JP6065440B2 - 人工皮革 - Google Patents

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Description

本発明は、高強力で形態安定性に優れ、かつ耐摩耗性に優れた高い物性を有する柔軟性に富む人工皮革に関するものである。
人工皮革は、乗物用座席の上張材、インテリア、靴、鞄および手袋など様々な用途に使用されている。それらの中で、乗物用座席の上張材やインテリアなどに使用される人工皮革は、形態安定性と高強力が求められることから、極細繊維からなる不織布と高分子弾性体および織編物から構成されるものが一般的に用いられており、その製造方法についても種々の方法が提案されている。
それらの人工皮革の一般的な製造方法としては、極細繊維あるいは極細化可能な複合繊維を繊維ウェブ化した後に、織編物を積層し、ニードルパンチ法あるいは高速流体によるウォータージェットパンチ法により繊維を絡合してシート基体となし、次いで極細化可能な複合繊維中の一成分を除去して極細繊維化した後、得られたシート基体に、ポリウレタン等の弾性重合体を付与して、柔軟な人工皮革を得る方法が知られている。
特にニードルパンチ法は、シート基体内部への繊維の絡合効果の薄いウォータージェットパンチ法に比べて、不織布と織編物の強固に絡合させることができるため、好適に用いられている。一方で、ニードルパンチ法においては、ニードル針のバーブに織編物が引っ掛かり損傷を受け、物理特性向上効果の低下や、不織布層を形成する極細繊維と繊度が異なる織編物を構成する単繊維がニードルパンチ法により人工皮革表層に突出して、人工皮革の触感が粗くて固くなるなど、物理特性や品位について改善すべき課題があった。
このような背景において、織編物として、撚数1000T/m以上の強撚糸で構成された編織物を用い、織編物を構成する単繊維がニードル針のバーブにより引っ掛かりにくく、かつ風合いが固くならない方法が提案されている(特許文献1参照。)。
また、織編物を構成する単繊維の繊度を、不織布層を構成する極細繊維の繊度と近いものを適用することにより、織編物を構成する単繊維の露出による触感の粗さや、繊度差による極細繊維の染色時の染まりやすさの差異による、製品表面の色ムラを低減する方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、織編物を構成する単繊維を極細化することにより、織編物の強度が低下することから、織編物の強力を保持させるために、極細繊維を多く配することにより、繊維束は太く設計されることになり、結果として、極細繊維と織編物との絡合性が低下しやすく、製品物性において、例えば、人工皮革表面の摩耗特性等において劣るという課題があった。
特公平4−1113号公報 特公平3−80909号公報
そこで本発明の目的は、極細繊維からなる不織布と織編物および弾性重合体からなる人工皮革において、従来の高強力で形態安定性に優れるだけでなく、耐摩耗性に優れた高い物性を有する人工皮革を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、人工皮革特有の高級な立毛表面の手触り感と、耐摩耗性に代表される製品物性の両立を図るためには、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物を絡合一体化させる際に、極細発生型繊維からなる不織布と織編物間の剥離強力を十分保持することが重要であることを見出し、本発明に至ったものである。すなわち、上記の剥離強力を十分保持することにより、製品(人工皮革)とした際に、極細繊維からなる不織布と織編物が強固に絡合一体化され、表面繊維の摩耗特性に優れた人工皮革を得ることが可能となるのである。
本発明の、海成分がポリエチレン、ポリプピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した共重合ポリエステル、ポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸のいずれかである極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が積層され絡合一体化されたシート基体Aから極細繊維を発生させて得られる、単繊維直径が0.2〜10μmの極細繊維からなる不織布と織編物が絡合一体化されてなるシート基体Bと弾性重合体からなる人工皮革であって、極細繊維および織編物を構成する単繊維中に、酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含み、前記極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が積層され絡合一体化された後のシート基体Aの不織布と織編物の剥離強力が35N/cm以上で、かつ、極細繊維発生型繊維と織編物を構成する単繊維間の摩擦係数が0.35以上0.60以下の人工皮革である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の極細繊維中および前記の織編物を構成する単繊維中に、酸化チタンおよび炭酸カルシウムが0.05質量%以上3.0質量%以下含有されていることである。
本発明によれば、極細繊維からなる不織布と織編物が強固に絡合一体化され、高級な手触り感等の表面品位を有し、高強力で形態安定性に優れ、かつ耐摩耗性に優れた高い物性を有する人工皮革が得られる。
本発明の人工皮革は、海成分がポリエチレン、ポリプピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した共重合ポリエステル、ポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸のいずれかである極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が積層され絡合一体化されたシート基体Aの極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させて得られる、単繊維直径が0.2〜10μmの極細繊維からなる不織布と織編物が絡合一体化されてなるシート基体Bと弾性重合体からなる人工皮革であって、極細繊維および織編物を構成する単繊維中に、酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含み、前記極細繊維発生型繊維からなる不織布と前記織編物が積層され絡合一体化された後のシート基体Aの不織布と織編物の剥離強力が35N/cm以上で、かつ、極細繊維発生型繊維と織編物を構成する単繊維間の摩擦係数が0.35以上0.60以下であることが重要である
