JP6709059B2 - 広幅且つ伸びを有する人工皮革 - Google Patents

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Description

本発明は、広幅且つ伸びを有する人工皮革およびその製法に関するものである。
人工皮革は、衣類、靴、鞄、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材、リボンやワッペン基材などの服飾分野に好適に用いられる。
その中でも、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材などの分野では高級感に加えデザイン性追求のため、これまでより凹凸が目立つ複雑な形状が要求されることが多い。また、作業性の面では複雑な形状に容易に追従できる広幅且つ伸びのある人工皮革が求められている。
伸びのある人工皮革を得る方法として、特許文献1及び2にはポリトリメチレンテレフタレート繊維、あるいはポリトリメチレンテレフタレート繊維を1成分とし、2成分以上のポリエステル系繊維から成る複合糸を用いた織編物をスクリムとして用いたシート状物や人工皮革が開示されている。これらの方法は、いずれも仮撚加工の捲縮収縮力を利用した収縮に由来する伸びである。この方法では織編物単体では充分な収縮と伸びが得られるが、人工皮革の要件の1つである極細繊維との交絡一体化後では極細繊維および極細繊維同士の交絡力が抵抗となり、充分な収縮と伸びが得られ難いと言う問題があった。また、伸び発現の原動力は収縮にあり、本願の目的効果の一つである広幅の点では逆効果となる。
特許文献3〜5には、スクリムである織編物を構成する原糸にポリウレタン弾性糸を複合した人工皮革や人工皮革様不織布が開示されている。これらの方法では充分な伸びは得られるが、反面、染色収縮率が大きいので広幅化が難しいばかりでなく、伸長後の回復性、いわゆるストレッチバック性が大きすぎるため、成型後に基材と人工皮革が剥離するなどのトラブルが発生し易くなる。
特開2003−239178号公報 特開2002−69789号公報 特開2004−91999号公報 特開2004−92005号公報 特開2000−54250号公報
本発明が解決しようとする課題は、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材として好適に用いることができる広幅で且つ複雑な形状への追従性が良い人工皮革を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、以下の特徴を持った多層構造からなる人工皮革とすることで課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]織糸として総繊度55〜220dtexのマルチフィラメント糸からなる織物であるスクリムを有する人工皮革であって、該織物の経及び/または緯方向において、該マルチフィラメント糸の断面における100μm×100μmの範囲内に存在する、単繊維の合計断面積の比率が15〜45%であり、隣接する該マルチフィラメント糸間の距離の平均値が500μm以上であり、該マルチフィラメント糸の糸伸長率が60%以上であり、該スクリムの一の面に表面繊維層を有し、該スクリムの他の面に裏面繊維層を有し、かつ、該表面繊維層、該スクリム、及び該裏面繊維層の合計繊維量に対して高分子弾性体を5〜20wt%含有することを特徴とする人工皮革。
[2]前記[1]に記載の人工皮革を用いた自動車用天井材。
本発明による広幅且つ伸びを有する人工皮革は、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材として好適に用いられる。
スクリムを構成するマルチフィラメント糸における、当該マルチフィラメント糸を構成する単繊維の合計断面積の比率を測定する方法について説明するための概念図である。 スクリムを構成するマルチフィラメント糸の中で、隣接する糸間の距離を測定する方法について説明するための概念図である。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のスクリムを有する人工皮革は、経及び/または緯方向において、スクリムを構成するマルチフィラメント糸の断面における、100μm×100μmの範囲内に存在する該マルチフィラメント糸を構成する単繊維(モノフィラメント)の合計断面積の比率が15〜45%である。100μm×100μmの範囲内に存在する該マルチフィラメント糸を構成する単繊維の合計断面積の比率が15%未満の場合は、人工皮革の破断強度が低下することから好ましくない。45%を超える場合は、500g/cm定荷重伸度、1000g/cm定荷重伸度が低下することから好ましくない。より好ましくは20〜40%である。さらに好ましくは25〜40%である。
また、本発明の人工皮革は、隣接するスクリムを構成するマルチフィラメント糸間の距離の平均値が500μm以上である。隣接するマルチフィラメント糸間の距離の平均値が500μm未満であると、染色収縮率が大きくなることから好ましくない。より好ましくは、600μm以上である。さらに好ましくは700μm以上、1300μm以下である。隣接するマルチフィラメント糸間の距離の平均値が1300μmを超えると、寸法安定性が低下することから好ましくない。
本発明のスクリムを有する人工皮革は、スクリムの上部に表面繊維層を有することが好ましく、繊維層を構成する繊維は短繊維が好ましい。
短繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系短繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系短繊維などが好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、目的とする用途によって適宜選択すればよい。
