JP5325460B2 - 新規な(1r,2s,4s,5r)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物及びその利用 - Google Patents

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本発明は高透明性、十分な膜靭性、低誘電率及び高ガラス転移温度を併せ持つ、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜及び液晶ディスプレー(LCD)用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の層間絶縁膜及び保護膜、液晶配向膜、光導波路材料、特にディスプレー用基板、半導体素子の層間絶縁膜及び保護膜、液晶配向膜として有益なポリイミドとその前駆体のモノマーとなる新規の(1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、その製造方法、そのポリイミド前駆体、そのポリイミド及びそれらポリマーの用途に関するものである。
1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は高耐熱、高透明性、低誘電率、高靭性ポリイミドの原料として有用な化合物である(例えば特許文献1参照)。
従来、1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の製造方法としては、ピロメリット酸エステルのベンゼン環を水素化還元した後、無水物化して得る方法(例えば特許文献2、非特許文献1参照)、ピロメリット酸のベンゼン環を直接水素化還元した後、無水物化して得る方法(例えば、特許文献3、非特許文献2参照)等が報告されている。
しかしながらこれらの方法で合成された1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸の二無水物はジアミンとの重合反応性に劣り、十分な重合度に達しないため十分な膜靭性を示すほど高分子量体がしばしば得られない。これは1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が下記式(6)及び(7):
Figure 0005325460
(式(6)中、Bは4価の船型シクロヘキサン基を表し、その立体配置は下記式(7)で表される。)
Figure 0005325460
で表されるシス‐シス‐シス体(1,2位のカルボニル基が同方向のシス体であり、4,5位も同じくシス体であり、且つ1,2位と4,5位が同方向を向くシス体であることを意味する)であり、熱力学的に最も安定な立体構造をとっているためであると考えられている(例えば、非特許文献3参照)。また、この構造の1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物では、官能基である酸無水物基が空間的に近接していることに起因して、重合反応時に立体障害が生ずる虞があり、これも重合反応性の低さの一因であると考えられている。例えば、非特許文献2に従い製造した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を無水化して得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物はテトラメチルエステル化して分析したところ、シス−シス−シス体が99%以上であり、この酸二無水物はジアミンとの重合性に劣っていた。
このように1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を使用して透明で靭性のあるポリイミドフィルムを得ることは容易ではなく、フレキシブルディスプレー用プラスチック基板としての要求特性を満足する材料もまた知られていない。
特開2003‐168800号公報(2003年6月13日公開) 特開平8‐325196号公報(1996年12月10日公開) 特開2003‐286222号公報(2003年10月10日公開) Daniel T. Longone, Derivatives of Pyromellitic Acid. 1,2,4,5-Tetrasubstituted Cyclohexanes, J. Org. Chem., 1963, vol.28, pp1770-1773 Morris Freifelder, Daniel A. Dunnigan, and Evelyn J. Baker, Low-Pressure Hydrogenation of Some Benzenepolycarboxylic Acids with Rhodium Catalyst, J. Org. Chem., 1966, vol.31, pp3438-3439 Higher Performace Polymers. 2007, vol. 19,p175
従来の技術により得られる1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物等の芳香族化合物と比べ、ジアミンとの反応性が低いため、重合度の高いポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を製造することが困難であった。このため、1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸ブロックをもつポリイミドが高透明性、低誘電率等の優れた特性を有することは明らかになっているが、上述のように重合性が低いという問題が主因となり開発が難航していた。
本発明は、このような問題を克服するためになされたものであり、その目的は、高透明性、十分な膜靭性、低誘電率及び高ガラス転移温度を併せ持ち、各種電子デバイスにおける各電気絶縁膜及び液晶ディスプレー(LCD)用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の層間絶縁膜及び保護膜、液晶配向膜、光導波路材料、特にディスプレー用基板、半導体素子の層間絶縁膜及び保護膜、液晶配向膜として有益なポリイミドの原料として有用である、新規の1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物及びそれを利用した技術を提供することにある。
以上の問題に鑑み、発明者らが鋭意研究を積み重ねた結果、1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の立体構造を精密に制御することにより下記一般式(8):
Figure 0005325460
(式(8)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表し、その立体配置は下記式(2)で表される。)
Figure 0005325460
で表される新規な(1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下ct‐CHTCAと称する)、即ち、上記式(7)で表されるシス‐シス‐シス体の1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の異性体を製造できる方法を見出した。
また、このct‐CHTCAを用いることで、各種ジアミンと反応させてポリイミド前駆体の高分子量体を容易に得ることが可能になり、さらにこれをイミド化して得られるポリイミドは極めて高い透明性、高い耐熱性、十分な膜靭性、及び極めて低い誘電率を達成することから、フレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板、集積回路の層間絶縁膜及び液晶配向膜等としてこれまでにない有益な材料を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)ct‐CHTCA。
(2)ct‐CHTCAを40%以上含有することを特徴とする1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物。
(3)(1S,2S,4R,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下、「tt‐CHTCA」と称する)加熱することによって異性化させる工程を含むことを特徴とするct‐CHTCAの製造方法。
(4)脱水剤存在下、(1S,2S,4R,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸(以下、「tt‐CHTC」と称する)を加熱することによって無水化させる工程を含むことを特徴とするct‐CHTCAの製造方法。
(5)一般式(1)
Figure 0005325460
(上記一般式(1)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表し、Rは水素原子、トリアルキルシリル基、炭素数1〜12の直鎖状、炭素数1〜12の分岐状若しくは炭素数6〜12の環状のアルキル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれる置換基を表し、Aは2価の芳香族基又は脂肪族基を表し、上記Xの立体配置は、以下の式(2)で表され、
Figure 0005325460
上記Xと結合している2つのアミド基及び2つのカルボキシル基またはエステル基の結合位置は下記式(3)又は(4)で表される。
Figure 0005325460
Figure 0005325460
(式(3)及び(4)において、Yは上記Xに結合するアミド基を示し、Zは上記Xに結合するカルボキシル基またはエステル基を表す))
で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体。
(6)下記一般式(5)
Figure 0005325460
(式(5)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表し、Aは2価の芳香族基又は脂肪族基を表し、上記Xの立体配置は下記式(2)で表される)
Figure 0005325460
で表される繰り返し単位を有するポリイミド。
(7)ポリイミド前駆体の合成原料として、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が用いられる際に、上記1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物がct−CHTCAを40%以上含有することを特徴とするポリイミド前駆体。
