JP5304189B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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本発明は、光学フィルムの製造方法、該製造方法によって得られる光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板及び表示装置に関するものである。
近年、自動車搭載用の液晶ディスプレイ、大型液晶テレビのディスプレイ、携帯電話、ノートパソコン等の普及から液晶表示装置の需要が増えてきている。液晶表示装置は、従来のCRT表示装置に比べて、省スペース、省エネルギーであることからモニターとして広く使用されている。さらにTV用としても普及が進んできている。このような液晶表示装置には、偏光フィルムとしての光学フィルムが使用され、その需要が急増してきている。
ところで、液晶表示装置に用いられる偏光板の偏光フィルムは、延伸ポリビニルアルコールフィルムから成る偏光子の片面または両面にセルロースエステルフィルムが保護膜として積層されている。
このような光学フィルムでは、光学的な欠陥がなく、平滑な表面であることが要求される。特に、モニターやTVの大型化や高精細化が進み、これらの要求品質は、ますます厳しくなってきている。
光学フィルムの製造方法には、大別して溶融流延製膜法と溶液流延製膜法とがある。前者は、樹脂を加熱溶融して、溶融物を支持体上に流延して冷却固化し、その後、支持体から剥離して、さらに必要に応じて延伸してフィルムを作製する方法である。後者は、樹脂を溶媒に溶かして、その溶液(ドープ)を支持体上に流延し、支持体上で溶媒をある程度蒸発させた後、支持体から剥離し、さらに必要に応じて延伸して、フィルムを作製する方法である。
いずれの製膜法であっても、溶融した樹脂または樹脂溶液は支持体上で冷却固化や乾燥固化される。そして、支持体から剥離された後、樹脂フィルムは、複数の搬送ロールを用いて搬送されながら、乾燥や延伸などの処理がなされる。
しかし、剥離後のフィルムを搬送するための複数の搬送ロールのほとんどは、駆動する機能を持たず、フィルムとの摩擦力によって、つれ回るようになっているため、フィルムとの摩擦力が不十分であるとスリップ現象を起こし、搬送ロールの微小な凹凸によって、フィルム面に傷を付けたり、また、搬送方向のシワ状の膜厚ムラなどが発生しやすいという問題がある。
このような問題に対して、特許文献1においては、剥離後のフィルムをテンター直後に搬送ロールで搬送しながら乾燥する工程で、フィルムの少なくとも一方の側端部に凹凸によるナーリングを付与し、搬送ロールとフィルムの摩擦力を確保する方法が提案されている。
特開2003−175522号公報
しかしながら、特許文献1の方法を用いても、フィルム面の搬送方向のシワ状の膜厚ムラの問題は、十分に解決できなかった。本発明人は、このような問題に対して鋭意検討した結果、支持体上に流延したフィルムを剥離した直後、溶融流延製膜法の場合は高温のフィルムが冷却固化する過程で、溶液流延製膜法の場合は残留溶媒が蒸発する過程で、フィルムが幅方向に収縮し、そのためフィルム表面にシワ状の膜厚ムラが発生することが分かった。また、この幅方向の収縮により、ヘイズ値やクロスニコル透過率が上昇し、フィルムの光学特性に悪影響を及ぼしていることも分かった。
よって、本発明は、支持体より流延膜であるフィルムを剥離した後、フィルム幅方向に収縮することを抑制し、フィルム表面の傷やシワ状の膜厚ムラを無くし、ヘイズ値やクロスニコル透過率を低減した光学フィルムの製造方法及び該製造方法を用いて製造した光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板、表示装置を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.
樹脂を含む液体を支持体上に流延し、流延膜を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法において、前記支持体上に流延膜を形成する工程から、該支持体から流延膜を剥離する工程までの間に、前記流延膜の幅方向両端部に凹形状又は凸形状、又はその両方の形状の変形をつける工程を有し、前記変形をつける工程は、前記支持体の表面に、樹脂を含む凸状物を形成し、その後に流延膜を形成する工程であり、該流延膜に前記凸状物を付着させることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
2.
樹脂を含む液体を支持体上に流延し、流延膜を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法において、前記支持体上に流延膜を形成する工程から、該支持体から流延膜を剥離する工程までの間に、前記流延膜の幅方向両端部に凹形状又は凸形状、又はその両方の形状の変形をつける工程を有し、前記変形をつける工程は、前記流延膜の表面に水を含む液滴を噴霧する工程であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
3.
前記液体が、前記樹脂を溶媒に溶解させた液体であることを特徴とする前記1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
4.
前記液体が、前記樹脂を熱により溶融した液体であることを特徴とする前記1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
5.
