JP3141566B2 - 制電性立毛シート状物 - Google Patents

制電性立毛シート状物

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JP3141566B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、制電性立毛シート状物
に関する。更に詳しくは、低温、低湿度においても良好
な恒久制電性を有し、表面タッチに優れたスェード調の
制電性立毛シート状物に関し、特に自動車用シートとし
て好適な制電性立毛シート状物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、乗用車は、走行性,操作性および
安全性の追及はもちろんのこと、車内の快適性の追及と
して機能性向上が要求されている。例えば、高耐光性、
防臭、消臭性、防汚性、制電性などが挙げられる。中で
も、特に自動車シートとの摩擦で発生する人体帯電によ
る電撃を解消する機能の付与が強く要望されている。
【0003】制電性機能を付与する技術としては、シー
トに帯電防止剤を後処理にて付与する方法や帯電防止性
の樹脂をコーティングする方法があるが、これらの方法
は摩擦、洗濯による脱落等で、制電効果の耐久性は低
く、自動車シートへの展開は困難であった。
【0004】制電効果の耐久性を向上させる技術とし
て、シート自体に制電性繊維を混繊する方法がある。例
えば、特昭52−3145号公報、特公昭53−44
579号公報、特平3−249212号公報、特
4−153306号公報などに記載された芯鞘型電性繊
維で、芯成分に導電性カーボンブラックを含有させた繊
維を編織物としたものが挙げられる。これらの製品は、
制電性繊維が太いため、コロナ放電効果をねらってパイ
ル編織物とすると表面タッチがざらつき、高級感を有す
るスェード調カーシート素材としては不向きであり、用
途展開としてはカーペット分野が主体であった。一方、
この欠点を解消する手段として特昭5−14352
5号公報において、極細導電性繊維が提案されている。
このものは制電性繊維が極細繊維であるが故に、表面タ
ッチの良い高級感を有するスェード調カーシート素材と
して好適である。しかしながら、自動車シートに要求さ
れる低温、低湿度における人体摩擦帯電圧にするには、
多量の極細導電性繊維の混繊を必要とし、また短繊維の
みの絡合構造であるがために自動車シートに要求される
強力耐久性が得難く、かつシート自体に黒色が目立ち、
シートカラーが限定されるといった欠点を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、恒久制電性
を有し、高強力で、難燃性、発色性に優れ、かつ高級
感、良好な表面タッチを兼ね備えた自動車シートに好適
な立毛シート状物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の課
題を解決すべく鋭意検討した結果、ついに本発明に到達
したものである。本発明の骨子は次の通りである。
【0007】すなわち、立毛形成繊維が導電性微粒子を
含有した電気比抵抗が104 Ωcm以下、繊度が1デニー
ル以下の極細導電性繊維と非導電性繊維とからなり、こ
れらの繊維が編織物と三次元交絡し、立毛面において該
極細導電性繊維と非導電性繊維が混繊開繊した状態で存
在し、編織物を貫通し裏面に露出した前記極細導電性繊
維が導電性材料を含有した樹脂と接着されており、か
つ、立毛形成繊維中の前記極細導電性繊維の占める割合
が0.5重量%以上、前記導電性材料含有率が3〜30
g/m2 であることを特徴とする制電性立毛シート状物
である。
【0008】
【作用】以下、本発明について説明する。
【0009】本発明に用いられる極細導電性繊維として
は、繊維形成性ポリマーに導電性微粒子を含有せしめ電
気比抵抗が104 Ωcm以下としたものである。
【0010】繊維形成性ポリマーは、特に限定されるも
のではないが、ポリエステル、ポリアミドおよびこれら
の共重合体類などが好ましく用いられる。
【0011】極細導電性繊維の断面形状は、特に限定さ
れるものではなく、導電性微粒子を含有せしめた繊度1
