JP5321111B2 - マイクロホンユニット - Google Patents
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Description
本発明は、音圧(例えば音声により生じる)を電気信号に変換して出力するマイクロホンユニットに関する。
従来、例えば、携帯電話やトランシーバ等の音声通信機器、又は音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、或いは録音機器、といった音声入力装置にマイクロホンユニットが適用されている(例えば、特許文献1や2参照)。マイクロホンユニットは、入力される音声を電気信号に変換して出力する機能を有する。
図17は、従来のマイクロホンユニット100の構成を示す概略断面図である。図17に示すように、従来のマイクロホンユニット100は、基板101と、基板101に実装されて音圧を電気信号に変換する電気音響変換部102と、基板101に実装されて電気音響変換部102で得られる電気信号の増幅処理等を行う電気回路部103と、基板101に実装される電気音響変換部102や電気回路部103を粉塵等から保護するカバー104と、を備える。カバー104には音孔(貫通孔)104aが形成されており、外部の音が電気音響変換部102へと導かれるようになっている。
なお、図17に示すマイクロホンユニット100においては、電気音響変換部102や電気回路部103はダイボンディングおよびワイヤボンディング技術を用いて実装されている。
このようなマイクロホンユニット100においては、特許文献1にも示されるように、電気音響変換部102や電気回路部103が外部からの電磁ノイズによる影響を受けないように、カバー104は電磁シールド機能を有する材料で形成されるのが一般的である。また、特許文献2に示されるように、電気音響変換部102や電気回路部103における電磁ノイズ対策のために、導電層が絶縁層に埋設されるように基板101を絶縁層と導電層とにより多層に形成して電磁シールドを行うことも行われている。
ところで、近年においては電子機器の小型化が進んでおり、マイクロホンユニットについても小型・薄型化が望まれている。このようなことから、マイクロホンユニットが備える基板について肉厚が薄いフィルム基板(例えば50μm程度或いはそれ以下)を使うことが考えられる。
しかしながら、本発明者らの検討により、薄型化を満たすためにフィルム基板上に導電パターンを形成し、このパターン上に電気音響変換部を実装した場合、マイクロホンユニットの感度が低下するという問題が発生することがわかった。特に、電気音響変換部の近傍において広範囲に導電層を設けた場合において、感度が低下する、あるいは電気音響変換部の振動板に皴が発生する等の問題が発生し易いことがわかった。
図18は、フィルム基板に導電層をパターニングする場合の問題点を説明するための図である。ここで、図18に示すように、フィルム基板201の厚みをx(μm)、導電層202の厚みをy(μm)、フィルム基板201の線膨張係数をa(ppm/℃)、導電層202の線膨張係数をb(ppm/℃)とする。また、導電層202を含めたフィルム基板201の線膨張係数をβ(ppm/℃)とする。
この場合、フィルム基板201の導電層202が設けられている部分においては以下の式(1)が成り立つ。
β(x+y)=ax+by (1)
したがって、導電層202を含めたフィルム基板201の線膨張係数βは式(2)のように表すことができる。
β=(ax+by)/(x+y) (2)
β(x+y)=ax+by (1)
したがって、導電層202を含めたフィルム基板201の線膨張係数βは式(2)のように表すことができる。
β=(ax+by)/(x+y) (2)
フィルム基板201はその厚み(x)が薄いために、式(2)からもわかるように、導電層202を含めたフィルム基板201の線膨張係数(β)について、導電層202が有する線膨張係数(b)の影響が無視できなくなる。このため、フィルム基板に導電層を広範囲に形成すると、導電層を含めたフィルム基板の線膨張係数は、フィルム基板単体の線膨張係数に対して大きく変化することになる。特に、フィルム基板の電気音響変換部の近傍に導電層を広範囲に形成すると、この変化は大きくなる。
ところで、マイクロホンユニット100における電気音響変換部102は、例えばシリコンで形成されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップとすることができる。このMEMSチップの基板への搭載方法として、接着剤によるダイボンディング、ハンダ等によるフリップチップ実装等がある。表面実装技術(SMT:Surface mount technology)を用いたフリップチップ実装の場合、MEMSチップはリフロー処理によって基板101に実装することができる。
フリップチップ実装によれば、ダイボンディングおよびワイヤボンディングのように個別に実装処理する方法に比べて、複数のチップを一括処理して生産ができるため効率が良いといった利点がある。このようにMEMSチップを実装する場合、MEMSチップと基板101上の導電層(導電パターン)とが直接的に接合される。このため、MEMSチップの線膨張係数と基板の線膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)の差が大きいと、リフロー処理時の温度変化の影響でMEMSチップに応力がかかり易くなる。その結果、MEMSチップの振動板が撓み、マイクロホンユニットの感度が悪化することがある。このようなことから、MEMSチップが実装される基板の線膨張係数は、MEMSチップの線膨張係数と同程度とするのが好ましい。
しかしながら、薄型化を満たすためにフィルム基板を用いつつ、当該フィルム基板上に導電パターンを形成して、この導電パターン上に電気音響変換部を実装した場合、特に電気音響変換部の近傍において広範囲に導電層を設ける構成とすると、上述のように導電層を含めたフィルム基板全体の実効的な線膨張係数がフィルム基板単体の線膨張係数に対して大きく変化する。導電層は例えば銅(その線膨張係数は例えば16.8ppm/℃)等の金属によって形成されるのが普通で、MEMSチップを構成するシリコン(その線膨張係数は3ppm/℃程度)等よりも大きな線膨張係数を有する。このため、フィルム基板単体の線膨張係数をMEMSチップの線膨張係数に合わせても、導電層を含むフィルム基板全体の実効的な線膨張係数はMEMSチップの線膨張係数よりかなり大きくなってしまう。これにより、リフロー過程でMEMSチップの振動板に残留応力をもたらし、結果として、マイクロホンユニットの感度が悪化し、望ましいマイク特性が得られないという問題があった。
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、振動板に対する応力歪みを効果的に抑圧できて、薄型で高感度な高性能のマイクロホンユニットを提供することである。
上記目的を達成するために本発明のマイクロホンユニットは、フィルム基板と、前記フィルム基板の両基板面の少なくとも一方に形成される導電層と、振動板を含んで音圧を電気信号に変換する電気音響変換部と、を備えるマイクロホンユニットであって、少なくとも前記電気音響変換部近傍の領域で、前記導電層を含めた前記フィルム基板の線膨張係数が、前記振動板の線膨張係数の0.8倍以上2.5倍以下の範囲であることを特徴とする。
