従来、電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置に具備される定着装置においては、未定着トナー像を担持した記録材を、互いに圧接して回転する定着ローラと加圧ローラとで形成されるニップ部を通過させる。これにより記録材上に固着画像として定着させる、いわゆる加熱定着装置が広く用いられている。
従来の加熱定着装置の1例を図9に示す。40は加熱手段を具備した定着ローラであり、機械的強度を満足するように厚み1mm〜4mm程度のアルミの中空芯金42の内部にハロゲンランプ41が配設されている。そして、ランプ41に対する不図示の電源からの通電により中空芯金42内部から記録材P上のトナーを融解させるのに十分な加熱を行なう。
中空芯金42の内部はハロゲンランプ41による輻射熱の吸収を良好にするために、一般的に黒色の吸収率90%以上の物質(例えばオキツモ等)が全面に塗布されている。そして、内面の粗さは反射を防ぎ、吸収率を高くする目的で粗くなっており、Rz=10μm以上となっている。
また記録材P上のトナーをオフセットすることなく、記録材P上に定着するために中空芯金42の外側には離型性層43が形成されている。離型性層43は、例えば、離型性に優れた性能を示すポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン共重合体(PFA)などである。
離型性層43は外面をブラスト処理やエッチング処理等を行い、表面粗さをRz=5μm以上とした中空芯金42上に、チューブ状に形成されていたり、あるいは静電スプレー、ディッピング塗工等により形成されており、中空芯金42に対して接着力を得ている。
また、記録材Pの搬送によって定着ローラ40の表面がチャージアップすることで発生するオフセットを防止するため、離型性層43にカーボンブラック等の導電部材を混入しているものもある。
さらに定着ローラ40の中空芯金42は電気的にアース接続、もしくはダイオード素子を介して接地されていたり、不図示のバイアス印加手段によって、バイアス印加されており、定着ローラ表面がチャージアップしてオフセット画像が発生するのを防止している。
また、定着ローラ40の表面にはサーミスタ44が接触しており、定着ローラ表面の温度を検知し、適度な温度で記録材P上のトナー像を加熱するようにハロゲンランプ41への給電をon/off制御する。
一方、50は上記定着ローラ40とローラ長手方向両端部において不図示の加圧バネにより圧接して記録材Pを挟持搬送する加圧ローラである。加圧ローラ50は芯金51の外部に、シリコンゴムを成形した弾性層あるいはシリコンゴムを発泡して成るスポンジ弾性層52が形成されている。さらにその外層に定着ローラ40と同様のPTFEあるいはPFA、FEP等の離型性層53をチューブ状に、あるいはコーティング塗工して形成して成る。
よって、加圧ローラ50の弾性により両ローラ40・50間に十分なニップ幅の定着ニップ部Nを形成することができる。この定着ニップ部Nに挟持搬送される記録材P上のトナー像を定着ローラ40からの加熱により定着することができる。
また、特にスタンバイ時に加熱定着装置に電力を供給せず、消費電力を極力低く抑えた方法、詳しくはヒータ部と加圧ローラの間に薄肉のフィルムを介して記録材上のトナー像を定着するフィルム加熱方式による加熱定着方法が提案されている。たとえば特開昭63−313182号公報・特開平2−157878号公報・特開平4−44075号公報・特開平4−204980公報等に提案されている。
図10にフィルム加熱方式の定着装置の1例の概略構成を示した。すなわち図10において、ステイホルダー(支持体)62に固定支持させた加熱部材(加熱体、以下ヒータと記す)61を有する。また、該ヒータ61に耐熱性の薄肉フィルム(以下、定着フィルムと記す)63を挟んで加圧手段により所定のニップ幅の定着ニップ部Nを形成させて圧接させた弾性加圧ローラ50を有する。
ヒータ61は通電により所定の温度に加熱・温調される。
定着フィルム63は不図示の駆動手段あるいは加圧ローラ50の回転力により、定着ニップ部Nにおいてヒータ61面に密着・摺動しつつ矢印の方向に搬送移動される、円筒状あるいはエンドレスベルト状、もしくはロール巻きの有端ウエブ状の部材である。
ヒータ61を所定の温度に加熱・温調させ、定着フィルム63を矢印の方向に搬送移動させた状態において、定着ニップ部Nの定着フィルム63と加圧ローラ50との間に被加熱材としての未定着トナー像を形成担持させた記録材Pを導入する。これにより、記録材Pは定着フィルム63の面に密着して該定着フィルム63と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送される。この定着ニップ部Nにおいて、記録材・トナー像がヒータ61により定着フィルム63を介して加熱されて、記録材P上のトナー像が加熱定着される。定着ニップ部Nを通った記録材部分は定着フィルム63の面から剥離して搬送される。
