JP5299612B2 - 静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂及びその製造方法、静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、画像形成方法、並びに、画像形成装置 - Google Patents

静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂及びその製造方法、静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、画像形成方法、並びに、画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂及びその製造方法、静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、画像形成方法、並びに、画像形成装置に関する。
プラスチックは、軽さ、加工性、強度、コストなどの点で、他の材料に比べ有利な点が多く、あらゆる分野の製品に使用されているのが現状である。しかしながら、廃棄時に自然環境下でほとんど分解されないため、近年重要になっている環境負荷低減の取り組みにおいても、プラスチックの有害性、低環境負荷プラスチックの必要性が注目されている。
そこで、環境中に多数存在する微生物により分解、無害化される生分解性プラスチックの導入が望まれている。例えば、酸素、水素、炭素からなり、分解すると水と二酸化炭素のみを生成する脂肪族ポリエステルは、代表的な生分解性樹脂である。既にいくつかの分野において生分解性プラスチックが採用され、商品化されているが、汎用材料への拡大をより促進する必要がある。
コスト、生産性、機械的・物理的性能、化学的性能のようなこれまでの汎用材料の全ての特性を維持し、十分な生分解性を有する脂肪族ポリエステルの開発はいまだ検討が継続されている。
また、ゲル化や架橋は一般的に高分子量化や、樹脂強度の向上を目的として使用されることが多い。例えば、特許文献1では、不飽和結合を含むポリエステルに重合開始剤を添加して高分子量化をしている。また、特許文献2〜4には、ゲル分率を制御した樹脂、もしくはトナー用樹脂が発明されている。
さらに、特許文献5には、特定の構造及び物性を有する結晶性樹脂と特定の物性を有する非結晶性樹脂を混合させた生分解性ポリエステルが開示されており、特許文献6には、特定の脂肪族ポリエステルと架橋剤を配合したトナー用結着樹脂が開示されている。
特開平6−298920号公報 特開平10−324766号公報 特開平7−160045号公報 特開平6−49811号公報 特開2006−195352号公報 特開2001−83739号公報
本発明の目的は、静電荷像現像トナーとして実用に耐えうると特性と、適切な生分解性とが両立した静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂を提供することである。
上記課題は、以下の<1>〜<6>に記載の手段により解決された。
<1> 全モノマー単位のうち、(A)芳香環を有するジオール由来のモノマー単位を10〜25mol%、及び、(B)エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位を15〜50mol%含み、ゲル分率が1.0〜15%であり、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く全金属原子の総含有量が、15ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂、
<2> 芳香環を有するジオールを重縮合性単量体の全量に対して10〜25mol%、及び、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸を重縮合性単量体の全量に対して15〜50mol%含む重縮合性単量体を、触媒として硫黄酸を用い重縮合する工程を含む上記<1>に記載の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂の製造方法、
<3> 上記<1>に記載の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂、又は、上記<2>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂を含む静電荷像現像トナー、
<4> 上記<3>に記載の静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤、
<5> 潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含み、前記現像剤として上記<3>に記載の静電荷像現像トナー、又は、上記<4>に記載の静電荷像現像剤を用いる画像形成方法、
<6> 潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体に転写する転写手段とを有し、前記現像剤として上記<3>に記載の静電荷像現像トナー、又は、上記<4>に記載の静電荷像現像剤を用いる画像形成装置。
上記<1>に記載の発明によれば、静電荷像現像トナーとして実用に耐えうると特性と、適切な生分解性とが両立した静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂を提供することができた。
上記<2>に記載の発明によれば、静電荷像現像トナーとして実用に耐えうると特性と、適切な生分解性とが両立した静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂を簡便に製造することができる静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂の製造方法を提供することができた。
上記<3>に記載の発明によれば、静電荷像現像トナーとしての十分な性能を持ちながら、生分解性を有する静電荷像現像トナーを提供することができた。
上記<4>に記載の発明によれば、静電荷像現像剤としての十分な性能を有しながら、生分解性を有する静電荷像現像剤を提供することができた。
上記<5>に記載の発明によれば、画像形成能に優れると共に、静電荷像現像トナーが結着樹脂として生分解性ポリエステル樹脂を使用していることから、より環境への負荷の少ない、画像形成方法を提供することができた。
上記<6>に記載の発明によれば、画像形成能に優れると共に、静電荷像現像トナーが結着樹脂として生分解性ポリエステル樹脂を使用していることから、より環境への負荷の少ない、画像形成装置を提供することができた。
以下、本発明を詳細に説明する。
(ポリエステル樹脂)
本発明の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂(以下、単に「本発明のポリエステル樹脂」ともいう。)は、全モノマー単位のうち、(A)芳香環を有するジオール由来のモノマー単位を10〜25mol%、及び、(B)エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位を15〜50mol%含み、ゲル分率が1.0〜15%であり、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く全金属原子の総含有量が、15ppm以下であることを特徴とする。
本発明の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂は、芳香環を一定量含み、樹脂のゲル分率の制御することにより、トナー及び画像の必要特性を確保している。さらに、本発明の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂は、芳香環を一定量含んでいるが、脂肪族を一定量含む構造により、適切な生分解性を確保している。
また、本発明の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂は、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位を含むことにより、熱特性を向上させることができる。これはエチレン性不飽和結合が分子鎖の運動を阻害するためである。しかし、エチレン性不飽和結合は、一般に電気的特性の環境依存性を高める傾向がある。そこで、一定量を架橋することによって、生分解を保持したままトナー物性の環境依存性を改善し、熱特性をも制御することができた。
本発明のポリエステル樹脂の製造に用いることができる芳香環を有するジオールとしては、芳香環を1つ以上とヒドロキシ基を2つ有する化合物であればよく、通常、ポリエステル樹脂の製造に使用できるものを選択することができるが、ビスフェノール構造を有する化合物、及び、その誘導体を好ましく挙げることができ、ビスフェノールA、及び、その誘導体をより好ましく挙げることができる。前記誘導体としては、アルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物であることがより好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、ビスフェノール構造を有する化合物1モルに対し、1〜6モル付加物であることが好ましく、1〜4モル付加物であることがより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の製造に用いることができるエチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸としては、エチレン性不飽和結合を1つ以上とカルボキシル基を2つ有し、かつ芳香環を有しない化合物、又は、その誘導体であればよく、鎖状ジカルボン酸であっても、分岐状ジカルボン酸であっても、環状ジカルボン酸であってもよい。
