JP4923946B2 - ポリエーテル系多元共重合体およびその架橋物 - Google Patents

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Description

本発明は、側鎖にカーボネート基を有するポリエーテル多元共重合体、および、これを架橋してなりかつ自動車用ゴム部品、電気、電子機器用ゴム部材等として有用な架橋物に関する。
ポリエーテル系の重合体は、原料であるオキシラン化合物の種類を選択することにより、様々な性質をもつものとすることができるため、自動車用ゴム部品、電気、電子機器用ゴム部材、土木、建築用ゴム資材、各種工業用ゴム部材、各種プラスチックブレンド用ポリマー、高分子固体電解質等の広範な分野で高分子材料として使用されている。
特に、一般的にエピクロロヒドリン系ゴムと呼ばれるエピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体の架橋物は、優れた耐熱性、耐油性、耐燃料油性、耐オゾン性、低温特性、半導電特性などを有していることから、自動車用ゴム部品や電気、電子機器用ゴム部材として広く利用されている。
一方、近年における環境問題に対する対策の一環として、ハロゲンを多量に含む高分子材料を可能な限り使わないようにする動きが活発化しつつある。しかしながら、エピクロロヒドリン系ゴムに代替でき、しかもその架橋物が上記諸特性をいずれも具備するポリエーテル系重合体ゴムは、未だ見つかっていないのが現状である。
他方、エピクロロヒドリンのようなハロゲン含有化合物を殆ど或は全く用いないで製造したポリエーテル系重合体ゴムとしては様々なものが提案されており、例えばエチレンオキシドと、これと共重合可能なオキシラン単量体を共重合せしめ、得られた共重合体をOA機器のゴム部品に用いること(例えば特許文献1参照)、水膨潤性シール材に用いること(例えば特許文献2参照)、高分子固体電解質に用いること(例えば特許文献3参照)が提案されている。
特開2002−105246号公報 特開2002−194202号公報 特開2003−105080号公報 しかしながら、これらの文献に記載のポリエーテル系重合体は、上記特定分野においてのみ用い得る性能を有するものであって、特定のオキシラン単量体を組み入れたポリエーテル系共重合体が、優れた耐熱性、耐油性、耐燃料油性、低温特性、半導電特性などの諸性質をいずれも具備することについては、記載も示唆もなされていない。
本発明の目的は、近年における上記環境問題に鑑み、エピクロロヒドリンのようなハロゲン含有化合物を殆ど或は全く用いずに、優れた耐熱性、耐油性、耐燃料油性、低温特性、半導電特性などの諸性質をいずれも具備するゴムとして用い得るポリエーテル系共重合体の架橋物を提供しようとするところにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねたところ、側鎖にカーボネート基を有するオキシラン単量体を用い、同単量体と、架橋可能な官能基を有する架橋性オキシラン単量体と、必要であればアルキレンオキシドとを実質上ランダムに共重合した特定組成の多元共重合体が、これを架橋せしめることによって、優れた耐熱性、耐油性、耐燃料油性、低温特性、半導電特性などをいずれも具備するゴムとしての性能を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記一般式(I)で表される構成単位10〜99モル%、下記一般式(II)で表される構成単位0〜89モル%、および架橋性オキシラン単量体由来の構成単位1〜10モル%を有してなる、側鎖にカーボネート基を有することを特徴とするポリエーテル系多元共重合体、および同多元共重合体を架橋した架橋物を提供する。
Figure 0004923946
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を意味する。]
Figure 0004923946
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基または−CHO−Rを意味し、Rは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を意味する。]
更に、本発明は、上記架橋物からなる自動車用ゴム部品、半導電性ゴム部品をも提供する。
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
上記構成単位(I)10〜99モル%、上記構成単位(II)0〜89モル%、および架橋性オキシラン単量体由来の構成単位1〜10モル%を有してなるポリエーテル系多元共
重合体(以下、ポリエーテル多元共重合体と略称する)の分子量については、ゴム材料の加工性の観点から、JIS K 6300−1に記載の方法に従って100℃で測定したムーニー粘度(ML1+4)が10〜200、好ましくは20〜100の範囲内である。このような高分子量のポリエーテル多元共重合体は、触媒としてオキシラン化合物を開環重合させ得るものを使用し、温度−20〜100℃の範囲で溶液重合法、スラリー重合法などにより製造することができる。このような触媒としては、例えば有機アルミニウムを主体としこれに水やリンのオキソ酸化合物やアセチルアセトンなどを反応させて得られた触媒系、有機亜鉛を主体としこれに水を反応させて得られた触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系などが挙げられる。例えば本出願人による米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系を使用してポリエーテル多元共重合体を製造することができる。
