JP5748995B2 - 非水性インクジェットインクおよびインクセット - Google Patents

非水性インクジェットインクおよびインクセット Download PDF

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Description

本発明は、特にポリ塩化ビニルシート等の表面に画像や文字等を印刷するのに適した非水性インクジェットインクに関するものである。
従来、インクジェットインクを、インクジェットプリンタのノズルを通して微小な液滴として吐出させて画像や文字を印刷するインクジェット印刷は、主に紙等の吸水性の表面への印刷に好適に利用されてきた。そのためインクジェットインクとしては、水に水溶性染料等の着色剤を加えた水性のインクジェットインクが広く一般的に用いられてきた。
しかし近年、特に業務用用途等の様々な分野において、様々な表面への印刷にインクジェット印刷が利用されるようになってきている。前記様々な表面に、それに見合う良好な耐水性、耐光性、耐摩擦性等を有する上、画質の良好な画像や文字を印刷することが求められる。
そのため水性のインクジェットインクに代えて、溶媒として実質的に水を含まず有機溶媒のみを用いた非水性インクジェットインク、およびそれを用いるインクジェットプリンタが実用化され、普及してきている。
例えば屋外の広告等の媒体として多用されているポリ塩化ビニルシート等の表面に画像や文字を印刷するために、大型のインクジェットプリンタが普及してきている。
前記インクジェットプリンタに用いる非水性インクジェットインクとしては、耐光性に優れた顔料と、前記顔料をポリ塩化ビニルシート等の表面に定着させるためのバインダ樹脂と、前記バインダ樹脂を溶解しうる有機溶媒とを含むものが主に用いられる。
前記バインダ樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂等の、ポリ塩化ビニルシート等の表面に対する定着性に優れた各種の樹脂が用いられ、中でも最も定着性のよいポリ塩化ビニル樹脂が好適に使用される。
また塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させると、有機溶媒による溶解性を向上させたり、ポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷される画像や文字の可撓性を高めて印刷の耐擦過性を向上したりできる。そのためポリ塩化ビニル樹脂としては、特に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好適に用いられる(例えば特許文献1〜3等)。
また非水性インクジェットインクには、金属配位化合物等の添加剤が添加される。
インクジェットプリンタのノズルを構成するノズルプレート等の表面は、前記ノズルを通して非水性インクジェットインクを良好に吐出させるために、前記非水性インクジェットインクを適度にはじく性質を有している必要がある。
そのため、前記ノズルプレート等の表面には、非水性インクジェットインクをはじく性質を有する被膜が形成される。前記被膜としては、フッ素樹脂とニッケルとの共析被膜等が用いられる。
前記金属配位化合物は、前記共析被膜中のニッケルと配位することで、前記共析被膜の、非水性インクジェットインク中に含まれる有機溶媒に対する耐性を向上するために機能する。
前記金属配位化合物としては、例えばイミダゾール類、ベンゾトリアゾール類等の含窒素化合物が挙げられる。
特開2004−231870号公報 特開2005−23298号公報 特開2005−200469号公報
前記ポリ塩化ビニル樹脂として、従来は溶液重合法によって合成されたものが一般的に用いられてきた。しかし溶液重合法では、ポリ塩化ビニル樹脂を合成する際に多量の有機溶媒を使用しなければならず、その処理が問題となる。
すなわち合成したポリ塩化ビニル樹脂を反応系中から取り出すためには乾燥処理、つまり有機溶媒を大気中に揮散させて除去するのが最も簡単である。しかし近年、環境に対する負荷を軽減すること等を考慮して、前記有機溶媒を、極力大気中に揮散させずに排気処理、廃液処理等によって回収することが必要となりつつある。
そして、これらの処理に要する設備やその稼動のために要するエネルギー等がポリ塩化ビニル樹脂の生産性を低下させるとともに生産コストを押し上げる原因となってきている。
そこで、溶液重合法のように多量の有機溶媒を使用する必要のない、懸濁重合法や乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂を用いることが検討されている。
しかし発明者の検討によると、これらの合成方法で合成されたポリ塩化ビニル樹脂を用いて調製した非水性インクジェットインクは、従来の溶液重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂に比べて、短期間でゲル化しやすいことが明らかとなった。
特に大型のインクジェットプリンタへのインク供給手段として一般的なアルミニウムラミネート材等からなる袋体内に真空充てんして保存した場合に、前記ゲル化が発生しやすかった。