具体的には、フマル酸、マレイン酸、グルタコン酸、2−ブテン−1,4−ジカルボン酸、シトラコン酸、イタコン酸、ムコン酸、プロペニルコハク酸、ブテニルコハク酸、ヘキセニルコハク酸、ヘプテニルコハク酸等、及び、これらの誘導体等が例示できる。たとえば、当該ジカルボン酸の誘導体としては、酸無水物や、エステル、酸ハロゲン化物が例示できる。
また、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸は、生分解性を確保する上で、炭素数が4〜8であることが好ましく、炭素数が4〜6であることがより好ましく、炭素数が4であることがさらに好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を重縮合性単量体(モノマー)として用いて製造することより、重縮合時に、前記エチレン性不飽和結合と、カルボキシル基及び/又はアルキレンオキサイド基のC−H結合などとが一部反応し、本発明のポリエステル樹脂中に架橋が一部形成される(本発明において、「微架橋」ともいう。)。
本発明のポリエステル樹脂の製造には、芳香環を有しない脂肪族ジオールをさらに用いることが好ましい。脂肪族ジオールは、直鎖状であっても、分岐状であっても、環構造を有していてもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、脂肪族ジオールは、2つのヒドロキシ基及び二価の炭化水素基のみからなるジオールであることが好ましい。
芳香環を有しない脂肪族ジオールとして具体的には、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、及び、トリデカンジオールが例示できる。これらの中でも、炭素数が2〜10のものが好ましく、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、及び、デカンジオールが好ましく、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、及び、1,10−デカンジオールがより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の製造には、芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸をさらに用いることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環構造を有していてもよいが、鎖状であるか又は環構造を有していることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸は、2つのカルボキシル基及び二価の炭化水素基のみからなるジカルボン酸であることが好ましい。
芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない直鎖状ジカルボン酸として具体的には、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、及び、トリデカンジカルボン酸を例示できる。直鎖状ジカルボン酸の中でも、カルボキシル基を含めた炭素数が4〜14であるものが好ましく、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸がより好ましい。
また、前記環構造としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、及び、シクロドデカンを挙げることができる。芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない環構造を有するジカルボン酸として具体的には、シクロプロパンジカルボン酸、シクロプロパン二酢酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロブタン二酢酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロペンタン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、シクロオクタンジカルボン酸、シクロオクタン二酢酸、シクロドデカンジカルボン酸、及び、シクロドデカン二酢酸が例示できる。環構造を有するジカルボン酸の中でも、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく例示できる。
また、本発明のポリエステル樹脂の製造には、その構成を損なわない範囲で、多価ジカルボン酸、多価ジオール、及び/又は、ヒドロキシカルボン酸等の重縮合性単量体を用いることもできる。
本発明のポリエステル樹脂における(A)芳香環を有するジオール由来のモノマー単位は、芳香環を有するジオールから構成されたモノマー単位であれば特に制限はない。
なお、本発明のポリエステル樹脂におけるモノマー単位は、エステル結合におけるカルボニル基とカルボニル基に単結合で結合した酸素原子との間、又は、エステル結合でない架橋部位はその架橋箇所で切断された単位とする。
また、本発明のポリエステル樹脂の末端の構造は、特に制限はなく、基質の量比やクエンチ条件等によって種々の構造をとることができ、例えば、ヒドロキシ基や、カルボキシル基、水素原子、重縮合触媒由来の構造などが挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂における(A)芳香環を有するジオール由来のモノマー単位としては、式(A−1)又は式(A−2)で表されるモノマー単位が好ましく例示できる。
Figure 0005299612
式中、A1は芳香環を有する二価の連結基を表し、A2は芳香環を有する(n+2)価の連結基を表し、nは1以上の整数を表し、波線部分は他のモノマー単位との結合位置を表す。
式(A−1)で表されるモノマー単位は、架橋部分のないモノマー単位であり、式(A−2)で表されるモノマー単位は、架橋部分を有するモノマー単位である。
前記A1における芳香環を有する二価の連結基としては、特に制限はないが、ビスフェノール化合物から2つのヒドロキシ基を除いた基、又は、ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物から2つのヒドロキシ基を除いた基であることが好ましく、ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物から2つのヒドロキシ基を除いた基であることがより好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物から2つのヒドロキシ基を除いた基であることがさらに好ましい。
前記ビスフェノール化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAF)、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAP)、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4,4’−(ジメチルシリレン)ビスフェノール、4,4’−オキシビスフェノール等が挙げられる。
また、前記ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを挙げることができるが、これらに限定されない。好適には、エチレンオキサイド、及び/又は、プロピレンオキサイドであり。また、アルキレンオキサイドの付加モル数は、ビスフェノール化合物1モルに対し、1〜6モルであることが好ましい。
前記nは1以上の整数を表し、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
前記A2における芳香環を有する(n+2)価の連結基は、前記A1における芳香環を有する二価の連結基からn個の水素原子を除いた基であればよいが、前記A1における芳香環を有する二価の連結基からアルキレンオキサイド部分の水素原子を1個除いた基であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂における(B)エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位は、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸から構成されたモノマー単位であれば特に制限はない。
本発明のポリエステル樹脂における(B)エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位としては、式(B−1)、式(B−2)又は式(B−3)で表されるモノマー単位が好ましく例示できる。
Figure 0005299612
式中、B1はエチレン性不飽和結合を有する二価の連結基を表し、B2及びB3はそれぞれ独立に、三価の連結基を表し、波線部分は他のモノマー単位との結合位置を表す。
式(B−1)で表されるモノマー単位は、架橋部分のないモノマー単位であり、式(B−2)で表されるモノマー単位は、架橋部分を有するモノマー単位である。
前記B1におけるエチレン性不飽和結合を有する二価の連結基としては、特に制限はないが、炭素原子及び水素原子のみからなる基であることが好ましい。また、B1の炭素数は、生分解性を確保する上で、炭素数が2〜6であることが好ましく、炭素数が2〜4であることがより好ましく、炭素数が2であることがさらに好ましい。