加熱部材としてのヒータ61には一般にセラミックヒータが使用される。例えば、アルミナ等の電気絶縁性・良熱伝導性・低熱容量のセラミック基板の面(定着フィルム63と対面する側の面)に基板長手(図面に垂直の方向)に沿って通電発熱抵抗層が形成具備させてある。通電発熱抵抗層は銀パラジューム(Ag/Pd)・Ta2N等の通電発熱抵抗体をスクリーン印刷等で形成されている。さらに該発熱抵抗層形成面を薄肉のガラス保護層で覆ってなるものである。
このセラミックヒータ61は通電発熱抵抗層に通電がなされることにより該通電発熱抵抗層が発熱してセラミック基板・ガラス保護層を含むヒータ全体が急速昇温する。このヒータ61の昇温がヒータ背面に設置された温度検知手段64により検知されて不図示の通電制御部へフィードバックされる。通電制御部は温度検知手段64で検知されるヒータ温度が所定のほぼ一定温度(定着温度)に維持されるように通電発熱抵抗層に対する給電を制御する。すなわちヒータ61は所定の定着温度に加熱・温調される。
定着フィルム63は、定着ニップ部Nにおいてヒータ61の熱を効率よく被加熱材としての記録材Pに与えるため、厚みは20〜70μmとかなり薄くしている。定着フィルム63はフィルム基層、導電性プライマー層、離型性層の3層構成で構成されており、フィルム基層側がヒータ側であり、離型性層が加圧ローラである。フィルム基層は絶縁性の高いポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等であり、耐熱性、高弾性を有しており、可撓性のある厚み15〜60μm程度で形成されている。
また、フィルム基層により定着フィルム63全体の引裂強度等の機械的強度を保っている。導電性プライマー層は厚み2〜6μm程度の薄い層で形成されており、定着フィルム全体のチャージアップを防止するため、電気的にアースに接続されている。離型性層は定着フィルム63に対するトナーオフセット防止層であり、離型性の良好なPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂を厚み5〜14μm程度に被覆して形成してある。
また、図9の定着ローラ40と同様に定着フィルム63表面のチャージアップを軽減し、静電オフセットを防止するため、離型性層中には比抵抗が103Ωcm〜106Ωcm程度のカーボンブラック等の導電部材が混入されている。
また、ステイホルダー62は、例えば耐熱性プラスチック製部材より形成され、ヒータ61を保持するとともに定着フィルム63の搬送ガイドも兼ねている。よって定着フィルム63との摺動性を高めるために、定着フィルム63とヒータ61やステイホルダー62の外周面の間に耐熱性の高いグリース等を介在させてある。また、加圧部材50は上述した定着ローラ方式の加熱定着装置の加圧ローラと同様の構成をしている。
また、定着フィルム63と加圧ローラ50の間で加熱定着に必要な定着ニップ部Nを形成するため、ステイホルダー62の両端部より不図示の加圧バネによって加圧ローラ50側に加圧されている。これにより、ステイホルダー62に取り付けられたヒータ61は加圧ローラ50の周方向の一部、かつ長手方向全域に渡って定着フィルム63と密着した状態になる。
また、加圧ローラ50が回転駆動され、これに伴い、定着フィルム63が加圧ローラ50の表面によって従動回転させられる。この状態でヒータ61に形成された通電発熱抵抗層には不図示のコネクターによりヒータ61の両端部に形成された電極部を介して給電される。これにより、通電発熱抵抗層が加熱昇温し、定着ニップ部に挟持搬送された記録材上のトナー像を加熱定着する。
(第1の実施例)
(A)画像形成装置例
図1は画像形成装置例の概略構成模型図である。
1は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。
感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される。
次に、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビーム3による走査露光が施され、静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像装置4で現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
可視化されたトナー像は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上より転写される。
ここで感光ドラム1上のトナー像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するようにセンサ8にて記録材Pの先端を検知し、タイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。
このトナー像が転写された記録材Pは加熱定着装置6へと搬送され、固着画像として定着される。
一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される。