ポリ塩化ビニル樹脂がゲル化すると、インクジェットプリンタのノズルを通して所定量のインクが適正に吐出されにくくなったり、前記ノズルが目詰まりしてインクが全く吐出されなくなったりする。そのため画質の良好な画像や文字等を印刷できなくなるという問題を生じる。ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化は極力抑制しなければならない。
本発明の目的は、懸濁重合法または乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂を含み、しかも前記ポリ塩化ビニル樹脂が短期間でゲル化して吐出不良や目詰まり等を生じるおそれのない非水性インクジェットインクと、前記非水性インクジェットインクを含むインクセットとを提供することにある。
発明者は、懸濁重合法や乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂が短期間でゲル化する原因について検討した。その結果、前記懸濁重合法や乳化重合用によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂は、溶液重合法によって合成されたものに比べて未反応のモノマーの残留量が多いことが、ゲル化しやすい原因の一つであることを見出した。
すなわち空気中に含まれる酸素は、周知のようにラジカル重合反応の禁止剤として機能する。ところが、非水性インクジェットインクを前記袋体内に真空充てんして空気から遮断すると、未反応のモノマーがラジカル重合反応しやすい状態となる。
そして、袋体内に充てん後の保管時の熱履歴等が引き金となってラジカル重合反応が開始されて、前記未反応のモノマーの残留量が多いほど、ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化と、それに伴う種々の問題とを生じやすくなるのである。
また発明者の検討によると、非水性インクジェットインクが特にpH9を超える塩基性の成分を含んでいる場合、前記塩基性の成分が、前記ラジカル重合反応とそれに伴うポリ塩化ビニル樹脂のゲル化とを促進することも判明した。
そこで発明者はさらに検討した結果、ラジカル重合反応を禁止する機能を有するラジカル重合禁止剤を、非水性インクジェットインク中にあらかじめ含有させておくのが、ゲル化を防止するために特に効果的であることを見出した。
また金属配位化合物としては、当該金属配位化合物としての機能に優れている上、塩基性を呈しないためラジカル重合反応を促進するおそれのないベンゾトリアゾール類を含有させればよいことを見出した。
したがって本発明は、懸濁重合法または乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂、前記ポリ塩化ビニル樹脂を溶解させるための有機溶媒、顔料、ベンゾトリアゾール類、およびラジカル重合禁止剤を含むことを特徴とする非水性インクジェットインクである。
なおラジカル重合禁止剤は公知の成分であるが、かかるラジカル重合禁止剤を、
(a) 既に重合反応済みで、それ以上の重合反応や架橋反応等をさせることを想定していないポリ塩化ビニル樹脂を含む非水性インクジェットインクに含有させること、
(b) それによって、前記ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化の原因となる未反応のモノマーのラジカル重合反応を防止すること、さらには
(c) ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化の原因が、特に懸濁重合法や乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂中に多く含まれる未反応のモノマーであること
等は、発明者が、本発明を完成するに際してはじめて見出し、はじめて明らかとした事実であって、決して公知の事実ではない。
前記ラジカル重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、および縮合芳香族環のキノン類からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる
顔料としてフタロシアニン顔料を用いるシアンの非水性インクジェットインクにおいて、ラジカル重合禁止剤としてはヒンダードアミン類を用いるのが好ましい。前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.2質量%以上、2質量%以下であるのが好ましい。
顔料としてキナクリドン顔料を用いるマゼンタの非水性インクジェットインクにおいて、ラジカル重合禁止剤としてはヒンダードフェノール類を用いるのが好ましい。前記ヒンダードフェノール類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、2質量%以下であるのが好ましい。
顔料としてキレートアゾ顔料を用いるイエローの非水性インクジェットインクにおいて、ラジカル重合禁止剤としてはヒンダードアミン類を用いるのが好ましい。前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、2質量%以下であるのが好ましい。
顔料としてカーボンブラックを用いるブラックの非水性インクジェットインクにおいて、ラジカル重合禁止剤としてはヒンダードアミン類を用いるのが好ましい。前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、2質量%以下であるのが好ましい。