また、前記エチレン性不飽和結合は、樹脂の主鎖に、シス二置換、トランス二置換、ジェミナル二置換、三置換、及び/又は、四置換で導入されていても、樹脂の側鎖に一置換以上の置換で導入されていてもよいが、樹脂の主鎖に、シス二置換、及び/又は、トランス二置換で導入されていることが好ましい。
式(B−1)で表されるモノマー単位は、式(B−1−1)で表されるモノマー単位であることがより好ましい。
Figure 0005299612
式中、L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、波線部分は他のモノマー単位との結合位置を表す。
前記L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素数1〜6の直鎖アルキレン基であることがより好ましく、L1及びL2が両方とも単結合であることがさらに好ましい。
前記B2及びB3における三価の連結基は、前記B1におけるエチレン性不飽和結合を有する二価の連結基のエチレン性不飽和結合を、水素原子及び架橋基(単結合又はエーテル結合)が結合した飽和結合(一重結合)に変更した基あればよいが、その炭素数は、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、(C)芳香環を有しない脂肪族ジオール由来のモノマー単位をさらに有することが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂における(C)芳香環を有しない脂肪族ジオール由来のモノマー単位は、芳香環を有しない脂肪族ジオールから構成されたモノマー単位であれば特に制限はない。
本発明のポリエステル樹脂における(C)芳香環を有しない脂肪族ジオール由来のモノマー単位としては、式(C−1)で表されるモノマー単位が好ましく例示できる。
Figure 0005299612
式中、R1はアルキレン基を表す。
1におけるアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環構造を有していてもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
1の炭素数としては、2〜14であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、(D)芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位をさらに有することが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂における(D)芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位は、芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸から構成されたモノマー単位であれば特に制限はない。
本発明のポリエステル樹脂における(D)芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位としては、式(D−1)で表されるモノマー単位が好ましく例示できる。
Figure 0005299612
式中、R2はアルキレン基を表す。
2におけるアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環構造を有していてもよいが、直鎖状であるか、又は、環構造を有していることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
2の炭素数としては、2〜20であることが好ましく、2〜14であることがより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、その構成を損なわない範囲で、三価以上の多価カルボン酸由来のモノマー単位、三価以上の多価アルコール由来のモノマー単位、及び/又は、ヒドロキシカルボン酸由来のモノマー単位を含有することもできる。
また、本発明のポリエステル樹脂の作製には、その構成を損なわない範囲で、一価のカルボン酸や一価のアルコールを使用してもよい。
本発明のポリエステル樹脂は、全モノマー単位のうち、(A)芳香族ジオール由来のモノマー単位を10〜25mol%、及び、(B)エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸由来のモノマー単位を15〜50mol%含み、さらに(C)脂肪族ジオール由来のモノマー単位を25〜40mol%含むことが好ましい。
また、本発明のポリエステル樹脂は、全モノマー単位100mol%に対し、(A)芳香族ジオール由来のモノマー単位を10〜25mol%、(B)エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸由来のモノマー単位を15〜40mol%、(C)脂肪族ジオール由来のモノマー単位を25〜40mol%、並びに、(D)芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位を10〜35mol%からなることがより好ましく、全モノマー単位100mol%に対し、前記式(A−1)及び/又は(A−2)で表されるモノマー単位を10〜25mol%、前記式(B−1)、式(B−2)及び/又は式(B−3)で表されるモノマー単位を15〜40mol%、前記(C−1)で表されるモノマー単位を25〜40mol%、並びに、前記式(D−1)で表されるモノマー単位を10〜35mol%からなることがさらに好ましい。
本発明のポリエステル樹脂のゲル分率は、1.0〜15%であり、2〜12%であることが好ましく、2〜10%であることがより好ましい。ゲル分率は、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジアルコールの組成比、触媒量、重合温度を制御することにより、変化させることができる。ゲル分率が1.0%以上である場合に、トナー用結着樹脂としての熱的特性や物理的特性を確保でき、15%以下である場合に生分解性を良好に維持することができる。
ゲル分率は次の方法で測定することができる。
乾燥した樹脂粒子又は樹脂粉砕物約0.3gを試料として秤取し、30gのテトラヒドロフラン(THF)中に投入して60分間撹拌する。次に、回転速度10,000rpmで5分間遠心分離を行った後、THFへの溶解物が抽出された上澄み液を除去する。次いで、THFへの未溶解物を真空乾燥機で乾燥した後、その重量を測定し、下式によりゲル分率(重量%)を算出する。なお、THFへの樹脂の溶解及び遠心分離は約25℃で行うものとする。この際に使用する樹脂粒子又は樹脂粉砕物は、平均粒径が1mm以下であることが好ましい。
ゲル分率=(THFに未溶解の樹脂分の重量/試料に供する樹脂分の重量)×100
本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜75℃であることが好ましく、45〜75℃であることがより好ましく、50〜75℃であることがさらに好ましく、50〜70℃であることが特に好ましい。上記範囲であると、トナーとしての流動性や保管性を保持することができ、粘弾性等の熱特性も適切に制御できる。
本発明のポリエステル樹脂の軟化温度は、70〜150℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましく、80〜140℃であることがさらに好ましく、90〜140℃であることが特に好ましい。上記範囲であると、トナーとしての流動性や保管性を保持することができ、定着時の粘弾性も適切に制御できる。
本発明における軟化温度は、フローテスターを用い、サンプルの半分が流出する温度、すなわち、フローテスター1/2流出温度(Tf1/2)である。
なお、本発明における軟化温度(Tf1/2)の測定方法としては、高化式フローテスター CFT−500((株)島津製作所製)を用い、ダイスの細孔の径を0.5mm、加圧荷重を0.98MPa(10kg/cm2)、昇温速度を1℃/分とした条件下で、1cm3の試料を溶融流出させた時の流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度として求められるものである。
本発明のポリエステル樹脂は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く全金属原子の総含有量が、15ppm以下であり、10ppm以下であることが好ましく、検出されない(検出下限値以下である)ことがより好ましい。また、下限は特に制限はなく、0ppm以上である。上記範囲であると、生分解性に優れ、また、その環境負荷が少ない。
金属原子の含有量の測定方法としては、蛍光X線分析方法が好ましく例示できる。蛍光X線のピークに他の元素のピークが重なる場合には、ICP発光分光法や、原子吸光法等で、追加解析を行うこともできる。
本発明のポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜800,000であることがより好ましく、10,000〜60,000であることがさらに好ましい。上記範囲であると、トナー特性及び生分解性に優れる。
本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3,000〜100,000であることが好ましく、4,000〜60,000であることがより好ましく、4,000〜40,000であることがさらに好ましい。上記範囲であると、トナー特性及び生分解性に優れる。
また、本発明のポリエステル樹脂は、静電荷像現像トナー用生分解性ポリエステル樹脂として好適に用いることができる。なお、生分解性ポリエステル樹脂とは、微生物等によって分解されるポリエステル樹脂であることを意味する。