さらにスクリムの下部にも裏面繊維層を有することが好ましく、例えば表面繊維層と裏面繊維層との間にスクリムを挟み込み、交絡一体化させることで達成できる。裏面繊維層を構成する繊維は、短繊維が好ましい。
短繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系短繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系短繊維などが好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、目的とする用途によって適宜選択すればよい。
天然皮革様風合が得られ易い点やスエード調やヌバック調表面感が得られ易い点からすれば、上記短繊維の繊度は0.6dtex以下の極細短繊維を用いることが好ましい。より好ましくは0.02〜0.33dtexの極細短繊維を用いることが好ましい。0.02dtex未満の繊度では、染色時の染料濃度が非常に高くなったり、染色堅牢度や耐光性が不充分であったりして実用的ではない。
上記極細短繊維は、溶融紡糸法により直接紡糸されたものを短繊維化したものや、共重合ポリエステルを海成分、レギュラーポリエステルを島成分に用いた海島繊維から海成分を溶解または分解することによって除去して得られる極細繊維など、極細繊維発生型繊維から取り出したものを短繊維化したものなどが使用できる。短繊維長は1〜51mmが好ましく、より好ましくは3〜15mmである。
本発明の表面繊維層および裏面繊維層は、前記各短繊維からカード法、エアレイ法などの乾式法、および水中に各短繊維を分散させたスラリーを用いた抄造法などにより製造することができるが、各短繊維の均一分散性や極細短繊維が利用できる点では抄造法が好ましい。カード法では繊度0.6dtex以下の極細繊維はカーディングローラーの針に繊維が巻き付き繊維の開繊が困難であり、エアレイ法でも極細繊維の分散が困難である。また乾式法では得られた繊維層が均一分散性に劣ると言う欠点がある。
さらに、本発明の人工皮革の構造は、表面繊維層と裏面繊維層にスクリムをサンドイッチ状に挟み込み、各層中の繊維を交絡させてなる3層構造以上の多層構造であることが好ましい。
好ましくは、表面繊維層と裏面繊維層の間にスクリムをサンドイッチ状に挟んだ構造とし、各層の繊維を交絡させた3層構造にすることによって、耐摩耗性や剥離強度などがさらに改善される。
これら各層の好ましい目付は表面繊維層が10〜200g/m、より好ましくは30〜170g/m、さらに好ましくは60〜170g/mである。裏面繊維層は10〜200g/m、より好ましくは20〜170g/mである。スクリムは10〜125g/m、より好ましくは10〜110g/m、さらに好ましくは10〜75g/mである。
又、電子顕微鏡で観察した各層の厚みは、表面繊維層は40〜900μm、より好ましくは120〜800μm、さらに好ましくは200〜800μmである。裏面繊維層は40〜900μm、より好ましくは100〜800μmである。スクリムは150〜450μm、より好ましくは150〜300μmである。
本発明の人工皮革は、経又は緯方向の一方向における破断伸度が60%以上であることが好ましい。破断伸度が60%未満の場合は、複雑な立体形状の製品に機械等で張り込む際、人工皮革に皺が生じる、又は耳部が裂け易くなり、成形性が低下する点から好ましくない。より好ましくは70%以上である。
本発明の人工皮革は、経又は緯方向の一方向における500g/cm定荷重伸度が10%以上であることが好ましい。500g/cm定荷重伸度が10%未満の場合は、人工皮革の追従が悪くなり、成形性が低下することから好ましくない。より好ましくは15%以上である。さらに好ましくは20%以上である。さらに、成形時の成形機の進行方向の寸法安定性や不必要な変形防止、ハンドリング性の点から緯方向のみの一方向における500g/cm定荷重伸度が10%以上であることが好ましい。より好ましくは15%以上である。さらに好ましくは20%以上である。上限は高い方が好ましいが、例えば30%以下である。尚、500g/cm定荷重伸度の具体的な測定方法については実施例に記載した。
本発明の人工皮革は、経又は緯方向の一方向における1000g/cm定荷重伸度が15%以上であることが好ましい。1000g/cm定荷重伸度が15%未満の場合は、人工皮革の追従が悪くなり、成形性が低下することから好ましくない。より好ましくは20%以上である。さらに好ましくは25%以上である。さらに、成形時の成形機の進行方向の寸法安定性や不必要な変形防止、ハンドリング性の点から緯方向のみの一方向における1000g/cm定荷重伸度が15%以上であることが好ましい。より好ましくは20%以上である。さらに好ましくは25%以上である。上限は高い方が好ましいが、例えば35%以下である。尚、1000g/cm定荷重伸度の具体的な測定方法については実施例に記載した。
本発明のスクリムは織物からなり、スクリムを構成するマルチフィラメント糸の糸伸長率は60%以上であることが好ましい。糸伸長率が60%未満の場合は、破断伸度、500g/cm定荷重伸度、1000g/cm定荷重伸度が低下することから好ましくない。より好ましくは70%以上である。さらに好ましくは75%以上である。上限は高い方が好ましいが、例えば100%以下である。
スクリムを構成するマルチフィラメント糸が伸張性を示すのは以下の理由による。たとえば、A糸とB糸を撚糸により双糸にすると、両糸に撚りによる「たわみ」が生じる。又、A糸を芯糸にして、これをB糸でカバリング糸とすることによって、B糸はコイル状となる。ここでたとえば、A糸が熱水で溶解するような糸でB糸が非溶解性の糸であるような場合、後の人工皮革の製造工程において当該スクリムを熱水処理することによって、A糸のみが溶解して無くなり、A糸がもともと存在していたところに新たな空間が生まれ、残ったB糸は伸びることができるようになる。