上記の剥離強力は、後述する測定方法を用いて測定されるが、本発明において、この剥離強力は35N/cm以上であり、好ましくは40N/cm以上である。上限については特に規定されるものではないが、90N/cm以下とするのが一般的である。剥離強力を35N/cm以上とすることにより、極細繊維からなる不織布と織編物が強固に絡合一体化され、製品とした際に、表面品位が良好となるだけでなく、表面繊維の摩耗特性に優れた人工皮革を得ることが可能である。
上記の剥離強力を得るためには、後述するとおり極細繊維発生型繊維と、積層する織編物を構成する単繊維間の摩擦係数を0.35以上0.60以下とする。単繊維間の摩擦係数が高いことにより、上記の剥離強力を得ることが可能となる。
摩擦係数を上記範囲にするには、無機粒子、特に炭酸カルシウムの含有量を調整することで達成することができる。酸化チタンおよび炭酸カルシウムの含有量は、0.05質量%以上3.0質量%以下の範囲が好ましい。酸化チタンおよび炭酸カルシウムの含有量を0.05質量%以上とすることにより十分な摩擦係数を得ることができ、酸化チタンおよび炭酸カルシウムの含有量を3.0質量%以下とすることにより摩擦係数が高すぎることによるニードルパンチ時の繊維損傷を発生させることなく、所望の目的を達成できる。
本発明の人工皮革で用いられる不織布を構成する極細繊維の平均単繊維径は、0.2〜10μmの範囲である。平均単繊維径を10μm以下、好ましくは5μm以下とすることにより、例えば、スエード調の人工皮革とした場合に良好なタッチを得ることが可能となる。一方、平均単繊維径を0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上とすることによって、優れた繊維強度および剛性を維持することができる。
本発明の人工皮革で用いられる不織布を構成する極細繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンおよびポリフェニレンスルフィド等のポリマーからなる極細繊維を挙げることができる。
ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは、融点が高いものが多く、これらのポリマーからなる繊維を人工皮革等として用いた場合に、良好な性能を示すことから、本発明で好ましく用いられる。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポチトリメチレンテレフタレート等を挙げることができる。また、ポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66およびナイロン12等を挙げることができる。
本発明の人工皮革に用いられる織編物を構成する単糸としては、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等の合成繊維からなる単糸が挙げられるが、染色の容易性や染色堅牢度等の点から、不織布を構成する極細繊維と同素材のものであることが好ましい。このような単糸の形態としては、フィラメントヤーンや紡績糸などが挙げられるが、好ましくはこれらの強撚糸が使用される。また、紡績糸は表面毛羽の脱落が懸念されることから、フィラメントヤーンが好ましく用いられる。
強撚糸を用いる場合、撚数は、1000T/m〜4500T/mであることが好ましく、より好ましくは、撚数は1500T/m以上4000T/m以下である。撚数を1000T/mより大きくすることにより、ニードルパンチにおいて、極細繊維または極細繊維発生型繊維の単繊維切れを抑制することができ、製品の物理特性の低下や単繊維の製品表面への露出が少なくなる。また、撚数を4500T/mより小さくすることにより、単繊維切れを抑えるだけでなく、織編物を構成する単糸(強撚糸)が硬くなりすぎず、柔軟な風合いが得られる。さらに、撚数を高くすることによって、単糸の収縮による織編物を構成する単糸全体の長さ方向の収縮率抑えることができる。また、強固な繊維束構造を形成することにより、単糸の偏平率が小さくなり、織編物の経緯糸交点の摩擦が減少することにより織編物の収縮率を抑えることもできる。
単糸(強撚糸)の直径は、好ましくは100μm〜200μmの範囲であり、より好ましくは120μm〜180μmの範囲である。単糸(強撚糸)の直径を100μmより大きくすることにより、十分な形態安定性を付与でき、さらに染色工程での収縮時の織物の歪みを抑制することができる。また、単糸(強撚糸)の直径を200μmより小さくすることにより、ニードルパンチによる不織布と織編物が絡合しやすくなる。さらに、染色工程での織編物の歪みが抑えられ、人工皮革としての製品の形態安定性が向上する。
単糸(強撚糸)を構成する繊維の単繊維径は、前記の極細繊維を構成する単繊維と同様に、0.2μm〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5μm〜7.0μmの範囲である。単繊維の繊維径を細くすることにより、染色工程での収縮時の織物の単繊維一本に発生する収縮応力が小さくなり、高分子弾性体付与後のシート基体の収縮時に織編物の収縮によるシート基体全体の歪みを緩和することができる。
本発明で用いられる織編物は、織物または編物の総称で、織物としては例えば、平織、綾織および朱子織等が挙げられ、編物としては例えば、丸編、トリコットおよびラッセル等、これらの変形組織などが挙げられるが、生産性が高いこと等から、単純な丸編みが好適であるが、シートの平滑性、極細繊維発生型繊維との絡合しやすさ、および製造コストの点から、平織組織の織物が好ましく用いられる。
織編物の厚みは、好ましくは0.10mm〜0.40mmであり、より好ましくは0.15mm〜0.30mmである。織編物の厚みを0.10mmより大きくすることにより、人工皮革により優れた形態安定性を付与することが可能となる。また、厚みを0.40mmより小さくすることにより、人工皮革内の織編物の凹凸による立毛繊維密度ムラを抑制することができ、より優れた表面品位を維持することが可能となる。
本発明で用いられる織編物の織編密度は、人工皮革内において、経緯40本/インチ〜200本/インチになるように調整することが好ましい。人工皮革内の織編物の織編密度が40本/インチより小さいと織編物の歪みが緩和されるが、形態安定性に欠ける傾向がある。また、人工皮革内の織編物の織編密度が200本/インチより大きいと織編物の歪みが大きくなるだけでなく、風合いが硬くなる傾向を示す。
