JP4974435B2 - ポリエーテル重合体、その製造方法、および高分子固体電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分およびトルエン不溶分が少なく、特にイオン伝導性材料として好適なポリエーテル重合体、その製造方法、および該ポリエーテル重合体を用いた高分子固体電解質に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエーテル重合体はイオン伝導性を有し、OA機器用ゴムロールや樹脂の帯電防止剤として利用されている。さらに近年では、高分子固体電解質としての利用についても検討が進められている。高分子固体電解質は加工性、柔軟性に優れることから電池形状の自由度が高く、さらには電解液を含まないことから安全性にも優れ、その開発が期待されているが、イオン伝導性については更なる改善が求められている。
【0003】
従来、ポリエーテル重合体は、溶液重合法または溶媒スラリー重合法などにより、所定の重合触媒を用いてオキシラン基を含有する単量体を重合して製造されている。重合触媒としては、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機スズ化合物などの有機金属化合物が用いられる。
【0004】
ところで、ポリエーテル重合体を固体電解質として使用する場合は、架橋可能な反応性官能基を有するポリエーテル重合体をフィルムに成形し、次いでこのフィルムを有機過酸化物などのラジカル開始剤や、活性放射線などにより架橋して使用するのが通常である。
しかしながら、この架橋可能な反応性官能基を有する重合体を製造する際に、架橋可能なモノマーを使用するので製造時に架橋物を生成しやすい。このような架橋物を多く含む重合体を用いると、加工性やフィルムの均一性が損なわれるため電池性能や安全性の低下の原因となっていた。
【0005】
例えば、トリイソブチルアルミニウムにジアザビシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸を反応させた触媒(特公昭56−51171号公報)を用いると、重合時の架橋を比較的抑制することができる。また、本発明者らは、活性水素を有しないルイス塩基性物質を共存させることで重合時の架橋をさらに抑制できることを見出した(特願2001−341155号)。しかしながら、回収した重合体中の架橋物の量はばらつく場合があり、架橋物の少ないポリエーテル系重合体をより安定して製造する方法が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかる実情に鑑み、本発明の目的は、架橋物の生成の少ないポリエーテル重合体を安定して製造する方法を提供することである。また、本発明の目的は、架橋物が少なく、固体電解質に好適に用いることができるポリエーテル重合体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、重合反応停止以降の工程において重合体が水分と接触しないように制御すると架橋物の生成を抑制できることを見いだした。また、ポリエーテル重合体に含まれる水分が少ないと電気的安定性に優れた電解質が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、エチレンオキシド単位70〜99モル%およびこれと共重合可能なオキシラン単量体由来の単位30〜1モル%を含有し、かつ架橋性官能基を有するオキシラン単量体単位含有量が0〜15モル%であり、重量平均分子量(Mw)が1万〜1,000万であり、水分含有量が0.03重量%以下であり、かつトルエン不溶分が3重量%以下であるポリエーテル重合体が提供される。
また本発明の第2によれば、オキシラン単量体を開環重合し、次いで重合反応を停止した後に、溶媒を除去するポリエーテル重合体の製造方法であって、前記重合工程において、重合反応系の水分量を減らした状態で重合することに加えて、前記重合反応停止以降の工程において、重合体が接触する系中の水分を生成した重合体に対し0.03重量%以下に制御することを特徴とする上記ポリエーテル重合体の製造方法が提供される。
前記重合反応停止以降の工程は、乾燥窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、前記オキシラン単量体としては、0.1〜20モル%の、架橋性官能基を有するオキシラン単量体を含むものが好ましい。さらに重合反応停止剤としては、アルコールを用いることが好ましい。
【0009】
さらに本発明の第3によれば、エチレンオキシド単位70〜99モル%およびこれと共重合可能なオキシラン単量体由来の単位30〜1モル%を含有し、かつ架橋性官能基を有するオキシラン単量体単位含有量が0〜15モル%であり、重量平均分子量(Mw)が1万〜1,000万であり、水分含有量が0.03重量%以下であり、かつトルエン不溶分が3重量%以下であるポリエーテル重合体と、該重合体に可溶の電解質塩化合物とを含有することを特徴とする高分子固体電解質が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエーテル重合体は、水分含有量が0.03重量%以下であり、かつトルエン不溶分が3重量%以下である。水分含有量は、好ましくは0.02重量%以下である。水分が多いと電極材料と反応するなどにより、固体電解質に用いた場合の電気的安定性が低下する。
