JP2017137588A - 伸びを有する人工皮革 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]織糸として総繊度55〜220dtexのマルチフィラメント糸からなる織物であるスクリムを有する人工皮革であって、スクリムの織密度が20〜50本/inchであり、破断伸度が60%以上であり、500g/cm定荷重伸度が10%以上であることを特徴とする人工皮革。
[2]スクリムの一の面に表面繊維層を有する、[1]に記載の人工皮革。
[3]スクリムの他の面に裏面繊維層を有する、[1]又は[2]に記載の人工皮革。
[4]高分子弾性体を5〜20wt%含有する、[1] 〜[3]のいずれか一項に記載の人工皮革。
[5]表面繊維層を構成する繊維の繊度が0.6dtex以下である、[1] 〜[4]のいずれか一項に記載の人工皮革。
[6] [1] 〜[5]のいずれか一項に記載の人工皮革を用いた自動車用天井材。
本発明のスクリムを有する人工皮革は、スクリムの織密度が20〜50本/inchであり、経又は緯方向の一方向における破断伸度が60%以上であり、500g/cm定荷重伸度が10%以上である。
本発明の人工皮革は、スクリムを構成するマルチフィラメント糸の複合糸の糸密度は20〜50本/inchである。20本/inch未満の場合は、寸法安定性が低下することから好ましくない。50本/inchを超える場合は、500g/cm定荷重伸度が小さくなり、人工皮革の追従が悪くなり、成形性が低下することから好ましくない。より好ましくは20〜40本/inchである。さらに好ましくは20〜30本/inchである。
また、本発明の人工皮革は、経又は緯方向の一方向における破断伸度が60%以上である。破断伸度が60%未満の場合は、複雑な立体形状の製品に機械等で張り込む際、人工皮革に皺が生じる、又は耳部が裂け易くなり、成形性が低下する点から好ましくない。より好ましくは70%以上である。
さらに、本発明の人工皮革は、経又は緯方向の一方向における500g/cm定荷重伸度が10%以上である。500g/cm定荷重伸度が10%未満の場合は、人工皮革の追従が悪くなり、成形性が低下することから好ましくない。より好ましくは15%以上である。さらに好ましくは20%以上である。さらに、成形時の成形機の進行方向の寸法安定性や不必要な変形防止、ハンドリング性の点から緯方向のみの一方向における500g/cm定荷重伸度が10%以上であることが好ましい。より好ましくは15%以上である。さらに好ましくは20%以上である。上限は高い方が好ましいが、例えば30%以下である。尚、500g/cm定荷重伸度の具体的な測定方法については実施例に記載した。
短繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系短繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系短繊維などが好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、目的とする用途によって適宜選択すればよい。
さらにスクリムの下部にも裏面繊維層を有することが好ましく、例えば表面繊維層と裏面繊維層との間にスクリムを挟み込み、交絡一体化させることで達成できる。裏面繊維層を構成する繊維は、短繊維が好ましい。
短繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系短繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系短繊維などが好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、目的とする用途によって適宜選択すればよい。
天然皮革様風合が得られ易い点やスエード調やヌバック調表面感が得られ易い点からすれば、上記短繊維の繊度は0.6dtex以下の極細短繊維を用いることが好ましい。より好ましくは0.02〜0.33dtexの極細短繊維を用いることが好ましい。0.02dtex未満の繊度では、染色時の染料濃度が非常に高くなったり、染色堅牢度や耐光性が不充分であったりして実用的ではない。
好ましくは、表面繊維層と裏面繊維層の間にスクリムをサンドイッチ状に挟んだ構造とし、各層の繊維を交絡させた3層構造にすることによって、耐摩耗性や剥離強度などがさらに改善される。
合計糸密度が高過ぎる場合は、表面繊維層や裏面繊維層を有する場合に交絡性が低下し、耐摩耗性が低下することから好ましくない。
A糸の具体的な打込み方としては、たとえば1本毎、2本毎、3本毎のように規則的に打込み、織組織に対して複合糸が規則的に配置されるようにすればよい。
剥離強度が弱すぎる場合は耐摩耗性低下や染色時に層間剥離が発生する可能性があるので好ましくない。剥離強度が強すぎる場合は、交絡軌跡が残り易く、結果として人工皮革の表面品位低下や、伸長特性の悪化などの可能性があるので好ましくない。
製品幅と伸びを両立するため、より好ましくは2〜4%である。
人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、スクリムを構成する経方向のマルチフィラメント糸又は緯方向のマルチフィラメント糸の中の一のマルチフィラメント糸を選び、次に当該マルチフィラメント糸を構成する単繊維(モノフィラメント)の中で、図1に示すように一の単繊維の断面外周部における任意の2点を結ぶ距離が最も長くなる場合の距離をL1(μm)とした。次にL1を長辺として、長辺の中点からL1に直行するように単繊維の断面の両端部分を結ぶ直線の長さをL2(μm)として、下記(i)と(ii)の式に従って、当該マルチフィラメント糸を構成する単繊維の直径Dn(μm)と繊度Tn(dtex)を求めた。尚、ρは素材密度とし、ポリエステル素材の場合は1.38(g/cm3)とし、Dn及びTnはそれぞれ、マルチフィラメント糸1本に存在するZ本の単繊維中、n番目の単繊維の直径及び繊度を表わす。
(i)マルチフィラメント糸を構成する単繊維の直径
Dn(μm)=(L1+L2)/2
(ii)マルチフィラメント糸を構成する単繊維の繊度
