以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、SRAM(static random access memory)を備えた半導体装置に本発明を適用した場合について説明する。まず、SRAMを構成するメモリセルMCの等価回路について説明する。図1は、本実施の形態におけるSRAMのメモリセルMCを示す等価回路図である。図1に示すように、このメモリセルMCは、一対の相補性データ線(データ線DL、データ線/(バー)DL)とワード線WLとの交差部に配置され、一対の駆動用MISFETQd1、Qd2、一対の負荷用MISFETQp1、Qp2および一対の転送用MISFETQt1、Qt2により構成されている。駆動用MISFETQd1、Qd2および転送用MISFETQt1、Qt2はnMISFETQnで構成され、負荷用MISFETQp1、Qp2はpMISFETQpで構成されている。
メモリセルMCを構成する上記6個のMISFETのうち、駆動用MISFETQd1および負荷用MISFETQp1は、CMISインバータINV1を構成し、駆動用MISFETQd2および負荷用MISFETQp2は、CMISインバータINV2を構成している。これら一対のCMISインバータINV1、INV2の相互の入出力端子(蓄積ノードA、B)は、交差結合され、1ビットの情報を記憶する情報蓄積部としてのフリップフロップ回路を構成している。
また、このフリップフロップ回路の一方の入出力端子(蓄積ノードA)は、転送用MISFETQt1のソース領域、ドレイン領域の一方に接続され、他方の入出力端子(蓄積ノードB)は、転送用MISFETQt2のソース領域、ドレイン領域の一方に接続されている。さらに、転送用MISFETQt1のソース領域、ドレイン領域の他方はデータ線DLに接続され、転送用MISFETQt2のソース領域、ドレイン領域の他方はデータ線/DLに接続されている。
また、フリップフロップ回路の一端(負荷用MISFETQp1、Qp2の各ソース領域)は電源電圧(Vcc)に接続され、他端(駆動用MISFETQd1、Qd2の各ソース領域)は基準電圧(Vss)に接続されている。
上記回路の動作を説明すると、一方のCMISインバータINV1の蓄積ノードAが高電位(“H”)であるときには、駆動用MISFETQd2がONになるので、他方のCMISインバータINV2の蓄積ノードBが低電位(“L”)になる。したがって、駆動用MISFETQd1がOFFになり、蓄積ノードAの高電位(“H”)が保持される。すなわち、一対のCMISインバータINV1、INV2を交差結合させたラッチ回路によって相互の蓄積ノードA、Bの状態が保持され、電源電圧が印加されている間、情報が保存される。
転送用MISFETQt1、Qt2のそれぞれのゲート電極にはワード線WLが接続され、このワード線WLによって転送用MISFETQt1、Qt2の導通、非導通が制御される。すなわち、ワード線WLが高電位(“H”)であるときには、転送用MISFETQt1、Qt2がONになり、ラッチ回路と相補性データ線(データ線DL、/DL)とが電気的に接続されるので、蓄積ノードA、Bの電位状態(“H”または“L”)がデータ線DL、/DLに現れ、メモリセルMCの情報として読み出される。
メモリセルMCに情報を書き込むには、ワード線WLを“H”電位レベル、転送用MISFETQt1、Qt2をON状態にしてデータ線DL、/DLの情報を蓄積ノードA、Bに伝達する。以上のようにして、SRAMを動作させることができる。
次に、上述したSRAMのレイアウト構成の一例について図2を参照しながら説明する。図2は、SRAMのレイアウト構成を示す模式的な平面図である。SRAMのメモリセルMCは、例えば、図2に示すように、半導体基板(以下単に「基板」という。)1に形成された一対の駆動用MISFETQd1、Qd2、一対の負荷用MISFETQp1、Qp2および一対の転送用MISFETQt1、Qt2の6つの電界効果トランジスタから構成されている。
具体的には、基板1を素子分離領域STIで複数のアクティブ領域(活性領域)Ap1、Ap2、Ap3、An1、An2に区画する。素子分離領域STIで区画された複数のアクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3、An1、An2は、並んで基板1の第1方向(y方向)に延在するように配置され、アクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3、An1、An2の周囲を素子分離領域STIで囲む構造となっている。
nMISFETを形成するアクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3では、アクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3内にリンや砒素などのn型不純物を導入することによりソース領域およびドレイン領域が形成されている。そして、ソース領域とドレイン領域の間のアクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3上にゲート絶縁膜を介してゲート電極Gが形成されている。ゲート電極Gは、アクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3の延在する第1方向とは交差する第2方向(x方向)に延在している。
このようにして、アクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3上に形成されているゲート電極G、および、ゲート電極Gを挟むようにアクティブ領域Ap1、Ap2、Ap3内に形成されているソース領域およびドレイン領域によりnMISFET(駆動用MISFETQd1、Qd2、転送用MISFETQt1、Qt2)が形成される。同様に、アクティブ領域An1、An2上に形成されているゲート電極G、および、ゲート電極Gを挟むようにアクティブ領域An1、An2内に形成されているソース領域およびドレイン領域によりpMISFET(負荷用MISFETQp1、Qp2)が形成される。
例えば、SRAMのメモリセルMCにおいて、アクティブ領域Ap1に形成されているソース領域およびドレイン領域と2本のゲート電極Gにより、駆動用MISFETQd1および転送用MISFETQt1が同一のアクティブ領域Ap1に形成されている。また、アクティブ領域An1に形成されているソース領域およびドレイン領域とゲート電極Gにより、負荷用MISFETQp1が形成され、アクティブ領域An2に形成されているソース領域およびドレイン領域とゲート電極Gにより、負荷MISFETQp2が形成されている。同様に、アクティブ領域Ap2に形成されているソース領域およびドレイン領域とゲート電極Gにより、駆動用MISFETQd2および転送用MISFETQt2が同一のアクティブ領域Ap2に形成されている。
さらに、SRAMにおいては、6つの電界効果トランジスタからなるメモリセルMCが複数形成されている以外に、SRAMの構造上、駆動用トランジスタQd1、Qd2のドレイン領域の電位を得るために、基板電位供給部Lp1、Lp2が設けられている。この基板電位供給部Lp1、Lp2は、p型半導体領域から形成されている。同様に、基板1には、n型半導体領域からなる基板電位供給部Ln1も形成されている。そして、メモリセルMCの形成領域と基板電位供給部Lp1、Lp2、Ln1との間の領域は、本来、ゲート電極Gを形成する必要のない領域であるが、基板1の全体にわたって、ゲート電極Gを均一に形成して加工精度を確保するために、ゲート電極Gの間隔に対応したダミー電極DGが形成されている。以上のようにして、SRAMが基板1に形成されている。
次に、本実施の形態におけるnMISFETとpMISFETの構成について説明するが、その一例として、図2のY1−Y1線で切断した駆動用MISFETQd1と、図2のY2−Y2線で切断した負荷用MISFETQp1の構成について図3を用いて説明する。駆動用MISFETQd1は、nMISFETから構成されているので、図3では、駆動用MISFETQd1をnMISFETQnとする。同様に、負荷用MISFETQp1は、pMISFETから構成されているので、図3では、負荷用MISFETQp1をpMISFETQpとする。