前記有機溶媒は、
ジエチレングリコールエチルメチルエーテルと、
ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種との混合溶媒であるのが好ましい。
また前記混合溶媒は、さらにエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびトリプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種をも含んでいてもよい。
本発明は、少なくともシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色の非水性インクジェットインクを含み、前記各色のうち少なくとも1色の非水性インクジェットインクは、前記本発明の非水性インクジェットインクであることを特徴とするインクセットである。
本発明によれば、懸濁重合法または乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂を含み、しかも前記ポリ塩化ビニル樹脂が短期間でゲル化して吐出不良や目詰まり等を生じるおそれのない非水性インクジェットインクと、前記非水性インクジェットインクを含むインクセットとを提供することができる。
《非水性インクジェットインク》
本発明の非水性インクジェットインクは、懸濁重合法または乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂、前記ポリ塩化ビニル樹脂を溶解させるための有機溶媒、顔料、およびラジカル重合禁止剤を含むことを特徴とするものである。
〈ポリ塩化ビニル樹脂〉
ポリ塩化ビニル樹脂としては、懸濁重合法または乳化重合法によって合成される種々のポリ塩化ビニル樹脂が使用可能である。特にポリ塩化ビニル樹脂としては、前記懸濁重合法または乳化重合法によって合成された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましい。塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させると、有機溶媒による溶解性を向上させたり、ポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷される画像や文字の可撓性を高めて印刷の耐擦過性を向上したりできる。
前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の分子量や、酢酸ビニル含量等は任意に設定できる。
例えば懸濁重合法によって合成される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、数平均分子量Mnが5000以上、特に10000以上であるのが好ましく、100000以下、特に30000以下であるのが好ましい。
数平均分子量Mnが前記範囲未満では、ポリ塩化ビニルシート等に対する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の定着性が低下して、印刷の耐擦過性等が低下するおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、前記非水性インクジェットインクを、インクジェットプリンタのノズルを通して液滴として良好に吐出できないおそれがある。
また前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は1質量%以上、中でも10質量%以上、特に13質量%以上であるのが好ましく、36質量%以下、中でも22質量%以下、特に15質量%以下であるのが好ましい。
酢酸ビニル含量が前記範囲未満では、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、特に後述する第1の有機溶媒に対する溶解性が低下して析出を生じやすくなり、非水性インクジェットインクの安定性が低下するおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、ポリ塩化ビニルシート等に対する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の定着性が低下して、印刷の耐擦過性等が低下するおそれがある。
前記懸濁重合法によって合成される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、例えば日信化学工業(株)製のSOLBIN(登録商標)シリーズの塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のうち、
SOLBIN CL(数平均分子量Mn:25000、酢酸ビニル含量:14質量%)、
SOLBIN CNL(数平均分子量Mn:12000、酢酸ビニル含量:10質量%)、
SOLBIN C5R(数平均分子量Mn:27000、酢酸ビニル含量:21質量%)、
SOLBIN AL(数平均分子量Mn:22000、酢酸ビニル含量:2質量%)、
SOLBIN TA5R(数平均分子量Mn:28000、酢酸ビニル含量:1質量%)、
SOLBIN TA0(数平均分子量Mn:15000、酢酸ビニル含量:2質量%)、および
SOLBIN TA3(数平均分子量Mn:24000、酢酸ビニル含量:4質量%)、