なお、このような製法で、上記構成単位(I)10〜99モル%、上記構成単位(II)0〜89モル%、および架橋性オキシラン単量体由来の構成単位1〜10モル%を有し、かつ、本発明が目的とするゴム様の性質を備えたポリエーテル多元共重合体を製造するには、これら構成単位に対応する単量体成分を実質上ランダムに共重合させることが好ましい。
ポリエーテル多元共重合体において各構成単位の割合は、上記構成単位(I)10〜99モル%、上記構成単位(II)0〜89モル%、および架橋性オキシラン単量体由来の構成単位1〜10モル%の範囲内である。
上記構成単位(I)の割合が10モル%未満であると、アルキレンオキシド単位の結晶化によりゴム様の重合体が得られない。逆にこの割合が99モル%を超えると、ゴム材料として十分な低温柔軟性が得られない。更に、上記構成単位(I)の割合が多くなるほど、得られる架橋物の耐熱性、耐燃料油性は向上するが、低温柔軟性が低下する傾向にある。したがって、上記構成単位(I)の割合は好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜75モル%の範囲である。
上記構成単位(I)を構成する単量体の例としては、グリシジルメチルカーボネート、グリシジルエチルカーボネート、グリシジルプロピルカーボネート等のグリシジルアルキルカーボネートが挙げられる。これらは2種以上併用しても良い。しかしながら、炭素数の大きいグリシジルアルキルカーボネートを用いると、得られるポリエーテル多元共重合体の架橋物の耐油性、耐燃料油性が低下する傾向にあるので、単量体として好ましく用いられるグリシジルアルキルカーボネートはグリシジルメチルカーボネート、グリシジルエチルカーボネート、特に好ましくはグリシジルメチルカーボネートである。
上記構成単位(II)を構成する単量体の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、n−ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドが挙げられる。これらは2種以上併用しても良い。しかしながら、炭素数の大きいアルキレンオキシドを用いると、得られるポリエーテル多元共重合体の架橋物の耐油性、耐燃料油性が低下する傾向にあるので、単量体として好ましく用いられるアルキレンオキシドはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド、特に好ましくはエチレンオキシドである。
上記構成単位(II)の割合は0モル%であってもよいが、逆に89モル%を超えると構成単位(I) の割合が10モル%未満になってしまうので、アルキレンオキシド単位の結晶化によりゴム様の重合体が得られない。構成単位(II)の割合の好ましい範囲は10〜80モル%である。
架橋性オキシラン単量体は、構成単位(I)と構成単位(II)の共重合体を架橋せしめ得るオキシラン単量体であればいかなるものでも良く、例えばハロゲン含有オキシラン単量体、具体例としてエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどのエピハロヒドリン類、p−クロロスチレンオキシド、ジブロモグリシジルメチルカーボネート、m−クロロメチルスチレンオキシド、p−クロロメチルスチレンオキシド、クロロ酢酸グリシジル、グリシド酸クロロメチルなどのエピハロヒドリン類以外のハロゲン置換オキシラン類、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、3,4−エポキシ−1−ブテンなどのエチレン性不飽和基含有オキシラン類、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル、メタグリシド酸グリシジルエステル、グリシド酸メタグリシジルエステル、1,2,3,4−ジエポキシ−2−メチルブタンなど反応性官能基を分子内に有するジエポキシ化合物類などが挙げられる。これら架橋性オキシラン単量体は2種以上併用しても良い。
架橋性オキシラン単量体はハロゲンを含むものであってもよい。ただし、ハロゲン含有オキシラン単量体を架橋性オキシラン単量体として用いる場合は、この使用量が多すぎると、ポリエーテル多元共重合体中のハロゲン含有量を可能な限り低減するという本発明の主旨に反することとなるため、ハロゲン含有オキシラン単量体の割合はできるだけ低い方が良い。ポリエーテル多元共重合体中のハロゲン含有量は好ましくは7重量%以下である。
架橋性オキシラン単量体由来の構成単位の割合は1〜10モル%、好ましくは1〜6モル%の範囲にある。この割合が1モル%未満であると、ポリエーテル多元共重合体を架橋する際に十分な架橋密度が得られず、そのため十分な物理的性質を有する架橋物を得ることができない。逆に、この割合が10モル%を超えると、いわゆるスコーチの問題や耐熱性の低下を招く恐れがあり、好ましくない。
架橋性オキシラン単量体のうち、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどのエピハロヒドリン類を用いる場合は、架橋剤として通常ハロゲン含有ゴムに用いられているものを配合することができる。