(8)ポリイミドの合成原料として、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が用いられる際に、上記1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物がct−CHTCAを40%以上含有することを特徴とするポリイミド。
(9)(5)又は(7)に記載のポリイミド前駆体及び感光剤を含有する感光性樹脂組成物。
(10)(9)に記載の感光性樹脂組成物を、基材上にパターン露光し、パターン露光後に現像して、現像後に加熱硬化することにより得られるものであるパターンが形成されていることを特徴とする構造体。
(11)(6)又は(8)に記載のポリイミドを含有するものであることを特徴とするディスプレー用基板。
(12)(6)又は(8)に記載のポリイミドを含有するものであることを特徴とする集積回路の層間絶縁膜。
(13)(6)又は(8)に記載のポリイミドを含有する液晶配向膜。
本発明によれば、高透明性、十分な膜靭性、低誘電率及び高ガラス転移温度を併せ持ち、各種電子デバイスにおける各電気絶縁膜及び液晶ディスプレー(LCD)用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、半導体素子の層間絶縁膜及び保護膜、液晶配向膜、光導波路材料、特にディスプレー用基板、半導体素子の層間絶縁膜及び保護膜、液晶配向膜として有益なポリイミドの原料として有用な、新規の1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を提供することができる。
即ち、本発明に係るct‐CHTCAの製造方法によれば、ct‐CHTCAを得ることができる。この合成されたct‐CHTCAをモノマーとして使用することで、従来のシス‐シス‐シス体の1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を用いて得ることのできなかった高分子量のポリイミド前駆体及び高分子量ポリイミドを容易に製造することが可能である。結果としてポリイミド膜の脆弱性が大きく改善され、上述の電子デバイス等に関連する様々な産業において極めて有益なポリイミドの材料を提供することができる。
本発明の実施の形態について説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
<1.ct‐CHTCA>
1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下CHTCAと称する)は下記式(8)で示される化合物(式(8)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表す。)であるが、その立体構造は下記式(9)の(A)〜(F)の異性体が存在する。
Figure 0005325460
本発明に係るct‐CHTCAは上記式(9)の(C)で示される立体構造を有する化合物であり、例えば、上記式(9)の(B)で示される立体構造を有するtt‐CHTCAを異性化することによって得ることができる。
本発明に係るct‐CHTCAは、重合性が極めて高く、ポリイミドのモノマーとして極めて有用である。N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)中、上記ct‐CHTCAと種々のジアミンとを反応させ、得られたポリアミド酸溶液の固有粘度を測定し、重合性を評価すると、本発明に係るct‐CHTCAを用いた場合、ポリアミド酸の固有粘度は0.5〜3.8dL/gである。これは従来使用されてきたCHTCAの固有粘度が通常、0.1〜0.5dL/gであることと比較すると極めて高い値であり、重合度の高いポリイミドが容易に製造できる。
<2.ct‐CHTCAの製造方法>
本発明に係るct‐CHTCAの製造方法としては、(i)tt‐CHTCAを加熱することによって異性化させる工程を含む製造方法と、(ii)脱水剤存在下、tt‐CHTCを加熱することによって無水化反応させる工程を含む製造方法がある。まず、tt‐CTHCAおよびtt‐CTHCの合成について説明する。
〔tt‐CTHCAおよびtt‐CTHCの合成〕
本発明の異性化反応に供するtt‐CHTCA及びtt‐CHTCは種々の方法によって合成することができる。例えば、非特許文献2に記載の方法で作られたシス‐シス‐シス体の1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸(以下適宜、cc−CHTCと略す)をアルカリ存在下、加熱することによって異性化させ、tt‐CHTCを合成できる。また、tt‐CHTCを無水化することによって、tt‐CHTCAを得ることができる。まず、tt‐CHTCの製造例について説明する。
cc−CHTCからtt‐CHTCへの異性化反応に用いる溶媒としては、水、アルカリ及びcc−CHTCに対して不活性な有機溶媒等を用いればよい。異性化反応では反応溶液を加熱するが、cc−CHTCは熱水に高い溶解度を有するため、溶媒として水を好ましく用いることができる。
異性化反応において使用可能なアルカリの例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属類;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類;等が挙げられる。この中でも、安価で入手しやすさ、及び形成される塩の安定性の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
また、いずれのアルカリを用いる場合であっても、アルカリの使用量としてはcc−CHTCに対し4当量以上6当量以下であることが好ましく、4当量以上5当量以下であることが特に好ましい(以下、使用量等の数値範囲を示す場合、N1〜N2(N1は範囲の下限値およびN2は範囲の上限値)を用いて数値範囲を適宜示すが、これはN1以上N2以下であることを示す)。4当量以上添加すれば速やかに反応が進行するだけでなく、アルカリ塩の形成によりcc−CHTCの溶解度が増大するうえ、金属製反応容器の腐食の虞が低減する。このため、効率よく異性化反応を行うことができる。一方、アルカリの使用量が過剰になると、cc−CHTCの処理量が減る虞があるが、6当量以下であれば、このような虞は無く、tt‐CHTCの生産効率を向上させることが可能である。
また、上記のアルカリとピロメリット酸とを反応させて得られた塩を、公知の方法にしたがい水素化還元することによって、cc−CHTCのテトラ塩を合成し、そのまま異性化反応に供することもできる。異性化の加熱温度は特に限定されないが、具体的には130〜250℃が好ましい。異性化反応後、反応液を冷却するとよい。冷却の温度は特に限定されないが、0〜40℃が好ましく、さらに好ましくは0〜20℃である。また、冷却により析出した析出物を濾過等により回収して、乾燥することによって、tt‐CHTCが得られる。なお、必要に応じて上記反応液を濃縮してから冷却してもよい。
次に、tt‐CHTCAの製造例について説明する。tt‐CHTCAは、得られたtt‐CHTCを脱水剤存在下で加熱し無水化反応することによって得ることができる。脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の低級有機カルボン酸無水物が好ましいが、無水化後の除去や経済的に有利な無水酢酸が特に好ましい。脱水剤の使用量は特に限定されないが、tt‐CHTCに対して、2〜50当量が好ましく、特に好ましくは4〜20当量である。2〜50当量であれば、十分に無水化が行われ、無水化反応により得られた白色粉末をろ別し、さらに乾燥することで、本発明に供するtt‐CHTCAを得ることができる。
〔tt‐CHTCAを原料とするct‐CHTCAの製造例〕
本発明に係るtt‐CHTCAからct‐CHTCAへの異性化反応は、溶媒を用いることなく、直接にtt‐CHTCAを加熱することによって行うこともできるが、tt‐CHTCAを溶媒に溶解又は懸濁させて行うことが好ましい。異性化反応に用いる溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン等の炭化水素類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸類、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の低級有機カルボン酸類無水物等が好適に使用でき、中でも無水酢酸が特に好ましい。これらの溶媒は単独で使用することもできるが、二種類以上を混合して用いることもできる。
上記溶媒の使用量は特に限定されないが、tt‐CHTCAに対して100〜5000重量%が好ましく、さらに好ましくは200〜2000重量%である。この範囲未満では攪拌等の取扱いが困難になり、またこの範囲を超えると、溶媒の使用量が増え経済的に不利である。異性化反応は80〜250℃の範囲で行うことが好ましく、100〜160℃の範囲がより好ましい。温度が低すぎると異性化反応が十分に進行せず、温度が高すぎると複数の異性体混合物となるため好ましくない。また、無水化反応時間は、使用する脱水剤の種類、反応温度等の条件等に応じて適宜設定すればよいが、0.5〜24時間であることが好ましい。異性化反応により得られた白色粉末をろ別し乾燥することで、後述のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の重合工程に好適に用いることができる。
〔tt‐CHTCを原料とするct‐CHTCAの製造例〕
本発明に係るtt‐CHTCからct‐CHTCAへの無水化反応は、脱水剤存在下、tt‐CHTCを加熱することによって無水化反応させる工程を含んでいる。無水化反応は、溶媒を用いることなく、直接にtt‐CHTCを加熱することによって行うこともできるが、tt‐CHTCを溶媒に溶解又は懸濁させて行うことが好ましい。
上記溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン等の炭化水素類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸、プロピオン酸等の有機カルボン酸類等が好適に使用できる。これらの溶媒は単独で使用することもできるが、二種類以上を混合して用いることもできる。溶媒の使用量は特に限定されないが、tt‐CHTCに対して100〜5000重量%が好ましく、さらに好ましくは200〜2000重量%である。この範囲未満では攪拌等の取扱いが困難になり、またこの範囲を超えると、溶媒の使用量が増え経済的に不利である。
