JP5290548B2 - 油性インクジェットインク - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ塩化ビニルシート等の、塩化ビニル系樹脂の表面に、耐水性、耐光性、耐摩擦性等に優れた画像や文字を印刷することができる油性インクジェットインクに関するものである。
従来、インクジェットヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって画像や文字を印刷する、いわゆるインクジェット印刷は、主として紙等の、吸水性の表面への印刷に利用されており、前記印刷に使用するインクジェットインクとしては、水に、水溶性染料等の着色剤を加えた水性インクジェットインクが広く一般的に用いられてきた。
しかし近年、様々な分野において、様々な表面への印刷に、インクジェット印刷が利用されるようになってきており、前記様々な表面に、それに見合う良好な耐水性、耐光性、耐摩擦性等を有する上、画質の良好な画像や文字を印刷するために、先に説明した水性インクジェットインクに代えて、溶媒として、実質的に水を含まず、有機溶媒のみを使用した、いわゆる油性インクジェットインクが実用化されつつある。例えば、屋外の広告等の媒体として多用されているポリ塩化ビニルシート等の、塩化ビニル系樹脂の表面に、前記各特性に優れた、画質の良好な画像や文字を印刷するための油性インクジェットインクとしては、耐光性に優れた顔料と、前記顔料を、塩化ビニル系樹脂の表面に定着させるためのバインダ樹脂と、前記バインダ樹脂を溶解しうる有機溶媒とを含むものが好適に使用される。
このうちバインダ樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の、塩化ビニル系樹脂の表面に対する定着性に優れた樹脂が挙げられ、中でも、塩化ビニル系樹脂の表面に対して最も定着性のよい塩化ビニル系樹脂が好適に使用される。また、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させると、バインダ樹脂の、有機溶媒に対する溶解性を向上したり、塩化ビニル系樹脂の表面に印刷された画像や文字の可撓性を高めて、印刷の耐擦過性を向上したりできるため、前記バインダ樹脂としては、特に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好適に用いられる。
また、有機溶媒としては、前記バインダ樹脂を良好に溶解させると共に、バインダ樹脂と、顔料等の着色剤とを、ポリ塩化ビニルシート等の塩化ビニル系樹脂の表面に、強固に定着させることを考慮して、バインダ樹脂のもとになる塩化ビニル系樹脂や、ポリ塩化ビニルシート等のもとになる塩化ビニル系樹脂を良好に溶解させることができる、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物や、γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物等の非プロトン性極性有機溶媒を使用し、前記非プロトン性極性有機溶媒を、それよりも沸点の高い、アルキレングリコールエーテル等のアルキレングリコール誘導体と併用して、油性インクジェットインクの表面張力、粘度等を調整するのが一般的である。
ところが、前記油性インクジェットインクを用いて印刷を繰り返すと、インクジェットヘッドのノズルから吐出されて、塩化ビニル系樹脂等の表面に到達するインク滴の、飛翔の軌跡が乱れたり、インク滴の大きさにばらつきが生じたり、通常のインク滴よりも微小で軌跡の一定しないインク滴が多数発生したり、あるいは、インク滴が吐出されなくなったりして、前記塩化ビニル系樹脂等の表面に印刷される画像や文字の画質が低下するといった問題や、インクジェットヘッドの、特にノズルを構成する金属製の部材(ノズルプレート等、以下「ノズル構成部材」と記載することがある。)が腐食するといった問題が、比較的、短期間で発生する。
これらの問題が発生するのは、ノズル構成部材の表面に対する油性インクジェットインクの濡れを抑制して、インク滴がノズルから吐出されやすくすると共に、特に金属製のノズル構成部材を腐食から保護するために、その表面に形成される、フッ素樹脂とニッケルとの共析被膜等の、油性インクジェットインクをはじく性質を有する被膜(以下「撥インク性被膜」と記載することがある。)が、塩化ビニル系樹脂に対する溶解性の強い油性インクジェットインクに弱いことが原因であると考えられる。
すなわち、油性インクジェットインクとの接触によって、前記撥インク性被膜が劣化して、ノズル構成部材の表面から徐々に失われて行く結果、前記ノズル構成部材の表面に対する、油性インクジェットインクの濡れ性が徐々に上昇して、インク滴がノズルから吐出されにくくなり、それに伴って、インク滴の飛翔の軌跡が乱れたり、インク滴の大きさにばらつきが生じたり、通常のインク滴よりも微小で軌跡の一定しないインク滴が多数発生したり、あるいは、インク滴が吐出されなくなったりして、前記塩化ビニル系樹脂等の表面に印刷される画像や文字の画質が低下するのである。また、ノズル構成部材の表面が露出して、直接に、油性インクジェットインクや大気中の水分、酸素等と接触するようになるため、前記ノズル構成部材が、早期に腐食しやすくなるのである。
そこで、特許文献1において、塩化ビニル系樹脂に対する溶解性の強い非プロトン性極性有機溶媒と、アルキレングリコール誘導体との併用系に代えて、いずれもアルキレングリコール誘導体であるジエチレングリコール化合物と、ジプロピレングリコール化合物とを併用することによって、油性インクジェットインクの溶解性を制御して、撥インク性被膜の劣化を抑制することが提案されている。しかし、発明者の検討によると、有機溶媒の種類を限定しただけでは、その効果は未だ十分ではなく、依然として、撥インク性被膜の劣化と、それに伴う前記の問題とが、比較的、短期間で発生するおそれがある。
一方、特許文献2では、油性インクジェットインク中に、撥インク性被膜を構成するニッケルと配位して、前記撥インク性被膜の、油性インクジェットインクに対する耐性を向上する機能を有するベンゾトリアゾール類を含有させることで、撥インク性被膜の、短期間での劣化を抑制することが提案されている。しかし、発明者の検討によると、かかる構成でも、やはり、その効果は未だ十分ではなく、依然として、撥インク性被膜の劣化と、それに伴う前記の問題が、比較的、短期間で発生するおそれがある。