前記変形をつける工程は、前記流延膜の残留溶媒量(質量%)が50〜150質量%の範囲であることを特徴とする前記3に記載の光学フィルムの製造方法。
但し、残留溶媒量(質量%)は、一定の大きさの流延膜を115℃で1時間乾燥した時の流延膜の質量をBとし、乾燥前の流延膜の質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)とする。

前記変形をつける工程は、前記支持体の表面温度が前記流延膜のガラス転位温度(Tg)に対して、Tg±50℃の範囲であることを特徴とする前記に記載の光学フィルムの製造方法。

前記凸状物は、前記支持体の表面に、前記樹脂を含む液体をインクジェット法により付着させることで形成することを特徴とする前記に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、流延膜を剥離する工程までに、流延膜の幅方向両端部に凹凸形状を形成するので、搬送ロールとの摩擦が十分に働き、剥離後の幅方向の収縮を抑制することができ、よって、フィルム表面の傷やシワ状の膜厚ムラを無くし、ヘイズ値やクロスニコル透過率を低減した光学フィルムの製造方法及び該製造方法を用いて製造した光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板、表示装置を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学フィルムの製造方法は、樹脂を含む液体を支持体上に流延し、流延膜を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法において、支持体上に流延膜を形成する工程から、該支持体から流延膜を剥離する工程までの間に、流延膜の幅方向両端部に凹形状もしくは凸形状、あるいはその両方の形状の変形をつける工程を有することを特徴とする。このようにすることで、剥離後、流延膜であるフィルムを搬送ロールにより搬送するときに、搬送ロールとフィルムの両端部の凹凸部との摩擦を十分に得ることができ、フィルム搬送時の幅方向の収縮を抑えることができる。よって、フィルム表面のシワ状の膜厚ムラを無くすことができ、その結果、ヘイズやクロスニコル透過率の上昇を抑えることができ、光学品質の高い光学フィルムを製造することができる。特に、フィルムの流延幅が1500mm以上の場合に、幅方向の収縮に対する効果が大きく、光学品質の高い光学フィルムを製造することができる。また、搬送ロールとフィルムの両端部の凹凸部との摩擦を十分に得ることができるので、駆動源を持たない搬送ロールであっても、フィルムとの間でスリップすることが無く、擦り傷の発生もない。また、流延膜の幅方向両端部とは、両端から所定の距離の範囲を指し、所定の距離は特に限定するものではないが、20〜100mm程度の範囲である。凹凸の変形をつける範囲は、流延膜の端から上記距離の範囲内であれば良く、端まで凹凸を形成しなくても良い。また、凹凸の形状についても、特に限定するものでなく、ドット状、搬送方向に連続する凹凸形状、流延膜の幅方向に平行または角度を持った凹凸形状等であっても良い。また、ドットの密度や凹凸形状のピッチなども適宜決めれば良い。
また、本発明の樹脂を含む液体を支持体上に流延し、流延膜を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法においては、該液体が、樹脂を溶媒に溶解させた液体である溶液流延製膜法、又は、樹脂を熱により溶融させた溶融流延製膜法を用いるものである。
本発明の溶液流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法においては、凹凸の変形をつける工程は、支持体上の流延膜の残留溶媒量が50〜150質量%の範囲であることが好ましい。残留溶媒量が150質量%以下の場合、凹凸形成後の乾燥過程で、凹凸部の高さが低くなる現象を抑えることができる。また、残留溶媒量が50質量%以上の場合、凹凸の変形をつける工程で、加工性が良く、所定の高さの凹凸を容易に得ることができる。なお、本発明での残留溶媒量(質量%)の値は一定の大きさの流延膜を115℃で1時間乾燥した時の流延膜の質量をBとし、乾燥前の流延膜の質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)で求めた値である。
また、本発明の溶融流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法においては、凹凸の変形をつける工程は、支持体の表面温度が流延膜のガラス転位温度(Tg)に対して、Tg±50℃の範囲であることが好ましい。支持体の表面温度が、Tg+50℃以下の場合、凹凸形成後の乾燥過程で、凹凸部の高さが低くなる現象を抑えることができる。また、支持体の表面温度が、Tg−50℃以上の場合、凹凸の変形をつける工程で、加工性が良く、所定の高さの凹凸を容易に得ることができる。
また、本発明の光学フィルムの製造方法における変形をつける工程は、流延膜の表面にレーザー光を照射する工程であることが好ましい。流延膜の表面にレーザー光を照射することにより、流延膜の表面を局部的に高温にし、流延膜表面に凹凸の形状を形成することができる。レーザーの種類は特に限定されないが、樹脂への吸収率やレーザー出力の安定性、レーザー発振器の価格などを考慮すると、COレーザーが好ましい。波長は、樹脂フィルムの吸収率が高い赤外線領域(λ=0.8〜20μm)が好ましい。
また、本発明の光学フィルムの製造方法における変形をつける工程は、支持体の表面が凹凸の形状を有し、該支持体の表面に流延膜を形成する工程であることが好ましい。予め、支持体の表面の所定の位置に凹凸を形成しておき、その上に流延膜を形成することで、流延膜に凹凸の形状を容易に形成することができる。支持体の表面への凹凸の形成は、切削やエッチング、型押しなどの方法により、所定の位置に凹凸の形状を形成することができる。また、支持体はベルト状やロール状であっても良く、特に形状は限定されない。
また、本発明の光学フィルムの製造方法における変形をつける工程は、支持体の表面に、樹脂を含む凸状物を形成し、その後に流延膜を形成する工程であることが好ましい。支持体の表面に、樹脂を含む凸状物を形成し、その後に流延膜を形成することで、流延膜の表面に樹脂を含む凸状物を付着させ、凹凸形状を形成することができる。凸状物の形成には、流延膜に用いた樹脂と同じ樹脂を用いるのが好ましく、特に、溶液流延製膜法を用いる場合は、そのドープと同じ組成物を用いて凸状物を形成するのが好ましい。このようにすることで、流延膜と凸状物の付着力が強まり、剥離後の搬送工程で欠落することがない。
また、本発明の光学フィルムの製造方法における変形をつける工程は、溶液流延製膜法を用いる場合は、流延膜の表面に水を含む液滴を噴霧する工程であることが好ましい。流延膜の表面に水を含む液滴を噴霧することにより、流延膜に含まれる溶剤との親和性の違いにより、流延膜表面に凹凸形状を形成することができる。また、該液滴には、溶媒を含むことがより好ましい。溶媒の沸点や含有量を調節することにより、流延膜表面に形成される凹凸の形状を。容易に調節することができる。液滴の大きさとしては、10〜100μm程度が好ましい。また、溶媒は、水と相溶性のある溶媒が好ましく、メチレンクロライドやエタノールがより好ましい。
図1に本発明の溶液流延成膜法を用いた光学フィルムの製造方法における流延工程から剥離工程までの要部を示す。図1を用いて、流延膜に凹凸の変形をつける工程を説明する。フィルム原料となるドープ液を流延ダイ1から支持体2に流延し、流延膜3を形成する。形成された流延膜3に凹凸をつける工程として、流延膜の表面にレーザー光を照射する工程の場合、レーザー照射装置10により、レーザー光を支持体2上の流延膜3に照射して、凹凸を形成する。また、流延膜の表面に水滴もしくは水と溶媒を含む液滴を噴霧する工程の場合、タンク21に貯留した水又は水と溶媒を含む溶液をポンプ22を用いてノズル23から噴霧して、支持体2上の流延膜3に噴霧し、流延膜3の表面に凹凸を形成する。また、支持体の表面に、樹脂を含む凸状物を形成し、その後に流延膜を形成する工程の場合、流延ダイ1でドープを流延する前の支持体上に、インクジェットヘッド31を用いて、樹脂を溶解した液体を吐出し、支持体上に凸状物を形成し、その上に流延膜を形成する。また、予め支持体2の表面に凹凸形状を形成したものを使用する場合は、この支持体2に流延膜を形成するだけで、凹凸の表面を持つ流延膜3を形成することができる。これらの凹凸を形成する工程は、1つ以上用いれば良く、また、流延膜3の少なくとも片面側に形成すればよいが、流延膜3の両面に形成するのが好ましい。このように支持体2上にある流延膜の表面に凹凸を形成した後、剥離ロール4により、流延膜を剥離し、搬送ロール5〜9を用いて、搬送する。このようにすることで剥離後の流延膜3と搬送ロールとの摩擦を維持することで、流延膜の幅方向の収縮を抑制すると共に、搬送ロールとのスリップを防止することができる。
