JP2019183351A - メランジ効果を発現する人工皮革 - Google Patents

メランジ効果を発現する人工皮革 Download PDF

Info

Publication number
JP2019183351A
JP2019183351A JP2018078901A JP2018078901A JP2019183351A JP 2019183351 A JP2019183351 A JP 2019183351A JP 2018078901 A JP2018078901 A JP 2018078901A JP 2018078901 A JP2018078901 A JP 2018078901A JP 2019183351 A JP2019183351 A JP 2019183351A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
fibers
original
ultrafine
fiber layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018078901A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7096694B2 (ja
Inventor
僚 高村
Ryo Takamura
僚 高村
大介 弘中
Daisuke Hironaka
大介 弘中
義幸 田所
Yoshiyuki Tadokoro
義幸 田所
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP2018078901A priority Critical patent/JP7096694B2/ja
Publication of JP2019183351A publication Critical patent/JP2019183351A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7096694B2 publication Critical patent/JP7096694B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Nonwoven Fabrics (AREA)
  • Synthetic Leather, Interior Materials Or Flexible Sheet Materials (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】インテリア、自動車、航空機、鉄道車両などのシートの表皮材や内装材として好適に用いることができる、シャープなメランジ効果を発現し、かつ優れた表面の風合いを有するメランジ調人工皮革を提供すること。【解決手段】不織布と前記不織布に含浸された高分子弾性体とから構成され、下記(1)〜(3):(1)不織布が、単層若しくは2層以上の繊維層から構成される;(2)不織布が、顔料で着色された平均直径7.5μm以下の繊維である原着極細繊維と顔料で着色されていない平均直径7.5μm以下の繊維である非原着極細繊維とから構成された原着−非原着繊維層を少なくとも1層有する;(3)原着−非原着繊維層において、原着極細繊維と非原着極細繊維とのうち一方が極細繊維束として存在しており、かつ原着−非原着繊維層中の極細繊維束の重量比率が5〜50%である;の条件を満たす、人工皮革。【選択図】なし