再公表特許WO2002/055619 A1 特開2006−37020号公報
本発明の目的は、インクジェットヘッドの撥インク性被膜を短期間で劣化させるおそれがないため、従来に比べて長期間に亘って、インク滴の吐出不良に伴う様々な問題が発生するのを抑制して、塩化ビニル系樹脂等の表面に、良好な印刷をすることができる上、ノズル構成部材を短期間で腐食させるおそれもない油性インクジェットインクを提供することにある。
前記課題を解決するため、発明者は、ベンゾトリアゾール類に代えて、同様の機能を有する様々な化合物(特許文献2で言うところの金属配位化合物)について検討した。その結果、特許文献2には金属配位化合物として一切、教示も示唆もされていないイミダゾール類を、前記ベンゾトリアゾール類に代えて油性インクジェットインク中に含有させて、撥インク性被膜を構成するニッケルと配位させると、前記撥インク性被膜の、油性インクジェットインクに対する耐性を、これまでよりも飛躍的に向上できることを見出した。
すなわち本発明は、着色剤と、バインダ樹脂と、有機溶媒とを含有する油性インクジェットインクであって、イミダゾール類を含むとともに、前記有機溶媒は、
(i) ジエチレングリコールエチルメチルエーテルである第1の溶媒と、
(ii) ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテルの2種の第2の溶媒、
を含むことを特徴とするものである。
前記イミダゾール類としては、ニッケルと配位させた際に、撥インク性被膜の、油性インクジェットインクに対する耐性を向上する効果に特に優れた2−メチルイミダゾールが好ましい。また、有機溶媒として前記3種を併用しているのは、下記の理由による。
すなわち、前記第1の溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテルは、従来の非プロトン性極性有機溶媒ほどには強くないものの、
(1) 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔数平均分子量Mn=22000、酢酸ビニル含量14質量%〕0.2gを、20mlの有機溶媒に加えて25℃で1時間かく拌することで、全量を溶解させることができる溶解性を有していると共に、
(2) 日本工業規格JIS K6742:2004に規定された、外径32mm、内径25mmの水道用硬質塩化ビニル管(VP)を、有機溶媒に浸漬させて、60℃で3日間静置した際に、内径の変化率が1%以上となるように膨潤させることができる膨潤性をも有している。
そのため、有機溶媒として前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテルを用いることにより、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂を十分に溶解させることができると共に、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂を良好に膨潤させて、定着性に優れた印刷をすることができる。しかも、かかるバインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂に対する良好な溶解性や、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂に対する良好な膨潤性を維持しながら、撥インク性被膜の劣化を、前記非プロトン性極性有機溶媒を使用する場合に比べて、より長期間に亘って抑制することもできる。
また、前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテルを、(1)の溶解性は有しないが(2)の膨潤性は有する第2の溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテルの2種と併用すると、これら第2の溶媒は、先に説明したジエチレングリコールエチルメチルエーテルによる、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂に対する溶解や、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂に対する膨潤を補助して、向上させる働きをしながら、油性インクジェットインクの表面張力や粘度等を調整する働きをする。
また油性インクジェットインクを、例えば印刷速度が高速であるプリンタに使用して、塩化ビニル系樹脂からなる長尺のシートなどの表面に連続して印刷をした後、前記シートを巻き取るまでの間に速やかに乾燥させて、印刷が乱れたり裏移りしたりするのを防止することを考慮すると、その乾燥速度はできるだけ速いことが望ましく、そのために、有機溶媒として、前記種の溶媒を併用するのが有効である。これは、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂の良溶媒であるジエチレングリコールエチルメチルエーテルと、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂を膨潤させることができる前記2種の第2の溶媒との併用の効果によって、油性インクジェットインクの、前記シートに対する浸透性を高めて、浸透乾燥により、シートの表面での、見かけの乾燥速度を向上できるためである。
また、油性インクジェットインクには、エポキシ化物を含有させてもよい。前記エポキシ化物は、その分子中のエポキシ基が、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂の脱塩酸反応によって発生した塩酸と反応して、前記塩酸を、分子中に取り込む働きをする。そのため、前記エポキシ化物の機能によって、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制して、前記油性インクジェットインクの保存安定性を、さらに向上できる上、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品(ナイロン、ゴム等)や金属部品等の腐食や劣化を防止することもできる。