このような架橋剤として、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメートなどのアミン系架橋剤、エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレアなどのチオウレア系架橋剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−チオベンゾエートなどのチアジアゾール系架橋剤、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−フェニルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジンなどのトリアジン系架橋剤、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,6−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートなどの2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体系架橋剤、ピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5−メチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5,6−ジメチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5−メチルピラジン−2,3−ジチオカーボネートなどの2,3−ジメルカプトピラジン誘導体系架橋剤、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールSなどのビスフェノール系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の配合量は、ポリエーテル多元共重合体100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部である。この範囲未満の配合量では架橋が不十分となることがあり、逆にこの範囲を超えると経済的でない。
また、通常これらの架橋剤と共に用いられる公知の促進剤(すなわち加硫促進剤)、遅延剤等もポリエーテル多元共重合体の製造に用いることができる。促進剤の例としては、硫黄、チウラムスフィド類、モルホリンスルフィド類、アミン類、アミンの弱酸塩類、塩基性シリカ、四級アンモニウム塩類、四級ホスホニウム塩類、多官能ビニル化合物、メルカプトベンゾチアゾール類、スルフェンアミド類、ジメチオカーバメート類等が挙げられる。
遅延剤の例としてはN−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、有機亜鉛化合物、酸性シリカ、スルホンアミド化合物等が挙げられる。促進剤または遅延剤の配合量は、ポリエーテル多元共重合体の100重量部に対して0〜10重量部、例えば0.1〜5重量部である。
なお、上記架橋剤と受酸剤を組み合わせることも好ましい。この場合用いられる受酸剤としては、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、Li−Al系包接化合物などが挙げられる。受酸剤の配合量は、ポリエーテル多元共重合体の100重量部に対して0〜30重量部、例えば0.1〜10重量部である。
また、架橋性オキシラン単量体としてクロロメチルスチレンオキシド、クロロ酢酸グリシジル、グリシド酸クロロメチルなどのエピハロヒドリン類以外のハロゲン置換オキシラン類を用いる場合は、上記エピハロヒドリン類を適用した場合に例示した架橋剤の他に、硫黄、活性硫黄放出型有機加硫剤、安息香酸アンモニウムなども架橋剤として例示することができる。また、これらの架橋剤を用いた場合においても、上記促進剤、遅延剤、受酸剤を適宜用いることができる。
一方、架橋性オキシラン単量体としてアリルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルなどのエチレン性不飽和基含有オキシラン類を用いる場合は、架橋剤として、通常ジエン系ゴムに用いられているものを配合することができる。このような架橋剤としては、例えば硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、モルフォリンジスルフィドなどの硫黄系架橋(加硫)剤、パラベンゾキノンジオキシム、ベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム系架橋剤、ポリメチロールフェノール、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、臭化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂などの樹脂系架橋剤、ジクミルパーオキシド、1,3−ビス(ter−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(ter−ブチルパーオキシ)バレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ter−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物系架橋剤などが挙げられる。これら架橋剤と、ジエン系ゴム用として公知の加硫促進剤、加硫促進助剤、架橋助剤、遅延剤を適宜併用することもできる。
更に、架橋性オキシラン単量体として、上記ジエポキシ化合物類を用いる場合は、架橋剤の例として、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸鉄などのアルキルジチオカルバミン酸塩系架橋剤、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメートなどのアミン系架橋剤、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどの活性硫黄放出型有機加硫剤、アンモニウムベンゾエート、イソシアヌル酸、有機酸のアンモニウム塩類などが挙げられる。また、この場合においても架橋促進剤、遅延剤を適宜用いることができる。促進剤の例としては、イミダゾール類、オニウム塩類が挙げられ、遅延剤の例としては無水フタル酸などが挙げられる。
