JP6864527B2 - 人工皮革 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた耐光性と高発色性を有し、強度、優れた表面品位及び良好な風合いを併せ持つ人工皮革及びその製法に関するものである。
人工皮革は、衣料、靴、鞄、インテリアや自動車、航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材、リボンやワッペン基材などの服飾分野に好適に用いられる。
その中でもインテリア、自動車、航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材などの分野では高級感やデザイン性に加え、発色性に優れかつ長期使用においても色あせが少なく耐光性に優れる人工皮革が求められている。
従来人工皮革を発色させる方法としては、染色する方法が一般的に行われているが、極細繊維から構成される人工皮革は繊維が極細化するほど表面積が増え、白色光の散乱により発色性に劣り、染色のみで濃色を実現するためには多量の染料が必要であった。しかしながら多量の染料の使用は、コストが高いのみならず耐光堅牢度、摩擦堅牢度などの品質面で劣り自動車内装材などの厳しい条件下での長期安定性が求められている用途では、ユーザーの厳しいスペックをクリアする人工皮革を得るには高度な染色技術が必要であった。
特許文献1には、顔料を添加した溶融ポリマーを極細繊維発生型繊維として紡糸し、極細繊維に顔料を含有させ染料を使用せず顔料による発色を行うことで耐光性を向上させる方法が提案されている。
特許文献2には原着された短繊維ウェブ間に同じく原着された繊維からなる織編物を積層する方法が提案されている。
特許文献3には使用する繊維中のカーボンブラック顔料含有率を変化させることによりグレーから黒色の色相コントロールを可能にした方法が提案されている。
特開2003−171883号公報 特開2005−240198号公報 特表2011−523985号公報
特許文献1は、耐光性を向上させた発色方法を提供し得る。特許文献1に記載される方法においては、表面繊維層に使用している高濃度に顔料を含む極細原着繊維のみでは引張強度や引裂き強度などの物性が得られないため、裏面繊維層として使用する繊維に表面繊維層に使用している繊維よりも繊径が太く顔料添加率が低い繊維を積層交絡して物性を得ている。しかしながら特許文献1の製造方法では裏面繊維層に使用している繊維が表面繊維層に突き抜けを起こし易く、手触りや色合いなどの表面品位に欠け易い。また、裏面繊維層に使用する繊維には少なからず顔料を含有させ表面繊維層に突き抜けた際に目立たないようにする必要があるため表面品位と充分な物性を両立することが難しい。
特許文献2に記載の方法は、耐光性の向上と物性維持を両立させ得る。しかし、織編物の存在は物性の向上には寄与するものの、特許文献2に記載の製造方法では交絡時に織編物の切断端等の突き抜けによる露出が発生する恐れがあるため、織編物に短繊維と同様に原着された繊維を使用しなければ外観が損なわれるばかりか原着による発色性向上効果を阻害する。そして表面露出した原着されていない繊維(以下、原着されていない繊維を「非原着繊維」とも称する。)の織編物を着色するには、やはり多量の染料を用いらなければならず、その結果、人工皮革全体の耐光性が劣ったものとなり、原着糸を用いたことによる耐光性向上効果を阻害してしまうという問題を抱えていた。また、織編物に使用する繊維を原着繊維とした場合においては、コストが高くなるのみならず、製品での色分けをするためには顔料の種類や使用量を変更し原糸を紡糸する必要があり煩雑であり、実用性に劣る。
特許文献3に記載の方法は、人工皮革の製品での色相をコントロールし得るものである。しかしながら、人工皮革の多くはユーザーによる色相の指定が多く、それに対応するためには各ユーザー、各銘柄ごとに繊維中の顔料添加率を変更する必要がある。この際、ポリマーのブレンドから変更することとなり大変煩雑になり、実用的な方法とは言い難い。
またこれまで記載した特許文献1〜3の方法では、人工皮革製造に際してシート製造後に極細繊維発生型繊維を極細化するため、繊維は極細化後も束として存在することとなり単繊維分散性が悪い。このため、原着繊維と非原着繊維を併用した場合、又は色差が大きく異なる二種類以上の原着繊維を併用した場合、表面感は均一な色相に見え難く、いわゆるメランジ調や霜降調と言われるような、表面の色合いに斑が生じ外観品位の低下が起こり易い。
更に、原着繊維に用いる顔料としては有機顔料及び無機顔料が挙げられるが、スエード調人工皮革の製造において海島型繊維をはじめとする極細繊維発生型繊維を使用する場合、一部の成分を除去して極細化する必要があり、除去処理には有機溶剤を使用することが一般的である。しかしながら、用いる顔料に有機顔料を使用した場合、除去処理で有機溶剤を使用すると有機顔料の一部を溶出させてしまうことから実質的に無機系顔料に限定されるといった欠点がある。
本発明が解決しようとする課題は、インテリア、自動車、航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材として好適に用いることができる、発色性及び耐光性に優れ長期使用においても色あせが少なく、更に、良好な強度、優れた表面品位及び良好な風合いも有する、人工皮革を提供することである。
本発明は以下の通りである。
[1] 表面繊維層と、織編物であるスクリムとを含む多層構造三次元交絡体と、高分子弾性体とから構成され、下記(1)〜(4):
(1)表面繊維層が原着繊維を30wt%〜100wt%含有する;
(2)原着繊維が顔料を0.5wt%〜4.0wt%含有する;