ポリエステル樹脂の生分解性の試験方法としては、JIS K 6950、JIS K 6951、JIS K 6953、JIS K 6955、ISO14855−2、OECD 301C等に記載の方法、さらには簡易的にコンポスト埋設・土壌埋設時の外観と重量減等により評価することができる。
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂の製造方法(以下、単に「ポリエステル樹脂の製造方法」ともいう。)は、芳香環を有するジオールを重縮合性単量体の全量に対して10〜25mol%、及び、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を重縮合性単量体の全量に対して15〜50mol%含む重縮合性単量体を、触媒として硫黄酸を用い重縮合する工程(以下、「重縮合工程」ともいう。)を含むことが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法に使用する重縮合性単量体としては、使用する重縮合性単量体の全量(100mol%)に対して、芳香環を有するジオールを10〜25mol%、及び、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を15〜50mol%使用することが好ましく、芳香環を有するジオールを10〜25mol%、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を15〜50mol%、脂肪族ジオールを25〜40mol%含む使用することがより好ましく、芳香環を有するジオールを10〜25mol%、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を15〜40mol%、脂肪族ジオールを25〜40mol%、及び、芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸を10〜35mol%含む使用することがさらに好ましく、芳香環を有するジオールを10〜25mol%、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を15〜40mol%、脂肪族ジオールを25〜40mol%、及び、芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸を10〜35mol%のみを使用することが特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法には、重縮合触媒を使用してもよく、生分解性やゲル分率の制御の点、及び、製造工程を簡便にできる点から、重縮合触媒として硫黄酸を使用することが特に好ましい。
硫黄酸触媒は、特に低温での反応性を向上させることができる。低温での反応は、副生成物の抑制や、着色の抑制、温和な反応条件に起因する分子量分布の均一性などの利点がある。しかし、一般的な重縮合触媒、エステル化触媒は高温のみで使用されるものが多いため、併用する場合には高温での反応が必要となり、上記の利点が損なわれる場合が多く、本発明のポリエステル樹脂を得ることが非常に困難となる。
硫黄酸触媒は、単独、又は、硫黄酸と汎用重縮合触媒とを併用することも可能であるが、汎用触媒に含まれるアルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く全金属原子の総含有量が樹脂中に0〜15ppmとなる極少量の汎用触媒と併用することが好ましい。
詳細には、特定量の芳香族ジオール成分がトナー用結着樹脂として必要な熱特性、特にガラス転移温度や軟化温度、粘弾性などを付与するが、この量の範囲内においては生分解性を阻害することはない。特に芳香環にエステル結合が直接結合していない場合には、生分解性を有することは、特開平7−118359号公報にも記載されている公知の事実である。さらに熱重合性の不飽和結合を有するジカルボン酸成分を含み、低温で活性を有する硫黄酸触媒を用いて重合を行うことにより、樹脂の架橋構造を適切な量に制御できる。このため、低温定着性や粉砕性、生分解性を阻害することはなく、十分な熱特性や、使用環境における物質安定性を付与することができる。
さらに、生分解性に関しては、樹脂そのものの構造だけでなく、触媒の環境影響も考える必要がある。例えば、欧米では、重合触媒としても使用可能である重金属を一部規制しているものもある。また、土壌中での生分解がより加速されるような構造、組成物を含むポリエステル樹脂が望まれている。
硫黄酸とは、硫黄の酸素酸であり、無機硫黄酸であっても、有機硫黄酸であってもよく、硫酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及び、アルコキシベンゼンスルホン酸等を例示できる。これらの中でも、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及び/又は、アルコキシベンゼンスルホン酸を用いることが好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸、及び/又は、アルコキシベンゼンスルホン酸であることがより好ましい。
硫黄酸触媒は、比較的低温で触媒活性を有するため、低温での重縮合によりエチレン性不飽和結合を適度に結合させることができる。
硫黄酸としては、有機硫黄酸であることが好ましく、界面活性効果を有する有機硫黄酸であることがより好ましい。
なお、界面活性効果を有する酸とは、疎水基と親水基とからなる化学構造を有し、少なくとも親水基の一部がプロトンからなる酸の構造を有し、乳化機能と触媒機能とを併せ持つ化合物である。
界面活性効果を有する有機硫黄酸としては、上記に有機硫黄酸として記載されたもののうち、炭素数7以上20以下のアルキル基又は炭素数13以上26以下のアラルキル基を有する有機硫黄酸が挙げられ、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ドデシル硫酸等が好ましく例示できる。
また、界面活性効果を有する有機硫黄酸としては、下記に示す式(S−1)〜(S−3)で表される化合物であることが好ましく、下記に示す式(S−2)又は(S−3)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 0005299612
式中、RS1、RS2及びRS3はそれぞれ独立に、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数8以上のアルケニル基を表し、R’及びR”はそれぞれ独立に、置換基を表し、n及びmはそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
また、RS2、ORS3、R’及びR”のベンゼン環上の置換位置は、特に制限はなく、ベンゼン環上のいずれの位置であってもよい。
S1、RS2及びRS3はそれぞれ独立に、炭素数8以上のアルキル基であることが好ましい。
また、RS1、RS2及びRS3における炭素数は、8〜30であることが好ましく、8〜20であることがより好ましく、12〜20であることがさらに好ましい。
重合触媒能においては、炭素数8以上のアルキル基、炭素数8以上のアルケニル基等の疎水性部位がモノマーとの相溶性を高め、硫黄酸は低温でも活性を有するため、ポリエステル樹脂の重合には大きく重縮合能を発揮できるものと予測される。式(S−1)〜(S−3)で表される化合物は、その界面活性能に基づき生分解性や土壌での分散性を向上することができる。これは、土壌中など水分の拡散の少ない環境においては、式(S−1)〜(S−3)で表される化合物がポリエステル樹脂の表面で土壌中側に親水性基を向けて配向し、その結果土壌中の水分をより表面側に保持することが可能となるために、微生物や酵素類による分解がより効率的に起こるものと予測される。
前記R’及びR”における置換基は、その効果を損なわない限り、いずれの置換基も有することができる。特に好ましくは、スルホ基(−SO3H)を基準とするハメット値が0.2以上である置換基であり、このような置換基を有すると触媒能を向上することができる。
ハメット値が0.2以上の基として具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、トリフルオロアセチル基、カルバモイル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、チオシアナト基、ニトロ基等を挙げられる。その中でも、特に置換基効果、重縮合触媒への適性、トナー用結着樹脂への適性を考慮すると、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び/又は、ヨウ素原子が好ましい。
これらの置換基の数に限定はなく、複数の置換基を有することもできる。その際、全てのベンゼン環上の基におけるスルホ基を基準とするハメット値の和が正の値、すなわち、ベンゼン環全体としてスルホ基に対し電子求引性であることが好ましい。
また、アルコキシベンゼンスルホン酸、又は、式(S−3)で表される化合物としては、置換基を有する場合で特に効果を発揮できる点から、2−ハロゲノ−4−アルコキシベンゼンスルホン酸、4−ハロゲノ−2−アルコキシベンゼンスルホン酸であることが好ましい。
重縮合工程における硫黄酸の使用量は、重縮合性単量体の全量に対して、0.01mol%〜5mol%が好ましく、0.05〜2mol%であることがより好ましい。上記範囲であると、ポリマーの分解などを起こすことなく重縮合が適切に進行し、十分な生分解性も付与できる。