本発明によれば、インクジェットヘッドの撥インク性被膜を短期間で劣化させるおそれがないため、従来に比べて長期間に亘って、インク滴の吐出不良に伴う様々な問題が発生するのを抑制して、塩化ビニル系樹脂等の表面に、良好な印刷をすることができる上、ノズル構成部材を短期間で腐食させるおそれもない油性インクジェットインクを提供することが可能となる。
本発明は、着色剤と、バインダ樹脂と、有機溶媒とを含有する油性インクジェットインクであって、イミダゾール類を含むことを特徴とするものである。
〈イミダゾール類〉
イミダゾール類としては、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の1種または2種以上が挙げられる。中でも、先に説明したように、ニッケルと配位させた際に、撥インク性被膜の、油性インクジェットインクに対する耐性を向上する効果に特に優れた2−メチルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール類の割合は、油性インクジェットインクの総量の0.1質量部以上、1.5質量部以下、特に0.3質量部以上、1.0質量部以下であるのが好ましい。イミダゾール類の割合が前記範囲未満では、前記イミダゾール類を添加することによる、ニッケルと配位させて、撥インク性被膜の、油性インクジェットインクに対する耐性を向上する効果が十分に得られないおそれがあり、前記範囲を超える場合には、油性インクジェットインクの粘度が上昇して、ノズルから吐出させる際の吐出安定性が低下したり、過剰のイミダゾール類が析出して、印刷の、塩化ビニル系樹脂等の表面への定着性を低下させたりするおそれがある。
〈有機溶媒〉
有機溶媒は、先に説明したように
(i) ジエチレングリコールエチルメチルエーテルである第1の溶媒と、
(ii) ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテルの2種の第2の溶媒、
を含んでいる必要がある。
このうち第1の溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテルは、前記(1)の溶解性、および(2)の膨潤性を兼ね備えているため、油性インクジェットインクに配合される、バインダ樹脂としての、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂を、前記油性インクジェットインク中において良好に溶解させた状態を維持して、前記バインダ樹脂や着色剤の凝集や沈降を防止することで、油性インクジェットインクの保存安定性を向上する働きをする。また、印刷対象である塩化ビニル系樹脂の表面を膨潤させて、前記バインダ樹脂と着色剤とを、前記表面に強固に定着させる働きもする。
しかも、前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテルは、従来の非プトロン性極性有機溶媒ほど溶解性が強くないため、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂に対する良好な溶解性、および印刷対象としての塩化ビニル系樹脂に対する良好な膨潤性を維持しながら、撥インク性被膜の劣化を、非プロトン性極性有機溶媒を使用する場合に比べて、より長期間に亘って抑制することもできる。
なお、(1)の溶解性は、詳しくは、評価する有機溶媒20mlを容量100mlのビーカー中に入れ、表面がテフロン(登録商標)コートされたかく拌子(最大径6mm、最大長15mm)を投入して、25℃に設定した恒温槽中で静置して液温を安定させた後、前記かく拌子を、マグネチックスターラを動作させることで回転させて、回転速度500rpm以上、1000rpm以下の条件でかく拌しながら、粉末状の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を加えて1時間、さらにかく拌を続けた後の溶液を目視にて観察して、溶液が透明になったものを溶解性あり、溶液が濁っていたり、固形物が沈殿したりしたものを溶解性なしとして評価した結果で表すこととする。
前記溶解性を評価するために、数平均分子量Mnが22000で、かつ酢酸ビニル含量が14質量%である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を用いているのは、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂の代表的な特性を有しているためである。また、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の量を、有機溶媒20mlあたり0.2gに設定しているのは、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面への、印刷の良好な定着性を確保するためには、これ以上の量のバインダ樹脂を添加するのが好ましいためである。さらに、かく拌の条件を25℃、1時間に設定しているのは、油性インクジェットインクの標準的な製造条件を再現するためである。
また、(2)の膨潤性は、詳しくは、評価する有機溶媒300mlを容量500mlのビーカー中に入れ、60℃に設定した恒温槽中で静置して液温を安定させた状態で、あらかじめ内径を測定した、長さ80mmに切断した水道用硬質塩化ビニル管(VP)を液中に浸漬して3日間静置した後、前記水道用硬質塩化ビニル管(VP)を液中から引き上げて直ちに内径を測定して、浸漬前後の内径の変化率が1%以上のものを膨潤性あり、1%未満のものを膨潤性なしとして評価した結果で表すこととする。
前記膨潤性を評価するために、外径32mm、内径25mmの水道用硬質塩化ビニル管(VP)を用いているのは、前記水道用硬質塩化ビニル管が、日本工業規格において特性が規定されたものを、安価かつ容易に入手でき、溶媒の、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面に対する膨潤性を評価する試料として適しているためである。また、測定の条件を60℃、3日間に設定すると共に、膨潤性の評価の閾値である内径の変化率を1%に設定しているのは、できるだけ短期間で効率よく、しかも精度良く、膨潤の有無を評価するためである。