また、図2に本発明の溶融流延成膜法を用いた光学フィルムの製造方法における流延工程から剥離工程までの要部を示す。樹脂溶融物を流延ダイ1から支持体(第1冷却ロール)2に流延し、流延膜3を形成した後、タッチロール40で流延膜の表面を押圧した後、第2冷却ロール51、第3冷却ロール52により冷却し、剥離ロール4で剥離する。その後、搬送ロール5〜9で搬送する。凹凸をつける工程として、図1の溶液流延製膜法の場合と同様に、支持体2上に流延する工程から、支持体2より剥離するまでの間で、レーザー光学系10、インクジェットヘッド31、表面に凹凸を予め形成した支持体2を用いて、それぞれ支持体2上の流延膜3に凹凸を形成することができる。このようにして溶融流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法においても、剥離後の流延膜3と搬送ロールとの摩擦を維持することで、流延膜の幅方向の収縮を抑制できると共に、搬送ロールとのスリップを防止することができる。
つぎに、溶液流延製膜方法を用いた本発明の光学フィルム製造方法について、詳しく説明する。
本発明の溶液流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法による実施形態としては、ドープ調製工程、流延工程、凹凸加工工程、剥離工程、乾燥工程、および巻取り工程を具備するものである。
すなわち、本実施形態の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(樹脂溶液)を、流延ダイから、例えば幅1.8m以上の回転駆動金属製エンドレスベルト(ベルト支持体)上に流延し、ベルト支持体上の流延膜に凹形状もしくは凸形状、あるいはその両方の形状の変形をつけ、その後ベルト支持体上から剥離した流延膜(フィルム)を乾燥させた後、巻き取り、光学フィルムを製造する方法である。
[溶解工程]
本発明において、樹脂フィルム原料としては、セルロースエステルが好ましく用いられ、樹脂フィルム原料としてセルロースエステルを用いた場合、溶媒としてはメチレンクロライドとアルコールの混合溶媒が好ましく用いられる。
その他、ドープ中に添加される添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、マット剤等がある。本発明において、これらの添加剤はセルロースエステル溶液の調製の際に添加してもよいし、マット剤等の分散液の調製の際に添加してもよい。
以下に、光学フィルムの樹脂がセルロースエステルである場合の例を示すが、本発明はこれに限定されるわけではない。
まず、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られた樹脂のドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
原料セルロースエステルと溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解装置で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
本発明において、セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲が、より好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
セルロースエステルドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃が、より好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下が、より好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
図3は、本発明の溶液流延製膜方法により光学フィルムを製造する装置を例示するものである。
[流延工程]
まず、流延工程は、溶解釜で調整されたドープを、導管によって流延ダイ1に送液し、無限に移送する例えば回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体2上の流延位置に、流延ダイ1からドープを流延する工程である。
流延ダイ1としては、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。
流延ダイ1は、内部スリット壁面と支持体2表面とのなす角度を40〜90°にするのが、好ましく、特に60〜75°が好ましい。
流延ダイ1のダイリップと支持体2表面との間隙は、0.2〜10mmの間隙を取って設置されるのが好ましく、さらに0.5〜5mmの間隙が、より好ましい。
流延ダイ1のスリットのギャップは0.05〜1.5mmが好ましく、0.15〜1.0mmが、より好ましい。
つぎに、支持体2について説明する。
支持体2の表面粗さRaは、0.0001〜1μmであり、0.0003〜0.1μmが、より好ましく、0.0005〜0.05μmがさらに好ましい。
また、図4に示すように支持体2の両端には、高さhが10〜20μm、ピッチPが5〜15mmの凹凸を設け、ドープの流延幅W0と該凹凸部とが幅W1が5〜50mmで重なるように流延するのが好ましい。このようにすることで、以下に述べるエンボス加工工程として、特別に、インクジェット装置や噴霧装置、レーザー光照射装置を用いることなく、流延膜の幅方向両端部に容易に凹凸を形成することができ、剥離後の流延膜乾燥工程で、流延膜の幅方向の収縮を抑制することができる。たとえば、流延膜の搬送速度が50〜200m/sの範囲では、支持体の高さhが10μm以上であれば剥離後の流延膜と搬送ロールとの摩擦が十分に得られ、また、20μm以下であれば、流延膜両端部における凹凸のある部分と内部分との歪みが少なく、平坦な状態で搬送することができ、好ましい。凹凸のピッチも上記範囲内であれば、剥離後、効果的に流延膜と搬送ロールとの摩擦を得ることができ、好ましい。
支持体2として回転駆動エンドレスベルトを具備する図示の製膜装置では、該ベルト支持体2は一対のドラム19およびその中間に配置されかつエンドレスベルト支持体2の上部移行部及び下部移行部をそれぞれ裏側より支えている複数のロール(図示略)より構成される。この複数のロールはサポートロールと呼ばれ、隣り合うサポートロール同士の間の距離が0mより大きく、5m以下の範囲内、好ましくは1〜5m、望ましくは2〜5mにすることが望ましい。
また、回転駆動エンドレスベルト支持体2の両端巻回部のドラム19の一方、もしくは両方に、ベルト支持体2に張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってベルト支持体2は張力が掛けられて張った状態で使用される。
支持体2としてエンドレスベルトを用いる場合には、製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲が、より好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
また、支持体2搬送速度が10m/分以上では、流延ダイ1のリップから出てくる流延膜3に減圧を掛けてエア混入や、フィルム幅手方向に横段状のスジをつくる原因となる流延リボンのばたつきを抑制するため、流延ダイ1上流側に減圧チャンバーを設け、10〜800Pa減圧するのが好ましく、さらに好ましくは10〜200Paである。
減圧チャンバーの下部端面と、支持体2表面との間隙は、0.5〜5mmの範囲が吸引風量が大きくなり過ぎず、それにより、流延ダイ1リップ端部のドープ乾燥皮膜の発生が抑制されるため望ましい。
また、製膜速度を上げるために、加圧流延ダイ1を流延用支持体2上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層製膜してもよい。
支持体2上へドープを流延する際は、原料樹脂の溶解に用いた溶剤の沸点未満、混合溶剤では最も沸点の低い溶剤の沸点未満の温度に制御するのが好ましい。