(B)加熱定着装置6
図2は加熱定着装置6の概略構成模型図である。10は定着部材、20は加圧部材であり、互いに圧接させて定着ニップ部を形成させてある。定着部材10は、加熱用部材としてのヒータ11、断熱ステイホルダー12、定着スリーブ13等からなる。加圧部材20は耐熱性弾性加圧ローラである。
a)定着スリーブ13
定着スリーブ13は熱容量の小さなスリーブであり、クイックスタートを可能にするために厚100μm以下の厚みで耐熱性、高熱伝導性を有する金属製スリーブ(フィルム:可撓性を有する円筒状金属素管)である。たとえばSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の金属部材を単独あるいは合金部材を基層(金属製の基材)とした金属製スリーブである。
また、長寿命の加熱定着装置を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れた金属製スリーブとして、厚さ20μm以上の厚みが必要である。よって金属製スリーブ13の厚みとしては20μm以上100μm以下が最適である。
さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために表層にはフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で被覆したものである。そのような耐熱樹脂は、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)である。また、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等である。
被覆の方法としては、金属製スリーブ基材の外面に接着層としてのプライマー層を塗布した後に上記離型性層をディッピング、粉体スプレー等の塗布によるものや、あるいはチューブ状に形成されたものを金属製スリーブの表面に被せる方式のものであっても良い。
なお、本実施例の主要部分である金属製スリーブの内外面の表面性および離型性層の厚み等については後記e)項で詳述する。
b)加熱用ヒータ11
加熱用ヒータ11は定着スリーブである金属製スリーブ13の内部に具備され、これにより記録材P上のトナー像を溶融、定着させるニップ部の加熱を行う。
加熱用ヒータ近傍の構成模型図を図3に示す。図3の(a)において、加熱用ヒータ11は、アルミナ、AlN(チッ化アルミ)等の高絶縁性のセラミックスやポリイミド、PPS、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂からなる基板11aを有する。そして、基板11aの表面に長手方向に沿って、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO2、Ta2N等の通電発熱抵抗層11bをスクリーン印刷等により、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の線状もしくは細帯状に塗工して形成してある。
そして、通電発熱抵抗層11bの表面には、金属製スリーブ13との摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層を設けた通電加熱用部材である。
上記基板11aの背面(定着ニップ部Nと反対側)には通電発熱抵抗層11bの発熱に応じて昇温した加熱用ヒータ11の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子14が配設されている。
この温度検知素子14の信号に応じて、図4に示す長手方向端部にある電極部11fおよび11gから通電発熱抵抗層11bに印加される電圧のデューティー比や波数等を適切に制御する。これにより、定着ニップ部N内での温調温度を略一定に保ち、記録材P上のトナー像を定着するのに必要な加熱を行う。温度検知素子14から不図示の温度制御部へのDC通電は不図示のDC通電部およびDC電極部を介して不図示のコネクターにより達成している。
ヒータ基板11aとして熱伝導性の良好なAlN(チッ化アルミ)等を用いた場合には、図3の(b)のように、通電発熱抵抗層11bを上記基板11aに対して定着ニップ部Nと反対側に形成してあっても良い。図3の(b)において、11dは基板11a上に形成された通電発熱抵抗層11dと温度検知素子14の間の耐電圧を満足するために設けたガラスコート、フッ素樹脂層等の保護層である。また、11eは上述の11cと同様に金属製スリーブとの摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層である。
また、上記金属製スリーブ13の内面において、加熱用ヒータ11の定着ニップ部N側の形状を曲面とすることで、金属製スリーブ13に屈曲負荷を与えないようにした方が長寿命の定着部材が形成される。あるいは、ヒータの金属製基板上の定着ニップ部とは反対側に絶縁層、通電発熱抵抗層を順次積層してなる金属製加熱用ヒータであり、該金属製基板は定着ニップ部側が金属製スリーブと同方向に湾曲した形状であっても良い。