脱水剤としては無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の低級有機カルボン酸無水物類が好ましいが、無水化後の除去や経済的に有利な無水酢酸が特に好ましい。また、これら脱水剤を溶媒として使用することもできる。脱水剤の使用量は特に限定されないが、tt‐CHTCに対して、2〜50当量が好ましく、特に好ましくは4〜20当量である。2〜50当量であれば、十分に無水化が行われ、無水化反応後に結晶をろ別し乾燥することで、後述のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の重合工程に好適に用いることができる。
無水化反応は80〜250℃の範囲で行うとよく、100〜160℃の範囲がより好ましい。本工程には無水化反応と同時に異性化反応も起きており、温度が低すぎると異性化反応が十分に進行せず、温度が高すぎると複数の異性体混合物となるため好ましくない。また、無水化反応時間は、使用する脱水剤の種類、反応温度等の条件等に応じて適宜設定すればよいが、0.5〜24時間であることが好ましい。この時間で十分にct‐CHTCAを製造することができる。
<3.本発明に係るポリイミド前駆体>
本発明に係るポリイミド前駆体は、一般式(1)
Figure 0005325460
(上記一般式(1)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表し、Rは水素原子、トリアルキルシリル基、炭素数1〜12の直鎖状、炭素数1〜12の分岐状若しくは炭素数6〜12の環状のアルキル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれる置換基を表し、Aは2価の芳香族基又は脂肪族基を表し、上記Xの立体配置は、以下の式(2)で表され、
Figure 0005325460
上記Xと結合している2つのアミド基及び2つのカルボキシル基またはエステル基の結合位置は下記式(3)又は(4)で表される。
Figure 0005325460
Figure 0005325460
(式(3)及び(4)において、Yは上記Xに結合するアミド基を示し、Zは上記Xに結合するカルボキシル基またはエステル基を表す))
で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体である。
上記Rは水素原子、トリアルキルシリル基、炭素数1〜12の直鎖状、炭素数1〜12の分岐状若しくは炭素数6〜12の環状のアルキル基、および、炭素数1〜12の直鎖状、炭素数1〜12の分岐状若しくは炭素数6〜12の環状のアルコキシル基からなる群から選ばれる置換基である。
炭素数1〜12の直鎖状のアルキル基とは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、である。また、炭素数1〜12の分岐状のアルキル基は、上記炭素数1〜12の直鎖状のアルキル基における炭素原子にさらに側鎖を有することによって分岐を有する。側鎖としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基を挙げることができ、炭素数1〜12の分岐状のアルキル基における主鎖が炭素数1〜12であればよい。また、炭素数6〜12の環状のアルキル基とは、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基である。
また、炭素数1〜12の直鎖状、炭素数1〜12の分岐状若しくは炭素数6〜12の環状のアルコキシル基は、上記の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基における何れかの炭素原子‐炭素原子間に酸素原子が導入されている構造を有する。得られるポリイミド前駆体がポリイミドとして重合可能な範囲内で、上記のアルキル基およびアルコキシル基には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基などの置換基が導入されていてもよく、また、不飽和結合が導入されていてもよい。
Aは2価の芳香族基又は脂肪族基を表す。2価の芳香族基とは具体的には、1または複数のベンゼン構造を有し、上記式(1)のように、2のアミノ基と結合している構造を示す。さらに具体的には、後述する芳香族ジアミンまたは脂肪族ジアミンにおいて、2箇所のアミノ基を除いた上記ジアミン由来の構造である。
本発明に係るポリイミド前駆体を閉環(イミド化)させることで高透明性、低誘電率のポリイミドを得ることができる。つまり、本発明に係るポリイミド前駆体は、ポリイミドの原料として優れている。なお、本発明に係るポリイミド前駆体は、式(1)で示される繰り返し単位を含むものである。すなわち、式(1)におけるXの立体配置として、上述した式(9)の(A),(B),(D)〜(F)で示される繰り返し単位が含まれていてもよい。
さらに、重合性および得られるポリイミドの特性の観点から、上記ポリイミド前駆体の総量に対する、式(1)で示される繰り返し単位の比率は、20%以上であることが好ましい。また、40%以上であれば、さらに重合性の高いポリアミド前駆体を実現することができるためさらに好ましい。上記比率は、本発明のct‐CHTCAを用いることによって初めて実現されるものである。
ポリイミド前駆体の製造方法の一例について、以下に説明するが、製造方法はこれに限定されない。本発明に係るポリイミド前駆体は、本発明に係るct‐CHTCAとジアミンとを重合反応させて製造することができる。以下、ct‐CHTCAとジアミンとを重合させる工程を、単に「重合工程」と表記することもある。なお、重合工程では、単離したct‐CHTCAとジアミンとを用いる以外に、上述のように製造したct‐CHTCAを単離することなく、ct‐CHTCAから脱水剤を完全に除去した後に、重合反応に用いることが好ましい。この場合、単離工程を省くことができ、製造工程をより簡略化することができる点で有利である。
本重合工程は、ポリイミド前駆体の合成原料として、ジアミン溶液に対し、ct‐CHTCA粉末を添加することによって得られた重合溶液を攪拌することによって行うことができる。
より具体的には、重合工程ではジアミン溶液にct‐CHTCA粉末を添加して、室温にて撹拌することによって重合反応を実施できる。攪拌の時間は特に限定されず、該ct‐CHTCA粉末が十分に溶解するまで行えばよい。このように、本発明に係るポリイミド前駆体は、本発明に係るct‐CHTCAおよびジアミンを原料として用い、容易に製造することができる。ジアミンの使用量としては特に限定されないが、ct‐CHTCAに対して実質的に等モル量であることが、重合度を高めるという観点から好ましい。
上記ジアミン溶液を調製するために、ジアミンを溶解させる溶媒としては、モノマー(本発明に係るct‐CHTCA、及びジアミン)と、生成するポリアミド酸(本発明に係るポリイミド前駆体)とを溶解することが可能であり、且つこれらのモノマーと反応しない溶媒であれば特に限定されない。例えば、N‐メチルピロリドン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒を特に好適に利用できる。
本発明に係るポリイミド前駆体を製造するために用いるジアミンとしては特に限定されるものではなく、製造するポリイミド前駆体の用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。又はそれらを併用することもできる。
芳香族ジアミンの具体例としては、p‐フェニレンジアミン、m‐フェニレンジアミン、2,4‐ジアミノトルエン、2,5‐ジアミノトルエン、2,4‐ジアミノキシレン、2,4‐ジアミノデュレン、4,4’‐メチレンジアニリン、4,4’‐メチレンビス(3‐メチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(3‐エチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2‐メチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2‐エチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(3,5‐ジメチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(3,5‐ジエチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジメチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジエチルアニリン)、4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,3’‐ジアミノジフェニルエーテル、2,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、2,2’‐ジアミノジフェニルエーテル、4,4’‐ジアミノジフェニルスルホン、3,3’‐ジアミノジフェニルスルホン、4,4’‐ジアミノベンゾフェノン、3,3’‐ジアミノベンゾフェノン、4,4’‐ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’‐ジヒドロキシベンジジン、3,3’‐ジメトキシベンジジン、o‐トリジン、m‐トリジン、1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4‐ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4‐(3‐アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2‐ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、p‐ターフェニレンジアミン、2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2‐ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス(4‐アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,3’‐ジアミノジフェニルエーテル、2,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、2,2’‐ジアミノジフェニルエーテル、1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4‐ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4‐(3‐アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2‐ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2‐ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’‐ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’‐ジアミノジフェニルスルフォン、2,2‐ビス(4‐アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’‐メチレンジアニリン、4,4’‐メチレンビス(3‐メチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(3‐エチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2‐メチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2‐エチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(3,5‐ジメチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(3,5‐ジエチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジメチルアニリン)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジエチルアニリン)等を例示できる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
脂肪族ジアミンの具体例としては、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’‐メチレンビス(3‐メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’‐メチレンビス(3‐エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’‐メチレンビス(3,5‐ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’‐メチレンビス(3,5‐ジエチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス‐1,4‐シクロヘキサンジアミン、シス‐1,4‐シクロヘキサンジアミン、1,4‐シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5‐ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6‐ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8‐ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、1,3‐ジアミノアダマンタン、2,2‐ビス(4‐アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2‐ビス(4‐アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3‐プロパンジアミン、1,4‐テトラメチレンジアミン、1,5‐ペンタメチレンジアミン、1,6‐ヘキサメチレンジアミン、1,7‐ヘプタメチレンジアミン、1,8‐オクタメチレンジアミン、1,9‐ノナメチレンジアミン)等を例示できる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、重合工程では、ジアミンを予めジトリアルキルシリル化体に変換しておき、これにct‐CHTCAを添加することで、ポリアミド酸のトリアルキルシリルエステル(上記一般式(1)中、Rがトリアルキルシリル基であるもの)を得ることができる。ジアミンのトリアルキルシリル化の際に使用可能なトリアルキルシリル化剤は特に限定されないが、トリメチルシリルクロリド等のハロゲン化アルキルシランの他、N,O‐ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O‐ビス(トリメチルシリル)アセトアミド等を例示することができる。
また、本発明に係るct‐CHTCAに併せて、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分、脂肪族テトラカルボン酸二無水物等のct‐CHTCA以外のテトラカルボン酸二無水物を共重合成分として用いてもよい。これらのテトラカルボン酸二無水物の選定は、ポリイミド前駆体の重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で決定すればよく、上記ジアミンと重合可能なものである限り、使用は限定されない。
本発明に係るポリイミド前駆体を製造する際の重合反応性を有し、共重合可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’‐ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’‐ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’‐ビス(3,4‐ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、ハイドロキノンビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,4,5,8‐ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7‐ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、部分的に使用可能な脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては特に限定されないが、ビシクロ[2.2.2]オクト‐7‐エン‐2,3,5,6‐テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン‐2,3,5,6‐テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、5‐(ジオキソテトラヒドロフリル‐3‐メチル‐3‐シクロヘキセン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、4‐(2,5‐ジオキソテトラヒドロフラン‐3‐イル)‐テトラリン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン‐2,3,4,5‐テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’‐ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、3c‐カルボキシメチルシクロペンタン‐1r,2c,4c‐トリカルボン酸1,4:2,3‐二無水物、シス、シス、シス‐1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4‐シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4‐シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
従来、CHTCAブロック(CHTCA構造)を持つポリイミドが高透明性、低誘電率等の優れた特性を有することは明らかであったが、従来の技術により得られるシス、シス、シス‐1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は、ジアミンとの反応性が低いため、重合度の高いポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を製造することが困難であった。しかし、ポリイミド前駆体の合成原料を用いる際に、本発明に係るct‐CHTCAをCHTCA中20重量%、好ましくは40重量%以上含有することで、高重合度のポリイミド前駆体を製造することができ、従来から知られている、優れた特性を維持したCHTCAブロックを有するポリイミドを、高い重合度にて容易に得ることができる。
重合反応の際には以下の溶媒を使用してもよく、使用される溶媒としては、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒が好ましいが、原料モノマーおよび生成するポリイミド前駆体が溶解し、且つモノマーと反応しない溶媒であれば問題はなく、特に限定されない。具体的に例示するならば、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトン、δ‐バレロラクトン、γ‐カプロラクトン、ε‐カプロラクトン、α‐メチル‐γ‐ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m‐クレゾール、p‐クレゾール、3‐クロロフェノール、4‐クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶媒、即ちフェノール、o‐クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2‐メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒等も添加して使用できる。