デニール以下のものであれば使用可能である。極細化、
加工安定性および耐久性などの観点から、芯鞘型極細導
電性繊維が好ましく用いられる。
【0012】導電性微粒子としては、例えば導電性カー
ボン(チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセ
チレンブラック、サマーブラックなど)、金属微粒子
(銅、白金、金、銀、鉄、亜鉛、クロム、ニッケル、ア
ルミニュウムおよびこれらの合金など)、導電性金属酸
化物微粒子(酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、亜酸化銅、酸
化タングステン、酸化ジリコニウム、酸化インジニウム
など)、導電性金属化合物微粒子(硫酸銅、夭化第一
銅、夭化亜鉛、硫化カドミウムなど)などが用いられ
る。これらの導電性微粒子の含有量は、用いられる導電
性微粒子の種類によって異なるため、一概に限定するこ
とはできないが、極細導電性繊維の電気比抵抗が104
Ωcm以下となるように調整することが好ましく、例えば
芯鞘型極細導電性繊維における導電性微粒子の含有量
は、芯鞘型極細導電性繊維全体に占める割合が0.5〜
30重量%、芯鞘比率としては芯/鞘=5/95〜60
/40重量%とするのがよい。
【0013】極細導電性繊維および非導電性繊維の繊度
は、立毛シートの表面タッチ、スェード効果および立毛
耐久性の観点から1デニール以下、好ましくは0.5デ
ニール以下、0.05デニール以上がよい。これらの範
疇において混繊使用しても差支えない。
【0014】極細導電性繊維の繊度がこのように細繊度
であることは、繊維断面方向にも徐々に電気が流れ、断
面先端からの放電との相乗効果が得られる。また、放電
効果を高めるには更に極細導電性繊維が束状にとなり非
導電性繊維と交絡し、立毛面において極細導電性繊維と
非導電性繊維が混繊開繊している構造とすることが重要
である。また、開繊することにより立毛隙間と方向の乱
れで光が散乱し、導電性繊維混繊による発色性への影響
を緩和するのにも好ましい。極細導電性繊維束を形成す
る単糸本数は、2〜250本が好ましく、6〜70本が
特に好ましい。かかる繊維の製造法としては、例えば特
開昭54−116417号公報に記載されている如き口
金を用いて、島成分が芯鞘型の高分子相互配列体繊維を
紡糸し、所定の繊度になるよう延伸し、その後海成分を
脱海するのが加工性の観点からして好適に用いられる。
【0015】非導電性繊維は,繊維形成性ポリマーであ
れば、特に制限されるものではない。直紡型繊維あるい
は剥離、分割、溶剤除去型などの複合繊維のいずれでも
用いることができる。中でも製品の強力、耐光性などの
観点から残存成分はポリエステル類が好ましい。
【0016】これらの立毛形成繊維が編織物と三次元交
絡し、編織物を貫通し裏面に露出した構造とすることが
制電効果を高めるのに重要である。かかるシート構造体
は、例えば島成分が芯鞘型で芯成分に導電性カーボンを
含有した高分子相互配列体繊維の短繊維と直紡型の短繊
維を混繊しウェブ化した後、編織物の少なくとも片面に
積層し、ニードルパンチ、ウオータージェットパンチあ
るいはこれらを組み合わせた交絡処理を行ない、次いで
高分子相互配列体繊維の海成分を溶解除去することによ
り、芯鞘型極細導電性繊維束と非導電性繊維が交絡し
た、かつ編織物と不離一体化した構造体を得ることがで
きる。そして、このシートを起毛処理することにより、
立毛面において芯鞘型極細導電性繊維束と非導電性繊維
が混繊開繊した構造とすることが可能となる。かかる構
造体とすることにより、芯鞘型極細導電性繊維を混繊す
ることによるシートの強力低下を防止し、高強力な製品
をも得ることを可能にしたものである。
【0017】編織物の種類としては経編、トリコット編
で代表される緯編、レース編およびそれらの編み方を基
本とした各種の編物、あるいは平織、綾織、朱子織およ
びそれらの織り方を基本とした各種の織物などいずれで
も採用することができ、特に限定されるものではない。
【0018】また、特開昭57−143525号公報お
よび特開平3−174074号公報に開示された技術
は、単に立毛表面に露出した極細導電性繊維のアンテナ
効果によるコロナ放電を利用するものであるが、本発明