ちなみに、非プロトン性極性有機溶媒は、(2)の膨潤性評価を行うと、水道用硬質塩化ビニル管を、膨潤ではなく完全に溶解させてしまう強い溶解性を有している。そのため、たとえイミダゾール類を配合したとしても、撥インク性被膜の劣化を抑制する効果は不十分になってしまう。よって本発明では、前記非プロトン性極性有機溶媒に代えて、前記第1の溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(以下「2EG−EM」と略記することがある。他のグリコールエーテルについても同様であって、以下では、略記後の記号のみカッコ内に記載することとする。)を用いている
前記第1の溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)と併用する、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル(4EG−2M)の2種の、第2の溶媒は、先のジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)の、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂に対する溶解や、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂に対する膨潤を補助して、向上させる働きをしながら、油性インクジェットインクの表面張力や粘度等を調整する働きをする
また油性インクジェットインクを、例えば印刷速度が高速であるプリンタに使用して、塩化ビニル系樹脂からなる長尺のシートなどの表面に連続して印刷をした後、前記シートを巻き取るまでの間に速やかに乾燥させて、印刷が乱れたり裏移りしたりするのを防止するために、乾燥速度を高めることを考慮した場合にも、前記有機溶媒としては、前記3種の溶媒を併用するのが有効であるこれは、塩化ビニル系樹脂の良溶媒であるジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)と、塩化ビニル系樹脂を膨潤させることができる前記2種の第2の溶媒との併用の効果によって、油性インクジェットインクの、前記シートに対する浸透性を高めて、浸透乾燥により、シートの表面での、見かけの乾燥速度を向上できるためである。
第1の溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)の、有機溶媒の総量に占める割合は5質量%以上、50質量%以下、中でも5質量%以上、40質量%以下、特に8質量%以上、30質量%以下であるのが好ましい。ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)の割合が、前記範囲未満では、前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)による、油性インクジェットインクの、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂に対する溶解性を高めて、バインダ樹脂や着色剤の凝集や沈降を防止することで、前記油性インクジェットインクの保存安定性を向上すると共に、印刷対象である塩化ビニル系樹脂の表面を膨潤させて、前記バインダ樹脂と着色剤とを、前記表面に強固に定着させる働きが十分に得られないおそれがある。また、逆に、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)の割合が、前記範囲を超える場合には、油性インクジェットインクの、塩化ビニル系樹脂に対する溶解性が強くなり過ぎて、特に、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面にベタ印刷をした際に、前記表面が荒らされて、印刷の光沢性が低下するおそれがある。
第2の溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル(4EG−2M)の2種の合計の割合は、有機溶媒の総量から、前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)の割合を減じた残量であればよい。すなわち、前記2種の溶媒の合計の、有機溶媒の総量に占める割合は50質量%以上、95質量%以下、中でも60質量%以上、95質量%以下、特に70質量%以上、92質量%以下であるのが好ましい。また、前記ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)とテトラエチレングリコールジメチルエーテル(4EG−2M)の2種溶媒の比率は、質量比2EG−2E/4EG−2Mで表して1/1ないし6/1、特に2.5/1ないし4.5/1であるのが好ましい。比率が前記範囲を外れる場合には、前記両溶媒を併用したことによる、乾燥速度を高める効果が、十分に得られないおそれがある。
なお、本発明の油性インクジェットインクは、有機溶媒として、前記第1および第2の溶媒に加えて、さらに、(1)の溶解性および(2)の膨潤性の両方を有しない少なくとも1種の第3の溶媒を含んでいてもよい。前記第3の溶媒は、第2の溶媒による、油性インクジェットインクの表面張力や粘度等を調整する働きを補助して、前記表面張力や粘度等を、最適の範囲に微調整する働きをする。かかる第3の溶媒としても、前記基準を満たす、種々のアルキレングリコール誘導体が使用可能である。
