JP5293722B2 - 坂道発進補助制御装置 - Google Patents

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この発明は、坂道発進を補助する制御装置に関する。
特許文献1は、坂道で停止状態の車両のブレーキペダルからドライバーが足を放したときに車両が後退することを防止する坂道発進補助制御装置について開示する。そして特許文献1では、ドライバーによるアクセルペダル踏み込み量や内燃エンジンの出力トルクが基準値を超えたときに、坂道発進補助制御を解除する。
特開2009−113693号公報
本件発明者らは、内燃エンジン及びモータージェネレーター(電動モーター)によって走行するハイブリッド車両を開発している。このような車両では、たとえば坂道で縦列駐車するためにセレクトレバーが操作されたときに、内燃エンジンが始動する場合があり、それに合わせて坂道発進補助制御が解除されることがあるということが、本件発明者らによって知見された。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、坂道発進補助制御が無用に解除されることを防止できる坂道発進補助制御装置を提供することを目的とする。
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
本発明の坂道発進補助制御装置は、内燃エンジン、モータージェネレーター、駆動輪、内燃エンジン及びモータージェネレーター間の伝達トルク容量を可変なエンジン側クラッチ、モータージェネレーター及び駆動輪間の伝達トルク容量を可変な駆動輪側クラッチ、を備え、車両が登坂路で停止状態で内燃エンジンを始動するときに前記駆動輪側クラッチをスリップ制御する車両の坂道発進を補助する坂道発進補助制御装置である。車両が登坂路で停止状態であるときにドライバーがブレーキペダルから足を放しても車両が後退しないように、ブレーキ油圧を下げることなく維持する制御を行う後退防止制御部を備える。そして、さらに、車両が登坂路で停止状態であって駆動輪側クラッチをスリップ制御して内燃エンジンを始動した場合に、駆動輪に伝達される駆動トルクを、前記駆動輪側クラッチが解放され始めてから再び締結されて所定時間が経過するまでは駆動輪側クラッチの伝達トルクと駆動輪側クラッチへの入力トルクとのいずれか小さいトルクに基づいて推定し、所定時間が経過した後は駆動輪側クラッチへの入力トルクに基づいて推定するトルク推定部と、前記推定された駆動トルクが後退防止判定値よりも大きいか否かを判定する判定部と、前記推定された駆動トルクが後退防止判定値よりも小さいときには、後退防止制御部による制御の中止を許可しない後退防止制御継続部と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、推定された駆動トルクが後退防止判定値よりも大きいときには後退防止制御部による制御の中止を許可するので、坂道発進補助制御が無用に解除されることを防止できる。
図1は、本発明による坂道発進補助制御装置を搭載するハイブリッド車両のパワートレインの一例を示す図である。 図2は、本発明による坂道発進補助制御装置のコントローラーが実行する制御フローチャートを示す図である。 図3は、本発明による坂道発進補助制御装置を搭載するハイブリッド車両のパワートレインの他の例を示す図である。
以下では図面等を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による坂道発進補助制御装置を搭載するハイブリッド車両のパワートレインの一例を示す図である。
車両100は、内燃エンジン1及びモータージェネレーター5によって駆動輪2を駆動するいわゆるハイブリッド車両である。ハイブリッド車両100は、フロントエンジン・リヤホイールドライブである。
図1に示されたハイブリッド車両100のパワートレインは、内燃エンジン1と、自動変速機3と、モータージェネレーター5と、を含む。
自動変速機3は、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方にタンデムに配置される。
モータージェネレーター5は、エンジン1及び自動変速機3の間に配置される。モータージェネレーター5は、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合される。モータージェネレーター5は、車両の運転状態に応じてモーターとして作用するとともにジェネレーター(発電機)としても作用する。
エンジン1及びモータージェネレーター5の間、より詳しくは、エンジンクランクシャフト1aと軸4との間には、第1クラッチ6が介挿される。第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的又は段階的に変更可能である。このようなクラッチとしては、たとえば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量及びクラッチ作動油圧を連続的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチがある。伝達トルク容量がゼロになった状態が、第1クラッチ6が完全に切り離された状態であり、エンジン1及びモータージェネレーター5の間が完全に切り離された状態である。
