JP5310495B2 - 新規重合体およびその製造方法、新規化合物およびその製造方法、ならびに該重合体および該化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する電解質 - Google Patents

新規重合体およびその製造方法、新規化合物およびその製造方法、ならびに該重合体および該化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する電解質 Download PDF

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Description

本発明は、電池や他の電気化学デバイス用の材料として有用な新規重合体およびその製造方法、該材料として有用な新規化合物およびその製造方法、ならびに該重合体および該化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する電解質に関する。
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDAなどの移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池には更なる高容量化が要求されている。リチウムイオンが正、負極間を移動することにより充放電を行う非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。また、最近ではその特徴を利用して、携帯電話などのモバイル用途に限らず、電動工具や電気自動車、ハイブリッド自動車に至る中〜大型電池用途についても展開が進みつつある。
ここで、上記非水電解質二次電池に用いられる非水電解液としては、通常、非プロトン性の溶媒にLiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3などのリチウム塩を溶解したものが使用されている。上記非プロトン性の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネ一ト、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、酢酸メチルなどのエステル類;ジエトキシエタンなどのエーテル類などが使用されており、特に、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのような高誘電率の環状炭酸エステル化合物が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記非水電解質二次電池の更なる高容量化を目的として、高誘電率の環状炭酸エステル化合物が求められていた。
特表2001−501355号公報
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、高い比誘電率を有する新規化合物およびその製造方法、該化合物由来の構成単位を有する新規重合体およびその製造方法、ならびに該化合物および該重合体から選ばれる少なくとも一種を含有する電解質を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、下記構造を有する化合物および重合体を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の[1]〜[9]を提供するものである。
[1]下記式(1)で表される構成単位を有することを特徴とする重合体。
Figure 0005310495
[式(1)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
[2]前記式(1)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする前記[1]に記載の重合体。
[3]下記式(2)で表される化合物を重合させる工程を含むことを特徴とする下記式(1)で表される構成単位を有する重合体の製造方法。
Figure 0005310495
Figure 0005310495
[式(1)および(2)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
[4]前記式(1)および式(2)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする前記[3]に記載の重合体の製造方法。
[5]下記式(2)で表されることを特徴とする化合物。
Figure 0005310495
[式(2)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
[6]前記式(2)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする前記[5]に記載の化合物。
[7]前記[1]〜[2]の何れかに記載の重合体および前記[5]〜[6]の何れかに記載の化合物から選ばれる少なくとも一種と、金属塩とを含有することを特徴とする電解質。
[8]下記式(3)で表される化合物を酸化させる工程を含むことを特徴とする下記式(2)で表される化合物の製造方法。
Figure 0005310495
Figure 0005310495
[式(2)および(3)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
[9]前記式(2)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする前記[8]に記載の化合物の製造方法。