図3は、SRAMを構成するnMISFETQnとpMISFETQpの断面構造を示す図である。なお、図3に示すnMISFETQnもpMISFETQpも同一の基板1上に設けられている。
まず、nMISFETQnの構成について説明する。図3に示すように、例えばp型単結晶シリコンから構成される基板1のnMISFET形成領域には、p型ウェル2が形成されており、そのp型ウェル2において、nMISFETQnは、基板1上にゲート絶縁膜3を介してゲート電極4(n型ゲート電極)を有している。
このn型MISFETQnのゲート絶縁膜3は、基板1上の酸化シリコン(SiO2)と、その上に酸化シリコンよりも誘電率が高く、ハフニウムを含む酸化膜の例えば窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)との積層膜である。
また、ゲート電極4は、nMISFETQnのゲート絶縁膜3上に窒化チタン膜5と、窒化チタン膜5上にニッケルリッチのフルシリサイド膜6とを有している。窒化チタン膜5は、ゲート絶縁膜3と直接接しており、主としてnMISFETQnの閾値電圧を調整するために用いられるものである。一方、フルシリサイド膜6は、主としてゲート電極4の低抵抗化のために用いられるものである。また、ゲート電極4の両側の側壁には、サイドウォール7が形成されている。このサイドウォール7は、例えば窒化シリコン膜などの絶縁膜から形成されている。
また、サイドウォール7直下のp型ウェル2内には、ゲート電極4に整合して設けられた浅いn型不純物拡散領域8が形成されている。この浅いn型不純物拡散領域8は、基板1にリン(P)や砒素(As)などのn型不純物を導入して形成された半導体領域である。そして、浅いn型不純物拡散領域8の外側のp型ウェル2内には、サイドウォール7に整合して深いn型不純物拡散領域9が形成されている。この深いn型不純物拡散領域9も、基板1にリンや砒素などのn型不純物を導入することにより形成されており、半導体領域となっている。このように一対の浅いn型不純物拡散領域8と、一対の深いn型不純物拡散領域9により、nMISFETQnのソース領域とドレイン領域が形成されている。
続いて、pMISFETQpの構成について説明する。図3に示すように、基板1のpMISFET形成領域には、n型ウェル10が形成されており、そのn型ウェル10において、pMISFETQpは、基板1上にゲート絶縁膜11を介してゲート電極12(p型ゲート電極)を有している。
このp型MISFETQnのゲート絶縁膜11は、基板1上の酸化シリコン(SiO2)と、その上に酸化シリコンよりも誘電率が高く、ハフニウムを含む酸化膜の例えば窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)との積層膜である。この積層膜の構成は、ゲート絶縁膜3の構成と同様である。
また、ゲート電極12は、pMISFETQpのゲート絶縁膜11上にニッケルリッチのフルシリサイド膜6を有している。フルシリサイド膜6は、ゲート絶縁膜11と直接接しており、pMISFETQpの閾値電圧を調整するために用いられると共に、ゲート電極12の低抵抗化のために用いられるものである。また、ゲート電極12の両側の側壁には、サイドウォール13が形成されている。このサイドウォール13は、サイドウォール7と同様に例えば窒化シリコン膜などの絶縁膜から形成されている。
また、サイドウォール13直下のn型ウェル10内には、ゲート電極12に整合して設けられた浅いp型不純物拡散領域14が形成されている。この浅いp型不純物拡散領域14は、基板1にホウ素(B)などのp型不純物を導入して形成された半導体領域である。そして、浅いp型不純物拡散領域14の外側のn型ウェル10内には、サイドウォール13に整合して深いp型不純物拡散領域15が形成されている。この深いp型不純物拡散領域15も、基板1にホウ素などのp型不純物を導入することにより形成されており、半導体領域となっている。このように一対の浅いp型不純物拡散領域14と、一対の深いp型不純物拡散領域15により、pMISFETQpのソース領域とドレイン領域が形成されている。
以上のようにして、基板1のnMISFET形成領域にnMISFETQnが設けられ、基板1のpMISFET形成領域にpMISFETQpが設けられている。
nMISFETQn(駆動用MISFETQd1)のゲート電極4と、pMISFETQp(負荷用MISFETQp1)のゲート電極12とは、図2に示すように1本のゲート電極Gとして形成されている。図4は、図2のX1−X1線で切断した断面図である。図4に示すように、基板1には、素子分離領域STIが形成されており、素子分離領域STIで分離された活性領域(アクティブ領域)であるnMISFET形成領域、pMISFET形成領域、コンタクト形成領域のそれぞれにnMISFETQn、pMISFETQp、基板コンタクトCNTが設けられている。
例えば、図4に示す4つの素子分離領域STIのうち、左側の素子分離領域STIとそれに隣接する素子分離領域STIで挟まれた活性領域(アクティブ領域)には、p型ウェル2が形成されている。また、中央の2つの素子分離領域STIで挟まれた活性領域(アクティブ領域)には、n型ウェル10が形成されている。さらに、右側の素子分離領域STIとそれに隣接する素子分離領域STIで挟まれた活性領域(アクティブ領域)には、n型ウェル10およびその表面にp型不純物拡散領域16が形成されている。このp型不純物拡散領域16は、n型ウェル10の表面にホウ素(B)などのp型不純物を導入して形成された半導体領域であり、例えば、pMISFETQp1、Qp2のソース領域およびドレイン領域を構成する浅いp型不純物拡散領域14、深いp型不純物拡散領域15と同一の工程により形成される。
そして、nMISFET形成領域のp型ウェル2上にはゲート絶縁膜3が形成されている。また、pMISFET形成領域のn型ウェル10上にはゲート絶縁膜11が形成されている。なお、本実施の形態では、ゲート絶縁膜3、11共に基板1上の酸化シリコンと、その上の窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)との積層膜から構成されている。
また、nMISFET形成領域のゲート絶縁膜3上およびコンタクト形成領域のp型不純物拡散領域16上には、窒化チタン膜5が形成されている。さらに、nMISFET形成領域の窒化チタン膜5上、pMISFET形成領域のゲート絶縁膜11上、およびコンタクト形成領域の窒化チタン膜5上には、ニッケルリッチのフルシリサイド膜6が形成されている。つまり、フルシリサイド膜6は、nMISFET形成領域、pMISFET形成領域およびコンタクト形成領域にわたって基板1上に形成されている。
したがって、ゲート電極Gは、nMISFET形成領域ではnMISFETQnのゲート電極4となり、pMISFET形成領域ではpMISFETQpのゲート電極12となり、コンタクト形成領域では基板コンタクトCNT(蓄積ノードB)となっている。
コンタクト形成領域の基板1上にも形成された窒化チタン膜5は、p型不純物拡散領域16と接触している。本実施の形態では、ゲート電極材料としてニッケルリッチのフルシリサイド膜6を形成するため、コンタクト形成領域上にも厚いニッケル膜が形成され、シリサイド化が行われる。その際、p型不純物拡散領域16より深くニッケルが基板1内まで侵入することが考えられる。そこで、本実施の形態では、コンタクト形成領域の基板1とフルシリサイド膜6との間に窒化チタン膜5を挟むことで、基板1にニッケルが侵入して起こるリークを防止している。すなわち、コンタクト形成領域の基板1上に窒化チタン膜5を設けることで、基板コンタクトCNTでの不具合を低減できる。
ここで、本実施の形態におけるCMISを構成するnMISFETQnおよびpMISFETQpについて説明する。CMISを構成する一方のnMISFETQnは、基板1上にゲート絶縁膜3を介してゲート電極4を有している。ゲート絶縁膜3は、酸化シリコンよりも誘電率が高く、ハフニウムを含む酸化膜(高誘電体膜)を有している。ゲート電極4は、ゲート絶縁膜3上に窒化チタン膜5と、窒化チタン膜5上にニッケルリッチのフルシリサイド膜6とを有している。CMISを構成する他方のpMISFETQpは、基板1上にゲート絶縁膜11を介してゲート電極12を有している。ゲート絶縁膜11は、酸化シリコンよりも誘電率が高く、ハフニウムを含む酸化膜(高誘電体膜)を有している。ゲート電極12は、ゲート絶縁膜11上にニッケルリッチのフルシリサイド膜6を有している。