本製造方法では、重合溶液を、水、メタノール等の貧溶媒中に滴下し、析出物を濾過および乾燥し、ポリイミド前駆体を粉末として単離することもできる。重合溶液の量は、滴下等が十分に行える量であれば限定されない。
本発明に係るポリイミド前駆体の固有粘度は高いほどよいが、少なくとも0.5dL/g以上であることが好ましく、1.0dL/g以上であることがより好ましい。0.5dL/gを下回ると、成膜性が著しく悪くなり、キャスト膜がひび割れる等の深刻な問題が生じる虞がある。
一般的に、ポリアミド等の重合の際しばしば添加される高分子溶解促進剤、即ちリチウムブロマイド、リチウムクロライド等の金属塩類は、本発明におけるポリイミド前駆体の重合反応には一切使用しなくてもよい。これらの金属塩類はポリイミド膜中に金属イオンが痕跡量でも残留すると、電子デバイスとしての信頼性を著しく低下させる。本発明に係るポリイミド前駆体は、このような金属塩類を使用しなくてよいので、極めて有益である。
<4.本発明に係るポリイミド>
本発明に係るポリイミドは、一般式(5):
Figure 0005325460
(式(5)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表し、Aは2価の芳香族基又は脂肪族基を表し、上記Xの立体配置は下記式(2)で表される。)
Figure 0005325460
で表される繰り返し単位を有するポリイミドである。
本発明に係るポリイミドは、例えば、上記の方法で得られたポリイミド前駆体を脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。この際、ポリイミドの使用可能な形態は、フィルム、金属基板/ポリイミドフィルム積層体、粉末、成型体及び溶液等が挙げられる。
一例として、本発明に係るポリイミドのフィルムを製造する方法について述べる。ポリイミド前駆体の重合溶液(ワニス)をガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン等を用いて乾燥する。乾燥の温度は40〜180℃であることが好ましく、より好ましくは50〜150℃である。得られたポリイミド前駆体フィルムを基板上で、真空中、窒素等の不活性ガス中、又は空気中において、加熱することで本発明に係るポリイミドのフィルムを製造することができる。加熱温度はイミド化の閉環反応を十分に行うという観点から200℃以上であり、生成したポリイミドフィルムの熱安定性の観点から400℃以下であることが好ましい。より好ましくは250〜350℃である。またイミド化は、真空中又は不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中で行ってもよい。
また、イミド化反応は、熱処理に代えて、ポリイミド前駆体フィルムをピリジン、トリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬することによって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめポリイミド前駆体ワニス中に投入・攪拌し、それを上記基板上に流延・乾燥することで、部分的あるいは完全にイミド化したポリイミド前駆体フィルムを作製することもできる。これを更に上記のような温度範囲で熱処理しても差し支えない。
なお、製造されるポリイミド自体がイミド化反応に用いた溶媒に溶解する場合、ポリイミド前駆体の重合溶液をそのまま又は同一の溶媒で希釈した後150〜200℃に加熱することで、本発明に係るポリイミドの溶液(ワニス)を容易に製造することができる。一方、製造されるポリイミド自体が溶媒に不溶な場合は、結晶性のポリイミド粉末を沈殿物として得てもよい。この際、イミド化反応の副生成物である水等を共沸留去するために、ポリイミドにトルエン、キシレン等の有機溶媒を添加しても差し支えない。また触媒としてγ‐ピコリン等の塩基を添加することができる。イミド化後この反応溶液を大量の水、メタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリイミドを粉末として単離することもできる。またポリイミド粉末を上記重合溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることもできる。
本発明に係るポリイミドは、ジアミンと本発明に係るct‐CHTCAを溶媒中高温で反応させることにより、ポリイミド前駆体を単離することなく、一段階で重合することもできる。この際、反応溶液は反応促進の観点から、例えば130〜250℃、好ましくは150〜200℃の範囲に保持するとよい。またポリイミドが、イミド化反応に用いた溶媒に不溶な場合、ポリイミドは沈殿として得られ、可溶な場合はポリイミドのワニスとして得られる。重合溶媒は特に限定さないが、使用可能な溶媒として、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が例として挙げられが、より好ましくはm‐クレゾール等のフェノール系溶媒、又はNMP等のアミド系溶媒が用いられる。これらの溶媒にイミド化反応の副生成物である水を共沸留去するために、トルエン、キシレン等の有機溶媒を添加することができる。
また、ポリイミド前駆体の重合溶液に、イミド化触媒としてγ‐ピコリン等の塩基を添加することができる。この場合、イミド化反応後、反応溶液を大量の水、メタノール等の貧溶媒中に滴下し、析出物を濾過することによりポリイミドを粉末として単離することができる。また、ポリイミドが溶媒に可溶である場合は、ポリイミドの粉末を上記溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることができる。
上記ポリイミドワニスを基板上に塗布して乾燥させることで脂環式ポリイミドフィルムを形成してもよい。乾燥の温度は特に限定されないが、例えば40〜400℃、好ましくは100〜350℃である。
また、得られたポリイミド粉末を加熱圧縮することでポリイミドの成型体を作製してもよい。加熱圧縮時の温度としては特に限定されないが、例えば200〜450℃、好ましくは250〜430℃である。
ポリイミド前駆体溶液中にN,N‐ジシクロヘキシルカルボジイミド、トリフルオロ無水酢酸等の脱水試薬を添加し、反応溶液を撹拌して0〜100℃、好ましくは0〜60℃で反応させることにより、ポリイミドの異性体であるポリイソイミドが生成する。イソイミド化反応は上記脱水試薬を含有する溶液中にポリイミド前駆体フィルムを浸漬することによっても可能である。ポリイソイミドワニスを上記と同様な手順で製膜した後、250〜450℃、好ましくは270〜400℃で熱処理することにより、ポリイミドへ容易に変換することができる。
本発明に係るポリイミド前駆体、本発明に係るポリイミドには、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤等の添加物を加えてもよい。
<5.本発明に係るポリイミド前駆体、ポリイミドの利用>
〔本発明に係る感光性樹脂組成物〕
本発明に係る感光性樹脂組成物(以下、「感光性ポリイミド前駆体」と称することもある)は、本発明に係るポリイミド前駆体及び感光剤を含有してなるものであり、感光性ポリイミドの前駆体となるものである。即ち、本発明に係るポリイミド前駆体および感光剤から感光性ポリイミド前駆体を得ることができる。
上記感光剤としては特に限定されないが、後述するジアゾナフトキノン系感光剤が好ましい。なお、感光性樹脂組成物中の感光剤の含有量は特に限定されないが、ポリイミド前駆体に対して、10〜40重量%が好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。
また、本発明に係る感光性樹脂組成物において、本発明に係るポリイミド前駆体及び感光剤は、溶媒に溶解されていてもよい。この溶媒としては、当該ポリイミド前駆体及び感光剤を溶解可能であれば限定されず、種々の有機溶媒を使用してもよい。
次に、本発明に係る感光性樹脂組成物を得る方法の一例を説明する。まず、本発明に係るポリイミド前駆体が溶解された有機溶媒溶液にジアゾナフトキノン系感光剤を添加し、溶解する。これにより感光性樹脂組成物を得ることができる。
次に、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて得られるパターンを備える構造体について説明する。本発明に係る感光性樹脂組成物を、基材上にパターン露光して、パターン露光後に現像して、上記本発明に係る構造体には、現像後に加熱硬化することにより得られるものであるパターンが形成されている構造体が含まれる。なお、半導体素子において、ポリイミドをバッファーコート膜として使用した際に、外部回路との接続するための穴あけ加工をする必要があるが、半導体素子の用途に応じて約3〜20μmのスルーホール又はビアホールを開ける加工を行う。本発明に係る感光性樹脂組成物に由来するポリイミドは、このようなバッファーコート膜を形成する材料として適している。
本発明に係る構造体を製造するためには、まず、本発明に係る感光性樹脂組成物をパターン露光する。パターン露光では、感光性樹脂組成物を基材上に塗布して、目的のパターンを有するフォトマスクを介して紫外線を露光するとよい。
例えば、スピンコーター又はバーコーターを用いて、銅、シリコン又はガラス等の基材上に塗布する。次に、遮光下、40〜120℃で0.1〜3時間温風乾燥することで、例えば膜厚1〜10μmの感光性樹脂組成物の膜を得ることができる。温風乾燥の際の温度及び時間は適宜変更できる。
本発明に係るポリイミド前駆体は、上記一般式(1)におけるRが水素原子である場合、元来アルカリに可溶であるが、ジアゾナフトキノン系感光剤が分散された状態で製膜されたものは、ジアゾナフトキノン(DNQ)系感光剤が溶解抑制剤として作用するので、得られた膜自体はアルカリ不溶性となる。一方、この膜にフォトマスクを介して紫外線を照射すると露光部におけるジアゾナフトキノン系感光剤が光反応によりアルカリ可溶なインデンカルボン酸に変化するので、露光部のみがアルカリ水溶液に可溶となる。よって、ポジ型パターン形成が可能となる。また、DNQを添加しても、アルカリ溶解性が高すぎてパターン形成が困難な場合は、部分的にアルキルエステル化、アルコキシエステル化、又はトリメチルシリル化してアルカリ溶解性を制御することでより鮮明なポジ型パターン形成が可能となる。