Description

本発明は、顔料で着色された極細繊維により、シャープなメランジ効果を発現し、かつ優れた表面の風合いを有する人工皮革及びその製法に関するものである。
「メランジ効果」とは、例えば異なる染色若しくは着色を施した繊維の混合物を使用して色相、明度などの色強度が異なる2種以上の繊維の混合体を構成すること等によって発現される、異色調の表面感(霜降り調、メランジ調等と呼ばれる)を伴う特別な視覚的効果を意味する。
人工皮革は、衣類、靴、鞄、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材、リボンやワッペン基材などの服飾分野に好適に用いられる。
その中でも、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材などの分野では、高級感に加え、嗜好の多様性から、上記のようなメランジ効果を表現できるような人工皮革を有することが、素材バリエーションを増やすことになり、販売戦略上重要である。
従来より、上記のような目的により努力し開示された技術がある。例えば、特許文献1は顔料で着色された太い繊維と顔料で着色されていない細い繊維との混在による異色性を追求した技術に関する。また、特許文献2には、ポリアミド系極細繊維を用いてメランジ効果を発現する技術が記載されている。
特開平4−240274号公報 特開2004−360086号公報
しかし、特許文献1の実施例に記載される方法をトレースして得られる人工皮革においては、太い繊維を用いているために表面の風合いにザラツキが目立ち、好ましくない。また特許文献2に記載されるポリアミド系極細繊維は、耐光性が不十分であり、特にカーシート分野に使用することが困難である。
本発明が解決しようとする課題は、シャープなメランジ効果を発現し、かつ優れた表面の風合いを有することによって、例えばインテリア、自動車、航空機、鉄道車両などのシートの表皮材又は内装材として好適に用いることができる、メランジ調人工皮革を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、以下の特徴を持った人工皮革が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 不織布と前記不織布に含浸された高分子弾性体とから構成され、下記(1)〜(3):
(1)不織布が、単層若しくは2層以上の繊維層から構成される;
(2)不織布が、顔料で着色された平均直径7.5μm以下の繊維である原着極細繊維と顔料で着色されていない平均直径7.5μm以下の繊維である非原着極細繊維とから構成された原着−非原着繊維層を少なくとも1層有する;
(3)原着−非原着繊維層において、原着極細繊維と非原着極細繊維とのうち一方が極細繊維束として存在しており、かつ原着−非原着繊維層中の極細繊維束の重量比率が5〜50%である;
の条件を満たす、人工皮革。
[2] 前記原着−非原着繊維層において、原着極細繊維と非原着極細繊維とのうち、一方が極細繊維束として存在しており、かつ他方が実質的に単繊維分散した極細繊維として存在しており、
原着極細繊維及び非原着極細繊維の平均直径がそれぞれ1.5〜7.5μmであり、
極細繊維束の平均換算直径が8〜30μmである、上記態様1に記載の人工皮革。
[3] 前記極細繊維束が極細繊維発生型繊維から発現させた極細繊維で構成されている、上記態様1又は2に記載の人工皮革。
[4] 前記不織布が、表面繊維層、裏面繊維層、及びこれらの間に配置された中間繊維層を少なくとも有し、中間繊維層が織編物から成るスクリムである、上記態様1〜3いずれかに記載の人工皮革。
[5] 前記不織布が、表面繊維層及び裏面繊維層を少なくとも有し、原着極細繊維が、表面繊維層のみ、又は表面繊維層及び裏面繊維層に含有される、上記態様1〜4のいずれかに記載の人工皮革。
[6] 前記原着極細繊維及び前記非原着極細繊維がポリエステル系繊維である、上記態様1〜5のいずれかに記載の人工皮革。
[7] 前記顔料がカーボンブラックである、上記態様1〜6のいずれかに記載の人工皮革。
[8] 前記不織布が、表面繊維層及び裏面繊維層を少なくとも有し、表面繊維層のみ、又は表面繊維層及び裏面繊維層が、抄造シートである、上記態様1〜7のいずれかに記載の人工皮革。
本発明によれば、シャープなメランジ効果を発現し、かつ優れた表面の風合いを有することによって、例えばインテリア、自動車、航空機、鉄道車両などのシートの表皮材又は内装材として好適に用いられる、メランジ調人工皮革が提供される。
図1は、極細繊維束の平均換算直径の測定方法を説明するための概念図である。
以下、本発明の例示の態様について、以下具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
本発明の一態様に係る人工皮革は、原着極細繊維及び非原着極細繊維の複合体である繊維層によって、異色調の表面感であるメランジ効果を発現できる。メランジ効果は、人工皮革に優美な表面品位を与える点で有利である。一態様において、人工皮革は、不織布と該不織布に含浸された高分子弾性体とから構成され、下記(1)〜(3):
(1)不織布が、単層若しくは2層以上の繊維層から構成される;
(2)不織布が、顔料で着色された平均直径7.5μm以下の繊維である原着極細繊維と顔料で着色されていない平均直径7.5μm以下の繊維である非原着極細繊維とから構成された原着−非原着繊維層を少なくとも1層有する;
(3)原着−非原着繊維層において、原着極細繊維と非原着極細繊維とのうち一方が極細繊維束として存在しており、かつ原着−非原着繊維層中の極細繊維束の重量比率が5〜50%である;
の条件を満たす。不織布が、原着−非原着繊維層(すなわち、原着極細繊維と非原着極細繊維との複合体)を少なくとも有することによって、メランジ効果を発現することが可能である。また、原着極細繊維及び非原着極細繊維は、平均直径が小さい極細繊維であることで、優美な表面品位を有する人工皮革の提供に寄与する。
本発明の一態様に係る人工皮革においては、不織布が、単層若しくは2層以上の繊維層から構成されている。不織布は、顔料で着色された平均直径7.5μm以下の極細繊維である原着極細繊維と、顔料で着色されていない平均直径7.5μm以下の極細繊維である非原着極細繊維とから構成された原着−非原着繊維層を、少なくとも1層有する。したがって、不織布が単層である場合、当該不織布は原着−非原着繊維層のみで構成されていることになる。良好な表面風合いを得るためには、原着極細繊維及び非原着極細繊維の平均直径は、それぞれ7.5μm以下である。平均直径が7.5μmより大きい場合、表面にザラツキが生じ良好な風合が得られない。一方、原着極細繊維及び非原着極細繊維の平均直径は、良好な耐摩耗性及び発色を得る観点から、それぞれ1.5μm以上であることが好ましい。また、本発明の人工皮革には、発色効果の多様化の点で染色処理を行うことも好ましいが、極細繊維の平均直径が小さい程、染料濃度(すなわち、繊維単位質量当たりの染料含有量(質量基準))を大きくする必要があり、堅牢度の低下が生じやすい傾向がある。この点でも、原着極細繊維及び非原着極細繊維の平均直径は、それぞれ1.5μm以上であることが好ましい。原着極細繊維及び非原着極細繊維の平均直径は、それぞれ、より好ましくは2.0〜6.0μmであり、さらに好ましくは3.0〜5.0μmである。
本発明者らの研究によれば、従来、単繊維の直径が8μm以上の繊維を混合しなければ、メランジ効果(すなわちメランジ調外観)が得られ難いことが判っている。また、混合する繊維の単繊維直径が太い程、メランジ効果は高いが表面風合い(触感)が悪化し、ザラツキ感が強い粗硬な表面風合いになり易い。本発明の一態様においては、従来ではメランジ効果が得られ難かった直径が細い単繊維を用いても、これを極細繊維束として繊維層中に存在させることで、直径が太い単繊維を用いた場合と同様なメランジ効果を示し、且つ表面風合いが良好な人工皮革が得られる。
