JP4164131B2 - ポリエーテル共重合体、高分子固体電解質および電池 - Google Patents
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Description
本発明はポリエーテル共重合体、高分子固体電解質および電池に関し、特に、電池、キャパシター、センサー等の電気化学デバイス用材料として好適な高分子固体電解質に関する。
関連技術
従来、電池、キャパシター、センサーなどの電気化学デバイスを構成する電解質は、イオン伝導性の点から溶液またはペースト状のものが用いられているが、液漏れによる機器の損傷の恐れがあること、また電解液を含浸させるセパレーターを必要とするので、デバイスの超小型化、薄型化に限界があることなどの問題点が指摘されている。これに対し無機結晶性物質、無機ガラス、有機高分子系物質などの固体電解質が提案されている。有機高分子系物質は一般に加工性、成形性に優れ、得られる固体電解質が柔軟性、曲げ加工性を有し、応用されるデバイスの設計の自由度が高くなることなどの点からその進展が期待されている。しかしながら、イオン伝導性の面では他の材質より劣っているのが現状である。
エチレンオキシドの単独重合体とアルカリ金属イオン系におけるイオン伝導性の発見より、高分子固体電解質の研究は活発に行われるようになった。その結果、ポリマーマトリックスとしては、その運動性の高さ及び金属カチオンの溶解性の点でポリエチレンオキシドなどのポリエーテルが最も有望と考えられている。イオンの移動はポリマーの結晶部ではなくアモルファス部分で起こることが予測されている。それ以来、ポリエチレンオキシドの結晶性を低下させるために、種々のエポキシドとの共重合が行われてきている。特公昭62−249361号公報には、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体からなる固体電解質、米国特許USP 4,818,644号公報にはエチレンオキシドとメチルグリシジルエーテルとの共重合体からなる固体電解質が示されている。しかしながら、いずれもイオン伝導度は必ずしも満足のいくものではなかった。
また、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合体と低分子量のポリエチレングリコール誘導体の混合物に特定のアルカリ金属塩を含有させて高分子固体電解質に応用する試みが本出願人を含む特開平2−235957号公報に提案されているが、実用的に充分な伝導度の値は得られていない。
また、特開平6−223842号公報および特開平8−295713号公報には側鎖にカーボネート基を有する共重合体の固体電解質が記載されている。しかし、それらの共重合体においては主鎖がポリエーテル構造ではなく、運動性が劣り、伝導度の低いポリオレフィン構造である。
発明の要旨
本発明の目的は、機械的特性およびイオン伝導性が優れた固体電解質を提供することにある。
本発明は、
(1)(A)式(I):
[式中、R1は2価の有機基を示す。]
で示される単量体から誘導される繰り返し単位1〜99モル%、
(B)式(II):
で示される単量体から誘導される繰り返し単位99〜1モル%、
(C)1つのエポキシ基および少なくとも1つの反応性官能基を有する単量体から誘導される繰り返し単位0〜15モル%
を有してなり、重量平均分子量が104〜107である架橋されていてよいポリエーテル共重合体を提供する。
本発明は、(1)上記ポリエーテル共重合体(2)電解質塩化合物、ならびに(3)要すれば存在する、非プロトン性有機溶媒、および数平均分子量が200〜5000の直鎖型または分岐型のポリアルキレングリコールの誘導体もしくは金属塩又は該誘導体の金属塩からなる群から選択された可塑剤からなる高分子固体電解質を提供する。
本発明は、前記高分子固体電解質を用いた電池をも提供する。
ポリエーテル重合体の架橋体は高温での形状安定性が必要な時に用いられる。
高分子固体電解質に可塑剤を混入すると、ポリマーの結晶化が抑制されガラス転移温度が低下し、低温でも無定形相が多く形成されるためにイオン伝導度が良くなる。本発明の高分子固体電解質を用いると、内部抵抗の小さい高性能の電池が得られることも見いだした。本発明の高分子固体電解質は、ゲル状であってよい。ここで、ゲルとは溶媒によって膨潤したポリマーである。
発明の詳細な説明
繰り返し単位(C)は、式(III)の単量体から誘導されるものであってよい。
[式中、R2は反応性官能基含有基である。]
本発明のポリエーテル重合体は、(A)式(I)の単量体から誘導された繰り返し単位:
[式中、R1は2価の有機基を示す。]
(B)式(II)の単量体から誘導された繰り返し単位:
を有する。
本発明において、ポリエーテル共重合体の式(I)のR1基の2価の有機基が、好ましくは
-CH2-O-(CHA1-CHA2-O)n-CH2-、
-CH2-O-(CH2)n-、
-CH2-O-(O)C-(CH2)n-、
-(CH2)m-CO2-(CH2)n-、または
-(CH2)m-O-CO2-(CH2)n-
[式中、A1およびA2は水素またはメチル基であり、nは0〜12の数、mは0〜6の数である。]
であってよい。
さらに好ましくはR1基が、
-CH2-O-(CHA1-CHA2-O)n-CH2-、
-CH2-O-(CH2)n-、または
-CH2-O-(O=)C-(CH2)n-、
[式中、A1およびA2は水素またはメチル基であり、nは0〜6の数である。]
であってよい。
ポリエーテル共重合体は、要すれば(C)1つのエポキシ基および少なくとも1つの反応性官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位を有する。繰り返し単位(C)を有するポリエーテル共重合体は、反応性官能基の反応性を利用して架橋体とすることができる。
本発明において使用する共重合体は、架橋されていなくても、架橋されていてもよい。繰り返し単位(I’)および繰り返し単位(II’)を有する二元共重合体を架橋するための架橋剤としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物を例示することができる。
式(III)の単量体から誘導された繰り返し単位(C)は、式(III’):
[式中、R2は反応性官能基含有基である。]
で示される。
構成単位(C)における反応性官能基が、(a)反応性ケイ素基、(b)エポキシ基、(c)エチレン性不飽和基または(d)ハロゲン原子であることが好ましい。