従来、nMISFETおよびpMISFETでは、ゲート電極としてポリシリコン膜が用いられている。そして、nMISFETでは、ゲート電極を構成するポリシリコン膜にn型不純物(リンや砒素など)を導入している。これにより、ゲート電極の仕事関数(フェルミレベル)をシリコンの伝導帯近傍(4.1eV近傍)に設定することで、nMISFETの閾値電圧の低下を図っている。一方、pMISFETでは、ゲート電極を構成するポリシリコン膜にp型不純物(ホウ素など)を導入している。これにより、ゲート電極の仕事関数をシリコンの価電子帯近傍(5.2eV近傍)に設定することで、pMISFETの閾値電圧の低下を図っている。これは、ゲート絶縁膜として酸化シリコン膜を使用した場合の例である。すなわち、ゲート絶縁膜として酸化シリコン膜を使用している場合では、ゲート電極にn型不純物あるいはp型不純物を導入することにより、ゲート電極の仕事関数を伝導帯近傍あるいは価電子帯近傍にすることができる。
また、ゲート電極材料にポリシリコンを用いるのと同様に、ニッケルシリサイド膜中に不純物を添加すると仕事関数が変化することが前記特許文献3に記載されており、さらにNi/(Ni+Si)比が高いニッケルシリサイド膜をpMISFETのゲート電極材料として用い、Ni/(Ni+Si)比が低いニッケルシリサイド膜をnMISFETのゲート電極材料として用いる記載がされている。
ところが、ゲート絶縁膜として、ハフニウムを含む酸化膜のような高誘電体膜を使用すると、ポリシリコン膜よりなるゲート電極にn型不純物あるいはp型不純物を導入しても、ゲート電極の仕事関数が、伝導帯近傍あるいは価電子帯近傍にならない現象が生じる。すなわち、ゲート絶縁膜として高誘電体膜を使用した場合、nMISFETでは、ゲート電極の仕事関数が大きくなって伝導帯近傍から離れる。このため、nMISFETの閾値電圧が上昇する。一方、pMISFETでは、ゲート電極の仕事関数が小さくなって価電子帯から離れるので、nMISFETと同様に閾値電圧が上昇する。このように、ゲート電極の仕事関数が閾値電圧の上昇する方向にシフトする現象はフェルミレベルピニングとして解釈されている。
そこで、ゲート絶縁膜に酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を使用する場合、ゲート絶縁膜上に配置されるゲート電極を、ポリシリコン膜ではなく金属膜から形成することが検討されている。ゲート電極を金属膜から形成すれば、ポリシリコン膜のように不純物を導入することで閾値を調整することなく、金属膜の種類を選択することで閾値電圧を調整することができる。このため、ゲート電極に金属膜を使用することで、上述したフェルミレベルピニングの問題を回避することができる。さらに、ゲート電極にポリシリコン膜を使用しないことから、ゲート電極の空乏化の問題も回避することができる。
ゲート電極に金属膜を使用する場合、nMISFETとpMISFETで異なる金属膜を用いることが考えられる。金属膜の種類によって仕事関数値は異なるが、nMISFETでは、閾値電圧を下げるため、シリコンの伝導帯近傍の仕事関数を有する金属膜を用いる必要がある一方、pMISFETでは、閾値電圧を下げるため、シリコンの価電子帯近傍の仕事関数を有する金属膜を用いる必要があるからである。したがって、ゲート電極に金属膜を使用する場合、nMISFETとpMISFETで異なる金属膜を使用することになる。
例えば、本発明者は、nMISFETおよびpMISFETのゲート絶縁膜として共に窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)膜を用い、nMISFETの仕事関数制御金属としてシリコン窒化タンタル膜を用い、pMISFETの仕事関数制御金属ゲート電極として窒化チタン膜を用いた構造を検討している。窒化チタンは、耐熱性が高く、容易に薬液除去ができるため、従来の半導体装置でも用いられてきた使いやすい材料であり、また、仕事関数を低くするためにはシリコン窒化タンタルのようにシリコンを主成分レベルで多く含む金属材料の使用が有効だからである。また、仕事関数制御金属のシリコン窒化タンタル膜や窒化チタン膜自体では抵抗が高いため、低抵抗材料としてタングステン(W)膜や、前記特許文献2のようにシリサイド膜を仕事関数制御金属上に設けている。
pMISFETの仕事関数制御金属としては、窒化チタンの他に、窒化タングステン(TiW)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化イリジウム(IrO2)、窒化モリブデン(MoN)を挙げることができる。また、nMISFETの仕事関数制御金属としては、シリコン窒化タンタルの他に、チタン(Ti)、ジルコニア(Zr)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)を挙げることができる。
これらチタン、ジルコニア、バナジウム、タンタル、ニオブなどの一般的に仕事関数の低い金属は反応性が高く、高温の活性化熱処理などを行うと、下地の高誘電体膜と反応してリーク電流が増大してしまうことが問題となる。また、仕事関数を低くするためにはシリコン窒化タンタルのようにシリコンを主成分レベルで多く含む金属の使用が有効である。しかしながら、シリコン窒化タンタルと下地の高誘電体膜との界面に、下地の高誘電体膜より誘電率が低い酸化シリコン膜、あるいは電極内から相分離して形成された下地の高誘電体膜より誘電率が低い窒化シリコン膜が形成され、ゲート絶縁膜の酸化シリコン膜厚換算膜厚が厚くなってしまうことが問題となる。
そこで、本発明者は、同一の仕事関数制御金属として窒化チタン膜を用いたMIPS(metal inserted poly-Si stacks)構造のゲート電極を備えたnMISFETおよびpMISFETについて検討を行っている。この窒化チタン膜は、前述したように、通常はpMISFETの仕事関数制御金属として用いられるものであるが、耐熱性が高く、容易に薬液除去ができるため、従来の半導体装置でも用いられてきた使いやすい材料である。これらMISFETのゲート電極は、例えば、図3のnMISFETQnにおいてフルシリサイド膜6を導電性のポリシリコン膜に置き換えた構造となる。なお、前記特許文献1には、TaN、TiSiN、またはTiNを仕事関数制御金属として用いたMIPS構造が開示されている。
図5はMIPS構造のゲート電極を備えたnMISFETにおいて、TiN膜の膜厚に対する実効仕事関数と電子移動度の関係を示す説明図であり、図6はMIPS構造のゲート電極を備えたpMISFETにおいて、TiN膜の膜厚に対する実効仕事関数と正孔移動度の関係を示す説明図である。
図5および図6に示すように、ゲート絶縁膜と接する金属膜の膜厚をnMISFETでは薄く、pMISFETでは厚くすることによって、nMISFETの実効仕事関数はシリコンの伝導帯近傍(4.1eV)に近づき、pMISFETの実効仕事関数はシリコンの価電子帯近傍(5.2eV)に近づくため、それぞれのMISFETの閾値を低減することができる。しかしながら、図6に示すように、窒化チタン膜の膜厚を厚くすればするほど、pMISFETの性能に深く関与する正孔移動度が劣化することがわかる。
このように、nMISFETおよびpMISFETの同一の仕事関数制御金属材料として窒化チタン膜を用いることによって、nMISFETとpMISFETとで金属材料の差に起因する微細寸法精度を確保しつつ、MISFETの閾値を低減することができるが、CMISの性能が低下してしまうことを本発明者は見出した。
ここで、本発明者は、同一の仕事関数制御金属材料を用いて、nMISFETとpMISFETの閾値を低減することができる効果を得るために、同一の仕事関数制御金属として窒化チタン膜を用いて、その上に低抵抗の金属膜であるタングステン膜を積層した構造のゲート電極を備えたnMISFETおよびpMISFETについて検討も行っている。しかしながら、窒化チタン膜の膜厚をnMISFETでは薄く、pMISFETでは厚くしても、前述のMIPS構造と同様の効果を得ることができなかった。