前記第3の溶媒としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル(1EG−1M)、エチレングリコールモノブチルエーテル(1EG−1B)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(2EG−1B)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(2EG−2B)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(3EG−1M)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(3EG−1E)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(3EG−1B)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(3EG−BM)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1PG−1M)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1PG−1B)、イソプロピレングリコールモノメチルエーテル(1iPG−1M)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(2PG−1M)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(2PG−1E)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(2PG−1B)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(2PG−2M)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(3PG−1M)、およびトリプロピレングリコールジメチルエーテル(3PG−2M)からなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコールエーテルが挙げられる。
前記第1ないし第3の3種の溶媒の併用系において、第1の溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)の、有機溶媒の総量に占める割合は5質量%以上、50質量%以下、中でも5質量%以上、40質量%以下、特に8質量%以上、30質量%以下であるのが好ましい。この理由は、先に説明したとおりである。また、第3の溶媒の、有機溶媒の総量に占める割合は5質量%以上、72質量%以下、特に10質量%以上、67質量%以下であるのが好ましい。第3の溶媒の割合が前記範囲未満では、前記第3の溶媒を含有させることによる、表面張力や粘度等を調整する働きが十分に得られないおそれがある。
また、第1および第2の溶媒の割合によっては、油性インクジェットインクの、塩化ビニル系樹脂に対する溶解性が強くなり過ぎて、特に、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面にベタ印刷をした際に、前記表面が荒らされて、印刷の光沢性が低下するおそれもある。一方、第3の溶媒の割合が前記範囲を超える場合には、相対的に、第1および第2の溶媒の割合が少なくなり過ぎるため、第1の溶媒による、油性インクジェットインクの、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂に対する溶解性を高めて、バインダ樹脂や着色剤の凝集や沈降を防止することで、前記油性インクジェットインクの保存安定性を向上すると共に、印刷対象である塩化ビニル系樹脂の表面を溶解させて、前記バインダ樹脂と着色剤とを、前記表面に強固に定着させる働きや、第2の溶媒による、前記第1の溶媒の働きを補助する働きが十分に得られないおそれがある。
第2の溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル(4EG−2M)の2種の合計の割合は、有機溶媒の総量から、前記第1および第3の溶媒の割合を減じた残量であればよい。ただし、第2の溶媒は必須の成分であるためかかる第2の溶媒を全く含まない場合、つまり第2の溶媒の割合が0質量%である場合は含まない。第2の溶媒を全く含ない、第1の溶媒と第3の溶媒のみの併用系では、先に説明したように、第2の溶媒による膨潤作用によって、第1の溶媒による、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂に対する溶解性を向上させて、油性インクジェットインクの保存安定性を改善する効果が得られないためである。したがって、3種の溶媒の併用系における、第2の溶媒の、有機溶媒の総量に占める割合は、0質量%を超える範囲である必要があり、前記効果を、より良好に発現させることを考慮すると、前記範囲内でも4質量%以上で、かつ、有機溶媒の総量から第1および第3の溶媒の割合を減じた残量の範囲内であるのが好ましい。
〈エポキシ化物〉
本発明の油性インクジェットインクは、エポキシ化物を含有してもよい。前記エポキシ化物は、その分子中のエポキシ基が、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂の脱塩酸反応によって発生した塩酸と反応して、前記塩酸を、分子中に取り込む働きをする。そのため、前記エポキシ化物の機能によって、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制して、前記油性インクジェットインクの保存安定性を、さらに向上できる上、インクジェットヘッドを構成する樹脂部品や金属部品等の腐食や劣化を防止することもできる。エポキシ化物としては、分子中にエポキシ基を有し、かつ、前記第1および第2の溶媒、もしくは第1ないし第3の溶媒の混合溶媒に溶解することができる、種々の化合物が使用可能であり、その具体例としては、エポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、エポキシヘキサヒドロフタレート、エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
中でもエポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、エポキシヘキサヒドロフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。これらのエポキシ化物は、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂や、エポキシ化物の、一方の代表例であるエポキシ樹脂に比べて分子量が小さいにも拘らず、1分子中に多数のエポキシ基を含有しているため、バインダ樹脂や着色剤の、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂の表面への定着性を低下させたり、油性インクジェットインクの粘度を上昇させたりすることなしに、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂から発生した塩酸を、より効率よく、かつ確実に、分子中に取り込んで、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制することができる。
前記のうち、エポキシグリセリドとしては、例えば大豆油、亜麻仁油、綿実油、紅花油、サフラワー油、ひまわり油、桐油、ひまし油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、オリーブ油、パーム油、グレープシード油、魚油等の油類のエポキシ化物の1種または2種以上が挙げられる。また、エポキシ脂肪酸モノエステルとしては、例えばエポキシ化オレイン酸ブチル、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化大豆脂肪酸ブチル、エポキシ化大豆脂肪酸オクチル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸オクチル等の1種または2種以上が挙げられる。中でも、エポキシグリセリドとしてのエポキシ化大豆油、および/またはエポキシ化亜麻仁油は、前記各種エポキシ樹脂の中でも、より多数のエポキシ基を分子中に含有しており、先に説明した効果に特に優れるため、好適に使用される。
エポキシ化物の割合は、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂100質量部あたり3質量部以上、100質量部以下、特に10質量部以上、40質量部以下であるのが好ましい。エポキシ化物の割合が、前記範囲未満では、前記エポキシ化物による、バインダ樹脂としての塩化ビニル系樹脂の脱塩酸反応によって発生した塩酸を分子中に取り込んで、油性インクジェットヘッドのpHが酸性側に移行するのを抑制する働きが、十分に得られないおそれがある。また、前記範囲を超える場合には、過剰のエポキシ化物が、バインダ樹脂や着色剤の、塩化ビニル系樹脂の表面への定着性を低下させたり、油性インクジェットインクの粘度を上昇させて、良好な吐出安定性を阻害したりするおそれがある。
〈着色剤〉
油性インクジェットインクを任意の色に着色するための着色剤としては、例えば、屋外の広告等の媒体の印刷に使用した際に、それに見合う良好な耐水性、耐光性、耐摩擦性等を付与することを考慮すると、顔料が好ましい。前記顔料としては、油性インクジェットインク中に、良好に、分散させることができる、任意の、無機顔料および/または有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物や、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された、中性、酸性、塩基性等の、種々のカーボンブラックの1種または2種以上が挙げられる。
また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の1種または2種以上が挙げられる。
顔料は、油性インクジェットインクの色目に応じて、1種または2種以上を用いることができる。また、顔料は、油性インクジェットインク中での分散安定性を向上するために、表面を処理してもよい。顔料の含有割合は、油性インクジェットインクの総量中の0.1質量%以上、10質量%以下、特に0.5質量%以上、8質量%以下であるのが好ましい。顔料の具体例としては、下記の各種顔料が挙げられる。
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
〈バインダ樹脂〉
バインダ樹脂としては、先に説明したように、屋外の広告等の媒体として多用されているポリ塩化ビニルシート等の塩化ビニル系樹脂の表面に対して最も定着性のよい、塩化ビニル系樹脂が使用される。また、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させると、バインダ樹脂の、溶媒に対する溶解性を向上したり、前記塩化ビニル系樹脂の表面に印刷された画像や文字の可撓性を高めて、印刷の耐擦過性を向上したりすることができる。そのため、バインダ樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、数平均分子量Mnが15000以上、35000以下、中でも20000以上、30000以下、特に22000以上、27000以下であるのが好ましい。数平均分子量Mnが前記範囲未満では、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、塩化ビニル樹脂の表面に対する定着性が低下して、印刷の耐擦過性が低下するおそれがあり、前記範囲を超える場合には、油性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、インクジェットヘッドのノズルから、液滴として良好に吐出できないおそれがある。
また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含量は10質量%以上、18質量%以下、中でも12質量%以上、16質量%以下、特に14質量%前後であるのが好ましい。酢酸ビニル含量が前記範囲未満では、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、特に第1の溶媒に対する溶解性が低下して、油性インクジェットインク中に析出しやすくなるため、前記油性インクジェットインクの安定性が低下するおそれがあり、前記範囲を超える場合には、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、塩化ビニル樹脂の表面に対する定着性が低下して、印刷の耐擦過性が低下するおそれがある。好適な塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、例えば米国ダウ・ケミカル社製のVYHH〔数平均分子量Mn=27000、酢酸ビニル含量14質量%〕、VYHD〔数平均分子量Mn=22000、酢酸ビニル含量14質量%〕等が挙げられる。