本開示で、極細繊維束とは、複数の単繊維からなる収束状の繊維集合体を意味する。極細繊維束は、不織布の厚み方向に対して平行に切断した断面において、繊維軸に対して直角方向の繊維断面を観察(例えば1500倍のデジタルマイクロスコープを用いて)した際に、色相の違いから島状に見える収束状の繊維集合体として観測できる。
一方、本開示で、実質的な単繊維分散とは、繊維束を構成していないことを意味する。実質的な単繊維分散がされている単繊維には、海島型複合短繊維を繊維の状態で極細化したときの単繊維、直接紡糸の繊維を単繊維とし、乾式法、抄造法などで不織布化したときの単繊維が該当する。
原着−非原着繊維層における極細繊維束の平均換算直径は、8〜30μmであることが好ましい。極細繊維束の平均換算直径が8μm以上である場合、良好なメランジ感が得られ易く、30μm以下である場合、起毛性が変化し難く、スエード感の品位の劣化、異物感、粗悪な外観等の発生を低減できるとともに、摩擦によって毛玉と言われるピリング状になる現象が生じ難い。極細繊維束の平均換算直径は、より好ましくは10〜25μmであり、さらに好ましくは12〜20μmである。尚、ここで記載した極細繊維束の平均換算直径とは、極細繊維束に含まれる極細繊維の断面積の合計に相当する断面積を有し、円形の断面形状を持った単繊維と仮定した場合の円の直径を意味する。極細繊維束の平均換算直径の測定方法は[実施例]の項に記載のとおりである。
原着−非原着繊維層において、原着極細繊維又は非原着極細繊維のいずれか一方が極細繊維束として存在する場合、メランジ効果の点では、非原着極細繊維が極細繊維束として存在する場合には、細い原着極細繊維と太い非原着単繊維とを混合したときと同様の、また、原着極細繊維が極細繊維束として存在する場合には、太い原着単繊維と細い非原着極細繊維とを混合したときと同様の、効果が得られる一方、太い単繊維の様なザラツキ感を生じない。明瞭なメランジ調を得るという点から、原着−非原着繊維層中の極細繊維束の重量比率は5〜50%である。極細繊維束の重量比率は、より好ましくは5〜40%であり、さらに好ましくは5〜30%である。
原着−非原着繊維層においては、原着極細繊維及び非原着極細繊維のうち、一方が極細繊維束として存在しており、かつ他方が実質的に単繊維分散(以下、実質的な単繊維分散を「単繊維分散」とも称する。)した極細繊維として存在していることが好ましい。例えば、原着極細繊維の極細繊維束を単繊維分散している非原着極細繊維が取り囲んだ構造では、原着極細繊維の極細繊維束が島状に見える(メランジ部)ことで、また非原着極細繊維の極細繊維束を単繊維分散している原着極細繊維が取り囲んだ構造では、非原着極細繊維の極細繊維束が島状に見える(メランジ部)ことで、それぞれメランジ部の独立感が強調されたシャープ感が強いメランジが得られ好ましい。これらの態様において、原着極細繊維及び非原着極細繊維の平均直径はそれぞれ1.5〜7.5μmであることが好ましい。
極細繊維束は、例えば、海島型複合繊維などの極細繊維発生型繊維から人工皮革を作製した後、極細化処理(海島複合型繊維の場合では海成分を溶解や分解によって除去)することによって得ることができる。極細繊維発生型繊維を用いることは製造容易性の点で好ましい。一例として、島成分が単繊維繊度0.2dtex相当で24島/1フィラメントの海島型複合短繊維を作製し、該海島型複合短繊維で繊維シート形成後、ニードルパンチ処理などで三次元交絡体とし、該三次元交絡体にポリウレタンなどの高分子弾性体を含浸後、海成分を溶解や分解すれば単繊維繊度が0.2dtex相当の極細繊維が得られ、この場合、単繊維が24本収束した状態(収束状態では4.8dtex相当)で存在することになる。
原着極細繊維と非原着極細繊維との両方が極細繊維束を構成している繊維層でも良好な表面風合いは得られるが、このような繊維層では異色部の独立感が乏しい(すなわちシャープ感の劣る)メランジになり易い傾向がある。上記観点から、原着極細繊維と非原着極細繊維とのうち、一方が極細繊維束を形成し、他方が実質的に単繊維分散されていることが好ましい。
実質的に単繊維分散している繊維としては、溶融紡糸法により直接紡糸されたものを短繊維化したもの、海島複合型繊維(例えば、共重合ポリエステルを海成分、レギュラーポリエステルを島成分に用いたもの等)から海成分を溶解又は分解することによって除去して得られる極細繊維など、極細繊維発生型繊維から取り出したものを単繊維化したものなどが挙げられる。
極細繊維束として存在している繊維は、極細繊維発生型繊維を含む不織布を作製した後、当該極細繊維発生型繊維を極細化したものであることが好ましい。極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂をそれぞれ海成分及び島成分とし、海成分及び島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維、海成分及び島成分の2成分を混合して紡糸する海島型混合繊維、或いは2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状又は多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも海島型複合繊維は均一な直径の極細繊維が得られやすく、耐摩耗性などの強度が得られやすい点から好ましく用いられる。
海島型複合繊維の海成分としてはポリエチレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、ポリビニルアルコール系樹脂などを用いることができ、中でも、有機溶剤を使用せずに、水系溶媒で分解や溶解が可能な共重合ポリエステルやポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。
単繊維分散している繊維及び海島型複合繊維の島成分としては、それぞれ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのボリアミド系繊維などが好適に用いられる。中でもカーシート分野などの耐久性が要求される用途などを考慮すると、単繊維分散している繊維及び海島型複合繊維の島成分としては、それぞれ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
好ましい態様においては、原着極細繊維及び非原着極細繊維の両者がポリエステル系繊維である。
原着極細繊維に用いる顔料としては、有機顔料、及び無機顔料が挙げられるが、海島型複合繊維などの極細繊維発生型繊維では、一部の成分を除去して極細化する場合がある。除去処理には有機溶媒や熱アルカリ水溶液などを使用することが一般的である。しかしながら、顔料が有機顔料の場合、有機溶媒や熱アルカリ水溶液などで一部成分の除去処理を行うと有機顔料の一部が溶出することがあることから、無機顔料の使用が好ましい。特に好ましい顔料は、黒色の発色性、耐光堅牢度、及び化学的安定性に優れる点でカーボンブラックである。
カーボンブラックの種類は特に限定されるものではないが、例えば、平均一次粒子径が5〜60nmのカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径が5nm以上の場合には、一次粒子同士の再凝集が発生し難く、発色や物性等の品質面の問題が生じ難く、且つ紡糸性低下が起こり難い点で有利である。平均一次粒子径が60nm以下の場合には紡糸工程でのフィルター詰りを起こし難く紡糸性低下や物性低下を起こし難い点で有利である。
原着極細繊維における顔料の含有率は、優れた発色性、耐光堅牢度及び強度を得る観点から、好ましくは0.5質量%〜4.0質量%、より好ましくは1.0質量%〜3.5質量%である。原着極細繊維中の顔料の含有率が0.5質量%以上である場合、優れた発色性及び耐光堅牢度が得られ易く、4.0質量%以下である場合、繊維強度低下及び紡糸性悪化を引き起こし難い。