本発明の人工皮革を構成する不織布としては、極細繊維の束(極細繊維束)が絡合してなる不織布が、表面の均一性と強力等の観点から好ましく用いられる。
本発明で用いられる極細繊維発生型繊維から、易溶解性成分のポリマーを除去した後に得られる極細繊維束の形態としては、極細繊維同士が多少離れていてもよいし、部分的に結合していてもよいし、凝集していてもよい。
本発明において、織編物と絡合一体化される極細繊維発生型繊維の不織布としては、短繊維をカードやクロスラッパーを用いて積層繊維ウェブを形成させた後に、ニードルパンチやウォータジェットパンチを施して得られる短繊維不織布、スパンボンド法やメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、および抄紙法で得られる不織布などを採用することができる。中でも、短繊維不織布やスパンボンド不織布は、厚み均一性等が良好なものが得られるため、好ましく用いられる。
織編物と極細繊維発生型繊維からなる不織布が絡合一体化したシート基体Aは、ニードルパンチ等の絡合処理前の状態(織編物と積層一体化される前)で、JIS L1097(1982)「合成繊維ふとんわた試験方法」で測定される圧縮回復率が、80〜100%であることが好ましい。圧縮回復率は、より好ましくは85〜100%の範囲である。圧縮回復率を80%以上とすることにより、ニードルパンチによる絡合処理において、繊維がヘタリにくく、高い効率で絡合処理が可能となり、人工皮革の高密度化と高強度化が可能となる。
本発明の人工皮革において、シート基体Aの不織布を構成する極細繊維発生型繊維と、これと絡合一体化させるための織編物を構成する単繊維との摩擦係数は、0.35以上0.60以下である。極細繊維発生型繊維と織編物を構成する単繊維とが高い摩擦係数を持つことにより、強固に一体化し、人工皮革製品となった際の剥離強力、具体的には表面磨耗特性に影響を与えるからである。極細繊維発生型繊維と織編物を構成する単繊維との摩擦係数は、0.40以上がより好ましい範囲である。また、摩擦係数を0.60以下、より好ましくは0.55以下とすることにより、摩擦係数が高くなりすぎることによる繊維の損傷が抑えられる。
前記の極細繊維発生型繊維と織編物を構成する単繊維の、いわゆる単繊維−単繊維間の摩擦係数を達成するためには、極細繊維発生型繊維から得られる極細繊維中および織編物を構成する単繊維中に、酸化チタンおよび炭酸カルシウムが含有されていることが重要である
極細繊維および織編物を構成する単繊維に配合される酸化チタンおよび炭酸カルシウムの含有量は、0.05質量%〜3.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは、0.1質量%〜2.5質量%の範囲である。酸化チタンおよび炭酸カルシウムの含有量を0.05質量%以上とすることにより、十分な摩擦抵抗向上傾向が得られる。また、酸化チタンおよび炭酸カルシウムの含有量を3.0質量%以下とすることにより、摩擦抵抗が高くなりすぎることによる繊維の損傷を抑制することができ、かつ紡糸工程での糸切れ抑制することができる。
本発明で用いられる無機粒子は、ポリエステルの重合等において触媒として反応速度に影響を与えないものが好ましく、ポリエステルへの分散性を考慮すると、塩化カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウム等のカルシウム塩、シリカ、および酸化チタンからなる群から選ばれた少なくとも1つの無機粒子であることが好ましい。中でも、取り扱い性等を考慮すると、炭酸カルシウム、酸化チタンおよびシリカ等、特に炭酸カルシウムと酸化チタンを好適に用いることができる。また、酸化チタンおよび炭酸カルシウムは、単独で用いるよりも複数種類を混合して用いることにより、摩擦係数への効果が得られやすい。
本発明で用いられる酸化チタンおよび炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、繊維強度の低下や紡糸性の悪化が懸念され、また、小さすぎると十分な摩擦係数の向上効果が得られないため、平均粒子径としては、好ましくは0.1〜500nmの範囲であり、より好ましくは、1〜300nmの範囲である。
本発明で用いられる無機粒子の平均一次粒子径は、次のようにして求めることが可能である。無機粒子を0.01g採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)写真を、倍率10,000〜50,000倍の範囲で撮影し、無作為に30個の粒子を選び、平均粒子径を算出するものである。
無機粒子としては、具体的には、平均一次粒子径50nmの炭酸カルシウム粒子“カルファイン”(登録商標)200M 丸尾カルシウム株式会社製、一次平均粒子径356nmの超高純度コロイダルシリカ “クォートロン”(登録商標)PL−3 扶桑化学工業株式会社製や、一次平均粒子径50nmの酸化チタン “TTO−55”(登録商標) 石原産業株式会社製等を好ましく用いることができる。
本発明の人工皮革は、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が絡合一体化されたシート基体Aから極細繊維を発生させて得られる、極細繊維からなる不織布と織編物が絡合一体化されたシート基体Bと、付与される弾性重合体で構成される。
弾性重合体のバインダー効果により極細繊維発生型繊維および極細繊維が、人工皮革から抜け落ちるのを防止することができるだけでなく、適度なクッション性を付与することが可能となる。
本発明で用いられる弾性重合体としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマーおよびスチレン・ブタジエンエラストマー等の弾性重合体を用いることができるが、柔軟性とクッション性の観点から、ポリウレタンが好ましく用いられる。
ポリウレタンとしては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等のポリマージオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系およびヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系のジイソシアネート等から選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、ブタンジオール、エチレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物を、所定のモル比で反応させて得られたポリウレタンおよびその変性物が挙げられる。