等の1種または2種以上が挙げられる。
乳化重合法によって合成される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、重量平均分子量Mwが5000以上、中でも30000以上、特に45000以上であるのが好ましく、100000以下、中でも60000以下、特に55000以下であるのが好ましい。
重量平均分子量Mwが前記範囲未満では、ポリ塩化ビニルシート等に対する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の定着性が低下して、印刷の耐擦過性等が低下するおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、前記非水性インクジェットインクを、インクジェットプリンタのノズルを通して液滴として良好に吐出できないおそれがある。
また前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は1質量%以上、中でも10質量%以上、特に14質量%以上であるのが好ましく、36質量%以下、中でも20質量%以下、特に16質量%以下であるのが好ましい。
酢酸ビニル含量が前記範囲未満では、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の、特に後述する第1の有機溶媒に対する溶解性が低下して析出を生じやすくなり、非水性インクジェットインクの安定性が低下するおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、ポリ塩化ビニルシート等に対する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の定着性が低下して、印刷の耐擦過性等が低下するおそれがある。
前記乳化重合法によって合成される塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、例えばワッカーケミー社(Wacker Chemie AG)製のVINNOL(登録商標)シリーズの塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のうち、
VINNOL E15/45(重量平均分子量Mw:45000〜55000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%)、
VINNOL H14/36(重量平均分子量Mw:30000〜40000、酢酸ビニル含量:14.4±1.0質量%)、
VINNOL H15/42(重量平均分子量Mw:35000〜50000、酢酸ビニル含量:14.0±1.0質量%)、
VINNOL H40/43(重量平均分子量Mw:40000〜50000、酢酸ビニル含量:34.3±1.0質量%)、
VINNOL E15/45M(重量平均分子量Mw:50000〜60000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%)、および
VINNOL E15/40M(重量平均分子量Mw:40000〜50000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%)、
等の1種または2種以上が挙げられる。
前記ポリ塩化ビニル樹脂の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の1質量%以上、特に3質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に7質量%以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、ポリ塩化ビニル樹脂を含有させることによる、顔料をポリ塩化ビニルシート等の表面に定着させる効果が十分に得られず、印刷の耐擦過性が低下するおそれがある。
一方、含有割合が前記範囲を超える場合には、非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、前記非水性インクジェットインクを、インクジェットプリンタのノズルを通して液滴として良好に吐出できないおそれがある。
〈有機溶媒〉
有機溶媒としては、前記ポリ塩化ビニル樹脂を良好に溶解できる種々の有機溶媒が使用可能である。前記有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の含窒素複素環化合物や、γ−ブチロラクトン等の含酸素複素環化合物などの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。しかし非プロトン性極性溶媒は、先に説明したフッ素樹脂とニッケルとの共析被膜等を短期間で劣化させるおそれがある。また非プロトン性極性溶媒は、ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化を生じやすいおそれもある。
有機溶媒としては、前記ゲル化を生じにくい上、前記共析被膜等を短時間で劣化させるおそれのないアルキレングリコール誘導体を使用するのが好ましい。
また有機溶媒としては、いずれもアルキレングリコール誘導体である下記第1〜第3の3種の有機溶媒のうち第1および第2の2種の有機溶媒の混合溶媒、または第1〜第3の3種の有機溶媒の混合溶媒を使用するのがさらに好ましい。