さらに、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、油性インクジェットインクにおける濃度は、前記油性インクジェットインクを構成する有機溶媒の総量20mlあたり0.20g以上、2.00g以下、中でも0.40g以上、1.80g以下、特に0.50g以上、1.50g以下であるのが好ましい。濃度が前記範囲を未満では、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、バインダ樹脂としての機能が十分に得られないため、印刷の耐擦過性が低下するおそれがあり、前記範囲を超える場合には、油性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、インクジェットヘッドのノズルから、液滴として良好に吐出できないおそれがある。
〈その他〉
油性インクジェットインクには、前記各成分に加えて、さらに、高分子分散剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防かび剤、殺生剤等の種々の添加剤を、必要に応じて、任意の含有割合で含有させてもよい。
〈実施例1〉
第2の溶媒として、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E)と、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(4EG−2M)とを、質量比で4:1の割合で配合した混合溶媒49.5質量部をかく拌下、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔米国ダウ・ケミカル社製のVYHD、数平均分子量Mn=22000、酢酸ビニル含量14質量%〕4.5質量部を加えて分散させると共に膨潤させた。次いで、かく拌を続けながら、第1の溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM)15.0質量部を加えて、バインダ樹脂を完全に溶解させた後、エポキシ化物としてのエポキシ化大豆油〔(株)ADECA(アデカ)製のアデカサイザー(登録商標)O−130P〕0.5質量部と、イミダゾール類としての2−メチルイミダゾール0.5質量部とを加えた。
次に、顔料としてのカーボンブラック〔三菱化学(株)製のMA8〕4.0質量部と、分散剤〔ビックケミー社製のBYK161〕0.5質量部とを、前記第2の溶媒としての混合溶媒25.5質量部に分散させた分散液を調製し、前記分散液30.0質量部を、かく拌下、先の混合物70.0質量部に加えた後、均一相を形成するようにさらにかく拌して、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、第1の溶媒としての2EG−EMの割合は16.7質量%、第2の溶媒としての2EG−2Eの割合は66.7質量%、4EG−2Mの割合は16.7質量%であった。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の濃度は、有機溶媒の総量20mlあたり1.0gであった。
実施例2
イミダゾール類として、2−メチルイミダゾールに代えて、同量のイミダゾールを配合したこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、第1および第2の溶媒の割合は実施例1と同じであった。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の濃度も実施例1と同じであった。
実施例3
イミダゾール類として、2−メチルイミダゾールに代えて、同量の1−メチルイミダゾールを配合したこと以外は実施例1と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、第1および第2の溶媒の割合は実施例1と同じであった。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の濃度も実施例1と同じであった。
〈比較例1〉
特許文献2の油性インクジェットインクを再現するため、イミダゾール類に代えて、同量の、ベンゾトリアゾール類としてのベンゾトリアゾールを配合したこと以外は実施例2と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、第1および第2の溶媒の割合は実施例2と同じであった。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の濃度も実施例2と同じであった。
〈比較例2〉
特許文献2の油性インクジェットインクを再現するため、イミダゾール類に代えて、同量の、ベンゾトリアゾール類としてのベンゾトリアゾールを配合したこと以外は実施例3と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。有機溶媒の総量に対する、第1および第2の溶媒の割合は実施例3と同じであった。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の濃度も実施例3と同じであった。
〈比較例3〉
特許文献1の、実施例1(d)の油性インクジェットインクを再現するため、顔料としてのカーボンブラック〔三菱化学(株)製のMA8〕4.0質量部を、分散剤としてのアクリル酸共重合体〔共栄社化学(株)製のフローレンDOPA−33〕1.8質量部と共に、第2の溶媒としての2EG−2Eと、第3の溶媒としてのジプロピレングリコールモノメチルエーテル(2PG−1M)とを、質量比で4:6の割合で配合した混合溶媒60.0質量部中に分散させた分散液を調製し、前記分散液65.8質量部をかく拌下、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔米国ダウ・ケミカル社製のVYHD、数平均分子量Mn=22000、酢酸ビニル含量14質量%〕0.5質量部と、前記と同じ混合溶媒33.7質量部とを加えてさらにかく拌して、油性インクジェットインクを製造した。