c)断熱ステイホルダー12
断熱ステイホルダー12は、加熱用ヒータ11を保持し、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための断熱部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されている。このホルダー12に、金属製スリーブ13が余裕をもってルーズに外嵌されていて、矢印の方向に回転自在に配置されている。
また、金属製スリーブ13は内部の加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12に摺擦しながら回転するため、加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12と金属製スリーブ13の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このため加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を少量介在させてある。これにより金属製スリーブ13はスムーズに回転することが可能となる。
d)加圧ローラ20
加圧ローラ20は、芯金21の外側に、シリコンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコンゴムを発泡して形成された弾性層22からなり、この上にPFA、PTFE、FEP等の離型性層23を形成してあってもよい。
定着部材10は上記の加圧部材20の方向に加圧されている。即ち、図4に示すように断熱ステイホルダー12の一部、もしくは断熱ステイホルダーと嵌合等により取り付けられた部材を介してバネ等の加圧手段17により、長手方向両端部から加熱定着に必要な定着ニップ部Nを形成するべく十分に加圧されている。
また、加圧ローラ20の芯金21端部に取り付けられた駆動ギア16により加圧ローラ20を回転駆動し、加圧ローラ表面と金属製フィルム表面の摩擦により金属製フィルムを所定の速度に従動回転させる。
以上が加熱定着装置6の構成である。図2において記録材Pは不図示の供給手段によって適宜供給され、耐熱性の定着入口ガイド15に沿って加熱部材10と加圧部材20によって形成される定着ニップ部Nに搬送される。
即ち、金属製の基材を有する可撓性のスリーブ13と、このスリーブの基材の内面に接触する固定配置されたヒータ11と、スリーブ13を介してヒータ11と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ20と、を有する。そして、スリーブ13の基材の内面をヒータ11に対して摺擦させながら回転させることにより定着ニップ部Nで記録材Pを搬送し、記録材に形成されたトナー像を記録材に加熱定着する装置である。
e)金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ等について
ここで本実施例に係わる金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ、離型性層の厚み等に関して以下に説明する。
まず、金属製スリーブ13の内面は上記加熱用ヒータ11と所定の接触幅をもって接触することで加熱用ヒータ11より発した熱を定着ニップ部Nへ伝熱する必要があり、従来使用されてきた輻射熱による加熱を行う熱ローラ定着装置(図9)とは思想が異なる。よって加熱用ヒータ11と接触伝熱する金属製スリーブ13内面の表面粗さは、熱効率に大いに影響する。
特に加熱用ヒータ11の摺動層11c(図3の(a))あるいは11e(図3の(b))の表面と金属製スリーブ13の内面との接触熱抵抗が大きくなると、熱効率が低下し、定着不良を起こしてしまう。仮に熱伝導グリース等を介在させた場合でも熱効率の高い加熱定着装置を構成するためには、所定以下の表面粗さに抑える必要がある。
また、金属製スリーブ13の外面には、離型性層を形成するが、離型性層は一般にフッ素樹脂より形成されるため、金属製スリーブ13の熱伝導性に比べ極端に低い熱伝導性となる。よって、あまり厚く形成すると、熱伝導の低下を招き画像形成装置の高速化に対し、定着ニップ部Nで記録材P上のトナー像に対し十分な熱供給ができなくなる。よって薄い離型性層を金属製スリーブ13上に形成する必要がある。このとき、金属製スリーブ13外面の表面粗さは所定以下に抑える必要がある。すなわち薄い離型性層では、金属製スリーブ13外面の表面粗さを緩和する効果が得られず、金属製スリーブ13外面に離型性層を塗布形成した
後の表面粗さは金属スリーブ13素管の表面粗さと同等か若干小さい粗さの表面粗さとなる。よって、金属製スリーブ13素管の表面粗さが大きいと離型性層を塗布形成後も大きな表面粗さとなり、定着ニップ部Nで記録材Pとの密着力が得られず、定着不良を引き起こす可能性が大きくなる。