ポリウレタンの質量平均分子量は、好ましくは50,000〜300,000である。質量平均分子量を50,000以上、より好ましくは100,000以上、さらに好ましくは150,000以上とすることにより、人工皮革の強度を保持し、また極細繊維の脱落を防ぐことができる。また、質量平均分子量を300,000以下、より好ましくは250,000以下とすることにより、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑えて不織布への含浸を行いやすくすることができる。
また、弾性重合体には、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、およびエチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良い。
また、本発明で用いられる弾性重合体には、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料酸化防止剤、酸化防止剤、耐光剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤および防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
また、弾性重合体は、有機溶剤中に溶解していても、水中に分散していてもどちらでもよい。
本発明の人工皮革を構成する極細繊維からなる不織布は、極細繊維発生型繊維からなる不織布から極細繊維を発生させて得られるものであり、極細繊維の束(極細繊維束)が絡合してなる不織布である。
本発明の人工皮革において、弾性重合体の含有率は、不織布を構成する極細繊維束と織編物が絡合してなるシート基体Bに対し、5〜200質量%であることが好ましい。弾性重合体の含有量によって、人工皮革の表面状態、クッション性、硬度および強度などを調節することができる。弾性重合体の含有量を5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上とすることにより、繊維脱落を少なくすることができる。一方、弾性重合体の含有量を200質量%以下、より好ましくは100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下とすることにより、極細繊維が人工皮革表面上に均一分散した状態を得ることができる。
本発明の人工皮革の目付は、100〜500g/mであることが好ましい。目付が100g/m以上、より好ましくは150g/m以上とすることにより、人工皮革に十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、目付を500g/m以下、より好ましくは300g/m以下とすることにより、人工皮革に十分な柔軟性が得られる。
本発明の人工皮革の厚さは、0.1〜10mmであることが好ましい。厚さを0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上とすることにより、十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、厚さを10mm以下、より好ましくは5mm以下とすることにより十分な柔軟性が得られる。
本発明の人工皮革は、少なくとも片面に立毛処理が施されていることが好ましい。このようにすることにより、スエード調の人工皮革としたときに、緻密なタッチが得られる。
<人工皮革の製造方法>
次に、本発明の人工皮革を製造する方法について説明する。
本発明の人工皮革の製造方法は、単繊維直径が0.2〜10μmの極細繊維からなる不織布と織編物が積層絡合一体化されてなるシート基体と弾性重合体からなる人工皮革の製造方法であって、少なくとも下記工程(1)〜(3)を組み合わせてなることを特徴とする人工皮革の製造方法である。
(1)単繊維直径が0.2〜10μmの極細化可能な極細繊維発生型繊維からなる不織布とその極細繊維発生型繊維との摩擦係数が0.35以上0.60以下の単繊維を用いた織編物を積層し絡合一体化させて、不織布と織編物の剥離強力が35N/cm以上のシート基体Aを得る工程、
(2)極細繊維発生型繊維からなる不織布の極細繊維発生型繊維に極細化処理を施し、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させてシート基体Bを得る工程、および
(3)シート基体Aまたはシート基体Bに弾性重合体を付与する工程。
本発明の人工皮革の製造方法においては、上記の工程(2)と工程(3)は、両者の工程順を逆にすることができる。
本発明において、極細繊維、好適には極細繊維束が絡合してなる不織布を得る手段としては、海島型複合繊維等の極細繊維発生型繊維を用いることが好ましい。極細繊維から直接不織布を製造することは実質的に困難であることから、まず極細繊維発生型繊維から不織布を製造し、この不織布における極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることにより、極細繊維束が絡合してなる不織布を得ることができる。
極細繊維発生型繊維としては、溶剤等への溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分に用い、後工程で、海成分を溶剤等を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。海島型繊維の場合は、海島型複合用口金を用い海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがあるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られ人工皮革の強度にも資する点から、海島型複合繊維が特に好ましく用いられる。
前記の極細繊維発生型繊維を用い、極細繊維発生型繊維からなる繊維ウェブを作成する工程、その繊維ウェブに絡合処理を施すことにより、不織布を得ることができる。前記の極細繊維発生型繊維からなる不織布に織編物を積層絡合一体化させることにより、極細繊維発生型繊維と織編物からなるシート基体Aを得ることができる。得られたシート基体Aから極細繊維発生型繊維の易溶性成分のポリマーを溶解除去あるいは物理的または化学的作用により剥離あるいは分割し、極細繊維化する前および/または後/または起毛処理の後に、好適にはポリウレタンを主成分とした弾性重合体を不織布に付与し、弾性重合体を実質的に凝固し固化させる工程、および起毛処理を施し表面に立毛を形成し厚みを均一化することにより人工皮革を得ることができ、さらに染色加工により仕上げを行う工程を経て人工皮革を得ることができる。
