JP5317540B2 - 難燃性不織布 - Google Patents
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Description
不織布に難燃性を付与する方法として、特許文献1には難燃剤をバックコートする方法が開示されている。この方法では良好な難燃性は得られるものの布帛の風合が極めて粗硬で伸びが固定されてしまうため、シート等の複雑な形状への追随が出来なくなる。
特許文献3では、リン酸共重合ポリエステルからなる極細繊維不織布に水酸化アルミニウムを含有した高分子弾性体を充填させる方法が開示されている。一般的に共重合されたポリエステルは耐光性や耐摩耗強度においてレギュラーポリエステルより劣るため車両用途では大きなハンディとなる。
(1)繊維集合体を交絡一体化させた不織布において、該不織布の総重量に対し、ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維が3.0wt%以上混合されていることを特徴とする難燃性不織布。
(2)前記ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維が、アクリロニトリル30〜70w
t%、ハロゲン含有ビニル系単量体70〜30wt%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10wt%よりなる、共重合体を溶解紡糸して得られた難燃性繊維であり、該共重合体に対して、粒径を2μm以下に揃えたSb化合物を6〜50wt%含有していることを特徴とする上記(1)記載の難燃性不織布。
(3)前記不織布構造が、表層/中間層/裏層の3層構造であることを特徴とする上記(1)又は上記(2)記載の難燃性不織布。
(4)前記ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維が、不織布構造の裏層及び/又は中間層に混合されていることを特徴とする上記(3)に記載の難燃性不織布。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性不織布が、高分子弾性体を5〜20wt%含有していることを特徴とする難燃性シート状構造物。
(6)前記高分子弾性体が、水分散系ポリウレタン樹脂であることを特徴とする上記(5)に記載の難燃性シート状構造物。
本発明は、繊維集合体を交絡一体化させた多層構造不織布に、ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維を特定範囲で含有させることで、優れた難燃性能と、耐磨耗強度及びシート形状に追従できる伸びや風合いといった物性とを、両立させた難燃性不織布である。
本発明の難燃性不織布において、不織布構造が、表層/中間層/裏層の3層構造であることが好ましい。
また、本発明における難燃性不織布とは、シート状構造物を含むものであり、ヌバック調やスエード調などの表面に立毛が形成された立毛調人工皮革に代表される難燃性シート状構造物が好ましい態様である。その表面品位を変化させることなく、高い難燃性能と柔軟な風合い、良好な伸びや耐磨耗強度などの実用上必要な物性を兼ね備えた難燃性シート状構造物のことである。
ポリエステル系繊維としては、代表的にはポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリエステル系繊維の単糸繊度は特に限定されないがシート表皮材や内装材として綺麗な表面感を発現させるために0.6dtex以下の極細繊維を用いることが好ましく、より好ましくは0.06〜0.4dtexである。
極細繊維としては、溶融紡糸法により直接紡糸されたものが使用出来るし、共重合ポリエステルとポリエステルの海島繊維等の複合糸から共重合ポリエステルを抽出して極細ポリエステルを取り出す方法も有効である。
本発明の不織布は、表層/中間層/裏層の3層構造を有することが好ましい。表層およ
び裏層に適用する繊維ウェブは、一般的にはカード、クロスレイヤー、ランダムウェッバー等の乾式法、或いは水中に各種繊維を分散させたスラリーを作成し、抄造法により繊維ウェブを製造する方法が知られているが、使用する繊維が単繊維状に均一に分散された繊維ウェブを得るには、抄造法が好ましい。カード、クロスレイヤー、ランダムウェッバー法では単繊維としての均一分散が難しく、均一分散性に限界がある。中間層としては不織布の強度、寸法安定性の点から織編物を使用するのが好ましい。
本発明に用いる共重合体は、アクリロニトリル30〜70wt%、ハロゲン含有ビニル系単量体70〜30wt%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10wt%よりなる共重合体であり、具体例としては、アクリロニトリル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−塩化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニル−臭化ビニルなどのハロゲン含有ビニル系単量体とアクリロニトリルとの共重合体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系単量体の1種以上とアクリロニトリルおよびこれらと共重合可能なビニル系単量体との共重合体などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
必要に応じ用いる前記共重合可能なビニル系単量体としては、たとえばアクリル酸、そのエステル、メタクリル酸、そのエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸、その塩、メタクリルスルホン酸、その塩、スチレンスルホン酸、その塩などがあげられ、それらの1種または2種以上の混合物が用いられうる。
