JP5291030B2 - 光学装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は光学装置及びその製造方法に関する。本発明は光の分波器、合波器、分岐器及び結合器などの光学装置として使用可能である。
光通信において、光分岐結合器、光合分波器及びそれを内蔵し発光素子と受光素子を有する光モジュールは極めて重要な役割を有する。例えば単線双方向光通信システムにおける、入出力端末においては、LED又はLD等の発光素子から放射される通信光を外部に伝搬させる出力用光導波路と、外部からの通信光をPD等の受光素子に受光させる入力用光導波路とを分岐・結合する光の分岐・結合器や、分波・合波する光合分波器が必要である。
一方、本願出願人らは、光硬化性樹脂液に、光ファイバ等から当該樹脂液の硬化光を照射すると、硬化樹脂先端において発生する自己集光により形成される、長尺の軸状のコアを有した、自己形成光導波路を多数開発し、出願している。下記特許文献1乃至4はその一部である。この際、単線双方向光通信における光分岐結合器又は光合分波器として、ハーフミラー又は波長選択フィルタにより分岐される光導波路を上記自己形成光導波路で形成することも提案している。これにより発光素子と受光素子を有する光モジュールが容易に形成されることも示されている。
特許第4011283号 特開2002−365459 特開2004−149579 特開2005−347441
自己形成光導波路の光通信分野での用途拡大にあたり、その信頼性が重要となる。例えばIEEE1394で規定されている、85℃、相対湿度95%の高温高湿状態と−40℃の低温状態を繰り返すサイクル試験に耐える装置の開発により、用途拡大が期待される。ここで、本発明者らは主としてアクリル系の光硬化性樹脂をクラッド材料として用い、アクリル製、又は、ポリカーボネート製の筐体を用いていたが、これは上記条件の加速劣化試験での評価が十分でないことがわかった。
そこで、クラッド材料や透光性の筐体材料を改めて検討し、高温高湿状態と低温状態とを繰り返す加速劣化試験での評価が高い材料を見出し、本願発明を完成させた。
請求項1に係る発明は、少なくとも透光性の筐体と、光硬化性樹脂硬化物から成る軸状のコアと、筐体内部に充填され、コアを保持するクラッドとを有する光学装置であって、筐体が、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから成り、クラッドが、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とオルガノシルセスキオキサンとを有することを特徴とする光学装置である。
で、クラッドにおいて、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とは共重合していても良く、また、共重合していなくても良いものとする。
また、筐体において、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とは共重合していても良く、また、共重合していなくても良いものとする。
請求項2に係る発明は、透光性の筐体と、光硬化性樹脂硬化物から成る軸状のコアと、筐体内部に充填され、コアを保持するクラッドとを有する光学装置の製造方法において、筐体内部に保持された未硬化の第1の光硬化性樹脂に特定波長の光を導入して、自己集光的に軸状のコアを成長させるコア形成工程と、コア形成工程の後に未硬化の第1の光硬化性樹脂を除去する洗浄工程と、コアの形成された筐体内部に未硬化の第2の光硬化性樹脂を充填し、光硬化させてコアを保持するクラッドとする工程とを有し、第2の光硬化性樹脂は、光開環重合可能なオキシラン環及び/又はオキセタン環とオルガノシロキサン化合物とを含み、透光性の筐体を、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから形成することを特徴とする光学装置の製造方法である。
ここにおいて、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とは共重合させても良く、また、共重合させなくても良いものとする。
請求項3に係る発明は、第2の光硬化性樹脂は、オルガノシルセスキオキサンを0.1質量%以上50質量%以下含有することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、透光性の筐体の表面に、プライマー処理を施さずに、前記コア形成工程を実行することを特徴とする
有機系の光学材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンが汎用されている。このうち、光硬化(光重合)可能なものとして、本発明者らはアクリル系を中心に光学材料を検討していた。しかし、アクリル系又はメタクリル系の樹脂は、硬化収縮率が大きいことが特徴であり、本発明のような透明筐体内部で重合させた場合に引っ張り応力が残りやすい。コアを自己形成的に形成する場合は、成長端が対峙する筐体内壁面に達するまでは引っ張り応力が生じないが、クラッドを硬化させる場合には内部応力を取り除くことは容易ではない。
そこで、クラッド材料である第2の光硬化性樹脂として、重合機構が開環重合であるエポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂を用いることを着想した。開環重合においては、重合前後の原子間結合の数に変化が無いので、樹脂の硬化に際しての硬化収縮率が極めて小さい。このため、クラッド材にエポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂を用いれば、硬化後に内部に存在する引っ張り応力が極めて小さくなる。このため、加速劣化試験にも十分に耐えることができる。また、エポキシ樹脂を単独で用いる場合に比較して、オキセタン樹脂を併用することで、光硬化速度が大きくなり、硬化物の柔軟性が増す。このため、エポキシ樹脂を単独で用いる場合に比較して、オキセタン樹脂を併用すると、加速劣化試験での耐久性が向上する。
また、極性の大きなエステル構造を有するアクリル系樹脂と比較して、エポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂の極性構造はエーテル構造のような極性の小さい結合であるので、吸湿性も小さく、高温高湿状態で膨潤することも無い。この点も加速劣化試験に耐性が強いことの一因となっている。