スクリムを構成するマルチフィラメント糸の糸伸長率を測定する方法としては、A糸(たとえば熱水に溶解する糸)とB糸(非溶解性の糸)を撚り合わせて双糸とした後でスクリムを作成する場合では、該織物より双糸を引き抜いて糸伸長率を測定する。又、A糸を芯にB糸を巻付けたカバリング糸を作成した後で織物を作成する場合でも、同様に該織物よりカバリング糸を引き抜いて測定する。
スクリムを構成するマルチフィラメント糸の糸伸長率の測定は、JIS―L−1013法に準じて行った。
双糸やカバリング糸などに使用するA糸とB糸の組合せ(以下、複合糸)は特に限定しないが、B糸がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系や、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド系の場合には、A糸は共重合ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。このように複合糸のそれぞれの溶解性を考慮して、適宜組合せることができるが、これらのA糸の中では、染色時の熱水で溶解するポリビニルアルコールが好適である。
複合糸を構成するA糸の繊度は30〜220dtexであることが好ましい。繊度が30dtex未満の場合は、もう一方の構成糸であるB糸の巻長が短くなり、人工皮革の幅や伸度が不足する傾向がある。又、織物製織時の工程テンションで切れ易く、ハンドリング性が悪化する懸念がある。繊度が220dtexを超える場合は、人工皮革の厚みムラが生じやすく、表面品位の低下を招きやすいため好ましくない。又、人工皮革製造時の乾燥時の寸法安定性の点から、A糸の水中での溶解点は40℃以上が好ましい。より好ましくは70℃以上である。尚、溶解点とは、無緊張状態でA糸が水中において20〜30秒で溶断する温度を示す(A糸として水以外の溶媒に溶解する糸を用いた場合には、溶解点とは、無緊張状態でA糸が当該溶媒中において20〜30秒で溶断する温度である)。さらにA糸の水中収縮率は10%以下であることが好ましい。ここで、水中収縮率とは、水温25℃の水中においてA糸に1.8×10−3cN/dtexの荷重をかけて3分経過した時の収縮値を示す。この水中収縮率が10%を超えると、人工皮革製造時に該人工皮革が幅方向に大きく縮み、製品の幅が狭くなることから好ましくない。
複合糸を構成するもう一方のB糸は、染色による同色性の点から表面繊維層を構成する短繊維(たとえばポリエステル繊維)と同じポリマー系が好ましい。また、B糸には加工糸の無撚糸や200〜2000T(Twist)/mの有撚糸が好適に使われる。B糸の繊度は55〜220dtexであることが好ましい。繊度が55dtex未満の場合は、人工皮革の破断強度が低下することから好ましくない。220dtexを超える場合は織物の開口部が減り、表面繊維との交絡性が低下することから好ましくない。より好ましくは65〜85dtexである。さらに、成形機への適用性やハンドリング性と人工皮革としての成形性の両立の点から織物を構成する糸の緯糸繊度のみが55〜220dtexであることが好ましい。より好ましくは65〜85dtexである。
また、スクリムを構成するマルチフィラメント糸の複合糸の糸密度は20〜50本/inchであることが好ましい。20本/inch未満の場合は、スクリムを構成するマルチフィラメント糸の隣接糸間距離の平均値が1300μm以上となり、寸法安定性が低下することから好ましくない。50本/inchを超える場合は、スクリムを構成するマルチフィラメント糸の隣接糸間距離の平均値が500μm未満となり、染色収縮率が大きくなることから好ましくない。より好ましくは20〜40本/inchである。さらに好ましくは20〜30本/inchである。
本発明に係るスクリムを構成するマルチフィラメント糸は、上記の複合糸と溶解性の糸(A糸)のみで構成された糸とを併用して使用するのが好ましい態様である。このように併用しないと、糸密度が低くなってしまい、スクリムの運搬などのハンドリング時や人工皮革製造工程において織組織の変形(目ヨレ)が起こり易く、結果として交絡軌跡が残り易く、人工皮革の表面性が悪化する傾向がある。又、人工皮革製造時の張力によりスクリムが変形し易く、結果として皺が発生し易い傾向がある。このようなスクリムの変形や皺の問題は、複合糸に加えA糸のみで構成された糸とを併用することで解消される。好ましい併用糸の密度は、20〜50本/inchである。より好ましくは20〜40本/inchである。さらに好ましくは20〜30本/inchである。
複合糸とA糸とを併用する場合におけるA糸の糸密度は、複合糸の密度(本/inch)とA糸の密度(本/inch)とを合わせた糸の密度(合計糸密度)が45本/inch以上になるように打込むことによって所望の密度として得られる。好ましくは50本/inch以上であり、より好ましくは55本/inch以上100本/inch以下である。
合計糸密度が高過ぎる場合は、表面繊維層や裏面繊維層を有する場合に交絡性が低下し、耐摩耗性が低下することから好ましくない。
A糸の具体的な打込み方としては、たとえば1本毎、2本毎、3本毎のように規則的に打込み、織組織に対して複合糸が規則的に配置されるようにすればよい。
以上、スクリムの複合マルチフィラメント糸を構成するA糸及びB糸の繊度と糸密度を上記のような範囲に制御するとともに、複合糸を双糸やカバリング糸にすることにより、B糸をたわませたりコイル状にすることにより、本発明に係るスクリムを構成するマルチフィラメント糸の糸伸長率を60%以上とすることができ、これによって所望するような伸びを有する人工皮革が得られる。
本発明による人工皮革は、下記(I)〜(III)のいずれか一項を満たすことを特徴としていることがさらに好ましい。
(I)隣接するスクリムを構成するマルチフィラメント糸間の距離Zμm(以下Zと記載)が(1)式を満たす実質的な等間隔であり、その平均値Aμm(以下Aと記載)が500μm以上である。
Z=A ± 0.2A ・・・・・・(1)