なお、前記アクリロニトリル30〜70wt%、ハロゲン含有ビニル系単量体70〜30wt%およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10wt%よりなる共重合体において、ハロゲン含有ビニル系単量体量が30%未満では、繊維を難燃化することが困難となり、また70%をこえると、製造された繊維の物性(強度、伸度、耐熱性など)、染色性、風合などの性能が充分でなくなり、いずれも好ましくない。
アクリロニトリル30〜70wt%、ハロゲン含有ビニル系単量体70〜30wt%およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10wt%よりなる共重合体に対するSb化合物の割合は6〜50wt%である。
6wt%未満では難燃性不織布として必要な難燃性をうるために、ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維の難燃性不織布中における混合率を高める必要があり、 50wt%をこえると、繊維製造時のノズル詰まりや繊維物性(強度、伸度など)の低下がおこり、高度に難燃強化した繊維の製造面や品質面などで問題が生じ、好ましくない。
特に、難燃繊維に強い強度などや良好な編織性などが求められる場合には、Sb化合物
の割合は8〜40wt%が好ましく、10〜30wt%がさらに好ましい。
その際、本発明で開示のハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維以外の繊維、例えばポリエステルやポリアミド等の合成繊維、綿等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、無機系やリン系などの他の難燃性繊維を一緒に混合分散させてスラリーを作成し抄造法により繊維ウェブを作成しても何ら問題はない。ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維以外の繊維は目的に応じて適宜選択すれば良い。
ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維を、裏層と中間層の両方へ混合する場合は、裏層と中間層の両方へ混合したハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維の合計重量が難燃性不織布の総重量に対して3.0wt%以上、より好ましくは7.5〜60wt%になるように混合する。
交絡一体化の方法としてはニードルパンチ、水流交絡処理等がよく知られているが、中間層の織編物の組織を破壊することのない水流交絡処理が好ましい。
本発明による難燃性不織布を難燃性シート状構造物として適用する場合は、柔軟で且つ弾力性のある風合、及び耐久性や寸法安定性等の物性を向上させる目的で、前記の方法で得られた難燃性不織布に高分子弾性体を含有することが好ましい。
このようにして得られた難燃性不織布や難燃性シート状構造物は難燃性、耐光性、染色堅牢度に優れ、また、柔軟な風合や耐磨耗強度、良好な伸びを兼ね備えておりシート表皮材や内装材用途として十分適用するものである。
(1)燃焼性測定:連邦自動車安全基準 FMVSS No.302
この測定では、下記基準にて等級判定を行った。
5級:燃焼部分が燃焼速度測定領域に達しない
4級:燃焼長が51mm未満で、かつ燃焼時間が60秒未満
3級:平均燃焼速度が50mm/分以下でサンプル全焼
2級:平均燃焼速度が51〜70mm/分でサンプル全焼
1級:平均燃焼速度が71mm/分以上でサンプル全焼
(2)ドロップ性:前記(1)項の燃焼性測定において、測定終了までの溶融ポリマー落下の個数をカウントした
(3)剛軟度:JIS L 1096(A法:45°カンチレバー法)
(4)伸び率:JIS L 1096(A法:カットストリップ法)
この測定ではサンプルの荷重が12.12Nの時の伸び率A(%)とサンプル切断時の伸び率B(%)を測定した
ハロゲン及びSb含有モダアクリル製造用の共重合体として、アクリロニトリル51.0wt、塩化ビニリデン48.0wt%、およびp−スチレンスルホン酸ソーダ1.0wt%よりなる、共重合体を樹脂濃度で30.0wt%になるようにアセトンに溶解した。
得られた樹脂溶液の樹脂重量に対して、25wt%の三酸化アンチモンを添加して紡糸原液を調製した。
前記三酸化アンチモンは、2μm以下に揃えられた粒子径を有し、樹脂溶液に均一に分散するように事前に調整して用いた。
次いで、直接紡糸法によって単繊維繊度0.17dtexの極細ポリエステル繊維を製造し、長さ5mmに切断して極細ポリエステル短繊維を得た。
該極細ポリエステル短繊維を使用し、抄造法により目付110g/m2の表層用繊維ウェブを得た。
これらの表層用と裏層用繊維ウェブの中間に、中間層として165dtex/48fのポリエステル繊維からなるガーゼ状の織物を封入し、三層構造の繊維集合体とした。
染色後の立毛調人工皮革について、燃焼性、ドロップ性、剛軟度、伸び率を評価してその結果を表1に示した。
実施例1において、裏層の極細ポリエステル短繊維とハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維の混合比率が重量比で95:10(比較例1)、100:0(比較例2)になるようにした他は、実施例1と同様に作成された立毛調人工皮革について、燃焼性、ドロップ性、剛軟度、伸び率を評価してその結果を表2に示した。尚、三層積層構造の不織布総重量に対するハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維の比率は、それぞれ1.5wt%と0.0wt%であった。
直接紡糸法によって単繊維繊度0.17dtexの極細ポリエステル繊維を製造し、長さ5mmに切断した極細ポリエステル短繊維を使用し、抄造法により表層用及び裏層用繊維ウェブとして、それぞれ目付110g/m2、の90g/m2の繊維ウェブを作成し、これらの表層用繊維ウェブと裏層用繊維ウェブの中間に中間層として実施例1記載のハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維100wt%の紡績糸でガーゼ状の織物を作成して封入し、三層構造の繊維集合体を作成した。