海島型複合繊維の海成分である易溶性成分のポリマーの溶解除去は、弾性重合体を付与する前、付与した後、起毛処理後のいずれの段階で行ってもよい。
海島型複合繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸などを用いることができる。
極細繊維発生型繊維からなる不織布を得る方法としては、前述のとおり、極細繊維発生型繊維ウェブをニードルパンチやウォータジェットパンチにより絡合させる方法、スパンボンド法、メルトブロー法、および抄紙法などを採用することができる。なかでも、前述のような極細繊維束の態様とする上で、ニードルパンチやウォータジェットパンチなどの処理を経る方法が好ましい態様である。本発明では、前述のとおり、これらを施して得られる短繊維不織布、スパンボンド法やメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、および抄紙法で得られる不織布などを採用することができる。中でも短繊維不織布は、立毛繊維長が均一等良好なものが得られるため好ましく用いられる。
上記の極細繊維発生型繊維からなる不織布は、寸法安定性を得るための強度保持のために、織編物と積層し絡合一体化させる必要がある。積層し絡合一体化する方法としてはニードルパンチやウォータジェットパンチ等により一体化する方法が好ましく用いられる。
ニードルパンチ処理に用いられるニードルにおいて、ニードルバーブ(切りかき)の数は好ましくは1〜9本である。ニードルバーブを1本以上とすることにより、効率的な繊維の絡合が可能となる。一方、ニードルバーブを9本以下とすることにより、繊維損傷を抑えることができる。
バーブに引っかかる極細繊維発生型繊維の本数は、バーブの形状と極細繊維発生型繊維の直径によって決定される。そのため、ニードルパンチ工程で用いられる針のバーブ形状は、キックアップ0〜50μm、アンダーカットアングル0〜40°、スロートデプス40〜80μm、スロートレングス0.5〜1.0mmのものが好ましく用いられる。
また、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物を絡合一体化させる前に、不織布に予備的な絡合が与えられていることが、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物をニードルパンチ等の手法で不離一体化させる際のシワ発生をより防止するために望ましい態様である。ニードルパンチ処理により、あらかじめ予備的絡合を与える方法を採用する場合には、そのパンチ密度は20本/cm〜1300本/cmの範囲で行なうことが効果的である。予備絡合を、20本/cm以上のパンチ密度とすることにより、極細繊維発生型繊維からなる不織布の幅が、織編物との絡合時およびそれ以降のニードルパンチ処理により、狭くなることを防ぐことができ、幅の変化に伴い、織編物のシワの発生を抑制できる。また、予備絡合のパンチ密度を1300本/cm以下とすることにより、極細繊維発生型繊維からなる不織布内の絡合がほぼ飽和し、織編物を構成する繊維との絡合を十分に形成するだけの移動余地が少なくなる前にパンチできる。
本発明において、織編物と極細繊維発生型繊維からなる不織布とを絡合一体化させるに際しては、パンチング本数は、1000〜8000本/cmであることが好ましい。パンチング本数を1000本/cm以上とすることにより、緻密性が得られ高精度の仕上げを得ることができる。一方、パンチング本数を8000本/cm以下とすることにより、加工性の悪化、繊維損傷および強度低下を防ぐことができる。
また、織編物と極細繊維発生型繊維からなる不織布を積層し絡合一体化する場合、積層時のニードルパンチ処理のニードルのバーブ方向は、シートの進行方向に対して直行する90±15°とすることにより、損傷しやすい緯糸を引掛けにくくなる。
また、使用されるニードルバーブは、織編物と極細繊維発生型繊維からなる不織布をニードルパンチ処理することにより摩耗により形状変化が発生して、繊維損傷によりシート基体(シート基体A)の物性低下を起こすことがある。それを避けるため、ニードルに耐摩耗性を有する皮膜を付与することが好ましい。具体的に、ニードル先端部から少なくとも最も遠いバーブまでの部分が耐摩耗性の被膜で被覆されたパンチング用ニードルを用いることが好ましい。
極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物の絡み合わせには、織編布の片面もしくは両面に不織布を積層するか、あるいは複数枚の極細繊維発生型繊維からなる不織布ウェブの間に織編物を挟んで、ニードルパンチ処理によって繊維同士を絡ませ、シート基体Aとすることができる。
ニードルパンチ処理されて得られたシート基体Aの厚さは、1.0mm〜4.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは1.5mm〜3.5mmである。厚みを1.0mmより厚くすることにより、シート基体Aが過度に柔軟化して加工が困難となることを防止できる。また、厚みを4.0mmより小さくすることにより、シート基体Aの柔軟性を維持することができる。
また、ウォータジェットパンチ処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。具体的には、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで水を噴出させると良い。
ニードルパンチ処理あるいはウォータジェットパンチ処理後の極細繊維発生型繊維からなる不織布の見掛け密度は、0.15〜0.45g/cmであることが好ましい。見掛け密度を0.15g/cm以上とすることにより、人工皮革が十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、見掛け密度を0.45g/cm以下とすることにより、弾性重合体を付与するための十分な空間を維持することができる。
このようにして得られた極細繊維発生型繊維からなる不織布は、緻密化の観点から、乾熱もしくは湿熱またはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい態様である。
