JP5303537B2 - ポリアミドイミド樹脂組成物および該ポリアミドイミド樹脂組成物を用いた絶縁シート - Google Patents
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Description
本発明は、耐熱性、機械的強度および耐トラッキング性に優れたポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
近年、絶縁材料として、高耐熱性の材料が求められている。高耐熱の材料としては、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂等の芳香族系高分子が挙げられる。しかしながら、芳香族系高分子は、絶縁材料に要求される電気的特性の一つである耐トラッキング性に劣るという問題がある(非特許文献1)。
トラッキングは、固体絶縁物からの遊離炭素の生成と堆積によって発生する。樹脂の耐トラッキング性を向上させる方法として、例えば、遊離炭素を減らすために、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水和物のような無機物を充填する方法が提案されている。しかしながら、無機物の充填量によっては破断強度や破断伸びといった樹脂本来の特性が損なわれるおそれがある。また、樹脂の熱分解の際に遊離炭素ではなく、揮発性炭素化合物として系外に放出する方法として、例えば、脂肪族構造を導入することにより、遊離炭素の生成を抑制することが考えられる。しかしながら、この場合、耐熱性(例えば、連続使用温度の指標となるガラス転移温度)が低下するおそれがある。このように、耐トラッキング性と樹脂本来の特性を両立させることは困難である。
また、モーターやジェネレーター等の回転電機やトランスなどでは、巻線コイルとコアとの間、あるいは、相の異なる電流が流される巻線コイルの間には、絶縁シートを配置し、絶縁性を確保している。このような絶縁シートとしては、例えば、全芳香族ポリアミド紙を芳香族ポリアミド樹脂系の樹脂組成物を介して貼り合せた積層フィルムが用いられている(例えば、特許文献1)。このような絶縁シートでは、全芳香族ポリアミド紙の間に芳香族ポリアミド樹脂組成物を用いることにより耐熱性を向上させている。このような絶縁シートは積層構造を有するため、シートの厚みが厚くなる。そのため、コイルを増やし、性能を向上させるためには、大型化せざるを得ず、絶縁シートの薄型化が要求されている。
高分子の耐熱性(1970)、神戸博太郎著、培風館
本発明の目的は、耐熱性、機械的強度および耐トラッキング性に優れるポリアミドイミド樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下に示すポリアミドイミド樹脂組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、脂環式構造を含むポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂とのポリマーブレンドを含む。
好ましい実施形態においては、上記ポリマーブレンドにおける脂環式構造を含むポリアミドイミド樹脂の含有割合が樹脂固形分比で50%以下である。
好ましい実施形態においては、上記ポリマーブレンドのガラス転移温度は200℃以上である。
本発明の別の局面によれば、絶縁シートが提供される。この絶縁シートは上記ポリアミドイミド樹脂組成物が用いられる。
好ましい実施形態においては、上記ポリマーブレンドにおける脂環式構造を含むポリアミドイミド樹脂の含有割合が樹脂固形分比で50%以下である。
好ましい実施形態においては、上記ポリマーブレンドのガラス転移温度は200℃以上である。
本発明の別の局面によれば、絶縁シートが提供される。この絶縁シートは上記ポリアミドイミド樹脂組成物が用いられる。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂とのポリマーブレンドを含む。このようなポリアミドイミド樹脂組成物を用いることにより、耐トラッキング性の向上と、良好な耐熱性を両立することができる。さらに、本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、樹脂組成物自体が絶縁性、耐熱性および耐トラッキング性を有しているため、単層で絶縁シートとして好適に用いることができる。
<A.ポリアミドイミド樹脂組成物>
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂とのポリマーブレンドを含む。本発明で用いる脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂とのポリマーブレンドを原子間力顕微鏡(AFM)で観察すると、芳香族ポリアミドイミド樹脂(海部分)中に脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂(島部分)が分散した海島構造となっている。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を用いる場合、得られたフィルムが十分な可とう性を有していない場合がある。本発明で用いるポリマーブレンドでは、可とう性に優れる芳香族ポリアミドイミド樹脂が脂環式ポリアミドイミド樹脂を包含する海島構造をとることにより、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を用いることによる耐トラッキング性の向上および樹脂本来の耐熱性維持という効果だけではなく、可とう性にも優れるフィルムを形成することができる。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂とのポリマーブレンドを含む。本発明で用いる脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂とのポリマーブレンドを原子間力顕微鏡(AFM)で観察すると、芳香族ポリアミドイミド樹脂(海部分)中に脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂(島部分)が分散した海島構造となっている。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を用いる場合、得られたフィルムが十分な可とう性を有していない場合がある。本発明で用いるポリマーブレンドでは、可とう性に優れる芳香族ポリアミドイミド樹脂が脂環式ポリアミドイミド樹脂を包含する海島構造をとることにより、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を用いることによる耐トラッキング性の向上および樹脂本来の耐熱性維持という効果だけではなく、可とう性にも優れるフィルムを形成することができる。