本構成によれば、マイクロホンユニットが備える基板をフィルム基板としているために、マイクロホンユニットの薄型化が可能である。そして、フィルム基板上に設ける導電層の構成を適切に設定して、導電層を含めたフィルム基板の線膨張係数が、振動板の線膨張係数の0.8倍以上2.5倍以下の範囲であることとしている。このため、振動板への応力を抑制あるいは振動板の張力を緩和でき、高感度で高性能なマイクロホンユニットを得ることができる。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記フィルム基板の線膨張係数aと、前記導電層の線膨張係数bと、前記振動板の線膨張係数cとは、a<c<bなる関係を満たし、前記導電層を含めた前記フィルム基板の線膨張係数が、前記振動板の線膨張係数cと略等しくなるように形成されていることとしてもよい。
本構成によれば、振動板に加わる応力を0に近づけることができる。すなわち、導電パターンからの圧縮方向応力とフィルム基板からの引張り方向応力とが打ち消し合うようにできるため、リフロー工程における加熱後の冷却時において、振動板に対して不要な応力がかかるのを防止し、正常な振動モードで振動させることが可能となる。したがって、本構成によれば、薄型で高性能な信頼性の高いマイクロホンユニットを得ることが可能となる。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記フィルム基板の線膨張係数aと、前記導電層の線膨張係数bと、前記振動板の線膨張係数cとは、c≦a<bなる関係を満たし、前記導電層を含めた前記フィルム基板の線膨張係数が、前記振動板の線膨張係数cの1.0倍より大きく2.5倍以下の範囲であることとしてもよい。
本構成によれば、フィルム基板上に設ける導電層の構成を適切に設定して、導電層を含めたフィルム基板の線膨張係数を振動板の線膨張係数に近づけることとしている。このため、振動板に捻じれや局所的な撓みが発生することを防止して、正常な振動モードで振動させることが可能となり、また適正に振動板の張力を緩和することより、高性能で信頼性の高いマイクロホンを実現することができる。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記導電層は、前記フィルム基板の基板面の広範囲に亘って形成されていることとしてもよい。これにより、電磁シールド効果を十分に確保することが可能となる。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記電気音響変換部の前記振動板はシリコンで形成されていることとしてもよい。このような振動板はMEMS工法を用いて得られる。この構成により、超小型で高特性なマイクロホンユニットを実現することができる。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記フィルム基板は、ポリイミドフィルム基材で形成されていることとしてもよい。この場合、線膨張係数がシリコンよりも小さいポリイミドフィルム基材を用いるのが好ましい。これにより、導電パターンからの圧縮方向応力とフィルム基板からの引張り方向応力とが打ち消し合うように制御して振動板に加わる応力を0に近づけることができる。このため、耐熱性に優れ、薄型で高性能で、信頼性の高いマイクロホンユニットを得ることが可能となる。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記導電層は、少なくとも一部の領域においてメッシュ状の導電パターンとなっているのが好ましい。
本構成によれば、導電層を広範囲に形成する場合でも、導電層を含めたフィルム基板の線膨張係数が、フィルム基板単体の線膨張係数から大きくずれることを抑制することができる。また、導電層を広範囲に形成できるので、電磁シールド効果を高めることが可能である。そして、導電層を含むフィルム基板の線膨張係数が電気音響変換部の線膨張係数に近い値であるので、リフロー処理等の加熱冷却工程によって電気音響変換部に不要な残留応力が加わるのを抑制できる。
また、前記メッシュ状の導電パターンが、前記フィルム基板の両基板面に形成される構成のマイクロホンユニットにおいて、一方の面に形成される前記メッシュ状の導電パターンと、他方の面に形成される前記メッシュ状の導電パターンとは、位置関係が互いにずれた関係となっていることとしてもよい。
本構成によれば、メッシュ状の導電パターンをフィルム基板の広範囲に形成しつつ、実質的にメッシュの間隔(ピッチ)を狭くすることができる。このため、電磁シールド効果を高めることが可能である。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記メッシュ状の導電パターンが、グランド接続用の配線パターンであってもよい。これにより、メッシュ状の導電パターンが、GND配線としての機能と電磁シールド機能との両方を備える構成とできる。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記電気音響変換部が、前記フィルム基板にフリップチップ実装されていることとしてもよい。電気音響変換部をフィルム基板にフリップチップ実装する場合、特にフィルム基板の線膨張係数と電気音響変換部の線膨張係数との差がマイクロホンユニットの性能に与える影響が大きくなりやすい。このため、本構成は有効である。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記電気音響変換部と前記導電層とは、前記振動板の中心からの距離が等しい複数の箇所で接合されていることとしてもよい。そして、この構成において、前記電気音響変換部は平面視略矩形状に形成され、前記複数の接合部は前記電気音響変換部の四隅に形成されていることとしてもよい。このように構成することで、電気音響変換部に加わる残留応力を低減しやすい。
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記メッシュ状の導電パターンと前記電気音響変換部とが平面視重ならないように配置されていることとしてもよい。このように構成することで、電気音響変換部に加わる残留応力を低減可能である。
本発明によれば、振動板に対する応力歪みを効果的に抑圧できて、薄型で高感度な高性能のマイクロホンユニットを提供できる。
以下、本発明を適用したマイクロホンユニットの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略斜視図である。図2は、図1におけるA−A位置の概略断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のマイクロホンユニット1は、フィルム基板11と、MEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ12と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)13と、シールドカバー14と、を備える。
フィルム基板11は、例えばポリイミド等の絶縁材料を用いて形成され、50μm程度の肉厚を有する。なお、フィルム基板11の厚みはこれに限らず適宜変更され、例えば50μmより薄くしても構わない。また、フィルム基板11は、その線膨張係数とMEMSチップ12の線膨張係数との差が小さくなるように形成されている。具体的には、MEMSチップ12をシリコンチップからなる構成としているために、その線膨張係数2.8ppm/℃に近くなるように、フィルム基板11の線膨張係数は例えば0ppm/℃以上、5ppm/℃以下となるようにしている。