第1クラッチ6が完全に切り離されると、エンジン1の出力トルクは駆動輪2に伝わらず、モータージェネレーター5の出力トルクだけが駆動輪2に伝わる。この状態で走行するモードが電気走行(EV)モードである。一方、第1クラッチ6が接続されると、エンジン1の出力トルクも、モータージェネレーター5の出力トルクとともに、駆動輪2に伝わる。この状態で走行するモードがハイブリッド走行(HEV)モードである。このように第1クラッチ6の断続によって走行モードが切り替えられる。第1クラッチ6がエンジン側クラッチである。
モータージェネレーター5及びディファレンシャルギヤ装置8の間、より詳しくは、変速機入力軸3aと変速機出力軸3bとの間には、第2クラッチ7が介挿される。図1では、第2クラッチ7は、自動変速機3に内蔵されている。このような第2クラッチ7は、たとえば、自動変速機3の内部に既存する前進変速段選択用の摩擦要素又は後退変速段選択用の摩擦要素を流用することで実現してもよい。第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様に、伝達トルク容量を連続的又は段階的に変更可能である。このようなクラッチとしては、たとえば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量及びクラッチ作動油圧を連続的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチがある。伝達トルク容量がゼロになった状態が、第2クラッチ7が完全に切り離された状態であり、モータージェネレーター5及びディファレンシャルギヤ装置8の間が完全に切り離された状態である。エンジンを始動するときには、第2クラッチ7の伝達トルク容量を小さくしてスリップ制御する。するとエンジン1を始動するときのショックが駆動輪2に伝わりにくくなる。第2クラッチ7が駆動輪側クラッチである。
自動変速機3は、たとえば、2003年1月、日産自動車(株)発行「スカイライン新型車(CV35型車)解説書」第C−9頁〜第C−22頁に記載されたと同じものである。複数の摩擦要素(クラッチやブレーキ等)を選択的に締結したり解放することで、摩擦要素の締結・解放組み合わせによって伝動系路(変速段)を決定するものとする。したがって自動変速機3は、入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸3bに出力する。この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置8によって左右の駆動輪2へ分配して伝達され、車両の走行に供される。ただし自動変速機3は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよい。
上記した図1のパワートレインにおいては、停車状態からの発進時などを含む低負荷・低車速時に用いられる電気走行(EV)モードで走行するときは、エンジン1からの動力が不要であるので、エンジン1を停止する。そして、第1クラッチ6を解放する。また第2クラッチ7を締結する。さらに自動変速機3を動力伝達状態にする。この状態でモータージェネレーター5を駆動する。するとモータージェネレーター5からの出力回転のみが変速機入力軸3aに達する。自動変速機3は、入力軸3aから入力した回転を選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸3bから出力する。変速機出力軸3bから出力された回転は、その後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て駆動輪2に至る。このようにして、車両は、モータージェネレーター5のみによって電気走行(EVモード走行)する。
高速走行時や大負荷走行時などで用いられるハイブリッド走行(HEV)モードで走行するときは、第1クラッチ6及び第2クラッチ7をともに締結し、自動変速機3を動力伝達状態にする。この状態では、エンジン1からの出力回転及びモータージェネレーター5からの出力回転が変速機入力軸3aに達する。自動変速機3は、入力軸3aから入力した回転を選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸3bから出力する。変速機出力軸3bから出力された回転は、その後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て駆動輪2に至る。このようにして、車両は、エンジン1及びモータージェネレーター5によってハイブリッド走行(HEVモード走行)する。