一態様において、不織布は、表面繊維層と裏面繊維層とを有する。この場合、原着極細繊維は、表面繊維層のみに含有されることができ、或いは、人工皮革の表裏の表面感を同等にする目的では、表面繊維層と裏面繊維層との両層に含有されることができる。
不織布は、好ましくは、表面繊維層と、裏面繊維層と、これらの間に配置された中間繊維層との3層を少なくとも有する。中間繊維層は、織編物から成るスクリムであることが好ましい。例えば、表面繊維層と裏面繊維層との間に織編物であるスクリムをサンドイッチ状に挟み込み、各層中の繊維を交絡させてなる構造を含む、3層以上の多層構造によれば、寸法安定性、引張強度、引裂強度などがさらに改善され好ましい。
不織布を構成する1層又は2層以上の繊維層は、極細繊維発生型繊維などの原料繊維を短繊維化し、カード法、エアレイ法などの乾式法、或いは水中に各短繊維を分散させたスラリーを用いた抄造法などにより作製することができるが、各短繊維の均一分散性、及び極細短繊維が利用できる点で、抄造法が好ましい。特に本発明においては、極細繊維及び極細繊維発生型繊維のいずれもが単繊維分散し易く、極細繊維及び極細繊維発生型繊維の収束繊維が発生し難いために、欠点が少なく、かつ表面品位に優れたシャープなメランジ効果を有するメランジ調外観が得られ易い点で、均一分散性が高い抄造法が好ましい。カード法では例えば繊度0.6dtex以下の極細繊維で繊維層を作製しようとする場合にカーディングローラーの針に繊維が巻き付き易く繊維の開繊がし難い傾向がある点、エアレイ法では極細繊維の分散がし難い傾向がある点、乾式法では得られた繊維層の均一性が低い傾向がある点、を考慮すると、これら方法と比べて抄造法は特に好ましい。好ましい態様においては、不織布が表面繊維層と裏面繊維層とを有し、表面繊維層のみ、又は表面繊維層及び裏面繊維層が、抄造シートである。
良好な均一分散性及び不織布強度が得られ易い点で、短繊維長は、乾式法では好ましくは13〜102mm、より好ましくは25〜76mm、さらに好ましくは38〜76mmであり、抄造法では好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜25mm、さらに好ましくは3〜20mmである。
不織布は、1層又は2層以上の繊維層から例えば下記の方法で得ることができる。例えば、繊維層をニードルパンチ法、スパンレース法(すなわち水流交絡法)などにより交絡させる方法が挙げられる。中でも、極細繊維及び極細繊維発生型繊維の両方の交絡処理に適性が高い点、及びスクリム組織が形成される場合の当該組織の破壊又は変形を起こし難い点で、水流交絡法が好ましく用いられる。ニードルパンチ法は、極細繊維発生型繊維の交絡処理の適性は高いが極細繊維の交絡処理の適性が低い傾向があり、またスクリム組織の破壊又は変形を起し易い傾向がある点を考慮すると、水流交絡法は特に好ましい。
水流交絡法における高圧水噴射ノズルの孔径は、高い交絡効果と優れた表面平滑性を得るためには0.05〜0.40mmが好ましく、さらに好ましくは、0.08〜0.30mmである。水流交絡における水圧は1〜10MPaで水を噴射させる。また、高圧水噴射面と被処理物までの距離は、高い交絡効果、交絡処理前の導布、及び交絡処理時の工程通過性の点から、好ましくは5〜100mmであり、さらに好ましくは10〜70mmである。また、高圧水噴射ノズルを円運動させること又は工程進行方向に対して直角に往復運動させることも、交絡効果や表面平滑性を高めるうえで好ましい方法である。孔径や水圧などの水流交絡条件については、被処理物である繊維層の構成や目付け或いは処理スピードなどに応じて適宜選択すればよい。
ニードルパンチ法では、使用される針のバーブ本数は1〜9本が好ましい。バーブの本数を1本以上とすることにより、交絡効果が得られ、かつ繊維損傷を抑えることができる。バーブ数が9本より多くなると、繊維損傷が大きくなりやすく、また針跡が繊維基材に残り製品の外観不良になることがある。
繊維の交絡性と製品外観への影響を考慮すると、バーブのトータルデプス(バーブの先端部からバーブ底部までの長さ)は0.05〜0.10mmであることが好ましい。バーブのトータルデプスを0.05mm以上とすることにより、繊維への十分な引掛かりが得られるため効率的な繊維交絡が可能となる。また、バーブのトータルデプスが0.10mmより大きくなると繊維の不織布内部への持ち込みは多いが、不織布に針跡を残し、品位が低下する傾向を示す。バーブ部の強度と繊維交絡のバランスを考慮すると、バーブのトータルデプスは、0.06mm以上0.08mm以下であることが好ましい。
本発明において、編織物であるスクリムの有無に関わらず、ニードルパンチ法により繊維を絡合させる場合は、パンチ密度の範囲を300本/cm〜6000本/cmとすることが好ましく、1000本/cm〜6000本/cmとすることがより好ましい。
本発明において、不織布がスクリムとして織編物を含む場合、織編物は、染色による同色性の点から表面繊維層を構成する非原着極細繊維若しくは原着極細繊維と同じポリマー系であることが好ましく、更に好ましくは非原着極細繊維と同じポリマー系である。編物の場合、22〜28ゲージで編み上げたシングルニットが好ましい。織物の場合は、編物よりも高い寸法安定性と強度が実現できる。織物の組織は、平織、綾織、朱子織などであってよいが、コスト面や交絡性などの工程面から、平織が本発明においては好ましい。
織物を構成する糸条中の単繊維の単繊維繊度は柔軟な人工皮革が得られ易い点では5.5dtex以下が好ましい。また、織物を構成する糸条の形態はポリエステルやポリアミドなどのマルチフィラメントの生糸や仮撚り加工を施した加工糸などを撚数0〜3000T/mで撚りを施して用いることが好ましい。該マルチフィラメントは通常のもので良く、例えばポリエステルやポリアミドなどの33dtex/6f、55dtex/24f、83dtex/36f、83dtex/72f、110dtex/36f、110dtex/48f、167dtex/36f、167dtex/48fなどが好ましく用いられる。また、織物を構成する糸条としてマルチフィラメント等の長繊維を用いる場合、織物における糸条の織密度は30〜150本/インチが好ましく、さらに好ましくは40〜100本/インチである。織物の目付は20〜150g/mが好ましい。尚、織物における仮撚り加工の有無や撚数、マルチフィラメントの単繊維繊度、織密度などは短繊維との交絡性や人工皮革の柔軟性に加え、縫目強力、引裂強力、引張強伸度、伸縮性などの機械物性と密接な関係があるので、それらの条件については目標とする物性や用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明における不織布の表面繊維層の目付は、好ましくは10〜200g/m、より好ましくは30〜170g/m、さらに好ましくは60〜170g/mである。裏面繊維層の目付は、好ましくは10〜200g/m、より好ましくは20〜170g/mである。スクリムの目付は、好ましくは20〜150g/m、より好ましくは20〜130g/m、さらに好ましくは30〜110g/mである。
不織布全体の目付は、好ましくは50〜550g/m、より好ましくは60〜400g/m、更に好ましくは70〜350g/mである。
本発明で使用される高分子弾性体としてはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム等が挙げられるが、柔軟で且つ弾力性のある風合、及び耐摩耗性や破断強度などの機械物性を得るためにはポリウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂としてはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系などがあり、更には、溶剤系及び水分散系のいずれも使用できる。いずれの樹脂を使用しても差し支えないが、含有量が少なくても人工皮革としての要求性能を良好に満たすことができ、且つ環境負荷を低減できるという点からポリウレタン樹脂、特に水分散系のポリウレタン樹脂の使用が好ましい。