なお、以上のような線膨張係数を有するフィルム基板として、例えば、東洋紡績株式会社製のゼノマックス(登録商標;線膨張係数0〜3ppm/℃)や荒川化学工業株式会社製のポミラン(登録商標;線膨張係数4〜5ppm/℃)等を使用することができる。また、フィルム基板11とMEMSチップ12との線膨張係数の差を小さくするのは、リフロー処理等を行った際に、両者の線膨張係数の差によって、MEMSチップ12(より詳細には、MEMSチップ12が備える後述の振動板)に不要な応力が発生するのをなるべく低減するためである。
フィルム基板11には、MEMSチップ12及びASIC13が実装されるために、回路配線を形成する目的や電磁シールド機能を獲得する目的のために導電層(図1及び図2には示していない)が形成されている。この導電層の詳細については後述する。
MEMSチップ12は、振動板を含んで音圧を電気信号に変換する電気音響変換部の実施形態である。上述のように、本実施形態ではMEMSチップ12はシリコンチップによって形成している。MEMSチップ12は、図2に示すように、絶縁性のベース基板121と、振動板122と、絶縁層123と、固定電極124と、を有し、コンデンサ型のマイクロホンとなっている。
ベース基板121には平面視略円形状の開口121aが形成されている。ベース基板121の上に形成される振動板122は、音波を受けて振動(上下方向に振動)する薄膜で、導電性を有し、電極の一端を形成している。固定電極124は、絶縁層123を挟んで振動板122と対向するように配置されている。これにより、振動板122と固定電極124とは容量を形成する。なお、固定電極124には音波が通過できるように複数の音孔が形成されており、振動板122の上部側から来る音波が振動板122に到達するようになっている。
振動板122の上面から音圧が加わると振動板122が振動するために、振動板122と固定電極124との間隔が変化し、振動板122と固定電極124との間の静電容量が変化する。このため、MEMSチップ12によって音圧を電気信号へと変換して取り出すことができる。
なお、電気音響変換部としてのMEMSチップの構成は、本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態では振動板122の方が固定電極124よりも下となっているが、これとは逆の関係(振動板が上で、固定電極が下となる関係)となるように構成しても構わない。
ASIC13は、MEMSチップ12の静電容量の変化に基づいて取り出される電気信号を増幅処理する集積回路である。ASIC13は、MEMSチップ13における静電容量の変化を精密に取得できるようにチャージポンプ回路とオペアンプとを含む構成としても良い。ASIC13で増幅処理された電気信号は、マイクロホンユニット1が実装される実装基板を介してマイクロホンユニット1の外部へと出力される。
シールドカバー14は、MEMSチップ12やASIC13が外部からの電磁ノイズによる影響を受けないように、更には、MEMSチップ12やASIC13が粉塵等の影響を受けないように設けられている。シールドカバー14は、略直方体状の空間を有する箱状体で、MEMSチップ12及びASIC13を覆うように配置されてフィルム基板11に接合されている。シールドカバー14とフィルム基板11との接合は、例えば接着剤や半田等を用いて行うことができる。
シールドカバー14の天板には平面視略円形状の貫通孔14aが形成されている。この貫通孔14aにより、マイクロホンユニット1外部で発生した音をMEMSチップ12の振動板122へと導くことができる。すなわち、貫通孔14aは音孔として機能する。この貫通孔14aの形状は本実施形態の構成に限定される趣旨ではなく適宜変更可能である。
次に、フィルム基板11に形成される導電層の詳細について図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態のマイクロホンユニットが備えるフィルム基板に形成される導電層の構成を説明するための図で、図3(a)はフィルム基板11を上から見た場合の平面図、図3(b)はフィルム基板11を下から見た場合の平面図である。図3に示すように、フィルム基板11の両基板面(上面及び下面)には、例えば銅やニッケル、それらの合金等の金属によって形成される導電層15、16が形成されている。
なお、図3(a)には理解を容易とする目的で、破線にてMEMSチップ12(平面視略矩形状に形成される)も示している。特に円形状の破線は、MEMSチップ12の振動板122の振動部分を示している。
フィルム基板11の上面に形成される導電層15には、MEMSチップ12で発生した電気信号を取り出すための出力用パッド151aと、MEMSチップ12をフィルム基板11に接合するための接合用パッド151bと、が含まれる。本実施形態においては、MEMSチップ12はフリップチップ実装される。フリップチップ実装においては、フィルム基板の出力用パッド151aおよび接合用パッド151b部分に対して、スクリーン印刷等を用いて半田ペーストを転写し、その上にMEMSチップ12に設けられた図示しない電極端子を対向させて搭載する。そして、リフロー処理することにより、出力用パッド151aは、MEMSチップ12に形成される図示しない電極パッドと電気的に接合される。出力用パッド151aは、フィルム基板11の内部に形成される図示しない配線と繋がっている。
接合用パッド151bは額縁状に形成されているが、このような構成とするのは次のような理由による。額縁状に接合用パッド151bを形成すれば、MEMSチップ12がフィルム基板11にフリップチップ実装された状態(例えば半田接合された状態)で、MEMSチップ12の下面から開口部121a(図2参照)に音が漏れ込まないようにすることが可能となる。すなわち、音響リーク防止機能を得られるように、接合用パッド151bを額縁状としている訳である。
また、この接合用パッド151bは、フィルム基板11のGND(グランド;これは後述のようにメッシュ状の導電パターン153が該当する)と直接電気的に接続されており、MEMSチップ12のGNDをフィルム基板11のGNDと接続する役割も担っている。
なお、本実施形態においては、MEMSチップ12をフィルム基板11に接合固定するための接合用パッド(接合部)151bを額縁状に連続したリングで形成する構成としたが、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、接合用パッド151bについて、図4(a)、図4(b)に示すような構成等としても構わない。図4は、MEMSチップをフィルム基板に接合固定する接合部の構成の別形態を示す図で、図4(a)は第1の別形態、図4(b)は第2の別形態である。
第1の別形態においては、接合用パッド151bはMEMSチップ12の四隅に対応する位置に複数に分割して設けられている。この構成における接合用パッド151bの形状は特に限定されるものではないが、平面視略L字状とすることができる。
また、第2の別形態においては、本実施形態における額縁状の接合用パッド151b(図3参照)のうち、四隅を接合用パッド151bとして残した構成(計4個の接合用パッド151bが設けられる構成)となっている。第1および第2の別形態のいずれにおいても、振動板122の中心からの距離が等しい複数の箇所で接合固定しているのが特徴である。