(II)隣接するスクリムを構成するマルチフィラメント糸間の距離の平均値Aが500μm以上であり、隣接糸間距離が実質的に狭い隣接糸間距離xμm(以下xと記載)と広い隣接糸間距離yμm(以下yと記載)が規則的に存在し、xの平均値Xμm(以下Xと記載)とyの平均値Yμm(以下Yと記載)が(2)式を満たす。
Y≧1.5X・・・・・・・・・・(2)
(III)(II)においてYがY、Y、Y・・・Yの様に複数が規則的に存在し、(3)式を満たす。
≧1.5X・・・・・・・・・・(3) n≧2
本発明における、表面繊維層と裏面繊維層との間にスクリムを挟み込み、交絡一体化させる方法としては、スパンレース法と呼ばれる水流交絡法やニードルパンチ法などを用いることができるが、スクリムの組織を破壊や変形することがない水流交絡法が好ましい。表面繊維層とスクリムの剥離強度は3〜19N/mであることが好ましい。より好ましくは3〜13N/cmである。さらに好ましくは3〜5N/cmである。
剥離強度が弱すぎる場合は、耐摩耗性低下や染色時に層間剥離が発生する可能性があるので好ましくない。剥離強度が強すぎる場合は、交絡軌跡が残り易く、結果として人工皮革の表面品位低下や、伸長特性の悪化などの可能性があるので好ましくない。
本発明による人工皮革は、柔軟で且つ弾力性のある風合、及び耐摩耗性や破断強度などの機械強度を向上させる目的で、高分子弾性体を含有するのが好ましい。
本発明で使用される高分子弾性体としてはポリウレタン樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム等が挙げられるが、柔軟で且つ弾力性のある風合、及び耐摩耗性や破断強度などの機械物性を得るためにはポリウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂としてはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系などがあり、更には、溶剤系、水分散系が使用される。いずれの樹脂を使用しても差し支えないが、含有量が少なくても人工皮革としての要求性能を満たすことができ、且つ環境負荷の低減という点から水分散系のポリウレタン樹脂の使用が好ましい。
柔軟な風合いと機械強度を両立するには、高分子弾性体の含有量は表面繊維層、スクリム、裏面繊維層の合計繊維量に対して5〜20wt%であることが好ましい、より好ましくは7〜15wt%である。又、必要に応じて酸化防止剤等の安定剤や難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を添加することは何ら支障がない。
染色処理は、例えば、短繊維がポリエステル系繊維の場合は分散染料を用い、短繊維がポリアミド系繊維の場合は酸性染料を用いることが一般的である。染色方法については染色加工業者に良く知られた通常の方法を用いることができる。人工皮革においては均染性の点から液流染色機が好適に用いられる。このようにして染色された人工皮革は、ソーピングや必要に応じて化学的還元剤の存在下で還元洗浄を実施し、余剰染料を除去する。
本発明の人工皮革は、経又は緯方向の一方向において、後述する染色処理による染色収縮率が10%未満であることが好ましく、さらに好ましくは5%未満である。染色収縮率が10%以上の場合は、製品幅と伸びを両立する点から好ましくない。
このように染色収縮率を10%未満にするためには、前記したように、スクリムを構成するマルチフィラメント糸の複合糸の繊度や糸密度を所定の範囲に制御し、かつ糸に特定の伸長率を付与し、所定量の高分子弾性体を添加し、さらに表面繊維層/スクリム/裏面繊維層からなる交絡一体構造及びその剥離強度が大きく寄与する。
本発明において、染色後の人工皮革の拡幅率は1〜5%であることが好ましい。このような優れた拡幅率を達成することができるのは、本発明の特長のひとつであるが、上記の染色収縮率が10%未満であることと深く関係している。
拡幅の方法としては、以下の実施例に記載されているが、たとえば皮革生地をピンテンター乾燥機を用いて加温しながら拡幅する。拡幅率が1%未満の場合は、製品幅が狭くなることから好ましくない。5%を超える場合は、伸びが低下することから好ましくない。
製品幅と伸びを両立するため、より好ましくは2〜4%である。
銀付き人工皮革に仕上げる場合は、必要に応じて染色処理を行った後、表面に湿式ポリウレタンや乾式ポリウレタンなどの高分子弾性体を塗工もしくは離型紙上に形成した銀面層を人工皮革用不織布に貼り付けるなどの既知の方法によって被覆層を形成し、銀付き人工皮革として用いる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。尚、実施例および比較例中の性能測定結果は以下の方法で測定した。
(1)スクリムを構成するマルチフィラメント糸の繊度
人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、スクリムを構成する経方向のマルチフィラメント糸又は緯方向のマルチフィラメント糸の中の一のマルチフィラメント糸を選び、次に当該マルチフィラメント糸を構成する単繊維(モノフィラメント)の中で、図1に示すように一の単繊維の断面外周部における任意の2点を結ぶ距離が最も長くなる場合の距離をL1(μm)とした。次にL1を長辺として、長辺の中点からL1に直行するように単繊維の断面の両端部分を結ぶ直線の長さをL2(μm)として、下記(i)と(ii)の式に従ってスクリムを構成する当該マルチフィラメント糸を構成する単繊維の直径Dn(μm)と繊度Tn(dtex)を求めた。尚、ρは素材密度とし、ポリエステル素材の場合は1.38(g/cm)とし、Dn及びTnはそれぞれ、マルチフィラメント糸1本中に存在するZ本の単繊維中、n番目の単繊維の直径及び繊度を表す。
(i)マルチフィラメント糸を構成する単繊維の直径
(μm)=(L1+L2)/2
(ii)マルチフィラメント糸を構成する単繊維の繊度