重縮合工程における重縮合反応は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等の水中重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施することが可能である。また、大気圧下で反応が可能であるが、ポリエステル樹脂の分子量の高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を広く用いることができる。
また、前記重縮合工程では、減圧下で加熱しながら重縮合反応を行うことが好ましい。
前記重縮合工程における重縮合反応の反応温度は70〜160℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜160℃であることがさらに好ましく、100〜150℃であることが特に好ましい。反応温度が70℃以上であると、重縮合性単量体の溶解性、触媒活性の低下に基づく反応性の低下、分子量の伸長抑制が生じない。また、160℃以下であると、低エネルギーで製造することができる。また、反応温度が上記範囲内であると、十分に重縮合反応が進行すると共に、低環境負荷にて重合反応を行うことができるので好ましい。
重縮合反応の反応時間は、所望の重量平均分子量が得られる範囲で、反応温度等に応じて適宜選択することができるが、0.5〜72時間であることが好ましく、1〜48時間であることが好ましく、2〜36時間であることがさらに好ましい。上記範囲であると、所望の重量平均分子量と分子量分布を得るための制御がしやすい。
前記重縮合工程における重縮合反応では、水系媒体中や、有機溶剤中を反応を行ってもよいが、水系媒体や有機溶剤を使用せず、バルク重合を行うことが好ましい。
本発明に用いることのできる水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水や、エタノール、メタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの中でも、エタノールや水であることが好ましく、蒸留水及びイオン交換水等の水が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、水系媒体には、水混和性の有機溶媒を含んでいてもよい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アセトンや酢酸等が挙げられる。
本発明に用いることができる有機溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、p−クロロトルエン等のハロゲン系溶媒、3−ヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン系溶媒、ジブチルエーテル、アニソール、フェネトール、o−ジメトキシベンゼン、p−ジメトキシベンゼン、3−メトキシトルエン、ジベンジルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、メトキシナフタレン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、フェニルスルフィド、チオアニソール等のチオエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、安息香酸メチル、フタル酸メチル、フタル酸エチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒、ジフェニルエーテル、又は、4−メチルフェニルエーテル、3−メチルフェニルエーテル、3−フェノキシトルエン等のアルキル置換ジフェニルエーテル、又は、4−ブロモフェニルエーテル、4−クロロフェニルエーテル、4−ブロモジフェニルエーテル、4−メチル−4’−ブロモジフェニルエーテル等のハロゲン置換ジフェニルエーテル、又は、4−メトキシジフェニルエーテル、4−メトキシフェニルエーテル、3−メトキシフェニルエーテル、4−メチル−4’−メトキシジフェニルエーテル等のアルコキシ置換ジフェニルエーテル、又は、ジベンゾフラン、キサンテン等の環状ジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル系溶媒が挙げられ、これらは、混合して用いてもよい。そして、溶媒として容易に水と分液分離できるものが好ましく、特に平均分子量の高いポリエステルを得るためにはエステル系溶媒、エーテル系溶媒及びジフェニルエーテル系溶媒がより好ましく、アルキル−アリールエーテル系溶媒及びエステル系溶媒が特に好ましい。
さらにまた、本発明において、平均分子量の高い結着樹脂を得るため、脱水、脱モノマー剤を加えてもよい。脱水、脱モノマー剤の具体例としては、例えば、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X等のモレキュラーシーブ類、シリカゲル、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、五酸化二リン、濃硫酸、過塩素酸マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、あるいは水素化カルシウム、水素化ナトリウム等の金属水素化物、又は、ナトリウム等のアルカリ金属等が挙げられる。中でも、取扱い及び再生の容易さからモレキュラーシーブ類が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、その特性を損なわない限り、上述した以外の重縮合性単量体(モノマー)とともに重縮合して作製することも可能である。例えば、一価のカルボン酸、一価のアルコールなどである。こうした単官能モノマーは、ポリエステル樹脂末端をキャッピングするため、効果的な末端変性を可能としポリエステル樹脂の性状を制御することが可能である。単官能モノマーは重合初期から用いてもよく、また重合途中に添加してもよい。
本発明においては、重縮合工程として、既述単量体と予め作製しておいたプレポリマーとの重合反応とを含むこともできる。プレポリマーは、金属含有量が適切であり、上記単量体に溶融又は均一混合できるポリマーであれば、特に限定されない。
さらに本発明の生分解性ポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸成分及びジオール成分それぞれ1種を使用した単独重合体、上述した単量体を含む単量体を2種以上組み合せた共重合体、又は、それらの混合物、グラフト重合体、一部枝分かれや架橋構造などを有していてもよい。
(静電荷像現像トナー)
本発明の静電荷像現像トナーは、本発明の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂を含むトナーである。
本発明の静電荷像現像トナーは、公知の方法により製造することができる。
具体的には、混練粉砕法等により製造することができ、また、化学的製法(いわゆる、凝集合一法、ポリエステル伸長法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、溶解懸濁法等)により製造することもできる。
本発明の静電荷像現像トナーは、これらのいずれの方法により静電荷像現像トナーを製造してもよく、結着樹脂として、上記本発明のポリエステル樹脂を含有するものである。
これらの中でも、本発明の静電荷像現像トナーは、粉砕トナーであることが好ましく、混練粉砕法により製造された静電荷像現像トナーであることが好ましい。
以下、混練粉砕法について、説明する。
粉砕トナーは、混練粉砕法等の公知の方法により製造することができる。
混練粉砕法により粉砕トナーを製造する場合は、本発明のポリエステル樹脂を、予め他のトナー原材料と、溶融混練前に、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等で撹拌混合することが好ましい。このとき、撹拌機容量、撹拌機の回転速度、撹拌時間等を組み合わせて選択しなければならない。
次いで、結着樹脂と他のトナー原材料との撹拌物は、公知の方法により溶融状態での混練を行う。一軸又は多軸押出し機による混練が、分散性が向上するため好ましい。このとき混練装置のニーディングスクリュウゾーン数、シリンダー温度、混練速度等を全て適切な値に設定し、制御する必要がある。混練時の各制御因子のうち、混練状態に特に大きな影響を与えるのは、混練機の回転数と、ニーディングスクリュウゾーン数、シリンダー温度である。一般に、回転数は300〜1,000rpmが好ましく、ニーディングスクリュウゾーン数は1段よりも2段スクリュウ等多段ゾーンを用いたほうがよりよく混練される。シリンダー設定温度は、特に制限はなく、必要に応じ、適宜設定すればよい。
溶融混練された混練物は十分に冷却した後、ボールミル、サンドミル、ハンマーミル等の機械的粉砕方法、気流式粉砕方法等の公知の方法で粉砕する。常法での冷却が充分できない場合は、冷却又は凍結粉砕法も選択できる。
トナーの粒度分布を制御する目的で、粉砕後のトナーを分級することもある。分級により、不適切な径の粒子を排除することにより、トナーの定着性や画像品質を向上する効果がある。
本発明の静電荷像現像トナーは、必要に応じて、本発明の結果に影響を与えない範囲で公知の添加剤を、1種又は複数を組み合わせて配合することができる。例えば、帯電制御剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、着色成分、光沢剤、防水剤、撥水剤、無機充填剤(表面改質剤)、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、充填剤、体質顔料等である。これらの添加物は、静電荷像現像トナーを製造するいずれの工程においても配合することができる。