(3)原着繊維の単繊維繊度が0.02〜0.6dtexである;
(4)表面繊維層が実質的に単色で均一な色相であり立毛を有するスエード調である;
の要件を満たす人工皮革。
[2] 下記(a)〜(c):
(a)人工皮革の表面繊維層の表面上の10点についてクロマネティクス指数b*を測定し、10点の数平均値b*1を求める;
(b)人工皮革を、5.0%owfのブルー分散染料で、浴比が1:20となるよう調整して、130℃にて30分間染色し、その後還元洗浄して得た染色後人工皮革の表面繊維層の表面上の10点についてクロマネティクス指数b*を測定し、10点の数平均値b*2を求める;
(c)式Δb*=b*2−b*1 に従ってクロマネティクス指数差Δb*を求める;
の手順に従って求められるクロマネティクス指数差Δb*が0〜26である上記態様1に記載の人工皮革。
[3] 人工皮革のJIS D0205法による耐光堅牢度が4級以上である上記態様1又は2に記載の人工皮革。
[4] 明度L*が50.0以下である上記態様1〜3のいずれかに記載の人工皮革。
[5] スクリムが顔料を含有しない上記態様1〜4のいずれかに記載の人工皮革。
[6] 多層構造三次元交絡体が表面繊維層/スクリム/裏面繊維層の3層構造である上記態様1〜5のいずれかに記載の人工皮革。
[7] 原着繊維に含有される顔料がカーボンブラックである上記態様1〜6のいずれかに記載の人工皮革。
[8] 多層構造三次元交絡体が裏面繊維層を含み、
原着繊維が、表面繊維層のみ又は表面繊維層及び裏面繊維層に含有される上記態様1〜7のいずれかに記載の人工皮革。
[9] 高分子弾性体がポリウレタン樹脂である上記態様1〜8のいずれかに記載の人工皮革。
[10] 人工皮革がポリウレタン樹脂を5wt%〜14wt%含有することを特徴とする上記態様1〜9いずれかに記載の人工皮革。
[11] 高分子弾性体が顔料を含有しない上記態様1〜10のいずれかに記載の人工皮革。
[12] 多層構造三次元交絡体が裏面繊維層を含み、
表面繊維層のみ又は表面繊維層及び裏面繊維層が抄造シートである上記態様1〜11のいずれかに記載の人工皮革。
[13] 表面繊維層が原着繊維を30wt%〜95wt%含有する上記態様1〜12のいずれかに記載の人工皮革。
[14] 多層構造三次元交絡体が裏面繊維層を含み、
表面繊維層のみ又は表面繊維層及び裏面繊維層を構成する繊維が、単繊維として分散しており実質的に繊維束を含まない上記態様1〜13のいずれかに記載の人工皮革。
[15] 上記態様1〜14のいずれかに記載の人工皮革を用いたシート表皮材又は車両内装材。
本発明によれば、発色性及び耐光性に優れ長期使用においても色あせが少なく、更に、良好な強度、優れた表面品位及び良好な風合いも有する、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両などのシート表皮材や内装材として好適に用いられる人工皮革が提供される。
以下、本発明の例示の態様について以下具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
本発明の人工皮革は少なくとも顔料を含有する原着繊維を含有する表面繊維層と織編物であるスクリムの2層構造以上の多層構造三次元交絡体と高分子弾性体から構成される。好ましい態様において、人工皮革は裏面繊維層を更に含む。
本発明において、人工皮革は下記(1)〜(4):
(1)表面繊維層が原着繊維を30wt%〜100wt%含有する;
(2)原着繊維が顔料を0.5wt%〜4.0wt%含有する;
(3)原着繊維の単繊維繊度が0.02〜0.6dtexである;
(4)表面繊維層が実質的に単色で均一な色相であり立毛を有するスエード調である;
の要件を満たす。
表面繊維層は原着繊維を30〜100wt%含有する。表面繊維層における原着繊維の含有率が30wt%以上であることで、本発明の人工皮革の色相は本質的には濃色(特に灰色から黒色)である。しかし例えば黒色であっても赤みがかった黒色、青みがかった黒色、黄みがかった黒色など、色相に対するユーザー要求が多様であり、これらの要求に応え、染色による色相コントロールがし易く、優れた発色性及び耐光性を両立するには、上記含有率は40wt%〜95wt%が好ましく、さらに好ましくは50wt%〜70wt%である。原着繊維が30wt%未満の場合は充分な発色性及び耐光性が得られない。
上記原着繊維には、優れた発色性及び耐光性と強度を得るため、0.5wt%〜4.0wt%の顔料が含まれる必要がある。原着繊維中の顔料の含有率は好ましくは1.0wt%〜3.5wt%である。原着繊維中に0.5wt%未満の顔料しか含まれていないと優れた発色性及び耐光性が得られず、4.0wt%を超える顔料が含まれると強度の低下や紡糸性の悪化に影響する。
原着繊維に使用する顔料としては、有機顔料よりも光劣化に強くより優れた耐光性を得ることができる点、及び濃色(特に黒色)の発色性に優れる点から、カーボンブラックを使用することが好ましい。
カーボンブラックの種類は特に限定されるものではないが、平均一次粒子径が5〜60nm程度のカーボンブラックであることが好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径が5nm以上の場合には、一次粒子同士の再凝集が発生し難く、発色や物性等の品質安定性の問題が生じ難く、かつ紡糸性が低下し難い点で有利である。平均一次粒子径が60nm以下の場合には紡糸工程でフィルター詰まりを起こし難く紡糸性低下や物性低下を起こし難い点で有利である。