支持体2としてエンドレスベルトを用いる方式においては、支持体2上では、流延膜3が支持体2から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、流延膜3中の残留溶媒量が150質量%以下まで乾燥させるのが好ましく、80〜120質量%が、より好ましい。また、支持体2から流延膜3を剥離するときの流延膜温度は、0〜30℃が好ましい。また、流延膜3は、支持体2からの剥離直後に、支持体2密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時の流延膜温度は5〜30℃がさらに好ましい。
[溶媒蒸発工程]
エンドレスベルト支持体2上に流延されたドープにより形成されたドープ膜(流延膜)を、支持体2上で加熱し、支持体2から流延膜が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、流延膜側から風を吹かせる方法、支持体2の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。
[凹凸加工工程]
支持体2上にドープを流延し、流延膜3を形成した後、剥離工程までに、流延膜の幅方向両端部に凹凸を形成する工程である。上記で説明したように、支持体2に予め凹凸を形成しておくことによって、特に凹凸形成部材を別に用いることなく、流延膜3に凹凸を形成できる。その他の凹凸の形成方法及び凹凸形成時の流延膜3の残留溶媒量については、図1を用いてすでに説明しているのでここでの説明は省く。
[剥離工程]
支持体2にエンドレスベルトを用いる方式においては、支持体2と流延膜3を剥離する際の剥離張力は、通常200〜250N/mで剥離が行われるが、剥離の際に流延膜3にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜170N/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜140N/mで剥離することである。
[乾燥工程]
支持体2にエンドレスベルトを用いる方式においては、剥離後の流延膜3は初期乾燥装置13に導入する。初期乾燥装置13内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール17によって流延膜3が蛇行せられ、その間に流延膜3は初期乾燥装置13の底の前寄り部分から吹込まれ、初期乾燥装置13の天井の後寄り部分から排出せられる温風26によって乾燥される。
使用するロールの直径は85〜300mmが好ましく、100〜200mmがより好ましい。
この乾燥工程において、剥離された流延膜3は、幅方向に収縮しようとするが、本発明においては、剥離された流延膜3の幅方向両端部には、すでに凹凸が形成されているので、搬送ロール17との摩擦が十分に働き、幅方向の収縮を抑制することができ、また、搬送ロール17と流延膜3とのスリップを防止することができ、できあがった光学フィルムは、傷が無く、平面性の優れたものとなる。
[延伸工程]
画像表示部材用フィルムとしては、流延膜(またはフィルム)の両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が知られており、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
テンター装置14による延伸工程においては、例えばセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター装置14によって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
なお、テンター装置14による延伸工程においては、テンター装置14の底の前寄り部分から吹込まれ、テンター装置14の天井の後寄り部分から排出せられる温風26によって流延膜3が、延伸と共に乾燥されている。
[後乾燥工程]
テンター装置14による延伸工程の後に、テンタークリップにより保持した部分及び凹凸の形成した部分を、切断装置であるスリッター50を用いて、切り落とすことが好ましい。その後、後乾燥装置15で後乾燥する。後乾燥装置15内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール17によって流延膜3が蛇行せられ、その間に流延膜3が乾燥せられるものである。また、後乾燥装置15でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥装置15での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
なお、流延膜3(またはフィルム)を乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば後乾燥装置15の底の前寄り部分から吹込まれ、後乾燥装置15の天井の後寄り部分から排出せられる温風25によって乾燥される。乾燥温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
[エンボス工程]
つぎに、後乾燥工程後の流延膜3の両側縁部に設けるエンボスについて説明する。後乾燥工程を終えた樹脂フィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置60によりフィルムにエンボスを形成する加工が行われる。
ここで、エンボスの高さは、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅は、フィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。例えばフィルム膜厚40μm、フィルム幅100cmであるとき、エンボス31の高さは2〜12μm、幅は5〜30mmに設定する。エンボスは、フィルムの両面に形成してもよい。
[除電工程]
巻取前及び巻取部直後に除電器を設置し、フィルムを除電するのが好ましい。
除電器は、元巻を再繰り出しした際の帯電電位が±2kV以下となるように、巻取時に除電装置あるいは強制帯電装置により逆電位を与える構成で行うことができるが、強制帯電電位が、1〜150Hzで正負交互に変換される除電器により除電する構成とすることもできる。
また、上記の除電器に代えて、イオン風を発生させるイオナイザーや除電バーを利用することができる。ここで、イオナイザー除電は、エンボス加工装置から搬送ロールを経て巻き取られていくフィルムに向けてイオン風を吹き付けることによって行われる。イオン風は、除電器により発生される。除電器としては、公知のものを制限なく用いることができる。
製膜巻取り時の除電は、元巻を再繰出しして機能性膜塗工する際、帯電電位が±2kV以上あると塗布ムラを誘発するためであり、特に薄膜、高速化を追求した場合、再繰り出し時のフィルム剥離帯電が高くなるため、製膜時除電は必須となる。
[巻き取り工程]
乾燥が終了した流延膜3は、フィルムとして巻取り装置18によって巻き取られる。光学フィルムの元巻を得る工程である。乾燥を終了するフィルム20の残留溶媒量は、0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
巻取りコア(巻芯)への、フィルムの接合は、両面接着テープでも、片面接着テープでもどちらでも良い。
つぎに、溶融流延製膜方法を用いた本発明の光学フィルム製造方法について、説明する。
図5は、本発明の溶融流延製膜方法による光学フィルムの製造方法の一実施形態を模式的に示す図である。
同図を参照すると、ホッパー71に、例えばセルロースエステルのペレット、可塑剤、および酸化防止剤を投入し、ホッパー71から所定の供給速度で、ヘンシェルミキサー72に原材料が運ばれ、混合される。ヘンシェルミキサー72で混合された原材料は、押出機73に運ばれ、例えば250℃で加熱溶融され、溶融物は、本発明による流延ダイ1から押出成形される。流延ダイ1から押出された溶融物は、支持体としての第1冷却ロール2にて冷却、表面矯正される。この場合、流延膜3と支持体2は密着することが好ましく、流延膜3を支持体2に密着させる方法として、例えばタッチロール40を用いて押し付ける。支持体である第1冷却ロール2上の流延膜に凹凸をつける加工を行い、さらに、第2冷却ロール51、及び第3冷却ロール52の合計3本の冷却ロールに順に外接させて冷却固化し、剥離ロール4によって剥離する。剥離された流延膜3は、縦延伸装置81と横延伸装置82によりフィルムの縦(搬送方向)及び横(幅手方向)に延伸した後、裁断装置であるスリッター50で流延膜の両端部を裁断し、その後、エンボス装置60でエンボス加工した後に、巻取り装置18により巻き取られ、ロール状の光学フィルムが得られるものである。