また、エポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂は一般的に耐熱性が高い。ここに、エポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂との親和性の高いオルガノシルセスキオキサンを加えると、耐熱性を更に向上させることができる。
尚、実質的な光伝送路となるコアと異なり、クラッドは光吸収性や光散乱性が大きくなければ良いので、その構成は有機重合体のみとする必要は無い。例えば光導波路で使用する波長光よりも粒径の小さな、有機又は無機微粒子を分散させた光硬化性樹脂を第2の光硬化性樹脂として用いても良い。
加速劣化試験の高温高湿状態に耐えるためには、加水分解により二酸化炭素を放出する構造を有しないことが望ましい。即ち、重合物の主鎖中にそのような構造を有していると、高温高湿状態で水分子と反応し、分解が生じる。二酸化炭素が放出されてしまうと、逆反応によりポリマーを再生する可能性が無くなってしまう。
加水分解により二酸化炭素を放出する構造は、具体的には、炭酸エステル結合、ウレタン結合、尿素結合、或いはメラミン又はシアヌル酸その他の尿素由来の複素環構造を有しないものであることである。
その他、加水分解により低分子ケトンを放出しうるポリアセタール構造も好ましくない。
透光性の筐体も、クラッドと同じ又は類似の材料とすると良い。これによりクラッドと筐体内面との化学結合が期待できる。即ち、クラッドを光硬化させる際、即ちクラッドのエポキシ(オキシラン環)及び/又はオキセタン環が開環重合する際、筐体内面に残存しているエポキシ(オキシラン環)及び/又はオキセタン環と反応する可能性が高い。その他、筐体内面の残存する官能基や硬化剤が、クラッド材料と反応した化学結合が期待できる。また、クラッドについて述べたのと同様に、筐体をエポキシ樹脂単独で構成する場合に比較して、オキセタン樹脂を併用すると、硬化物である筐体の柔軟性が増すので、高温高湿状態での耐久性が向上する。
透光性の筐体は、少なくともコアが接している部分は光伝送路として機能する必要があるので、光導波路を伝搬する光の波長に対して十分に透明である必要がある。尚、その構成は有機重合体のみとする必要は無く、例えば光導波路を伝搬する光の波長よりも粒径の小さな、有機又は無機微粒子を分散させた光硬化性樹脂の成型品を用いても良い。
本発明の具体的な一実施例に係る光導波路100の構成を示す2つの断面図。
〔クラッドのオルガノシルセスキオキサンについて〕
本発明のクラッド材料は、オルガノシロキサン化合物を含むことが好ましい。
即ち、平均組成式R1 a2 bcSiOdで表されるオルガノシロキサン化合物であって、
1は飽和脂肪族炭化水素基、R2はアリール基、アラルキル基、及び、アリール基又はアラルキル基の水素原子の一部若しくは全部が脂肪族炭化水素基で置換されて成る基から成る群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。
また、Yは、RO基、水酸基、ハロゲン原子及び水素原子から成る群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。ここでRは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基から成る群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。
1、R2、Y、Rは各々、複数種類であっても良い。
また、a、b、c及びdは、a+b+c+2d=4であって、0<a<3、0≦b<3、0≦c<3、0<a+b+c<3、0<a+b<3を満たす。
クラッド材料がオルガノシロキサン化合物を含むことにより、硬化収縮率が小さく、クラッドとコア、筐体との密着性に優れた硬化物となる。また、オルガノシロキサン化合物を含むクラッド材料は成形が容易であり、加熱硬化特性に優れ、ハンドリング等の作業性が良く、保存安定性に優れたものとなる。また、成形体は、優れた透明性(光学的均質性)、低い屈折率等の光学特性を示し、耐熱性が良く、機械的特性に優れている。
上記オルガノシロキサン化合物は、酸素を含む3員環又は4員環の開環重合性に影響することがないので、所望の硬化速度を有する重合材料を選択することにより、硬化特性を制御することもできる。
また、オルガノシロキサン化合物を含むクラッド材料を硬化させることで、製造工程における硬化・加工特性の再現性に優れ、品質の安定した硬化物が得られる。得られる硬化物は、十分な光学的均質性を有し、硬化後の成形体の表面及び内部において極めて高度な光学的均質性が必要とされる光学材料に好適に用いることができ、低屈折率を有するクラッド用硬化物を得ることができる。また、硬化触媒としては、熱潜在性カチオン発生剤又は光潜在性カチオン発生剤を用いることで、好適な範囲で硬化を進めることができる。
上述のオルガノシロキサン化合物としては、上述の有機基や組成を適宜選択して所望のものを用いることができるが、特にポリメチルシルセスキオキサンを用いることが好ましい。ポリメチルシルセスキオキサンは、上記組成式において、R1がメチル基であり、c<0.7、1.1≦d≦1.5、特にaがほぼ1、cが小さく、dがほぼ1.5のものが好ましい。ポリメチルシルセスキオキサンはラダー状の構造であることが好ましい。
ポリメチルシルセスキオキサンを用いると、特に低い屈折率を達成できることとなり、クラッド材料として好適である。
ここでラダー状とは、シルセスキオキサン化合物の分子形態を表し、当該分子形態を表す技術用語として広く用いられている意味を有するものである。
例えばラダー状のポリメチルシルセスキオキサンは、次の構造式で表される。尚、ROはメトキシ基又はエトキシ基とし、その一部又は全部がヒドロキシ基となっていても良い。
Figure 0005291030

上記オルガノシロキサン化合物のクラッド材料中の含有量は、クラッド材料の総量に対し、0.1〜50質量%が好ましい。0.1質量%未満であると添加効果が小さく、屈折率制御等の効果が十分には発揮されない恐れがある。また、50質量%を超えると硬化物の機械的強度が十分とはならない場合がある。より好ましくは1〜30質量%であり、更に好ましくは3〜20質量%である。