本発明の架橋が可能な側鎖を有していてよいポリエーテル共重合体の重合法は、エチレンオキサイド部分の開環反応により共重合体を得る重合法であり、本出願人の特開昭63−154736号公報および特開昭62−169823号公報に記載の方法と同様にして行われる。
重合反応は次のようにして行える。開環重合用触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系などを用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜80℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。なかでも、重合度、あるいは作られる共重合体の性質などの点から、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系が特に好ましい。重合反応において反応性官能基は反応せず、反応性官能基を有する共重合体が得られる。両末端にのみエポキシ基を有するオキシラン化合物を用いる場合には、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒を用いると置換基即ちメチル基を含まないエポキシ基のみが重合反応に使われ、メチル基を有するエポキシ基は全く反応せずにポリマー中に残る。
本発明のポリエーテル共重合体においては、繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)および繰り返し単位(C)のモル比が、(A)1〜99モル%、例えば3〜99モル%、特に10〜95モル%、特別には10〜80モル%、(B)99〜1モル%、例えば95〜1モル%、特に90〜5モル%、特別には80〜5モル%、及び(C)0〜15モル%、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、特に0.001〜5モル%である。繰り返し単位(B)が99モル%を越えるとガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招き、結果的に固体電解質のイオン伝導性を著しく悪化させることとなる。一般にポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることによりイオン伝導性が向上することは知られているが、本発明のポリエーテル共重合体の場合はイオン伝導性の向上効果は格段に大きいことがわかった。
ポリエーテル共重合体の分子量は、良好な加工性、成形性、機械的強度、柔軟性を得るために、重量平均分子量104〜107の範囲内、好ましくは104〜5×106の範囲内のものが適する。更に好ましくは5×104〜5×106、特に105〜5×106の範囲内のものが良い。
本発明においてはポリエーテル共重合体のガラス転移温度は−40℃以下、融解熱量は90J/g以下のものが使用に適する。ガラス転移温度及び融解熱量が上記値を越えるものはイオン伝導性の低下を招くことがある。ポリエーテル共重合体のガラス転移温度及び融解熱量は示差走査熱量計(DSC)により測定したものである。
本発明のポリエーテル共重合体はブロック共重合体、ランダム共重合体何れの共重合タイプでも良い。ランダム共重合体の方がよりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させる効果が大きいので好ましい。本発明のポリエーテル共重合体は、カーボネートエステル基を有する側鎖、及び要すれば架橋が可能な反応性官能基を含む側鎖を有するポリエーテル共重合体である。本発明のポリエーテル共重合体は、2種以上のモノマーから形成される共重合体である。
繰り返し単位(C)を形成する反応性ケイ素基を有する単量体は、式(III−a):
[式中、R3は反応性ケイ素含有基である。]
で示されることが好ましい。
(III−a)で表される反応性ケイ素基含有モノマーは、好ましくは(III−a−1)および(III−a−2)で示される化合物である。
式(III−a−1)および(III−a−2)式においてR4、R5、R6は各々同一であっても、異なっていてもよいが、少なくとも一個がアルコキシ基であり、残りがアルキル基である。kは1〜6を表す。
(III−a−1)式で表されるモノマーの例には、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルメチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
(III−a−2)式で表されるモノマーの例には、3-(1,2-エポキシ)プロピルトリメトキシシラン、4-(1,2-エポキシ)ブチルトリメトキシシラン、5-(1,2-エポキシ)ペンチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
(III−a−1)および(III−a−2)以外には、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらの中で、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランおよび4-(1,2-エポキシ)ブチルトリメトキシシランが特に好ましい。
繰り返し単位(C)を形成する2つのエポキシ基を有する単量体は、式(III−b):
[式中、R7は、2価の有機基である。]
で示されることが好ましい。2つのエポキシ基を有する単量体は、両末端にエポキシ基を有することが好ましい。R7は、水素、炭素、酸素から選ばれた元素よりなる有機基であることが好ましい。
式(III−b)におけるR7基が、
−CH2−O−(CHA1−CHA2−O)m−CH2−、
−(CH2)m−、
−CH2O−Ph−OCH2−
[式中、A1およびA2は水素またはメチル基であり、Phはフェニレン基であり、mは0〜12の数である。]であることが好ましい。
2つのエポキシ基を有する単量体は、次式(III−b−1)、(III−b−2)および(III−b−3)で示される化合物であることが好ましい。
上記(III−b−1)、(III−b−2)および(III−b−3)において、A1、A2は水素原子又はメチル基であり、mは0〜12の数を表す。
(III−b−1)で表されるモノマーには、2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテル、エチレングリコール-2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテル、及びジエチレングリコール-2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテルなどが挙げられる。