内添剤の例としては、帯電制御剤として、第四級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物など、通常使用される種々の帯電制御剤を使用することができるが、製造時の安定性と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
離型剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やエステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及び、それらの変性物が使用できる。
難燃剤、難燃助剤としては、すでに汎用されている臭素系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムを例示できるがこれに限定されるものではない。
着色成分としては、公知の着色剤を用いることができる。
例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラロゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレート、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などの種々の顔料などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
また、通常のトナーと同様に乾燥後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態で剪断をかけて表面へ添加して流動性助剤やクリーニング助剤として用いることもできる。
本発明に用いることができる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用可能である。
本発明の静電荷像現像トナーは、平均体積粒子径(D50)が3.0〜20.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは、平均体積粒子径が3.0〜9.0μmである。D50が3.0μm以上であると、付着力が適度であり、現像性に優れるため好ましい。また、20.0μm以下であると、画像の解像性に優れるため好ましい。平均体積粒子径(D50)はレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
また、本発明の静電荷像現像トナーは、平均体積粒子分布GSDvが1.4以下であることが好ましい。特に化学製法トナーの場合、GSDvが1.3以下であることがさらに好ましい。粒子分布は、累積分布のD16、D84を用いて以下のような平均体積粒子分布GSD又は数GSDを簡易的に用いることができる。
体積GSDv=(体積D84/体積D160.5
GSDvが1.4以下であると、粒子径が均一であり、定着性に優れ、定着不良に起因する装置故障が起こりにくく、また、トナーの飛散による機内汚染や現像剤の劣化なども起こりにくいため好ましい。平均体積粒子分布GSDはレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
同様に、本発明のトナーが化学製法で製造される場合、形状係数SF1は、画像形成性の点から、100〜140であることが好ましく、110〜135であることがより好ましい。形状係数SF1は以下のように計算される。
Figure 0005299612
ここでML:粒子の絶対最大長、A:粒子の投影面積
これらは、主に顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡画像をルーゼックス画像解析装置によって取り込み、解析することによって数値化される。
(静電荷像現像剤)
本発明の静電荷像現像トナーは、静電荷像現像剤として使用することができる。
本発明の静電荷像現像剤は、本発明の静電荷像現像トナーを含有すること以外は、特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。本発明の静電荷像現像トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
一成分系現像剤として、現像スリーブ又は帯電部材と摩擦帯電して、帯電トナーを形成して、静電潜像に応じて現像する方法も適用できる。
キャリアとしては、特に限定されないが、通常、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
二成分系の静電荷像現像剤における本発明のトナーとキャリアとの混合割合は、通常、キャリア100重量部に対して、トナー2〜10重量部である。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
(画像形成方法)
また、静電荷像現像剤(静電荷像現像トナー)は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができる。
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含むことが好ましい。また、必要に応じて、クリーニング工程を含む。
前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本発明の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。
前記潜像形成工程は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、現像剤担体上の現像剤層により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する工程である。前記現像剤層としては、前記本発明の静電荷像現像トナーを含有する本発明の静電荷像現像剤を含んでいれば特に制限はない。
前記転写工程は、前記トナー像を被転写体上に転写する工程である。
前記定着工程は、光定着装置や熱定着装置等により、記録紙などの被記録媒体上に転写したトナー像を定着して複写画像を形成する工程である。
前記クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する静電荷像現像剤を除去する工程である。本発明の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムにも適用することができる。
このような一連の処理工程を経て、目的とする複製品(印刷物など)を得ることができる。
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体に転写する転写手段とを有し、必要に応じて定着基材上のトナー像を定着する定着手段を有する。上記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。
前記潜像保持体、及び、前記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いることができる。
前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用できる。また、本発明で用いる画像形成装置は、前記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本発明で用いる画像形成装置は前記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
なお、実施例中において「部」及び「%」は、特に断りのない限り「重量部」及び「重量%」を意味する。
<ガラス転移温度(Tg)及び融点の測定方法>
ガラス転移温度の測定は、「DSC−20」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、試料10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱して測定した。
融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121:87に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めた。
<重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法>
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの値は、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって、以下に記す条件で重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料重量として3mg注入し、測定を行った。また、試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作製された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択した。
なお、測定結果の信頼性は、上述の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、
重量平均分子量Mw=28.8×104
数平均分子量Mn=13.7×104
となることにより確認することができる。
また、GPCのカラムとしては、TSK−GEL、GMH(東ソー(株)製)を用いた。
なお、溶媒及び測定温度は、測定試料にあわせ、適当な条件に変更して行った。
ポリエステル樹脂として脂肪族ポリエステル樹脂を用い、付加重合型樹脂として芳香族を含むモノマーを重合した樹脂を用いた樹脂粒子分散液を作製した場合、両者の分子量をGPCで解析する際、検出器としてUVとRIとを分離する装置を後付けし、それぞれの分子量を解析することもできる。