表面繊維層が含有する原着繊維は、極細繊維であり、具体的には単繊維繊度は0.02〜0.6dtexである。単繊維繊度が0.02dtex未満では、人工皮革を更に染色する際に必要な染料濃度が高くなる点、及び、染色堅牢度や耐光性が不充分である点で実用的でない。一方、単繊維繊度が0.6dtexを超えると、天然皮革様風合い、及びスエード調やヌバック調の表面感が得られ難い。上記単繊維繊度は、好ましくは0.001dtex以上、より好ましくは0.02dtex以上であり、好ましくは0.6dtex以下、より好ましくは0.33dtex以下である。
表面繊維層及び裏面繊維層を構成する繊維としては、原着繊維及び非原着繊維を問わずポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系繊維などを好適に用いることができる。しかしながらこれらに限定されるものではなく、目的とする用途によって適宜選択すればよいが、染色により色相をコントロールし易い点から原着繊維と非原着繊維は同じポリマー系であることが好ましい。
多層構造三次元交絡体において、原着繊維は、表面繊維のみ、又は表面繊維層と裏面繊維層とに含まれることが、発色性及び耐光性の観点から好ましい。人工皮革が裏面繊維層を更に含む場合、用途や使用法によっては裏面繊維層が露出する場合がある。このような場合は表面繊維層のみではなく裏面繊維層にも原着繊維が含有されることが好ましい。裏面繊維層にも原着繊維を含有させることで表面繊維層と同様な発色性や耐光性を得ることができる。裏面繊維層に原着繊維を含有させる際の態様は、表面繊維層に原着繊維を含有させる際の前述したような態様と同様であることができる。
天然皮革様風合いが得られ易い点やスエード調やヌバック調の表面感が得られ易い点からすれば、表面繊維層、若しくは表面繊維層及び裏面繊維層を構成する繊維としては、単繊維繊度が0.6dtex以下の極細繊維を用いることが好ましく、単繊維繊度が0.02〜0.33dtexの極細繊維を用いることがより好ましい。0.02dtex以上の単繊維繊度では、染色時の染料濃度が高くなりすぎず、また、染色堅牢度や耐光性が良好であり実用的である。
上記極細繊維としては、溶融紡糸法により直接紡糸されたものや、共重合ポリエチレンテレフタレートを海成分、レギュラーポリエチレンテレフタレートを島成分に用いた海島型繊維から海成分を溶解又は分解することによって除去して得られる極細繊維など、極細繊維発生型繊維から取り出したものなどが使用できる。
多層構造三次元交絡体においては、表面繊維層のみ、又は表面繊維層及び裏面繊維層が、抄造シートであることが好ましい。表面繊維層及び裏面繊維層は、前記各繊維の短繊維を用いカード法、エアレイ法などの乾式法、及び水中に各短繊維を分散させたスラリーを用いた抄造法などにより製造することができるが、各短繊維の均一分散性や極細短繊維が利用できる点では抄造法が好ましい。カード法では単繊維繊度0.6dtex以下の極細短繊維はカーディングローラーの針に繊維が巻き付き繊維の開繊が困難である場合があり、エアレイ法でも極細短繊維の分散が困難である場合がある。また乾式法で得られた繊維層は均一分散性に劣る場合がある。
特に本発明においては、均一分散性が高い抄造法が、原着繊維と非原着繊維共に単繊維分散し易いために原着繊維同士や非原着繊維同士の固まりや収束繊維が残り難く、欠点が少なくかつ品位に優れた外観が得られ易いことから好ましい。また、均一分散性が高い抄造法では、原着繊維と非原着繊維がそれぞれ単繊維状態で分散し易いため、2種以上の色相の繊維を使っても1つの色相に見える。つまり、2種以上の色相の繊維を使っても実質的に単色の均一な色相に見えるので、表面繊維層における原着繊維比率をコントロールすることで灰色から黒色までの発色が可能となる。車両内装材における色のニーズは灰色から黒色系が50%以上といわれており、本発明による人工皮革は車両内装材用途として好適である。
また、本発明のスクリムに使用する織編物を構成する繊維は染色による同色性の点から表面繊維層を構成する原着繊維若しくは非原着繊維と同じポリマー系が好ましく、さらに好ましくは非原着繊維と同じポリマー系である。編物の場合、22〜28ゲージで編み上げられたシングルニットが好ましい。織物の場合は、編物よりも高い寸法安定性と強度が実現できる。織物の組織は、平織、綾織、朱子織などであれば本発明に適用できるが、コスト面や交絡性などの工程面から、平織が本発明においては好ましい。織物を構成する糸条の単繊維繊度は柔軟な人工皮革が得られ易い点では5.5dtex以下が好ましい。また、織物を構成する糸条の形態はポリエステルやポリアミドなどのマルチフィラメントの生糸や仮撚り加工を施した加工糸などを撚数0〜1800T/mで撚りを施して用いることが好ましい。該マルチフィラメントは通常のもので良く、例えばポリエステルやポリアミドなどの33dtex/6f、55dtex/24f、83dtex/36f、83dtex/72f、110dtex/36f、110dtex/48f、167dtex/36f、167dtex/48fなどが好ましく用いられる。また、織物を構成する糸条としてマルチフィラメント等の長繊維を用いる場合、織物における長繊維の織密度は30〜80本/インチが好ましく、織物の目付は20〜150g/m2が好ましい。尚、織物における仮撚り加工の有無や撚数、マルチフィラメントの単繊維繊度、糸密度などは短繊維との交絡性や人工皮革の柔軟性に加え、縫目強力、引裂強力、引張強伸度、伸縮性などの機械物性と密接な関係があるので、それらの条件については目標とする物性や用途に応じて適宜選択すればよい。