上記ポリマーブレンドにおいて、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂の割合は、樹脂固形分比で50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂の割合が50%以下、すなわち、芳香族ポリアミドイミド樹脂の割合が50%以上であることにより、得られるフィルムの可とう性がさらに向上し得る。
上記ポリマーブレンドは、ガラス転移温度が200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることが好ましい。本発明で用いるポリマーブレンドのガラス転移温度が上記の範囲内であれば、本発明のポリアミドイミド樹脂組成物を用いて得られたフィルムを耐熱性が要求される用途にも好適に用いることができる。
<A−1.脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂>
本発明で用いられる脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂の構造内に脂環式構造が導入されたポリアミドイミド樹脂である。脂環式構造は、炭素原子が単結合で繋がった構造を有するため、熱分解時の遊離炭素の生成を抑制することができる。さらに、脂環式構造は嵩高い環構造であるため、ガラス転移温度が著しく低下することがなく、耐熱性を保持することができる。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂は、例えば、ポリアミドイミド樹脂を合成する際に、脂環式構造を有する化合物を用いることにより得られる。好ましくは、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂は、その製造に用いる無水トリメリット酸以外の化合物に由来する芳香族環構造を含まない。このようなポリアミドイミド樹脂を用いることにより、耐トラッキング性をさらに向上させることができる。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂における脂環式構造の割合は、合成に用いる脂環式構造を有する化合物の割合を適宜設定することにより、調整することができる。
本発明で用いられる脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂の構造内に脂環式構造が導入されたポリアミドイミド樹脂である。脂環式構造は、炭素原子が単結合で繋がった構造を有するため、熱分解時の遊離炭素の生成を抑制することができる。さらに、脂環式構造は嵩高い環構造であるため、ガラス転移温度が著しく低下することがなく、耐熱性を保持することができる。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂は、例えば、ポリアミドイミド樹脂を合成する際に、脂環式構造を有する化合物を用いることにより得られる。好ましくは、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂は、その製造に用いる無水トリメリット酸以外の化合物に由来する芳香族環構造を含まない。このようなポリアミドイミド樹脂を用いることにより、耐トラッキング性をさらに向上させることができる。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂における脂環式構造の割合は、合成に用いる脂環式構造を有する化合物の割合を適宜設定することにより、調整することができる。
脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を合成する方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。例えば、無水トリメリット酸クロライドとジアミンとを反応させる酸クロライド法、トリメリット酸無水物とジイソシアネートとを反応させるイソシアネート法、トリメリット酸無水物とジアミンとを反応させる直接重合法が挙げられる。なかでも、作業の効率性に優れるという点から、イソシアネート法が好ましい。
上記イソシアネート法により、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を合成する場合、脂環式構造を有する化合物としては、脂環式ジイソシアネート、シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられる。コスト面に優れることから、脂環式ジイソシアネートを用いることが好ましい。
脂環式ジイソシアネートとしては、任意の適切な物を用いることができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。環境への負荷が小さく、コスト面に優れることから、ジシクロへキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
溶媒としては、任意の適切な溶媒を使用することができ、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
上記脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂の合成には、必要に応じて、触媒を用いてもよい。該触媒としては、任意の適切な物を用いることができ、例えば、ジアザビシクロウンデンセン、トリエチレンジアミン、フッ化カリウム、フッ化セシウム等が挙げられる。