ポリウレタン樹脂には耐湿熱性、耐摩耗性及び耐加水分解性などの耐久性を向上する目的で架橋剤を併用することができる。架橋剤は、ポリウレタンに対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、またポリウレタン構造内に予め架橋構造を採ることができる反応基を導入する内部架橋剤でもよい。
柔軟な風合いと機械強度を両立するには、高分子弾性体の含有量は、不織布(例えば、不織布が表面繊維層、スクリム、及び裏面繊維層で構成されている場合にはこれらの合計量)100質量%に対して、5〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%であり、最も好ましくは5〜15質量%である。又、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤等の安定剤や難燃剤、帯電防止剤、カーボンブラックなどの顔料などの添加剤を添加することは何ら支障がない。
本発明の人工皮革は、当該人工皮革の片面又は両面(例えば、不織布が表面繊維層と裏面繊維層とを有する場合、表面繊維層の外面のみ、若しくは表面繊維層の外面と裏面繊維層の外面との両者)に立毛を有するスエード調やヌバック調であってもよい。人工皮革の片面又は両面に対し、サンドペ−パ−などによるバフィング処理等を行い、繊維立毛面を形成させ、スエード調やヌバック調にすることができる。
本発明の人工皮革は発色効果の多様化の点で染色処理を行なうことも好ましい態様である。染色処理は、例えば、ポリエステル系繊維の場合は分散染料を用い、ポリアミド系繊維の場合は酸性染料を用いることが一般的である。染色方法については染色加工業者に良く知られた通常の方法を用いることができる。人工皮革においては均染性の点から液流染色機が好適に用いられる。このようにして染色された人工皮革は、ソーピングや必要に応じて化学的還元剤の存在下で還元洗浄を実施し、余剰染料を除去する。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例及び比較例中の表面品位、物性は以下の方法で評価した。
(1)人工皮革のメランジ効果
人工皮革のメランジ効果の評価は被験者10人で目視による判定を行った。メランジ効果が強いと判断したものを2点、メランジ効果が弱いと判断したものを1点、メランジ効果が無いと判断したものを0点とし、各人に評価してもらいその総点から下記の基準に従い、表面品位を判定した。
×:0〜8点
△:9〜14点
○:15〜17点
◎:18〜20点
(2)人工皮革の表面風合い
染色された人工皮革の表面風合いの評価は被験者10人で手触りによる判定を行った。非常に滑らかと判断したものを2点、少し滑らかと判断したものを1点、ざらつくと判断したものを0点とし、各人に評価してもらいその総点から下記の基準に従い、表面品位を判定した。
×:0〜8点
△:9〜14点
○:15〜17点
◎:18〜20点
(3)人工皮革の総合評価
上記の評価方法で人工皮革のメランジ効果と表面風合いそれぞれで、○若しくは◎の場合を合格、その他を不合格として評価し、総合評価としては、メランジ効果、表面風合い共に○若しくは◎のものを合格とし、その他を不合格とした。
(4)極細繊維束の平均換算直径の測定方法
極細繊維束の平均換算直径とは、極細繊維束に含まれる極細繊維の断面積の合計から、極細繊維束が円形の断面形状を持った単繊維と仮定した場合の円の直径として算出される値を意味し、ランダムに選定した極細繊維束5点の平均値とした。具体的な測定方法は下記である。なお、極細繊維の断面が円形でない場合においても、円と仮定し、その円の直径diを下記の様に定義する。
なお、極細繊維の換算直径はマイクロスコープ(キーエンス製「VHX―5000」)で撮像した単繊維長軸方向と垂直な平面の1500倍の断面写真から算出した。
極細繊維束に含まれる極細繊維iの換算直径di=(ai+bi)/2
ai:極細繊維断面形状で、両端部を結んだ距離が最も長い直線距離
bi:極細繊維断面形状で、aiの中間点に直交する直線で結んだ両端部の直線距離
n:極細繊維束に含まれる極細繊維の本数
i:極細繊維束に含まれる極細繊維(i=1〜n)
極細繊維束に含まれる極細繊維iの断面積Si=π×di2/4
極細繊維束に含まれる極細繊維の断面積の合計S=S1+S2+・・・+Sn
極細繊維束の換算直径DX=(4S/π)0.5
平均換算直径D=(D1+D2+D3+D4+D5)/5
[実施例1]
海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを9mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分としてカーボンブラック(以降、カーボンブラックを「CB」とも称す)を3質量%含有させたポリエチレンテレフタレートを用い、海成分30質量%、島成分70質量%の複合比率にて島数16島/1フィラメント、単繊維繊度3.5dtexの海島型複合繊維を製造し、長さ5mmに切断した(以降、海成分30質量%、島成分70質量%の複合比率で島成分がカーボンブラック3質量%含有ポリエチレンテレフタレートから成り、島数16島/1フィラメント、単繊維繊度3.5dtexの長さ5mmに切断した海島型複合繊維を「CB原着PET海島短繊維」とも称す)。
また、直接紡糸した単繊維の平均直径が3.8μm(単繊維平均繊度0.15dtex)のカーボンブラックを含有しない非原着ポリエチレンテレフタレート極細繊維を製造し、長さ5mmに切断した(以降、直接紡糸した長さ5mmに切断した単繊維の平均直径が3.8μmのカーボンブラックを含有しない非原着ポリエチレンテレフタレート極細繊維を「非原着PET極細短繊維」と称す)。CB原着PET海島短繊維と非原着PET極細短繊維の比率が質量比率で10:90となるように水中に分散させ抄造法により目付100g/m2の抄造シートを製造し表面繊維層用繊維ウェブとして用いた。
同様の方法にて非原着PET極細短繊維を水中に分散させ抄造法により目付50g/m2の抄造シートを製造し裏面繊維層用繊維ウェブとして用いた。
表面繊維層用と裏面繊維層用の繊維ウェブの中間に、166dtex/48fのポリエチレンテレフタレート繊維からなる目付95g/m2のスクリムを封入し、3層積層体とした。
次いで該3層積層体に対して、孔径0.15mmの直進流噴射ノズルを用いた高速水流を表面繊維層用繊維ウェブ側から4MPa、裏面繊維層用繊維ウェブ側から3MPaの圧力で水流噴射し、表面繊維層用繊維ウェブと裏面繊維層用繊維ウェブをスクリムに絡合させて交絡一体化した後に、エアースルー方式のピンテンター乾燥機を用いて100℃で乾燥して、3層構造からなる不織布を得た。
この不織布の表面繊維層の外面を、#400のエメリペーパーを用いて起毛した。高分子弾性体含浸液として、ポリエーテル系水分散ポリウレタンエマルジョン(日華化学社製「エバファノールAP−12」)を高分子弾性体含浸液に対して9質量%、含浸助剤として硫酸ナトリウム(Na2SO4)を高分子弾性体含浸液に対して3質量%となるように調合し、この含浸液を、起毛した3層構造からなる不織布の重量に対する付着率が130%となるように含浸した。その後ピンテンター乾燥機を用いて130℃で加熱乾燥し、人工皮革生地を得た。