本実施形態のように額縁状に連続して繋がる接合用パッド151b(図3参照)とする場合に比べて、第1及び第2の別形態のように接合用パッド151bを複数に分ける構成とした方が、リフロー処理時の加熱冷却によってMEMSチップ12(特に振動板122)に加わる残留応力を低減できる。そして、振動板122にかかる応力を均一にし、正常な振動モードで振動させることが可能であり、高性能で、信頼性の高いマイクロホンユニットを得ることができる。
このため、リフロー処理時の加熱冷却によってMEMSチップ12に加わる残留応力を低減するという目的においては、上述の第1及び第2の別形態のように、振動板122の中央部を挟んで略対称配置される複数の接合用パッドをフィルム基板11に設けて、MEMSチップ12をフィルム基板11に接合する構成とするのが好ましい。そして、上述の残留応力を低減するという目的においては、振動板122から接合用パッド151bまでの距離はなるべく離すのが好ましく、図4(a)、(b)のようにMEMSチップ12の四隅で接合する構成がより好ましい。これにより、振動板122に加わる残留応力を低減して、マイクロホンユニット1の感度劣化をより効果的に抑制できる。
なお、第1の別形態や第2の別形態のように、接合用パッドを複数からなる構成とする場合、上述の音響リーク防止機能が得られなくなるが、必要に応じてシール部材を別途設ければ良い。また、以上の接合用パッド151bに関する記載は、マイクロホンユニットにフィルム基板を用いる場合ばかりでなく、ガラスエポキシ基板(例えばFR−4)等の安価なリジッド基板を用いる場合にも当てはまることである。
また、音響リーク防止のため連続して繋がる接合用パッド151bが必須の場合は、接合用パッド151bと振動板122を略同形状とすることで、振動板122にかかる応力を均一にすることができる。例えば、振動板が円形の場合は、接合用パッド151bを振動板と同心の円形状にすることが好ましい。振動板が矩形の場合は、接合用パッド151bも相似の矩形形状にすることが好ましい。
図3に戻って、フィルム基板11の上面に形成される導電層15には、MEMSチップ12からの信号をASIC13に入力するための入力用パッド152aと、ASIC13のGNDをフィルム基板11のGND153と接続するためのGND接続用パッド152bと、ASIC13に電源電力を入力するための電源電力入力用パッド152cと、ASIC13で処理された信号を出力するための出力用パッド152dと、が含まれる。これらのパッド152a〜152dは、ASIC13に形成される電極パッドとフリップチップ実装によって電気的に接続される。
入力用パッド152aは、フィルム基板11の内部に形成される図示しない配線と繋がっており、上述の出力用パッド151aと電気的に接続されている。これにより、MEMSチップ12とASIC13との間で信号の受け渡しが可能となっている。
なお、本実施形態においては、フィルム基板11の内部に設けられる配線で出力用パッド151aと入力用パッド152aとを電気的に接続する構成となっているが、この構成に限られない。例えば、フィルム基板11の下面に設けられる配線で両者を接続しても良い。また、接合用パッド151bを例えば図4のように構成する場合には、フィルム基板11の上面に設けられる配線で両者を接合することも可能である。
フィルム基板11には、MEMSチップ12が実装される直下を含む広範囲に亘って導電パターン153(その詳細は後述する)が形成される。本実施形態のマイクロホンユニットのようにフィルム基板の広範囲に亘って導電パターン(導電層)を形成する場合、振動板122に対する応力歪みを考慮するにあたって、導電層を含めたフィルム基板の線膨張係数を考える必要がある。これについて、以下、図5〜図11を参照しながら詳細に説明しておく。
図5は、導電層を含めたフィルム基板の線膨張係数について説明するためのモデル図で、図5(a)は概略断面図、図5(b)は上から見た場合の概略平面図である。図5に示すように、フィルム基板21上に導電パターン(導電層)25を形成し、導電パターン25上に電気音響変換部22を接合する場合を考える。電気音響変換部22は振動板222と振動板222を保持するベース基板221と、固定電極224と、を含んで構成されている。このモデルの場合、i)フィルム基板21の線膨張係数と、ii)導電パターン25の線膨張係数と、iii)振動板222の線膨張係数と、の主に3つを考慮する必要がある。
MEMS(micro electro mechanical systems)技術を用いて振動板222をシリコンで形成する場合、振動板222の線膨張係数は例えば2.8ppm/℃となる。フィルム基板21上の導電パターン25には一般的にメタル材料が使用され、線膨張係数は10〜20ppm/℃付近に分布し、シリコンの線膨張係数よりも大きくなる。導電パターン25として、例えば銅を使用した場合の線膨張係数は16.8ppm/℃である。
フィルム基板21は半田リフロー耐性を考慮して、ポリイミド等の耐熱性のフィルムが多く用いられる。通常のポリイミドの線膨張係数は10〜40ppm/℃であり、その構造・組成によってその値は変化する。最近では、低線膨張係数のポリイミドフィルムが開発されており、シリコンの値に近いもの(登録商標:ポラミン、荒川化学工業社製、4〜5ppm/℃)や、さらにはシリコンの値よりも小さいもの(登録商標:ゼノマックス、東洋紡社製、0〜3ppm/℃)などが開発されている。
ここで、フィルム基板21の線膨張係数が振動板222の線膨張係数よりも小さい場合、すなわち、(フィルム基板の線膨張係数<振動板の線膨張係数<導電パターンの線膨張係数)なる関係が成り立つときを考える。
フィルム基板21上の導電パターン25に電気音響変換部22をフリップチップ実装するため、電気音響変換部22を接合する導電パターン25の部分にスクリーン印刷等の手法を用いて半田ペーストを転写し、電気音響変換部22を搭載して、リフロー工程に通す。この場合、加熱後の冷却時に半田融点付近で半田31が固化して電気音響変換部22と導電パターン25との位置関係が決まる。半田31が固化する前の溶融状態にあるときは振動板222には応力がかからない。しかし、冷却過程において固化してから以降は、導電パターン25は振動板222よりも収縮量が大きく、フィルム基板21は振動板222よりも収縮量が小さい。このため、線膨張係数差に起因して、図6に示すように、導電パターン25は振動板222に対する圧縮方向応力を、フィルム基板21は振動板222に対する引張り方向応力を生じる。半田融点と室温との温度差が大きいほどこの応力は大きく発生する。
なお、図6は、図5に示すモデルでフィルム基板の線膨張係数が振動板の線膨張係数よりも小さい場合において、MEMSチップが備える振動板に加わる応力を説明するための図である。
ここで、導電パターン25が形成されたフィルム基板21は2層の積層構造となっており、フィルム基板21の厚みがxで線膨張係数がa、導体パターン25の厚みがyで線膨張係数がbなる場合を考える。導体パターン25の厚みに対する、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数特性は図7のようになる。図7の横軸は、2層構造の全体の厚みに対する導体層(導電パターン)の厚み比率y/(x+y)、縦軸は2層構造の線膨張係数である。