【0011】
また、本発明のポリエーテル重合体のトルエン不溶分量は、3重量%以下である。本発明においてトルエン不溶分は、以下の方法により求められる値である。即ち、ポリエーテル重合体0.2gを100mlのトルエンに浸漬し、40℃で3時間振とうした後、150メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を乾燥して重量を測定する。この乾燥した残渣の重量の、元の重合体の重量に対する割合としてトルエン不溶分が算出できる。トルエン不溶分が少ないほど、ポリエーテル重合体中の架橋物が少ない。トルエン不溶分が過度に多いと成型加工性が劣り、キャスト法あるいは押し出し法等でフィルム化する際フィルムの厚さを薄くできない。また、フィルム状の固体電解質とした際に表面平滑性が損なわれるため電極との密着性が劣り、電気的安定性が低下したり、イオン伝導度が不均一になる場合がある。
【0012】
本発明のポリエーテル重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万〜1,000万、好ましくは3万〜500万、より好ましくは5万〜200万である。Mwがこの範囲であると、高分子固体電解質とした時の成形性および機械的強度が良好である。Mwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値として求めることができる。
【0013】
本発明のポリエーテル重合体は、オキシラン単量体の開環重合体である。重合体中のオキシラン化合物単位は、エチレンオキシド単位70〜99モル%およびこれと共重合可能なオキシラン単量体由来の単位30〜1モル%を含有し、かつ架橋性官能基を有するオキシラン単量体単位含有量が0〜15モル%である。
【0014】
ポリエーテル重合体中のエチレンオキシド単位量は、より好ましくは75〜97モル%、特に好ましくは80〜95モル%である。エチレンオキシド単位量がこの範囲であると、電解質塩化合物の溶解性が良好で、かつ重合体が結晶化しにくいので、イオン伝導性が良好である。
【0015】
ポリエーテル重合体中のエチレンオキシド単位以外のオキシラン単量体単位量は、通常1〜30モル%、好ましくは2〜20モル%、より好ましくは3〜15モル%である。
【0016】
ポリエーテル重合体中のエチレンオキシドと共重合可能な他のオキシラン単量体由来の単位は、その内の少なくとも一部として、架橋性官能基を有するオキシラン単量体単位を含有することが好ましい。本発明において、架橋性官能基を有するオキシラン単量体(以下、架橋性オキシラン単量体という)とは、これを共重合したポリエーテル重合体において、加熱や活性放射線照射などにより架橋構造を形成し得る官能基を有するオキシラン単量体である。架橋性オキシラン単量体単位量は、0〜15モル%、好ましくは1〜13モル%、より好ましくは2〜11モル%である。ポリエーテル重合体に架橋性オキシラン単量体単位を含有させると、電解質用組成物の架橋が容易になり、強度の高い電解質フィルムを容易に得ることができる。
【0017】
架橋性オキシラン単量体としては、ハロゲン置換オキシラン単量体や、エチレン性不飽和エポキシドなどが挙げられる。ハロゲン置換オキシラン単量体としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンや、p−クロロスチレンオキシド、ジブロモフェニルグリシジルエーテルが挙げられる。
また、エチレン性不飽和エポキシドとしては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどのエチレン性不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;が挙げられる。
【0018】
エチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体として、非架橋性のオキシラン単量体を用いてもよい。具体的には、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−イソブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカンなどのアルキレンオキシド;シクロヘキセンオキシドなどの環式脂肪酸エポキシド;メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル;スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテルなどの非エチレン性不飽和エポキシドなどが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。中でも、重合反応性の高いプロピレンオキシド、1,2エポキシブタンが好ましい。
【0019】