者らの検討によれば自動車シートに要求される厳しい条
件下(温度10℃、湿度30%)における人体摩擦帯電
圧は不十分なものであった。
【0019】本発明者らは、これらの知見に鑑み、空気
中への放電効果を付与するアンテナ機能と製品裏面を通
じて流す漏洩効果を付与するアース機能を併せ持つ、本
発明の立毛シート状物に到達したものである。
【0020】すなわち、極細導電性繊維の混繊比率が極
めて少量で、十分な制電効果を発揮するには、編織物の
裏面に導電性材料を含有する層を付与した併用型構造と
することが極めて重要であることを見出したものであ
る。かかる導電性材料を含有する層を付与することによ
り、極細導電性繊維と非導電性繊維とが立毛面において
混繊開繊し、編織物の裏面に貫通した極細導電性繊維が
導電性材料と接触した本発明のアンテナ機能とアース機
能を合わせ持った制電性立毛シート状物を可能にしたも
のである。
【0021】かかる構造とすることにより、立毛シート
状物中の極細導電性繊維の混繊比率は、立毛形成繊維重
量の0.5重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、
10重量%以下で十分であり、導電性材料固形分として
は3〜30g/m2 、より好ましくは5〜20g/m2
とするのがよい。3g/m2 未満では導電性材料の繋が
りが不十分であり、30g/m2 を越えても本発明の効
果を損なうものではないが経済的に不利である。
【0022】また、極細導電性繊維の混繊比率は、本発
明の製品構造とすることにより、10重量%を越えても
製品強力の低下は極めて少なく、30重量%以上として
非導電性繊維との異染性を利用した霜降り調発色のシー
トとすることも可能であり、自動車シートの意匠性効果
を得るのに好ましい場合もある。
【0023】本発明に用いられる導電性材料としては、
例えば導電性カーボン(チャンネルブラック、ファーネ
スブラック、アセチレンブラック、サマーブラックな
ど)、金属微粒子(銅、白金、金、銀、鉄、亜鉛、クロ
ム、ニッケル、アルミニュウムおよびこれらの合金な
ど)、導電性金属酸化物微粒子(酸化銅、酸化亜鉛、酸
化錫、亜酸化銅、酸化タングステン、酸化ジリコニウ
ム、酸化インジニウムなど)、導電性金属化合物微粒子
(硫酸銅、夭化第一銅、夭化亜鉛、硫化カドミウムな
ど)や微細な繊維状とした導電性チタン酸カリウムウィ
スカー、炭素繊維、更には紙状、フィルム状としたあら
ゆる導電性フィラーを用いることが可能である。中でも
アスペクト比が高く、少量混合で制電性効果が高く、コ
ーティング加工性の良い微細な短繊維状のチタン酸カリ
ウムウィスカーを用いた、例えば市販の平均繊維径0.
01〜1μm、平均繊維長1〜100μmで、かつアス
ペクト比10以上の“デントール”(大塚化学(株)
製)、あるいはチタン酸カリウムウィスカー中に微量の
導電性カーボン(特にファーネスブラック)を混合した
ものなどが特に好ましい。
【0024】これらの導電性材料をアクリルあるいはエ
チレン/塩ビレジンなどに分散させ、立毛シートの裏面
にバッキングすることにより達成できるものである。バ
ッキングするレジンの目付は、15〜150g/m2
好ましくは30〜100g/m2 がよい。このレジンの
目付中に導電性材料が固形分として、3〜30g/
2 、より好ましくは5〜20g/m2 とするのがよ
い。レジンの目付が10g/m2 未満、200g/m2
を越えると摩擦による導電性材料の脱落、立毛シートの
風合が硬化しすぎ好ましいものではない。
【0025】公知技術として導電性繊維を混繊したモケ
ットの裏面に導電材料をバッキングする技術があるが、
該技術では導電性繊維が非導電性繊維の中に埋もれる確
立が高く、バッキングによる導電材料との接触比率が低
下し、十分な制電効果が得られにくく、かつ裏面組織の
凹凸のため、バッキング樹脂の付着むらや裏面から立毛
層に浸透しやすく、製品風合が硬く、シート縫製性が低
下するという欠点を有しているものであった。本発明の
製品は編織物の組織隙間に極細短繊維が充填され、かつ
裏面が極細短繊維で被覆され凹凸が少なく、導電材料を
コーティングしても、樹脂の付着むらや裏面から立毛層