(dtex)=(1/4πDn)×ρ×10-2
また、マルチフィラメント糸1本(単糸)中に存在する単繊維の本数Z(本)をカウントし、下記(iii)の式に従って該糸1本(単糸)の繊度T(dtex)を求めた。
(iii)マルチフィラメント糸1本の繊度
尚、マルチフィラメント糸1本(単糸)の繊度はランダムに10か所、スクリム中の単糸を抽出して測定し、その平均値を表記した。
(2)マルチフィラメント糸を構成する単繊維の合計断面積の比率
人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、スクリムを構成する経方向のマルチフィラメント糸又は緯方向のマルチフィラメント糸(以下、それぞれ経糸及び緯糸という)の両方を同時に観察できる断面部位を選択して画像を撮影した。画像中のスクリムを構成する経糸又は緯糸の中で一のマルチフィラメント糸を選び、(1)と同様にして、その中の一の単繊維の断面外周部における任意の2点を結ぶ距離が最も長くなる場合の距離をL1(μm)とした。次にL1を長辺として、長辺の中点からL1に直行するように単繊維の断面の両端部分を直線で結び、この距離をL2(μm)として、下記(i)と(ii)の式に従って、スクリムを構成するマルチフィラメント糸中の単繊維の直径Dn(μm)と断面積Sn(μm)を求めた。尚、Snはマルチフィラメント糸1本中に存在するZ本の単繊維中、n番目の単繊維の断面積を表す。
次に図1に示すスクリムを構成するマルチフィラメント糸の断面について、下記の(3)に記載される方法により、該糸を構成する一の単繊維の外周部と他の単繊維の外周部との距離が最大になるように直線を結び(図1中のx)、この直線の中点を正方形の中心として、前記直線と正方形の二辺が直角に交わるように縦100μm×横100μmの正方形を作図した。次に縦100μm×横100μmの正方形の画像中に存在する単繊維の本数A(本)と直径Dn(μm)を測定し、下記(iii)と(iv)の式に従って縦100μm×横100μmの正方形の画像中に存在する、全ての単繊維の断面積の合計S(μm)と、スクリムを構成するマルチフィラメント糸を構成する全ての単繊維の合計断面積の比率(%)を求めた。尚、縦100μm×横100μmの正方形中に単繊維面積の1/2以上が存在しているものを1本としてカウントし、1/2以下のものは除外(0本)とした。
(i)単繊維の直径 Dn(μm)=(L1+L2)/2
(ii)単繊維の断面積 n(μm)=πDn/4
尚、このDn及びnはそれぞれ、A本の単繊維中、n番目の単繊維の直径及び断面積を示す。
(iii)縦100μm×横100μmの正方形の画像中に存在する単繊維断面積の合計
(iv)単繊維の合計断面積の比率(%)=(S/10000)×100
尚、マルチフィラメント糸を構成する単繊維の合計断面積の比率はランダムに10か所のマルチフィラメント糸を抽出し測定して、その平均値を表記した。
(3)スクリムを構成する隣接するマルチフィラメント糸間の距離の平均値
人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、スクリムを構成する経糸と緯糸の両方を同時に観察できる断面部位を選択して画像を撮影した。ここで、画像中の経糸と緯糸の中からそれぞれ一本のマルチフィラメント糸(単糸)を選び、各単糸に番号をつける。例えば図2に示すように、単糸1を構成する単繊維の中で、一の単繊維と他の単繊維間の距離が最も長くなるようにして得られた直線をX1とした(図中の単糸1において、左端にある単繊維の断面外周部と、右端にある単繊維の断面外周部との距離が最大になる場合に相当する)。そして、X1の中点をP1とした。
次に、単糸1と隣り合う単糸2、単糸2と隣り合う単糸3、単糸3と隣り合う単糸4の、各スクリムを構成する単糸4本について、上記と同様にそれぞれの単糸を構成する単繊維間の距離が最も長くなるようにして得られた直線をそれぞれX2、X3及びX4として、それぞれの中点をP2、P3及びP4とした。
次に、P1とP2を結ぶ直線の中点をQ1、P2とP3を結ぶ直線の中点をQ2、P3とP4を結ぶ直線の中点をQ3として、Q1とQ2を結んだ直線をH1、Q2とQ3を結んだ直線をH2とした。
次に、H1の延長直線と直角に交わるようにP1とP2をそれぞれ通る垂線を引き、H1と平行になるように前記の垂線間の直線距離(μm)を測定し、これを単糸1と単糸2の隣接糸間距離とした。前記と同様にH2の延長直線と直角に交わるようにP2とP3をそれぞれ通る垂線を引き、H2と平行になるように前記の垂線間の直線距離(μm)を測定し、これを単糸2と単糸3の隣接糸間距離とした。
上記の作業を連続して行い、隣接糸間距離を連続して20か所を測定し、その平均値を表記した。
尚、前記の平均値とは、スクリム製織時以降にスクリムの伸びや収縮などの変形がない場合は、理論的には製織時に設定した複合糸の織密度(本/inch)の逆数をμmに換算した値を意味する。
(4)人工皮革の破断伸度
人工皮革をJIS―L−1096(2015年度版):8−14「引張強さ及び伸び率」(A法:ストリップ法)に従って試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、10cm/分の定速伸張法により、破断時点の伸度を計測した。
(5)人工皮革の500g/cm定荷重伸度
人工皮革をJIS―L−1096(2015年度版):8−14「引張強さ及び伸び率」(A法:ストリップ法)に従って試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、10cm/分の定速伸張法により、500g/cm荷重時点の伸度を計測した。
(6)人工皮革の1000g/cm定荷重伸度
人工皮革をJIS―L−1096(2015年度版):8−14「引張強さ及び伸び率」(A法:ストリップ法)に従って試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、10cm/分の定速伸張法により、1000g/cm荷重時点の伸度を計測した。