(III−b−2)式で表されるモノマーには、2-メチル-1,2,3,4-ジエポキシブタン、2-メチル-1,2,4,5-ジエポキシペンタン、及び2-メチル-1,2,5,6-ジエポキシヘキサンなどが挙げられる。
(III−b−3)式で表されるモノマーには、ヒドロキノン-2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテル、及びカテコール-2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテルなどが挙げられる。
その中でも、特に2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテル、及びエチレングリコール-2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテルが好ましい。
繰り返し単位(C)を形成するエチレン性不飽和基を有する単量体は、式(III−c):
[式中、R8はエチレン性不飽和基を有する基である。]
で示されることが好ましい。
エチレン性不飽和基含有モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5-シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル-4-ヘキセノエートが用いられる。好ましくは、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが挙げられる。
ハロゲン原子を有する単量体(C)は、式(III−d):
[式中、R9は少なくとも1つのハロゲン原子を有する基である。]
で示されることが好ましい。R9は、例えば、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、例えばC1〜6アルキル基であってよい。
ハロゲン原子を有する単量体の例は、
[式中、Xはハロゲン原子、特に臭素(Br)またはヨウ素(I)である。]
である。ハロゲン原子を有する単量体の例は、エピブロモヒドリンおよびエピヨードヒドリンである。
反応性官能基が反応性ケイ素基である共重合体の架橋方法としては、反応性ケイ素基と水との反応によって架橋できる。反応性を高めるには、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等のアルミニウム等のアルミニウム化合物などの有機金属化合物、あるいは、ブチルアミン、オクチルアミン等のアミン系化合物などを触媒として用いても良い。
反応性官能基がエポキシ基である共重合体の架橋方法においてはポリアミン類、酸無水物類などが用いられる。
ポリアミン類としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ポリアミン等が挙げられる。ポリアミンの添加量はポリアミンの種類により異なるが、通常、可塑剤を除いた組成物全体(即ち、固体電解質から可塑剤を除いた組成物)の0.1〜10重量%の範囲である。
酸無水物類としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラメチレン無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。酸無水物類の添加量は酸無水物の種類により異なるが、通常、可塑剤を除いた組成物全体の0.1〜10重量%の範囲である。これらの架橋には促進剤を用いても良く、ポリアミン類の架橋反応にはフェノール、クレゾール、レゾルシンなどがあり、酸無水物類の架橋反応にはベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノエチル)フェノール、ジメチルアニリンなどがある。促進剤の添加量は促進剤により異なるが、通常、架橋剤の0.1〜10重量%の範囲である。
反応性官能基がエチレン性不飽和基である共重合体の架橋方法としては、有機過酸化物、アゾ化合物等から選ばれるラジカル開始剤、紫外線、電子線等の活性エネルギー線が用いられる。更には、水素化ケイ素を有する架橋剤を用いる事もできる。
有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。有機過酸化物の添加量は有機過酸化物の種類により異なるが、通常、可塑剤を除いた組成物全体の0.1〜10重量%の範囲内である。
アゾ化合物としてはアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。アゾ化合物の添加量はアゾ化合物の種類により異なるが、通常、可塑剤を除いた組成物全体の0.1〜10重量%の範囲内である。
紫外線等の活性エネルギー線照射による架橋においては、(III−c)式で表されるモノマー成分のうちアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、ケイ皮酸グリシジルエステルが特に好ましい。また、増感助剤としてジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、フェニルケトン等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等のチオキサントン類、3-スルホニルアジド安息香酸、4-スルホニルアジド安息香酸等のアジド類等を任意に用いることができる。
架橋助剤としてエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタリクレート、アリルアクリレート、ジアリルマレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、無水マレイン酸等を任意に用いることができる。
エチレン性不飽和基を架橋する水素化ケイ素を有する化合物としては、少なくとも2個の水素化ケイ素を有する化合物が用いられる。特にポリシロキサン化合物またはポリシラン化合物が良い。
ポリシロキサン化合物としては(a−1)式もしくは(a−2)式で表される線状ポリシロキサン化合物、又は(a−3)式で表される環状ポリシロキサン化合物がある。