に浸透せず、また極細導電性繊維は編織物を貫通し裏面
に効率良く露出されるため、導電材料との接触比率が極
めて高く、十分な制電効果が得られるものである。
【0026】本発明の効果を高めるために、これらレジ
ンの中に補助剤として一般市販の帯電防止剤、例えばア
ルキル燐酸エステル類、ポリエチレンオキサイド誘導
体、第4級アンモニウム塩等カチオン活性剤、高級アル
コール硫酸エステル等アニオン活性剤などの併用、樹脂
中の導電性フィラー分散性を安定させるための分散剤お
よび樹脂粘度の適正化を図るための増粘剤などを添加す
ることは好ましいものである。
【0027】本発明に用いられる難燃剤としてはハロゲ
ン系化合物、燐系化合物、金属系化合物が用いられる。
例えばハロゲン系化合物としてはテトラブロムビスフェ
ノールA、テトラブロムビスフェノールAビスジブロム
エチルエーテル、テトラブロムビスフェノールAエポキ
シ化オリゴマー、テトラブロムビスフェノールS、ヘキ
サブロムシクロドデカン、デカブロムジフェニルエーテ
ル、オクタブロムジフェニルエーテルなど、燐系化合物
としてはポリ燐酸アンモニウム、燐酸グアニジン、燐酸
アンモニウム、ハロゲン化燐酸エステル、燐酸メラミ
ン、トリフェニルホスフェート、TCP、プロピルフェ
ニルジフェニルホスフェート、ハロゲン化アルキル燐酸
エステル、ポリハロゲン化ポリホスフォネートなど、金
属系化合物としては三酸化アンチモン、五酸化アンチモ
ン、硼酸亜鉛、酸化錫、モリブデン酸化亜鉛、酸化モリ
ブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシュームな
どが挙げられる。これらの難燃剤の少なくとも1種類以
上を組み合わせ使用するものである。中でも製品風合の
柔軟性、少量添加での防燃性および耐熱変色性の観点か
ら、三酸化アンチモンとデカブロムジフェニルエーテル
の組み合わせ使用が好ましい。
【0028】難燃剤を導電性材料と併用使用する場合の
含有固形分比率としては、導電性材料/難燃剤=5/9
5〜40/60、好ましくは10/90〜30/70%
がよい。この配合割合で樹脂に混合し、必要に応じて分
散剤、増粘剤などを添加し、適宜の濃度としてコーティ
ングするのが好ましい。全固形分としては、30〜20
0g/m2 、好ましくは50〜150g/m2 が良い。
【0029】これらの混合樹脂を立毛シート裏面にバッ
キングすることにより、従来技術では到底達し得なかっ
た恒久制電性、難燃性を有し、高強力で発色性に優れ、
かつスェード調高級感、良好な表面タッチを兼ね備えた
自動車シートに好適な立毛シート状物の提供を可能とし
たものである。
【0030】立毛シート裏面へのバッキング処理は、起
毛処理前後いずれでもよいが、立毛シートを染色する場
合は、染色処理後にバッキング処理するのが好ましい。
【0031】本発明の製品の好ましい実施態様として
は、シートに適度な反発性、耐久性および優れたスェー
ド調感覚を付与せしめるために、高分子弾性重合体を付
与することが好ましい。種類としては特に制限はされな
いが、ポリウレタンが好ましく用いられる。ポリウレタ
ンとしては、一般の布帛類や人工皮革の加工に用いられ
る水系のポリウレタン樹脂や溶剤系のポリウレタン樹脂
のいずれでも用いることができる。また、ウレタンが、
熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、滑材、もしくは原着
など本発明の効果を損なわない範囲内で適宜に添加され
たものであってもよい。また、立毛シートの難燃性を更
に高めるために高分子弾性重合体が難燃剤を含有したも
のであっても差支えない。例えばDMF系ポリウレタン
溶液に上記の難燃剤を混合し、交絡シートに含浸し、シ
ート裏面に導電性材料含有レジンをバッキングしたもの
である。
【0032】本発明の立毛シートの厚み、質感を付与
し、強力をより高め、かつ柔軟性を付与せしめるには、
立毛形成繊維交絡層と導電性材料含有層との間に介在す
る編織物が強撚編織物であることが好ましい。特に絡合
手段がニードルパンチである場合、針のバーブに単糸が
引掛り、糸の切断、損傷し、製品強力低下を誘発する。
これを防止するためには、撚数500T/m以上、40
00T/m以下の強撚糸より構成された強撚編織物を用