本発明において、用いられる熱可塑性樹脂は、溶融流延製膜法により製膜可能であれば、特に限定されない。例えば、セルロースエステル、ポリカーボネート、脂環式構造含有樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルなどが挙げられる。中でも光弾性係数が小さいことから、セルロースエステルや脂環式構造含有樹脂が好ましく、特に吸水率の小さいことから脂環式構造含有樹脂が好ましい。
また、本発明において、光学フィルムには、添加剤として有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有するエステル系可塑剤、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の少なくとも1種の可塑剤、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤から選択される少なくとも1種の安定剤を含んでいることが好ましく、さらにこの他に過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、マット剤、染料、顔料、さらには前記以外の可塑剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤以外の酸化防止剤などを含むことができる。
フィルム組成物を加熱溶融すると分解反応が著しくなり、この分解反応によって着色や分子量低下に由来した該構成材料の強度劣化を伴うことがある。また、フィルム組成物の分解反応によって、好ましくない揮発成分の発生も併発することもある。
フィルム組成物を加熱溶融するとき、上述の添加剤が存在することは、材料の劣化や分解に基づく強度の劣化を抑制すること、または材料固有の強度を維持できる観点で優れている。
原料となる樹脂ペレットおよび粉体材料は、予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機などで水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
原料を、図5に示す供給ホッパー71から押出機73へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。可塑剤などの添加剤を予め混合しない場合は、押出機73の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂からなるペレットと粉体とを押出機(図示略)で溶融混錬してペレットを作製し、そのペレットを、いま1つの押出機73で溶融混錬して、流延ダイ1から冷却ロール(金属支持体)2上に流延して製膜する方法と、ペレットと粉体とを押出機73で溶融混錬して、そのまま流延ダイ1からから冷却ロール(金属支持体)2上に流延して製膜する方法の両方が、製膜に用いることができる。
粉体の粒径は、ふるい網の目開き250μm以下が好ましい(JIS Z 8801−1)。粉体の粒径が大きすぎると、押出機73での混錬でも十分な混合と分散が得られず、場合によっては、押出機73のバレル内壁に粉体が固着してしまい、その部分に樹脂の熱劣化物が蓄積、それが、時折、流出してフィルムに熱劣化物による異物のトラブルが発生しやすくなる。また、粒径が小さ過ぎる場合は特にハンドリングで問題となることがある。ペレットは、直径および長さ1mmから5mmの粒径のものが好ましい。
また、融点の異なる複数の材料が混合された系においては、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦おこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出機73に投入して製膜することも可能である。熱分解しやすい樹脂や添加剤を使用する場合においては、樹脂の溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
フィルム製膜に用いる押出機73は、単軸押出機73でも2軸押出機73でも良い。材料からペレットを作製せずに直接製膜する場合では適当な混練度が必要であるため、2軸押出機73を用いることが好ましいが、単軸押出機73でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより適度の混練が得られ製膜が可能となる。1軸押し出し機においても、2軸押し出し機においてもベント口を設け、真空ポンプなどを用いてベント口からガスを除去することが望ましい。一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を作製する場合は、単軸押出機73でも2軸押出機73でも良い。
押出機73内および押出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出機73内の樹脂の溶融温度は樹脂の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には成形材料のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg以上、Tg+100℃以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは溶融温度はTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。押出し時の溶融粘度は10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出機73内での樹脂の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、より好ましくは3分以内、最も好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出機73の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出機73のスクリューの形状や回転数等は、樹脂の粘度や吐出量等により適宜選択される。押出機73でのせん断速度は、好ましくは1/秒〜10000/秒、より好ましくは5/秒〜1000/秒、最も好ましくは10/秒〜100/秒である。ギアポンプ噛み込み防止、メインフィルタ負荷低減のため、押出機73の出側にプレフィルターを設けることが好ましい。
例えば必要に応じて50/80/100メッシュのスクリーンや金属繊維の焼結フィルターを設けることが好ましい。オンラインチェンジ可能なタイプを使用することが好ましい。
第1冷却ロール2に密着した樹脂の厚みの調整機構としては、幅手方向に分割して温度を調整するヒーター式、機械的にリップ開度を調整する手動ボルト方式、あるいは、ヒーターによりボルトの伸縮を利用してリップ開度を調整するヒートボルト方式などを使用することが好ましい。
ダイの材質としては、ニッケル、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超硬、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどがあげられる。
ダイスリップ部の好ましい材質は、ダイと同様である。シャークスキン防止のためにはリップと樹脂の摩擦を減らすことが重要であり、Dual Spiral Systems Inc.社製のK05MFCを使用することが好ましい。また、リップ部の表面粗度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
流延ダイ1から押出された材料は、第1冷却ロール2にて冷却、表面矯正される。流延ダイ1から押出された材料が第1冷却ロール2に接触するまでの時間は短い方が好ましく、10秒以内、好ましくは5秒以内、最も好ましくは2秒以内である。また、流延ダイ1から第1冷却ロール2までの距離は10mm以上100mm以下が好ましい。