このようにして、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が積層され絡合一体化されたシート基体Aが製造される。
シート基体Aを構成している極細繊維発生型繊維から易溶解性成分(海成分)を溶解する溶剤としては、海成分がポリ乳酸や共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いることができる。また、極細繊維発生加工処理(脱海処理)は、溶剤中に極細繊維発生型繊維からなる不織布を浸漬し、窄液することによって行うことができる。
また、極細繊維発生加工処理には、連続染色機、バイブロウォッシャー型脱海機、液流染色機、ウィンス染色機およびジッガー染色機等の公知の装置を用いることができる。また、極細繊維発生加工処理は、立毛処理前に行ってもよいし立毛処理後に行ってもよい。
このようにして、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が積層され絡合一体化されたシート基体Aから、単繊維直径が0.2〜10μmの極細繊維からなる不織布と織編物が絡合一体化されてなるシート基体Bが得られる。
本発明において、弾性重合体は、極細繊維発生加工処理の前に付与してもよいし、極細繊維発生加工の後に付与してもよい。
弾性重合体としてポリウレタンを付与させる際に用いられる溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等が好ましく用いられる。また、ポリウレタンを水中にエマルジョンとして分散させた水分散型ポリウレタン液として用いてもよい。
溶媒に溶解した弾性重合体溶液に、シート基体AまたはBを浸漬するなどして弾性重合体をシート基体AまたはBに付与し、その後、乾燥することによって弾性重合体を実質的に凝固し固化させる。溶剤系のポリウレタン溶液の場合は、非溶解性の溶剤に浸漬することにより凝固させることができ、ゲル化性を有する水分散型ポリウレタン液の場合は、ゲル化させた後乾燥する乾式凝固方法等で凝固させることができる。乾燥にあたっては、シート基体AまたはBおよび弾性重合体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
海成分の溶解除去は、弾性重合体を付与する前、付与した後、あるいは起毛処理後のいずれの段階で行ってもよい。
本発明の人工皮革は、少なくとも片面が立毛されていても良い。立毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて行うことができる。特に、サンドペーパーを用いることにより、均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、人工皮革の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。研削負荷を小さくするためには、例えば、バフ段数を3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手を、JIS規定の150番〜600番の範囲とすることがより好ましい態様である。
本発明の人工皮革は、例えば、染料、顔料、柔軟剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤および耐候剤等の機能性薬剤を含んでいてもよい。
本発明の人工皮革は、染色することが好ましい。染色手段としては、人工皮革を染色すると同時に揉み効果を加えて柔軟化できることから、液流染色機が好ましく用いられる。染色温度は、70〜120℃の温度が好ましい。染料は、難溶出成分がポリエステルの場合は、分散染料が好ましく用いられる。また、染色後に還元洗浄を行っても良い。
また、染色の均一性を向上させる目的で、染色時に染色助剤を用いることが好ましい。さらにシリコーンなどの柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤および耐光剤等の仕上げ処理を行ってもよい。仕上げ処理は、染色後でも染色と同浴で行ってもよい。このようにして、最後に染色することによって、人工皮革が得られる。
本発明の人工皮革は、良好な品位を有しており、特に耐摩擦性に優れるため、自動車内装材用途、家具用途、衣料用途、雑貨用途、CD、DVDカーテン、各種研磨布、研磨パッド用等の基材、クリーニングテープおよびワイピングクロス等の工業資材用途等として好適に用いられる。
次に、実施例を挙げて本発明の人工皮革とその製造方法についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[測定方法および評価用加工方法]
(1)融点
パーキンエルマー社(Perkin Elmaer)製DSC−7を用いて、2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分で、サンプル量は10mgとした。測定は2回行い、その平均値を融点とした。
(2)メルトフローレイト(MFR)
試料ペレット4〜5gを、MFR計電気炉のシリンダーに入れ、東洋精機製メルトインデクサー(S101)を用いて、荷重2160gf、温度285℃の条件で、10分間に押し出される樹脂の量(g)を測定した。同様の測定を3回繰り返し、平均値をMFRとした。
(3)織編物の織編密度
人工皮革の厚み方向に垂直な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM キーエンス社製VE−7800型)で50倍の倍率で観察し、長さ2.54cm当たりに存在する糸断面数で織編物の織編密度を評価した。
(4)織編物を構成する撚糸の撚糸径
織編物を断面方向にカットし、織編物を構成する撚糸をSEM(キーエンス社製 VE−7800型)で100倍の倍率で観察し、10点測定した平均値で撚糸径を評価した。
(5)極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物の剥離強力
極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が絡合一体化されたシート基体Aを、長さ方向:縦200mm、横50mmサンプリングし、長さ方向に織編物に沿って厚み方向に30mm半裁し、つかみ間隔を10mmにしてテンシロンを用いて、織編物部分と不織布部分をつかみ、速度100mm/分で引張り、破断したときの強力を測定した。測定は2回行い、平均値を剥離強力とした。
(6)極細繊維発生型繊維と織編物を構成する単繊維の摩擦係数