ジアゾナフトキノン系感光剤の具体例としては、1,2‐ナフトキノン‐2‐ジアジド‐5‐スルホン酸、1,2‐ナフトキノン‐2‐ジアジド‐4‐スルホン酸の低分子ヒドロキシ化合物、例えば、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、1,3,5‐トリヒドロキシベンゼン、2‐及び4‐メチル‐フェノール、4,4’‐ヒドロキシープロパンのエステル等を挙げることができるがこれらに限定されない。
このポジ型の感光性樹脂組成物におけるジアゾナフトキノン系感光剤の配合割合が、少なすぎる場合には、露光部と未露光部との溶解度差が小さすぎて、現像によりパターン形成不能となる。一方、多すぎる場合には得られるポリイミドの膜物性(靭性、ガラス転移温度等)に悪影響を及ぼす虞がある他、イミド化後の膜減が大きいといった問題が生じる虞があるので、上記配合割合は、ポリイミド前駆体に対し重量基準で好ましくは10〜40%、より好ましくは15〜30%である。
上述の感光性ポリイミド前駆体の膜を得る工程は120℃以下で行われることが好ましい。120℃を越えると、ジアゾナフトキノン系感光剤が熱分解し始める虞がある。また、60℃で製膜した場合、感光性ポリイミド前駆体の塗膜には多量の溶媒が残留することとなる。溶媒の残留を抑制するため、露光操作に先立ち80〜120℃で1〜30分間プリベイクしてもよいが、塗膜を1〜5分間水中に浸漬することも効果的である。残留溶媒は現像時の膜の膨潤及び/又はパターンの崩れを招く虞があり、鮮明なパターンを得るためには上記塗膜から残留溶媒を十分除去しておくことが好ましい。
上記塗膜にフォトマスクを介して高圧水銀灯のi線を室温で10秒〜1時間照射し、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて室温で10秒〜10分間現像し、さらに純水でリンスすることにより鮮明なポジ型パターンを得ることができる。
現像については、従来公知の方法で行えばよく、例えばアルカリ水溶液を用いてもよいがこれに限定されない。アルカリ水溶液を用いて現像を行う際、露光部と未露光部の溶解度差が不十分な場合、鮮明なレリーフパターンが得られにくいことがある。この場合、適当なモノマーを用いて本発明に係るポリイミド前駆体を主成分とする共重合体を合成することで、アルカリ水溶液に対する溶解度を制御することが可能である。この際使用可能な共重合成分として特に限定されないが、フッ素基を含有するモノマーが好適に用いられる。
基材上に形成されたポリイミド前駆体の微細パターンを空気中、窒素等の不活性ガス雰囲気中あるいは真空中、200℃〜430℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で加熱硬化することで鮮明なポリイミド膜のパターンが得られる。この際、イミド化は脱水環化試薬を用いて化学的に行うこともできる。即ち、ピリジン、トリエチルアミン等の塩基性触媒を含む無水酢酸中に、基材上に形成されたポリイミド前駆体膜を室温で1分〜数時間浸漬する方法によってもポリイミド膜のパターンを得ることができる。本発明に係る感光性樹脂組成物であって、感光剤としてDNQ系剤を含有するものは、特に微細パターン形成能、高いi線透過率、耐熱性および電気絶縁性を併せ持つため、バッファーコートの材料として好適に使用することができる。
〔本発明に係るディスプレー用基板〕
本発明に係るディスプレー用基板は本発明に係るポリイミドを含有するものであればよい。本発明に係るディスプレー用基板は、透明性および柔軟性に優れているので、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー等の種々のディスプレーに適用できる。これらはフレキシブルなディスプレーであってもよい。つまり、本発明に係るディスプレー用基板は、例えば、液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用基板、および、これらがフレキシブルに構成されたフレキシブルディスプレー用基板を包含し得る。
本発明に係るポリイミドをフレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板に適用するために要求される特性として、ポリイミドのガラス転移温度は、230℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。また透明性の指標である波長400nmにおける光透過率は好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%である。またポリイミド膜は膜靭性の指標として180°折曲試験により破断しなければ上記産業分野に適用可能であるが、引張試験において破断伸びが好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上である。複屈折は0.01以下であれば上記ディスプレー等の光学材料に適用するのに重大な問題はないが、0.005以下であることがより好ましい。
〔本発明に係る集積回路の層間絶縁膜〕
本発明に係る集積回路の層間絶縁膜は、本発明に係るポリイミドを含有するものであればよい。
本発明に係るポリイミドを集積回路の層間絶縁膜に適用するために要求される特性として、ポリイミドのガラス転移温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。またポリイミド膜は膜靭性の指標として180°折曲試験により破断しなければ、集積回路を使用する種々の産業分野に十分適用可能である。また誘電率は2.8以下であることが好ましく、2.7以下であることが更に好ましい。本発明に係るポリイミドは、集積回路のバッファーコートとしても利用可能である。
〔本発明に係る液晶配向膜〕
本発明に係る液晶配向膜は、本発明に係るポリイミドを含有するものであればよい。つまり、本発明に係るポリイミド前駆体又は本発明に係るポリイミドは、液晶配向膜材料に適用することが可能である。本発明に係るポリイミドは、ジアミン成分にフッ素基、スルホン基等を含むものを使用することで有機溶媒に対する溶解性を高めることができ、ポリイミドワニスを塗布、乾燥およびラビング処理することで、液晶配向膜とすることができる。
本発明に係るポリイミドは脂環構造を有するため、ガラス転移温度は250℃以上であり、TFT型液晶ディスプレー、半導体チップの作製時に要求される短期耐熱性は充分高く、ディスプレー、半導体等に関連する産業分野への応用には全く問題がない。
また、本発明に係るct‐CHTCAは、様々な産業分野において使用される各種ポリイミドの物性を大きく犠牲にすることなく分子量を高める目的で、共重合成分として使用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における物性値は、次の方法により測定した。
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製FTIR‐8400S、日本分光社製FT‐IR5300又はFT‐IR350)を用い、透過法にて本発明に係るポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを測定した。また、tt‐CHTC及びtt‐CHTCAはKBr法により赤外吸収スペクトルを測定した。
<単結晶X線構造解析>
単結晶X線構造解析については、ブルカー・ジャパン社製、単結晶X線構造解析装置(SMART APEXII)を用い、測定温度294K、X線源CuKα線、管電圧50kV、管電流30mAで測定した。
<粉末X線回折パターン>
粉末X線回折パターンについてはブルカーエイエックスエス社製、粉末X線回折装置(M03XHF22)を用い、測定温度294K、X線源CuKα線、管電圧45kV、管電流40mA、サンプリングステップ0.02°、スキャン速度4°/分、および、測定範囲2θ=5〜60°の測定条件にて測定した。
<固有粘度>
0.5重量%のポリイミド前駆体溶液(溶媒:N,N‐ジメチルアセトアミド又はNMP)について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hzおよび昇温速度5℃/分における損失ピークからポリイミド膜のガラス転移温度を求めた。
<線熱膨張係数:CTE>
ブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μmおよび昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリイミド膜の線熱膨張係数を求めた。
<5%重量減少温度:Td
ブルカーエイエックスエス社製熱重量分析装置(TG‐DTA2000)を用いて、窒素中又は空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリイミド膜の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
<カットオフ波長(透明性)>
日本分光社製紫外可視分光光度計(V‐530)を用いて、200nmから900nmまでの可視および紫外線透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、ポリイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
<光透過率(透明性)>
日本分光社製紫外可視分光光度計(V‐530)を用いて、400nmにおける光透過率を測定した。透過率が高い程、ポリイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
<複屈折>
アタゴ社製アッベ屈折計(4T)を用いて、ポリイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
<誘電率及び誘電損失>
アタゴ社製アッベ屈折計(4T)を用いて、ポリイミド膜の平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて次式:εcal=1.1×navにより1MHzにおけるポリイミド膜の誘電率(εcal)を算出した。
<弾性率、破断強度、破断伸び>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM‐2)を用いて、ポリイミド膜の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、膜が破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほど膜の靭性が高いことを意味する。
〔製造例1〕tt‐CHTCの合成