以上のことから、金属製スリーブ13の外面の表面粗さを所定以下とし、接着層としてのプライマー層を含み離型性層を所定以下の厚みで塗布形成することにより、十分な定着性能が得られ、画像形成装置の高速化に対応可能となる。
また、金属製スリーブ13の表面粗さが粗い場合、記録材Pとしてカット紙等パルプを原料とするような紙を定着ニップ部Nに導入し加熱定着すると、紙上の紙粉が掻き取られ金属製スリーブ13の表面に付着してしまうことがある。このような状態で未定着トナー像が形成された記録材Pを加熱定着し続けた場合、離型性が良くない紙粉が記録材上のトナーを剥ぎ取り、徐々に金属製スリーブ表面に紙粉とトナーが溜まる。最終的には、記録材Pが離間しなくなるほど離型性がなくなり、記録材Pが金属製スリーブ13表面に巻き付いてしまう。
以上の観点からも金属製スリーブ13表面の表面粗さは所定値以下に抑える必要がある。
以上の確認を行うため、金属製スリーブ13の内面の粗さ、外面の粗さおよび離型性層の厚みを振って各効果を確認した。確認した構成は以下に示すものである。
まず、金属製スリーブ13の内面の粗さを振った場合の実験に用いた加熱定着装置の基本的構成として、加熱用ヒータ11としては、図3の(b)の構成のものを用いた。即ち、AlNを基板11aとし、このヒータ基板11a上の定着ニップ部Nと反対方向に通電発熱抵抗層11bとして次のものを用いた。即ち、Ag/Pdの導電剤とマトリックス成分としての燐酸系ガラスの混合物を有機溶剤、バインダー、分散剤等と混合してペースト状にしたものをスクリーン印刷して600℃で焼成したものを用いた。
また、AlNのヒータ基板11aの定着ニップ部N側には摺動性の良好なポリイミド層11e(ポリイミドを主成分としている樹脂コート)を10μmの厚さでスクリーン印刷して形成した。
また、金属製スリーブ13は内径30mm、厚み50μmの円筒状ステンレス鋼にプライマー層を5μm、PFA樹脂を10μmディッピングによって塗布することによって外径30.13mmの円筒状に形成した。
また、加圧ローラ20は、φ20mmのAl芯金21に、シリコンゴム層を厚み5mmで形成し、さらに外層にはPFAチューブを被覆した。
実験では、画像形成装置の記録材搬送スピードが200mm/secとなるように調整して、加熱用ヒータ11の温調温度を200℃になるように制御した。そして、加熱用ヒータ11の通電発熱抵抗層11bへの通電を開始してから6秒後に未定着トナー像が形成された記録材Pを定着ニップ部Nに挿入し、各項目に対して確認した。
また本実施例に係わる金属製スリーブ13の内面の表面粗さRzは2μm〜5μmまで振って確認した(実施例1〜5)。
なお、比較例として、金属製スリーブ13の代わりに従来例で示したポリイミド樹脂を基層として形成された定着フィルム63(図10)を用いた場合も同様に確認した。比較例の定着フィルムでは熱伝導性を確保するため、BNフィラを30vol%添加した厚み50μmのポリイミド基層にプライマー層を5μm、PFA樹脂を10μmディッピングによって塗布した。そして、上記金属製スリーブ13と同等の外径形状で形成し、内面の表面粗さRzを2μmとした。駆動は加圧ローラによって行い、定着フィルムを従動回転させて評価した。
各項目の確認方法としては、
1):定着性能・・・加熱定着後の記録材Pに粘着テープを一旦貼付け、剥がしたときの画像欠損から判断した。
2):クイックスタート性・・・加熱用ヒータ11の通電発熱抵抗層11bへの通電を開始してから3秒後の定着ニップ部Nの温度を測定した。
3):耐久性能・・・連続して記録材としてのカット紙を加熱定着した場合に定着フィルムあるいは金属製スリーブの破損が確認された枚数をカウントした。
実験結果を表1に示す。なお、表1中の○は満足な定着性能、△は許容範囲の定着性能、×は定着不良が発生していることを示す。
以上、本実施例に示したように金属製スリーブ13と定着フィルムの両者の内面の表面粗さが同等の場合、樹脂製の定着フィルムより熱伝導率の高い金属製スリーブ13を用いることにより、熱効率を飛躍的に向上できる。
また、金属製スリーブ13の内面の表面粗さが3.5μmを越えると加熱用ヒータ11と金属製スリーブ13の内面との接触熱抵抗が大きくなり、定着ニップ部N内への伝熱が阻害される。このことから、金属製スリーブ13の熱伝導の効果を十分に活かすためには、内面の表面粗さRzを3μm以下にすることが望ましいことがわかる。これにより加熱用ヒータ11の温調温度を低く抑えることが可能になり、より省エネの加熱定着装置となる。
また、内面の表面粗さRzが3μm以下の金属製スリーブ13を用いることで、定着ニップ部Nの昇温を速くすることが可能となり、クイックスタート性にも優れ、ファーストプリントタイムを短縮することも可能になる。
よって画像形成装置の高速化に対しても短い定着ニップ内搬送時間でも記録材を十分に加熱することができ、定着不良等の問題を招くことがない。
また、耐久性の評価においても、剛性の高い金属性スリーブを用いることで樹脂製フィルムに対し端部からの裂けは発生しづらくなり、高い耐久性能が得られる。