図7において、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数は、導電パターン25とフィルム基板21の厚み比率に応じて変化し、導体パターン25の厚み比率が0のとき線膨張係数=a、導体パターン25の厚み比率が1のとき線膨張係数=bとなることを示している。また、縦軸上にシリコンの線膨張係数2.8ppm/℃を示している。この図から、a<2.8<bの関係が成り立てば、導体パターン25の厚み比率をαに設定することで、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数をシリコンの線膨張係数と一致させることができることがわかる。
図8は、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数(積層構造全体のCTE)と振動板222に対する応力との関係を表すグラフである。導体パターン25の厚み比率を適切に設定して、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数をシリコンの線膨張係数と一致させることで、振動板222に加わる応力を0に近づけることができる。すなわち、導体パターン25からの圧縮方向応力とフィルム基板21からの引張り方向応力とが打ち消し合うようにできるため、リフロー工程における加熱後の冷却時において、振動板222に対して不要な応力がかかるのを防止できる。これにより、振動板222を正常な振動モードで振動させることが可能となり、高性能で信頼性の高いマイクロホンを実現することができる。
図9は、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数(積層構造全体のCTE)と電気音響変換部22の感度との関係を表すグラフである。電気音響変換部22の感度最大値は、積層構造全体の線膨張係数がシリコンの線膨張係数よりも少し大きいポイントで得られることを示している。導体パターン25の厚み比率を適切に設定(αとする;図7参照))して、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数をシリコンの線膨張係数と一致させることで、振動板222に対する応力を0近づけられることは上述したとおりである。これは言い換えると、導体パターン25の厚み比率をαからずらすことにより、意図的に振動板222の張力を制御することが可能であることを意味する。
導体パターン25の厚み比率が図7のαよりも小さくなると、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数は振動板222の線膨張係数よりも小さくなる。この場合、フィルム基板21から振動板222に対して引張り方向の応力がかかる。このため、振動板222の張力が大きくなって感度が低下する。したがって、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数は、振動板222の線膨張係数cの少なくとも0.8倍以上確保することが好ましい。
また、図9より、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数が、振動板222の線膨張係数(2.8ppm/℃)と等しいとき以上の感度を確保するためには、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数は7ppm/℃(振動板の線膨張係数の2.5倍)以下に設定することが好ましい。特に、振動板222を含む電気音響変換部22を実装する導電パターン部の影響を最も受けやすいため、この領域近傍の線膨張係数が上記の範囲に入るように設計することが好ましい。
以上より、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数が、振動板222の線膨張係数cの値の0.8倍以上2.5倍以下の範囲にすることで、良好な感度特性を得ることができることがわかる。ところで、導体パターン25の厚み比率をαよりも大きくすることにより、積層構造全体の線膨張係数が大きくなり、振動板222に対して圧縮方向の応力を与えることができ、振動板222の張力を減少させることが可能である。これにより、外部音圧に対する振動板222の変位を大きくして、電気音響変換部22の感度を向上させることが可能である。このため、電気音響変換部22の感度最大値は、積層構造全体の線膨張係数がシリコンの線膨張係数よりも少し大きいポイントで得られる。
上記2層の積層構造においては、導体パターン25がフィルム基板21の全面に形成されるものとして述べた。しかし、導体パターン25がフィルム基板21上にパターニングして形成される場合がある。この場合には、導体パターン25の厚みyにパターンの形成面積比率rを乗算した値を実効的な厚みとして扱うことができる。すなわち、2層構造の全体の厚みに対する導体パターンの厚み比率を、ry/(x+ry)として置き換えて考えて構わない。導体パターンの形成面積比率rを小さくするための、有効な方法はメッシュ構造にすることである。特に、電磁妨害対策としてグランドを強化する目的でベタ状のグランドを配置しようとする場合、これをメッシュ構造とすることで導体パターンの面積比率を減らし、導体厚みを減らしたのと同等の効果が得ることができる。
次に、フィルム基板21の線膨張係数が振動板222の線膨張係数以上である場合、すなわち、(振動板の線膨張係数≦フィルム基板の線膨張係数<導電パターンの線膨張係数)なる関係が成り立つときを考える。
フィルム基板21上の導電パターン25に電気音響変換部22をフリップチップ実装するため、電気音響変換部22を接合する導電パターン25の部分にスクリーン印刷等の手法を用いて半田ペーストを転写し、電気音響変換部22を搭載して、リフロー工程に通す。この場合、加熱後の冷却時に半田融点付近で半田31が固化して電気音響変換部22と導電パターン25との位置関係が決まる。半田31が固化するまでの溶融状態にあるときは振動板222には応力がかからない。しかし、冷却過程において固化してから以降は、フィルム基板21は振動板222と比べて収縮量が同等以上で、導電パターン25は振動板222よりも収縮量がさらに大きい。このため、線膨張係数差に起因して、図10に示すように、導電パターン25、フィルム基板21ともに振動板222に対する圧縮方向の応力を生じる。半田融点と室温との温度差が大きいほどこの応力は大きく発生する。
なお、図10は、図5に示すモデルでフィルム基板の線膨張係数が振動板の線膨張係数よりも大きい場合において、MEMSチップが備える振動板に加わる応力を説明するための図である。
ここで、導電パターン25が形成されたフィルム基板21は2層の積層構造となっており、フィルム基板21の厚みがxで線膨張係数がa、導体パターン25の厚みがyで線膨張係数がbなる場合を考える。導体パターン25の厚みに対する、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数特性は図11のようになる。図11の横軸は、2層構造の全体の厚みに対する導体層(導電パターン)の厚み比率y/(x+y)、縦軸は2層構造の線膨張係数である。