また、本発明者は、前述のMIPS構造では、同一の仕事関数制御金属である窒化チタン膜上に、ポリシリコンを用いていることから、そのシリコンがゲート電極の実効仕事関数に影響を及ぼしているものと考え、ポリシリコン電極に十分に厚いニッケルを反応させたニッケルリッチのフルシリサイド膜を、同一の仕事関数制御金属である窒化チタン膜上に用いた構造について検討も行っている。例えば、発明者はニッケル/シリコンの比が2以上となるニッケルリッチのフルシリサイド膜を、窒化チタン膜上に用いた構造のnMISFETおよびpMISFETを製造し、窒化チタン膜の膜厚依存性を評価している。なお、ゲート絶縁膜としては、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)/酸化シリコン(SiO2)を用いた。
同一の仕事関数制御金属として窒化チタン膜を用い、その上のポリシリコン層を低抵抗とするために金属であるニッケル膜とすべて反応させ、ニッケル/シリコンの比が2以上のニッケルシリサイド(NiSix)と窒化チタン膜を積層したゲート電極構造を形成した。
図7はニッケルリッチのフルシリサイド膜/窒化チタン膜のゲート電極を備えたnMISFETにおいて、TiN膜の膜厚に対する実効仕事関数と正孔移動度の関係を示す説明図であり、図8はニッケルリッチのフルシリサイド膜/窒化チタン膜のゲート電極を備えたpMISFETにおいて、TiN膜の膜厚に対する実効仕事関数と正孔移動度の関係を示す説明図である。
図7および図8に示すように、ゲート絶縁膜と接する窒化チタン膜の膜厚をnMISFETでは薄く、pMISFETでは厚くすることによって、nMISFETの実効仕事関数はシリコンの伝導帯近傍(4.1eV)に近づき、pMISFETの実効仕事関数はシリコンの価電子帯近傍(5.2eV)に近づくため、それぞれのMISFETの閾値を低減することができる。すなわち、図5および図6で示したポリシリコン/TiN積層電極構造の場合の結果と比較して同じ傾向にあることがわかる。このことから、前述した窒化チタン膜の膜厚依存性は、その上に積層される膜がポリシリコンに限定されるわけではなく、ニッケルリッチのフルシリサイド膜でも同じ傾向が得られることがわかる。
例えば、Ni/Siの比が2以上のNiSixと2nmのTiN膜の積層ゲート電極は、nMISFETにおける高い電子移動度の維持に有効であり、かつ4.45eV程度の低い実効仕事関数を示すことから、閾値の低減にも有効な電極構造であるといえる。
そこで、本実施の形態では、nMISFETQnは、図3に示したように、基板1上にゲート絶縁膜3を介してゲート電極4を有しており、ゲート絶縁膜3は、酸化シリコンよりも誘電率が高く、ハフニウムを含む酸化膜を有しており、ゲート電極4は、ゲート絶縁膜3上に窒化チタン膜5と、窒化チタン膜5上にニッケルリッチのフルシリサイド膜6とを有している。
前述したように、通常は、pMISFET用の仕事関数の高いゲート電極材料として、窒化チタン膜が用いられる。しかしながら、本実施の形態では、pMISFETQnに熱耐性の高い窒化チタン膜5、その上にニッケルリッチのフルシリサイド膜6を用いた積層構造とすることで、ゲートリーク電流および酸化シリコン換算膜厚の増大を抑制している。かつ、図7に示したように、窒化チタン膜5の膜厚を5nm以下とすることで、nMISFETとして適した実効仕事関数を得ることができ、また、高い電子移動度の維持することができる。
また、図7に示すように、nMISFETの電気特性の向上として、窒化チタン膜の膜厚は薄いほうが有利であり、2nm程度にすることがより望ましい。しかしながら、窒化チタン膜の膜厚が1nm未満になると、膜として構成することが困難になり、更に上部に設けられたフルシリサイド膜6中のシリコンの影響が見え始めるため、SiO2換算膜厚が増加してしまう。上記考察から、窒化チタン膜5の膜厚は、1nm以上、5nm以下に設定することが好ましく、最適には、2nm程度にすることが望ましい。
さらに、発明者は2nmの窒化チタン(TiN)膜をHfSiON/SiO2ゲート絶縁膜上に一旦形成し、40〜80℃のH2O2水溶液でTiN膜を除去した後に、ポリシリコン電極を形成し、その後Ni膜と反応させてNi/Siの比が2以上のNiSixゲート電極を作製した。このゲート電極を有するHfSiON/SiO2をゲート絶縁膜とするMISFETの実効仕事関数及び移動度を評価した結果を図8に黒塗りの点としてプロットした(TiN膜厚=0nm)。
このようにして形成したNi/Siの比が2以上のNiSixゲート電極は、pMISFETで高い正孔移動度を維持しつつ4.8eV程度の高い実効仕事関数を示すことを確認した。ゆえに、この電極はpMISFETの閾値低減に有効であることが確かめられた。この高い実効仕事関数を得るには、Ni/Siの比を2以上にする必要がある。それは、Siリッチになると、ポリシリコン電極の場合と同様に、フェルミレベルピニング現象が問題になり、実効仕事関数が上昇するとともに、pMISFETの閾値が上昇するからである。
本実施の形態では、nMISFETQnにはNi/Siの比が2のNiSixと、2nmの窒化チタン膜5とが積層されたゲート電極4を用いた評価を行う。この場合、図7に示すように、高い移動度を維持しつつ4.45eV程度の低い実効仕事関数を得ることができる。また、pMISFETQpにはNi/Siの比が2のNiSixから構成されたゲート電極12を用いた評価を行う。この場合、図8に示すように、高い正孔移動度を維持しつつ、4.8eV程度の高い実効仕事関数を得ることができる。
これらnMISFETQnおよびpMISFETQpのゲート電圧に対するドレイン電流の関係を図9に示す。Ni/Siの比が2のNiSixと、2nmの窒化チタン膜5とが積層されたゲート電極4を有するnMISFETQnでは0.25V程度の低い閾値を得ることができる(図9中右側の白三角)。また、Ni/Siの比が2以上のNiSixから構成されたゲート電極12を有するpMISFETQpでは0.4V程度の低い閾値を得ることができる(図9中左側の黒丸)。
図9中には参考(Ref.)としてNi/Siの比が2以上のNiSixと、2nmの窒化チタン膜とが積層されたゲート電極を有するpMISFETの特性も示している(図9中左の黒三角)。このpMISFETでは0.75V程度の高い閾値を示すことがわかる。これに対して、窒化チタン膜を除去して構成されたNi/Siの比が2以上のNiSixのゲート電極12を有するpMISFETQpでは閾値が0.4V程度と、閾値を低減することができる。
このように本実施の形態における半導体装置は、pMISFETQnにはゲート絶縁膜11と接して第1金属(Ni)/Siの比が2以上の金属シリサイド(シリサイド膜6)からなるゲート電極12を、nMISFETQnにはゲート絶縁膜3と接して5nm以下の第2金属膜(窒化チタン膜5)と、その上に第1金属(Ni)/Siの比が2以上の金属シリサイド(シリサイド膜6)から構成される積層のゲート電極4を備えている。
次に、本実施の形態におけるnMISFETQnおよびpMISFETQpの製造方法について図面を参照して説明する。特に、図2のY1−Y1線およびY2−Y2線における断面(図10〜図18)での説明を行う。
まず、例えばp型単結晶シリコンから構成される基板1を準備した後、一般的な方法に従って、基板1の主面(素子形成面)に素子分離領域STIおよびp型ウェル2およびn型ウェル10を形成する(図4参照)。これにより、nMISFETQn、pMISFETQpや基板コンタクトCNTなどの下地(下地基板)が形成される。
素子分離領域STIは、基板1に形成された例えば250nm〜400nm程度の深さの素子分離溝に、例えばCVD法を用いて埋め込まれた酸化シリコン膜から構成される。また、p型ウェル2は、イオン注入法を用いて、ホウ素(B)やフッ化ホウ素(BF2)などのp型不純物を基板1内に導入することにより形成される。また、n型ウェル10は、イオン注入法を用いて、リン(P)や砒素(As)などのn型不純物を基板1内に導入することにより形成される。
このようにして、素子分離領域STIで分離されて区画されたnMISFET形成領域(第1領域)の活性領域(アクティブ領域)にp型ウェル2が形成され、pMISFET形成領域(第2領域)の活性領域(アクティブ領域)にn型ウェル10が形成され、コンタクト形成領域にn型ウェル10が形成される。