本発明の新規化合物は、高い比誘電率を有する。このため、前記化合物または前記化合物由来の構成単位を有する重合体は、電気化学デバイス用の電解質に好ましく用いられ、リチウム電池やリチウムイオンキャパシタ用の電解質に特に好ましく用いられる。また、前記重合体は、電気化学デバイス用の電極用バインダーに好ましく用いられ、リチウム電池やリチウムイオンキャパシタ用の電極用バインダーに特に好ましく用いられる。
実施例1において得られた化合物のIRスペクトルを示す図である。 実施例1において得られた化合物のNMRスペクトルを示す図である。 実施例2において得られた重合体のIRスペクトルを示す図である。 実施例2において得られた重合体のNMRスペクトルを示す図である。
以下、本発明の新規重合体およびその製造方法、該重合体の原料となり得る新規化合物およびその製造方法、ならびに該重合体および該化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する電解質について、詳細に説明する。
〔新規重合体〕
本発明の新規重合体は、下記式(1)で表される構成単位を有する重合体(以下「重合体(1)」ともいう。)である。重合体(1)は、下記式(1)で表される構成単位を有するため、後述するように、電気化学デバイス用の電解質に好ましく用いられ、リチウム電池やリチウムイオンキャパシタ用の電解質に特に好ましく用いられる。
Figure 0005310495
式(1)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。
1における上記炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の2価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
上記炭素数1〜12の2価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、メチレン基;エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基などのアルキレン基;アルケニレン基;アルキニレン基などが挙げられる。これらの中では、メチレン基、アルキレン基が好ましい。
上記炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基などのシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基などのシクロアルケニレン基などが挙げられる。上記脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上の何れの炭素上でもよい。
上記炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などのアリーレン基などが挙げられる。
1における上記炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基としては、上記例示の炭素数1〜12の2価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1つを、ハロゲン原子(例:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)で置換した基が挙げられる。
1の中では、直接結合、メチレン基、アルキレン基が好ましい。
2およびR3における上記炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1〜12のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3〜12のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などの炭素数6〜12の芳香族炭化水素基;ビニル基、アリル基などの炭素数2〜12のアルケニル基などが挙げられる。
2およびR3における上記炭素数1〜12のオルガニルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
2およびR3における上記炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜12のハロゲン化シクロアルキル基、炭素数6〜12のハロゲン化芳香族炭化水素基などが挙げられる。前記ハロゲン化アルキル基としては、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタブロモエチル基などが挙げられ;前記ハロゲン化芳香族炭化水素基としては、クロロフェニル基、クロロナフチル基などが挙げられる。
2およびR3は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。
m、nは、0または1であることが好ましく、何れかが1、他方が0であることがより好ましい。
p、qは何れかが1または2、他方が0または1であることが好ましく、何れかが1、他方が0であることがより好ましい。
重合体(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常は500〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,500〜5,000である。Mwが前記範囲にあると、固体電解質としての性能や、成膜性および可撓性の観点から好ましい。
本発明の重合体(1)は、そのまま使用することも可能であるが、適宜、重合体(1)の合成反応後に末端に生成する水酸基を化学修飾して使用することも可能である。化学修飾の方法としては、アルキル化、アシル化、アミド化などが挙げられる。