(7)スクリムを構成するマルチフィラメント糸の密度
人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、スクリムを構成する経糸もしくは緯糸の本数を測定し、1inchあたりの本数で表記した。
(8)高分子弾性体の含有率
高分子弾性体含浸加工後の人工皮革生地から経20cm、緯20cmの正方形サンプルの重量(A質量部)を切り取り、25℃の水に30分間浸漬して生地中の硫酸ナトリウム(NaSO)を抽出し、脱水乾燥後の生地の重量(B質量部)の重量変化から、下記の式に従って高分子弾性体の含有率を求めた。尚、上記の式中で×3とあるのは、高分子弾性体が硫酸ナトリウムの3倍量含有されていることによる。
高分子弾性体の含有率(wt%)={[(A−B)/A]×100}×3
尚、溶剤型高分子弾性体の場合は、上記の式を用いず、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)で高分子弾性体を人工皮革から直接抽出して、その前後の重量差から測定することが可能である。
(9)スクリムを構成するマルチフィラメント糸(単糸)の伸長率
人工皮革を作製する前のスクリムから経22cm、緯22cmの正方形サンプルを切り取り、このサンプルから経糸もしくは緯糸の中の単糸を引き抜き、JIS―L−1013法に準じて、糸の両端を1cmずつ把持し、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分とした時の糸の破断伸度の最大値を計測した。尚、スクリムを構成するマルチフィラメント糸に、たとえば前述したような溶解性の糸(A糸)と非溶解性の糸(B糸)からなる複合糸が使われた場合には、スクリムから複合糸を引き抜いて、A糸を溶解しない状態で複合糸として測定し、B糸の破断伸度を糸伸長率として計測する。また、スクリムにこのような複合糸とA糸を併用する場合では、A糸は測定対象外とする。
(10)人工皮革の表面繊維層とスクリムとの層間剥離強度(N/cm)
人工皮革の表面繊維層とスクリムとの層間剥離強度を下記の方法で測定した。
人工皮革から経2.5cm、緯10cmの長方形サンプルを切り取り、このサンプルの表面側(起毛人工皮革の場合は起毛面側)の全面に合成ゴム系接着剤スリーボンド1521(スリーボンド社製)を50mg/cm塗る。別に補強布として経2.5cm、緯10cmの長方形の厚地の織物を準備し、この補強布の片面の全面に同じ接着剤を50mg/cm塗り、すばやく接着剤塗布面どうしを張り合わせる。張り合わせたサンプルをマングルで圧縮後、室温で5時間以上放置し乾燥、接着させる。このサンプルを鋏で両端を2.5mmずつ切り取り、2.0cm(幅)×10cm(長さ)のサンプルとし、短長側からスクリム部と表面繊維層部の境に剃刀の刃で切れ目を入れた後、指で約2cm剥がす。次に、エー・アンド・ディー社製テンシロン万能試験機(モデルRTC−1210A)を用い、把持長2cm、クロスヘッド速度100mm/分、記録紙速度50mm/分で剥離させ、その時の応力を測定する。得られたチャートの複数個のピークのうち、最大ピークから順に大きいピーク3点のピーク値と、最少ピークから順に小さいピーク3点のピーク値を読み取り、合計6点の平均値を求める。これを2個のサンプル(n=2)で測定し、その平均した値を2で割った値(1cm幅当たりの値)を剥離強度とした。
(11)染色収縮率
人工皮革生地を130℃で15分間染色時に、染色加工前の幅(Acm)と染色加工後の幅(Bcm)を測定し、下記の式に従って染色収縮率を求めた。尚、染色加工後の幅とは、乾燥前の湿潤状態での幅である。
染色収縮率(%)=[(A−B)/A]×100
(12)染色後の人工皮革の拡幅率
染色後の人工皮革をピンテンター乾燥機を用いて100℃で拡幅しながら乾燥させ、染色加工前の幅(Acm)と乾燥後の幅(Ccm)を測定し、下記の式に従って拡幅率を求めた。
拡幅率(%)=[(C−A)/A]×100
(13)人工皮革の耐摩耗性
JIS−L−1096(2015年版)8.19「摩耗強さ」(E法:マーチンデール法)に従って、家具用の押圧荷重(12kPa)下で人工皮革の表面繊維層面の耐摩耗試験を行った。20000回磨耗後にスクリムが露出しない場合を合格(○もしくは◎)とし、測定結果としてスクリムが露出した磨耗回数に応じて下記を標記した。
×:10000回でスクリムが露出する。
△:10000回ではスクリムは露出しないが20000回でスクリムが露出する。
○:20000回ではスクリムは露出しないが30000回でスクリムが露出する。
◎:30000回でスクリムは露出しない。
(14)人工皮革の表面品位
人工皮革の表面繊維層面を被検者10人で目視による外観判定を行った。表面平滑性とその表面を撫ぜてライティング効果を評価した。良好と判断したものを1点、不良と判断したものを0点とし、各人に評価してもらいその総点から下記の基準に従い、表面外観を判定した。
×:0〜3点(不合格)
△:4〜6点(不合格)
○:7〜8点(合格)
◎:9〜10点(合格)
(15)人工皮革の総合評価
人工皮革生地の染色収縮率、および人工皮革の破断伸度、500g/cm定荷重伸度、1000g/cm定荷重伸度、耐摩耗性、表面品位の内、全物性を満たすものを◎(合格)とし、全ての物性は満たさないが4つ以上の物性を満たすものを○(合格)、物性を満たす項目が3つ以下のものを×(不合格)とした。
[実施例1]
直接紡糸法によって糸の繊度が0.17dtexの極細ポリエステル繊維を製造し、長さ5mmに切断して極細ポリエステル短繊維を得た。該極細ポリエステル短繊維を使用し、抄造法により目付97g/mの表面繊維層用繊維ウェブを得た。
次に該極細ポリエステル短繊維を使用し、抄造法により目付63g/mの裏面繊維層用繊維ウェブを得た。