〔クラッドのエポキシ樹脂について〕
エポキシ樹脂成分と上記オルガノシロキサン化合物の組成比(質量割合)は、10対90乃至99.9対0.1とすると良い。このような混合比とすることで、透明性が高く、屈折率を所望の範囲で制御できる。
エポキシ樹脂成分としては、脂肪族エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物から成る群より選ばれる少なくとも1種類の化合物を含むものであることが好ましい。具体的には、脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、中心骨格にオキシアルキレン骨格を有するジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が好適である。水添エポキシ化合物としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が好適である。脂環式エポキシ化合物としては、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ樹脂、環状脂肪族炭化水素基に直接又は炭化水素基を介してエポキシ基が付加したエポキシ樹脂等が効果的である。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、臭素置換芳香族エポキシ樹脂等が好適である。
上記エポキシ樹脂としては、以下のような化合物が好適である。
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類とエピハロヒドリンとから脱ハロゲン化水素により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び、これらを上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を用いることができる。
或いは、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジシクロペンタジエン、テルペン、クマリン、パラキシレングリコールジメチルエーテル、ジクロロパラキシリレン、ビスヒドロキシメチルビフェニル等を縮合反応させて得られる多価フェノール類とエピハロヒドリンとから脱ハロゲン化水素により得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を用いることができる。
或いは、テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等とエピハロヒドリンとから脱ハロゲン化水素により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂、及び、上述のビスフェノール類やテトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等を更に付加反応させることにより得られる、芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体を用いることができる。
或いは、上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等の芳香族骨格を水添により水素化した脂環式ジオール類や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、PPG、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等とエピハロヒドリンとから脱ハロゲン化水素により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ化合物)を用いることができる。
或いは、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)メチル等のエポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂(エポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ化合物)を用いることができる。
或いは、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとから脱ハロゲン化水素により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂を用いることができる。
或いは、ヒダントインやシアヌル酸、メラミン、ベンゾクアナミンとエピハロヒドリンとから脱ハロゲン化水素により得られる室温で固形の3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を用いることができる。
以上の中でも、上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂がクラッド用樹脂組成物として、光照射時の外観劣化抑制を目的とした場合はより好適に用いられる。
上記クラッド用エポキシ樹脂化合物としては、上述した化合物であればいずれも好適に用いることができるが、次の構造式のポリオキシアルキレン骨格を有するジグリシジルエーテル化合物が特に好ましい。式中、nはメチレン基の繰り返し数を表し2乃至22の数である。mはオキシアルキレン基の繰り返し数を表し、1乃至10の数である。
Figure 0005291030
このようなエポキシ樹脂成分と上述したオルガノシロキサン化合物(シルセスキオキサン)によるクラッド用硬化性樹脂組成物の硬化体は、透明性、低硬化収縮率(厚膜化)、低屈折率(波長850nmに対し1.49以下)が好適であって、コア材料との密着性が良好であり、光導波路用材料に必要な物性を全て満足することとなり、光導波路用材料として好適に用いることができる。
上記構造式のポリオキシアルキレン骨格を有するジグリシジルエーテル化合物においては、メチレン基の繰り返し数nが22を超えると耐熱性が低下し、他の樹脂との相溶性の低下等の恐れがある。より好ましくは2〜15であり、更に好ましくは4〜10である。
ポリオキシアルキレン基の繰り返し数mが1未満であると硬化物が脆くなる恐れがあり、mが10を超えると耐熱性の低下の恐れが有る。より好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜5である。