本発明のポリエーテル重合体は、以下に説明する本発明の製造方法により製造することができる。本発明の製造方法は、オキシラン単量体を開環重合し、次いで重合反応を停止した後に、溶媒を除去するポリエーテル重合体の製造方法であって、重合反応系の水分量を減らした状態で重合することに加えて、前記重合反応停止以降の工程において、重合体が接触する系中の水分を生成した重合体に対し0.03重量%以下、好ましくは0.02重量%以下に制御することを特徴とする。
【0020】
本発明において、重合体が接触する系中の水分とは、生成した重合体および未反応のオキシラン単量体、溶媒、重合停止剤ならびに必要により反応系に添加される老化防止剤等の各種添加剤に含まれる水分の全量を示し、大気など環境から混入する水分も含む。ポリエーテル重合体は親水性が高いので、停止以降の工程で重合体が接触する系中に含まれる水分が重合体に取り込まれて残存し、加熱や減圧などの通常の乾燥法では水分を十分に除去することができない。そのため、本発明の重合体を得るためには、停止以降の工程における水分量を0.03重量%以下とする必要がある。
【0021】
本発明の製造方法においては、架橋物の生成が少ない条件で行う限り、重合方法は特に限定されない。即ち、上記のオキシラン単量体を溶液重合法または溶媒スラリー重合法などにより開環重合することによりポリエーテル重合体を得ることができる。本発明の製造方法は、単量体成分として架橋性オキシラン単量体を含む場合に適用するのが好ましく、架橋性オキシラン単量体としてエチレン性不飽和エポキシドを用いる場合に適用するのがより好ましい。本発明の製造方法によれば、従来の方法では重合停止反応以降の工程において架橋反応を起こす場合がある架橋性オキシラン単量体を用いても、架橋物の生成を抑制できる。
【0022】
エチレンオキシド単位の割合が多い重合体は吸湿性が大きいため、得られた重合体に水分が多く含まれる傾向がある。そのため架橋物を生成しやすいが、本発明の方法によればエチレンオキシドの使用割合が多い場合でも架橋物の生成を抑制できる。
【0023】
本発明の製造方法では、通常、重合触媒を使用する。触媒としては、オキシラン基を含有する単量体を重合できるものであれば特に限定されない。例えば、有機アルミニウムに水とアセチルアセトンを反応させた触媒(特公昭35−15797号公報)、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒(特公昭46−27534号公報)、トリイソブチルアルミニウムにジアザビアシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸を反応させた触媒(特公昭56−51171号公報)などの有機アルミニウム化合物を含有する触媒;アルミニウムアルコキサイドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とからなる触媒(特公昭43−2945号公報)、有機亜鉛化合物と多価アルコールからなる触媒(特公昭45−7751号公報)、ジアルキル亜鉛と水からなる触媒(特公昭36−3394号公報)などの有機亜鉛化合物を含有する触媒;有機スズ化合物とリン酸エステル化合物からなる触媒(特公昭46−41378号公報)などの有機スズ化合物を含有する触媒;水酸化カリウムやナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属を含有する触媒;などが挙げられる。中でも、有機アルミニウム化合物を含有する触媒や有機スズ化合物を含有する触媒が好ましく、有機アルミニウム化合物を含有する触媒がより好ましく、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒が特に好ましい。有機アルミニウム化合物を含有する触媒や有機スズ化合物を含有する触媒は、脱水剤としても機能するため、顕著に架橋物の生成を抑制できる。
触媒の調製は公知の方法を採用することができる。例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素類;ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;またはこれらの混合物を使用して溶解または分散状態下で各触媒成分を混合することにより調製できる。調製に際し、各成分の添加順序は特に限定されない。
【0024】
重合反応においては、活性水素を有しないルイス塩基性物質を添加するのが好ましい。活性水素を有しないルイス塩基性物質を添加することにより、重合時の架橋物の生成をさらに抑制することができる。活性水素を有しないルイス塩基性物質の具体例としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;フェニルイソシアネート等のイソシアネート化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;などが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、ニトリル化合物、環状エーテル化合物およびエステル化合物が好ましく、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチルがより好ましく、アセトニトリルが特に好ましい。