このようなHEVモード走行中に、エンジン1を最適燃費で運転させるとエネルギーが余剰となる場合がある。このような場合には、余剰エネルギーによってモータージェネレーター5を作動させて余剰エネルギーを電力に変換し、この電力をモータージェネレーター5のモーター駆動に用いるよう蓄電する。このようにすることで、エンジン1の燃費が向上する。
このようなハイブリッド車両では、低負荷・低車速時であっても、エンジンが始動する場合があり、それに合わせて坂道発進補助制御が解除されることがあるということが、本件発明者らによって知見された。
そこで、本件発明者らは、エンジンが始動されても、駆動輪に伝達される駆動トルクが後退防止判定値よりも小さければ坂道発進補助制御を解除せず、後退防止判定値よりも大きくなったら坂道発進補助制御を解除することで、坂道発進補助制御が無用に解除されることを防止するようにした。以下に詳述する。
図2は、本発明による坂道発進補助制御装置のコントローラーが実行する制御フローチャートを示す図である。
ステップS1においてコントローラーは、坂道発進補助制御中であるか否かを判定する。坂道発進補助制御は、たとえば、ドライバーがブレーキペダルから足を放しても車両が後退しないように、ブレーキ油圧を下げることなく維持する制御である。コントローラーは、坂道発進補助制御中であればステップS2へ処理を移行し、坂道発進補助制御中でなければ処理を抜ける。
ステップS2においてコントローラーは、第1クラッチが解放状態であるか否かを判定する。コントローラーは、解放状態であればステップS3へ処理を移行し、解放状態でなければステップS4へ処理を移行する。
ステップS3においてコントローラーは、モータージェネレータートルクを変速機入力トルクとする。
ステップS4においてコントローラーは、モータージェネレータートルク及びエンジントルクの合計トルクを変速機入力トルクとする。
ステップS5においてコントローラーは、第2クラッチをスリップ制御中であるか否かを判定する。なおスリップ制御は、たとえばエンジンを始動するときに実行される。このようにスリップ制御することで、エンジンを始動するときのショックが駆動輪2に伝わりにくくなる。コントローラーは、スリップ制御中であればステップS7へ処理を移行し、スリップ制御中でなければステップS6へ処理を移行する。
ステップS6においてコントローラーは、第2クラッチのスリップ制御を終了して第2クラッチを締結してから所定時間が経過したか否かを判定する。すなわち所定時間が経過したことによって、第2クラッチが確実に締結(完全締結)したことを判定する。コントローラーは、所定時間が経過するまではステップS7へ処理を移行し、所定時間が経過したらステップS8へ処理を移行する。
ステップS7においてコントローラーは、駆動輪側クラッチの伝達トルクと変速機への入力トルクとのいずれか小さいトルクにギヤ比を乗じて駆動輪に伝達される推定駆動トルクを算出する。
ステップS8においてコントローラーは、変速機への入力トルクにギヤ比を乗じて駆動輪に伝達される推定駆動トルクを算出する。
ステップS9においてコントローラーは、推定駆動トルクが後退防止判定値よりも大きいか否かを判定する。なお後退防止判定値は、坂道発進補助制御を解除しても、駆動輪に伝達される駆動トルクによって車両が後退しないことを判定するための値である。後退防止判定値は、車両が停止している坂道の勾配に車重及び係数を乗じて算出できる。また坂道の勾配は、たとえば車両の勾配センサーに基づいて検出することができる。また車両に搭載されている加速度センサー(Gセンサー)に基づいて推定してもよい。コントローラーは、判定結果が肯であればステップS10へ処理を移行し、否であればステップS11へ処理を移行する。
ステップS10においてコントローラーは、坂道発進補助制御の解除を許可する。そして他の許可条件も揃えば坂道発進補助制御を解除する。
ステップS11においてコントローラーは、坂道発進補助制御の解除を許可しない。
本実施形態によれば、駆動輪に伝達される推定駆動トルクが、後退防止判定値よりも大きいときに、坂道発進補助制御の解除を許可するようにした。このようにしたので、坂道発進補助制御が無用に解除されることを防止できるのである。すなわち、従来は、たとえば坂道で縦列駐車するためにセレクトレバーが操作されたときに、内燃エンジンが始動する場合があり、それに合わせて坂道発進補助制御が解除されることがあった。しかしながら、本実施形態によれば、推定駆動トルクが後退防止判定値よりも小さいときには坂道発進補助制御を継続するようにしたので、坂道発進補助制御が無用に解除されることを防止できるのである。
また第2クラッチ(駆動輪側クラッチ)が解放され始めてから再び締結されるまで、すなわちスリップ制御中や、その後完全締結されるまでは、第2クラッチ(駆動輪側クラッチ)の伝達トルクと変速機への入力トルクとのいずれか小さいトルクに基づいて駆動トルクを推定する。そして第2クラッチ(駆動輪側クラッチ)が完全締結されたのちは、変速機への入力トルクに基づいて駆動トルクを推定する。このようにしたので、駆動トルクを正確に推定することができ、ひいては後退防止制御部による制御の中止を許可すべきか否かを正確に判定できる。