本発明の重合体(1)は、溶解性に優れる。この理由は、重合体(1)に含まれるポリエーテル鎖にあると推定される。このため、本発明の重合体(1)は、電気化学デバイス用の電解質および電極用バインダーに好ましく用いられ、リチウム電池やリチウムイオンキャパシタ用の電解質および電極用バインダーに特に好ましく用いられる。
〔新規化合物〕
本発明の新規化合物は、下記式(2)で表される化合物(以下「化合物(2)」ともいう。)であり、高い比誘電率を有する。このため、本発明の化合物(2)は、電気化学デバイス用の電解質に好ましく用いられ、リチウム電池やリチウムイオンキャパシタ用の電解質に特に好ましく用いられる。また、化合物(2)は、重合体(1)の原料として好適に用いることができる。
Figure 0005310495
式(2)中、R1〜R3、m、n、pおよびqは、それぞれ上記式(1)中のR1〜R3、m、n、pおよびqと同義であり、好ましい具体例も同様である。m、nは0または1であることが好ましく、何れかが1、他方が0であることがより好ましく;p、qは何れかが1または2、他方が0または1であることが好ましく、何れかが1、他方が0であることがより好ましい。
化合物(2)の具体例としては、例えば以下に示す構造の化合物などが挙げられる。
Figure 0005310495
〔化合物(2)の製造方法〕
化合物(2)の製造方法は、下記式(3)で表される化合物(以下「化合物(3)」ともいう。)を酸化させる工程を含む。
化合物(2)の中で、pおよびqの何れかが1、他方が0である下記式(4)で表される化合物(以下「化合物(4)」ともいう。)は、化合物(3)を酸化させることで得ることができる。
Figure 0005310495
Figure 0005310495
上記式(3)および(4)中、R1〜R3、mおよびnは、それぞれ上記式(1)中のR1〜R3、mおよびnと同義であり、好ましい具体例も同様である。m、nは0または1であることが好ましく、何れかが1、他方が0であることがより好ましい。
酸化方法としては、例えば、過酸化物を化合物(3)と反応させる方法が挙げられる。前記過酸化物としては、過酸化水素、過酢酸、m−クロロ過安息香酸、過蟻酸、過安息香酸、ニトロ過安息香酸、3,5−ジニトロ過安息香酸、モノペルオキシフタル酸、モノペルオキシマレイン酸、トリフルオロ過酢酸、ジメチルジオキシラン、メチル(トリフルオロメチル)ジオキシラン、ヘキサフルオロメチルジオキシラン、オクソン、ベンゼンペルオキシセレニン酸、酸化セレン、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、酸素などが挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本反応において、適宜、触媒などを添加してもよい。化合物(3)と過酸化物とのモル比(過酸化物/化合物(3))は、通常は1〜20、好ましくは1.05〜5である。
また、本反応において、無溶媒で反応を進めることも可能であるが、クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどの有機溶媒や水などを溶媒として用いてもよい。溶媒の使用量は、化合物(3)1gあたり、通常は50ml以下であり、20ml以下が好ましく、10ml以下が特に好ましい。
酸化方法の反応条件は特に限定されないが、反応温度は、通常は0〜120℃、好ましくは10〜90℃、特に好ましくは20〜80℃であり;反応時間は、通常は2〜48時間、好ましくは4〜24時間、特に好ましくは6〜20時間である。
化合物(2)の中で、pおよびqがそれぞれ独立に0〜3の整数であり、p+qが2または3である化合物(以下「化合物(5)」ともいう。)は、例えば、イリド化合物(例:ホスホニウムイリド)を、化合物(4)と反応させることで得ることができる。
〔重合体(1)の製造方法〕
本発明の重合体(1)の製造方法は、化合物(2)を重合させる工程を含む。
重合方法としては、例えば、下記方法が挙げられる。
(i)溶液中で、化合物(2)をルイス酸、プロトン酸などと反応(いわゆるカチオン重合)させ、重合体を得る方法。溶媒としては、(無水)塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソールなどが挙げられる。ルイス酸としては、BF3・Et2O(三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体)、三フッ化ホウ素、六フッ化燐、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四臭化チタン、第二塩化スズ、第二臭化スズ、第二塩化鉄、第二臭化鉄、五フッ化ニオブ、塩化マグネシム、五塩化レニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化カドミウム、二塩化テルル、四塩化テルル、塩化ビスマス、臭化アンチモン、四臭化モリブデン、塩化ガリウム、臭化ガリウム、塩化ジルコニウム、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリiso−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリiso−ブチルアルミニウム、ジエチル亜鉛、エチルマグネシウムブロマイドなどが挙げられる。プロトン酸としては、フッ酸、塩酸、臭酸、ヨウ酸、硫酸、過塩素酸、燐酸、硝酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸が挙げられる。なお、以下では、ルイス酸およびプロトン酸を総称して単に「ルイス酸等」ともいう。