但し、(a−1)式〜(a−3)式に於いてR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基を表し、n≧2、m≧0、2≦m+n≦300を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基などの低級アルキル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などの低級アルコキシ基が好ましい。
ポリシラン化合物としては(b−1)式で表される線状ポリシラン化合物が用いられる。
但し、(b−1)式に於いてR19、R20、R21、R22及びR23は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基を表し、n≧2、m≧0、2≦m+n≦100を表す。
ヒドロシリル化反応の触媒の例としては、パラジウム、白金などの遷移金属あるいはそれらの化合物、錯体が挙げられる。また、過酸化物、アミン、ホスフィンも用いられる。最も一般的な触媒はジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、塩化白金酸が挙げられる。
ハロゲン原子(例えば、臭素またはヨウ素原子)含有の共重合体の架橋方法としては、ポリアミン類、メルカプトイミダゾリン類、メルカプトピリミジン類、チオウレア類、ポリメルカプタン類等の架橋剤が用いられる。ポリアミン類としては、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。メルカプトイミダゾリン類としては2-メルカプトイミダゾリン、4-メチル-2-メルカプトイミダゾリン等が挙げられる。メルカプトピリミジン類としては2-メルカプトピリミジン、4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジン等が挙げられる。チオウレア類としてはエチレンチオウレア、ジブチルチオウレアなどが挙げられる。ポリメルカプタン類としては2-ジブチルアミノ-4,6-ジメチルカプト-s-トリアジン、2-フェニルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン等が挙げられる。架橋剤の添加量は架橋剤の種類により異なるが、通常、可塑剤を除いた組成物全体の0.1〜30重量%の範囲である。
また、高分子固体電解質に更に受酸剤となる金属化合物を添加することは、ハロゲン含有ポリマーの熱安定性の見地から有効である。このような受酸剤となる金属酸化物としては、周期律表第II族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期律表VIa族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等がある。具体的な例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、鉛丹、ステアリン酸錫等を挙げることができる。上記酸受酸剤となる金属化合物の配合量は種類により異なるが、通常、可塑剤を除いた組成物全体の0.1〜30重量%の範囲である。
本発明において用いられる電解質塩化合物は、ポリエーテル共重合体又は該共重合体の架橋体、および可塑剤からなる混合物に可溶であることが好ましい。本発明においては、以下に挙げる塩化合物が好ましく用いられる。
即ち、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンから選ばれた陽イオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6 -、PF6 -、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオン、X1SO3 -、[(X1SO2)(X2SO2)N]-、[(X1SO2)(X2SO2)(X3SO2)C]-、及び[(X1SO2)(X2SO2)YC]-から選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。但し、X1、X2、X3及びYは電子吸引性基である。好ましくはX1、X2、及びX3は各々独立して炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基又は炭素数6〜18のパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基又はシアノ基である。X1、X2及びX3は各々同一であっても、異なっていてもよい。金属陽イオンとしては遷移金属の陽イオンを用いる事ができる。好ましくはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンが用いられる。又、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属から選ばれた金属の陽イオンを用いても好ましい結果が得られる。電解質塩化合物として前述の化合物を2種類以上併用することは自由である。
本発明において、電解質塩化合物の使用量は、電解質塩化合物のモル数/オキシエチレン単位の総モル数(ポリエーテル共重合体の主鎖及び側鎖を含めたオキシエチレン単位の総モル数)の値が0.0001〜5、好ましくは0.001〜0.5の範囲がよい。この値が5を越えると加工性、成形性及び得られた固体電解質の機械的強度や柔軟性が低下し、さらにイオン伝導性も低下する。
可塑剤は、非プロトン性有機溶媒、または数平均分子量が200〜5000の直鎖型または分岐型のポリアルキレングリコールの誘導体もしくは金属塩又は該誘導体の金属塩である。
非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性のエーテル類及びエステル類が好ましい。具体的には、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキプロパン、3-メチル-2-オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4,4-メチル-1,3-ジオキソラン、tert-ブチルエーテル、iso-ブチルエーテル、1,2-エトキシメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングライム、エチレンジグライム、メチルテトラグライム、メチルトリグライム、メチルジグライム、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が挙げられ、これらの2種以上の混合物を用いても良い。特に好ましいのはプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、3-メチル-2-オキサゾリンである。又トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルも特に好ましい有機溶媒である。