非特許文献2の記載にしたがい(1S,2R,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸を合成した。まず、ピロメリット酸二無水物 465gと、5%ロジウム/カーボン触媒 175gと蒸留水 2940gとを容積5Lの撹拌機付きSUS316製オートクレーブに入れ、反応温度60℃、水素圧5MPaで水素化を行った。1.5時間後、反応液を抜き出し、濾過により触媒を除去した後、反応液をエバポレーターにより乾固し、(1S,2R,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸449gを得た。
次に、上記の(1S,2R,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸 38g(0.146モル)、水酸化ナトリウム 24g(0.600モル)及び蒸留水 108gを容積200mLの撹拌機付きSUS316製オートクレーブに入れ、窒素雰囲気下、230℃で5時間、異性化反応を行った。
さらに、異性化反応後の反応液を30℃まで冷却した後、当該反応液を容積500mLの三つ口フラスコに移して、撹拌しながら35%塩酸 63g(0.605モル)をゆっくりと滴下したところ、白色の析出物が生じた。さらにそのまま1時間撹拌を続けた。
次に、攪拌後の反応液を吸引ろ過して、白色の析出物を回収した後、80℃で5時間、析出物を減圧乾燥した。その結果、32.3gの白色粉末を得た。得られた白色粉末を0.5Nメタノール性塩酸中で加熱して、テトラメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィにより分析した結果、(1S,2R,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメチルに相当するピークが完全に消失し、異なる位置に単一のピークが検出された。さらに、この白色粉末を水から再結晶し、単結晶X線構造解析を行った結果、tt‐CHTCであることが確認された。その立体構造を図1に示す。
〔製造例2〕tt‐CHTCAの合成
製造例1で得られたtt‐CHTC 25gと無水酢酸 75gとを容積200mLのフラスコに入れて混合することによって懸濁液を得た。当該懸濁液を80℃のオイルバスで7時間加熱、撹拌した。次に、攪拌後の懸濁液を30℃まで冷却した後、ろ過して、ろ別した白色粉末を80℃で5時間減圧乾燥させた。その結果、tt‐CHTCAの白色粉末18.1gが得られた。図2は本製造例で得られたtt−CHTCAの赤外吸収スペクトルを示す図である。
得られた白色粉末の赤外吸収スペクトル測定の結果、カルボキシル基由来の3000cm−1付近のO‐H伸縮振動が消え、1869cm−1と1790cm−1に吸収帯が見られた。これらは五員環構造の酸無水物C=O伸縮振動に特徴的な吸収帯であり、上記反応により、五員環構造の酸無水物が合成されたことを示している。また、当該白色粉末は有機溶媒への溶解度、熱安定性が低く、結晶性が悪いため、単結晶X線構造解析に好適な結晶を得ることができなかった。
そこで、当該白色粉末5g、蒸留水55gおよび4‐ジメチルアミノピリジン0.05gを100mLナス型フラスコに入れ、80℃で24時間加熱し、加水分解物(テトラカルボン酸)を合成した。こうして得られた均一水溶液を30℃まで冷却した後、析出した結晶を分取し、粉末X線解析を行った。製造例1で得たtt−CHTCと、これを無水化後加水分解して得られたテトラカルボン酸の粉末X線回折パターンをそれぞれ測定した。結果を図3、図4に示す。図3は無水化前のtt−CHTCの粉末X線回折パターンを示す図であり、図4はtt−CHTCAの加水分解物のX線回折パターンを示す図である。
これらの結果から分かるように、加水分解物の回折パターンは、製造例1で得られた白色粉末と同じ回折パターンを示し、この加水分解生成物(テトラカルボン酸)と製造例1に記載のテトラカルボン酸の立体構造は同一であることが確認された。即ち、製造例1のtt‐CHTC立体構造は無水化反応後も保持されていることを示している。つまり、無水化反応により得られた白色粉末はtt‐CHTCAである。
〔実施例1〕
ジムロートのついた容積200mLのフラスコに製造例2で得られたtt‐CHTCA20gと無水酢酸95gを入れ、窒素で置換した後攪拌しながら昇温し、3時間還流させた。反応液を還流後、冷却し析出した結晶をろ別しトルエンでリンスすることで14.4gの粉末を得た。この粉末を減圧乾燥することで、13.4gの白色粉末を得た。
得られた白色粉末を0.5Nメタノール性塩酸中で加熱して、テトラメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィにより分析した結果、(1S,2S,4R,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメチルに相当するピークが完全に消失し、異なる位置に2本のピークが検出された。ピークの比率は87.1:12.9であり、ガスクロマトグラフィ質量分析装置で確認したところ、両方のピークがシクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメチルに相当する分子量であり、各々が異なった立体構造を有するシクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメチルであることがわかった。さらに得られた白色粉末の一部を無水酢酸より再結晶し、大きなピークである異性体を精製分取し、単結晶X線構造解析によりその構造が(1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物であることを確認した。上記化合物のX線回折パターンに関する解析結果を図5に示す。
〔実施例2〕
ジムロートのついた容積200mLのフラスコに製造例1で得られたtt‐CHTC 20gと無水酢酸100gとを入れ、窒素で置換した後攪拌しながら昇温し、3時間還流させた。反応溶液を還流後、冷却し析出した結晶をろ別しトルエンでリンスすることで12.7gの粉末を得た。この粉末を減圧乾燥することで、12.1gの白色粉末を得た。
得られた白色粉末を0.5Nメタノール性塩酸中で加熱して、テトラメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィにより分析した結果、(1S,2S,4R,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメチルに相当するピークが完全に消失し、実施例1の白色粉末の場合と同じ位置に2本のピークが検出された。ピークの比率は(1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が85.6%であり、もう一方のピークが14.4%であった。これにより、ct‐CHTCAが得られたことが確認された。
〔実施例3〕
十分に乾燥させた攪拌機付密閉反応容器中に4,4’‐オキシジアニリン(以下、「ODA」と称する)5mmolをDMAcに溶解し、反応溶液を調製した。この反応溶液に実施例2で得たct‐CHTCAの粉末5mmolを徐々に加え、室温で1週間攪拌することによって、均一かつ透明であり、粘稠なポリイミド前駆体溶液が得られた。この際のポリイミド前駆体の溶質濃度は12.9重量%であった。このポリイミド前駆体溶液は室温及び−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。また、DMAc中、30℃で測定したポリイミド前駆体の固有粘度は2.20/gであり、高重合体であった。
このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で温風乾燥して得たポリイミド前駆体膜を真空中200℃で30分、続いて320℃で1時間熱処理することによってイミド化した。これにより膜厚約20μmの透明で強靭なポリイミドフィルムを得た。イミド化の完結は赤外吸収スペクトルから確認した。180°折り曲げ試験を行ったところ、このポリイミドフィルムは破断せず、可撓性を示した。表1に得られたポリイミドフィルムの物性値を示す。各物性としては、ガラス転移温度328℃、線熱膨張係数CTE=54.9ppm/K、カットオフ波長292nm、400nmでの透過率86.0%、破断伸び72.9%、複屈折Δn=0.0012、誘電率は2.89calであり優れた特性を示した。その他の物性も表1に示す。
Figure 0005325460
また、ポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを測定した。結果を図6に示す。図6は本実施例で得たポリイミド薄膜(ct‐CHTCA+ODA)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
〔実施例4〕
ジアミンとしてODAの代わりに、1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(以下TPE−Qと称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に準じて重合を行い、非常に高い固有粘度値(3.76dL/g)のポリイミド前駆体を得た。これを実施例3に記載した方法と同様にイミド化してポリイミドフィルムを作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。
〔実施例5〕
ジアミンとしてODAの代わりに、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPE−Rと称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に準じて重合を行い、非常に高い固有粘度値(2.22dL/g)のポリイミド前駆体を得た。これを実施例3に記載した方法と同様にイミド化してポリイミドフィルムを作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。また、ポリイミドフィルムの赤外吸収スペクトルを測定した。結果を図7に示す。図7は本実施例で得たポリイミド薄膜(ct‐CHTCA+TPE−R)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
〔実施例6〕