また、本発明の人工皮革は表面繊維層若しくは表面繊維層及び裏面繊維層に実質的に繊維束を含まず、それぞれの繊維が単繊維として分散していることが好ましい。例えば、海島型繊維などの極細繊維発生型繊維を表面繊維層及び裏面繊維層を構成する繊維として使用し、多層構造三次元交絡体とした後で細繊化処理(海島型繊維の場合は海成分を溶解又は分解して除去)することにより得られる極細繊維は表面繊維層及び裏面繊維層中に極細繊維束として存在することとなり、原着繊維や非原着繊維として使用した場合、人工皮革の表面が均一な色相に見え難くメランジ調や霜降調と呼ばれる2種以上の色相の繊維が混在した状態に見え易い。一例として、島成分が単繊維繊度0.2dtex相当で24島/1フィラメントの海島型短繊維を作製し、該海島型短繊維で繊維シート形成後、ニードルパンチ処理などで三次元交絡体とし、該三次元交絡体にポリウレタンなどの高分子弾性体を含浸後、海成分を溶解や分解することによって単繊維繊度が0.2dtex相当の極細繊維が得られるが、この場合、単繊維が24本収束した状態(収束状態では4.8dtex相当)で存在することになる。実質的に繊維束を含まずとは、上記のような極細繊維発生型繊維から取り出したような極細繊維束を含まないことを意味する。一方、極細繊維が単繊維状に分散すればメランジ調や霜降調に見え難く、均一な色相に見え易い。また、表面繊維層及び裏面繊維層中に繊維束を含む場合、原着繊維と非原着繊維を併用した場合、色ムラの発生や表面平滑性などの低下により表面品位の低下が発生し易いので、本発明においては海島型繊維のような極細繊維発生型繊維を極細繊維原材料に用いた場合のような繊維束を含ませないようにすることが好ましい。
本発明の人工皮革の構造は表面繊維層と織編物であるスクリムの2層構造以上の多層構造三次元交絡体であることが好ましい。より好ましくは表面繊維層と裏面繊維層にスクリムをサンドイッチ状に挟み込んだ3層構造以上の多層構造三次元交絡体である。表面繊維層とスクリムのみから成る2層構造の場合は、表面繊維層の繊維と裏面繊維層の繊維との交絡が無いため、交絡一体化による耐摩耗性の向上効果が小さい傾向があり、また染色時に表面繊維層とスクリムが剥離するなどのトラブルを防止する必要があることから工程が複雑になる傾向がある。従って、より良好な耐摩耗性を得る点、並びに人工皮革製造工程の簡易化及び低コスト化の点では、表面繊維層と裏面繊維層にスクリムをサンドイッチ状に挟み込んだ3層構造がより好ましい。
多層構造三次元交絡体は、水流交絡一体化(すなわち、スパンレース法と呼ばれる水流交絡法による交絡一体化)がされていることが好ましい。交絡一体化において、例えば公知の方法であるニードルパンチ法を用いるとスクリム組織の破壊や変形を起こしスクリムが表面繊維層に露出する場合があるが、水流交絡法は柱状の高圧水によって繊維同士の交絡を行うため、スクリム組織を破壊したり変形させたりすることがないためスクリム組織の一部が表面繊維層に露出することが無く有利である。水流交絡法における高圧水噴射ノズルの孔径は高い交絡効果と優れた表面平滑性を得るためには0.05mmΦ〜0.40mmΦが好ましく、さらに好ましくは0.08mmΦ〜0.30mmΦである。水流交絡における高圧水噴射面と被処理物との距離は、高い交絡効果と交絡処理前の導布や交絡処理時の工程通過性の点から5mm〜100mmが好ましく、さらに好ましくは10〜70mmである。また、高圧水噴射ノズルを円運動や工程進行方向に対して直角に往復運動させることも交絡効果や表面平滑性を高めるうえで好ましい方法である。
また、スパンレース法による交絡ではスクリムの破壊によるスクリム繊維の表面露出が発生しないので、スクリムに使用される繊維に顔料が含有されなくてよい。従来、発色性及び耐光性の向上を図った技術においては、スクリムが表面繊維層に露出するために、スクリムを使用しない又はスクリムに使用する繊維に顔料を含有させ表面繊維層に露出しても目立たせないという対策を実施していた。しかしながらそれらの方法では強度不足や表面品位の低下がみられる場合がある。スパンレース法による交絡ではこのような問題が生じないため、コスト削減、強度維持やスクリム品種の統一化による生産性向上などの目的で、スクリムとして使用する繊維に顔料が含有されないことが好ましい。
また、本発明の人工皮革は表面繊維層が立毛を有するスエード調の人工皮革である。本開示で、「スェード調」とは、表面繊維層や裏面繊維層を構成する繊維の一部が単繊維及び/又は繊維束の立毛状態で繊維層表面に存在し、起毛調外観であることを意味する。起毛調外観の点では、立毛が短く緻密なヌバックや、立毛が長く粗いベロアも「スェード調」に含む。換言すれば、JISK6505で規定するスムーズの外観である銀面や銀付き調と呼ばれる外観ではない表面感であることを意味する。スエード調(ヌバック調含む)の人工皮革は、表面繊維層の表面を起毛処理し、染色処理することによって得られる。起毛処理は、サンドペーパーでバフィングするなどの公知の方法を用いることができる。
本発明による人工皮革は、柔軟でかつ弾力性のある風合い、及び耐摩耗性や破断強度などの機械強度を向上させる目的で、高分子弾性体を含有する。高分子弾性体としてはポリウレタン樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム等が挙げられるが、柔軟でかつ弾力性のある風合い、及び耐摩耗性や破断強度などの機械物性を得るためにはポリウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂としてはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系などがあり、更には、溶剤系、水分散系が使用される。いずれの樹脂を使用しても差し支えないが、含有量が少なくても人工皮革としての要求性能を満たすことができ、かつ環境負荷の低減という点から、ポリウレタン樹脂、特に自己乳化型や強制乳化型の水分散系のポリウレタン樹脂の使用が好ましい。