直鎖型または分岐型のポリアルキレングリコールの誘導体あるいは金属塩、又は該誘導体の金属塩としては、数平均分子量が200〜5000のポリアルキレングリコールから得られるものである。ポリアルキレングリコールとしてはポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等が挙げられ、その誘導体としては炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のアルケニル基を有するエステル誘導体又はエーテル誘導体がある。
誘導体の内、エーテル誘導体としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジアリルエーテル等のジエーテル類、エステル誘導体としてはポリアルキレングリコールジメタクリル酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル)、ポリアルキレングリコールジ酢酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールジ酢酸エステル)、ポリアルキレングリコールジアクリル酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステル)等のジエステル類を挙げることができる。
金属塩としてはポリアルキレングリコールのナトリウム、リチウム、ジアルキルアルミニウム塩等を挙げることができる。
誘導体の金属塩としては、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノヘキシルエーテル、モノ-2-エチル-ヘキシルエーテル、モノアリルエーテル等のモノエーテル類、及びモノ酢酸エステル、モノアクリル酸エステル、モノメタクリル酸エステル等のモノエステル類のナトリウム、リチウム、ジアルキルアルミニウム塩(例えば、ジオクチルアルミニウム塩)等がある。ポリアルキレングリコール誘導体の金属塩の例は、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルのジオクチルアルミニウム塩、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルのジオクチルアルミニウム塩、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルのジオクチルアルミニウム塩である。
使用するポリアルキレングリコールの数平均分子量の更に好ましい範囲は200〜2000である。
可塑剤の配合割合は任意であるが、ポリエーテル共重合体100重量部に対して、0〜2000重量部、好ましくは1〜2000重量部、例えば10〜1000重量部、特に10〜500重量部である。
高分子固体電解質を使用する際に難燃性が必要な場合には、難燃剤を使用できる。難燃剤として、臭素化エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA、塩素化パラフィン等のハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル、ポリリン酸塩、及びホウ酸亜鉛から選択して有効量を添加する。
本発明の高分子固体電解質の製造方法は特に制約はないが、通常夫々の成分を機械的に混合すればよい。架橋を必要とする多元共重合体の場合には、それぞれの成分を機械的に混合後、架橋させるなどの方法によって製造されるが、架橋後に可塑剤に長時間浸漬して含浸させても良い。機械的に混合する手段としては、各種ニーダー類、オープンロール、押出機などを任意に使用できる。
反応性官能基が反応性ケイ素基である場合に、架橋反応に用いられる水の量は、雰囲気中の湿気によっても容易に起こるので特に制限されない。短時間冷水又は温水浴に通すか、又はスチーム雰囲気にさらす事で架橋する事もできる。
反応性官能基がエポキシ基含有基である共重合体の場合に、ポリアミン又は酸無水物を利用した場合、10〜200℃の温度の条件下10分〜20時間で架橋反応が終了する。
反応性官能基がエチレン性不飽和基である場合に、ラジカル開始剤を利用すると、10℃〜200℃の温度条件下1分〜20時間で架橋反応が終了する。また、紫外線等のエネルギー線を利用する場合、一般には増感剤が用いられる。通常、10℃〜150℃の温度条件下0.1秒〜1時間で架橋反応が終了する。水素化ケイ素を有する架橋剤では10℃〜180℃の温度条件下10分〜10時間で架橋反応が終了する。
電解質塩化合物および可塑剤をポリエーテル共重合体に混合する方法は特に制約されないが、電解質塩化合物および可塑剤を含む有機溶媒にポリエーテル共重合体を長時間浸漬して含浸させる方法、電解質塩化合物および可塑剤をポリエーテル共重合体へ機械的に混合させる方法、ポリエーテル共重合体および電解質塩化合物を可塑剤に溶かして混合させる方法あるいはポリエーテル共重合体を一度他の有機溶媒に溶かした後、可塑剤を混合させる方法などがある。有機溶媒を使用して製造する場合は、各種の極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が単独、或いは混合して用いられる。
本発明で示された高分子固体電解質は機械的強度と柔軟性に優れており、その性質を利用して大面積薄膜形状の固体電解質が容易に得られる。例えば本発明の高分子電解質を用いた電池の作製が可能である。この場合、正極材料としてはリチウム-マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム、五酸化バナジウム、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリピレン、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリピロール、ポリフラン、ポリアズレン等がある。負極材料としてはリチウムがグラファイトあるいはカーボンの層間に吸蔵された層間化合物、リチウム金属、リチウム-鉛合金等がある。また高い電気伝導性を利用してアルカリ金属イオン、Cuイオン、Caイオン、及びMgイオン等の陽イオンのイオン電極の隔膜としての利用も考えられる。本発明の高分子固体電解質は特に電池、キャパシター、センサー等の電気化学デバイス用材料として好適である。