第1冷却ロール2に密着する直前の樹脂の温度はTg以上であることが好ましく、より好ましくはTg+50℃以上。樹脂の温度を高く保つことでリボンの伸張により発生する流れ方向のリタデーションを小さくすることができる。流延ダイ1出口から樹脂が第1冷却ロール2に密着する直前のエアギャップにおいて樹脂を保温することが好ましい。保温方法としてはマイクロ波による誘導加熱、赤外線ヒーターによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。赤外線ヒーターは、電気式、ガス式、オイル式あるいはスチーム式の遠赤外セラミックヒーターが利用できる。
流延ダイ1から樹脂が流出する際、昇華物等による流延ダイ1や第1冷却ロール2の汚染を防ぐため、流延ダイ1付近に吸引装置をつけることが好ましい。吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱するなどの処置を施すことが必要である。また、吸引圧が大きすぎると段ムラなどフィルム品質に影響を及ぼす、小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
流延膜3と第1冷却ロール2は密着することが好ましい。流延膜3と第1冷却ロール2を密着させる方法としては、タッチロール40を用いて押し付けること、静電密着法、エアーナイフ、減圧チャンバーなどが使用できる。
本発明における流延膜3に凹凸をつける工程は、流延ダイ1から溶融物を流下して、支持体である第1冷却ロールに流下した後、タッチロール40により流延膜3が第1冷却ロールに密着している状態で、凹凸を形成するのが好ましい。
本発明においては、この場合、第1冷却ロールの幅方向両端部に高さhが10〜20μm、ピッチPが2〜15mmの凹凸を設け、流延膜3の流延幅と該凹凸部とが幅5〜30mmで重なるように流延するのが好ましい。このようにすることで、特別に、インクジェット装置やレーザー光照射装置を用いることなく、流延膜の幅方向両端部に容易に凹凸を形成することができ、剥離してから延伸工程までの流延膜搬送過程において、延伸膜の冷却による幅方向の熱収縮を抑制することができる。支持体の高さhが10μm以上であれば剥離後の流延膜と搬送ロールとの摩擦が十分に得られ、また、20μm以下であれば、乾燥後の流延膜両端部における凹凸のある部分と内部分との歪みを少なくすることができ、好ましい。凹凸のピッチも上記範囲内であれば、剥離後、効果的に流延膜と搬送ロールとの摩擦を得ることができ、好ましい。
凹凸の加工方法及び凹凸加工時の支持体2の表面温度については、図2を用いてすでに説明しているのでここでの説明は省く。
冷却ロールの表面粗度は0.1S以下が好ましい。タッチロール40の材質としては金属、または金属ロールの周りに樹脂、ゴムなどを巻いたものを用いることができる。
また、タッチロール40に密着する直前の温度はTg以上が好ましく、より好ましくはTg+50℃以上である。
第1冷却ロール2、第2冷却ロール51、第3冷却ロール52の温度調整は冷却ロール内部に水や油などの熱媒体を流すことにより調整することが好ましい。
第3冷却ロール52から剥離ロール4により剥離された流延膜3は、縦延伸装置81により搬送方向(MD方向)にロール延伸される。この縦延伸装置81を用いた縦延伸工程においては、流延膜3を長手方向に、1.01倍以上、3.0倍以下に延伸するものである。縦延伸方法としては、公知に用いられるロール延伸法で行うことができる。縦延伸後、流延膜は、横延伸装置82を用いて幅手方向に延伸される。延伸する方法は、公知のテンターなどを好ましく用いることができる。この横延伸装置82を用いた横延伸工程においては、流延膜3を幅方向に、1.01倍以上、2.5倍以下に延伸するものである。
横延伸された流延膜3は、延伸装置で用いたテンタークリップにより保持した部分や凹凸の形成した部分を、切断装置であるスリッター50を用いて、切り落とすことが好ましい。
その後、巻取り機18により巻き取る前に、巻き中の貼り付きやすり傷防止のためにエンボス加工を両端に施すのが、好ましい。
本発明の製造方法により製造された光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、液晶表示装置の薄型化とフィルム強度の観点から、仕上がりフィルムとして10〜150μmの範囲に調整するのが好ましく、さらに20〜100μmの範囲に調整するのがより好ましく、特に25〜80μmの範囲の範囲に調整するのが好ましい。
次に、本発明の製造方法により作製されたセルロースエステルフィルムは、偏光板および表示装置に用いることができる。
本発明における偏光板は、本発明により製造された光学フィルムよりなる偏光板用保護フィルムを、少なくとも一方の面に有するものである。
そして、本発明において、液晶表示装置は、上記の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有するものである。
つぎに、これらの偏光板、および該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理した本発明によるセルロースエステルフィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも本発明によるセルロースエステルフィルムを用いても、別の偏光板用保護フィルムを用いてもよい。本発明によるセルロースエステルフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板用保護フィルムは市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルムをもう一方の面の偏光板用保護フィルムとして用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
本発明の偏光板は、本発明によるセルロースエステルフィルムを偏光子の少なくとも片側に偏光板用保護フィルムとして使用したものである。その際、該セルロースエステルフィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
この偏光板が、横電界スイッチングモード型である液晶セルを挟んで配置される一方の偏光板として、本発明によるセルロースエステルフィルムが液晶表示セル側に配置されることが好ましい。
偏光板に好ましく用いられる偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられ、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
偏光子の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。該偏光子の面上に、本発明によるセルロースエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。また、セルロースエステルフィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することができる。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと、延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸に対して直交する方向(通常は幅手方向)には伸びる。偏光板用保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板用保護フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板用保護フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明によるセルロースエステルフィルムは、表面にシワ等が無く平滑性に優れるため、このような偏光板用保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
(液晶表示装置)
本発明により作製された光学フィルムが用いられた偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
ここで、液晶表示装置は、一般に、光反射板、バックライト、導光板、光拡散板に隣接して、偏光板すなわち偏光散乱異方性を有する偏光板保護フィルム/二色性物質による光吸収作用を利用した二色性偏光フィルム/偏光板保護フィルムの構成、及び液晶表示パネル、視認側偏光板の順に積層された構成をとることが好ましい。
本発明により作製された光学フィルムは、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられ、色むら、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