次に金属製スリーブ13の外面の表面粗さ、離型性層の厚みを振って上記1)の定着性能、2)のクイックスタート性の確認を行った。
実験に用いた構成は上記と同様であり、金属製スリーブ13の外面の表面粗さRzを2μm〜5μmまで、金属製スリーブ13の外面にはプライマー層を5μmとし、その外面に離型性層を厚み5μm〜25μmまでそれぞれ振って確認した。なお、金属製スリーブ13の内面の表面粗さは全てRz=2μmのものを使用した。評価結果を表2に示す。
以上の結果より、金属製スリーブ13の外面の表面粗さは、定着ニップ部N内の温度に対しては若干影響する程度である。しかし、記録材P上のトナー像を加熱定着する際には離型性層塗布状態における金属製スリーブ13の外面の粗さが粗くなるほど記録材Pとの密着不良を生じ、定着不良に至ることがわかる。特に金属製スリーブ13の外面の表面粗さが3.5μmを越えると定着性能に低下傾向が見られることから、金属製スリーブ13の外面の表面粗さとしては、Rz=3μm以下に形成することが望ましい。
また、離型性層の厚みが20μmを越えると熱伝導の低下により定着ニップ部Nを十分に加熱できなくなり、定着性能が劣ってしまう。このことから、金属製スリーブ13の外面に塗布されるプライマー層および離型性層の合計厚みは20μm以下とすることが望ましい。
また、上記に示した外面の表面粗さを振った金属製スリーブ13を用いてカット紙を使用して紙粉汚れを確認したところ、Rz=4μm以上の金属製スリーブは、紙粉汚れが発生してしまった。これに対し、離型性層塗布後の表面粗さがRz=3μm以下の金属製スリーブでは許容範囲内の紙粉付着に収まっており、離型性を著しく劣化させるようなことはなかった。
離型性層を含む金属製スリーブ外表面の表面粗さが大きいと、カット紙等のパルプ材を原料とした記録材を使用した場合、紙との摩擦により、金属製スリーブ上に紙粉を剥ぎ取ると考えられる。
以上の観点からも金属製スリーブ外面の表面粗さはRz=3μm以下に抑えることが望ましい。
次に上記実験構成において、加熱用ヒータ11の摺動層11e(図3の(b))の材質をガラス、ポリイミド、ポリアミドイミド、PTEF、DLC(ダイアモンドライクカーボン)とする。また、それぞれ10μmスクリーン印刷(ただしDLCに関しては1μmの厚みでPVDにより形成した)する。そして、20万枚の記録材搬送耐久試験を行い、耐久後の加熱用ヒータ11の表面および金属製スリーブ13の摩耗状態の観察、および加熱定着装置の駆動トルクを測定した。
評価結果を表3に示す。なお、表中の加熱用ヒータの摩耗状態は2μm以下の摩耗を○、2〜7μmの摩耗を△、7μm以上を×とした。また、金属製スリーブの摩耗状態は1μm以下を○、1μmを越えるものを×とした。
以上の結果より、加熱用ヒータ11の表面に形成する摺動層11eはDLCのように硬い材質の場合、金属製スリーブ13の内面を摩耗してしまい、駆動トルクも異常に高くなってしまうことがわかった。
ガラスのような部材の場合には、削り粉によって加熱用ヒータ11の摺動層11e、金属製スリーブ13の双方を削ってしまう。
一方、樹脂コートの加熱用ヒータ11では、樹脂コートが若干削れる場合はあるが、トルク上昇はある程度抑えることが可能となり、耐久性が良好となる。特にポリイミドコートを施した加熱用ヒータでは、何ら問題なく、高耐久が達成される。さらに金属製スリーブ内面の表面粗さが小さいほど、加熱用ヒータの樹脂製摺動層の摩耗が少なくなる。特に金属製スリーブ内面の表面粗さがRz=3μm以下の場合には、高耐久の加熱定着装置が提供できる。
以上、本実施例では、金属製スリーブ13の内外面の表面粗さを3μm以下に抑え、接着層を含む離型性層の厚みを20μm以下とし、加熱用ヒータ11の摺動層11eを樹脂コートとする。これにより、画像形成装置の高速化に対し、定着性能、耐久性、クイックスタート性を十分に満足させた加熱定着装置が提供できる。
(第2の実施例)
以下に実施例2について説明する。画像形成装置全体の構成は前記実施例1で示した図1と同様であり、加熱定着装置内の構成も前記実施例1で示した図2と同様であるため説明を省く。
本実施例では金属製スリーブ13に周方向に所定以下の表面粗さを有する凹凸形状を施すことにより、金属製スリーブ13の回転をよりスムーズにすると共に加熱用ヒータ11の表面にコーティングした離型性層を傷つけにくくする。以上によりさらに高耐久の高速対応可能な加熱定着用金属製スリーブ13を提供する。
本実施例では、前記実施例1で示した図2における金属製スリーブ13の製法を以下に示す方法により達成し、金属製スリーブ13に周方向に適度な凹凸を形成する。
図5から図7に金属製スリーブ13の主な製法を示す。まず、図5において、31は金属製スリーブ13の基材であり、0.1mm〜0.5mm程度のSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の単独ないし、合金状態で形成される金属平板(プランク)である。32は一般的な深絞り製法における円形内型(ポンチ)、33は円筒容器状の外型(ダイス)であり、金属材料の表面に超硬メッキ等を施した金型である。