その後、本実施の形態では、リソグラフィ法を用いると共に、コンタクト形成領域のn型ウェル10に、イオン注入法によってホウ素(B)やフッ化ホウ素(BF2)などのp型不純物を導入することにより、p型不純物拡散領域16を形成する。このp型不純物拡散領域16はゲート電極Gが基板コンタクトCNT部分において、接触抵抗を低減するために形成される。更に図示しないが、p型不純物拡散領域16は、例えば、タングステン(W)等の金属配線により、蓄積ノードB(図1、図2参照)を形成するnMISFETQt2、Qd2のソース領域及びドレイン領域(深いn型不純物拡散領域9)の一方側に電気的に接続される。
続いて、図10に示すように、nMISFET形成領域の基板1上にゲート絶縁膜3、およびpMISFET形成領域の基板1上にゲート絶縁膜11を形成する。後述するが、本実施の形態では、ゲート絶縁膜3およびゲート絶縁膜11は同一工程で形成され、同一材料で構成される。
ゲート絶縁膜3、11は、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、例えばCVD法あるいは原子層制御成膜(ALD:Atomic Layer Deposition)法を用いて形成された酸化シリコンよりも誘電率が高く、ハフニウムを含む酸化膜である窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)膜から構成される。また、本実施の形態では、このHfSiON膜の形成前に、別途酸化雰囲気での熱処理を行うことによって、基板1とHfSiON膜との間に酸化シリコン(SiO2)膜を形成している。すなわち、ゲート絶縁膜3、11は、基板1上のSiO2膜、その上のHfSiON膜の積層膜(HfSiON/SiO2)として構成されている。これらの膜厚は、例えば、HfSiON膜が1.5nm〜4.0nm程度、SiO2膜が1.0nm以下である。
本実施の形態では、ゲート絶縁膜3、11をHfSiON膜で構成するが、例えばHf-Si-O、Hf-Al-O、Hf-Al-O-Nなどの酸化シリコンより誘電率が高いHf系絶縁膜を適用することもできる。これらのHf系絶縁膜は、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜よりも誘電率が高いので、物理膜厚を(高誘電体膜の誘電率/酸化シリコン膜の誘電率)倍だけ厚くできる。物理膜厚を厚くすることによりリーク電流を低減することができる。
また、本実施の形態では、ゲート絶縁膜3、11を構成するSiO2膜は、HfSiON膜の形成前に別途酸素雰囲気での熱処理によって形成することとしているが、基板1とHfSiO膜との界面層がHfSiO膜の形成中や形成後の熱処理によって形成しても良い。
なお、基板コンタクトCNTを形成するために、コンタクト形成領域に形成されたゲート絶縁膜3(あるいはゲート絶縁膜11)は、リソグラフィ法およびエッチング技術によって除去される。
続いて、nMISFET形成領域のゲート絶縁膜3上およびpMISFET形成領域のゲート絶縁膜11上に窒化チタン(TiN)膜5を形成する。この窒化チタン膜5は、主として、閾値を調整するために形成される膜(仕事関数制御金属膜)であり、その膜厚を5nm以下(図7参照)とすることで、nMISFETとして適した実効仕事関数を得ることができ、また、高い電子移動度の維持することができる。本実施の形態では、窒化チタン膜5は、例えば、スパッタリング法を用いて、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、その膜厚が2nmとなるように形成している。
窒化チタン膜5は、コンタクト形成領域の基板1上にも形成され、p型不純物拡散領域16と接触している。本実施の形態では、ゲート電極材料としてニッケルリッチのフルシリサイド膜6を形成するため、コンタクト形成領域上にも厚いニッケル膜が形成され、シリサイド化が行われる。その際、p型不純物拡散領域16より深くニッケルが基板1内まで侵入することが考えられる。そこで、本実施の形態では、コンタクト形成領域の基板1とフルシリサイド膜6との間に窒化チタン膜5を挟むことで、基板1にニッケルが侵入して起こるリークを防止している。すなわち、コンタクト形成領域の基板1上に窒化チタン膜5を設けることで、基板コンタクトCNTでの不具合を低減できる。
その後、リソグラフィ法を用いて、pMISFET形成領域を開口するレジストマスクPRを、pMISFET形成領域以外の基板1上に形成する。図10では、nMISFET形成領域の基板1を被覆したレジストマスクPRが形成されている。
続いて、例えば40〜80℃の過酸化水素系水溶液(H2O2を含む水溶液)によってpMISFET形成領域の窒化チタン膜5を除去する。これにより、図11に示すように、pMISFET形成領域のゲート絶縁膜11を露出する。その後、レジストマスクPRを溶解もしくはアッシングによって除去する。
続いて、図12に示すように、nMISFET形成領域の窒化チタン膜5上およびpMISFET形成領域のゲート絶縁膜11上にシリコン膜20を形成し、このシリコン膜20上に窒化シリコン(SiN)膜21を形成する。シリコン膜20は、例えば、CVD法を用いて、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、その膜厚が50nm程度となるように形成されたポリシリコン膜である。このシリコン膜20を構成するポリシリコン膜は、後の工程で全部がシリサイド化され、ゲート電極材料として抵抗が低減される。また、窒化シリコン膜5は、例えばCVD法を用いてシリコン膜20上に、その膜厚が30nm程度となるように形成されている。この窒化シリコン膜21は、ハードマスクとして機能する膜である。なお、シリコン膜20は、多結晶状態でなくアモルファス状態であっても良い。
続いて、図13に示すように、一般的な方法でゲート電極加工、エクステンション(浅いn型不純物拡散領域8および浅いp型不純物拡散領域14)の形成、サイドウォール7、13の形成、ソース領域およびドレイン領域(深いn型不純物拡散領域9および深いp型不純物拡散領域15)の形成、不純物の活性化熱処理、およびソース領域およびドレイン領域表面のシリサイド電極(図示しない)の形成を行う。
ゲート電極加工は、まず、リソグラフィ法およびエッチングを用いて、窒化シリコン膜21をパターニングする。次いで、パターニングした窒化シリコン膜21をハードマスクとして、nMISFET形成領域ではシリコン膜20と窒化チタン膜5をパターニングし、pMISFET形成領域ではシリコン膜20をパターニングする。なお、このパターニングされた状態では高抵抗であるがゲート電極として説明する。
また、エクステンションの形成は、まず、リソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、nMISFET形成領域ではパターニングされたゲート電極に整合した浅いn型不純物拡散領域(エクステンション領域)8を形成する。浅いn型不純物拡散領域8は、半導体領域である。次いで、同様に、リソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、pMISFET形成領域ではパターニングされたゲート電極に整合した浅いp型不純物拡散領域(エクステンション領域)14を形成する。浅いp型不純物拡散領域14は、半導体領域である。
また、サイドウォール7、13の形成は、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、例えばCVD法によって窒化シリコン膜を形成し、その窒化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、パターニングされたゲート電極の側壁に形成する。
また、ソース領域およびドレイン領域の形成は、まず、リソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、nMISFET形成領域にサイドウォール7に整合した深いn型不純物拡散領域9を形成する。深いn型不純物拡散領域9は、半導体領域である。この深いn型不純物拡散領域9と浅いn型不純物拡散領域8によって、LDD(Lightly Doped Drain)構造のソース領域、ドレイン領域が形成される。同様に、リソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、pMISFET形成領域にサイドウォール13に整合した深いp型不純物拡散領域15を形成する。深いp型不純物拡散領域15は、半導体領域である。この深いp型不純物拡散領域15と浅いp型不純物拡散領域14によって、LDD(Lightly Doped Drain)構造のソース領域、ドレイン領域が形成される。その後、イオン注入された不純物の活性化を行うため、例えば900℃〜1000℃の熱処理を行う。