JIS L 1015 8.13(2010)に基づき、レーダー式摩擦係数試験機を用いて、極細繊維発生型繊維を円筒に巻き付け、円筒スライバに織編物を構成する単繊維をかけ、単繊維−単繊維間の摩擦係数(単繊維間摩擦)を測定した数値を用いた。
(7)製品摩耗評価(マーチンデール摩耗評価)
マーチンデール摩耗試験機として、James H.Heal&Co.製のModel 406を用い、標準摩擦布として同社のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、試料(人工皮革)に12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視で観察し、評価した。評価基準は、試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつ区切った。
[実施例1]
<原綿>
(島成分ポリマー)
融点260℃、MFR46.5のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。
(海成分ポリマー)
ビカット軟化点102℃、MFR67.8のポリスチレン(PSt)を用いた。
(織編物を構成する繊維ポリマー)
融点260℃、MFR98.5のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。
(紡糸・延伸)
酸化チタンを0.1質量%混合させた島成分ポリマーを用い、16島/ホールの海島型複合紡糸口金を用いて、紡糸温度285℃、島/海質量比率80/20、吐出量1.2g/分・ホール、紡糸速度1200m/分の条件で溶融紡糸した。
次いで、85℃の温度の液浴中でトータル倍率が2.8倍となるように2段延伸し、スタッフィングボックス型のクリンパーを用いて捲縮を付与した。得られた海島型複合繊維は、単繊維繊度が3.7dtexであった。この海島型複合繊維を繊維長51mmにカットして、海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
上記の海島型複合繊維からなる原綿を用い、カード工程とクロスラッパー工程により、積層繊維ウェブを形成し、17枚積層した。次いで、炭酸カルシウムを0.2質量%、酸化チタンを0.1質量%混合させた上記織編物を構成する繊維用のPETを用い、撚糸の単糸直径が経糸と緯糸が共に140μm(総繊度110dtex−288フィラメント)で、撚数が2000T/m、織密度が1インチ当たり80×66(タテ×ヨコ)の平織組織の織物で、前記の積層繊維ウェブを上下に挟み、織物/繊維ウェブ/織物の積層状態にして、トータルバーブデプス0.075mmのニードル1本を植込んだニードルパンチ機を用いて、針深度7mm、パンチ本数3000本/cmでニードルパンチ処理を行い、目付が700g/m、見掛け密度が0.245g/cmの織物と海島型複合繊維からなる不織布が積層絡合一体化したシート基体Aを作製した。
<人工皮革>
上記のシート基体Aを98℃の温度の熱水で収縮させた後、5%のPVA(ポリビニルアルコール)水溶液を含浸し、温度120℃の熱風で10分間乾燥することにより、シート基体Aの質量に対するPVA質量が6質量%のシート基体を得た。このシート基体をトリクロロエチレン中に浸漬して海成分を溶解除去し、極細繊維からなる不織布と織物が絡合してなる脱海シート(シート基体B)を得た。このようにして得られた極細繊維からなる不織布と織物とからなる脱海シート(シート基体B)を、固形分濃度12%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に浸漬し、次いでDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、島成分からなる前記極細繊維と前記織物の合計質量に対するポリウレタン質量が27質量%の人工皮革を得た。その後、エンドレスのバンドナイフを有する半裁により厚み方向に半裁し、半裁面をJIS#240番のサンドペーパーを用いて3段研削し、立毛を形成させて人工皮革を作製した。
さらに、サーキュラー乾燥機を用いて分散染料により染色を行い、人工皮革(製品)を得た。得られた人工皮革の品位は、緻密で良好であった。製品摩耗は4.5と良好であった。結果を表1に示す。
[実施例2]
<原綿>
島成分繊維に、炭酸カルシウムを0.2質量%、酸化チタンを0.1質量%混合させたこと以外は、実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<人工皮革>
実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革の品位は、緻密で良好であった。製品摩耗は5.0と良好であった。結果を表1に示す。
[実施例3]
<原綿>
実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
炭酸カルシウムを0.2質量%混合させた上記PETからなる織物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<人工皮革>
実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革の品位は、緻密で良好であった。製品摩耗は4.5と良好であった。結果を表1に示す。
[実施例4]
<原綿>
実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
炭酸カルシウムを1.0質量%、酸化チタンを0.5質量%混合させた上記PETからなる織物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<人工皮革>
実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革の品位は、緻密で良好であった。製品摩耗は4.5と良好であった。結果を表1に示す。
[実施例5]
<原綿>
実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
炭酸カルシウムを2.5質量%、酸化チタンを0.5質量%混合させた上記PETからなる織物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<人工皮革>
実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革の品位は、緻密で良好であった。製品摩耗は4.5と良好であった。結果を表1に示す。