図5において、金属平板31を内型32と外型33の間に挟み矢印の方向に内型32を外型33の方向へ押し込む。また、金属平板31と外型33の間には粘度の高い潤滑油、あるいは黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を介在させ、絞り性を良くしてある。以上の工程を通常は2〜4回程度、異なる金型で深絞り加工することにより、図6に示すようなカップ状の金属製円筒部材34を製造する。
次に、この金属製円筒部材34が所定の厚みに形成されるようにしごき加工を施す。しごき加工としては、圧延加工、引き抜き加工、絞り加工等どのような加工を途中に経緯してもよいが、最終加工としては、以下に示すような加工方法により金属製スリーブの周方向に所定以下の凹凸を有する加工を施す。
例えば、図7の(a)および(b)に示すような加工方法がある。図7の(a)は一般的な絞りスピニング加工であり、固定台36cに取り付けられた軸36bに回転自在に取り付けられた押し当てローラ36aを金属製内型35と所定の距離だけ常に離間した状態で金属製内型35方向へ押し付けられるようになっている。
金属製内型35に取り付けられた上記カップ状に深絞り加工を施した金属製円筒部材34をはめ込み、押え部材37によって金属製円筒部材34のカップ形状底部が金属製内型35に密着状態となって固定される。この状態で金属製内型35、金属製円筒部材34、押え部材37を図の矢印の方向に回転させながら、紙面右方へ徐々に送り込む。端部からは金属製内型35と所定距離を保って回転自在のローラが押し当てられる。
これにより、金属製円筒部材34の端部から徐々にしごき加工により薄肉化され、最終的には図7(c)に示すように本実施例における金属製スリーブ13の所定厚みにまで加工されたカップ状の金属製円筒部材39がしごき加工により形成される。
金属製円筒部材39には、周方向に絞りスピニング加工時のローラ押し当ての凹凸跡39aが残る。最終的には、金属製円筒部材39のカップ形状底部を切り落とすことにより、本実施例の金属製スリーブ13を得る。
また、図7の(b)に示すように、押し当てローラの代わりに段階的に内径が小さく形成された連続ダイス38a、38b、38cの内側に金属製内型35と押え部材37により固定された金属製円筒部材34を回転させながた送り込みしごき加工する。この加工により薄肉化しながら周方向の凹凸形状を付与させる方式であっても良い。
その他、へら絞り加工等、金属製スリーブ13の周方向に所定量以下の凹凸を形成できる方法であれば、どのようなしごき加工の加工方法であっても構わない。
以上の製法で製造した金属製スリーブ13を用いて、未定着画像が形成された記録材Pを加熱定着する場合、前記実施例1で示したように、熱伝導の観点から、上記周方向の凹凸は3μm以下に抑える必要がある。
また、金属製スリーブ13の外面に接着剤としてのプライマー層、離型性層をコーティングする。そして、周方向の凹凸が3μm(長手方向の表面粗さRz=3μm、周方向はRz=1μm以下)で長手方向に渡ってピッチ0.2mmで形成された金属製スリーブを実施例の金属製スリーブとする。
また、金属製スリーブ内外面の表面粗さが周方向、長手方向に関係なくどの方向でも同等のRz=1μm、3μmでそれぞれ形成された金属製スリーブを比較例1および2の金属製スリーブとする。
これらの金属製スリーブを使用して、前記実施例1にて示した実験構成で加熱定着装置の回転駆動トルク、および50万枚記録材を加熱定着した時の耐久時の加熱用ヒータ11に施した摺動層11eとしてのポリイミドコートの摩耗を評価した。評価結果を表4に示す。なお、評価基準は前記実施例1と同様である。
以上の結果より、金属製スリーブ13の周方向に3μm以下の凹凸を形成する、好ましくは、長手方向の表面粗さRzを3μm以下とし、周方向の表面粗さRz’との関係をRz>Rz’とすることで、次の効果が得られる。即ち、加熱定着装置の回転駆動を低く抑え、回転をスムーズにすると共に、耐久による金属製スリーブ内面に接触する加熱用ヒータの樹脂コートを傷つけにくくし、加熱定着装置のさらなる高耐久、高速化を達成することが可能になる。
特に周方向、長手方向ともに鏡面状態に近い状態にしたとき(比較例1)には、金属製スリーブ内面と加熱用ヒータ摺動面の密着性が良好となり、定着性は前記実施例1で示したように良好になるが、駆動トルクは若干高めになる。
よって定着性を満足した上で、金属製スリーブ13のスムーズな回転を維持するためには、周方向にRz=3μm以下の凹凸を有する本実施例の金属製スリーブの方が適している。
(第3の実施例)
以下に実施例3について説明する。画像形成装置全体の構成は前記実施例1で示した図1と同様であり、加熱定着装置内の構成も前記実施例1で示した図2と同様であるため説明を省く。
本実施例では金属製スリーブ13と加圧部材である加圧ローラ20の間に電位差を形成し、かつ金属製スリーブ13を接地状態、もしくはダイオードを介して接地状態とする。これにより、金属製スリーブ13に紙粉やトナーを付着しにくい構成とすることで、耐久を通じて離型性を維持する加熱定着装置を提供する。