Tn(dtex)=(1/4πDn 2)×ρ×10-2
また、マルチフィラメント糸1本中に存在する単繊維の本数Z(本)をカウントし、下記(iii)の式に従って該糸1本の繊度T(dtex)を求めた。
(iii)マルチフィラメント糸1本の繊度
人工皮革をJIS―L−1096(2015年度版):8−14「引張強さ及び伸び率」(A法:ストリップ法)に従って試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、10cm/分の定速伸張法により、破断時点の伸度を計測した。
人工皮革をJIS―L−1096(2015年度版):8−14「引張強さ及び伸び率」(A法:ストリップ法)に従って試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、10cm/分の定速伸張法により、500g/cm荷重時点の伸度を計測した。
人工皮革をJIS―L−1096(2015年度版):8−14「引張強さ及び伸び率」(A法:ストリップ法)に従って試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、10cm/分の定速伸張法により、1000g/cm荷重時点の伸度を計測した。
人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、スクリムを構成する経糸もしくは緯糸の本数を測定し、1inchあたりの本数で表記した。
高分子弾性体含浸加工後の人工皮革生地から経20cm、緯20cmの正方形サンプルの重量(A質量部)を切り取り、25℃の水に30分間浸漬して生地中の硫酸ナトリウム(Na2SO4)を抽出し、脱水乾燥後の生地の重量(B質量部)の重量変化から、下記の式に従って高分子弾性体の含有率を求めた。尚、上記の式中で×3とあるのは、高分子弾性体が硫酸ナトリウムの3倍量含有されていることによる。
尚、溶剤型高分子弾性体の場合は、上記の式を用いず、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)で高分子弾性体を人工皮革から直接抽出して、その前後の重量差から測定することが可能である。
人工皮革を作製する前のスクリムから経22cm、緯22cmの正方形サンプルを切り取り、このサンプルから経糸もしくは緯糸の中の単糸を引き抜き、JIS―L−1013法に準じて、糸の両端を1cmずつ把持し、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分とした時の糸の破断伸度の最大値を計測した。尚、スクリムを構成するマルチフィラメント糸に、たとえば前述したような溶解性の糸(A糸)と非溶解性の糸(B糸)からなる複合糸が使われた場合には、スクリムから複合糸を引き抜いて、A糸を溶解しない状態で複合糸として測定し、B糸の破断伸度を糸伸長率として計測する。また、スクリムにこのような複合糸とA糸を併用する場合では、A糸は測定対象外とする。
人工皮革の表面繊維層とスクリムとの層間剥離強度を下記の方法で測定した。
人工皮革から経2.5cm、緯10cmの長方形サンプルを切り取り、このサンプルの表面側(起毛人工皮革の場合は起毛面側)の全面に合成ゴム系接着剤スリーボンド1521(スリーボンド社製)を50mg/cm2塗る。別に補強布として経2.5cm、緯10cmの長方形の厚地の織物を準備し、この補強布の片面の全面に同じ接着剤を50mg/cm2塗り、すばやく接着剤塗布面どうしを張り合わせる。張り合わせたサンプルをマングルで圧縮後、室温で5時間以上放置し乾燥、接着させる。このサンプルを鋏で両端を2.5mmずつ切り取り、2.0cm(幅)×10cm(長さ)のサンプルとし、短長側からスクリム部と表面繊維層部の境に剃刀の刃で切れ目を入れた後、指で約2cm剥がす。次に、エー・アンド・ディー社製テンシロン万能試験機(モデルRTC−1210A)を用い、把持長2cm、クロスヘッド速度100mm/分、記録紙速度50mm/分で剥離させ、その時の応力を測定する。得られたチャートの複数個のピークのうち、最大ピークから順に大きいピーク3点のピーク値と、最少ピークから順に小さいピーク3点のピーク値を読み取り、合計6点の平均値を求める。これを2個のサンプル(n=2)で測定し、その平均した値を2で割った値(1cm幅当たりの値)を剥離強度とした。
(9)染色収縮率
人工皮革生地を130℃で15分間染色時に、染色加工前の幅(Acm)と染色加工後の幅(Bcm)を測定し、下記の式に従って染色収縮率を求めた。尚、染色加工後の幅とは、乾燥前の湿潤状態での幅である。
染色収縮率(%)=[(A−B)/A]×100
染色後の人工皮革をピンテンター乾燥機を用いて100℃で拡幅しながら乾燥させ、染色加工前の幅(Acm)と乾燥後の幅(Ccm)を測定し、下記の式に従って拡幅率を求めた。
拡幅率(%)=[(C−A)/A]×100
JIS−L−1096(2015年版)8.19「摩耗強さ」(E法:マーチンデール法)に従って、家具用の押圧荷重(12kPa)下で人工皮革の表面繊維層面の耐摩耗試験を行った。20000回磨耗後にスクリムが露出しない場合を合格(○もしくは◎)とし、測定結果としてスクリムが露出した磨耗回数に応じて下記を標記した。
×:10000回でスクリムが露出する。
△:10000回ではスクリムは露出しないが20000回でスクリムが露出する。
○:20000回ではスクリムは露出しないが30000回でスクリムが露出する。
◎:30000回でスクリムは露出しない。
人工皮革の表面繊維層面を被検者10人で目視による外観判定を行った。表面平滑性とその表面を撫ぜてライティング効果を評価した。良好と判断したものを1点、不良と判断したものを0点とし、各人に評価してもらいその総点から下記の基準に従い、表面外観を判定した。
×:0〜3点(不合格)
△:4〜6点(不合格)
○:7〜8点(合格)
◎:9〜10点(合格)
人工皮革生地の染色収縮率、および人工皮革の破断伸度、500g/cm定荷重伸度、1000g/cm定荷重伸度、耐摩耗性、表面品位の内、全物性を満たすものを◎(合格)とし、全ての物性は満たさないが4つ以上の物性を満たすものを○(合格)、物性を満たす項目が3つ以下のものを×(不合格)とした。