化合物(2)とルイス酸等とのモル比(ルイス酸等/化合物(2))は、通常は0.0001〜1.0、好ましくは0.005〜0.3である。溶液に対して、モノマー濃度(化合物(2)濃度)が、通常は0.1〜20mol/l、好ましくは0.5〜10mol/lとなるよう溶液を調製すればよい。また、反応条件としては、温度が通常は−100〜150℃、好ましくは−80〜50℃であり;圧力が通常は大気圧であり;反応時間が通常は0.1〜50時間、好ましくは1〜10時間である。
(ii)グローブボックス内などの低水分の環境下において、化合物(2)とルイス酸等との混合液を調製し、該混合液を適当な基板上に成膜し、加熱などの操作により、重合体を得る方法。水分量としては、通常は100ppm以下、好ましくは10ppm以下に設定すればよい。混合液の調製に使用される溶媒としては、アセトニトリル、プロピロニトリル、ブチロニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ―ブチロラクトンなどが挙げられ、ルイス酸としては、六フッ化燐酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、四塩化アルミニウム酸リチウム、六フッ化砒素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、六フッ化燐酸カリウムなどが挙げられる。プロトン酸としては、上記例示のプロトン酸と同様のものを挙げることができる。
化合物(2)とルイス酸等とのモル比(ルイス酸等/化合物(2))は、通常は0.01〜2.0、好ましくは0.1〜0.5である。溶媒は、溶媒と化合物(2)とのモル比(溶媒/化合物(2))が、通常は1〜100、好ましくは5〜50となる範囲で使用すればよい。また、混合液を基板上に成膜した後の加熱条件としては、加熱温度が通常は10〜200℃、好ましくは20〜100℃であり;加熱時間が通常は10分〜10時間、好ましくは30分〜5時間である。
(iii)化合物(2)と光酸発生剤との混合液を調製した後に、該混合液に放射線あるいは(紫外)光を照射して、重合体を得る方法。この方法では、混合液を適当な基板上に成膜した後に、形成された膜に光を照射することが好ましい。混合液の調製に使用される溶媒としては、アセトニトリル、プロピロニトリル、ブチロニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ―ブチロラクトンなどが挙げられる。光酸発生剤としては、放射線あるいは(紫外)光照射により、プロトン酸(フッ酸、塩酸、臭酸、ヨウ酸、硫酸、過塩素酸、燐酸、硝酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸;トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸)、ルイス酸(三フッ化ホウ素、六フッ化燐、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四臭化チタン、第二塩化スズ、第二臭化スズ、第二塩化鉄、第二臭化鉄、五フッ化ニオブ、塩化マグネシム、塩化レニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化カドミウム、二塩化テルル、四塩化テルル、塩化ビスマス、臭化アンチモン、四臭化モリブデン、塩化ガリウム、臭化ガリウム、塩化ジルコニウム)などを発生する光酸発生剤が挙げられる。具体的には、WO2007/119391の段落0046〜段落0058に開示された光酸発生剤が挙げられる。
化合物(2)と光酸発生剤とのモル比(光酸発生剤/化合物(2))は、通常は0.001〜1.0、好ましくは0.005〜0.1である。また、光照射量は、通常は50〜25,000mJ/cm2、好ましくは200〜10,000mJ/cm2である。
上記のようにして化合物(2)を重合させることで、重合体(1)が得られる。
〔電解質〕
本発明の電解質は、化合物(2)および重合体(1)から選ばれる少なくとも一種と、金属塩とを含有する。化合物(2)および重合体(1)は、誘電特性に優れるため、電解質の構成成分として有用である。
金属塩としては、従来の高分子固体電解質に用いられている金属塩を使用することができ、LiBr、LiI、LiSCN、LiBF4、LiAsF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiPF6、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などのリチウム塩;該リチウム塩を構成するアニオンと、リチウム以外のアルカリ金属(例:カリウム、ナトリウム)との金属塩などが挙げられる。金属塩は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の電解質において、化合物(2)および重合体(1)から選ばれる少なくとも一種と金属塩との含有割合は化合物(2)、重合体(1)および金属塩の種類などにより異なる。化合物(2)および重合体(1)の合計100重量部に対する金属塩の含有量は、通常は0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。金属塩の含有量が小さ過ぎると導電率が低下することがあり、大き過ぎると成膜性が低下することがある。