上記構造式のポリオキシアルキレン骨格を有するジグリシジルエーテル化合物としては、ポリテトラメチレンエーテルのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル、ジエチレングリコールのグリシジルエーテルが好ましい。これらの中でも、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテル(ポリオキシブチレン)のジグリシジルエーテルである。
本発明にエポキシ樹脂化合物を用いる場合、上述の1種類を選択しても良く、或いは2種類以上の混合物を選択しても良い。硬化後の屈折率を低下させる目的からは、脂肪族エポキシ化合物単独、脂肪族エポキシ化合物と脂環式エポキシ化合物の組み合わせ、脂肪族エポキシ化合物と水添エポキシ化合物の組み合わせが好ましく、或いは後述するオキセタン樹脂を配合することもできる。このうち、脂肪族エポキシ化合物単独、脂肪族エポキシ化合物と脂肪族オキセタン化合物との組み合わせ、脂肪族エポキシ化合物と水添エポキシ化合物との組み合わせがより好ましい。即ち、アルキル基含有オルガノシロキサンと、ポリアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂とに、脂肪族オキセタン化合物又は水添エポキシ化合物から成る群より選ばれる少なくとも1つを含むものであることが好ましい。
クラッドの低屈折率化を目的として、脂肪族オキセタン化合物を配合することが好ましい。脂肪族オキセタン化合物として入手が容易なものとしては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシ)メチルオキセタン、ジ〔3−エチル−3−オキセタニルメチル〕エーテルが挙げられる。
クラッド材料中の有機樹脂成分として、脂肪族オキセタン化合物を主成分とする場合、その含有量としては全有機樹脂成分中60質量%以上であることが好ましい。60質量%以上であれば、有機樹脂成分の主成分となり、脂肪族オキセタン化合物の効果が十分に発揮されることとなり、低屈折率の硬化物を得ることができる。脂肪族オキセタン化合物を主成分とする場合、その含有量は全有機樹脂成分中80質量%以上が好ましく、更に好ましくは95質量%以上である。
クラッド材料中の有機樹脂成分として、脂肪族オキセタン化合物とエポキシ樹脂化合物とを主成分とする場合、それらの合計の含有量としては全有機樹脂成分中60質量%以上であることが好ましい。それらの合計の含有量は全有機樹脂成分中80質量%以上が好ましく、更に好ましくは95質量%以上である。
〔筐体用の樹脂〕
本発明の筐体の材料は有機材料、無機材料から任意に所望の特性の材料を選択できる。筐体として樹脂を用いる場合はポリカーボネート等、入手可能な任意の樹脂を用いうる。
更に、本発明の筐体として樹脂を用いる場合は、クラッド材料と類似の硬化機構、例えば光カチオン開環重合同士、光カチオン開環重合と熱カチオン開環重合のように硬化機構を同一又は類似とすることで、硬化後のクラッドと筐体の密着性を向上させることができる。これはクラッドの硬化反応の際に、筐体表面の未反応のエポキシ基等との重合反応が期待できるからである。この場合、筐体樹脂は上述のエポキシ化合物やオキセタン化合物から任意に選択し、また複数種類を所望の組成比で混合した上、硬化し、成形すると良い。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オキセタン化合物等の共重合物として良く、これに上述のオルガノシロキサン化合物を含んでも良い。
本発明の筐体樹脂の成形方法としては、射出成形、押出成形、中空成形、熱成形、或いは圧縮成形により実施可能であり、好ましくは圧縮成形で硬化したのち造形すると良い。例えばこれらの成形にて所定の厚さ、例えば厚さ10mmの樹脂板を得て、機械研削により筐体を成形すると良い。この場合、重合開始剤は熱潜在硬化型が好ましい。
〔カチオン重合用硬化剤〕
クラッドの硬化触媒(重合開始剤)について以下に述べる。以下は、筐体をエポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物を硬化させた重合物から成形する場合にも適用される。
エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物の硬化触媒としては、従来公知のものを好適に用いることができるが、特にカチオン開環重合を生じさせるカチオン硬化触媒が好ましい。
カチオン硬化触媒としては、熱潜在性カチオン発生剤又は光潜在性カチオン発生剤であることが好ましい。この場合、熱や光により、重合を開始させるカチオン種が発生するものであれば特に限定されない。例えば、熱潜在性カチオン発生剤を用いることにより、加熱によりカチオン種を含む化合物が励起され、硬化触媒の熱分解反応が生じて反応性のカチオンが発生し、樹脂の熱硬化が進むこととなる。このため、本発明においては熱潜在性カチオン発生剤は例えば筐体を樹脂で作製する場合に使用することが好ましい。また、光潜在性カチオン発生剤を用いることにより、光によりカチオン種を含む化合物が励起され、硬化触媒の光分解反応が生じて反応性のカチオンが発生し、樹脂の光硬化が進むこととなる。このため、本発明においては光潜在性カチオン発生剤は例えばクラッドの光硬化に使用することが好ましい。即ち、上述のクラッド材料及び筐体材料としての樹脂組成物は熱潜在性カチオン発生剤又は光潜在性カチオン発生剤を含有することが好ましい。
上記カチオン硬化触媒の触媒量(使用量)は、クラッド材料においては、オルガノシロキサン化合物を合わせた樹脂組成物100質量%に対し、溶媒等を含まない、有効成分量である固形分換算で0.01〜10質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.1〜4.0質量%であり、更に好ましくは0.2〜2.0質量%である。触媒量を減らしすぎて0.01質量%未満とすると、硬化が遅く、10質量%を超えて増やすと硬化時やその成形体の硬化物が着色する恐れがある。