経糸は、ポリエステル繊維の繊度167dtex/48fの糸を糸密度54本/inchで打込んだ。緯糸は、ポリビニルアルコール繊維の繊度62dtex/18fの糸(A糸)にポリエステル繊維の繊度84dtex/36fの糸(B糸)をカバリングした複合糸とA糸とを併用し、複合糸とA糸とをそれぞれ2本ずつ交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が、54本/inch(複合糸のみでは27本/inch)になるように打込みスクリム用の織物を得た。
表面繊維層用と裏面繊維層用繊維ウェブの中間に、スクリムを封入し、3層積層体とした。
次いで該3層積層体に対して、直進流噴射ノズルを用いた高速水流を表面繊維層側から4MPa、裏面繊維層側から3MPaの圧力で水流噴射し、表面繊維層と裏面繊維層をスクリムに絡合させて交絡一体化した後に、エアースルー方式のピンテンター乾燥機を用いて100℃で乾燥して、3層構造からなる不織布を得た。
この不織布の表面繊維層を、#400のエメリペーパーを用いて起毛した。これに、高分子弾性体含浸液として、ポリエーテル系水系ポリウレタンエマルジョン(日華化学社製「エバファノールAP−12」)を高分子弾性体含浸液に対して9wt%、含浸助剤として硫酸ナトリウム(NaSO)を高分子弾性体含浸液に対して3wt%となるように調合し、この含浸液を、前記不織布にピックアップ率130%になるように含浸した。その後ピンテンター乾燥機を用いて130℃で加熱乾燥し、人工皮革生地を得た。
この人工皮革生地を液流染色機を用いて130℃で15分間染色を実施し、還元洗浄を行った。その後ピンテンター乾燥機を用いて100℃で拡幅しながら乾燥させ、染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の各層の厚みを走査型電子顕微鏡で確認したところ、表面繊維層420μm、スクリム240μm、裏面繊維層330μmであった。また、高分子弾性体の含有率は12wt%であった。
染色後のスエード調人工皮革について、スクリムを構成するマルチフィラメント糸である経糸と緯糸の繊度、緯糸密度、マルチフィラメント糸を構成する単繊維の合計断面積の比率、緯糸中の隣接するマルチフィラメント糸間の距離の平均値、緯方向の破断伸度、500g/cm定荷重伸度、1000g/cm定荷重伸度、染色収縮率、並びに耐摩耗性、表面品位及び総合評価の結果を表1に示した。尚、隣接するマルチフィラメント糸間の距離(以下、「隣接糸間距離」という。)の平均値は787μmであった。マルチフィラメント糸を構成する単繊維の合計断面積の比率(以下、「繊維の合計断面積の比率」という。)は36%であった。また、剥離強度は4N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
[比較例1]
実施例1において、スクリムの緯糸が繊度167dtex/48fのポリエステル繊維であり、緯糸の糸密度が63本/inchであることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。尚、隣接糸間距離の平均値は387μmであった。繊維の合計断面積の比率は58%であった。また、剥離強度は6N/cmであった。
[比較例2]
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が81本/inch(複合糸のみでは54本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして得られたスエード調人工皮革は染色収縮率が10%以上となり、所望する拡幅率(1〜5%)にすると生地の一部が破断してしまい、製品として不適当となった。尚、隣接糸間距離の平均値は446μmであった。繊維の合計断面積の比率は39%であった。また、剥離強度は5N/cmであった。
[実施例2]
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2本ずつ交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が96本/inch(複合糸のみでは48本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は505μmであった。繊維の合計断面積の比率は34%であった。また、剥離強度は4N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
[実施例3]
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が72本/inch(複合糸のみでは48本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は508μmであった。繊維の合計断面積の比率は34%であった。また、剥離強度は4N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
[実施例4]
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2本ずつ交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が80本/inch(複合糸のみでは40本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は565μmであった。繊維の合計断面積の比率は37%であった。また、剥離強度は8N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
[実施例5]
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が54本/inch(複合糸のみでは36本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は609μmであった。繊維の合計断面積の比率は33%であった。また、剥離強度は4N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