〈比較例4〉
第2の溶媒としての2EG−2Eの配合量を37.0質量部とし、ベンゾトリアゾール0.5質量部を配合したこと以外は比較例3と同様にして、油性インクジェットインクを製造した。
〈撥インク性試験〉
ノズルプレートのモデルとして、ステンレス鋼板の表面に、フッ素樹脂としてのポリテトラフルオロエチレンと、ニッケルとの共析被膜を、撥インク性被膜として形成したものを用意し、前記ノズルプレートを、実施例、比較例の油性インクジェットインク中に浸漬して、60℃で静置して1週間後、および2週間後に引き上げた際の状態を観察した。そして、下記の基準で、油性インクジェットインクが撥インク性被膜に及ぼす影響を評価した。
◎:2週間静置後に引き上げた際に、ノズルプレートの表面の全面において、油性インクジェットインクがきれいに弾かれているのが確認された。
○:1週間静置後に引き上げた際には、ノズルプレートの表面の全面において、油性インクジェットインクがきれいに弾かれたが、2週間後に引き上げた際には、前記表面の表面積の10%未満の範囲で、油性インクジェットインクの濡れ性が高くなって、弾かれない領域が発生しているのが確認された。
△:1週間静置後に引き上げた際に、ノズルプレートの表面の表面積の10%未満の範囲で、油性インクジェットインクの濡れ性が高くなって、弾かれない領域が発生しているのが確認され、2週間静置後に引き上げた際には、前記領域の面積が、前記表面の表面積の10%以上に増大しているのが確認された。
×:1週間静置後に引き上げた際に、ノズルプレートの表面の表面積の10%以上の範囲で、油性インクジェットインクの濡れ性が高くなって、弾かれない領域が発生しているのが確認された。
〈定着性試験〉
実施例、比較例の油性インクジェットインクを、ポリ塩化ビニル製ターポリンの表面に、ワイヤーバー(ドクター0.25、直径0.25mmのピアノ線を、金属の棒に巻きつけたもの)を用いて塗布し、1.2kWのドライヤーを用いて1分間、熱風乾燥させた後、前記コーティングを、綿棒を用いて50gの荷重で擦って下記の基準で定着性を評価した。
○:変化なし。定着性良好。
△:コーティングに擦過痕が残ったが、実用可能なレベルであった。
×:コーティングが擦り取られてしまった。定着性不良。
結果を表1、表2に示す。
Figure 0005290548
Figure 0005290548
両表より、特許文献2の油性インクジェットインクを再現した比較例1、2の油性インクジェットインクは、共に、塩化ビニル系樹脂に対する溶解性が強いため、印刷の定着性は良好であるものの、ベンゾトリアゾール類による効果が十分に得られず、ノズルプレートの表面の撥インク性被膜を短期間で劣化させてしまうことが判った。また、特許文献1の実施例1(d)の油性インクジェットインクを再現した比較例3の油性インクジェットインクは、有機溶媒として、塩化ビニル系樹脂に対する前記(1)の良好な溶解性を有しない第2および第3の溶媒のみを併用して、塩化ビニル系樹脂に対する溶解性を弱めたものの、その効果が十分でなく、やはりノズルプレートの表面の撥インク性被膜を短期間で劣化させてしまうことが判った。
また、比較例3の油性インクジェットインクは、印刷の定着性も不良であることが判った。この原因としては、前記のように、第2および第3の溶媒が、共に塩化ビニル系樹脂に対する良好な溶解性を有さないことから、両者のみの併用系では、その総量20mlあたり、バインダ樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を0.1g程度しか溶解させることができず、したがって比較例3の油性インクジェットインクでは、できるだけ均一相を得るために、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を、ごく少量しか含有させられなかったこと、ならびに、前記比較例3の油性インクジェットインクの、印刷対象としての塩化ビニル系樹脂に対する溶解性が著しく弱いこと等が考えられた。
さらに、前記比較例3の油性インクジェットインクにベンゾトリアゾール類を加えた比較例4の油性インクジェットインクは、依然として、印刷の定着性が不良である上、前記ベンゾトリアゾール類を添加したことによる、ノズルプレートの表面の撥インク性被膜を保護する効果は、比較例1〜3と比べれば僅かに改善されているものの、未だ十分でないことが判った。
これに対し、実施例1〜の油性インクジェットインクは、いずれも、印刷の定着性が良好である上、ベンゾトリアゾール類に代えてイミダゾール類を添加したことによって、ノズルプレートの表面の撥インク性被膜を保護する効果に優れていることが判った。また、各実施例を比較した結果より、イミダゾール類としては2−メチルイミダゾールが好ましいことが判った。

Claims (4)

  1. 着色剤と、バインダ樹脂と、有機溶媒とを含有する油性インクジェットインクであって、イミダゾール類を含むとともに、前記有機溶媒は、
    (i) ジエチレングリコールエチルメチルエーテルである第1の溶媒と、
    (ii) ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテルの2種の第2の溶媒、
    を含むことを特徴とする油性インクジェットインク。
  2. 前記イミダゾール類、2−メチルイミダゾールである請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  3. 前記有機溶媒は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、イソプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびトリプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコールエーテルを、第3の溶媒として含んでいる請求項1または2に記載の油性インクジェットインク。
  4. さらにエポキシ化物を含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
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