図11において、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数は、導電パターン25とフィルム基板21の厚み比率に応じて変化し、導体パターン25の厚み比率が0のとき線膨張係数=a、導体パターン25の厚み比率が1のとき線膨張係数=bとなることを示している。また、縦軸上にシリコンの線膨張係数2.8ppm/℃を示している。そして、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数は、導体パターン25の厚み比率が0のときシリコンの線膨張係数に最も近づき、導体パターン25の厚み比率が増加するにつれシリコンの線膨張係数から遠ざかることがわかる。
したがって、振動板222にかかる応力を小さくするためには、導体パターン25の厚みをできるだけ限り薄くし、パターンの形成面積比率rを低減することが望ましい。一方、上述したように、積層構造全体の線膨張係数を意図的に振動板222の線膨張係数よりも大きくなるように設定することで、振動板222に対して圧縮方向の応力を与えることができ、振動板222の張力を減少させることができる。これにより、外部音圧に対する振動板222の変位を大きくして、電気音響変換部22の感度を向上させることが可能である。実験的な結果から(図9参照)、導体パターン25を含めたフィルム基板21の線膨張係数を2.8ppm/℃以上7ppm/℃以下にすることで、振動板222に捻じれや局所的な撓みが発生することを防止できる。特に、振動板222を含む電気音響変換部22を実装する導電パターン部の影響を最も受けやすいため、この領域近傍の線膨張係数が上記の範囲に入るように設計することが好ましい。これにより、振動板222を正常な振動モードで振動させることが可能となり、高感度で信頼性の高いマイクロホンを実現することができる。
上記2層の積層構造においては、導体パターン25がフィルム基板21の全面に形成されるものとして述べた。しかし、導体パターン25がフィルム基板21上にパターニングして形成される場合がある。この場合には、導体パターン25の厚みyにパターンの形成面積比率rを乗算した値を実効的な厚みとして扱うことができる。すなわち、2層構造の全体の厚みに対する導体パターンの厚み比率を、ry/(x+ry)として置き換えて考えれば良い。導体パターンの形成面積比率rを小さくするための、主な方法はメッシュ構造にすることである。特に、電磁妨害対策としてグランドを強化する目的でベタ状のグランドを配置しようとする場合、これをメッシュ構造とすることで導電パターンの面積比率を減らし、導体厚みを減らしたのと同等の効果が得ることができる。
ここで、図3に戻って、本実施形態のマイクロホンユニット1が備えるフィルム基板11の上面に形成される導電層15には、フィルム基板11上に広範囲に亘って配置されるメッシュ状の導電パターン153が含まれる。このメッシュ状の導電パターン153は、フィルム基板11のGND配線としての機能と電磁シールド機能との両方の機能を備える。
電磁シールド機能を得るためには、GND配線として機能する導電層をフィルム基板11の広範囲に形成するのが好ましいが、ベタパターンのGND配線を広範囲に形成した場合、導電層を含めたフィルム基板11の線膨張係数が大きくなりすぎてしまう。この場合、フィルム基板11の線膨張係数とMEMSチップ12の線膨張係数との差が大きくなって、上述のように振動板122に応力が加わり易くなる。
そこで、本実施形態では、GND配線として機能する導電層をメッシュ状の導電パターン153としている。これによれば、導電層を形成する範囲を広範囲としても、導電部分(金属部分)の割合を低減できる。このために、振動板に加わる残留応力を低減しつつ、電磁シールド機能を効果的に得ることができる。
図12は、本実施形態のマイクロホンユニット1が備えるフィルム基板11に形成されるメッシュ状の導電パターン153を拡大して示した拡大図である。図12に示すように、メッシュ状の導電パターン153は、金属細線MEを網状に形成してなる。本実施形態では、各金属細線MEは互いに直交するように形成されており、金属細線ME間のピッチP1、P2は同一で、開口部分NMの形状は正方形状となっている。金属細線ME間のピッチP1(P2)は例えば0.1mm程度とされ、メッシュ構造における金属細線MEの比率は例えば50%程度あるいはこれ以下とされる。
なお、本実施形態では金属細線MEは互いに直交する構成としたが、これに限らず、金属細線MEが互いに斜めに交わるようにしてもよい。また、金属細線ME間のピッチP1、P2は必ずしも同一でなくても良い。また、金属細線ME間のピッチP1、P2は振動板122の振動部分の直径(本実施形態では0.5mm程度)以下が好ましい。これは、振動板122に対する残留応力をなるべく低減すべく、フィルム基板面内での線膨張係数の変動を抑えるようにするためである。また、本実施形態では、金属細線を網状に形成してメッシュ構造を得ているが、この構成に限らず、例えば、ベタパターンに複数の平面視略円形状の貫通孔を設けてメッシュ構造を得ても良い。
再び図3に戻って、フィルム基板11の上面に形成される導電層15には、第1の中継パッド154と、第2の中継パッド155と、第3の中継パッド156と、第4の中継パッド157と、第1の配線158と、第2の配線159と、が含まれる。
第1の中継パッド154は、ASIC13に電源電力を供給するための電源電力入力用パッド152cと第1の配線158を介して電気的に接続されている。第2の中継パッド155は、ASIC13で処理された信号を出力するための出力用パッド152dと第2の配線159を介して電気的に接続されている。第3の中継パッド156と第4の中継パッド157とは、メッシュ状の導電パターン153と直接電気的に接続されている。
フィルム基板11の下面に形成される導電層16には、第1の外部接続用パッド161と、第2の外部接続用パッド162と、第3の外部接続用パッド163と、第4の外部接続用パッド164と、が含まれる。マイクロホンユニット1は、音声入力装置が備える実装基板に実装されて使用されるが、その際、これら4つの外部接続用パッド161〜164が実装基板に設けられる電極パッド等と電気的に接続される。
第1の外部接続用パッド161は外部からマイクロホンユニット1に電源電力を供給するための電極パッドで、フィルム基板11の上面に設けられる第1の中継パッド154と図示しない貫通ビアを介して電気的に接続されている。第2の外部接続用パッド162はASIC13で処理された信号をマイクロホンユニット1の外部に出力するために設けられる電極パッドで、フィルム基板11の上面に設けられる第2の中継パッド155と図示しない貫通ビアを介して電気的に接続されている。更に、第3の外部接続用パッド163及び第4の外部接続用パッド164は外部のGNDと接続するための電極パッドで、それぞれ、フィルム基板11の上面に設けられる第3の中継パッド156、第4の中継パッド157と図示しない貫通ビアを介して電気的に接続されている。
なお、本実施形態では、メッシュ状の導電パターン153を除いて、導電層15、16はベタパターンで構成しているが、場合によっては、他の部分もメッシュ構造としても構わない。