<ゲル分率の測定方法>
乾燥した樹脂粒子又は予め1mmメッシュで篩分した樹脂粉砕物約0.3gを試料として秤取し、30gのテトラヒドロフラン(THF)中に投入して60分間撹拌した。次に、回転速度10,000rpmで5分間遠心分離を行った後、THFへの溶解物が抽出された上澄み液を除去する。次いで、THFへの未溶解物を真空乾燥機で乾燥した後、その重量を測定し、下式によりゲル分率(重量%)を算出した。なお、THFへの樹脂の溶解及び遠心分離は約25℃で行った。
ゲル分率=(THFに未溶解の樹脂分の重量/試料に供する樹脂分の重量)×100
<軟化温度の測定方法>
軟化温度は、高化式フローテスター CFT−500((株)島津製作所製)を用い、ダイスの細孔の径を0.5mm、加圧荷重を0.98MPa(10kg/cm2)、昇温速度を1℃/分とした条件下で、1cm3の試料を溶融流出させた時の流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度を1/2流出温度(Tf1/2)として求めた。
<アルカリ金属アルカリ土類金属含有量の測定方法>
蛍光X線解析装置((株)島津製作所製、XRF−1500)を用いて、乾燥した樹脂粒子又は予め1mmメッシュで篩分した樹脂粉砕物0.130gのディスクを成型し、X線出力40V−70mA、測定面積10mmφ、測定時間15分の条件で、定性定量全元素分析法にて測定し、このデータの金属元素強度を測定した。
(実施例1:触媒として界面活性効果を有する有機硫黄酸を使用)
・ビスフェノールA プロピレンオキサイド2モル付加物(ビスフェノールA 1モルに対しプロピレンオキサイドが2モル付加した化合物、BPA−2PO):25mol%
・フマル酸(FA):25mol%
・1,3−プロパンジオール(PD):25mol%
・コハク酸(SA):25mol%
・ペンタデシルベンゼンスルホン酸(PDBSA):0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、140℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下140℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂1を得た。
ポリエステル樹脂1の物性値を測定すると、ゲル分率6.8%、Tg59℃、軟化温度102℃であった。
(実施例2:触媒として有機硫黄酸を使用)
・ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物(BPA−2EO):25mol%
・無水マレイン酸(MAA):35mol%
・1,3−プロパンジオール:25mol%
・蓚酸(OA):15mol%
・パラトルエンスルホン酸(p−TSA):0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、140℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下140℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂2を得た。
ポリエステル樹脂2の物性値を測定すると、ゲル分率2.7%、Tg53℃、軟化温度99℃であった。
(実施例3:芳香環を有するジオールとしてp−キシレングリコールを使用)
・p−キシレングリコール(p−XG):25mol%
・フマル酸:25mol%
・1,4−ブタンジオール(BD):25mol%
・アジピン酸(AA):25mol%
・PDBSA:0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、150℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下150℃で8時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂3を得た。
ポリエステル樹脂3の物性値を測定すると、ゲル分率10%、Tg52℃、軟化温度91℃であった。
(実施例4:軟化温度が低い樹脂の作製)
・BPA−2EO:10mol%
・フマル酸:15mol%
・1,3−プロパンジオール:40mol%
・コハク酸:35mol%
・ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA):0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、140℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下140℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂4を得た。
ポリエステル樹脂4の物性値を測定すると、ゲル分率1.3%、Tg44℃、軟化温度72℃であった。
(比較例1:芳香環を有するジオールを使用しない樹脂)
・フマル酸:25mol%
・1,3−プロパンジオール:50mol%
・蓚酸:25mol%
・DBSA:0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、140℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下140℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂5を得た。
ポリエステル樹脂5の物性値を測定すると、ゲル分率0.8%、Tg=−80℃、軟化温度50℃であった。
(比較例2:エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を使用せず、ゲル分率が0%の樹脂の作製)
・BPA−2PO:25mol%
・1,3−プロパンジオール:25mol%
・コハク酸:50mol%
・PDBSA:0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、140℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下140℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂6を得た。
ポリエステル樹脂6の物性値を測定すると、ゲル分率0%、重量平均分子量(Mw)18,000、数平均分子量(Mn)10,500、Tg42℃、軟化温度78℃であった。
(比較例3:ゲル分率の高い樹脂)
・BPA−2EO:25mol%
・フマル酸:50mol%
・1,6−ヘキサンジオール(HD):25mol%
・オクタデシルベンゼンスルホン酸(ODBSA):0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、140℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下140℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂7を得た。
ポリエステル樹脂7の物性値を測定すると、ゲル分率65%、Tg65℃、軟化温度280℃であった。
(比較例4:金属触媒を使用した樹脂)
・BPA−2PO:25mol%
・フマル酸:25mol%
・1,3−プロパンジオール:25mol%
・テレフタル酸(TA):25mol%
・ジブチルスズオキサイド(Sn):0.2mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、加熱溶融し、窒素置換した後、減圧下260℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂8を得た。
ポリエステル樹脂8の物性値を測定すると、ゲル分率84%、Tg69℃、軟化温度300℃以上(測定できなかった。)であった。
(比較例5:ゲル分率の高い樹脂)
・BPA−2PO:25mol%
・フマル酸:25mol%
・1,3−プロパンジオール:25mol%
・コハク酸:25mol%
・PDBSA:0.5mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、160℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下160℃で9時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂9を得た。
ポリエステル樹脂9の物性値を測定すると、ゲル分率16.9%、Tg62℃、軟化温度107℃であった。分子量は、Mw26,800、Mn7,700であった。
(比較例6:金属触媒を使用した樹脂)
・BPA−2PO:25mol%
・フマル酸:25mol%
・1,3−プロパンジオール:25mol%
・コハク酸:25mol%
・ジブチルスズオキサイド:0.5mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、180℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下180℃で6時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂10を得た。
ポリエステル樹脂10の物性値を測定すると、ゲル分率33.5%、Tg62℃、軟化温度132℃であった。分子量は、Mw24,400、Mn6,100であった。
(比較例7:芳香環を有するジオールを多く使用した樹脂)
・BPA−2PO:25mol%
・BPA−2PO:25mol%
・テレフタル酸(TPA):35mol%
・シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA):15mol%
・ジブチルスズオキサイド:0.5mol%
以上の成分を(有)マグネオ技研製マグネオシールミキサーに投入し、250℃で溶融し、窒素置換した後、減圧下250℃で10時間重縮合を行い、ポリエステル樹脂11を得た。
ポリエステル樹脂11の物性値を測定すると、ゲル分率0%、Tg63℃、軟化温度108℃であった。分子量は、Mw18,400、Mn6,300であった。
<生分解性試験>
上記のポリエステル樹脂1〜11で薄いプレートをそれぞれ作製し、生分解性評価を行った。
約10cm2の上記フイルムを土壌中の水分率が50%以上を保持しできる、比較的湿度の高い(日当たりの悪い)土壌中に埋めた(地表から15cm)。また、比較的日当たりがよく、湿度の低い土壌中(地表から7cm)にも同様に試験片を埋めて、6ヶ月経過時、12ヶ月経過時の2回評価した。評価基準は以下の通りである。
○:プレート形状が大部分消失した。(重量減が80重量%以上)
△:プレート形状が半分近く消失した。(重量減が50重量%以上80重量%未満)
×:プレート形状がほぼそのまま残っていた。(重量減が50重量%未満)
ポリエステル樹脂1〜11の生分解性の評価結果を、表1に示す。
Figure 0005299612
(トナー実施例1)
・シアン顔料(大日精化工業(株)製、銅フタロシアニン、C.I.Pigment Blue 15:3):4部
・ポリエステル樹脂1:96部
上記混合物をエクストルーダー(TEM48、東芝機械(株)製)で混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで破砕した後、ジェットミルで粉砕した。その後、風力分級機で分級して、平均体積粒子径(D50)が7.5μm、平均体積粒子分布(GSDv)が1.22、SF1が130のトナー粒子を得た。
このトナー粒子にシリカTS720(キャボット社製)0.5重量%をヘンシェルミキサーで添加混合し、外添トナーを作製した。
また、50ミクロンのフェライトコアにポリメチルメタクリレート(綜研化学(株)製)を1重量%コートしたキャリアを作製した。
この外添トナーとキャリアとを混合し、現像剤を作製した。
(トナー実施例2〜4、及び、比較例1〜7)
ポリエステル樹脂2〜11をそれぞれ使用した以外は、トナー実施例1と同様にトナー粒子を作製し、さらに現像剤を作製した。
ポリエステル樹脂1〜11、トナー実施例1〜4及び比較例1〜7で得られたトナー又は現像剤を用い、以下に示す評価を行った。評価結果を表2に示す。
<粉砕性の評価>
ジェットミルによって混練粗粉砕物を微粉砕する際、体積平均粒径(コールターカウンターTA−11型、アパーチャー径100μm)9.0μmになる供給量の比(実施例1を1.0とし、その他をこの供給量で割って算出)をトナー粉砕性指標とした。トナー粉砕性指標が大きいほど粉砕されやすく、0.8以上を許容範囲とした。
<最低定着温度評価>
本発明の画像形成方法を実施しうる画像形成装置(富士ゼロックス(株)社製Docuprint305を2成分トナー現像器に改造したもの)を用いて最低定着温度を測定した。この画像形成装置における定着ロールは、アルミロールコア表面にアルマイト皮膜を形成したものを用い、オイルロールにより、0.1mg/A4のシリコーンオイルを供給した。定着ロールの表面材料であるアルマイト皮膜の熱伝導率は30W/mKであった。
定着ロール表面温度が60℃から+5℃おきに定着を行った。ソリッド部のトナー量が0.5mg/cm2になるように調整し、定着像のほぼ中央になるように内側に折り目を入れ、定着像が破壊された部分をティッシュペーパーで拭い取り、白抜けした線幅を測定し、白抜けした線幅が0.5mm以下となる温度を最低定着温度とした。用紙は富士ゼロックス(株)製J紙を用いた。
<画像評価>
上記のように作製した現像剤を用いて、被画像形成媒体(被記録媒体)として富士ゼロックス(株)製JD紙(地合い指数38)を用い、ハーフトーン画像を被画像形成媒体上に作成した。
その際の画像の欠損、及び、ムラを目視にて判断した。評価基準は以下の通りである。
○:画像に欠損、及び、ムラは認められない。
△:わずかな画像欠損、及び/又は、ムラが認められる。
×:明白な画像欠陥が認められる。
<6ヶ月保管後における画像評価>
上記のように作製した現像剤を高温高湿度環境(28℃85%RH)下で6ヶ月保管した後に、被画像形成媒体として富士ゼロックス(株)製JD紙(地合い指数38)を用い、ハーフトーン画像を被画像形成媒体上に作成した。
その際の画像の欠損、ムラを目視にて判断した。評価基準は以下の通りである。
○:画像に欠損、及び、ムラは認められず、保管前と画質に変化がない。
△:わずかな画像欠損、ムラが認められる、及び/又は、保管前に比べ画質が悪化している。
×:明白な画像欠陥が認められる、及び/又は、保管前に比べ明確に画質に悪化が確認される。
<6ヶ月保管後におけるブロッキング性評価>
上記のように同様の条件で保管した現像剤を用いて、パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)を用い、上段より目開き53μm、45μm及び38μmのふるいを直列的に配置し、53μmのふるい上に正確に秤量した2gの前記試料を投入し、振幅1mmで90秒間振動を与え、振動後の各ふるい上のトナー質量を測定し、それぞれの質量に順に0.5、0.3、0.1を乗じた数値を加算し、もとの試料の重さ(2g)に対する百分率として粉体凝集性の指標の数値を算出した。また、測定は、25℃50%RHの環境下で行った。
評価基準は、以下の通りである。
○:粉体凝集性の指標の数値が45以下
△:粉体凝集性の指標の数値が45を越え60未満
×:粉体凝集性の指標の数値が60以上
Figure 0005299612

Claims (9)

  1. 全モノマー単位のうち、(A)芳香環を有するジオール由来のモノマー単位を10〜25mol%、及び、(B)エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位を15〜50mol%含み、
    ゲル分率が1.0〜15%であり、
    アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く全金属原子の総含有量が、15ppm以下であり、
    重量平均分子量が、8,000〜200,000であることを特徴とする
    静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂。
  2. (C)芳香環を有しない脂肪族ジオール由来のモノマー単位をさらに有する請求項1に記載の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂。
  3. (D)芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位をさらに有する請求項1に記載の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂。
  4. (D)芳香環及びエチレン性不飽和結合を有しない脂肪族ジカルボン酸由来のモノマー単位をさらに有する請求項2に記載の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂。
  5. 芳香環を有するジオールを重縮合性単量体の全量に対して10〜25mol%、及び、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸を重縮合性単量体の全量に対して15〜50mol%含む重縮合性単量体を、触媒として硫黄酸を用い重縮合する工程を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂、又は、請求項に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー用ポリエステル樹脂を含む静電荷像現像トナー。
  7. 請求項に記載の静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤。
  8. 潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
    前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
    前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、
    前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含み、
    前記現像剤として請求項に記載の静電荷像現像トナー、又は、請求項に記載の静電荷像現像剤を用いる
    画像形成方法。
  9. 潜像保持体と、
    前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、
    帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、
    現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
    前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体に転写する転写手段とを有し、
    前記現像剤として請求項に記載の静電荷像現像トナー、又は、請求項に記載の静電荷像現像剤を用いる
    画像形成装置。
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