いることが好ましく、より好ましくは1500T/m以
上、3000T/m以下のものを用いるのがよい。
【0033】強撚編織物の種類としては、経編、トリコ
ット編で代表される緯編、レース編およびそれらの編み
方を基本とした各種の編物、あるいは平織、綾織、朱子
織およびそれらの織り方を基本とした各種の織物などい
ずれでも採用することができ、特に限定されるものでは
ない。
【0034】これらの織物のうち、好ましいものとして
は、少なくとも経、緯いずれかに強撚糸を用いたものが
よく、特に好ましいものとしては、経、緯ともに強撚糸
を用いた織物を使用するのが高強力を発揮するのによ
い。また、これらの編織物が適度な潜在収縮率を有し、
立毛形成繊維と編織物との沸水での面積収縮率差が5〜
20%、好ましくは5〜15%の範囲がよい。5%未満
では積層絡合シートの柔軟性が不足し20%を越えると
積層絡合シートの凹凸が発生し、バッキング処理時に樹
脂の付着むらを誘発し好ましくない。
【0035】編織物を構成する繊維は、ポリエステル
類、ポリアミド類、アクリル、ポリエチレン、ポリプロ
ピレンなどの合成繊維、レーヨン、キュプラレーヨンな
どの再生繊維などを用いることができる。中でも製品強
力および風合などの観点からポリエステル繊維が好まし
い。
【0036】これら繊維を用いた編織物の糸使いとして
は、単糸繊度で0.05〜5デニール、より好ましくは
0.1〜3デニール、構成糸で20〜300デニール、
より好ましくは30〜150デニールの範囲がよい。単
糸繊度が0.05デニール未満となると製品柔軟化には
好ましいが強力が得難く、5デニールを越えると風合が
硬くなり好ましいものではない。構成糸が20デニール
未満となるとウェブとの積層時にシワが入りやすく、3
00デニールを越えると絡合処理時の繊維の貫通が不足
し剥離しやすくなり好ましくない。これらの単糸繊維の
断面形状は、特に限定されるものではない。
【0037】編織物を構成する繊維の形態は、高分子相
互配列体型繊維のごとき海島型複合繊維、分割型複合繊
維などの極細化可能な複合繊維であってもよい。この場
合、公知の極細化手段によって編織物を構成する繊維を
絡合処理後に極細化することによって、製品の曲げ特性
を一層低下させ、柔軟性を発揮させ、シート成形性を向
上せしめるのに好ましいものである。
【0038】また、上記の編織物に導電性繊維を混繊し
てもよい。立毛形成繊維中の極細導電性繊維との接触に
よりアース効果を一層発揮せしめるのに好都合なもので
ある。この場合、編織物に混繊した導電性繊維は、立毛
表面に露出するものではないため、導電性繊維の太さは
特に極細繊維に限定されるものではなく、市販の1デニ
ール以上の導電性繊維を混繊してもよい。
【0039】本発明の立毛シート構造体を形成する非導
電性繊維が、消臭、抗菌性を有するゼオライト微粒子を
混練りしたものであっても本発明の効果を損なうもので
はなく、むしろ更なる機能を付与するのに好ましいもの
である。
【0040】実施例における導電性繊維の電気比抵抗
(Ωcm)および人体摩擦帯電圧(KV)は、以下に示す
方法で測定したものである。
【0041】(1)導電性繊維の電気比抵抗(R) 極細導電性繊維を160本の束に引き揃え温度20℃、
湿度30%で、24時間調温、調湿したのち、グリップ
法で試長10cmの繊維束とし、グリップ部に導電性接着
剤を塗布し、印加電圧100Vで試料の抵抗(R)を測
定し、次式により算出する。
【0042】 R=(R×D)/(9×105 ×L×d) R:電気比抵抗(Ωcm) R :抵抗(Ω) d :試料密度(g/cm3 ) D :デニール L :試料長(cm) (2)人体摩擦帯電圧(KV) 立毛シートの長さ方向に1.5m、巾方向に0.5mサ
ンプリングし、10℃、30%の恒温恒湿室に6時間以
上調温、調湿した立毛シートをトヨタ法のTSL210
0に準じ測定したものである。
【0043】
【実施例】以下に、本発明を実施例にて詳細に説明す
る。
【0044】[芯鞘型極細導電性繊維を島繊維とする高
分子相互配列体繊維の製造]特開昭54−116467
号公報に示される如くの3成分口金を用いて、下記に示
す条件で紡糸、延伸し、芯鞘型極細導電性繊維を島繊維