このように、本発明により作製された光学フィルムを用いた偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有する液晶表示装置は、表示品質が非常に優れているものである。
以下、本発明を用いた光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法、溶液流延製膜法により実施した例を示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。
まず、本発明の溶液流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法を用いた実施例、比較例について説明する。
(実施例1〜5)
(溶液流延製膜のドープ調製)
下記の素材を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過し、ドープを調製した。なお、二酸化珪素微粒子(アエロジルR972V)は、エタノールに分散した後添加した。
(ドープ組成)
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.88) 100質量部
トリフェニルホスフェート 8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(液体の可塑剤) 4質量部
5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)
−2H−ベンゾトリアゾール(液体の紫外線吸収剤) 1質量部
メチレンクロライド 418質量部
エタノール 23質量部
アエロジルR972V
(光学フィルムの作製)
上記のドープを用いて、以下のようにして、光学フィルムを作製した。フィルムの製膜は、図3に示す製造装置で行った。まず、濾過したドープをコートハンガーダイよりなる流延ダイより、ステンレス製でかつ超鏡面に研磨したエンドレスベルトからなる金属支持体上にフィルム状に流延した。金属支持体上の流延膜の残留溶媒量が表1に示す値になるときに、凹凸の変形をつける工程として、図3に示すレーザー光照射装置10により流延膜にレーザー光を照射した。レーザー光源としては、COレーザー(キーエンス社製、波長10.6μm、出力60W)をパルス照射し、流延膜の幅方向両端部に、端部から50mmまでの幅に、10mm間隔で表1に示す高さ10〜20μmの凹凸をつけた。凹凸をつけた流延膜を金属支持体から剥離し、90℃の雰囲気でロール搬送しながら乾燥させ、テンターで、残留溶媒量10質量%のとき100℃の雰囲気内で幅手方向に1.06倍延伸した。その後、流延膜の両端部(端部から60mmの幅)をスリッター50により切断した。切断後、ロール搬送しながら125℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、エンボス加工装置60により、フィルム両端に幅30mmのエンボス加工を施し、膜厚40μm、フィルム幅2000mm、巻き取り長5200mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
上記のようにして得られた実施例1〜5の光学フィルムの評価を以下のように行った。
(搬送ロールの搬送性の測定)
剥離ロール4で剥離した流延膜の両端部の凹凸部と搬送ロールの材料であるステンレス製鋼板との動摩擦係数の測定をJIS K7125記載の方法で行い、流延膜を搬送したときの動摩擦係数の値が0.30未満のものを搬送生不良(×)、0.30〜0.40Nを示したものを搬送性良(○)、0.40Nを越える大きい値を示したものを搬送性優(◎)とした。搬送生不良の場合、幅方向の収縮が大きく、また、搬送ロールのスリップによる傷がフィルム表面に発生し、製品上問題となる。
(擦り傷の観察)
作製したフィルムの表面を、目視にて観察し、搬送ロールのスリップによる擦り傷の有無を判断した。
(幅収縮率の測定)
金属支持体から剥離ロール4で剥離する時の流延膜の幅を測定してaとし、剥離してから延伸装置14に入る直前の位置でのフィルムの幅を測定してbとした。この時の幅収縮率R=b/aを評価した。
(ヘイズの測定)
ヘイズはフィルム試料1枚をASTM−D1003−52に従って、東京電色工業(株)製T−2600DAを使用して測定し、拡散光線透過率/全光線透過率×100として評価した。ヘイズは、幅収縮が少ないと、フィルム表面にシワなどの発生が少なく、値が低下し、光学フィルムとして用いる場合、好ましい。
(クロスニコル(CN)透過率の測定)
クロスニコル透過率は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、互いにクロスニコルに配置された2枚の偏光板に作製した光学フィルムを挟み込み、23℃、55%RHの環境下で波長590nmで測定した時の輝度を、互いにパラニコルに配置された2枚の偏光板に作製した光学フィルムを挟み込み同条件で測定した時の輝度で除した後に100倍することで得た。クロスニコル(CN)透過率は、幅収縮が小さいと低下するため、光学フィルムとして用いる場合、好ましい。
評価結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例3において、凹凸の変形をつける工程であるレーザー光照射を行う替わりに、タンク21に貯留した水と溶媒を含む溶液をポンプ22を用いてノズル23から噴霧する液滴噴霧装置を用いて行った他は、実施例3と同様に行い、実施例6の光学フィルムを作製し、評価した。水と溶媒を含む溶液の組成は、水10に対して、エチレンクロライド1、エタノール1とした。液滴の大きさは、φ100μmのものを噴霧した。
(実施例7)
実施例3において、凹凸の変形をつける工程であるレーザー光照射を行う替わりに、支持体2の表面にインクジェット装置31により、ドープと同じ組成のφ100μmの液滴を吐出して、凸部を形成した後、その上に流延膜を形成した他は、実施例3と同様に行い、実施例7の光学フィルムを作成し、評価した。
(実施例8)
実施例3において、凹凸の変形をつける工程であるレーザー光照射を行う替わりに、図4に示すように予め支持体2の幅方向両端部の表面に高さ20μm、ピッチが10mmの凹凸を形成し、流延膜の両端部50mmの範囲で重なるようにした他は、実施例3と同様に行い、実施例8の光学フィルムを作成し、評価した。
(比較例1)
実施例3において、凹凸の変形をつける工程であるレーザー光照射を行わなかった他は、実施例3と同様に行い、比較例1の光学フィルムを作成し、評価した。
実施例6〜8、比較例1の評価結果を表1に示す。
Figure 0005304189
次に、本発明の溶融流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法を用いた実施例について説明する。
(実施例9〜13)
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基の置換度1.95、プロピオニル基の置換度0.7、数平均分子量75,000、温度130℃で5時間乾燥、ガラス転移点:Tg=174℃)
トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート)10質量部
IRGANOX−1010(チバ・ジャパン社製) 1質量部
SumilizerGP(住友化学社製) 0.5質量部
上記材料に、シリカ粒子0.05質量部、UV吸収剤(TINUVIN360)0.5質量部を加え、窒素ガスを封入したV型混合機で30分混合した後、2軸押出し機を用いて240℃で溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製した。得られたペレットを100度5時間乾燥させ、含水率100ppmとし、流延ダイを取り付けた単軸押出し機に供給して押出し機および流延ダイを250℃に設定して製膜を行った。流延ダイから出たフィルムは温度調整したクロムメッキ鏡面の支持体としての第1冷却ロール2に落下させた。その後、タッチロール40で流延膜を第1冷却ロール2に密着させた。次に、第1冷却ロール2の表面温度が表2に示す値になるときに、凹凸の変形をつける工程として、図5に示すレーザー光照射装置10により流延膜にレーザー光を照射した。レーザー光源としては、COレーザー(キーエンス社製、波長10.6μm、出力60W)をパルス照射し、流延膜の幅方向両端部に、端部から50mmまでの幅に、10mm間隔で表2に示す高さ10〜20μmの凹凸をつけた。凹凸をつけた流延膜を、さらに第2冷却ロール51、第3冷却ロール52の合計3本の冷却ロールの順に外接させて、冷却固化し、剥離ロール4により剥離した後、搬送ロール17で搬送して、縦延伸装置81で長手方向に1.02倍に延伸し、その後、横延伸装置82により幅方向に1.06倍延伸した。その後、凹凸形成した流延膜の両端部(端部から60mmの幅)をスリッター50により切断した。切断後、エンボス加工装置60によりフィルム両端に幅30mmのエンボス加工を施し、膜厚40μm、フィルム幅2000mm、巻き取り長5200mのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムのガラス転移温度(Tg)は135℃であった。