さらに第1クラッチ(エンジン側クラッチ)が解放状態のときにはモータージェネレータートルクを変速機への入力トルクとして駆動トルクを推定する。また第1クラッチ(エンジン側クラッチ)が締結状態のときにはモータージェネレータートルク及びエンジントルクの合計トルクを変速機への入力トルクとして駆動トルクを推定する。このようにしたので、EV/HEVの走行モードによらず、駆動トルクを正確に推定することができ、ひいては後退防止制御部による制御の中止を許可すべきか否かを正確に判定できる。
さらにまた、後退防止判定値は、車両が停止している登坂路の勾配及び車重に基づいて設定される。このようにしたので、登坂路の状態にかかわらず、後退防止制御部による制御の中止を許可すべきか否かを正確に判定できる。
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
たとえば、図1では、モータージェネレーター5及び駆動駆動輪2を切り離し可能に結合する第2クラッチ7は、モータージェネレーター5及び自動変速機3間に介在させるとともに、自動変速機3に内蔵されていた。しかしながらこのような構造に限らず、図3(A)に示されるように、自動変速機3とは別に、自動変速機3の外部に設けられていてもよい。また図3(B)に示されるように、自動変速機3とディファレンシャルギヤ装置8とのに介在させてもよい。これらのようにしても、上述と同様に機能させることができる。
100 車両
1 内燃エンジン
1a クランクシャフト
2 駆動輪
3 自動変速機
3a 変速機入力軸
3b 変速機出力軸
4 軸
5 モータージェネレーター
6 第1クラッチ(エンジン側クラッチ)
7 第2クラッチ(駆動輪側クラッチ)
ステップS1 後退防止制御部
ステップS7,S8 トルク推定部
ステップS9 判定部
ステップS10 後退防止制御中止部
ステップS11 後退防止制御継続部

Claims (5)

  1. 内燃エンジン、モータージェネレーター、駆動輪、内燃エンジン及びモータージェネレーター間の伝達トルク容量を可変なエンジン側クラッチ、モータージェネレーター及び駆動輪間の伝達トルク容量を可変な駆動輪側クラッチ、を備え、車両が登坂路で停止状態で内燃エンジンを始動するときに前記駆動輪側クラッチをスリップ制御する車両の坂道発進を補助する坂道発進補助制御装置であって、
    車両が登坂路で停止状態であるときにドライバーがブレーキペダルから足を放しても車両が後退しないように、ブレーキ油圧を下げることなく維持する制御を行う後退防止制御部と、
    車両が登坂路で停止状態であって駆動輪側クラッチをスリップ制御して内燃エンジンを始動した場合に、駆動輪に伝達される駆動トルクを、前記駆動輪側クラッチが解放され始めてから再び締結されて所定時間が経過するまでは駆動輪側クラッチの伝達トルクと駆動輪側クラッチへの入力トルクとのいずれか小さいトルクに基づいて推定し、所定時間が経過した後は駆動輪側クラッチへの入力トルクに基づいて推定するトルク推定部と、
    前記推定された駆動トルクが後退防止判定値よりも大きいか否かを判定する判定部と、
    前記推定された駆動トルクが後退防止判定値よりも小さいときには、後退防止制御部による制御の中止を許可しない後退防止制御継続部と、
    を備える坂道発進補助制御装置。
  2. 請求項1に記載の坂道発進補助制御装置において、
    前記所定時間は、駆動輪側クラッチが完全締結したことを判定する時間である、
    ことを特徴とする坂道発進補助制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の坂道発進補助制御装置において、
    前記トルク推定部は、前記エンジン側クラッチが解放状態のときにはモータージェネレータートルクを前記駆動輪側クラッチへの入力トルクとして駆動トルクを推定し、前記エンジン側クラッチが締結状態のときにはモータージェネレータートルク及びエンジントルクの合計トルクを前記駆動輪側クラッチへの入力トルクとして駆動トルクを推定する、
    ことを特徴とする坂道発進補助制御装置。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の坂道発進補助制御装置において、
    前記後退防止判定値は、車両が停止している登坂路の勾配及び車重に基づいて設定される、
    ことを特徴とする坂道発進補助制御装置。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の坂道発進補助制御装置において、
    前記推定された駆動トルクが後退防止判定値よりも大きいときには後退防止制御部による制御の中止を許可する後退防止制御中止部をさらに備える、
    ことを特徴とする坂道発進補助制御装置。
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