これらのルイス塩基性物質はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ルイス塩基性物質の全単量体量に対する使用量は、通常、0.01〜20重量%、好ましくは、0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0026】
重合溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−へキサンなどの鎖状飽和炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;などが用いられる。溶媒の使用量は特に限定されないが、単量体濃度が1〜50重量%、さらには10〜30重量%になるように用いることが好ましい。
重合法としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロペンタンなどの溶媒を用いて、溶媒スラリー重合することが好ましい。
【0027】
重合に用いる単量体および溶媒は、予め脱水処理をすることが好ましい。脱水処理方法は特に限定されないが、モレキュラーシーブ、シリカゲル、活性アルミナなどの吸着剤を用いて吸着処理する方法や、蒸留、共沸などにより水分を分離する方法が例示できる。
重合に用いる単量体および溶媒中の水分の合計量は、単量体の全量に対して好ましくは0.04重量%以下、より好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。
【0028】
重合反応は、単独の反応器で触媒調製と重合を回分操作で行ってもよく、別の反応器で調製した触媒と単量体を重合反応器へ連続的に添加して連続重合を行ってもよい。また、別の反応器で調製した触媒を重合反応器に入れ、この重合反応器に単量体を添加して半回分式重合を行ってもよい。単量体の添加方法は一括または断続的に行ってもよい。重合温度は通常0〜100℃、好ましくは50〜90℃の範囲であり、重合圧力は通常0.1〜2MPaの範囲で行われる。
【0029】
本発明の製造方法は、重合に引き続き、反応混合物に重合反応停止剤を添加して重合反応を停止する工程(以下、停止工程と言う)、停止工程終了後、溶媒を除去してポリエーテル重合体を回収する工程(以下、回収工程と言う)を含み、これら停止以降の工程において、重合体が接触する系中の水分を生成した重合体に対し0.03重量%以下、好ましくは0.02重量%以下に制御する。重合体が接触する系中の水分を上記の範囲に制御するためには、停止以降の工程で用いる添加剤や溶媒中の水分の総量を0.03重量%以下に制御すること、および停止以降の工程において環境から水分が混入しない条件下で操作を行うことが必要である。重合反応停止以降の工程において重合体が接触する系中に水分が存在すると架橋物の生成を促進するので、本発明の重合体を得るためには、停止以降の工程における水分量を0.03重量%以下とする必要がある。
【0030】
停止工程で用いる重合反応停止剤(以下、停止剤と言う。)としては、アルコール類、アミン類、脂肪酸類などが挙げられる。中でも、使用量が少量で済み、かつ沸点が低く後述の回収工程において除去が容易であるので、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜3のアルコール類が好ましく、特にエタノールが好ましい。停止剤が重合体に残留すると、電極材料と反応するなどにより、電池性能が低下する場合がある。停止剤は、脱水処理をして用いることが好ましい。停止剤の水分含有量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは700ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。水分を多く含む停止剤を用いると、停止工程における水分量を0.03重量%以下にできない場合がある。脱水方法としては、前述の溶媒や単量体の脱水と同様の方法を採ることができる。
【0031】
停止剤の添加量は、使用する重合触媒によっても異なるが、触媒に対し重量基準で通常0.1〜10倍、好ましくは0.2〜5倍、より好ましくは0.5〜2倍である。停止剤の量が過度に少ないと完全に反応を停止することができずに副反応として架橋が起こる場合がある。また、過度に多いと、停止剤中の水分濃度を低くするための脱水処理が煩雑になるなどの問題がある。
【0032】
停止工程における温度および時間は、広範囲に選択できるが、好ましくは0〜120℃、1秒〜10時間であり、より好ましくは15〜100℃、5分〜2時間である。
停止工程は重合工程と同じ反応器で行ってもよいし、別にしてもよい。反応容器の形状材質や攪拌機については特に限定されないが、密閉可能な反応器を用いるのが好ましい。密閉系で停止工程を行うことにより、大気中の水分との接触を避けることができる。また、反応器内を乾燥窒素や乾燥空気などで陽圧に保ってもよい。
【0033】
重合工程や停止工程で用いた反応器の内壁面に付着するなどして残った重合体は、溶媒で洗浄して重合体の溶液またはスラリーに混合することができる。洗浄に用いる溶媒としては、重合溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。