ポリエーテル多元共重合体には、当該技術分野で通常用いられている上記以外の配合剤、例えば、滑剤、充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、加工助剤、難燃剤、発泡剤、発泡助剤、導電剤、帯電防止剤、顔料、粘着付与剤などを必要に応じて配合することができる。さらに、当該技術分野で通常行われている、ゴム、樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。
ポリエーテル多元共重合体を架橋してゴム製品を製造するには、従来ポリマー加工の分野において用いられている混合手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を適宜用いて、ポリエーテル多元共重合体に架橋剤その他の配合剤を配合し、ポリエーテル多元共重合体を架橋する。架橋に要する温度および時間はポリエーテル多元共重合体の製造に用いられた架橋性オキシラン化合物、架橋剤などにより適宜設定されるが、通常は温度100〜250℃、時間0.5〜300分の範囲内にある。架橋成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線或いはマイクロウェーブによる加熱等の方法を適宜用いることができる。
このようにして得られたポリエーテル多元共重合体の架橋物は、エピクロロヒドリン系ゴムに代表されるポリエーテル系ゴムが用いられる分野全般において用いることができる。例えば、自動車用などの各種燃料系積層ホース、エアー系積層ホース、チューブ、ベルト、ダイヤフラム、シール類等のゴム材料や、OA機器に用いられる帯電ロール、転写ロールなどの半導電性ゴム部品、一般産業用機器・装置等のゴム材料としてこれは有用である。なかでもポリエーテル多元共重合体の優れた耐熱性、耐油性などを活かして、特に自動車用ゴム部品に好適に応用することができる。
さらに、ポリエーテル多元共重合体はその化学構造上、ハロゲン原子をほとんど含んでいないか、あるいは全く含んでいないので、例えば燃焼によるハロゲン含有ガスの発生といった環境汚染を低減することが可能である。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
重合用触媒の製造
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた三つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g、およびトリブチルフォスフェート35gを投入し、これらを窒素気流下に攪拌しながら250℃で20分間加熱し、留出物を留去し、残留物として室温で固体状の縮合物を得た。以降、これを実施例および比較例に重合用触媒として供した。
重合体の分析
実施例で得られたポリエーテル多元共重合体の共重合組成はH−NMRスペクトルにより求めた。また、ポリエーテル多元共重合体のムーニー粘度(ML1+4)は、JIS K 6300に記載の方法に従い、Lローターを用いて100℃で測定した。
ポリエーテル多元共重合体の製造
実施例1
内容量5Lのジャケット付きステンレス製反応器の内部を窒素置換し、上記縮合物触媒6g、グリシジルメチルカーボネート290g、エピブロモヒドリン36g、および溶媒としてノルマルヘキサン1030gとトルエン1370gを仕込み、エチレンオキシド279gをグリシジルメチルカーボネートの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。反応温度を20℃に維持したまま4時間後にMeOH1gを加えて重合反応を停止した。
デカンテーションにより反応器から重合体を取り出した後、これを減圧下、80℃で8時間乾燥して、ポリエーテル多元共重合体200gを得た。このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位26モル%、エチレンオキシド単位72モル%、エピブロモヒドリン単位2モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は53であった。
実施例2
内容量5Lのジャケット付きステンレス製反応器の内部を窒素置換し、上記縮合物触媒6g、グリシジルメチルカーボネート290g、アリルグリシジルエーテル30g、および溶媒としてノルマルヘキサン1030gとトルエン1370gを仕込み、エチレンオキシド279gはグリシジルメチルカーボネートの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。反応温度を20℃に維持したまま4時間後にMeOH1gを加えて重合反応を停止した。
デカンテーションにより反応器から重合体を取り出した後、これを減圧下、80℃で8時間乾燥して、ポリエーテル多元共重合体180gを得た。このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位32モル%、エチレンオキシド単位66モル%、アリルグリシジルエーテル単位2モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は46であった。
実施例3
重合時の仕込み量を、縮合物触媒4.6g、グリシジルメチルカーボネート197g、アリルグリシジルエーテル24g、エチレンオキシド239g、ノルマルヘキサン1389g、およびトルエン451gに変えた以外は実施例2と同様の手順でポリエーテル多元共重合体129gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位36モル%、エチレンオキシド単位モル62%、アリルグリシジルエーテル単位2モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は43であった。