筐体をエポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂で形成する場合、カチオン硬化触媒としては、熱潜在性カチオン発生剤が好ましい。クラッドには光潜在性カチオン発生剤が好ましい。熱潜在性カチオン発生剤とは、熱潜在性硬化剤、熱潜在性硬化触媒、カチオン重合開始剤とも呼ばれ、樹脂組成物において硬化温度に達すると硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。熱潜在性カチオン発生剤は、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすこと無く、また、加熱時には熱潜在性カチオン発生剤の作用として、硬化反応を十分に促進することができ、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物(一液性光学材料)を提供することができる。特に、カチオン硬化系樹脂組成物は保存安定性に優れる点で好ましい。
熱潜在性カチオン発生剤を用いると、また、得られる樹脂組成物の硬化物の耐湿性が劇的に改善され、過酷な使用環境においても樹脂組成物が有する優れた光学特性を保持し、好適に用いることができるものとなる。通常、屈折率が低い水分が樹脂組成物やその硬化物に含まれると、濁りの原因になるが、熱潜在性カチオン発生剤を用いると、優れた耐湿性が発揮できることから、このような濁りが抑制される。
上記熱潜在性カチオン発生剤としては、一般に、硬化温度でカチオンが発生することになる。硬化温度としては、25〜250℃であることが好ましい。より好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜180℃である。
また、硬化条件としては、硬化温度を段階的に変化させても良い。例えば、樹脂組成物の硬化物を製造する上での生産性を向上する目的で型内に所定の温度・時間で保持したのち、型から取り出して空気又は不活性ガス雰囲気内に整地して熱処理することも可能である。この場合の硬化条件としては、型内保持温度が25〜250℃、より好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜180℃であり、保持時間は10秒〜5分、より好ましくは30秒〜5分である。
上記熱潜在性カチオン発生剤は、具体的には次の商品を挙げることができる。ジアゾニウム塩タイプとしては、アメリカン・キャン社製のAMERICUREシリーズ、アデカ社製のULTRASETシリーズ、和光純薬社製のWPAGシリーズが入手可能である。また、ヨードニウム塩タイプとしては、ゼネラル・エレクトリック社製のUVEシリーズ、3M社製のFCシリーズ、GE東芝シリコーン社製のUV9310C、ローヌプーラン社製のPhotoinitiator 2074、和光純薬社製のWPIシリーズが入手可能である。
また、スルホニウム塩タイプとしては、ユニオンカーバイド社製のCYRACUREシリーズ、ゼネラル・エレクトリック社製のUVIシリーズ、3M社製のFCシリーズ、サトーマー社製のCDシリーズ、アデカ社製のオプトマーSPシリーズ及びオプトマーCPシリーズ、三新化学工業社製のサンエイドSIシリーズ、日本曹達社製のCIシリーズ、和光純薬社製のWPAGシリーズ、サンアプロ社製CPIシリーズが入手可能である。
上記光潜在性カチオン発生剤は、光潜在性硬化触媒又は光カチオン重合開始剤とも言う。その具体例としては、米国特許第3379653号に記載された金属フルオロホウ素錯塩及び三フッ化ホウ素錯化合物、米国特許第3586616号に記載されているようなビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩、米国特許第3708296号に記載されているようなアリールジアゾニウム化合物、米国特許第4058400号に記載されているようなVIa族元素の芳香族オニウム塩、米国特許第4069055号に記載されているようなVa族元素の芳香族オニウム塩、米国特許4068091号に記載されているようなIIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、米国特許4139655号に記載されているようなチオピリリウム塩、米国特許第4161478号に記載されているようなMF6 -陰イオン(ここでMは、リン、ヒ素及びアンチモンから選択される)の形のVIb族元素の芳香族オニウム塩、米国特許4231951号に記載されているようなアリールスルホニウム塩、米国特許第4256828号に記載されているような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩が挙げられる。更には、W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science),ポリマーケミストリー(Polymer Chemistry)版」、第22巻、1789項(1984年)に記載されているような、ビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば、リン酸塩、ヒ酸塩、アンチモン酸塩など)や、鉄化合物の混合配位子金属塩、シラノール−アルミニウム錯体なども挙げることができる。
これらの化合物は紫外線重合開始剤とも呼ばれる。これらの紫外線重合開始剤は、単独で用いても、選択した2種以上を併用しても良い。これらの紫外線重合開始剤のうち、特にアリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族ヨードニウム錯塩又は芳香族スルホニウム錯塩、II族、V族、及びVI族元素の芳香族オニウム塩が好適である。
これらの具体的な商品を次に挙げる。即ち、ダウ・ケミカル社製のUVI−6992、3M社製のFX−512、ユニオンカーバイド社製のUVR−6990、UVR−6974、UVR−6976、デグッサ社製のKI−85、アデカ社製のSP−150、SP−170、SP−152、SP−172、三新化学工業社製のサンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100Lが入手可能である。これらのうち特にUVR−6976、SP−152及びSP−172が好ましい。
本発明の自己形成光導波路コアは自己形成光導波路の製造方法により容易に形成できる。この場合、上記特許文献1乃至4に示された様々な手法を用いることができる。