洗浄に用いる溶媒は、脱水して用いることが好ましい。脱水方法としては、前述の重合溶媒と同様の方法を採ることができる。洗浄に用いる溶媒の水分は、その使用量によって適宜調整されるが、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。
【0034】
停止工程に引き続き、回収工程を行う。回収工程においては、溶媒の除去の前に老化防止剤を添加するのが好ましい。
老化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール系老化防止剤;4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−チオビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)などのチオフェノール系老化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの有機ホスファイト系老化防止剤;など従来公知のものを用いることができる。老化防止剤の添加量は、通常オキシラン単量体単位の全量に対し0.001〜3重量部の範囲である。
【0035】
溶媒の除去および乾燥は、水と接触しない条件、具体的には乾燥窒素もしくは乾燥空気雰囲気下、または減圧下で行うことが好ましい。例えば通常の大気中でこれらの操作を行うと、大気中の水分を重合体が吸収して架橋物が生成する場合がある。これらの操作を行う時の湿度は通常2g/m3以下、好ましくは0.5g/m3以下、より好ましくは0.1g/m3以下である。
【0036】
ポリエーテル重合体から溶媒を除去する方法は特に限定されない。例えば、重合工程で溶媒スラリー重合を行った場合は、濾過、遠心分離などにより重合体を回収し、加熱や減圧により乾燥して溶媒を除去する方法が挙げられる。また、溶液重合を行った場合は、停止工程後の反応溶液から加熱などにより溶媒を直接除去する直接乾燥方法や、ポリエーテル重合体を溶解しない溶媒中に重合体溶液を注ぎ込み、重合体を析出させた後に溶媒スラリー重合と同様にして回収する方法が挙げられる。
【0037】
重合体の乾燥には、噴霧乾燥機;回転乾燥機;気流乾燥機;流動乾燥機;真空乾燥機;スクリュー乾燥機やエキスパンダー乾燥機などの押出し乾燥機;を用いることができる。これらの乾燥機は単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
重合体を回収する方法の具体例としては、重合体スラリーを濾過または遠心分離した後、真空乾燥して重合体を粒子形状で得る方法が挙げられる。この際、(i)室内を乾燥空気の雰囲気にしたドライルーム内で濾過および真空乾燥操作を行う、(ii)重合体スラリーの入った容器等と連結された濾過器および真空乾燥装置を使用して、密閉系で濾過および真空乾燥を行う、(iii)密閉系で、連続式遠心分離装置で溶媒を分離した後に連続式パドル真空乾燥器で乾燥する、などの方法を採れば重合体が水と接触しないようにできる。
また、重合体スラリーを濾過または遠心分離した後、単軸あるいは多軸押し出し機へ導入して乾燥すると同時に、ペレット化、シート化などの成形を行って重合体を回収する方法も挙げられる。ペレット状の重合体を得るには、上記のようにして得られた粒子形状の乾燥した重合体を押し出し機へ導入して成形を行ってもよい。この場合も、例えば乾燥した室内で成形を行うなどにより、重合体が水と接触しないようにすることができる。
【0039】
本発明の高分子固体電解質は、エチレンオキシド単位70〜99モル%およびこれと共重合可能なオキシラン単量体由来の単位30〜1モル%を含有し、かつ架橋性官能基を有するオキシラン単量体単位含有量が0〜15モル%であり、重量平均分子量(Mw)が1万〜1,000万であり、水分含有量が0.03重量%以下であり、かつトルエン不溶分が3重量%以下であるポリエーテル重合体と、該重合体に可溶の電解質塩化合物とを含有する。電解質塩化合物としては、本発明のポリエーテル重合体に可溶のものであれば特に限定されない。例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、トリフルオロスルホンイミドイオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6 −、PF6 −、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオンから選ばれた陰イオンと、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、CaおよびBaから選ばれた金属の陽イオンとからなる塩が挙げられる。これらアルカリ金属塩は2種以上併用してもよい。ポリエーテル重合体に対する電解質塩化合物の使用量は、(電解質塩のモル数)/(共重合体中のエーテル酸素の総モル数)が通常0.001〜5、好ましくは0.005〜3、より好ましくは0.01〜1である。電解質塩化合物の使用量が多すぎると加工性、成形性および得られた固体電解質フィルムの機械的強度が低下したり、イオン伝導性が低下する場合がある。
