JP5321537B2 - ステアリング装置 - Google Patents

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本発明はステアリング装置、特に、運転者の体格や運転姿勢に応じて、ステアリングホイールのチルト位置を調整することができるチルト式のステアリング装置に関する。
運転者の体格や運転姿勢に応じてステアリングホイールの上下方向位置を調整する為の装置として、チルト式ステアリング装置と呼ばれるステアリング装置がある。また、ステアリングホイールの上下方向位置と前後方向位置の両方の位置を調整する為の装置として、チルト・テレスコピック式ステアリング装置と呼ばれるステアリング装置がある。
図6(a)は、特許文献1のステアリング装置の要部を示す側面図である。図6(a)に示すように、従来のステアリング装置では、ばね71の付勢力によってコラム72をチルト上方側に常時付勢している。これによって、チルト位置調整時に車体取付けブラケット73に対するコラム72のチルトクランプを解除した時に、コラム72の自重によって、コラム72が下方に傾動するのを防止している。また、コラム72の自重を手で支えなくても、ステアリングホイールのチルト位置調整が楽に出来るようにしている。
ステアリング装置を車体に取り付ける前の状態では、図6(a)に示すように、車体取付けブラケット73に対するコラム72のチルト位置を、車体取付けブラケット73を車体に取り付け易いチルト位置(例えばチルト調整の中間位置)に設定する。このチルト位置で操作レバー74を操作し、車体取付けブラケット73の側板731を図示しない締付けロッドによってコラム72に締付け、車体取付けブラケット73に対してコラム72を、チルト移動不能にクランプしている。また、特許文献1のステアリング装置では、ばね71の付勢力Fの作用線711は、締付けロッドの中心75から距離Lだけ離れている。
このような従来のステアリング装置を車体に取り付ける前の状態で、図6(b)に示すように、操作レバー74が何かに当たって少し緩むと、車体取付けブラケット73に対するコラム72のチルトクランプが少し緩んでしまうことがある。すると、ばね71の付勢力Fによって、締付けロッドの中心75を支点とする回転モーメントM(M=F・L)が、コラム72と車体取付けブラケット73との間に働く。その結果、比較的軽量な車体取付けブラケット73がコラム72に対して角度βだけ傾き、車体取付けブラケット73を車体に取り付ける作業がやりにくくなってしまう場合がある。
特許第3560490号公報
本発明は、ステアリング装置を車体に取り付ける前の状態で、車体取付けブラケットに対するコラムのチルトクランプが少し緩んだ時に、ばねの付勢力によって、コラムと車体取付けブラケットとの間の相対位置が変化しにくいステアリング装置を提供することを課題とする。
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、車体後方側にステアリングホイールが装着されるステアリングシャフトを回転可能に軸支するとともに、車体前方側がチルト中心軸を支点にして枢動可能に車体に取り付け可能なコラム、車体に取り付け可能で、上記コラムの車体後方側をチルト摺動可能に挟持する側板を有する車体取付けブラケット、上記車体取付けブラケットの側板を締付け、上記コラムをチルト移動不能にクランプする締付けロッド、を備え、
上記コラムは、インナーコラムと、当該インナーコラムの外周に軸方向に摺動可能に嵌合ししたアウターコラムとからなり、上記アウターコラムには、当該アウターコラムを車幅方向左右両側から挟み込むように上記車体取り付けブラケットが取り付けられており、上記車体取り付けブラケットは、上板、およびこの上板から上記アウターコラムの左右それぞれの下方に延びて、チルト調整用長溝が形成された上記側板を有し、上記アウターコラムには、当該アウターコラムの上方に突出して一体的に形成されると共に、貫通孔を有して各側面が上記車体取り付けブラケットの上記各側板の内側面に摺動可能に接するディスタンスブラケットが設けられており、上記チルト調整用長溝と上記ディスタンスブラケットの上記貫通孔を通して左右方向に挿入された上記締付けロッドを有し、上記車体取付けブラケットの上記締付けロッドの中心よりも車体後方端部の上方側に設けた係合孔と、当該車体取付けブラケットと上記アウターコラムの車体下方で、かつ上記締付けロッドの中心よりも車体前方側で車幅方向外側に突出して形成された係止突起との間に掛け渡され、上記コラムをチルト上方側に付勢するばねを有し、上記ばねの付勢力の作用線が上記締付けロッドの中心を通ることを特徴とするステアリング装置である。
第2番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記コラムのチルト調整の中間位置で、上記ばねの付勢力の作用線が上記締付けロッドの中心を通ることを特徴とするステアリング装置である。