本実施例における加熱定着装置のより詳しい構成を図8の(a)および(b)に示す。図8の(a)および(b)において、加圧部材である加圧ローラ20の弾性層22は、導電性シリコンゴム、導電性シリコンスポンジ等からなる導電性付与された弾性層である。加圧ローラ芯金21あるいは、導電性弾性層22に導電性カーボンチップ等よりなるチップ電極25を介してバイアス印加手段24によってトナー像と逆極性のバイアスを印加する。
図では、トナーが現像部でマイナス帯電される画像形成装置を元に図示しており、加圧ローラ芯金部21には、プラスバイアスが印加される構成となっている。
よってトナーが現像部でプラス帯電される画像形成装置の場合、加圧ローラ芯金21には、マイナスバイアスが印加される構成となる。
また、金属製スリーブ13の端部では、接着層としてのプライマー層、フッ素樹脂層からなる離型性層がコーティングされていない金属製スリーブ素材がむき出しになっている部位13aを設ける。そして、この部位13aよりアモルファス導電繊維よりなる導電ブラシ18を介して接地状態に構成されている。
あるいは、トナー像と同電位の電荷が金属製フィルムに保持されるようにダイオード接続されていても良い。
以上の構成により、加圧ローラ20側に積極的にバイアス印加する構成とすることで、金属製スリーブ13には、紙粉、トナー等が吸着されにくくなる。
よってパルプ材を主原料とするカット紙等に形成されたトナー像を加熱定着する場合の上記加熱定着装置においては、次の効果がある。即ち、表面粗さRz=3μm以下とした金属製スリーブ13の表面の離型性層には、静電気的にも紙粉やトナーの汚染が発生しづらく、耐久によって離型性が損なわれることがないため、長寿命の加熱定着装置が提供される。
以上の効果を確認するため、前記実施例1で示した実験装置において加圧ローラ側に+500Vバイアス印加(金属製スリーブ側は接地)した本実施例と、金属製スリーブに−500V印加(加圧ローラ側は接地)した比較例との耐久による紙粉の付着を比較した。
なお、金属製スリーブ13の外面の表面粗さはRz=3μm以下では、紙粉が付着しづらいため、双方ともに若干紙粉の付着しやすいRz=3.5μmとして実験した。
カット紙を20万枚加熱定着した結果、加圧ローラ20側にバイアス印加する本実施例では、ほとんど紙粉の付着が見られなかった。これに対し、金属製スリーブ13側にバイアス印加した比較例では、紙粉の付着が15万枚程度からわかるようになり、20万枚では、トナーの付着も認められた。
以上のことから、離型性層をコーティングした金属製スリーブ13の外面の表面粗さをRz=3μm以下とする。これと共に、加圧ローラ20側から積極的にバイアス印加し、金属製スリーブ13側は接地状態、あるいはダイオード接続する本実施例の方が効果的である。即ち、金属製スリーブ13の表面への記録材Pの紙粉やトナーの付着による汚染を発生しにくくする構成となっており、より長い耐久に対して、良好な離型性を維持できる加熱定着装置を提供できる。
(その他)
1)定着装置は、オイル系定着であってもオイルレス系であっても同様に効果がある。
2)加熱用部材(ヒータ)は電磁誘導発熱性部材であってもよい。
3)本発明の定着装置には、記録材上の画像を仮定着処理する像加熱装置、つや等の画像表面性を改質する像加熱装置等も含むものである。
以上説明したように、本発明によれば、熱伝導性が良好な金属スリーブ内面から加熱用部材により接触加熱することで、画像形成装置の高速化に対応した加熱定着を高い熱効率で実施できる。よって、画像形成装置がプリント信号を受信していない状態のスタンバイ中にヒータへの通電をシャットダウンしておくことができ、省エネルギの加熱定着が実現できる。
また、室温状態から画像形成装置の電源をONした場合でも、即座にプリント信号受信可能になるため、作業者を待たせることがない。
よって画像形成装置が高速化した場合でも、クイックスタート性に優れ、ファーストプリントタイムも速い加熱定着装置を提供することが可能となる。
また、樹脂製フィルムに比べ剛性の高い金属製スリーブを使用することで、加圧力を高く設定することが可能になり、さらに画像形成装置の高速化に対応することが可能になる。
また、該金属製スリーブ内面に接触し、ニップ部を加熱するヒータの表面を耐熱性のあるポリイミド樹脂等の樹脂部材とすることにより、金属製スリーブ内面はスムーズにヒータ面を摺動することができ、高耐久の加熱定着が可能となる。
また、金属製スリーブに上記表面粗さ内の周方向のスジ加工を施すことにより金属スリーブの回転をスムーズにし、ヒータのコートを傷つけにくくする。
また、未定着トナー像を記録材上に固着させる加熱定着装置においてトナーと逆極性のバイアスを加圧部材側に印加し、金属製スリーブを接地あるいはダイオード接続することで、紙粉、トナー等が金属製スリーブに吸着されることを防止する。これにより耐久によって金属製スリーブが汚れる等の問題もなく、高耐久の加熱定着装置を提供できる。