【0040】
本発明の高分子固体電解質は、通常、架橋して用いられる。電解質はフィルム状で好ましく用いられ、前記組成物に必要に応じて架橋剤等を配合してフィルム成形した後に架橋を施して使用される。架橋方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル開始剤、硫黄、メルカプトトリアジン類、チオウレア類など架橋剤を配合して加熱により架橋する方法や、活性放射線によって架橋する方法が挙げられる。中でも、有機過酸化物、アゾ化合物等のラジカル開始剤を用いて架橋する方法や、紫外線、可視光線、電子線等の活性放射線によって架橋する方法が好ましい。
【0041】
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル類などの通常架橋用途に使用されているものが挙げられる。
【0042】
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル-バレロニトリル等のアゾニトリル化合物;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾアミド化合物;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩等のアゾアミジン化合物などの通常架橋用途に使用されているものが挙げられる。
【0043】
ポリエーテル重合体100重量部あたりの架橋剤の配合量は、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部、より好ましくは0.3〜5重量部である。
【0044】
本発明においては必要により、架橋剤と共に架橋助剤を使用することができる。架橋助剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0045】
有機過酸化物架橋剤やアゾ化合物架橋剤と組み合わせて用いる架橋助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。また、有機過酸化物を使用した場合には、分子内に少なくとも2つの架橋性の不飽和結合を有する化合物を使用できる。その具体例としては、エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、液状ビニルポリブタジエンなどが挙げられる。これら架橋助剤を2種類以上組み合わせて使用することもできる。ポリエーテル重合体100重量部あたりの架橋助剤の使用量の上限は、好ましくは20重量部、より好ましくは15重量部、特に好ましくは10重量部である。架橋助剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物の表面ヘのブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。
【0046】
紫外線、電子線などの活性放射線による架橋を行う場合は、必要に応じて光架橋剤を添加してもよい。光架橋剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、トリメチルシリルベンゾフェノン、ベンゾイン、4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテルアントラキノン等が挙げられる。
【0047】
イオン伝導性を向上させる目的で、本発明の高分子固体電解質に有機溶媒や可塑剤を添加してもよい。有機溶媒としては、非プロトン性のエステル類やエーテル類が好ましい。また可塑剤としては、分子量5000以下のポリアルキレングリコールの誘導体が好ましい。これらの具体例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
【0048】
本発明の高分子固体電解質の製造方法は特に限定されないが、例えば、前記各成分を、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法により配合した後に、薄膜成形して架橋することによって得られる。配合順序は、特に限定されないが、熱で分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応したり、分解しやすい成分(例えば架橋剤、架橋促進剤など)を短時間に混合することが好ましい。有機溶媒や可塑剤を添加する場合は成形架橋した後に長時間かけて含浸させてもよいし、混練時に同時に添加してもよい。
【0049】
本発明の高分子固体電解質の成形方法は、特に限定されないが、押出成形が適している。成形方法、架橋方法、架橋物の形状などに応じて、成形と架橋を同時に行ってもよいし、成形後に架橋してもよい。
【0050】
本発明の高分子固体電解質は、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属系電池、亜鉛−塩化銀、マグネシウム−塩化銀、マグネシウム−塩化銅等のハロゲン塩電池、ニッケル−水素電池等のプロトン伝導型電池等の各種電池、特にリチウム電池の電解質に好ましく用いることができる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部および%は、断りのない限り重量基準である。