柔軟な風合いと機械強度を両立し、かつ発色性や耐光性への影響を小さくするためには、高分子弾性体の含有率、好ましくはポリウレタン樹脂の含有率、より好ましくは水分散型ポリウレタン樹脂の含有率は、人工皮革に対して5〜14wt%、より好ましく5〜12wt%である。又、必要に応じて撥水剤や制電剤などの添加剤を添加することは何ら支障がない。
本発明における人工皮革は高分子弾性体が顔料を含有しないことが好ましい。高分子弾性体に顔料を含有させた場合、製造工程に汚染が発生し易く同一製造ラインで顔料を含有しない高分子弾性体を人工皮革へ含浸させる場合に汚染することがあり、廃液処理も難しくなる。
また、本発明の人工皮革には優れた発色性と耐光性及び色相のコントロールを両立し、かつ良好な表面品位を得るには染色前後のクロマネティクス指数差Δb*は0〜26であることが好ましい。クロマネティクス指数差Δb*は大きいほど色相コントロール性は優れるが、一方で発色における染料の寄与率が大きく長期使用において染料の光劣化が目立ち優れた耐光性が得られ難い。クロマネティクス指数差Δb*が小さい場合、耐光性は優れるが色相コントロール性が低下する。より好ましいクロマネティクス指数差Δb*の値は3〜22であり、さらに好ましくは8〜18である。尚、本開示の「クロマネティクス指数差Δb*」は、下記手順で求められる値である。
(a)人工皮革の表面繊維層の表面上の10点についてクロマネティクス指数b*を測定し、10点の数平均値b*1を求める。
(b)人工皮革を、5.0%owfのブルー分散染料で、浴比が1:20となるよう調整して、130℃にて30分間染色し、その後還元洗浄して得た染色後人工皮革の表面繊維層の表面上の10点についてクロマネティクス指数b*を測定し、10点の数平均値b*2を求める。
(c)式Δb*=b*2−b*1 に従ってクロマネティクス指数差Δb*を求める。
染色処理は、例えば、短繊維がポリエステル系繊維の場合は分散染料を用い、短繊維がポリアミド系繊維の場合は酸性染料を用いることが一般的である。染色方法については染色加工業者に良く知られた通常の方法を用いることができる。人工皮革においては均染性の点から液流染色機が好適に用いられる。このようにして染色された人工皮革は、ソーピングや必要に応じて化学的還元剤の存在下で還元洗浄を実施し、余剰染料を除去する。上記の染色処理によって、例えば人工皮革に用いた繊維がポリエステル繊維の場合は、染料の分子構造や染料濃度、繊維の結晶化度によっても異なるが、適切な染色条件下では染色処理に使った染料成分の80%程度が染着すると考えられる。染着染料の確認方法としては、アセトン/水の混合重量比90/10の溶媒を用い、50℃で60分間程度処理すれば染料を抽出することが出来る。また、染料溶液の吸光度を測定した検量線を作成すれば、定量も可能である。
また、本発明の人工皮革は、非染色状態での明度L*の値が50.0以下であることが好ましい。本発明の人工皮革(すなわち原着繊維を含む人工皮革)において、非染色状態での明度L*の値が50.0以下であることは、人工皮革が優れた発色性と耐光性を有することの指標である。より好ましくは明度L*の値が35.0以下である。また、明度L*の値が50.0より高い値であると顔料による人工皮革の表面繊維層の発色が不十分であり、この場合は多量の染料による着色を必要とし、結果として耐光性の低下を招く。
本発明の人工皮革はJIS−D0205法による耐光堅牢度が4級以上であることが好ましい。4級を下回る耐光堅牢度では耐光性に劣り本発明が解決しようとする課題であるシート表皮材等に長期使用した際に色あせが少ない人工皮革を提供することが難しい。JIS−D0205法による耐光堅牢度が4級以上であれば優れた耐光性があると認められシート表皮材等に長期使用した際にも色あせが少ない人工皮革を提供することができる。
人工皮革の目付は、所望の目的に応じて適宜設計され得るが、例えば、好ましくは50〜500g/cm2、より好ましくは70〜400g/cm2、さらに好ましくは90〜350g/cm2である。例えば、表面繊維層の目付は、好ましくは10〜300g/cm2、より好ましくは30〜200g/cm2、さらに好ましくは50〜170g/cm2であり、スクリムの目付は、好ましくは30〜200g/cm2、より好ましくは50〜170g/cm2、さらに好ましくは70〜130g/cm2であり、裏面繊維層の目付は、好ましくは10〜300g/cm2、より好ましくは30〜200g/cm2、さらに好ましくは50〜150g/cm2である。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定したものではない。尚、実施例及び比較例中の性能測定結果は以下の方法で測定したものである。
(1)人工皮革のポリウレタン樹脂の含有率
高分子弾性体含浸後の生地から経20cm、緯20cmの正方形サンプル(A)を切り取り、25℃の水に30分間浸漬して生地中の硫酸ナトリウム(Na2SO4)を抽出し、脱水乾燥後の生地(B)の重量変化から、下記の式に従って高分子弾性体の含有率を求めた。
高分子弾性体の含有率(wt%)={[(A−B)/A]×100×3(*)
(*)ポリウレタン水溶液中、ポリウレタン濃度9wt%に対して硫酸ナトリウム濃度が3wt%であることから、硫酸ナトリウム量の3倍としてポリウレタン樹脂量を算出。
(2)耐摩耗性
染色後の人工皮革をJIS−L−1096(E法:マーチンデール法)家具用の押圧荷重(12kPa)に準じて測定される耐摩耗試験において、20000回摩耗後にスクリムが露出しない場合には合格(○若しくは◎)とし、測定結果としてスクリムが露出した摩耗回数に応じて下記を標記した。