とする高分子相互配列体繊維の原綿化を行なった。
【0045】(1)紡糸機 : 3成分紡糸機 (2)口 金 : 海島型口金(島芯鞘型) 島
数16島、吐出孔数18 (3)紡糸温度 : 285℃ (4)海成分 : ポリスチレン 約30部 (5)島成分(芯) : 導電性カーボンブラックを3
5重量%混入したナイロン6 約28部 (6)島成分(鞘) : ポリエチレンテレフタレート
(極限粘度IV=0.68) 約42部 (7)引取速度 : 1000m/分 かくして得られた未延伸糸を液浴ステープル延伸機で
3.5倍に延伸し、カット長約51mm、ケン縮数約12
山/in,複合繊度約7dの原綿を得た。海成分をトリク
レンで溶解除去した芯鞘型繊維の繊度は、計算値より約
0.3dであった。
【0046】この芯鞘型極細導電性繊維の電気比抵抗
は、約1.1×10Ωcmであった。
【0047】[非導電性繊維の製造]上記の島成分を全
てポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV=0.6
8)にして約80部、海成分をポリスチレンとして約2
0部に調整し、引取速度1280m/分で紡糸し、延伸
倍率2.9倍で延伸し、カット長約51mm、ケン縮数約
12山/in,複合繊度約3.8dの原綿を得た。海成分
をトリクレンで溶解除去した島繊維の繊度は、計算値よ
り約0.2dであった。
【0048】実施例1〜5 芯鞘型極細導電性繊維を島繊維とする高分子相互配列体
繊維(以後、A原綿と呼称する)と非導電性繊維(以
後、B原綿と呼称する)を用い、A原綿/B原綿の混繊
比率が、島成分比率で1.4/98.6重量%(実施例
1)、2.7/97.3重量%(実施例2)、5.5/
94.5重量%(実施例3)、11.1/88.9重量
%(実施例4)、22.6/77.4重量%(実施例
5)となるように、カード・クロスラッパー装置を用い
て混繊した。この混繊原綿を用い目付約500〜550
g/m2 のウェブを加工した。次いでウェブの両面に平
織物(75d−72f、撚数2000T/m、織密度が
経94本/in、緯80本/in、目付75g/m2
を積層し、ニードルパンチを行なった。得られたフェル
トを熱水中で収縮し乾燥した。次いでポリビニールアル
コール(PVA)水溶液に浸漬し、絡合シートに対して
固形分付量が10重量%となるようにマングルで調整
し、100℃で乾燥し恒量とした後、トリクレンを用い
海成分を溶解除去し、乾燥した。
【0049】次いで、DMF系ポリウレタンを絡合シー
トに対して固形分付量が30重量%となるようにマング
ルで調整し、水中に浸漬して凝固した後、温水中でPV
AおよびDMFを除去し乾燥した。このものをスライス
装置を用いて判裁し、スライス面をサンドペーパーバフ
装置を用いて起毛し、目付約320〜380g/m2
厚さ約0.95〜1.1mmの生機を得た。この生機を分
散染料を用い液流染色機でブラウン(中濃度色)に染色
した。得られた染色品の立毛面は、極細非導電性繊維の
中に芯鞘型極細導電性繊維が混繊開繊して点在し、裏面
は極細非導電性繊維束と芯鞘型極細導電性繊維束が織物
を被覆したものであった。
【0050】次いで、固形分比率としてデカブロムジフ
ェニルエーテル20部、三酸化アンチモン11部、導電
性材料(大塚化学(株)製、“デントール”WK−20
0)8部、エチレン・塩ビレジン7.5部、その他分散
剤、増粘剤を少量添加した樹脂を固形分で約65g/m
2 となるようにコーティングして100℃で乾燥した。
【0051】かくして得られた製品の人体摩擦帯電圧
は、表1に示したごとく極細導電性繊維の混繊比率が極
めて少量でもカーシートに要求される3KV以下を有
し、かつ電撃がなく、製品表面タッチ、風合、高級感に
優れたスェード調感覚を有した製品であった。
【0052】比較例 A原綿/B原綿の混繊比率が、島成分比率で1.4/9
8.6重量%(比較例1)、2.7/97.3重量%
(比較例2)、5.5/94.5重量%(比較例3)、
11.1/88.9重量%(比較例4)、22.6/7
7.4重量%(比較例5)となるようにカード・クロス
ラッパー装置を用いて混繊し、以後実施例1〜5と同様
に加工し、目付約320〜380g/m2 、厚さ約0.