実施例および比較例における操作および試験は以下の方法で行った。
【0052】
(1)トルエン不溶分 : ポリエーテル重合体0.2gを100mlのトルエンに浸漬し、40℃で3時間振とうした後、150メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を乾燥して秤量した。この乾燥した残渣の重量の、元の重合体の重量(0.2g)に対する割合をトルエン不溶分とした。この値が小さいほど架橋物の生成が少ないことを示す。
(2)水分 : カールフィッシャー法により測定した。なお、重合体およびスラリーの水分は、予め脱水して水分量を測定したトルエンに重合体を溶解した溶液の水分量をカールフィッシャーにより測定した値から換算して求めた。
(3)分子量 : 重合体の重量平均分子量は、ジメチルホルムアミドを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ測定により標準ポリスチレン換算の値として求めた。
【0053】
(4)イオン伝導度 : 実施例および比較例で得た電解質フィルムを白金電極ではさみ、電圧0.5V、周波数範囲5Hz〜13MHzの交流法を用い、複素インピーダンス法により算出した。
(5)サイクリックボルタンメトリー(CV)測定
ステンレス鋼を作用極、金属リチウムを対極および参照極として用い、実施例および比較例で得た電解質フィルムのサイクリックボルタンメトリーを測定した。測定は60℃において、2Vから5Vまで掃引速度2mV/秒で行った。電位(E)と電流値(I)の関係において、電流値が小さい程電気的安定性が良いことを示す。
【0054】
実施例1
攪拌機付きオートクレーブを乾燥して窒素置換し、トリイソブチルアルミニウム158.7部、モレキュラーシーブ4Aにて脱水、脱気したトルエン1170部、及びジエチルエーテル296.4部を仕込んだ。内温を30℃に設定し、攪拌しながらリン酸23.5部を10分間かけて一定速度で添加した。これにトリエチルアミン12.1部を添加し、60℃で2時間加熱し、触媒溶液を得た。
別の攪拌機付きオートクレーブを乾燥して窒素置換し、モレキュラーシーブ4Aにて脱水処理したn−ヘキサン2100部を仕込み、水分を測定したところ9ppm(0.019部)であった。ここに上記触媒溶液73.1部を仕込み、内温を30℃に設定して、攪拌しながら、エチレンオキシドを4部加えて反応させ、次いで、それぞれ脱水処理したエチレンオキシドとプロピレンオキシドの等重量混合単量体を8.5部加えて反応させ、シードを形成した。
【0055】
内温を60℃に設定して、シードを形成した重合反応液に、同じく脱水したエチレンオキシド340部(90モル%)、プロピレンオキシド14.9部(3モル%)、アリルグリシジルエーテル68.4部(7モル%)、n−ヘキサン300部からなる混合溶液を5時間かけて連続的に等速度で添加した。添加終了後、2時間反応を行ったのち、30℃まで冷却した。重合転化率は99%であった。このときのスラリー中の水分は0ppmであった。得られたスラリーに停止剤としてモレキュラーシーブ3Aにて脱水して水分を350ppmとしたエタノール8.5部(対重合体水分量:0.0007%)を加え、さらに30分攪拌した。次いで老化防止剤として4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)の5%のトルエン溶液42.4部を添加し、30分攪拌した。
オートクレーブに乾燥窒素置換した容器を接続し、外気に接触しないようにしてスラリーを抜き出した。スラリーを抜き出した後のオートクレーブに、モレキュラーシーブ4Aにて脱水して水分を9ppmとしたn−ヘキサン1500部(対重合体水分量:0.0032%)を洗浄用溶媒として仕込み、30分攪拌した。この洗浄液を同様にして抜き出し、スラリーに加えた。このスラリー中の水分は重合体に対して0.006%であった。
【0056】
このスラリーを乾燥窒素雰囲気下にて金網上にてろ過し、40℃で真空乾燥して粉体状の重合体を得た。このようにして得られたポリエーテル重合体Aの組成(各単量体単位の含有量)は、エチレンオキシド(EO)単位89.0モル%、プロピレンオキシド(PO)単位4.2モル%、アリルグリシジルエーテル(AGE)単位6.8モル%であった。この重合体中の水分量、重量平均分子量、トルエン不溶分を測定した結果を表1に示す。
【0057】
重合体A 1部と0.31部のLiTFSI(リチウムジトリフルオロスルフォニルイミド)を20部のテトラヒドロフランに溶解した。この溶液をポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに移し、40℃で24時間真空乾燥して厚さ100μmの電解質フィルムを作製した。このフィルムの表面状態は非常に平滑であった。この電解質フィルムについて、イオン伝導度測定およびCV測定を行った。結果を表1および図1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2