該人工皮革生地を95℃に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に30分間含浸処理し、不織布に存在する、CB原着PET海島短繊維の海成分を除去し、単繊維の平均直径が3.8μm(単繊維平均繊度0.15dtex)であるカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート極細繊維から成る原着極細繊維束とした。尚、表面繊維層の繊維重量に対する原着極細繊維束の重量比率は7質量%であった。また、原着極細繊維束の平均換算直径は15.5μmであった。
この人工皮革生地はそのままでもメランジ効果を発現するが、さらにこの人工皮革生地を染料濃度5.0%owfのブルー分散染料(住友化学製:BlueFBL)で液流染色機を用いて130℃で15分間染色し、還元洗浄を行った。その後ピンテンター乾燥機を用いて100℃で乾燥させ、スエード調人工皮革を得た。
[実施例2〜3、比較例1]
実施例1において、CB原着PET海島短繊維の島数を変更し、島部の単繊維平均直径を2.0μm(実施例2)、6.3μm(実施例3)、9.0μm(比較例1)に変えた他は実施例1と同様に作製し、スエード調人工皮革を得た。
[実施例4〜6、比較例2〜3]
実施例1において、CB原着PET海島短繊維と非原着PET極細短繊維の比率が質量比率で3:97(比較例2)、20:80(実施例4)、35:65(実施例5)、50:50(実施例6)、70:30(比較例3)となるように変えた他は実施例1と同様に作製し、スエード調人工皮革を得た。
[実施例7〜8]
実施例1において、CB原着PET海島短繊維が海成分50質量%、島成分50質量%の複合比率にて島数16島/1フィラメント、単繊維繊度2.0dtex(実施例7)、海成分20質量%、島成分80質量%の複合比率にて島数16島/1フィラメント、単繊維繊度7.9dtex(実施例8)となるように変えた他は実施例1と同様に作製し、スエード調人工皮革を得た。なお、実施例4、5の原着極細繊維束の平均換算直径はそれぞれ、10.0μm、25.0μmであった。
[比較例4〜5]
実施例1において、CB原着PET海島短繊維の代わりに、直接紡糸した単繊維の平均直径が3.8μm(単繊維の平均繊度0.15dtex)のカーボンブラックを3質量%含有した原着ポリエチレンテレフタレート極細繊維を作製し、長さ5mmに切断した(以降、長さ5mmに切断した直接紡糸した単繊維の平均直径が3.8μmのカーボンブラックを3質量%含有した原着ポリエチレンテレフタレート極細繊維を「CB原着PET極細短繊維」とも称す)(比較例4)、CB原着PET極細短繊維の単繊維の平均直径を15.0μmへ変えた繊維(以降、CB原着PET極細短繊維の単繊維の平均直径を15.0μmへ変えた繊維を「CB原着PET短繊維」とも称す)(比較例5)に変えた他は実施例1と同様に作製し、スエード調人工皮革を得た。
[実施例9]
実施例1において、実施例1記載の海島型複合繊維の島成分をカーボンブラックを含有しないポリエチレンテレフタレートへ変えた点を除き、実施例1と同様に作製した長さ5mmの海島型複合繊維(以降、実施例1記載の海島型複合繊維の島成分をカーボンブラックを含有しないポリエチレンテレフタレートへ変えた点を除き、実施例1と同様に作製した長さ5mmの海島型複合繊維を「非原着PET海島短繊維」とも称す)をCB原着PET海島短繊維の代わりに用い、かつ実施例1記載の非原着PET極細短繊維の代りに単繊維の平均直径が3.8μmでカーボンブラックを3質量%含有し、5mmに切断したポリエチレンテレフタレート極細繊維(以降、5mmに切断したカーボンブラックを3質量%含有した原着ポリエチレンテレフタレート極細繊維を「CB原着PET極細短繊維」と称す)へ変え、非原着PET海島短繊維とCB原着PET極細短繊維の比率が質量比率で10:90となるように水中に分散させた他は実施例1と同様に作製し、スエード調人工皮革を得た。
[実施例10、比較例6]
実施例9において、非原着PET海島短繊維の島数を変更し、島部の単繊維平均直径を6.3μm(実施例10)、9.0μm(比較例6)に変えた他は実施例9と同様に作製し、スエード調人工皮革を得た。
[比較例7〜8]
実施例9において、非原着PET海島短繊維とCB原着PET極細短繊維の比率が質量比率で3:97(比較例7)、65:35(比較例8)となるように変えた他は実施例9と同様に作製し、スエード調人工皮革を得た。
[比較例9]
実施例1と同様にして作製した海島型複合繊維に捲縮加工を施し、捲縮数が18山/2.54cm、捲縮度が27%の捲縮した海島型複合繊維を得た。その後、捲縮した海島型複合繊維を繊維長51mmに切断して島成分にカーボンブラックを3質量%含有する海島型複合繊維のステープルを得た(以降、実施例1記載の海島型複合繊維を捲縮後繊維長51mmに切断した島成分にカーボンブラックを3質量%含有する海島型複合繊維のステープルを「CB原着PET海島繊維スフ」とも称す)。
また、島成分にカーボンブラックを含有しないことを除きCB含有PET海島繊維スフと同様にして作製した海島型複合繊維のステープルを得た(以降、島成分にカーボンブラックを含有しないことを除きCB含有PET海島繊維スフと同様にして作製した海島型複合繊維のステープルを「非原着PET海島繊維スフ」とも称す)。
CB原着PET海島繊維スフと非原着PET海島繊維スフを20:80となるよう混合し、カード及びクロスラッパーを通して繊維層を形成し、ニードルパンチ処理を施した後97℃の熱水中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃で熱風乾燥して人工皮革用不織布を得た。
人工皮革用不織布を95℃の温度に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して25分間処理し、更に水洗を行うことにより、平均直径が3.8μmの極細繊維が16本束になった原着極細繊維束と非原着極細繊維束から構成される脱海シートを得た。
該脱海シートに重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコールの10質量%水溶液を含浸し、ニップロールで絞った後に120℃の熱風乾燥機で乾燥を行うことで脱海シートに対して13質量%のポリビニルアルコールを付着させて脱海シートの保形性を向上させた後、15質量%に調整したポリカーボネート系ポリウレタン樹脂のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)溶液を含浸し、DMF30質量%水溶液中でポリウレタン樹脂を凝固させた。その後ポリビニルアルコール及びDMFを熱水で除去し、120℃の温度で10分間熱風乾燥することにより、脱海シートの質量に対するポリウレタン樹脂の質量が35質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシート状物を得た。
上記のポリウレタン樹脂を付与したシート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面と反対の表面を240メッシュのサンドペーパーによって起毛処理を施した後、実施例1と同様に染色、還元洗浄、乾燥を行うことで目付285g/m2のスエード調人工皮革を得た。
実施例1〜10、比較例1〜9で得たスエード調人工皮革について表面品位を評価し、その結果を表1〜3に示した。
これらの結果から、原着極細繊維を含有する繊維層を含む人工皮革において、原着極細繊維及び非原着極細繊維の単繊維繊度、分布形態を特定の条件にすることで、シャープなメランジ効果を発現し、かつ優れた表面の風合いを有する人工皮革を得られることが判った。
本発明に係る人工皮革は、例えばインテリア、自動車、航空機、鉄道車両などのシートの表皮材又は内装材等の用途に好適に用いることができる。
ai:極細繊維断面形状で両端部を結んだ距離が最も長い直線距離
bi:極細繊維断面形状で、aiの中間点に直交する直線で結んだ両端部の直線距離
n:極細繊維束に含まれる極細繊維の本数
i:極細繊維束に含まれる極細繊維(i=1〜n)