実施例4
重合時の仕込み物およびその量を、縮合物触媒3.6g、グリシジルメチルカーボネート415g、アリルグリシジルエーテル32g、エチレンオキシド92g、トリレンジイソシアネート6.7g、およびノルマルヘキサン1260gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体308gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位44モル%、エチレンオキシド単位モル55%、アリルグリシジルエーテル単位1モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は38であった。
実施例5
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒7.2g、グリシジルメチルカーボネート526g、アリルグリシジルエーテル35g、エチレンオキシド160g、およびトルエン2880gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体585gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位53モル%、エチレンオキシド単位モル43%、アリルグリシジルエーテル単位4モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は36であった。
実施例6
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒8g、グリシジルメチルカーボネート160g、アリルグリシジルエーテル39g、エチレンオキシド301g、ノルマルヘキサン750g、およびTHF750gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体368gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位17モル%、エチレンオキシド単位モル80%、アリルグリシジルエーテル単位3モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は67であった。
実施例7
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒8g、グリシジルメチルカーボネート454g、アリルグリシジルエーテル19g、エチレンオキシド27g、ノルマルヘキサン750g、およびTHF750gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体382gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位83モル%、エチレンオキシド単位モル14%、アリルグリシジルエーテル単位3モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は27であった。
実施例8
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒10g、グリシジルメチルカーボネート285g、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル28g、エチレンオキシド87g、およびトルエン1600gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体111gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位72モル%、エチレンオキシド単位モル24%、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル単位4モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は31であった。
実施例9
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒8g、グリシジルメチルカーボネート319g、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル29g、エチレンオキシド152g、トリレンジイソシアネート2.1g、ノルマルヘキサン1200g、およびトルエン300gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体308gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位43モル%、エチレンオキシド単位モル54%、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル単位3モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は36であった。
実施例10