密栓した耐圧ガラスボトルを窒素置換して、トルエン180部およびトリイソブチルアルミニウム60部を仕込んだ。ガラスボトルを氷水に浸漬して冷却後、ジエチルエーテル224.2部を添加し攪拌した。次に、氷水で冷却しながら、リン酸8.89部を添加し、さらに攪拌した。この時、トリイソブチルアルミニウムとリン酸の反応により、ボトル内圧が上昇するので適時脱圧した。次に1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のギ酸塩8.98部を添加した。得られた反応混合物は60℃の温水浴内で1時間熟成反応して触媒溶液を得た。こうして得られた触媒溶液を用いた他は、実施例1と同様にして粉体状の重合体を得た。重合転化率は98.9%であった。
このようにして得られたポリエーテル重合体Bの組成(各単量体単位の含有量)は、エチレンオキシド(EO)単位90モル%、プロピレンオキシド(PO)単位3.2モル%、アリルグリシジルエーテル(AGE)単位6.8モル%であった。この重合体の物性測定結果を表1に示す。次いで重合体Bを用いて、実施例1と同様にして電解質フィルムを作成し、表面状態の観察および電気特性の測定を行った。結果を表1および図1に示す。
【0060】
比較例1
停止剤として0.85部の水(対重合体水分量:0.2%)を使用した他は実施例1と同様の方法にて粉体状の重合体を得た。このようにして得られたポリエーテル重合体Cの物性測定結果を表1に示す。次いで重合体Cを用いて、実施例1と同様にして電解質フィルムを作成したところ、所々に異物のような突起が確認された。この電解質フィルムについて、イオン伝導度測定およびCV測定を行った。結果を表1および図1に示す。
【0061】
比較例2
停止剤として脱水処理を行っていないエタノール(水分0.2%、対重合体水分量0.0039%)を、洗浄用溶剤として脱水処理を行っていないn−ヘキサン(水分25ppm、対重合体水分量0.0088%)を用い、重合後にスラリーをオートクレーブから抜き出してから乾燥して重合体を得るまでの作業を20℃、湿度11g/m3の大気中で行った他は、実施例1と同様の方法にて粉体状重合体を得た。
このようにして得られたポリエーテル重合体Dの物性測定結果を表1に示す。次いで重合体Dを用いて、実施例1と同様にして電解質フィルムを作成し、表面状態の観察および電気特性の測定を行った。結果を表1および図1に示す。
【0062】
表1および図1から明らかなように、本発明の製法によれば、水分およびトルエン不溶分の少ないポリエーテル重合体が得られる。さらに、該重合体を用いて電解質を作成すると、表面が平滑なフィルムが容易に得られる。また、得られた電解質は、良好なイオン伝導性を有するとともに、電気的安定性が非常に優れていることが分かる(実施例1、2)。一方、水分およびトルエン不溶分の多いポリエーテル重合体を用いて電解質を作成すると、その表面は粗く、電気的安定性が低下した(比較例1,2)。
【0063】
【発明の効果】
本発明方法を実施することにより、水分および架橋物が少ないポリエーテル重合体が安定的に得られる。該重合体は架橋物が少なく、成形加工性に優れるので、表面が平滑な成形物が容易に得られる。この特性を生かして、固体電解質や帯電防止剤などのイオン伝導性材料のほか、紡績用ゴムロール、OA機器用ゴムロールなどのゴムロールや、水膨潤止水シール、パッキンなどの封止材料に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例および比較例のCV測定結果を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
A 実施例1で得られた電解質フィルムのCV測定結果
B 実施例2で得られた電解質フィルムのCV測定結果
C 比較例1で得られた電解質フィルムのCV測定結果
D 比較例2で得られた電解質フィルムのCV測定結果
Claims (6)
- エチレンオキシド単位70〜99モル%およびこれと共重合可能なオキシラン単量体由来の単位30〜1モル%を含有し、かつ架橋性官能基を有するオキシラン単量体単位含有量が0〜15モル%であり、重量平均分子量(Mw)が1万〜1,000万であり、水分含有量が0.03重量%以下であり、かつトルエン不溶分が3重量%以下であるポリエーテル重合体。
- オキシラン単量体を開環重合し、次いで重合反応を停止した後に、溶媒を除去するポリエーテル重合体の製造方法であって、前記重合工程において、重合反応系の水分量を減らした状態で重合することに加えて、前記重合反応停止以降の工程において、重合体が接触する系中の水分を生成した重合体に対し0.03重量%以下に制御することを特徴とする請求項1に記載のポリエーテル重合体の製造方法。
- 重合反応停止以降の工程を乾燥窒素雰囲気下に行う請求項2に記載の製造方法。
- オキシラン単量体が、0.1〜20モル%の、架橋性官能基を有するオキシラン単量体を含むものである請求項2または3に記載の製造方法。
- アルコールを重合反応停止剤として用いる請求項2〜4のいずれか1に記載の製造方法。
- 請求項1に記載のポリエーテル重合体と、該重合体に可溶の電解質塩化合物とを含有することを特徴とする高分子固体電解質。
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