ジアミンとしてODAの代わりに、2,2‐ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(以下、「BAPP」と称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に準じて重合を行い、非常に高い固有粘度値(3.63dL/g)のポリイミド前駆体を得た。これを実施例3に記載した方法と同様にイミド化してポリイミドフィルムを作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。また、ポリイミドフィルムの赤外吸収スペクトルを測定した。結果を図8に示す。図8は本実施例で得たポリイミドフィルム(ct‐CHTCA+BAPP)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
〔実施例7〕
ジアミンとしてODAの代わりに、2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、「TFMB」と称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に準じて重合を行い、固有粘度値(1.20dL/g)のポリイミド前駆体を得た。これを実施例3に記載した方法と同様にイミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。
〔実施例8〕
ジアミンとしてODAの代わりに、ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(以下、「BAPS」と称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に準じて重合を行い、固有粘度値(0.50dL/g)のポリイミド前駆体を得た。これを実施例3に記載した方法と同様にイミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。
〔実施例9〕
十分に乾燥させた攪拌機付密閉反応容器中に4,4’‐オキシジアニリン(以下、「ODA」と称する)5mmolをDMAcに溶解し、反応溶液を調製した。この反応溶液に実施例2で得たct‐CHTCAの粉末2.5mmolと非特許文献2に従い製造した(1S,2R,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸を無水化して得られたcc−CHTCA2.5mmolの混合物(実質の(1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の含有量は42.8重量%である。)を徐々に加え、室温で1週間攪拌することによって、均一かつ透明であり、粘稠なポリイミド前駆体溶液が得られた。DMAc中、30℃で測定したポリイミド前駆体の固有粘度は2.76dL/gであり、高重合体であった。
このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で温風乾燥して得たポリイミド前駆体膜を真空中200℃で30分、続いて250℃で30分、さらに320℃で1時間熱処理することによってイミド化した。これにより膜厚約20μmの透明で強靭なポリイミドフィルムを得た。イミド化の完結は赤外吸収スペクトルから確認した。各物性としては、ガラス転移温度326℃、線熱膨張係数CTE=61ppm/K、5%重量減少温度460℃(窒素中)及び427℃(空気中)、カットオフ波長289nm、400nmでの透過率81.8%、複屈折Δn=0.0008、誘電率は2.89calであった。
このように、種々の異性体を有するCHTCA中にct−CHTCAを含有していれば、従来知られていたCHTCAを用いたポリイミドの優れた物性を損なうことなく、高分子量のポリイミドを得ることができる。
〔比較例1〕
ct‐CHTCAの代わりに、(1S,2R,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミン成分としてTFMBを用いて、実施例8に記載した方法と同様にポリイミド前駆体の重合を行った。しかしながら、得られたポリイミド前駆体の固有粘度値は0.101dL/gと非常に低く、このワニスを用いてガラス基板上に製膜を試みたが、フィルムに無数の亀裂が入り、製膜不能であった。これはct‐CHTCAを使用しなかったため、ポリイミド前駆体の分子量が十分に上がらなかったためである。また実施例6に記載した方法と同様にイミド化を行い、ポリイミド粉末をシクロペンタノンに溶解してワニスとし、製膜を試みたがやはり無数の亀裂が入り、製膜不能であった。
〔比較例2〕
ジアミン成分としてTFMBの代わりにPDAを使用した以外は比較例1に記載した方法に従ってポリイミド前駆体を重合した。しかしながら固有粘度値は0.33dL/gと非常に低く、製膜を試みたが比較例1と同様製膜不能であった。これはct‐CHTCAを使用しなかったため、ポリイミド前駆体の分子量が十分に上がらなかったためである。
〔比較例3〕
ジアミン成分としてTFMBの代わりにODAを使用した以外は比較例1に記載した方法に従ってポリイミド前駆体を重合した。しかしながら固有粘度値は0.414dL/gと低い値であった。これはct‐CHTCAを使用しなかったため、ポリイミド前駆体の分子量が十分に上がらなかったためである。
本発明に係るct‐CHTCAは、ポリイミドの原料として優れているので、化学品、繊維、試薬等に関する化学分野に広く応用することが可能である。
製造例1で得たtt‐CHTCの立体構造を示す図である。 製造例2で得たtt‐CHTCAの赤外吸収スペクトルを示す図である。 製造例1で得た無水化前のtt‐CHTCの粉末X線回折パターンを示す図である。 製造例2で得たtt‐CHTCAの加水分解物のX線回折パターンを示す図である。 実施例1で得たct‐CHTCAの立体構造を示す図である。 実施例3で得たポリイミド薄膜(tt‐CHTCA+ODA)の赤外吸収スペクトルを示す図である。 実施例5で得たポリイミド薄膜(tt‐CHTCA+TRE−R)の赤外吸収スペクトルを示す図である。 実施例6で得たポリイミド薄膜(tt‐CHTCA+BAPP)の赤外吸収スペクトルを示す図である。

Claims (13)

  1. (1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物。
  2. (1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を40%以上含有することを特徴とする1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物。
  3. (1S,2S,4R,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を加熱することによって異性化させる工程を含むことを特徴とする(1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
  4. 脱水剤存在下、(1S,2S,4R,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸を加熱することによって無水化反応させる工程を含むことを特徴とする(1R,2S,4S,5R)‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
  5. 一般式(1)
    Figure 0005325460
    (上記一般式(1)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表し、Rは水素原子、トリアルキルシリル基、炭素数1〜12の直鎖状、炭素数1〜12の分岐状若しくは炭素数6〜12の環状のアルキル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれる置換基を表し、Aは2価の芳香族基又は脂肪族基を表し、上記Xの立体配置は、以下の式(2)で表され、
    Figure 0005325460
    上記Xと結合している2つのアミド基及び2つのカルボキシル基またはエステル基の結合位置は下記式(3)又は(4)で表される
    Figure 0005325460
    Figure 0005325460
    (式(3)及び(4)において、Yは上記Xに結合するアミド基を示し、Zは上記Xに結合するカルボキシル基またはエステル基を表す))
    で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体。
  6. 一般式(5)
    Figure 0005325460
    (式(5)中、Xは4価のシクロヘキサン基を表し、Aは2価の芳香族基又は脂肪族基を表し、上記Xの立体配置は下記式(2)で表される)
    Figure 0005325460
    で表される繰り返し単位を有するポリイミド。
  7. ポリイミド前駆体の合成原料として、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が用いられる際に、
    上記1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を40%以上含有することを特徴とするポリイミド前駆体。
  8. ポリイミドの合成原料として、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が用いられる際に、
    上記1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を40%以上含有することを特徴とするポリイミド。
  9. 請求項5又は7に記載のポリイミド前駆体及び感光剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
  10. 請求項9に記載の感光性樹脂組成物を、基材上にパターン露光し、パターン露光後に現像し、現像後に加熱硬化することにより得られるものであるパターンが形成されていることを特徴とする構造体。
  11. 請求項6又は8に記載のポリイミドを含有するものであることを特徴とするディスプレー用基板。
  12. 請求項6又は8に記載のポリイミドを含有するものであることを特徴とする集積回路の層間絶縁膜。
  13. 請求項6又は8に記載のポリイミドを含有するものであることを特徴とする液晶配向膜。
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