反応温度および反応時間については、適宜設定すればよく、例えば、反応温度は150〜250℃、反応時間は5〜20時間に設定され得る。
芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する方法としては、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を合成する方法と同様の方法を用いることができ、作業効率に優れるという点から、イソシアネート法が好ましい。
上記イソシアネート法により、芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する場合、芳香族を有する化合物としては、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。作業効率に優れるということから、芳香族ジイソシアネートを用いて、イソシアネート法を行うことが好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、任意の適切な物を用いることができ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。コスト面に優れることから、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
溶媒としては、上記脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂の合成に用いられる溶媒を好適に用いることができる。
反応温度および反応時間については、適宜設定すればよく、例えば、反応温度は80〜250℃、反応時間は1〜10時間に設定され得る。また、必要に応じて、触媒を用いてもよく、該触媒としては、上記の触媒と同様の物が用いられる。
上記ポリマーブレンドの調製方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。例えば、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂を合成して得られたワニスと芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成して得られたワニスとを所望の割合で混合する方法が挙げられる。
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでいてもよい。該添加剤としては、絶縁材料用フィラーとして一般的に使用される添加剤を用いることができる。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレイ等が挙げられる。
<B.絶縁シート>
本発明の1つの実施形態による絶縁シートは、上記ポリアミドイミド樹脂組成物が用いられる。上記ポリアミドイミド樹脂組成物は、それ自体が耐熱性、機械的強度および耐トラッキング性に優れる。したがって、上記ポリアミドイミド樹脂組成物により形成されるフィルムを単独で絶縁シートとして用いることができる。
本発明の1つの実施形態による絶縁シートは、上記ポリアミドイミド樹脂組成物が用いられる。上記ポリアミドイミド樹脂組成物は、それ自体が耐熱性、機械的強度および耐トラッキング性に優れる。したがって、上記ポリアミドイミド樹脂組成物により形成されるフィルムを単独で絶縁シートとして用いることができる。
本発明の絶縁シートは、滑り性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。
上記絶縁シートの厚みは、好ましくは10μm〜150μmである。本発明の絶縁シートは、従来の積層フィルムからなる絶縁シート(通常、厚み200μm〜250μm)に比べて、薄型化が可能であり、かつ、優れた絶縁性を有する。したがって、本発明の絶縁シートを用いることにより、回転電機やトランスといった絶縁シートを用いる製品の小型化を可能とし得る。さらに、絶縁シート自体が薄いため、大型化をすることなく、コイルを増やすことができ、モーター等の性能を向上させることができる。
本発明について、以上の実施例および比較例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)炭素残さ率:
TG−DTA2000SA(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて、昇温速度10℃/分で500℃まで昇温し、減少した重量から500℃における炭素残さ率を算出した。
(2)厚み:
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて測定した。
(3)耐トラッキング性(CTI値):
耐トラッキング性試験器(山崎産業株式会社製、商品名「HAT−500−3型耐トラッキング性試験器」)を用いて、IEC−60112に準じてCTI値を測定した。0.1%塩化アンモニウム水溶液を50滴滴下し、試験片がトラッキングを起こすことなく耐えられる最大電圧を測定した。値が大きいほど、耐トラッキング性に優れることを示す。
(4)絶縁破壊電圧:
絶縁耐力試験装置(東京変圧器株式会社製)を用いて、12.5mm球状電極、電極間荷重500g、昇圧速度1000V/秒で絶縁破壊電圧を測定した。値が大きいほど絶縁性に優れることを示す。
(5)可とう性:
実施例および比較例において、フィルムをガラス基板から剥離する際にフィルムに割れが生じないものを○、割れが生じるものを×とした。
(6)ガラス転移温度:
DSC200F3(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて、昇温速度10℃/分で測定し、変極点をガラス転移温度とした。
(7)引張弾性率、引張強度、破断伸び:
サンプルは、ダンベル3号に打ち抜いたフィルムを使用した。テンシロン万能試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて、100mm/分の引張速度で評価を行った。