第3番目の発明は、第1番目または第2番目のいずれかの発明のステアリング装置において、上記ばねが引っ張りコイルばねであることを特徴とするステアリング装置である。
本発明のステアリング装置は、車体取付けブラケットとコラムとの間に掛け渡され、コラムをチルト上方側に付勢するばねの付勢力の作用線が、締付けロッドの中心近傍を通る。従って、コラムと車体取付けブラケットとの間に作用する回転モーメントが非常に小さく抑えられて、コラムと車体取付けブラケットとの間の相対位置が変化しにくい。その結果、ステアリング装置を車体に取り付ける作業を効率的に行うことができる。
本発明の実施例のステアリング装置の全体斜視図である。 本発明の実施例のステアリング装置の要部を示す側面図である。 本発明の実施例のステアリング装置の要部を示す斜視図であり、車体前方側でかつ車体下方側から見た斜視図である。 本発明の実施例のステアリング装置の要部を示す斜視図であり、車体後方側でかつ車体上方側から見た斜視図である。 図2のA−A拡大断面図である。 従来のステアリング装置の要部を示す側面図であり、(a)はコラムを車体取付けブラケットに対してチルト移動不能にクランプした状態を示す側面図、(b)は操作レバーを誤って緩め、車体取付けブラケットがコラムに対して傾いた状態を示す側面図である。
以下の実施例では、ステアリングホイールのチルト位置の調整だけを行うチルト式のステアリング装置に本発明を適用した例について説明する。
図1は本発明の実施例のステアリング装置の全体斜視図であり、コラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置である。図1に示すコラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置は、ステアリングホイール101の操作力を軽減するために、コラム105に取付けた操舵補助部(電動アシスト機構)102の操舵補助力をステアリングシャフトに付与し、中間シャフト106を介して、ラックピニオン式のステアリングギヤ103のラックを往復移動させ、タイロッド104を介して舵輪を操舵する方式のパワーステアリング装置である。
図2は本発明の実施例のステアリング装置の要部を示す側面図である。図3は本発明の実施例のステアリング装置の要部を示す斜視図であり、車体前方側でかつ車体下方側から見た斜視図である。図4は本発明の実施例のステアリング装置の要部を示す斜視図であり、車体後方側でかつ車体上方側から見た斜視図である。図5は図2のA−A拡大断面図である。
図2から図5に示すように、インナーコラム10の外周には、軸方向に摺動可能にアウターコラム11が嵌合している。アウターコラム11には、ステアリングシャフト12が回転可能に軸支され、ステアリングシャフト12の左端(車体後方側)には、図1のステアリングホイール101が固定されている。本発明の実施例では、アウターコラム11は、アルミダイカスト製の一体成型品であるが、鋼管にディスタンスブラケットを溶接したものであってもよい。また、軽量化を目的として、マグネシウムダイカスト製であってもよい。
アウターコラム11の右側(車体前方側)には、アウターコラム11を左右両側から挟み込むようにして、車体取付けブラケット3が取付けられている。車体取付けブラケット3は、車体41(図5参照)に固定されたアルミ合金製等のカプセル42を介して、車体前方側に離脱可能に取付けられている。
アウターコラム11は、二次衝突時にステアリングホイール101に運転者が衝突して大きな衝撃力が作用すると、カプセル42から車体取付けブラケット3が車体前方側に離脱し、インナーコラム10に案内されて車体前方側にコラプス移動し、平板状の衝撃エネルギー吸収部材43が塑性変形して、衝撃エネルギーを吸収する。
インナーコラム10の車体前方側(右側)には、操舵補助部102(電動アシスト機構)のハウジング21の左端が圧入によって固定される。操舵補助部102は、電動モータ23、減速ギヤボックス部24、出力軸25等から構成されている。操舵補助部102は枢動ピン22(図3参照)を介して車体41にチルト可能に支持されている。
操舵補助部102は、ステアリングシャフト12に作用するトルクを検出し、電動モータ23を駆動して、出力軸25を所要の操舵補助力で回転させ、中間シャフト106を経由して、ステアリングギヤ103に連結され、車輪の操舵角を変えることができる。
図5に示すように、車体取付けブラケット3は、上板32と、この上板32から下方に延びる側板33、34を有している。上記アウターコラム11には、アウターコラム11の上方に突出して、ディスタンスブラケット13が一体的に形成されている。ディスタンスブラケット13の側面14、15は、車体取付けブラケット3の側板33、34の内側面331、341に摺動可能に接している。