[実施例6]
<原綿>
(島成分ポリマー)
実施例1で用いた島成分ポリマーを用いた。
(海成分ポリマー)
融点240℃、MFR100の5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8モル%共重合したPETを用いた。
<原綿>
島成分繊維に、炭酸カルシウムを0.3質量%混合させ、上記の海成分ポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<水分散型ポリウレタン液>
非イオン系強制乳化型ポリウレタンエマルジョン(ポリカーボネート系)に、感熱ゲル化剤として硫酸ナトリウムをポリウレタン固形分対比3質量%添加し、ポリウレタン液濃度が10質量%となるようにして、水分散型ポリウレタン液を調整した。
<人工皮革>
上記のシート基体Aを、98℃の温度で3分間熱水収縮処理し、100℃の温度で5分間乾燥させた。その後、得られたシート基体Aに上記の水分散型ポリウレタン液を付与し、乾燥温度125℃で5分間熱風乾燥して、ポリウレタンの付着量がシート基体Aの島成分に対して34質量%であるポリウレタン付シート基体Aを得た。
上記のポリウレタン付シート基体Aを90℃の温度に加熱した濃度20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、30分間処理し、海島型複合繊維から海成分を溶解除去した。その後、エンドレスのバンドナイフを有する半裁機により厚み方向に半裁し、半裁面をJIS#240番のサンドペーパーを用いて3段研削し、立毛を形成させて人工皮革を作製した。
上記の人工皮革を、実施例1と同様にしてサーキュラー乾燥機を用いて分散染料により染色を行い、人工皮革を得た。得られた人工皮革(製品)の品位は、緻密で良好であった。製品摩耗は4.5と良好であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
<原綿>
実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
酸化チタンを0.5質量%混合させた上記PETからなる繊維の織物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<人工皮革>
実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革の品位は、凹凸もの目立つものであった。極細繊維発生型繊維と織物を構成する単繊維間の摩擦係数が0.33と低いことにより、シート基体Aの剥離強力が31N/cmと低いことから、製品摩耗は3.5と低いものであった。結果を表1に示す。
[比較例2]
<原綿>
実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
炭酸カルシウムを3.2質量%、酸化チタンを0.5質量%混合させた上記PETからなる繊維の織物を用いたところ、極細繊維発生型繊維と織物を構成する単繊維間の摩擦係数が0.63と高すぎることにより、ニードルパンチにおいて織物が損傷し、不織布と織物の絡合体(シート基体A)を得ることができなかった。
[比較例3]
<原綿>
酸化チタン等の無機粒子を含まない蒸気PETを用いたこと以外は、実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
酸化チタン等の無機粒子を含まないPETからなる繊維の織物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<人工皮革>
実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革の品位は、緻密で良好であった。織物を構成する単繊維中に無機粒子を含有していないため、極細繊維発生型繊維と織物を構成する単繊維間の摩擦係数が0.29と低いことにより、シート基体Aの剥離強力が30N/cmと低いことから、製品摩耗は3.0であった。結果を表1に示す。
[比較例4]
<原綿>
炭酸カルシウムを0.2質量%、酸化チタンを0.1質量%混合させた上記PETを用いたこと以外は、実施例1と同様にして単繊維繊度が3.7dtexで、繊維長が51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織物の絡合体(シート基体)>
酸化チタンを0.5質量%混合させた上記PETからなる織物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシート基体Aを得た。
<人工皮革>
実施例1と同様にして人工皮革を得た。得られた人工皮革の品位は、若干凹凸のあるものであった。極細繊維発生型繊維と織物を構成する単繊維間の摩擦係数が0.33と低いことにより、シート基体Aの剥離強力が32N/cmと低いことから、製品摩耗は3.5と低いものであった。結果を表1に示す。
Figure 0006065440

Claims (2)

  1. 海成分がポリエチレン、ポリプピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した共重合ポリエステル、ポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸のいずれかである極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が積層され絡合一体化されたシート基体Aから極細繊維を発生させて得られる、単繊維直径が0.2〜10μmの極細繊維からなる不織布と織編物が絡合一体化されてなるシート基体Bと弾性重合体からなる人工皮革であって、極細繊維および織編物を構成する単繊維中に、酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含み、前記極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物が積層され絡合一体化された後のシート基体Aの不織布と織編物の剥離強力が35N/cm以上で、かつ、極細繊維発生型繊維と織編物を構成する単繊維間の摩擦係数が0.35以上0.60以下であることを特徴とする人工皮革。
  2. 極細繊維中および織編物を構成する単繊維中に含有されている、酸化チタンおよび炭酸カルシウムが0.05質量%以上3.0質量%以下含有されていることを特徴とする請求項1記載の人工皮革。
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