本発明の電解質は、常法により製造することができるが、好ましくは化合物(2)および重合体(1)から選ばれる少なくとも一種と金属塩とを溶媒に均一に溶解させることにより得られる。また、本発明の電解質は、重合体(1)を用いた場合には膜の形態で使用することもできる。成膜方法は常法によることができる。例えば、キャスト溶媒に重合体(1)と金属塩とを溶解させ、この溶液を平坦な基板に広げ、溶媒を蒸発させることにより複合体フィルムを得るというキャスト法が挙げられる。前記キャスト溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラハイドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されない。なお、以下の実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」の意味で用いる。
〔重合体の重量平均分子量(Mw)の測定方法〕
重量平均分子量(Mw)は、下記条件で測定した。
・測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法
・標準物質:ポリスチレン
・装置:東ソー(株)製、商品名:HLC−8020
・カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL 2本、TSK gel G2000HXLを順次連結したもの
・溶媒:テトラヒドロフラン
・サンプル濃度:0.7%
・注入量:70μL
・流速:1mL/min
〔実施例1〕4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの合成
1Lナス型フラスコに4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン50g(439mmol)を量り取り、クロロホルム500mlに溶解させた。この溶液にm−クロロ過安息香酸131.6g(526mmol、69%純度換算)を加え、54℃で16時間加熱攪拌した。反応容器を氷浴にて冷却し、固体を析出させた。この反応液を吸引ろ過し、クロロホルムに可溶なろ液成分を分取し、浴温20℃で減圧留去を行った。
減圧留去後の残渣に1,2−ジクロロエタン100mlを加え、1,2−ジクロロエタンに不溶な成分を吸引ろ過により取り除き、浴温20℃で減圧留去を行った。この操作を3回繰り返した。
ついで、この減圧留去後の残渣を酢酸エチル100mlに溶解させ、分液ロートに移し、この有機層に蒸留水100mlを加え、蒸留水に溶解する成分を分取し、この作業を計5回繰り返した。この水溶解成分について減圧留去を行い、目的物の粗生成物を得た。
この粗生成物について、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、酢酸エチル:ヘキサン(=1:1(体積割合))の流分より、目的物の4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オン47.3g(収率83%)を得た。なお、1H−NMR測定の結果でも示す通り、本方法によって得られる目的化合物は、2種のジアステレオマーの混合物であることが分かった。
この化合物の1H−NMR測定、IR測定およびMS分析を行い、目的化合物が得られていることを確認した。分析結果は以下の通りであった。得られたIRスペクトル、NMRスペクトルをそれぞれ図1、2に示す。
1H-NMR(溶媒:CDCl3) 化学シフトσ:4.80ppm(異性体A 4位3級水素、1H)、4.65ppm(異性体B 4位3級水素、1H)、4.57ppm(異性体A 5位2級水素、1H)、4.51ppm(異性体B 5位2級水素、1H)、4.41ppm(異性体A 5位2級水素、1H)、4.29ppm(異性体B 5位2級水素、1H)、3.29ppm(異性体B エポキシ末端水素、1H)、3.21ppm(異性体A エポキシ末端水素、1H)、2.97ppm(異性体B エポキシ2級水素、1H)、2.90ppm(異性体A エポキシ2級水素、2H)、2.67ppm(異性体B エポキシ2級水素、1H)。
IR(cm-1):2987、2931、1785、1637、1394、1184、1072。
〔実施例2〕BF3・Et2Oによる重合
50mLナス型フラスコに4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オン500mg(3.85mmol)を量り取り、真空脱気し、窒素置換した。これに無水塩化メチレン5mlを加え、−12℃に冷却した。この溶液に、0.1Mに調製した、BF3・Et2Oの塩化メチレン溶液0.385ml(0.0385mmol)を5分間かけて滴下した。−12℃の温度を維持したまま、反応容器内を攪拌し、2時間経過後にメタノール1mlで反応を停止した。ついで、この反応液を溶媒留去し、1H−NMR測定、IR測定およびGPC分析を行った。分析結果は以下の通りであった。得られたIRスペクトル、NMRスペクトルをそれぞれ図3、4に示す。
1H-NMR(溶媒:CDCl3) 化学シフトσ:4.95ppm〜4.85ppm(カーボネート4位3級水素、1H)、4.60ppm〜4.40ppm(カーボネート5位2級水素、2H)、4.10ppm〜3.30ppm(ポリオキシラン水素、3H)。
IR(cm-1):2987、2931、1785、1184、1081。
GPC:ポリスチレン換算 Mw=570。
以上の結果より、4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オンは環状カーボネート構造を維持したままオキシラン環が反応し、重合体が生成していることが分かった。
〔実施例3〕LiPF6による重合
窒素雰囲気下のグローブボックス内(水分10ppm、酸素濃度5ppm)にて、20mlサンプル管にLiPF6 150mgを測り取り、アセトニトリルに溶解させ、0.1M LiPF6溶液10mlを調製した。別途、4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オン50mg(0.385mmol)をサンプル管に量り取り、これに先に調製した0.1M LiPF6溶液0.77ml(0.077mmol)を加え、混合液を調製した。これを石英基板上に成膜し、80℃で30分間加熱した。生成した基板上の重合体について、1H−NMR測定、IR測定およびGPC分析を行った。分析結果は以下の通りであった。