上記のようにして得られた実施例9〜13の光学フィルムの評価を実施例3と同様に行った。なお、幅収縮率の測定は、剥離ロール4で剥離する時の流延膜の幅を測定してaとし、剥離してから縦延伸装置81に入る直前の位置でのフィルムの幅を測定してbとした。この時の幅収縮率R=b/aを評価した。
(実施例14)
実施例11において、凹凸の変形をつける工程であるレーザー光照射を行う替わりに、第1冷却ロール2の表面にインクジェット装置31により、実施例3で用いたドープと同じ組成のφ100μmの液滴を吐出して、凸部を形成した後、その上に流延膜を形成した他は、実施例11と同様に行い、実施例14の光学フィルムを作成し、評価した。
(実施例15)
実施例11において、凹凸の変形をつける工程であるレーザー光照射を行う替わりに、予め第1冷却ロール2の幅方向両端部の表面に高さ20μm、ピッチが10mmの凹凸を形成し、流延膜の両端部50mmの範囲で重なるようにした他は、実施例11と同様に行い、実施例15の光学フィルムを作成し、評価した。
(比較例2)
凹凸の変形をつける工程であるレーザー光照射を行わなかった他は、実施例11と同様に行い、比較例2の光学フィルムを作成し、評価した。
実施例9〜15、比較例2の評価結果を表2に示す。
Figure 0005304189
表1、表2の結果から明らかなように、本発明の溶液流延製膜法及び溶融流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法において、支持体上に流延膜を形成する工程から、該支持体から流延膜を剥離する工程までの間に、流延膜の幅方向両端部に凹形状もしくは凸形状、あるいはその両方の形状の変形をつける工程を有することにより、剥離後の流延膜の幅方向の収縮が抑制され、ヘイズやクロスニコル透過率が改善されると共に、光学フィルム表面への擦り傷を無くすことができ、光学特性の良好な光学フィルムを製造できることが分かる。
(偏光板の作製)
以下に記載の方法に従い、実施例1〜15及び比較例1、2の光学フィルムをアルカリケン化処理を行った後、それぞれ偏光板を作製した。
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程:2モル/L NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 : 水 30℃ 45秒
中和工程 :10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 : 水 30℃ 45秒
上記条件で各試料を、ケン化、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作製した。この偏光膜の片面に実施例1〜15及び比較例1、2の光学フィルムを、反対面にコニカミノルタタック(コニカミノルタオプト(株)製)を上記アルカリケン化処理を行った後、完全ケン化型ポリビニルアルコール5質量%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせて偏光板を作製した。
(液晶表示装置としての特性評価)
SONY製40型ディスプレイの視認側の偏光板を剥がし、上記で作製した各々の偏光板を液晶セルのサイズに合わせて偏光板の偏光軸が元と変わらないように互いに直交するように貼り付け、40型TFT型カラー液晶ディスプレイを作製し、光学フィルムの偏光板としての特性を評価した。
本発明の実施例1〜15の光学フィルムを用いた偏光板を搭載した液晶表示装置は、比較例1、2の光学フィルムを用いた偏光板を搭載した液晶表示装置に対してコントラストも高く、優れた表示性を示した。これにより、液晶ディスプレイ等の画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。
本発明の溶液流延成膜法を用いた光学フィルムの製造方法における流延工程から剥離工程までの要部を示す概略図である。 本発明の溶融流延成膜法を用いた光学フィルムの製造方法における流延工程から剥離工程までの要部を示す概略図である。 本発明の溶液流延製膜方法により光学フィルムを製造する装置の概略図である。 本発明の支持体の幅方向両端部に形成した凹凸の形状を示す概略図である。 本発明の溶融流延製膜方法により光学フィルムを製造する装置の概略図である。
符号の説明
1 流延ダイ
2 支持体、第1冷却ロール
3 流延膜
4 剥離ロール
5〜9、17 搬送ロール
10 レーザー光照射装置
13 初期乾燥装置
14 テンター
15 後乾燥装置
18 巻取り装置
20 フィルム
21 タンク
22 ポンプ
23 ノズル
31 インクジェットヘッド
40 タッチロール
50 スリッター
51 第2冷却ロール
52 第3冷却ロール
60 エンボス加工装置
71 ホッパー
72 ヘンシェルミキサー
73 押出機

Claims (7)

  1. 樹脂を含む液体を支持体上に流延し、流延膜を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法において、前記支持体上に流延膜を形成する工程から、該支持体から流延膜を剥離する工程までの間に、前記流延膜の幅方向両端部に凹形状又は凸形状、又はその両方の形状の変形をつける工程を有し、
    前記変形をつける工程は、
    前記支持体の表面に、樹脂を含む凸状物を形成し、その後に流延膜を形成する工程であり、該流延膜に前記凸状物を付着させることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 樹脂を含む液体を支持体上に流延し、流延膜を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法において、前記支持体上に流延膜を形成する工程から、該支持体から流延膜を剥離する工程までの間に、前記流延膜の幅方向両端部に凹形状又は凸形状、又はその両方の形状の変形をつける工程を有し、
    前記変形をつける工程は、
    前記流延膜の表面に水を含む液滴を噴霧する工程であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  3. 前記液体が、前記樹脂を溶媒に溶解させた液体であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記液体が、前記樹脂を熱により溶融した液体であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記変形をつける工程は、前記流延膜の残留溶媒量(質量%)が50〜150質量%の範囲であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
    但し、残留溶媒量(質量%)は、一定の大きさの流延膜を115℃で1時間乾燥した時の流延膜の質量をBとし、乾燥前の流延膜の質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)とする。
  6. 前記変形をつける工程は、前記支持体の表面温度が前記流延膜のガラス転位温度(Tg)に対して、Tg±50℃の範囲であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記凸状物は、前記支持体の表面に、前記樹脂を含む液体をインクジェット法により付着させることで形成することを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
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