×:10000回でスクリムが露出する
△:10000回ではスクリム露出しないが20000回でスクリムが露出する
○:20000回ではスクリム露出しないが30000回でスクリムが露出する
◎:30000回でスクリムが露出しない
(3)耐光性
染色後の人工皮革をJIS D0205法WAL−1Hに準じて測定し、変退色の評価はJISL0804の変退色用グレースケールを用い、保存試料の色と試験後の試験品に現れた色との開きを、グレースケールの各色票間で示される色の開きとを比較して判定する。判定結果が4級以上の人工皮革を合格とする。
(4)明度L*
ミノルタ株式会社製SPECTROPHOTOMETER:CM−3500dにて染色前の人工皮革生地の表面繊維層の表面を10ヶ所測定し、10ヶ所平均の明度L*をL*1として測定した。同様に液流染色機にて130℃、30分間染色した染色後の人工皮革の表面繊維層の表面を10ヶ所測定し、10ヶ所平均の明度L*をL*2として測定した。明度においてはL*1が50.0以下である染色前の人工皮革生地を合格とする。
(5)クロマネティクス指数差Δb*
轟産業社製Hi−Di染色試験器にて経15cm×緯30cmの人工皮革生地を5.0%owfのブルー分散染料(住友化学製:BlueFBL)で浴比が1:20となるよう調整し、130℃、30分間染色し、その後還元洗浄し人工皮革を得る。ミノルタ株式会社製SPECTROPHOTOMETER:CM−3500dにて染色前の人工皮革生地の表面繊維層の表面及び上記条件にて染色した人工皮革の表面繊維層の表面のクロマネティクス指数b*をそれぞれ10ヶ所測定し、染色前の人工皮革生地の10ヶ所平均クロマネティクス指数b*をb*1、同様に染色後の人工皮革の10ヶ所平均クロマネティクス指数b*をb*2とする。この時のb*1とb*2よりクロマネティクス指数差Δb*を求めた。Δb*=b*2−b*1
(6)表面品位
染色後の人工皮革について、被験者10人で目視による外観判定を行った。表面平滑性と、人工皮革表面を撫でたときのライティング効果とを評価した。良好と判断したものを1点、不良と判断したものを0点とし、各人に評価してもらいその総点から下記の基準に従い、表面外観を判定した。判定結果が○及び◎の染色後の人工皮革を合格とする。
×:0〜3点
△:4〜6点
○:7〜8点
◎:9〜10点
(7)総合評価
(2)〜(4)及び(6)の方法で測定及び判定した耐摩耗性、耐光性、明度L*1、表面品位の全物性を満たすものを合格(○)とし、1つでも満たされないものを不合格(×)とした。
[実施例1]
海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを9mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分としてカーボンブラックを3wt%含有させたポリエチレンテレフタレートを用い、海成分30wt%、島成分70wt%の複合比率にて島数24島/1フィラメント、単繊維繊度3.5dtexの海島型繊維を製造し、長さ5mmに切断した後、95℃に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に30分間含浸処理し、海島型繊維の海成分を除去した単繊維繊度が0.17dtexであるカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート繊維(以降、5mmに切断後、海成分を除去した単繊維繊度が0.17dtexであるカーボンブラック3wt%含有原着ポリエチレンテレフタレート繊維を「カーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維」と称す)を得た。また、直接紡糸繊維であり単繊維繊度0.17dtexのカーボンブラックを含有しない非原着ポリエチレンテレフタレート繊維を製造し、長さ5mmに切断した(以降、直接紡糸繊維であり長さ5mmに切断した単繊維繊度0.17dtexのカーボンブラックを含有しない非原着ポリエチレンテレフタレート繊維を「非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維」と称す)。カーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率が質量比率で9:1となるように水中に分散させ抄造法により目付100g/m2の抄造シートを製造し表面繊維層として用いた。同様の方法にて非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維を水中に分散させ抄造法により目付50g/m2の抄造シートを製造し裏面繊維層として用いた。表面繊維層と裏面繊維層の中間に82dtex/36fのポリエチレンテレフタレート繊維からなるガーゼ状の織物をスクリムとして挿入し、3層積層構造の不織布シートとした。次いで、高速水流の噴射により三次元交絡体を得た。高速水流は孔径0.15mmの直進流噴射ノズルを用いて表面繊維層側から4.0MPa、裏面繊維層側から3.0MPaの圧力で噴射して表面繊維層/スクリム/裏面繊維層の三次元交絡体とし、ピンテンターで乾燥し、目付200g/m2のシート状物を製造した。このシート状物の表層を#400のサンドペーパーでバフィングし起毛したシート状物を得た。次いで、9wt%のポリエーテル系の水分散型ウレタン(日華化学社製:エバファノールAP‐12)に3wt%の硫酸ナトリウムを添加した液を起毛したシート状物に対してピックアップ率120wt%となるように含浸し、ピンテンター乾燥機で3分間加熱乾燥し、明度L*1が21.1の人工皮革生地を製造した。この時の人工皮革生地に対するエバファノールAP−12の付着率は10wt%であった。この人工皮革生地を130℃、30分間、液流染色機で1.0%owfのブラック分散染料(オー・ジー長瀬カラーケミカル株式会社製:Disperse Black EC)(以降、オー・ジー長瀬カラーケミカル株式会社製:Disperse Black ECを「ブラック分散染料」と称す。)で染色し、その後還元洗浄し、明度L*2が20.5のスエード調人工皮革製品を得た。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。尚、色相コントロール性を示すΔb*は4.7であった。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[実施例2]