95〜1.1mmの生機を得た。この生機を分散染料を用
い液流染色機でブラウン(中濃度色)に染色した。これ
らの製品の人体摩擦帯電圧は、表1に示したように極細
導電性繊維の混繊比率が5.5重量%を越えると大差な
く、約23重量%混繊しても人体摩擦帯電圧が不十分な
ものであり、かつ電撃を有する製品であった。
【0053】比較例6 B原綿100%をカード・クロスラッパー装置を用いて
ウェブとし、実施例1〜5と同条件でニードルパンチを
行なった。得られたフェルトを以後実施例1〜5と同条
件で加工し、目付約330g/m2 、厚さ約0.97mm
の生機を得た。この生機を実施例1〜5と同条件で染
色、バッキング処理を行った。得られた製品はスェード
調タッチのものであるが、人体摩擦帯電圧は表1に示し
たように極細導電性繊維の混繊製品よりは低くなるもの
の十分でなく、電撃が発生するものであった。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、少量の極細導電性繊維
の混繊で極めて低い人体帯電圧が得られ、かつ電撃のな
い、高強力で風合、タッチ、高級感に優れたスェード調
感覚のカーシート素材の提供を可能とするものである。
【0056】さらに、このように優れた制電効果を有し
ているため、衣料用分野および家具類、その他従来の人
工皮革を用いて制電性が欠陥とされていた分野に展開可
能とするものである。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】立毛形成繊維が導電性微粒子を含有した電
    気比抵抗が104 Ωcm以下、繊度が1デニール以下の極
    細導電性繊維と非導電性繊維とからなり、これらの繊維
    が編織物と三次元交絡し、立毛面において該極細導電性
    繊維と非導電性繊維が混繊開繊した状態で存在し、編織
    物を貫通し裏面に露出した前記極細導電性繊維が導電性
    材料を含有した樹脂と接着されており、かつ、立毛形成
    繊維中の前記極細導電性繊維の占める割合が0.5重量
    %以上、前記導電性材料含有率が3〜30g/m2 であ
    ることを特徴とする制電性立毛シート状物。
  2. 【請求項2】導電性材料が難燃剤を含有していることを
    特徴とする請求項1記載の制電性立毛シート状物。
  3. 【請求項3】温湿度10℃、30%における人体摩擦帯
    電圧が3KV以下であることを特徴とする請求項1また
    は2記載の制電性立毛シート状物。
  4. 【請求項4】請求項1、2または3記載の制電性立毛シ
    ート状物において、該制電性立毛シート状物が、高分子
    弾性重合体が付与されたものであることを特徴とする制
    電性立毛シート状物。
  5. 【請求項5】編織物が制電性繊維を混繊したものである
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の制電
    性立毛シート状物。
  6. 【請求項6】編織物が、撚数500T/m以上、400
    0T/m以下の強撚糸より構成された強撚編織物である
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の
    制電性立毛シート状物。
  7. 【請求項7】高分子弾性重合体が、難燃性を有したもの
    であることを特徴とする請求項4、5または6記載の制
    電性立毛シート状物。
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