フィルム基板11に形成される導電層15、16の構成は以上のようであるが、フィルム基板11は、導電層15、16を形成することによってフィルム基板11単体の場合に比べて線膨張係数が大きくなる。この点、上述した、導電パターンがフィルム基板の線膨張係数に及ぼす影響を考慮して、以下の式(3)で表される導電層15、16を含めたフィルム基板11の線膨張係数βが、振動板122の線膨張係数の0.8倍以上2.5倍以下の範囲となるように、導電層15、16を形成するのが好ましい。より詳細には、フィルム基板11の線膨張係数が振動板122の線膨張係数よりも小さい場合と、フィルム基板11の線膨張係数が振動板122の線膨張係数以上である場合とで分けられる。前者の場合には、線膨張係数βが振動板122の線膨張係数の0.8倍以上2.5倍以下の範囲となり、後者の場合は、線膨張係数βが振動板122の線膨張係数の1.0倍より大きく2.5倍以下の範囲となるように、導電層15、16を形成するのが好ましい。そうすれば、振動板122に加わる残留応力を低減して良好なマイク特性を有するマイクロホンユニットを製造できる。
β=(ax+bry)/(x+ry) (3)
a:フィルム基板の線膨張係数
b:導電層の線膨張係数
x:フィルム基板の厚み
y:導電層の厚み
r:導電層のパターンの形成面積比率
a:フィルム基板の線膨張係数
b:導電層の線膨張係数
x:フィルム基板の厚み
y:導電層の厚み
r:導電層のパターンの形成面積比率
なお、本実施形態のようにフィルム基板11の両面に導電層が形成される場合には、パターンの形成面積比率rは、例えば、下面に形成される導電層16も上面に形成されているかのように扱って(みかけ上の上面の導電層の割合が増えることになる)導けば良い。
導電層15、16の厚みが厚すぎると、線膨張係数が大きくなりやすいので、導電層15、16の厚みは薄く形成するのが好ましい。フィルム基板11の線膨張係数が振動板122の線膨張係数以上である場合には、例えば、導電層15、16の厚みはフィルム基板11の厚みの1/5以下が好ましい。また、導電層15、16はめっきを含む構成であっても良いが、このめっきも薄く形成するのが好ましく、めっきを含めた導電層15,16の厚みをフィルム基板11の厚みの1/5以下とするのが好ましい。
ここで、導電層15、16を含めたフィルム基板11の線膨張係数βを式(3)で表す理由について説明しておく。本実施形態のマイクロホンユニット1においては、フィルム基板11の基板面において、導体(導電層15、16の導電部分)が形成されている部分と、導体が形成されていない部分(これには、メッシュ構造の開口部分が含まれる)がある。そこで、導電層15、16の厚みyにフィルム基板11上の導体の割合(上述のrが該当する)を掛けて求められる厚み(ry)の導体が、あたかもフィルム基板11の片側の基板面全面に形成されているように見做すこととしている。
このように考えた場合、導電層15、16を含めたフィルム基板11の線膨張係数をβとした場合、以下の式(4)が成り立つ。
β(x+ry)=ax+bry (4)
この式(4)を変形して、上述の式(3)が求められる。
β(x+ry)=ax+bry (4)
この式(4)を変形して、上述の式(3)が求められる。
なお、本実施形態においては、フィルム基板11の内部に、MEMSチップ12で発生した電気信号を出力するための出力用パッド151aと、ASIC13の入力用パッド152aと、を電気的に接続する配線(導体)が形成されている。このため、この導体についても導電層に含めることができる。ただし、導電層15、16を含めたフィルム基板11の線膨張係数においては、特にMEMSチップ12下部の導電パターンから受ける影響が大きいため、MEMSチップ12近傍の領域(これにはMEMSチップ12を実装するパターン領域のみの場合やそれよりもやや広い領域である場合が含まれる)に限定して導電層の構成あるいは式(3)におけるr値を決定することとしてもよい。
以上に示した実施形態は一例であり、本発明のマイクロホンユニットは以上に示した実施形態の構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態の構成について種々の変更を行っても構わない。
例えば、以上に示した実施形態では、GND配線としての機能と電磁シールド機能とを備えるメッシュ状の導電パターン153をフィルム基板11の上面にのみ設ける構成とした。しかし、この構成に限定されず、上述の機能を有するメッシュ状の導電パターンをフィルム基板11の下面のみに設ける構成としたり、上面及び下面(両面)に設ける構成としたりしても良い。フィルム基板11の両面に略同形状、同率のメッシュ状の導電パターンを設けることによって、導電層が形成される部分の偏りを軽減でき、フィルム基板11の反りを抑制することが可能である。図13は、フィルム基板11の両面にメッシュ状の導電パターンを設ける場合のフィルム基板11の下面の構成を示しており、符号165がメッシュ状の導電パターンを示している。
そして、フィルム基板11の両面にメッシュ状の導電パターンを設ける場合には、図14に示すように、上面のメッシュ状の導電パターン153(金属細線を実線で表すパターン)と、下面のメッシュ状の導電パターン165(金属細線を破線で表すパターン)とで、金属細線の位置をずらして設けるのが好ましい。このよう構成することで、メッシュ状の導電パターンを広範囲に形成しつつ、実質的にメッシュの間隔(ピッチ)を狭くすることができる。このため、導電層を含めたフィルム基板の線膨張係数について、フィルム基板単体の場合からの変動を抑制しつつ、電磁シールド効果を高めることが可能である。
また、本実施形態においては、MEMSチップ12を接合する接合用パッド151bとメッシュ状の導電パターン153とが直接電気的に接続される構成とした。しかし、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、図15に示すように、メッシュ状の導電パターン153を、MEMSチップ12の直下に配置しない構成(メッシュ状の導電パターン153とMEMSチップ12とが平面視重ならない構成)とし、メッシュ状の導電パターン153と接合用パッド151bとを接続パターン150で接続する構成としても良い。
このようにMEMSチップ12の直下にメッシュ状の導電パターン153を配置しない構成とすることで、MEMSチップ12の振動板122に加わる残留応力を低減可能である。なお、フィルム基板11の下面にも導電層を設ける場合には、この導電層とMEMSチップ12とが、平面視重ならないように設けるのが好ましい。
上述の接続パターン150については、振動板122に加わる残留応力を低減すべく、なるべく細くする(細線とする)のが好ましく、例えば、その幅が100μm以下であるのが好ましい。
また、以上においては、MEMSチップ12の振動板122に一方向からのみ音圧が加わる構成のマイクロホンユニット1に本発明が適用される場合を示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、振動板122の両面から音圧が加わり、音圧差によって振動板が振動する差動マイクロホンユニットにも適用可能である。
本発明が適用可能な差動マイクロホンユニットの構成例を、図16を参照して説明しておく。図16は、本発明が適用可能な差動マイクロホンユニットの構成例を示す図で、図16(a)はその構成を示す概略斜視図、図16(b)は図16(a)におけるB−B位置の概略断面図である。図16に示すように、差動マイクロホンユニット51は、第1の基板511と、第2の基板512と、蓋部513と、を備える。