実施例1において、表面繊維層のカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率を質量比率が7:3であることと、3.0%owfのブラック分散染料で染色したことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得た。この時、染色前の明度L*1が25.8、染色後の明度L*2が20.0、クロマネティクス指数差Δb*は9.8であった。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[実施例3]
実施例1において、表面繊維層のカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率を質量比率が5:5であることと、5.0%owfのブラック分散染料で染色したことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得た。この時、染色前の明度L*1が34.8、染色後の明度L*2が21.3、クロマネティクス指数差Δb*は16.1であった。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[実施例4]
実施例1において、表面繊維層のカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率を質量比率が3:7であることと、7.5%owfのブラック分散染料で染色したことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得た。この時、染色前の明度L*1が44.9、染色後の明度L*2が20.5、クロマネティクス指数差Δb*は24.1であった。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[実施例5]
実施例1において、表面繊維層にカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維が100%であることと、染料を用いずに染色処理を行ったことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得た。この時、染色前の明度L*1が17.5、染色後の明度L*2が17.2、クロマネティクス指数差Δb*は2.3であった。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1において、表面繊維層に非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維が100%であることと、10.0%owfのブラック分散染料で染色したことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得た。この時、染色前の明度L*1が97.3、染色後の明度L*2が19.5、クロマネティクス指数差Δb*は39.8であった。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例1において、表面繊維層のカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率を質量比率が1:9であることと、10.0%owfのブラック分散染料で染色したことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得た。この時、染色前の明度L*1が58.6、染色後の明度L*2が21.9、クロマネティクス指数差Δb*は33.4であった。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[比較例3]
実施例1において、表面繊維層のカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率を質量比率が3:7であることと、15.0%owfのブラック分散染料で染色したことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得た。この時、染色前の明度L*1が48.0、染色後の明度L*2が17.0、クロマネティクス指数差Δb*は24.1であった。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
[比較例4]