直接紡糸法によって糸の繊度が0.17dtexの極細ポリエステル繊維を製造し、長さ5mmに切断して極細ポリエステル短繊維を得た。該極細ポリエステル短繊維を使用し、抄造法により目付97g/m2の表面繊維層用繊維ウェブを得た。
実施例1において、スクリムの緯糸が繊度167dtex/48fのポリエステル繊維であり、緯糸の糸密度が63本/inchであることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。得られた結果を表1に示した。また、剥離強度は6N/cmであった。
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が81本/inch(複合糸のみでは54本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして得られたスエード調人工皮革は染色収縮率が10%以上となり、所望する拡幅率(1〜5%)にすると生地の一部が破断してしまい、製品として不適当となった。その他の結果を表1に示した。また、剥離強度は5N/cmであった。
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2本ずつ交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が96本/inch(複合糸のみでは48本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は4N/cmであった。
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が72本/inch(複合糸のみでは48本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は4N/cmであった。
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2本ずつ交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が80本/inch(複合糸のみでは40本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は8N/cmであった。
実施例1において、スクリムの緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ2:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が54本/inch(複合糸のみでは36本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は4N/cmであった。
実施例1において、スクリム織物の緯糸として複合糸とA糸をそれぞれ1:1の比率で交互に打込み、複合糸とA糸の合計糸密度が54本/inch(複合糸のみでは27本/inch)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は6N/cmであった。
実施例1において、スクリムの緯糸が繊度33dtexのポリウレタン弾性繊維(PU)であり、緯糸の糸密度が52本/inchであることを除き、実施例1と同様にして得られたスエード調人工皮革は染色収縮率が10%以上となり、所望する拡幅率(1〜5%)にならず、目標の幅の製品が得られず、製品として不適当となった。スクリムの繊度と緯糸伸長率、スクリムの緯糸密度、スクリムを構成する緯糸を構成する単繊維の合計断面積の比率、スクリムを構成する緯糸の隣接糸間距離の平均値、緯方向の染色収縮率、総合評価を表1に示した。
実施例1において、高速水流の圧力が表面繊維層側6MPa、裏面繊維層側4MPaであることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は20N/cmであった。
実施例1において、高速水流の圧力が表面繊維層側2MPa、裏面繊維層側1MPaであることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は2N/cmであった。
実施例1において、表面繊維層用ウェブとスクリムの2層積層体としたことを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は2N/cmであった。
実施例1において、スクリムの緯糸伸長率が90%(実施例10)と64%(実施例11)であることを除き、実施例1と同様にして染色前の幅に対して3%広幅のスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の性能測定値を表1に示した。また、剥離強度は実施例10、11ともに5N/cmであった。
L2 L1の中点でL1に直行する単繊維の両端を結ぶ直線
Claims (6)
- 織糸として総繊度55〜220dtexのマルチフィラメント糸からなる織物であるスクリムを有する人工皮革であって、スクリムの織密度が20〜50本/inchであり、
破断伸度が60%以上であり、500g/cm定荷重伸度が10%以上であることを特徴とする人工皮革。 - スクリムの一の面に表面繊維層を有する、請求項1に記載の人工皮革。
- スクリムの他の面に裏面繊維層を有する、請求項1又は2に記載の人工皮革。
- 高分子弾性体を5〜20wt%含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工皮革。
- 表面繊維層を構成する繊維の繊度が0.6dtex以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の人工皮革。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の人工皮革を用いた自動車用天井材。
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