Claims (8)

  1. 不織布と前記不織布に含浸された高分子弾性体とから構成され、下記(1)〜(3):
    (1)不織布が、単層若しくは2層以上の繊維層から構成される;
    (2)不織布が、顔料で着色された平均直径7.5μm以下の繊維である原着極細繊維と顔料で着色されていない平均直径7.5μm以下の繊維である非原着極細繊維とから構成された原着−非原着繊維層を少なくとも1層有する;
    (3)原着−非原着繊維層において、原着極細繊維と非原着極細繊維とのうち一方が極細繊維束として存在しており、かつ原着−非原着繊維層中の極細繊維束の重量比率が5〜50%である;
    の条件を満たす、人工皮革。
  2. 前記原着−非原着繊維層において、原着極細繊維と非原着極細繊維とのうち、一方が極細繊維束として存在しており、かつ他方が実質的に単繊維分散した極細繊維として存在しており、
    原着極細繊維及び非原着極細繊維の平均直径がそれぞれ1.5〜7.5μmであり、
    極細繊維束の平均換算直径が8〜30μmである、請求項1に記載の人工皮革。
  3. 前記極細繊維束が極細繊維発生型繊維から発現させた極細繊維で構成されている、請求項1又は2に記載の人工皮革。
  4. 前記不織布が、表面繊維層、裏面繊維層、及びこれらの間に配置された中間繊維層を少なくとも有し、中間繊維層が織編物から成るスクリムである、請求項1〜3いずれか一項に記載の人工皮革。
  5. 前記不織布が表面繊維層及び裏面繊維層を少なくとも有し、原着極細繊維が、表面繊維層のみ、又は表面繊維層及び裏面繊維層に含有される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の人工皮革。
  6. 前記原着極細繊維及び前記非原着極細繊維がポリエステル系繊維である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の人工皮革。
  7. 前記顔料がカーボンブラックである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の人工皮革。
  8. 前記不織布が表面繊維層及び裏面繊維層を少なくとも有し、表面繊維層のみ、又は表面繊維層及び裏面繊維層が、抄造シートである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の人工皮革。
JP2018078901A 2018-04-17 2018-04-17 メランジ効果を発現する人工皮革 Active JP7096694B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018078901A JP7096694B2 (ja) 2018-04-17 2018-04-17 メランジ効果を発現する人工皮革