1H-NMR(溶媒:CDCl3) 化学シフトσ:4.95ppm〜4.85ppm(カーボネート4位3級水素、1H)、4.60ppm〜4.40ppm(カーボネート5位2級水素、2H)、4.10ppm〜3.30ppm(ポリオキシラン水素、3H)。
IR(cm-1):2987、2931、1785、1184、1081。
GPC:ポリスチレン換算 Mw=2100。
以上の結果より、4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オンは環状カーボネート構造を維持したままオキシラン環が反応し、重合体が生成していることが分かった。
〔実施例4〕光酸発生剤を用いた光重合
4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オン197mg(1.51mmol)をサンプル管に量り取り、これに光酸発生剤CPI−100P 4.1mg(0.0151mmol,50%プロピレンカーボネート溶液、サンアプロ(株)製)を加え、混合液を作成した。これを石英基板上に成膜し、10cm離れた距離から水銀キセノン光を15分間照射した。照射量は3000mJ/cm2であった。生成した基板上の重合体について、1H−NMR測定、IR測定およびGPC分析を行った。分析結果は以下の通りであった。
1H-NMR(溶媒:CDCl3) 化学シフトσ:4.95ppm〜4.85ppm(カーボネート4位3級水素、1H)、4.60ppm〜4.40ppm(カーボネート5位2級水素、2H)、4.10ppm〜3.30ppm(ポリオキシラン水素、3H)。
IR(cm-1):2987、2931、1785、1184、1081。
GPC:ポリスチレン換算 Mw=1500。
以上の結果より、4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オンは環状カーボネート構造を維持したままオキシラン環が反応し、重合体が生成していることが分かった。
〔誘電特性の評価〕
実施例1で合成した4−オキシラニル−1,3−ジオキソラン−2−オンについて、以下に示す方法で比誘電率測定を行った。
測定装置:Precision LCR meter HP4284A(アジレント・テクノロジー(株)製)
電極:液体用電極 LE-21形 安藤電気製
測定周波数:110、1K,10K,100K,1MHz
電圧:1V
測定環境:温度23℃、湿度50%RH
Figure 0005310495
上記誘電特性の結果から、実施例1で得られた化合物は、比誘電率に優れることがわかる(参考値:プロピレンカーボネートの比誘電率64.4)。本結果から、実施例1の化合物およびそれを重合して得られた実施例2〜4の重合体は、電解質に有用であることが推察される。

Claims (9)

  1. 下記式(1)で表される構成単位を有することを特徴とする重合体。
    Figure 0005310495
    [式(1)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
  2. 前記式(1)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
  3. 下記式(2)で表される化合物を重合させる工程を含むことを特徴とする下記式(1)で表される構成単位を有する重合体の製造方法。
    Figure 0005310495
    Figure 0005310495
    [式(1)および(2)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
  4. 前記式(1)および式(2)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする請求項3に記載の重合体の製造方法。
  5. 下記式(2)で表されることを特徴とする化合物。
    Figure 0005310495
    [式(2)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
  6. 前記式(2)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする請求項5に記載の化合物。
  7. 請求項1〜2の何れかに記載の重合体および請求項5〜6の何れかに記載の化合物から選ばれる少なくとも一種と、金属塩とを含有することを特徴とする電解質。
  8. 下記式(3)で表される化合物を酸化させる工程を含むことを特徴とする下記式(2)で表される化合物の製造方法。
    Figure 0005310495
    Figure 0005310495
    [式(2)および(3)中、R1は直接結合、炭素数1〜12の2価の炭化水素基または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、炭素数1〜12のオルガニルオキシ基または炭素数1〜12の1価のハロゲン化炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。ただし、m+nは1または2であり、p+qは1〜3の整数である。]
  9. 前記式(2)中、p、qは何れかが1、他方が0であることを特徴とする請求項8に記載の化合物の製造方法。
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