発明の好ましい態様
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
以下の実施例において、式(1)のモノマー(グリシジルエーテル化合物)は次のとおりである。
本実施例で使用したモノマーは2段階で合成した。
合成例1(モノマー合成)
(ステップ1)
500mlの反応容器にデイーンスターク、ジムロート、マグネチックスターラーバーを備え付け、その中に1-アリルグリセリン133g(1モル)、炭酸ジメチル300ml、ペレット状の水酸化ナトリウム3g(0.075モル)を入れた。混合物を60℃に加熱し、30分攪拌した。その後、90℃に昇温し、炭酸ジメチルとメタノールの混合物を反応系外へ除去し、蒸留物が留出しなくなるまで続けた。反応混合物を冷却し、その中にテトラヒドロフランを加え、沈殿物をろ過し、ろ液を減圧濃縮することにより4−アリルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン150.3g(収率95%)を得た。
(ステップ2)
1Lの反応器にステップ1で得た4−アリルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン78.3g(0.5モル)とジクロロメタン500mlを入れ、0℃に冷却した。その中にメタクロロ過安息香酸183g(0.75モル)を少しずつ加えた。加え終わった後、室温まで反応温度を上昇させて一晩攪拌した。反応終了後、塩をろ過し、ろ液を0℃に冷却して、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液300mlを少しずつ加え、30分攪拌した。水槽を分離し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで通した後、蒸留することにより、炭酸プロピレングリシジルエーテル51.7g(収率60%)bp.154/0.4mmHgを得た。
得られた生成物は1H NMRによりその構造を確認した。
1H NMR測定条件:溶媒:C6D6、内部基準:TMS、測定温度:30℃
1H NMR測定結果:下記の構造に対応する以下のピークが観察された。
δ:1.9〜2.1(2H,m,a)、δ:2.6(1H,m,b)、δ:3.5(1H,m,c)、δ:2.7〜3.8(6H,m,d)。
合成例2(触媒の製造)
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ残留物として固体状の縮合物質を得た。以後、この有機錫/リン酸エステル縮合物質を重合用触媒として使用した。
ポリエーテル共重合体のモノマー換算組成は1H NMRスペクトルにより求めた。ポリエーテル共重合体の分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定を行い、標準ポリスチレン換算により分子量を算出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定は株式会社島津製作所の測定装置RID−6A、昭和電工(株)製カラムのショウデックスKD−807、KD−806、KD−806M及びKD−803、及び溶媒DMFを用いて60℃で行った。ガラス転移温度、融解熱量は理学電気(株)製示差走査熱量計DSC8230Bを用い、窒素雰囲気中、温度範囲−100〜80℃、昇温速度10℃/minで測定した。導電率σの測定は20℃、1mmHgで72時間真空乾燥したフィルムを白金電極ではさみ、電圧0.5V、周波数範囲5Hz〜1MHzの交流法を用い、複素インピーダンス法により算出した。
実施例1
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として合成例2(触媒の製造例)で得た有機錫/リン酸エステル縮合物質2gと水分10ppm以下に調整した炭酸プロピレングリシジルエーテル75g及び溶媒としてn−ヘキサン1000gを仕込み、エチレンオキシド175gは炭酸プロピレングリシジルエーテルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー230gを得た。この共重合体のガラス転移温度は−45℃、重量平均分子量は110万、融解熱量は41J/gであった。
1H NMRスペクトルによるこの重合体のモノマー換算組成分析結果はエチレンオキシド90モル%、炭酸プロピレングリシジルエーテル10モル%であった。
実施例2
実施例1で得られた共重合体1gをテトラヒドロフラン20mlに溶解し、モル比(電解質塩化合物のモル数/ポリエーテル共重合体のエーテルの酸素原子の総モル数)が0.08となるように過塩素酸リチウムのテトラヒドロフラン溶液を混合した。この混合液をポリテトラフルオロエチレン製モールド上にキャストして充分乾燥し、フィルムを得た。フィルムの導電率σは上記の交流法で測定した。40℃における固体電解質の導電率は1.5×10-4S/cmであった。
実施例3
実施例1で得られた共重合体1gをアセトニトリル20mlに溶解し、モル比(リチウムビストリフルオロメタンスルフォニルイミド(以下LiTFSIとする)のモル数/ポリエーテル共重合体のエーテルの酸素原子の総モル数)が0.05となるようにLiTFSIのアセトニトリル溶液を混合した。この混合液をポリテトラフルオロエチレン製モールド上にキャストして充分乾燥し、フィルムを得た。実施例2と同様の方法でフィルムの特性を測定した。40℃における固体電解質の導電率は5.2×10-4S/cmであった。
実施例4
電解質として実施例2で得られた高分子固体電解質、負極としてリチウム金属箔、及び正極としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いて二次電池を構成した。高分子固体電解質のサイズは10mm×10mm×0.2mmであった。リチウム箔のサイズは10mm10mm×0.1mmであった。コバルト酸リチウムは所定量の炭酸リチウム及び炭酸コバルト粉体を混合した後900℃で5時間焼成する事により調製した。次にこれを粉砕し、得られたコバルト酸リチウム85重量部に対してアセチレンブラック12重量部と実施例2で得られた高分子固体電解質3重量部を加えロールで混合した後、300kgW/cm2の圧力で10mm×10mm×2mmにプレス成形して電池の正極とした。