車体取付けブラケット3の側板33、34には、チルト調整用長溝35、36が形成されている。チルト調整用長溝35、36は、上記した枢動ピン22を中心とする円弧状に形成されている。ディスタンスブラケット13には、図5の左右方向に延びる円形の貫通孔16、17が形成されている。
丸棒状の締付けロッド5が、上記チルト調整用長溝35、36及び貫通孔16、17を通して、図5の右側から挿入されている。締付けロッド5の右端には円筒状の頭部51が形成されている。締付けロッド5の左端には、側板33の外側面332の外側に、固定カム52、可動カム53、操作レバー54が、この順で外嵌されている。また、締付けロッド5の左端に形成された雄ねじ56にナット55の内径部に形成された雌ねじ(図示せず)がねじ込まれ、ナット55の右端面が操作レバー54に当接している。
固定カム52と可動カム53の対向する端面には、相補的な傾斜カム面が形成され、互いに噛み合っている。可動カム53の左側面に連結された操作レバー54を手で操作すると、可動カム53が固定カム52に対して回動する。
操作レバー54をクランプ方向に回動すると、固定カム52の傾斜カム面の山に可動カム53の傾斜カム面の山が乗り上げ、締付けロッド5を図5の左側に引っ張ると同時に、固定カム52を図5の右側に押す。
側板33は、固定カム52の右端面によって右側に押され、側板33が内側に変形し、側板33の内側面331がディスタンスブラケット13の側面14に強く押しつけられる。同時に、右側の頭部51は、側板34の外側面342を押圧して、側板34を内側に変形させ、側板34の内側面341をディスタンスブラケット13の側面15に強く押しつける。
このようにして、アウターコラム11のディスタンスブラケット13を、車体取付けブラケット3に強固に締付けることができる。従って、車体取付けブラケット3に対してアウターコラム11が固定され、アウターコラム11のチルト方向の変位が阻止される。
次に、運転者が操作レバー54を締付解除方向に回動すると、フリーな状態における間隔がディスタンスブラケット13の側面14、15の外側の幅より広く設定された車体取付けブラケット3の側板33、34が、挟持方向と反対の方向へそれぞれ弾性復帰する。
そこで、前記アウターコラム11は、車体取付けブラケット3の側板33、34に対してフリーな状態となる。従って、前記締付けロッド5をチルト調整用長溝35、36に案内させつつチルト方向に変位させることで、ステアリングホイール101のチルト方向の調整を任意に行うことができる。
車体取付けブラケット3の上板32とアウターコラム11との間には、引っ張りコイルばね(ばね)6が掛け渡されている。引っ張りコイルばね6の上側のフック61は、上板32の車体後方側端部に形成された係合孔37に係合している。引っ張りコイルばね6の下側のフック62は、アウターコラム11の車体下方側に形成された係合突起111の係合溝112に係合している。係合突起111は、アウターコラム11から車幅方向外側に突出して形成されている。また、引っ張りコイルばね6は、カプセル42と車体取付けブラケット3の側板33の間に配置され、車体取付けブラケット3の車体41への取付作業の障害にならないようになっている。
車体取付けブラケット3が車体41に固定された状態では、図2の矢印に示すように、引っ張りコイルばね6の付勢力Fは、アウターコラム11をチルト上方側に付勢している。従って、チルト位置調整時に車体取付けブラケット3に対するアウターコラム11のチルトクランプを解除した時に、アウターコラム11、インナーコラム10、ステアリングホイール101、エアバッグ等の重量物の自重によって、アウターコラム11が下方に傾動するのを防止している。さらに、アウターコラム11、インナーコラム10、ステアリングホイール101、エアバッグ等の重量物の自重を手で支えなくても、ステアリングホイール101のチルト位置調整が楽に出来るようにしている。
また、付勢力Fの作用線63は、図2に示すように、アウターコラム11のチルト調整の中間位置で、締付けロッド5の中心57の近傍を通るように設定されている。ステアリング装置を車体41に取り付ける前の状態で、操作レバー54が何かに当たって少し緩み、車体取付けブラケット3に対するアウターコラム11のチルトクランプが少し緩んだ場合を想定する。引っ張りコイルばね6の付勢力Fは、アウターコラム11と車体取付けブラケット3との間に作用している。
付勢力Fの作用線63が締付けロッド5の中心57の近傍を通るため、アウターコラム11と車体取付けブラケット3との間に作用する回転モーメント(締付けロッド5の中心57を支点とする付勢力Fによる回転モーメント)が非常に小さく抑えられて、アウターコラム11と車体取付けブラケット3との間の相対位置は変化しにくい。従って、ステアリング装置を車体に取り付ける作業を効率的に行うことができる。