また、シリサイド電極の形成は、nMISFET形成領域の深いn型不純物拡散領域9の表面と、pMISFET形成領域の深いp型不純物拡散領域15の表面に低抵抗化のために、例えばニッケルシリサイド膜を形成する(図示しない)。あるいは、シリサイド電極の形成はコバルトシリサイド膜でも良い。このとき、コンタクト形成領域の基板1上にも、同様にニッケルシリサイド膜が形成される(図示しない)。このシリサイド膜により、図2におけるノード部分に形成されたタングステン配線とp型不純物拡散領域16とのコンタクト抵抗を低減できる。
続いて、図14に示すように、パターニングされたゲート電極間を埋め込むように基板1上に、PMD(Pre-Metal Dielectric)として層間絶縁膜22(例えば、酸化シリコン膜)を形成し、CMP法によってゲート電極上の窒化シリコン膜21を露出する。
続いて、図15に示すように、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)によって、窒化シリコン膜21を除去し、その下のシリコン膜20を露出する。
続いて、図16に示すように、例えば、スパッタリング法によって基板1上にニッケル膜23を堆積して、nMISFET形成領域のシリコン膜20上およびpMISFET形成領域のシリコン膜20上にニッケル膜23を形成する。ニッケル膜23は、後の工程でシリコン膜20をシリサイド化してニッケルリッチのフルシリサイド膜となるような厚さで形成される。
例えば、ニッケル/シリコン比が1のフルシリサイド膜を形成するためには、ポリシリコン膜の膜厚を50nmとした場合、ニッケル膜の膜厚は35nm程度とする。本実施の形態では、ポリシリコン膜からなるシリコン膜20の膜厚を50nmとしているので、ニッケルリッチのフルシリサイド膜を形成するために、ニッケル膜23の膜厚を35nmより厚くすれば良い。
特に、ニッケル/シリコン比を2以上のフルシリサイド膜を形成するためには、シリコン膜20に対して1.4倍以上の膜厚のニッケル膜23を形成する。本実施の形態では、ニッケル/シリコン比を2以上としたフルシリサイド膜を形成するため、ポリシリコン膜からなるシリコン膜20の膜厚を50nmとしているので、ニッケル膜23の膜厚は100nmとすれば良い。
続いて、図17に示すように、nMISFET形成領域ではシリコン膜20とニッケル膜23とでフルシリサイド膜6を形成し、pMISFET形成領域ではシリコン膜20とニッケル膜23とでフルシリサイド膜6を形成する。具体的には、まず、450℃程度の熱処理によってシリコン膜20をすべてニッケル膜23と固相反応させ、ニッケルリッチのニッケルシリサイド(NiSix)を形成する。次いで、硫酸と過酸化水素水の混合溶液などによって未反応のニッケル膜23を除去する。
これにより、nMISFET形成領域では、ゲート絶縁膜3上の窒化チタン膜5と、その上のフルシリサイド膜6とが積層されてnMISFETQnのゲート電極4が形成される。また、pMISFET形成領域では、ゲート絶縁膜11上のフルシリサイド膜6からpMISFETQpのゲート電極12が形成される。
続いて、図18に示すように、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、例えばCVD法を用いて酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜24を形成する。次いで、リソグラフィ法およびエッチングを用いて、層間絶縁膜22、24を貫通し、nMISFETQnのソース領域、ドレイン領域およびpMISFETQpのソース領域、ドレイン領域に達するコンタクトホール25を形成する。
次いで、コンタクトホール25の底面および内壁を含む層間絶縁膜22、24上に、例えばスパッタリング法を用いてチタン/窒化チタン膜26を形成した後、コンタクトホール25を埋め込むように基板1上に、例えばCVD法を用いてタングステン膜27を形成する。次いで、層間絶縁膜24上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜26およびタングステン膜27を例えばCMP法で除去することにより、プラグPLGを形成する。チタン/窒化チタン膜26は、タングステン膜27中のタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
次いで、層間絶縁膜24上およびプラグPLG上にチタン/窒化チタン膜28、銅を含有するアルミニウム膜29、チタン/窒化チタン膜30を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行い、配線M1を形成する。さらに、配線M1の上層に配線を形成して多層配線を形成する。
このようにして、基板1上にSRAMを含む集積回路を形成することができる。すなわち、本実施の形態では、SRAMを構成するnMISFETQn(駆動用MISFETQd1)とpMISFETQp(負荷用MISFETQp1)を図示して半導体装置の製造工程について説明したが、SRAMを構成するその他のMISFET(転送用MISFETなどを含む)も基本的に同様な工程で形成される。以上のようにして、本実施の形態における半導体装置を製造することができる。
また、本実施の形態により製造された半導体装置を構成するMISFETの移動度劣化を抑制することができ、MISFETの閾値を低減することができる。
さらに、その形成方法としては、高誘電体膜上に窒化チタン膜を形成し、その後H2O2を主成分としる水溶液によってpMISFET形成領域の窒化チタン膜のみを除去し、その後nMISFET形成領域及びpMISFET形成領域において同じ工程で同時にニッケル/シリコンの比が2以上のフルシリサイド膜の形成を行うことが望ましい。こうすることで、工程数の低減、及びCMISにおける閾値ばらつきの低減を図ることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態における半導体装置は、pMISFETにはゲート絶縁膜と接して第1金属/Siの比が2以上の金属シリサイドからなるゲート電極を、nMISFETQnにはゲート絶縁膜と接して5nm以下の第2金属膜と、その上に第1金属/Siの比が2以上の金属シリサイドから構成される積層のゲート電極を備えているものである。本実施の形態では、第1金属はニッケル(Ni)、第2金属は窒化チタン(TiN)、nMISFETおよびpMISFETのゲート絶縁膜は、HfSiO2/SiO2膜として説明する。
前記実施の形態1では、基板1上に窒化チタン膜5を形成する工程(図10参照)の後、基板1上にシリコン膜20を形成する工程(図12参照)を行う場合について説明したが、本実施の形態では、これらの工程の間で、基板1上にシリコン膜20よりも薄いシリコン膜を形成する工程を有する場合について説明する。なお、その他は前記実施の形態1と同様であるので、一部省略して説明する。
本実施の形態におけるnMISFETQnおよびpMISFETQpの製造方法について図面を参照して説明する。特に、図2のY1−Y1線およびY2−Y2線における断面(図19〜図27)での説明を行う。
まず、例えばp型単結晶シリコンから構成される基板1を準備した後、一般的な方法に従って、基板1の主面(素子形成面)に素子分離領域STIおよびp型ウェル2およびn型ウェル10を形成する(図4参照)。これにより、nMISFETQn、pMISFETQpや基板コンタクトCNTなどの下地(下地基板)が形成される。
続いて、図19に示すように、nMISFET形成領域の基板1上にゲート絶縁膜3、およびpMISFET形成領域の基板1上にゲート絶縁膜11を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜3およびゲート絶縁膜11は同一工程で形成され、同一のゲート絶縁膜材料としてHfSiON/SiO2積層膜で構成される。このHfSiONは、酸化シリコン(SiO2)よりも誘電率の高い、ハフニウムを含む酸化膜である。これらの膜厚は、例えば、HfSiON膜が1.5nm〜4.0nm程度、SiO2膜が1.0nm以下である。
