制御装置(ECU)に発信する発信手段(図示しない)が内蔵される。この発信手段は、送受信回路、制御回路、メモリー等をチップ化した半導体と、アンテナとから構成され、前記電子制御装置(ECU)からの質問電波を受信したとき、これを電気エネルギーとして使用しメモリー内の歪出力データを応答電波として発信しうる。
ここで、図8(A)に誇張して示すように、サイドウォール部3が変形し、前記センサ取付け穴20が、例えば引張りf1により一方向に伸張変形を受けた場合、センサ取付け穴20は、前記一方向と直交する他方向には、圧縮変形を起こす。このとき、センサ取付け穴20内に嵌入される歪センサ21は、ゴム弾性材を用いて形成されるため、図8(B)に誇張して示すように、センサ取付け穴20の他方向の圧縮f2によって付勢され、他方向に圧縮変形を起こすとともに、この圧縮変形に伴い前記一方向には伸張変形を起こすことになる。即ち、前記歪センサ21は、センサ取付け穴20の周壁面23とは、接着されていなくても、センサ取付け穴20の伸張、圧縮の変形に追従して、自在に変形することが可能となり、サイドウォール部3の歪を、接着剤の影響を受けることなく高精度で測定できる。
このとき歪センサ21が、センサ取付け穴20に追従して変形するためには、前記ゴム基体13のヤング率E1を、前記サイドウォールゴム3Gのヤング率E2以下とすることが必要であり、E1>E2では、歪センサ21の追従性が減じ、測定精度を低下させる。このような観点から、前記ヤング率E1の上限を、前記ヤング率E2の1.0倍より小、さらには0.95倍以下とするのがより好ましい。又ヤング率E1の下限は、歪センサ21の強度の観点から、ヤング率E2の0.7倍以上が好ましい。
次に、前記歪センサ21は、センサ取付け穴20内に嵌入されるとはいえ、タイヤの繰り返し変形によってセンサ取付け穴20から外れる恐れがある。そこで本例では、前記図3に例示する如く、歪センサ21の周壁面25及びセンサ取付け穴20の周壁面23に、互いに係合することにより歪センサ21の外れを防止する係止部26を設けている。この係止部26として、本例では、前記周壁面25に形成されるリブ状(又は溝状)の第1係止部26Aと、周壁面23に形成されて前記第1係止部26Aと係合する溝状(又はリブ状)の第2係止部26Bとからなる場合を例示している。この係止部26は、全壁面部25a、23aに形成する必要はなく、例えば圧接する一対の壁面部25a、23aのみに形成することもできる。又係止部26として、1条の溝状(又はリブ状)以外に複数条の溝状(又はリブ状)とすることもできる。本発明では、図9に示すように、歪センサ21及びセンサ取付け穴20の開口側の断面積を減じた楔状であり、壁面部25a、23a自体が第1、第2係止部26A、26Bを構成している。又ゴム弾性を有するゴム系接着剤を補助的に用い、壁面部25a、23a間の一部を、例えばスポット状に接着しても良い。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
本発明の効果を確認するため、参考例として、タイヤサイズ245/40ZR18のタイヤ本体のサイドウォール表面に、9.5mm(縦)×6.5mm(横)×5mm(深さ)の直方体形状のセンサ取付け穴を凹設するとともに、このセンサ取付け穴内に、9.7mm(縦)×6.7mm(横)×4.8mm(高さ)の直方体形状の歪センサを、接着剤を用いることなく、嵌め合い代(0.2mm)にて嵌入することで取り付けた。なおセンサ取付け穴は、その直方体の巾中心線がタイヤ半径方向線に対して45°の角度で傾斜した状態にて、リムフランジの上端から半径方向外側に5mm離れた位置に形成された。又歪センサは、サイドウォールゴムと同じゴムからなるゴム基体内に、磁石とホール素子とを埋設して形成され、そのゲイン最大線は直方体の巾中心線と一致している。
そしてこの歪センサ付きの空気入りタイヤを、ドラム試験機にて速度80km/hで走行させ、サイドウォール部の歪みを測定した。図10は、タイヤが1回転する際の歪センサの出力値のグラフであり、該図10に示すように、タイヤの回転位置において、歪みを測定しうることが確認できる。又本実験では、このような出力値を出しながら3万km走行しうることも確認できた。
気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。 歪センサの配置状態を略示する空気入りタイヤの側面図である。 センサ取付け穴を、歪センサとともに示す分解斜視図である。 歪センサの取り付け方向を示す線図である。 (A)、(B)は、歪センサの一実施例を示す平面図及び斜視図である。 (A)、(B)は、歪センサの他の実施例を示す平面図及び斜視図である。 (A)、(B)は、歪センサのさらに他の実施例を示す平面図及び斜視図である。 (A)、(B)は、本発明の作用効果を説明する平面図である。 係止部の実施例を示す断面図である。 参考例における歪センサの出力値のグラフである。
符号の説明
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
3G サイドウォールゴム
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
10 タイヤ本体
11 磁石
12 磁気センサ素子
13 ゴム基体
20 センサ取付け穴
21 歪センサ
23、25 周壁面
c1、c2 巾中心線
Gs 外面
N ゲイン最大線

Claims (3)

  1. サイドウォール部の歪を測定した歪出力を出力してタイヤに作用する力を検出するために用いる歪センサを具える空気入りタイヤであって、
    トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスの外側に配されかつ外面がサイドウォール表面をなすサイドウォールゴムとを少なくとも有し、しかも前記サイドウォールゴムの外面に、歪センサ取付け用の有底のセンサ取付け穴を凹設したタイヤ本体、
    及びゴム弾性材からなるゴム基体内に、磁石とこの磁石に向き合う磁気センサ素子とを埋設したブロック状の歪センサを具えるとともに、
    前記歪センサは、前記センサ取付け穴内に、嵌め合いにて嵌入されることにより該歪センサの周壁面と、前記センサ取付け穴の周壁面とが隙間なく圧接し、
    前記歪センサは、前記ゴム基体のヤング率E1を、前記サイドウォールゴムのヤング率E2以下とし、
    前記歪センサ及び前記センサ取付け穴は、前記センサ取付け穴の底面から前記サイドウォール表面に向かって、前記サイドウォール表面に沿った断面積が漸減する楔状であることを特徴とする
    空気入りタイヤ。
  2. 前記歪センサは、前記ゴム基体のヤング率E1を、前記サイドウォールゴムのヤング率E2未満としたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記磁気センサ素子は、ホール素子であることを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
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