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒4g、グリシジルメチルカーボネート279g、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル28g、エチレンオキシド93g、ノルマルヘキサン960g、およびTHF640gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体308gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位47モル%、エチレンオキシド単位モル49%、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル単位4モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は34であった。
実施例11
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒8g、グリシジルメチルカーボネート356g、2,3−エポキシプロピル−2’,3’−エポキシ−2’−メチルプロピルエーテル60g、エチレンオキシド274g、プロピレンオキシド60g、およびノルマルヘキサン2250gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体343gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位26モル%、エチレンオキシド単位モル60モル%、プロピレンオキシド単位モル10%、アリルグリシジルエーテル単位4モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は46であった。
参考例1(比較例1に用いたポリエーテル多元共重合体の製造)
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒12g、プロピレンオキシド787g、アリルグリシジルエーテル152g、エチレンオキシド819g、およびノルマルヘキサン4106gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体1670gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、プロピレンオキシド単位40モル%、エチレンオキシド単位56モル%、アリルグリシジルエーテル単位4モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は61であった。
参考例2(比較例2に用いたポリエーテル多元共重合体の製造)
重合時の仕込物およびその量を、縮合物触媒8g、グリシジルメチルカーボネート51g、アリルグリシジルエーテル44g、エチレンオキシド305g、およびノルマルヘキサン1600gに変えた以外は実施例1と同様の手順でポリエーテル多元共重合体362gを得た。
このポリエーテル多元共重合体の共重合組成は、グリシジルメチルカーボネート単位5モル%、エチレンオキシド単位モル91%、アリルグリシジルエーテル単位4モル%であった。また、100℃で測定したムーニー粘度は77であった。
ポリエーテル多元共重合体架橋物の作製
下記の配合剤を用いて実施例12〜24、比較例1〜4のポリエーテル多元共重合体架橋物を作製した。
カーボンブラック:「シーストSO」、東海カーボン株式会社製
炭酸カルシウム:軽質炭酸カルシウム「赤玉」、白石工業株式会社製
可塑剤:「アデカサイザーRS−107」、旭電化工業株式会社製
滑剤:「スプレンダーR−300」、花王株式会社製
老化防止剤:「ナウガード445」、クロンプトン社製
MB:老化防止剤、「ノクラックMB」、大内新興化学株式会社製
受酸剤:酸化マグネシウム、「キョーワマグ150」、協和化学工業株式会社製
亜鉛華:加硫促進助剤、
硫黄:加硫剤、加硫促進剤
ETU:加硫剤、エチレンチオウレア
DM:加硫促進剤、「ノクセラーDM」、大内新興化学株式会社製
TS:加硫促進剤、「ノクセラーTS」、大内新興化学株式会社製
SS:加硫遅延剤、「ノクタイザーSS」、大内新興化学株式会社製
TRA:加硫剤、「ノクセラーTRA」、大内新興化学株式会社製
その他配合剤:ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム
ECO:比較例3に用いたエピクロロヒドリン系ゴム、「エピクロマーC」、ダイソー株式会社製
GECO:比較例4に用いたエピクロルヒドリン系ゴム、「エピクロマーCG−105」、ダイソー株式会社製
性能試験1)用の架橋物の作製
実施例12〜22、比較例1〜3
120℃に設定した容量1リットルのニーダー中で、実施例1〜11、参考例1〜2で得られたポリエーテル多元共重合体、ECO100重量部をそれぞれ1分間素練りした後、これに表1、表2に示すA練り配合剤を表1、表2に示す配合量で配合した。これらを5分間混練した後、得られた混練物をニーダーより取り出し、70℃に設定した7インチロールでシート化してA練りゴムシートを作製した。
次いで、70℃に温度設定した7インチロールを用い、上記A練りゴムシートへ表1、表2に示すB練り配合剤を表1、表2に示す配合量で加え、全体を約5分間混練することにより、B練りロールゴムシートを作製した。
このB練りロールゴムシートを170℃に温度設定したプレスで15分間加熱、加圧することにより、2mm厚の架橋ゴムシートを成形した。これを打ち抜き型により所用形状に打ち抜いて、JIS K 6251に示されるダンベル状3号形試験片を得た。実施例12、19〜22、比較例3については、2mm厚の架橋ゴムシートを150℃に温度設定したオーブン中で2時間熱処理(いわゆる二次加硫)してから試験片を得た。
Figure 0004923946
Figure 0004923946
性能試験1)
実施例12〜22、および比較例1〜3で得られた各試験片に対し、JIS K 6251に記載の方法に従って引張試験を行った。
加硫ゴムの老化試験は、JIS K 6257に記載の従い、表3、表4中に記載の条件でセル形オーブン法で行った。