(1)炭素残さ率:
TG−DTA2000SA(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて、昇温速度10℃/分で500℃まで昇温し、減少した重量から500℃における炭素残さ率を算出した。
(2)厚み:
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて測定した。
(3)耐トラッキング性(CTI値):
耐トラッキング性試験器(山崎産業株式会社製、商品名「HAT−500−3型耐トラッキング性試験器」)を用いて、IEC−60112に準じてCTI値を測定した。0.1%塩化アンモニウム水溶液を50滴滴下し、試験片がトラッキングを起こすことなく耐えられる最大電圧を測定した。値が大きいほど、耐トラッキング性に優れることを示す。
(4)絶縁破壊電圧:
絶縁耐力試験装置(東京変圧器株式会社製)を用いて、12.5mm球状電極、電極間荷重500g、昇圧速度1000V/秒で絶縁破壊電圧を測定した。値が大きいほど絶縁性に優れることを示す。
(5)可とう性:
実施例および比較例において、フィルムをガラス基板から剥離する際にフィルムに割れが生じないものを○、割れが生じるものを×とした。
(6)ガラス転移温度:
DSC200F3(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて、昇温速度10℃/分で測定し、変極点をガラス転移温度とした。
(7)引張弾性率、引張強度、破断伸び:
サンプルは、ダンベル3号に打ち抜いたフィルムを使用した。テンシロン万能試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて、100mm/分の引張速度で評価を行った。
(合成例1)
撹拌翼付メカニカルスターラーを取り付けた4つ口フラスコに、トリメリット酸無水物(TMA)0.3モル、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)0.3モル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)198mLを仕込み、120℃で3時間反応させた。得られたワニスの組成比を表1に示す。
撹拌翼付メカニカルスターラーを取り付けた4つ口フラスコに、トリメリット酸無水物(TMA)0.3モル、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)0.3モル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)198mLを仕込み、120℃で3時間反応させた。得られたワニスの組成比を表1に示す。
(合成例2)
撹拌翼付メカニカルスターラーを取り付けた4つ口フラスコに、TMA0.3モル、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(HMDI)0.3モル、NMP204mL、触媒としてジアザビシクロウンデンセン(DBU)0.003モルを仕込み、200℃で9時間反応させた。得られたワニスの組成比を表1に示す。
撹拌翼付メカニカルスターラーを取り付けた4つ口フラスコに、TMA0.3モル、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(HMDI)0.3モル、NMP204mL、触媒としてジアザビシクロウンデンセン(DBU)0.003モルを仕込み、200℃で9時間反応させた。得られたワニスの組成比を表1に示す。
(合成例3)
撹拌翼付メカニカルスターラーを取り付けた4つ口フラスコに、TMA0.3モル、MDI0.15モル、HMDI0.15モル、NMP201mLとを仕込み、120℃で2時間反応させた。次いで、触媒としてジアザビシクロウンデンセン(DBU)0.0015モルを仕込み、200℃で5時間反応させた。得られたワニスの組成比を表1に示す。
撹拌翼付メカニカルスターラーを取り付けた4つ口フラスコに、TMA0.3モル、MDI0.15モル、HMDI0.15モル、NMP201mLとを仕込み、120℃で2時間反応させた。次いで、触媒としてジアザビシクロウンデンセン(DBU)0.0015モルを仕込み、200℃で5時間反応させた。得られたワニスの組成比を表1に示す。
[実施例1]
合成例1と合成例2で得られたワニスを樹脂固形分の重量比で、合成例1/合成例2=7/3となるように混合し、ガラス基板上に塗布した。次いで、塗布したガラス基板を高温恒温器内で80℃で15分、150℃で15分、240℃で15分加熱した。室温まで冷却した後、ガラス基板から剥離し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性について、表2および3に示す。
合成例1と合成例2で得られたワニスを樹脂固形分の重量比で、合成例1/合成例2=7/3となるように混合し、ガラス基板上に塗布した。次いで、塗布したガラス基板を高温恒温器内で80℃で15分、150℃で15分、240℃で15分加熱した。室温まで冷却した後、ガラス基板から剥離し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性について、表2および3に示す。
[実施例2]
合成例1と合成例2の割合を樹脂固形分の重量比で、合成例1/合成例2=5/5とした以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの特性について、表2および3に示す。
合成例1と合成例2の割合を樹脂固形分の重量比で、合成例1/合成例2=5/5とした以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの特性について、表2および3に示す。
(比較例1)
合成例1のワニスのみを用いた以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの特性について、表2および3に示す。
合成例1のワニスのみを用いた以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの特性について、表2および3に示す。