自己形成光導波路コアを形成するための光硬化性樹脂液は、入手可能な任意のものを適用できる。硬化機構も、ラジカル重合、カチオン重合其の他任意である。硬化光は一般的にはレーザ光が好ましい。レーザの波長と強度で、光硬化性樹脂液の硬化速度を調整すると良い。尚、光硬化開始剤(光重合開始剤)は光硬化性樹脂液とレーザの波長に応じ、入手可能な任意のものを適用できる。これらについては、本願出願人が共願人である例えば特許文献3に次のものが列挙されている。
構造単位中にフェニル基等の芳香族環を一つ以上含んだ樹脂が高屈折率、脂肪族系のみからなる樹脂は低屈折率となる。屈折率を下げるために構造単位中の水素の一部をフッ素に置換したものであっても良い。
脂肪族系としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールを用いることができる。
芳香族系としてはビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールF、ノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、p-アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物等を用いることができる。
これらの多価アルコール自体を骨格とする、あるいはこれらの多価アルコールから任意に1種乃至複数種選択された多価アルコールのオリゴマー(ポリエーテル)の構造を有する比較的低分子(分子量3000程度以下)骨格に、反応基を導入したものを用いることができる。
ラジカル重合性材料としては、ラジカル重合可能なアクリロイル基等のエチレン性不飽和反応性基を構造単位中に1個以上、好ましくは2個以上有する光重合性モノマー及び/又はオリゴマーを用いることができる。エチレン性不飽和反応性基を有するものの例としては、(メタ)アクリル酸エステル、イタコン酸エステル、マレイン酸エステル等の共役酸エステルを挙げることができる。
カチオン重合性材料としては、カチオン重合可能なオキシラン環(エポキシド)、オキセタン環等の反応性エーテル構造を構造単位中に1個以上、好ましくは2個以上有する、光重合性のモノマー及び/又はオリゴマーを用いることができる。オキシラン環(エポキシド)としては、オキシラニル基の他、3,4-エポキシシクロヘキシル基なども含まれる。またオキセタン環とは、4員環構造のエーテルである。
ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性モノマー及び/又はオリゴマーから成るラジカル重合性材料の重合反応を光によって活性化する化合物である。具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン及びN,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、並びに2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。尚、ラジカル重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用しても良く、また、これらに限定されることはない。
カチオン重合開始剤は、カチオン重合性モノマー及び/又はオリゴマーから成るカチオン重合性材料の重合反応を光によって活性化する化合物である。具体例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩、チオピリニウム塩が挙げられるが、熱的に比較的安定であるジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p-アニシル)ヨードニウム、ビス(p-t-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムなどの芳香族ヨードニウム塩、ジフェニルスルホニウム、ジトリルスルホニウム、フェニル(p-アニシル)スルホニウム、ビス(p-t-ブチルフェニル)スルホニウム、ビス(p-クロロフェニル)スルホニウムなどの芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩光重合開始剤が好ましい。芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩光重合開始剤を使用する場合、アニオンとしてはBF4 -、AsF6 -、SbF6 -、PF6 -、B(C6F5)4 -などが挙げられる。尚、カチオン重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用しても良く、また、これらに限定されることはない。
図1は本発明に係る実施例1乃至3及び比較例における、光導波路100の構成を示した2つの断面図である。図1.Aは水平断面図、図1.Bは垂直断面図である。
光導波路100は、上方が開口となっている透光性の筐体10、ハーフミラー20、分岐を有するコア30並びにクラッド40から成る。図1では、分岐を有するコア30を軸状の3つの枝コア30−1、30−2及び30−3に分けて示した。ハーフミラー20は誘電体多層膜からなる波長選択フィルタに置き換えても良い。
コア30は断面が略円で、枝コア30−1は一端30−1eで筐体10と接合し、他の一端はハーフミラー20の一方の面20sと接合している。枝コア30−2は一端30−2eで筐体10と接合し、他の一端はハーフミラー20の一方の面20sと接合している。枝コア30−3は一端30−3eで筐体10と接合し、他の一端はハーフミラー20の他方の面20bと接合している。
クラッド40は、ハーフミラー20、分岐を有するコア30を全て覆うように筐体10内部に充填されている。
以下で示す通り、筐体10は有機樹脂成型品、コア30は光硬化性樹脂の硬化物、クラッド40はコア30よりも屈折率の低い光硬化性樹脂の硬化物から成る。
筐体10は三菱エンジニアリングプラスチック製のユーピロンH3000の成型品を用いた。
筐体10内部の大きさは、6.5mm×5.5mm×5.95mmであり、厚さは0.5mmとした。
自己形成導波路コア30を形成するための樹脂組成物(第1の光硬化性樹脂)は次の内容である。
エチレングリコール変成のビスフェノールA型ジアクリレートを80部、
ポリエチレングリコールジアクリレートを14部、
2−アクリロイロキシエチルコハク酸を6部、