続いて、nMISFET形成領域のゲート絶縁膜3上およびpMISFET形成領域のゲート絶縁膜11上に窒化チタン(TiN)膜5を形成する。この窒化チタン膜5は、nMISFETにおいて、主として閾値を調整するために形成される膜(仕事関数制御金属膜)であり、その膜厚を5nm以下(図7参照)とすることで、nMISFETとして適した実効仕事関数を得ることができ、また、高い電子移動度の維持することができる。本実施の形態では、窒化チタン膜5は、例えば、スパッタリング法を用いて、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、その膜厚が2nmとなるように形成している。
次いで、膜厚が10nm以下となるように、スパッタ法でアモルファスのシリコン膜20a(第1シリコン膜)を形成する。本実施の形態では、シリコン膜20aの膜厚は5nmとしている。
その後、リソグラフィ法を用いて、pMISFET形成領域を開口するレジストマスクPRを、pMISFET形成領域以外の基板1上に形成する。図19では、nMISFET形成領域の基板1を被覆したレジストマスクPRが形成されている。
前記実施の形態1のように、2nmと薄い窒化チタン膜5上にレジストマスクPRを形成した場合、レジストマスクPRを除去する工程によっては薄い窒化チタン膜5が酸化し、特性を変化させる場合が考えられる。そこで、本実施の形態では、そのような窒化チタン膜5の酸化を抑制するために、シリコン膜20aを保護膜として窒化チタン膜5とレジストマスクPRの間に挿入している。
続いて、例えば40〜80℃のアンモニア水などのウエットエッチングによってpMISFET形成領域のシリコン膜20aを除去した後、例えば40〜80℃の過酸化水素系水溶液(H2O2を含む水溶液)によってpMISFET形成領域の窒化チタン膜5を除去する。これにより、図20に示すように、ゲート絶縁膜11を露出する。その後、レジストマスクPRを溶解もしくはアッシングによって除去する。
続いて、図21に示すように、nMISFET形成領域のシリコン膜20a上およびpMISFET形成領域のゲート絶縁膜11上にシリコン膜20(第2シリコン膜)を形成し、このシリコン膜20上にハードマスクとなる窒化シリコン(SiN)膜21を形成する。シリコン膜20は、例えば、CVD法を用いて、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、その膜厚が50nm程度となるように形成されたポリシリコン膜である。このシリコン膜20とその下のシリコン膜20aを構成するポリシリコン膜は、後の工程で全部がシリサイド化され、ゲート電極材料として抵抗が低減される。なお、シリコン膜20は、多結晶状態でなくアモルファス状態であっても良い。
続いて、図22に示すように、一般的な方法でゲート電極加工、エクステンション(浅いn型不純物拡散領域8および浅いp型不純物拡散領域14)の形成、サイドウォール7、13の形成、ソース領域およびドレイン領域(深いn型不純物拡散領域9および深いp型不純物拡散領域15)の形成、不純物の活性化熱処理、およびソース領域およびドレイン領域表面のシリサイド電極(図示しない)の形成を行う。
続いて、図23に示すように、パターニングされたゲート電極間を埋め込むように基板1上に、PMD(Pre-Metal Dielectric)として層間絶縁膜22(例えば、酸化シリコン膜)を形成し、CMP法によってゲート電極上の窒化シリコン膜21を露出する。
続いて、図24に示すように、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)によって、窒化シリコン膜21を除去し、その下のシリコン膜20を露出する。
続いて、図25に示すように、例えば、スパッタリング法によって基板1上にニッケル膜23を堆積して、nMISFET形成領域のシリコン膜20上およびpMISFET形成領域のシリコン膜30上にニッケル膜23を形成する。ニッケル膜23は、後の工程でシリコン膜20をシリサイド化してニッケルリッチのフルシリサイド膜となるような厚さで形成される。特に、ニッケル/シリコン比を2以上のフルシリサイド膜を形成するためには、シリコン膜20およびシリコン膜20aに対して1.4倍以上の膜厚のニッケル膜23を形成する。本実施の形態では、ニッケル/シリコン比を2以上としたフルシリサイド膜を形成するためには、ポリシリコン膜からなるシリコン膜20の膜厚を50nmとしているので、ニッケル膜23の膜厚は例えば80nmとすれば良い。
続いて、図26に示すように、nMISFET形成領域ではシリコン膜20、20aとニッケル膜23とでフルシリサイド膜6を形成し、pMISFET形成領域ではシリコン膜20とニッケル膜23とでフルシリサイド膜6を形成する。具体的には、まず、450℃程度の熱処理によってシリコン膜20、20aをすべてニッケル膜23と固相反応させ、ニッケルリッチのニッケルシリサイド(NiSix)を形成する。次いで、硫酸と過酸化水素水の混合溶液などによって未反応のニッケル膜23を除去する。
続いて、図27に示すように、前記実施の形態1で説明したような配線プロセスを行うことによって、本実施の形態における半導体装置を製造することができる。
本実施の形態では、5nm以下で形成する窒化チタン膜5の酸化を抑制するために、nMISFET形成領域ではTiN膜上に10nm以下のシリコン膜20a(保護膜)を積層している。これによって、窒化チタン膜5の剥離プロセスにおけるプロセスマージンを拡大させることができ、製品の歩留を向上することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態における半導体装置は、pMISFETにはゲート絶縁膜と接して第1金属/Siの比が2以上の金属シリサイドからなるゲート電極を、nMISFETQnにはゲート絶縁膜と接して5nm以下の第2金属膜と、その上に第1金属/Siの比が2以上の金属シリサイドから構成される積層のゲート電極を備えているものである。本実施の形態では、第1金属はニッケル(Ni)、第2金属は窒化チタン(TiN)、nMISFETのゲート絶縁膜はHfLaAlOx/SiO2膜、pMISFETのゲート絶縁膜はHfAlOx/SiO2膜として説明する。これらのゲート絶縁膜材料をnMISFETおよびpMISFETにそれぞれ用いることによって閾値低減に有効となる。
前記実施の形態1では、nMISFETQnのゲート絶縁膜3およびpMISFETQpのゲート絶縁膜11ともに、同一のゲート絶縁膜材料のHfSiON/SiO2積層膜を用いた場合について説明した。本実施の形態では、nMISFETQnのゲート絶縁膜3とpMISFETQpのゲート絶縁膜11とで異なるゲート絶縁膜材料を用いる場合について説明する。なお、その他は前記実施の形態1と同様であるので、一部省略して説明する。
本実施の形態におけるnMISFETQnおよびpMISFETQpの製造方法について図面を参照して説明する。特に、図2のY1−Y1線およびY2−Y2線における断面(図28〜図36)での説明を行う。
まず、例えばp型単結晶シリコンから構成される基板1を準備した後、一般的な方法に従って、基板1の主面(素子形成面)に素子分離領域STIおよびp型ウェル2およびn型ウェル10を形成する(図4参照)。これにより、nMISFETQn、pMISFETQpや基板コンタクトCNTなどの下地(下地基板)が形成される。
続いて、図28に示すように、nMISFET形成領域の基板1上にゲート絶縁膜3a、3b、およびpMISFET形成領域の基板1上にゲート絶縁膜11を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜3aおよびゲート絶縁膜11は同一工程で形成され、同一のゲート絶縁膜材料として例えばCVD法またはALD法によって形成されたHfAlOx膜(第1酸化膜)で構成される。また、ゲート絶縁膜3bは、ゲート絶縁膜3aおよびゲート絶縁膜11上に例えばCVD法またはALD法によって形成されたLaOx膜(第2酸化膜)で構成される。