本発明の実施例では、アウターコラム11のチルト調整の中間位置で、付勢力Fの作用線63が、締付けロッド5の中心57の近傍を通るように設定されている。従って、アウターコラム11のチルト調整の上端位置、または下端位置では、アウターコラム11と車体取付けブラケット3との間には、付勢力Fによる若干の回転モーメントが作用する。しかし、側板33、34の内側面331、341と、ディスタンスブラケット13の側面14、15との間に作用する摩擦力によって、アウターコラム11と車体取付けブラケット3との間の相対位置は変化しにくい。
図2に示すように、本発明の実施例では、引っ張りコイルばね6の付勢力Fの作用線63は、アウターコラム11の中心軸線113に対して直角では無く、車体後方側に角度αだけ傾斜して設定されている。従って、アウターコラム11には、付勢力Fの中心軸線113に平行な分力F1が常時作用している。この分力F1は、アウターコラム11を常時車体後方側に引っ張る。
従って、アウターコラム11がインナーコラム10に対して、テレスコピック位置とチルト位置の両方の位置調整が可能なチルト・テレスコピック式のステアリング装置の場合には、テレスコピック引き方向(重力に逆らってアウターコラム11を車体後方側に引っ張る)のテレスコピック位置調整操作が楽に行える効果が生じる。
上記実施例では、チルト位置だけの調整が可能なチルト式のステアリング装置に適用した例について説明したが、テレスコピック位置とチルト位置の両方の位置調整が可能なチルト/テレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用してもよい。
101 ステアリングホイール
102 操舵補助部(電動アシスト機構)
103 ステアリングギヤ
104 タイロッド
105 コラム
106 中間シャフト
10 インナーコラム
11 アウターコラム
111 係合突起
112 係合溝
113 中心軸線
12 ステアリングシャフト
13 ディスタンスブラケット
14、15 側面
16、17 貫通孔
21 ハウジング
22 枢動ピン
23 電動モータ
24 減速ギヤボックス部
25 出力軸
3 車体取付けブラケット
32 上板
33、34 側板
331、341 内側面
332、342 外側面
35、36 チルト調整用長溝
37 係合孔
41 車体
42 カプセル
43 衝撃エネルギー吸収部材
5 締付けロッド
51 頭部
52 固定カム
53 可動カム
54 操作レバー
55 ナット
56 雄ねじ
57 中心
6 引っ張りコイルばね
61、62 フック
63 作用線
71 ばね
711 作用線
72 コラム
73 車体取付けブラケット
731 側板
74 操作レバー
75 中心

Claims (3)

  1. 車体後方側にステアリングホイールが装着されるステアリングシャフトを回転可能に軸支するとともに、車体前方側がチルト中心軸を支点にして枢動可能に車体に取り付け可能なコラム、
    車体に取り付け可能で、上記コラムの車体後方側をチルト摺動可能に挟持する側板を有する車体取付けブラケット、
    上記車体取付けブラケットの側板を締付け、上記コラムをチルト移動不能にクランプする締付けロッド、
    を備え、
    上記コラムは、インナーコラムと、当該インナーコラムの外周に軸方向に摺動可能に嵌合ししたアウターコラムとからなり、
    上記アウターコラムには、当該アウターコラムを車幅方向左右両側から挟み込むように上記車体取り付けブラケットが取り付けられており、
    上記車体取り付けブラケットは、上板、およびこの上板から上記アウターコラムの左右それぞれの下方に延びて、チルト調整用長溝が形成された上記側板を有し、
    上記アウターコラムには、当該アウターコラムの上方に突出して一体的に形成されると共に、貫通孔を有して各側面が上記車体取り付けブラケットの上記各側板の内側面に摺動可能に接するディスタンスブラケットが設けられており、
    上記チルト調整用長溝と上記ディスタンスブラケットの上記貫通孔を通して左右方向に挿入された上記締付けロッドを有し、
    上記車体取付けブラケットの上記締付けロッドの中心よりも車体後方端部の上方側に設けた係合孔と、当該車体取付けブラケットと上記アウターコラムの車体下方で、かつ上記締付けロッドの中心よりも車体前方側で車幅方向外側に突出して形成された係止突起との間に掛け渡され、上記コラムをチルト上方側に付勢するばねを有し、
    上記ばねの付勢力の作用線が上記締付けロッドの中心を通ること
    を特徴とするステアリング装置。
  2. 請求項1に記載されたステアリング装置において、
    上記コラムのチルト調整の中間位置で、上記ばねの付勢力の作用線が上記締付けロッドの中心を通ること
    を特徴とするステアリング装置。
  3. 請求項1または請求項2のいずれかに記載されたステアリング装置において、
    上記ばねが引っ張りコイルばねであること
    を特徴とするステアリング装置。
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