実施例1に記載の単繊維繊度3.5dtexの海島型繊維を長さ5mmに切断した後、海成分を除去せずにカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の代わりに用い、長さ5mmの該海島型繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率が質量比率で6:4となるように水中に分散させ抄造法により目付122g/m2の抄造シートを製造し表面繊維層として用いた。同様の方法にて非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維を水中に分散させ抄造法により目付61g/m2の抄造シートを製造し裏面繊維層として用いた。表面繊維層と裏面繊維層の中間に82dtex/36fのポリエチレンテレフタレート繊維からなるガーゼ状の織物をスクリムとして挿入し、3層積層構造の不織布シートとした。次いで、高速水流の噴射により三次元交絡体を得た。高速水流は孔径0.15mmの直進流噴射ノズルを用いて表面繊維層側から4.0MPa、裏面繊維層側から3.0MPaの圧力で噴射して表面繊維層/スクリム/裏面繊維層の三次元交絡体とし、ピンテンターで乾燥し、目付233g/m2のシート状物を製造した。このシート状物の表面繊維層側の表層を#400のサンドペーパーでバフィングし起毛したシート状物を得た。次いで95℃に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に30分間含浸処理し、表面繊維層に含む3.5dtexの海島型繊維の海成分を除去し単繊維繊度0.17dtexのカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート繊維とした。海成分除去後の表面繊維層におけるカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート繊維と非原着ポリエチレンテレフタレート短繊維の比率は50:50となった。次いで、9wt%のポリエーテル系の水分散型ウレタン(日華化学社製:エバファノールAP−12)に3wt%の硫酸ナトリウムを添加した液を海成分抽出後の起毛したシート状物に対して付着率120wt%となるように含浸し、ピンテンター乾燥機で3分間加熱乾燥し明度L*1が36.0の人工皮革生地を製造した。この人工皮革生地を130℃、30分間、液流染色機で5.0%owfのブラック分散染料で染色し、その後還元洗浄し、明度L*2が20.9のスエード調人工皮革製品を得た。染色後のスエード調人工皮革について耐摩耗性、耐光性、表面品位を評価した。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
尚、電子顕微鏡観察すると、表面繊維層のカーボンブラック含有原着ポリエチレンテレフタレート繊維は24本が束状になった極細繊維束として観察された。比較例4においては、海島型繊維の細繊化処理を三次元交絡体形成後としたため白黒のメランジ調外観となり、本発明が目的とする単色で均一な色相の外観は得られなかった。
[比較例5]
実施例1において、表面繊維層と裏面繊維層の中間にスクリムを挿入しないことを除き、実施例1と同様にしてスエード調人工皮革製品を得ようとしたが、染色時に人工皮革生地が破損しスエード調人工皮革が得られなかった。この時、染色前の明度L*1が27.8であった。各測定値及び総合評価結果を表1に示した。
Figure 0006864527
本発明の人工皮革は、衣類、靴、鞄、インテリア、自動車や航空機、鉄道車両など
のシート表皮材や内装材、リボンやワッペン基材などの服飾分野に好適に用いられる。

Claims (12)

  1. 表面繊維層と、織編物であるスクリムとを含む、高分子弾性体が含浸された多層構造三次元交絡体から構成され、下記(1)〜():
    (1)表面繊維層が原着繊維を40wt%〜95wt%含有する;
    (2)原着繊維が顔料を0.5wt%〜4.0wt%含有する;
    (3)原着繊維の単繊維繊度が0.02〜0.6dtexである;
    (4)立毛を有するスエード調である;
    (5)表面繊維層が非原着繊維を含有する;
    (6)表面繊維層を構成する繊維が単繊維として分散している;
    の要件を満たす人工皮革。
  2. 非染色状態での明度L*の値が50.0以下である請求項に記載の人工皮革。
  3. スクリムが顔料を含有しない請求項1又は2に記載の人工皮革。
  4. 多層構造三次元交絡体が表面繊維層/スクリム/裏面繊維層の3層構造である請求項1〜のいずれか1項に記載の人工皮革。
  5. 原着繊維に含有される顔料がカーボンブラックである請求項1〜のいずれか1項に記載の人工皮革。
  6. 多層構造三次元交絡体が裏面繊維層を含み、
    原着繊維が、表面繊維層のみ又は表面繊維層及び裏面繊維層に含有される請求項1〜のいずれか1項に記載の人工皮革。
  7. 高分子弾性体がポリウレタン樹脂である請求項1〜のいずれか1項に記載の人工皮革。
  8. 人工皮革がポリウレタン樹脂を5wt%〜14wt%含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の人工皮革。
  9. 高分子弾性体が顔料を含有しない請求項1〜のいずれか1項に記載の人工皮革。
  10. 多層構造三次元交絡体が裏面繊維層を含み、
    表面繊維層のみ又は表面繊維層及び裏面繊維層が抄造シートである請求項1〜のいずれか1項に記載の人工皮革。
  11. 多層構造三次元交絡体が裏面繊維層を含み、
    表面繊維層のみ又は表面繊維層及び裏面繊維層を構成する繊維が、単繊維として分散しており実質的に繊維束を含まない請求項1〜10のいずれか1項に記載の人工皮革。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の人工皮革を用いたシート表皮材又は車両内装材。
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