第1の基板511には溝部511aが形成される。MEMSチップ12及びASIC13が実装される第2の基板512は、振動板122の下面に設けられて振動板122と溝部511aとを連通する第1貫通孔512aと、溝部511a上部に設けられる第2貫通孔512bと、を有する。蓋部513は、第2の基板512に被せられた状態でMEMSチップ12とASIC13とを囲む空間を形成する内部空間513aと、内部空間513aと外部とを連通する第3貫通孔513bと、第2貫通孔512bと繋がる第4貫通孔513cと、を有する。
これにより、マイクロホンユニット51の外部で発生した音は、第3貫通孔513b、内部空間513aを順に経て振動板122の上面へと至る。また、第4貫通孔513c、第2貫通孔512b、溝部511a、第1貫通孔512aを順に経て振動板122の下面へと至る。すなわち、振動板122の両面から音圧が加わる。
また、以上に示した実施形態では、導電パターンとして銅を例に挙げたが、導電パターンとして、例えば銅・ニッケル・金の積層メタル構造が用いられることも多く、導電パターンを積層メタル構造としてもよい。銅の線膨張係数は16.8ppm/℃、ニッケルの線膨張係数は12.8ppm/℃、金の線膨張係数は14.3ppm/℃であり、若干の違いはあるが、シリコンに比べて大きな値である。積層メタル全体としての線膨張係数は、それぞれの厚み比率をかけた平均値として概算することができる。
また、以上に示した実施形態では、MEMSチップ12やASIC13がフリップチップ実装される構成とした。しかし、本発明の適用範囲はこれに限られない。例えば、図17に示した従来の構成と同様に、ワイヤボンディング技術を用いてMEMSチップやASICを実装するマイクロホンユニットにも本発明は適用可能である。
なお、ワイヤボンディング技術を用いる場合には、MEMSチップ12等を接着剤によって低温でフィルム基板11に固定可能である。このため、導電層15、16が設けられるフィルム基板11とMEMSチップ12との線膨張係数の差によってMEMSチップ12に加わる残留応力を抑えられる。このような点から、本発明はMEMSチップ12をフィルム基板11にフリップチップ実装する構成のマイクロホンユニットにより好適に適用できると言える。
また、以上に示した実施形態では、MEMSチップ12とASIC13とは別チップで構成したが、ASIC13に搭載される集積回路はMEMSチップ12を形成するシリコン基板上にモノリシックで形成するものであっても構わない。
また、以上に示した実施形態では、音圧を電気信号に変換する音響電気変換部が、半導体製造技術を利用して形成されるMEMSチップ12である構成としたが、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、電気音響変換部はエレクトレック膜を使用したコンデンサ型のマイクロホン等であっても構わない。
また、以上の実施形態では、マイクロホンユニット1が備える電気音響変換部(本実施形態のMEMSチップ12が該当)の構成として、いわゆるコンデンサ型マイクロホンを採用した。しかし、本発明はコンデンサ型マイクロホン以外の構成を採用したマイクロホンユニットにも適用できる。例えば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型等のマイクロホン等が採用されたマイクロホンユニットにも本発明は適用できる。
その他、マイクロホンユニットの形状は本実施形態の形状に限定される趣旨ではなく、種々の形状に変更可能であるのは勿論である。
本発明のマイクロホンユニットは、例えば携帯電話、トランシーバ等の音声通信機器や、入力された音声を解析する技術を採用した音声処理システム(音声認証システム、音声認識システム、コマンド生成システム、電子辞書、翻訳機、音声入力方式のリモートコントローラ等)、或いは録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに好適である。
1、51 マイクロホンユニット
11 フィルム基板
12 MEMSチップ(電気音響変換部)
15、16 導電層
122 振動板
153、165 メッシュ状の導電パターン
11 フィルム基板
12 MEMSチップ(電気音響変換部)
15、16 導電層
122 振動板
153、165 メッシュ状の導電パターン
Claims (12)
- フィルム基板と、
前記フィルム基板の両基板面の少なくとも一方に形成される導電層と、
振動板を含んで音圧を電気信号に変換する電気音響変換部と、
を備えるマイクロホンユニットであって、
少なくとも前記電気音響変換部近傍の領域で、前記導電層を含めた前記フィルム基板の線膨張係数が、前記振動板の線膨張係数の0.8倍以上2.5倍以下の範囲であることを特徴とするマイクロホンユニット。 - 前記フィルム基板の線膨張係数aと、前記導電層の線膨張係数bと、前記振動板の線膨張係数cとは、a<c<bなる関係を満たし、
前記導電層を含めた前記フィルム基板の線膨張係数が、前記振動板の線膨張係数cと略等しくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。 - 前記フィルム基板の線膨張係数aと、前記導電層の線膨張係数bと、前記振動板の線膨張係数cとは、c≦a<bなる関係を満たし、
前記導電層を含めた前記フィルム基板の線膨張係数が、前記振動板の線膨張係数cの1.0倍より大きく2.5倍以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。 - 前記導電層は、前記フィルム基板の基板面の広範囲に亘って形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
- 前記電気音響変換部の前記振動板はシリコンで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
- 前記フィルム基板は、ポリイミドフィルム基材で形成されていることを特徴とする請求項項1から5のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
- 前記導電層は、少なくとも一部の領域においてメッシュ状の導電パターンとなっていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
- 前記メッシュ状の導電パターンが、前記フィルム基板の両基板面に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のマイクロホンユニット。
- 一方の面に形成される前記メッシュ状の導電パターンと、他方の面に形成される前記メッシュ状の導電パターンとは、位置関係が互いにずれた関係になっていることを特徴とする請求項8に記載のマイクロホンユニット。
- 前記メッシュ状の導電パターンが、グランド接続用の配線パターンであることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
- 前記電気音響変換部が、前記フィルム基板にフリップチップ実装されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
- 前記電気音響変換部と前記導電層とは、前記振動板の中心からの距離が等しい複数の箇所で接合されていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
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