耐燃料油性は、試験用燃料油Cを用い、表3、表4中に記載の条件でJIS K 6258の方法に従って評価した。
低温特性の評価は、JIS K 6261に記載の衝撃ぜい化温度を測定することにより行った。
これらの試験結果を表3、表4に示す。
Figure 0004923946
Figure 0004923946
性能試験2)用架橋物の作製
実施例23、比較例4
120℃に設定した容量1リットルのニーダー中で、実施例2で得られたポリエーテル多元共重合体、GECO100重量部をそれぞれ1分間素練りした後、これに表5に示すA練り配合剤を表5に示す配合量で配合した。これらを5分間混練した後、得られた混練物をニーダーより取り出し、70℃に設定した7インチロールでシート化してA練りゴムシートを作製した。
次いで、70℃に温度設定した7インチロールを用い、上記A練りゴムシートへ表5に示すB練り配合剤を表5に示す配合量で加え、全体を約5分間混練することにより、ゴムのB練りロールゴムシートを作製した。
このB練りロールゴムシートを170℃に温度設定したプレスで15分間加熱、加圧することにより、2mm厚の架橋ゴムシートを成形した。成形したゴムシートは性能試験を行うまで温度23℃、湿度50%RHに調節した恒温恒湿槽内で24時間状態調節し、同恒温恒湿槽内で性能試験2)を行った。
性能試験2)
実施例23および比較例4で得られた各試験片に対し、体積固有抵抗率の測定を行った。測定は絶縁抵抗計(三菱油化株式会社製、ハイレスタHP)を用い、電圧を10V印加し、1分後の抵抗値を読み取り体積固有抵抗値を算出した。測定結果は表5に併記する。
Figure 0004923946
実施例および比較例で得られた各ポリエーテル多元共重合体架橋物の評価は次の通りである。
表1中、実施例12〜22の架橋物はエピクロロヒドリンのようなハロゲン含有化合物を少量しか用いないか、あるいは全く用いることなく製造され(実施例1〜11)、したがってハロゲン含有量の低いないしはゼロのものである。そして、実施例12〜22の架橋物は、表3、表4の性能試験結果から分かるように、エピクロロヒドリン系ゴムを用いて製造された比較例3の架橋物と比較しても遜色のない耐熱性、耐燃料油性、低温特性を有しており、耐燃料油性については比較例3の架橋物より優れた性能を有している。
これに対し、側鎖にカーボネート基を有する構成単位(I)の割合が本発明の範囲から逸脱したポリエーテル多元共重合体(参考例2)を用いた比較例2の架橋物では充分な耐熱性、耐油性が得られない。側鎖にカーボネート基を有する構成単位(I)の代わりにプロピレンオキシド由来の構成単位を有するポリエーテル多元共重合体(参考例1)を用いた比較例1の架橋物は、低温特性に優れているものの、耐熱性、耐油性に劣る。
また、表5中、実施例23の架橋物は、エピクロロヒドリン系ゴム(比較例4)と同様に、一般的に半導電領域と呼ばれる体積固有抵抗率を有している。なお、ゴム材料における半導電領域とは通常10〜1010Ω・cm程度の範囲である。
ポリエーテル系多元共重合体は以上のように構成されており、その架橋物は優れた耐熱性、耐油性、半導電性を併せ持っている。したがって、同共重合体はエピクロロヒドリン系ゴムに代表されるポリエーテル系ゴムが使用されている分野に広く応用することができ、例えば、自動車用などの各種燃料系積層ホース、エアー系積層ホース、チューブ、ベルト、ダイヤフラム、シール類等ゴム材料や、電気・電子機器用ゴム部品、OA機器に用いられる帯電ロール、転写ロールなどの半導電性ゴム部品、一般産業用機器・装置等のゴム材料として有用である。なかでもポリエーテル多元共重合体の優れた耐熱性、耐油性などを活かして、特に自動車用ゴム部品への応用が期待される。
さらに、ポリエーテル多元共重合体はその化学構造上、ハロゲン原子をほとんど含んでいないか、あるいは全く含んでいないので、例えば燃焼によるハロゲン含有ガスの発生といった環境汚染を低減することが可能となる。

Claims (8)

  1. 下記一般式(I)で表される構成単位10〜99モル%、下記一般式(II)で表される構成単位0〜89モル%、および架橋性オキシラン単量体由来の構成単位1〜10モル%を有してなる、ポリエーテル系多元共重合体。
    Figure 0004923946
    [式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を意味する。]
    Figure 0004923946
    [式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基または−CHO−Rを意味し、Rは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を意味する。]
  2. 100℃で測定したムーニー粘度(ML1+4)が10〜200の範囲内にある請求項1に記載のポリエーテル系多元共重合体。
  3. (II)で表される構成単位がエチレンオキシド単位である請求項1または2に記載のポリエーテル系多元共重合体。
  4. (I)で表される構成単位が20〜75モル%の範囲内にある請求項1から3のいずれかに記載のポリエーテル系多元共重合体。
  5. ハロゲン含有量が7重量%以下である請求項1から4のいずれかに記載のポリエーテル系多元共重合体。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のポリエーテル系多元共重合体を架橋してなる架橋物。
  7. 請求項6に記載の架橋物からなる自動車用ゴム部品。
  8. 請求項6に記載の架橋物からなる半導電性ゴム部品。
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