(比較例2)
合成例2で得られたワニスのみを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス基板に塗布し、室温まで冷却した。乾燥後の塗膜は、ガラス基板からの剥離の際に割れが生じ、フィルムは得られなかった。用いたポリアミドイミド樹脂組成物の炭素残さ率を表2に、ガラス転移温度を表3にそれぞれ示す。
合成例2で得られたワニスのみを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス基板に塗布し、室温まで冷却した。乾燥後の塗膜は、ガラス基板からの剥離の際に割れが生じ、フィルムは得られなかった。用いたポリアミドイミド樹脂組成物の炭素残さ率を表2に、ガラス転移温度を表3にそれぞれ示す。
(比較例3)
合成例3で得られたワニスのみを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス基板に塗布し、室温まで冷却した。乾燥後の塗膜は、ガラス基板からの剥離の際に割れが生じ、フィルムは得られなかった。用いたポリアミドイミド樹脂組成物の炭素残さ率を表2に、ガラス転移温度を表3にそれぞれ示す。
合成例3で得られたワニスのみを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス基板に塗布し、室温まで冷却した。乾燥後の塗膜は、ガラス基板からの剥離の際に割れが生じ、フィルムは得られなかった。用いたポリアミドイミド樹脂組成物の炭素残さ率を表2に、ガラス転移温度を表3にそれぞれ示す。
[評価]
表2および3から明らかなように、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂のポリマーブレンドを含むポリアミドイミド樹脂組成物である実施例1および2は、耐トラッキング性および絶縁性に優れるものであった。また、実施例1および2のポリアミドイミド樹脂組成物は可とう性および物理的強度にも優れていた。一方、芳香族ポリアミドイミド樹脂のみを含むポリアミドイミド樹脂組成物である比較例1は、耐熱性および機械的強度に優れるものの、耐トラッキング性に劣るものであった。また、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂のみを含むポリアミドイミド樹脂組成物である比較例2は、炭素残さ率が低いため、優れた耐トラッキング性を有すると考えられる。しかしながら、可とう性に劣るためフィルムを形成することが困難であり、耐トラッキング性を測定することができなかった。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂との共重合体を用いた比較例3は、ポリアミドイミド樹脂組成物中に含まれる脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂との割合が実施例2と同じである。しかしながら、比較例3は比較例2と同様に、炭素残さ率からは優れた耐トラッキング性を有していると予測されるものの、可とう性に劣るため、フィルムを形成し耐トラッキング性を測定することが困難であった。
表2および3から明らかなように、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂のポリマーブレンドを含むポリアミドイミド樹脂組成物である実施例1および2は、耐トラッキング性および絶縁性に優れるものであった。また、実施例1および2のポリアミドイミド樹脂組成物は可とう性および物理的強度にも優れていた。一方、芳香族ポリアミドイミド樹脂のみを含むポリアミドイミド樹脂組成物である比較例1は、耐熱性および機械的強度に優れるものの、耐トラッキング性に劣るものであった。また、脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂のみを含むポリアミドイミド樹脂組成物である比較例2は、炭素残さ率が低いため、優れた耐トラッキング性を有すると考えられる。しかしながら、可とう性に劣るためフィルムを形成することが困難であり、耐トラッキング性を測定することができなかった。脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂との共重合体を用いた比較例3は、ポリアミドイミド樹脂組成物中に含まれる脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂との割合が実施例2と同じである。しかしながら、比較例3は比較例2と同様に、炭素残さ率からは優れた耐トラッキング性を有していると予測されるものの、可とう性に劣るため、フィルムを形成し耐トラッキング性を測定することが困難であった。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、任意の適切な用途に使用される。本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、可とう性および物理的強度と耐トラッキング性とを両立することができるため、産業用モーター、自動車用モーター、変圧器、電子機器用線材被覆材等に好適に用いることができる。
Claims (4)
- 脂環式構造を含むポリアミドイミド樹脂と芳香族ポリアミドイミド樹脂とのポリマーブレンドを含む、ポリアミドイミド樹脂組成物。
- 前記ポリマーブレンドにおける脂環式構造を含むポリアミドイミド樹脂の含有割合が樹脂固形分比で50%以下である、請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
- 前記ポリマーブレンドのガラス転移温度が200℃以上である、請求項1または2に記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
- 請求項1から3のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物を用いた、絶縁シート。
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