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018078901A JP7096694B2 (ja) 2018-04-17 2018-04-17 メランジ効果を発現する人工皮革

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019183351A true JP2019183351A (ja) 2019-10-24
JP7096694B2 JP7096694B2 (ja) 2022-07-06

Family

ID=68340023

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018078901A Active JP7096694B2 (ja) 2018-04-17 2018-04-17 メランジ効果を発現する人工皮革

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7096694B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022070953A1 (ja) * 2020-09-29 2022-04-07 東レ株式会社 人工皮革およびこれを用いてなる光透過デバイス

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04240274A (ja) * 1991-01-24 1992-08-27 Toray Ind Inc メランジ調立毛シート状物およびその製造方法
JP2004107807A (ja) * 2002-09-13 2004-04-08 Asahi Kasei Fibers Corp 異色効果を有するスエード調人工皮革及びその製造方法
JP2005133256A (ja) * 2003-10-31 2005-05-26 Kuraray Co Ltd 耐光堅牢性の良好なスエード調人工皮革およびその製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001262476A (ja) 2000-03-17 2001-09-26 Toray Ind Inc ポリエステル繊維とポリアミド繊維を用いてなる人工皮革およびその製造方法
JP4170156B2 (ja) 2003-06-02 2008-10-22 株式会社クラレ 立毛シート状物およびその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04240274A (ja) * 1991-01-24 1992-08-27 Toray Ind Inc メランジ調立毛シート状物およびその製造方法
JP2004107807A (ja) * 2002-09-13 2004-04-08 Asahi Kasei Fibers Corp 異色効果を有するスエード調人工皮革及びその製造方法
JP2005133256A (ja) * 2003-10-31 2005-05-26 Kuraray Co Ltd 耐光堅牢性の良好なスエード調人工皮革およびその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022070953A1 (ja) * 2020-09-29 2022-04-07 東レ株式会社 人工皮革およびこれを用いてなる光透過デバイス

Also Published As

Publication number Publication date
JP7096694B2 (ja) 2022-07-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN101331265B (zh) 具有优异的强度和伸长率性质的绒面状人造革
JP7165199B2 (ja) 人工皮革、及び、その製造方法
JPWO2006040992A1 (ja) 人工皮革用不織布および人工皮革基体の製造方法
KR20160137579A (ko) 인공 피혁과 그의 제조 방법
JP6864527B2 (ja) 人工皮革
EP3816342B1 (en) Artificial leather and production method therefor
JP7096694B2 (ja) メランジ効果を発現する人工皮革
JP2011153389A (ja) 人工皮革およびその製造方法
JP6864526B2 (ja) 局所的に輝きを有する人工皮革
KR20210022551A (ko) 시트상물 및 그의 제조 방법
CN113597485B (zh) 片状物
JP2017137588A (ja) 伸びを有する人工皮革
JP6709059B2 (ja) 広幅且つ伸びを有する人工皮革
WO2023120584A1 (ja) 人工皮革及びその製法
JP7352142B2 (ja) 人工皮革およびその製造方法
JP7347078B2 (ja) 人工皮革およびその製造方法
WO2024004475A1 (ja) 人工皮革及びその製法
WO2023189269A1 (ja) 人工皮革およびその製造方法、複合人工皮革
WO2024029215A1 (ja) 人工皮革およびその製造方法、ならびに、乗物用内装材、座席
JP2022179173A (ja) 人工皮革、及びその製法
JP6813396B2 (ja) 制電性を有する人工皮革
JP2000080572A (ja) 人工皮革
JP2022179201A (ja) 人工皮革、及びその製法
JP2022179195A (ja) 人工皮革及びその製造方法
JP2023065062A (ja) 人工皮革及びその製法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210107

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220111

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220201

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220331

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220607

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220624

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7096694

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150