続いて、nMISFET形成領域のゲート絶縁膜3b上およびpMISFET形成領域のゲート絶縁膜3b上に窒化チタン(TiN)膜5を形成する。この窒化チタン膜5は、nMISFETにおいて、主として閾値を調整するために形成される膜(仕事関数制御金属膜)であり、その膜厚を5nm以下(図7参照)とすることで、nMISFETとして適した実効仕事関数を得ることができ、また、高い電子移動度の維持することができる。本実施の形態では、窒化チタン膜5は、例えば、スパッタリング法を用いて、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、その膜厚が2nmとなるように形成している。
その後、リソグラフィ法を用いて、pMISFET形成領域を開口するレジストマスクPRを、pMISFET形成領域以外の基板1上に形成する。図28では、nMISFET形成領域の基板1を被覆したレジストマスクPRが形成されている。
続いて、pMISFET形成領域において、例えば40〜80℃の過酸化水素系水溶液(H2O2を含む水溶液)によって窒化チタン膜5を除去した後、希塩酸等の水溶液によってLaOx膜から構成されるゲート絶縁膜3bを除去し、ゲート絶縁膜11を露出する。これにより、図29に示すように、ゲート絶縁膜11を露出する。その後、レジストマスクPRを溶解もしくはアッシングによって除去する。
続いて、図30に示すように、nMISFET形成領域の窒化チタン膜5上およびpMISFET形成領域のゲート絶縁膜11上にシリコン膜20を形成し、このシリコン膜20上にハードマスクとなる窒化シリコン(SiN)膜21を形成する。シリコン膜20は、例えば、CVD法を用いて、nMISFET形成領域およびpMISFET形成領域を含む基板1上に、その膜厚が50nm程度となるように形成されたポリシリコン膜である。このシリコン膜20を構成するポリシリコン膜は、後の工程で全部がシリサイド化され、ゲート電極材料として抵抗が低減される。なお、シリコン膜20は、多結晶状態でなくアモルファス状態であっても良い。
続いて、図31に示すように、一般的な方法でゲート電極加工、エクステンション(浅いn型不純物拡散領域8および浅いp型不純物拡散領域14)の形成、サイドウォール7、13の形成、ソース領域およびドレイン領域(深いn型不純物拡散領域9および深いp型不純物拡散領域15)の形成、不純物の活性化熱処理、およびソース領域およびドレイン領域表面のシリサイド電極(図示しない)の形成を行う。本実施の形態では、この活性化熱処理によって、nMISFET領域のゲート絶縁膜3aを構成するHfAlOx膜とゲート絶縁膜3bを構成するLaOx膜は混合(ミシキング)し、HfLaAlOx膜から構成されるゲート絶縁膜3が形成される。なお、不純物の活性化熱処理とは別に、HfAlOx膜とLaOx膜を混合するための熱処理を行っても良い。
続いて、図32に示すように、パターニングされたゲート電極間を埋め込むように基板1上に、PMD(Pre-Metal Dielectric)として層間絶縁膜22(例えば、酸化シリコン膜)を形成し、CMP法によってゲート電極上の窒化シリコン膜21を露出する。
続いて、図33に示すように、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)によって、窒化シリコン膜21を除去し、その下のシリコン膜20を露出する。
続いて、図34に示すように、例えば、スパッタリング法によって基板1上にニッケル膜23を堆積して、nMISFET形成領域のシリコン膜20上およびpMISFET形成領域のシリコン膜30上にニッケル膜23を形成する。ニッケル膜23は、後の工程でシリコン膜20をシリサイド化してニッケルリッチのフルシリサイド膜となるような厚さで形成される。特に、ニッケル/シリコン比を2以上のフルシリサイド膜を形成するためには、シリコン膜20に対して1.4倍以上の膜厚のニッケル膜23を形成する。本実施の形態では、ニッケル/シリコン比を2としたフルシリサイド膜を形成するためには、ポリシリコン膜からなるシリコン膜20の膜厚を50nmとしているので、ニッケル膜23の膜厚は70nmとすれば良い。
続いて、図35に示すように、nMISFET形成領域ではシリコン膜20とニッケル膜23とでフルシリサイド膜6を形成し、pMISFET形成領域ではシリコン膜20とニッケル膜23とでフルシリサイド膜6を形成する。具体的には、まず、450℃程度の熱処理によってシリコン膜20をすべてニッケル膜23と固相反応させ、ニッケルリッチのニッケルシリサイド(NiSix)を形成する。次いで、硫酸と過酸化水素水の混合溶液などによって未反応のニッケル膜23を除去する。
続いて、図36に示すように、前記実施の形態1で説明したような配線プロセスを行うことによって、本実施の形態における半導体装置を製造することができる。
このように本実施の形態では、nMISFETQnのゲート絶縁膜3にHfLaAlOx/SiO2膜を、pMISFETQpのゲート絶縁膜11にHfAlOx/SiO2膜を適用することができる。これにより、nMISFETQnにおけるNi/Siの比が2以上のフルシリサイド膜6と2nm厚の窒化チタン膜5の積層で構成されるゲート電極4と、HfLaAlOx/SiO2膜から構成されるゲート絶縁膜3との組合せでは、ゲート電極4の実効仕事関数を約4.2eVまで低減することができる。また、pMISFETQpにおける窒化チタン膜5を剥離後に形成したNi/Siの比が2以上のフルシリサイド膜6から構成されるゲート電極12と、HfAlOx/SiO2膜から構成されるゲート絶縁膜3との組合せでは、ゲート電極12の実効仕事関数を約5.0eVまで向上することができる。
本実施の形態では、nMISFETQnのゲート絶縁膜3には、ハフニウム(Hf)の酸化膜に、ランタン(La)を含む場合について説明しているが、この他の希土類元素や、イットリウム(Y)、アルカリ土類金属元素を含む場合であっても良い。また、pMISFETQpのゲート絶縁膜11には、ハフニウム(Hf)の酸化膜に、アルミニウム(Al)を含む場合について説明しているが、アルミニウムを含まない場合であっても良い。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施の形態では、SRAMの製造技術を対象としているが、これに限定されるものではなく、例えば、ロジック回路を構成するCMISの製造技術にも適用することができる。
また、前記実施の形態では、ニッケル(Ni)リッチのフルシリサイド膜をMISFETのゲート電極に用いて場合について説明したが、ニッケルの代わり白金(Pt)やパラジウム(Pd)、あるいはニッケルを含めたこれらを混合したものであっても良い。ニッケル、白金、パラジウムは同族であり、低温でシリコンと反応してフルシリサイド膜を構成できるからである。
また、前記実施の形態では、nMISFETのゲート電極構造を、ニッケルリッチのフルシリサイド(FUll SIlicide)膜/窒化チタン膜とし、pMISFETのゲート電極構造を、ニッケルリッチのフルシリサイド膜とする場合について説明した。このニッケルリッチのフルシリサイド膜は、特に、ポリシリコン膜の膜厚に対してニッケル膜の膜厚を1.4倍として、ニッケル/シリコン比が2以上とすることが好ましい。この他に、このポリシリコン膜をポリシリコンゲルマニウム(poly-SiGe)膜と置き換えて、ニッケル膜と反応させて、ニッケルリッチのフルシリサイドゲルマナイド(FUll SIlicide GErmanide)を用いても良い。また、ポリシリコン膜をポリゲルマニウム(poly-Ge)と置き換えて、ニッケル膜と反応させて、ニッケルリッチのフルゲルマナイド(FUll GErmanide)を用いても良い。また、ニッケル膜と置き換えて、白金膜やパラジウム膜を用いてポリシリコンゲルマニウム膜やポリゲルマニウム膜と固相反応させても良い。また、ポリシリコン膜、ポリシリコンゲルマニウム膜、ポリゲルマニウム膜のように多結晶状態でなくとも、アモルファス状態であっても良い。フルシリサイドゲルマナイドおよびフルゲルマナイドを用いることで、フルシリサイドの場合より、pMISFETの閾値を低減することができる。
また、前記実施の形態では、pMISFETのゲート電極として窒化チタン(TiN)膜とその上のフルシリサイド(NiSix)膜との積層構造からなる場合について説明した。この窒化シリコン膜は閾値調整用に用いられるが、この窒化チタン膜にシリコンが含まれたTiSiN膜でも良い。例えば、このTiSiN膜は、スパッタ法によって形成される。