実施例2で得られた高分子固体電解質をリチウム金属箔とコバルト酸リチウム板ではさみ、界面が密着するように10kgW/cm2の圧力をかけながら25℃で電池の充放電特性を調べた。初期の端子電圧3.8Vでの放電電流は0.1mA/cm2であり、0.1mA/cm2で充電可能であった。本実施例の電池は容易に薄いものに作製できるので、軽量でしかも大容量の電池になる。
実施例5
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として合成例2(触媒の製造例)で得た有機錫/リン酸エステル縮合物質2gと水分10ppm以下に調整した炭酸プロピレングリシジルエーテル125g、アリルグリシジルエーテル8g及び溶媒としてn−ヘキサン1,000gを仕込み、エチレンオキシド125gは炭酸プロピレングリシジルエーテルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥して3元ポリマー235gを得た。この重合体のガラス転移温度は−41℃、ゲルパーミーエションクロマトグラフィによる重量平均分子量は85万、融解熱量は25J/gであった。1H NMRスペクトルによるこの重合体のモノマー換算組成分析結果はエチレンオキシド81モル%、炭酸プロピレングリシジルエーテル17モル%、アリルグリシジルエーテル2モル%であった。
実施例6
実施例5で得られた三元共重合体1g、及び架橋剤ジクミルパーオキサイド0.015gをアセトニトリル20mlに溶解し、モル比(可溶性電解質塩化合物のモル数)/(ポリエーテル共重合体のエーテルの酸素原子の総モル数)が0.05となるようにLiTFSIのテトラヒドロフラン溶液5mlを混合した。この混合液をポリテトラフルオロエチレン製モールド上にキャストして乾燥した後、160℃、20kg/cm2で10分間加熱、加圧し、架橋フィルムを得た。実施例2と同様の方法で架橋フィルムの特性を測定した。40℃における固体電解質の導電率は3.6×10-4S/cmであった。
実施例7
電解質として実施例6で得られた高分子固体電解質、負極としてリチウム金属箔、及び正極としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いて二次電池を構成した。高分子固体電解質のサイズは10mm×10mm×0.2mmであった。リチウム箔のサイズは10mm×10mm×0.1mmであった。コバルト酸リチウムは所定量の炭酸リチウム及び炭酸コバルト粉体を混合した後900℃で5時間焼成する事により調製した。次にこれを粉砕し、得られたコバルト酸リチウム85重量部に対してアセチレンブラック12重量部と実施例6で得られた溶媒を除いた架橋する前の高分子固体電解質3重量部を加えロールで混合した後、300kgW/cm2の圧力で10mm×10mm×2mmにプレス成形して電池の正極とした。
実施例6で得られた溶媒を除いた架橋する前の高分子固体電解質をリチウム金属箔とコバルト酸リチウム板ではさみ、界面が密着するように10kgW/cm2の圧力をかけながら25℃で電池の充放電特性を調べた。初期の端子電圧3.8Vでの放電電流は0.1mA/cm2であり、0.1mA/cm2で充電可能であった。本実施例の電池は容易に薄いものに作製できるので、軽量でしかも大容量の電池になる。
実施例8
実施例5で得られた三元共重合体1g、及び架橋剤ジクミルパーオキサイド0.015gと、モル比(可溶性電解質塩化合物のモル数)/(ポリエーテル共重合体のエーテルの酸素原子の総モル数)が0.05となるようにLiTFSIのプロピレンカーボネート溶液0.5mlを混合した。この混合液をポリテトラフルオロエチレン製モールド上にキャストした後、160℃、20kgW/cm2で10分間加熱、加圧し、ゲル状の架橋フィルムを得た。実施例2と同様の方法でゲル状架橋フィルムの特性を測定した。40℃における固体電解質の導電率は1.1×10-3S/cmであった。
実施例9
実施例5で得られた三元共重合体1g、及び架橋剤ジクミルパーオキサイド0.015gと、モル比(可溶性電解質塩化合物のモル数)/(ポリエーテル共重合体のエーテルの酸素原子の総モル数)が0.05となるようにLiTFSIのテトラエチレングリコールジメチルエーテル溶液0.5mlを混合した。この混合液をポリテトラフルオロエチレン製モールド上にキャストした後、160℃、20kgW/cm2で10分間加熱、加圧し、ゲル状の架橋フィルムを得た。実施例2と同様の方法でゲル状架橋フィルムの特性を測定した。40℃における固体電解質の導電率は9.8×10-4S/cmであった。
実施例10
電解質として実施例8で得られたゲル状高分子固体電解質、負極としてリチウム金属箔、及び正極としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いて二次電池を構成した。高分子固体電解質のサイズは10mm×10mm×0.2mmであった。リチウム箔のサイズは10mm×10mm×0.1mmであった。コバルト酸リチウムは所定量の炭酸リチウム及び炭酸コバルト粉体を混合した後900℃で5時間焼成する事により調製した。次にこれを粉砕し、得られたコバルト酸リチウム85重量部に対してアセチレンブラック12重量部と実施例6で得られた溶媒を除いた架橋する前の高分子固体電解質3重量部を加えロールで混合した後、300kgW/cm2の圧力で10mm×10mm×2mmにプレス成形して電池の正極とした。
実施例8で得られた高分子固体電解質をリチウム金属箔とコバルト酸リチウム板ではさみ、界面が密着するように10kgW/cm2の圧力をかけながら25℃で電池の充放電特性を調べた。初期の端子電圧3.8Vでの放電電流は0.1mA/cm2であり、0.1mA/cm2で充電可能であった。本実施例の電池は容易に薄いものに作製できるので、軽量でしかも大容量の電池になる。
実施例11
電解質として実施例9で得られたゲル状高分子固体電解質、負極としてリチウム金属箔、及び正極としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いて二次電池を構成した。高分子固体電解質のサイズは10mm×10mm×0.2mmであった。リチウム箔のサイズは10mm×10mm×0.1mmであった。コバルト酸リチウムは所定量の炭酸リチウム及び炭酸コバルト粉体を混合した後900℃で5時間焼成する事により調製した。次にこれを粉砕し、得られたコバルト酸リチウム85重量部に対してアセチレンブラック12重量部と実施例6で得られた溶媒を除いた架橋する前の高分子固体電解質3重量部を加えロールで混合した後、300kgW/cm2の圧力で10mm×10mm×2mmにプレス成形して電池の正極とした。