チバスペシャリティケミカルズ製Irgacure819を0.5部。
Irgacure819は光重合開始剤であり、アルキル置換ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシドである。
クラッド40の材料となる第2の光硬化性樹脂は次のように調製した。
150mlのスクリュー管に、メチルシルセスキオキサン5.0部、ポリオキシブチレンジグリシジルエーテル30.0部、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン65.0部を投入し、100℃にて混合したのち、スルホニウム塩系の光重合開始剤であるADEKA社製アデカオプトマーSP−172を1.4部加えた。これをシンキー社製自公転式遠心攪拌機あわとり練太郎を用いて脱泡攪拌し、クラッド40の材料となる第2の光硬化性樹脂を作製した。
筐体10内壁面を処理するプライマーとして、光硬化性アクリル系樹脂を用いた。
以上の材料を用いて次のように光導波路を作製した。
まず筐体10の内壁面にプライマーを塗布した。次にハーフミラー20を固定し、自己形成導波路コアを形成するための樹脂組成物(第1の光硬化性樹脂)を筐体内に充填した。
硬化波長を導入するためのプラスチック光ファイバ(POF)のコア端を筐体外面に接触させて固定した。POFはコア直径が0.98mmのものを用いた。
次にPOF端からレーザ光(硬化光)を筐体内部の第1の光硬化性樹脂に照射し、軸状の硬化物を成長させて、自己形成光導波路コア30とした。自己形成光導波路コア30は、ハーフミラー20で分岐を有し、ハーフミラー20の表裏20s及び20bと、筐体内壁の3箇所30−1e、30−2e、30−3eとで固定された。
次に未硬化の第1の光硬化性樹脂を除去し、筐体10の内部を洗浄した。
次に、筐体10の内部にクラッド材である第2の光硬化性樹脂を充填し、筐体10の全体に紫外光を照射して硬化させ、クラッド40を形成して光導波路100を完成させた。
実施例1では筐体10をポリカーボネート筐体としたが、本実施例では筐体10を次のようにエポキシ樹脂とオキセタン樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物から製造した。
2Lセパラブルフラスコに、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂400g、ビスフェノール型エポキシ樹脂450g、離型剤としてステアリン酸10gを投入し、140℃で1時間攪拌した。その後、80℃に冷却し、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン150gを投入して更に1時間攪拌した。
次に40℃に冷却し、スルホニウム塩系のカチオン系重合開始剤として三新化学工業社製サンエイドSI−100Lを全重量に対し1.5質量%となるように添加し、均一となるよう混合した。
このようにして得られた、未硬化の樹脂混合物を150℃で圧縮成形し、厚さ10mmの樹脂板を作製した。得られた樹脂板を機械切削にて成形し、目的の筐体10を得た。筐体10の大きさ及び壁面の厚さは実施例1のポリカーボネート筐体10と同じとした。
このようにして得られた、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから成る筐体10を用いた他の構成及び製造条件は実施例1と同様にして光導波路100を作製した。
実施例2では筐体10の内壁面にプライマーを塗布したのちに自己形成光導波路コア30を形成したが、本実施例では、筐体10の内壁面にプライマーを全く塗布しないまま、自己形成光導波路コア30の形成、未硬化物の除去、及びクラッド40の形成を行った。その他の構成及び製造条件は実施例2と同様にして光導波路100を作製した。
〔比較例〕
実施例1ではクラッド40を、オルガノシルセスキオキサンを含むエポキシ樹脂とオキセタン樹脂の樹脂組成物の硬化物として形成したが、本比較例ではクラッド40を下記の構成のアクリル系樹脂に置き換えた。その他の構成及び製造条件は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
比較例で用いたアクリル系樹脂の構成(硬化前)は以下の通りである。
ウレタンアクリレートオリゴマを36g、
ポリプロピレングリコールジアクリレートを9g、
アルキルアクリレートを4.25g、
光重合開始剤を0.1g、
酸化防止剤、
シランカップリング剤。
〔加速劣化試験〕
IEEE1394に基づき、次のサイクル試験を行った。
25℃、相対湿度60%の状態を4時間継続し、0.5時間で昇温して、85℃、相対湿度95%の状態を10時間継続し、2.5時間で冷却して、−40℃の状態を2時間継続し、1.5時間で昇温して、85℃、相対湿度50%の状態を2時間継続し、1.5時間で冷却して最初の状態に戻るような、1サイクル24時間の加速試験を30サイクル(30日)継続した。
実施例1乃至3及び比較例について、各々光導波路100のサンプルを2個ずつ用い、30サイクル(30日)の加速試験前後の、光導波路100の伝送損失を比較した。
加速試験前は、実施例1乃至3及び比較例の合計8個の光導波路100のサンプルは、挿入損失が5〜5.4dB程度あった。表1は、加速試験後の挿入損失の増加分を、実施例1乃至3及び比較例の各々の2個のサンプルの挿入損失の増加分の平均値で示したものである。
Figure 0005291030
表1に示される通り、クラッド40としてウレタン変性ポリアクリレートを用いた比較例の場合、30サイクル(30日)の加速試験により挿入損失が4.88dB増加した。また、目視により、ポリカーボネート筐体10とコア30(及びクラッド40)、ハーフミラー20とコア30(及びクラッド40)界面に剥離が確認された。即ち、4.88dBの挿入損失の増加はコア30のポリカーボネート筐体10及びハーフミラー20からの剥離によるものである。
一方、本発明に係る実施例1乃至3においては、30サイクル(30日)の加速試験により挿入損失の増加は、0.15乃至0.72dBと少なく、高温高湿状態と低温状態とを繰り返す加速試験においても光導波路100の劣化が小さかった。また、目視により、ポリカーボネート筐体10とコア30(及びクラッド40)、ハーフミラー20とコア30(及びクラッド40)界面に剥離が生じていないことが確認された。