0.15mmの直進流噴射ノズルを用いて、表層から4.0MPa、裏層から3.0MPaの圧力で噴射処理し、ピンテンターで乾燥後、目付330g/ m2、厚さ1.06mmの難燃性不織布を製造した。難燃性不織布総重量に対するハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維の比率は39.4wt%であった。
このシート状物の表層を#400のエメリペーパーを用い、ペーパー速度1000m/分でバフィングした。これに、ポリウレタン含浸液としてポリエーテル系水系ポリウレタンエマルジョン(日華化学社製「エバファノールAP−12」)が9wt%、感熱剤として硫酸ナトリウム(Na2So4)が3wt%となるように調合した含浸液を、前記難燃性不織布に含浸後ピックアップ率120%になるようにマングルで絞り付着率を合わせた。その後ピンテンター乾燥機で130℃、3分間で加熱乾燥し難燃性シート状構造物とした。
染色後の立毛調人工皮革について、燃焼性、ドロップ性、剛軟度、伸び率を評価してその結果を表1に示した。
直接紡糸法によって単繊維繊度0.17dtexの極細ポリエステル繊維を製造し、長さ5mmに切断した極細ポリエステル短繊維を使用し、抄造法により表層用及び裏層用繊維ウェブとして、それぞれ目付110g/m2、の90g/m2の繊維ウェブを作成し、これらの表層用繊維ウェブと裏層用繊維ウェブの中間に中間層として実施例1記載のハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維55wt%と綿45wt%とを混合紡績した紡績糸でガーゼ状の織物を作成して封入し、三層構造の繊維集合体を作成した。
このシート状物の表層を#400のエメリペーパーを用い、ペーパー速度1000m/分でバフィングした。これに、ポリウレタン含浸液としてポリエーテル系水系ポリウレタンエマルジョン(日華化学社製「エバファノールAP−12」)が9wt%、感熱剤として硫酸ナトリウム(Na2So4)が3wt%となるように調合した含浸液を、前記難燃性不織布に含浸後ピックアップ率120%になるようにマングルで絞り付着率を合わせた。その後ピンテンター乾燥機で130℃、3分間で加熱乾燥し難燃性シート状構造物とした。
染色後の立毛調人工皮革について、燃焼性、ドロップ性、剛軟度、伸び率を評価してその結果を表1に示した。
実施例6において、中間層のハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維が三層構造の難燃性不織布総重量の7.5wt%となるようにした他は、実施例6と同様に作成された立毛
調人工皮革について、燃焼性、ドロップ性、剛軟度、伸び率を評価してその結果を表1に示した。
表層用繊維ウェブとして、実施例1記載の表層用ウェブを使用、また実施例1記載の極細ポリエステル短繊維とハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維の混合比率が重量比で25:75の裏層用繊維ウェブを使用、中間層として実施例5記載のガーゼ状の織物を使用し、表層用繊維ウェブと裏層用繊維ウェブの中間に該中間層を封入し、三層構造の繊維集合体を作成した他は、実施例1と同様に作成された立毛調人工皮革について、燃焼性、ドロップ性、剛軟度、伸び率を評価してその結果を表2に示した。尚、三層積層構造の難燃性不織布総重量に対するハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維の比率は、59.8wt%であった。
直接紡糸法によって単繊維繊度0.17dtexの極細ポリエステル繊維を製造し、長さ5mmに切断した極細ポリエステル短繊維を使用し、抄造法により表層用及び裏層用繊維ウェブとして、それぞれ目付110g/m2、90g/m2の繊維ウェブを作成した。表層用及び裏層用繊維ウェブの中間に中間層として165dtex/48fのポリエステル繊維からなるガーゼ状の織物を封入し、三層積層構造の繊維集合体を製造した。
この不織布の表層を#400のエメリペーパーを用い、ペーパー速度1000m/分でバフィングした。これに、ポリウレタン含浸液としてポリエーテル系水系ポリウレタンエマルジョン(日華化学社製「エバファノールAP−12」)が9wt%、感熱剤として硫酸ナトリウム(Na2So4)が3wt%となるように調合した含浸液を、前記不織布シートに含浸後ピックアップ率120%になるようにマングルで絞り付着率を合わせた。その後にピンテンター乾燥機で130℃、3分間で加熱乾燥し不織布シート状構造物とした。
Claims (5)
- 繊維集合体を交絡一体化させた不織布が、不織布の総重量に対し、ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維を3.0〜22.5wt%混合した難燃性不織布であり、さらに、該難燃性不織布が高分子弾性体を5〜20wt%含有していることを特徴とする難燃性シート状構造物。
- 前記ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維が、アクリロニトリル30〜70wt%、ハロゲン含有ビニル系単量体70〜30wt%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10wt%よりなる、共重合体を溶解紡糸して得られた難燃性繊維であり、該共重合体に対して、粒径を2μm以下に揃えたSb化合物を6〜50wt%含有していることを特徴とする請求項1記載の難燃性シート状構造物。
- 前記不織布構造が、表層/中間層/裏層の3層構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の難燃性シート状構造物。
- 前記ハロゲン及びSb含有モダアクリル繊維が、不織布構造の裏層及び/又は中間層に混合されていることを特徴とする請求項3に記載の難燃性シート状構造物。
- 前記高分子弾性体が、水分散系ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性シート状構造物。
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