[実施例6]
実施例1において、スクリム織物の緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ1:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が54本/inch(複合糸のみでは27本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は746μmであった。繊維の合計断面積の比率は37%であった。また、剥離強度は6N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(I)を満たす。
[比較例3]
実施例1において、スクリムの緯糸が繊度33dtexのポリウレタン弾性繊維(PU)であり、緯糸の糸密度が52本/inchであることを除き、実施例1と同様にして得られたスエード調人工皮革は染色収縮率が10%以上となり、所望する拡幅率(1〜5%)にならず、目標の幅の製品が得られず、製品として不適当となった。スクリムの繊度と緯糸伸長率、スクリムの緯糸密度、スクリムを構成する緯糸を構成する単繊維の合計断面積の比率、スクリムを構成する緯糸の隣接糸間距離の平均値、緯方向の染色収縮率、総合評価を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は387μmであった。繊維の合計断面積の比率は58%であった。
[実施例7]
実施例1において、高速水流の圧力が表面繊維層側6MPa、裏面繊維層側4MPaであることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は757μmであった。繊維の合計断面積の比率は36%であった。また、剥離強度は20N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
[実施例8]
実施例1において、高速水流の圧力が表面繊維層側2MPa、裏面繊維層側1MPaであることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は879μmであった。繊維の合計断面積の比率は35%であった。また、剥離強度は2N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
[実施例9]
実施例1において、表面繊維層用ウェブとスクリムの2層積層体としたことを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は755μmであった。繊維の合計断面積の比率は36%であった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。また、剥離強度は2N/cmであった。
[実施例10、11]
実施例1において、スクリムの緯糸伸長率が90%(実施例10)と64%(実施例11)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。尚、隣接糸間距離の平均値は830μm(実施例10)、821μm(実施例11)であった。単繊維の合計断面積の比率は30%(実施例10)、32%(実施例11)であった。また、剥離強度は実施例10、11ともに5N/cmであった。上記の人工皮革は段落[0032]の(II)を満たす。
本願発明の人工皮革は、衣類、靴、鞄、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材、リボンやワッペン基材などの服飾分野に好適に用いられる。
A スクリムを構成するマルチフィラメント糸の断面における縦100μm×横100μmの正方形の範囲
X マルチフィラメント糸を構成する単繊維間距離が最長の直線
P マルチフィラメント糸を構成する単繊維間距離が最長直線の中点
L1 単繊維の両端の距離が最長の直線
L2 L1の中点でL1に直行する単繊維の両端を結ぶ直線
1 スクリムを構成する、一のマルチフィラメント糸(単糸1)
2 単糸1と隣り合うスクリムを構成するマルチフィラメント糸(単糸2)
3 単糸2と隣り合うスクリムを構成するマルチフィラメント糸(単糸3)
4 単糸3と隣り合うスクリムを構成するマルチフィラメント糸(単糸4)
X1 単糸1を構成する単繊維間距離が最長の直線
X2 単糸2を構成する単繊維間距離が最長の直線
X3 単糸3を構成する単繊維間距離が最長の直線
X4 単糸4を構成する単繊維間距離が最長の直線
P1 X1の中点
P2 X2の中点
P3 X3の中点
P4 X4の中点
Q1 P1とP2を結んだ直線の中点
Q2 P2とP3を結んだ直線の中点
Q3 P3とP4を結んだ直線の中点
H1 Q1とQ2を結んだ直線
H2 Q2とQ3を結んだ直線
B1 単糸1と単糸2の隣接糸間距離
B2 単糸2と単糸3の隣接糸間距離

Claims (2)

  1. 織糸として総繊度55〜220dtexのマルチフィラメント糸からなる織物であるスクリムを有する人工皮革であって、該織物の経及び/または緯方向において、該マルチフィラメント糸の断面における100μm×100μmの範囲内に存在する、単繊維の合計断面積の比率が15〜45%であり、隣接する該マルチフィラメント糸間の距離の平均値が500μm以上であり、該マルチフィラメント糸の糸伸長率が60%以上であり、該スクリムの一の面に表面繊維層を有し、該スクリムの他の面に裏面繊維層を有し、かつ、該表面繊維層、該スクリム、及び該裏面繊維層の合計繊維量に対して高分子弾性体を5〜20wt%含有することを特徴とする人工皮革。
  2. 請求項1に記載の人工皮革を用いた自動車用天井材。
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