実施例9で得られた高分子固体電解質をリチウム金属箔とコバルト酸リチウム板ではさみ、界面が密着するように10kgW/cm2の圧力をかけながら25℃で電池の充放電特性を調べた。初期の端子電圧3.8Vでの放電電流は0.1mA/cm2であり、0.1mA/cm2で充電可能であった。本実施例の電池は容易に薄いものに作製できるので、軽量でしかも大容量の電池になる。
発明の効果
本発明の高分子固体電解質は加工性、成形性、機械的強度、柔軟性や耐熱性などに優れており、かつそのイオン伝導性は著しく改善されている。したがって固体電池(特に、二次電池)をはじめ、大容量コンデンサー、表示素子、例えばエレクトロクロミックディスプレイなど電子機器への応用、更にゴムやプラスチック材料用の帯電防止剤又は制電材料への応用が期待される。
Claims (19)
- (I)式のR1基が
-CH2-O-(CHA1-CHA2-O)n-CH2-、
-CH2-O-(CH2)n-、
-CH2-O-(O)C-(CH2)n-、
-(CH2)m-CO2-(CH2)n-、または
-(CH2)m-O-CO2-(CH2)n-
[式中、A1およびA2は水素またはメチル基であり、nは0〜12の数、mは0〜6の数である。]
である請求項1に記載のポリエーテル共重合体。 - (I)式のR1基が、
-CH2-O-(CHA1-CHA2-O)n-CH2-、
-CH2-O-(CH2)n-、または
-CH2-O-(O)C-(CH2)n-
[式中、A1およびA2は水素またはメチル基であり、nは0〜6の数である。]
である請求項1に記載のポリエーテル共重合体。 - 構成単位(C)における反応性官能基が、(a)反応性ケイ素基、(b)エポキシ基、(c)エチレン性不飽和基または(d)ハロゲン原子である請求項1に記載のポリエーテル共重合体。
- 繰り返し単位(C)を形成する反応性ケイ素基を有する単量体が、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-(1,2-エポキシ)ブチルトリメトキシシラン、及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである請求項4に記載のポリエーテル共重合体。
- 繰り返し単位(C)を形成する2つのエポキシ基を有する単量体が、2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテル、またはエチレングリコール-2,3-エポキシプロピル-2’,3’-エポキシ-2’-メチルプロピルエーテルである請求項4に記載のポリエーテル共重合体。
- 繰り返し単位(C)を形成するエチレン性不飽和基を有する単量体が、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5-シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル-4-ヘキセノエートである請求項4に記載のポリエーテル共重合体。
- 繰り返し単位(C)を形成するハロゲン原子を有する単量体がエピブロモヒドリンまたはエピヨードヒドリンである請求項4に記載のポリエーテル共重合体。
- ポリエーテル共重合体が、繰り返し単位(A)10〜95モル%、繰り返し単位(B)90〜5モル%、及び繰り返し単位(C)0〜10モル%からなる請求項1に記載のポリエーテル共重合体。
- (1)請求項1に記載のポリエーテル共重合体、
(2)電解質塩化合物、ならびに
(3)要すれば存在する、非プロトン性有機溶媒、および数平均分子量が200〜5000の直鎖型または分岐型のポリアルキレングリコールの誘導体もしくは金属塩又は該誘導体の金属塩からなる群から選択された可塑剤からなる高分子固体電解質。 - 電解質塩化合物(2)が金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンから選ばれた陽イオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6 -、PF6 -、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオン、
X1SO3 -、[(X1SO2)(X2SO2)N]-、
[(X1SO2)(X2SO2)(X3SO2)C]-、及び
[(X1SO2)(X2SO2)YC]-(但し、X1、X2、X3、及びYは電子吸引性基である。)から選ばれた陰イオンとからなる化合物である請求項10に記載の高分子固体電解質。 - X1、X2、及びX3が各々独立して炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基又は炭素数6〜18のパーフルオロアリール基であり、Yがニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はシアノ基である請求項11に記載の高分子固体電解質。
- 金属陽イオンがLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Ba、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、及びAgから選ばれた金属の陽イオンである請求項11に記載の高分子固体電解質。
- 非プロトン性有機溶媒がエーテル類又はエステル類から選ばれた非プロトン性有機溶媒である請求項10に記載の高分子固体電解質。
- 非プロトン性有機溶媒がプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、3-メチル-2-オキサゾリドン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれた有機溶媒である請求項10に記載の高分子固体電解質。
- ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールである請求項10に記載の高分子固体電解質。
- ポリアルキレングリコールの誘導体がエーテル誘導体又はエステル誘導体である請求項10に記載の高分子固体電解質。
- ポリアルキレングリコールの金属塩がナトリウム塩、リチウム塩、又はジアルキルアルミニウム塩のいずれかである請求項10に記載の高分子固体電解質。
- 請求項10に記載の高分子固体電解質、正極および負極を有してなる電池。
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