特に実施例3においては、挿入損失の増加が0.15dBに止まり、極めて良好であった。
比較例に対して、本発明の実施例1乃至3の光導波路の方が、高温高湿状態と低温状態とを繰り返す加速試験における劣化が小さい点は、主としてクラッド40の材料に起因する。
即ち、比較例においては、低応力とするために導入したウレタン結合を有するアクリルオリゴマーを光硬化させてクラッド40としたが、当該ウレタン結合は高温高湿状態で加水分解すると二酸化炭素が放出されることとなり、非可逆な劣化が生ずる。また、アクリル樹脂はエステル結合を有するので、吸湿性が高く、硬化物内部のウレタン結合まで水分子が浸透しやすい。更に、アクリル樹脂は硬化に際して硬化収縮率が大きく、光導波路100作製時にクラッドに内部応力(引っ張り応力)が生じており、コア30共々筐体からの剥離を生ぜしめる原因となったものと考えられる。
一方本発明の実施例1乃至3においては、クラッド40としてメチルシルセスキオキサンを含んだエポキシ樹脂とオキセタン樹脂とを光硬化させているので、硬化に際して硬化収縮率が小さく、光導波路作製時にクラッド40に生じる内部応力(引っ張り応力)は極めて小さい。また、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂としては、加水分解により二酸化炭素を放出するような、炭酸エステル結合、ウレタン結合、尿素結合、或いはメラミンやシアヌル酸のような尿素由来の複素環構造を有しないものを用いているので、高温高湿状態においても劣化がほとんど生じない。
更に、クラッドを、オルガノシルセスキオキサンと、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物としたので、耐熱性が極めて良くなった。これは、オルガノシルセスキオキサンが、各Si原子が3個のO原子と結合を有しているので熱膨張その他の熱による特性変化が小さいとの特性を有しながら、有機樹脂と高い親和性を有することによるものである。
更に、実施例3においては、プライマーを介さずに、コア30形成直後において、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから成る筐体10と、アクリル系硬化物のコア30を十分な強度で密着させることができた。これは、コア30の材料のアクリル系オリゴマーのアクリルエステル以外の官能基と、筐体表面のエポキシ樹脂とオキセタン樹脂の水酸基等の官能基や硬化剤が少なからず反応した可能性が高い。他の理由としては、オキセタン樹脂を配合することで、エポキシ樹脂のみからなる硬化物よりも柔軟性が向上することから、ポリカーボネート筐体よりも柔軟な筐体とすることで、プライマー処理無しで、クラッド充填まで、コア30と、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから成る筐体10との密着性が保たれたとも考えられる。
尚、例えば比較例で、ポリカーボネートから成る筐体10内面にプライマー処理をせずにアクリル系オリゴマーを硬化させてコア30を形成した場合、未反応のアクリル系オリゴマーを除去し洗浄する際にポリカーボネートから成る筐体10とアクリル系硬化物のコア30の接着が弱く、コア30が筐体10から外れ落ち、光導波路100を形成できなかった。
また、実施例3においては、クラッド40と筐体10をいずれもエポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから成るものとし、筐体10の内面にプライマーを塗布しなかったことから、クラッド40のエポキシ環(オキシラン環)及びオキセタン環の開環反応の際に、筐体10の表面に少なからず残っている未反応のエポキシ環(オキシラン環)及びオキセタン環と結合が生じた可能性が高い。その他、筐体10の表面のポリマー中のアルコール性ヒドロキシル基や、筐体10の形成時の硬化剤が、クラッド40の硬化形成時に作用する可能性もある。このような理由によりクラッド40と筐体10は化学的に結合が生じた可能性が高く、これが加速試験における劣化をほとんど生じさせない理由になったものと考えられる。
本発明は、光通信回線の入出力端末モジュールとして有用である。特に単線双方向の光LANにおいて有用である。
10:透光性の筐体
20:ハーフミラー
30:分岐を有する自己形成光導波路コア
40:クラッド

Claims (4)

  1. 少なくとも透光性の筐体と、光硬化性樹脂硬化物から成る軸状のコアと、前記筐体内部に充填され、前記コアを保持するクラッドとを有する光学装置であって、
    前記筐体が、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから成り、
    前記クラッドが、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とオルガノシルセスキオキサンとを有することを特徴とする光学装置。
  2. 透光性の筐体と、光硬化性樹脂硬化物から成る軸状のコアと、前記筐体内部に充填され、前記コアを保持するクラッドとを有する光学装置の製造方法において、
    筐体内部に保持された未硬化の第1の光硬化性樹脂に特定波長の光を導入して、自己集光的に軸状のコアを成長させるコア形成工程と、
    前記コア形成工程の後に未硬化の前記第1の光硬化性樹脂を除去する洗浄工程と、
    前記コアの形成された前記筐体内部に未硬化の第2の光硬化性樹脂を充填し、光硬化させてコアを保持するクラッドとする工程とを有し、
    前記第2の光硬化性樹脂は、光開環重合可能なオキシラン環及び/又はオキセタン環とオルガノシロキサン化合物とを含み、
    前記透光性の筐体を、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂とから形成する
    ことを特徴とする光学装置の製造方法。
  3. 前記第2の光硬化性樹脂は、オルガノシルセスキオキサンを0.1質量%以上50質量%以下含有することを特徴とする請求項2に記載の光学装置の製造方法。
  4. 前記透光性の筐体の表面に、プライマー処理を施さずに、前記コア形成工程を実行することを特徴とする請求項2に記載の光学装置の製造方法。
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