前記混合溶媒を使用すると、ポリ塩化ビニル樹脂や顔料をポリ塩化ビニルシート等の表面に強固に定着させて、耐水性、耐光性、耐擦過性等に優れた画像や文字等を印刷できる。またポリ塩化ビニル樹脂が短期間でゲル化したり、顔料が短期間で凝集したり沈降したりするのを防止することもできる。しかも前記混合溶媒は、共析被膜等を短期間で劣化させるおそれもない。
混合する第1〜第3の有機溶媒としては、特に塩基性を呈しない有機溶媒、より詳しくはpHが2〜9程度の有機溶媒を組み合わせて用いるのが好ましい。かかる塩基性を呈しない有機溶媒は、先に説明したように未反応のモノマーのラジカル重合反応を促進したり、あるいはラジカル重合禁止剤の機能を阻害したりするおそれがないためである。
(第1の有機溶媒)
エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル(pH=6.8)等の1種または2種以上。
(第2の有機溶媒)
ジエチレングリコールジエチルエーテル(pH=4.0)、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(pH=6.7)、およびプロピレングリコールジメチルエーテル(pH=2.6)等の1種または2種以上。
(第3の有機溶媒)
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(pH=4.9)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(pH=7.6)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(pH=7.8)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(pH=6.9)、イソプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(pH=5.8)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(pH=3.5)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびトリプロピレングリコールジメチルエーテル(pH=7.2)等の1種または2種以上。
前記第1〜第3の有機溶媒の分類は、特開2009−74034号公報に所載の分類方法に基づく。
すなわち第1の有機溶媒は、下記(1)の溶解性および(2)の膨潤性の両方を有する有機溶媒、第2の有機溶媒は、(1)の溶解性は有しないが(2)の膨潤性は有する有機溶媒、第3の有機溶媒は、(1)の溶解性も(2)の膨潤性も有しない有機溶媒である。
(1) 溶解性試験
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔ダウケミカル社(THE Dow Chemical Company)製のVYHD、数平均分子量Mn=22000、酢酸ビニル含量14質量%〕0.2gを、20mlの有機溶媒に加えて25±1℃で1時間かく拌した際に、全量を溶解させることができた(溶液が透明になった)ものを溶解性あり、全量を溶解させることができなかった(溶液が濁ったり固形物が沈殿したりした)ものを溶解性なしとして評価した。
なお溶解性試験の詳細な手順は下記のとおり。
評価する有機溶媒20mlをビーカーに入れ、表面がテフロン(登録商標)でコートされたかく拌子を投入し、25±1℃に設定した恒温槽中で静置して液温を安定させる。
次いでマグネチックスターラを動作させ、かく拌子を回転させて、回転速度500rpm以上、1000rpm以下の条件でかく拌する。
かく拌を続けながら、粉末状の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体0.2gを加えて1時間、さらにかく拌を続けた後、溶液を目視にて観察する。
そして、先に説明したように溶液が透明になったものを溶解性あり、溶液が濁っていたり固形物が沈殿したりしたものを溶解性なしとして評価する。
(2) 膨潤性試験
日本工業規格JIS K6742:2004に規定された、外径の基準寸法が32.0mm、内径の呼び径が25mmの水道用硬質塩化ビニル管(VP)(JIS K67427922、エスロン パイプ スイドウ VP25 R00074261)を有機溶媒に浸漬させて、60±1℃で3日間静置した後、内径の変化率を測定し、前記変化率が1%以上のものを膨潤性あり、1%未満のものを膨潤性なしとして評価する。
なお膨潤性試験の詳細な手順は下記のとおり。
評価する有機溶媒300mlをビーカー中に入れ、60±1℃に設定した恒温槽中で静置して液温を安定させる。
次いで前記液中に、あらかじめ長さ80mmに切断すると共に内径を実測した水道用硬質塩化ビニル管(VP)を浸漬して3日間静置した後、液中から引き上げて直ちに内径を実測する。
そして、浸漬前後の内径の変化率が1%以上のものを膨潤性あり、1%未満のものを膨潤性なしとして評価する。
前記3種の有機溶媒のうち第1および第2の2種の有機溶媒を併用すると、共析被膜等を短期間で劣化させることなしに、ポリ塩化ビニル樹脂を良好に溶解させることができる。
すなわち第1の有機溶媒は、ポリ塩化ビニル樹脂の良溶媒ではあるものの、非プロトン性極性溶媒ほど溶解性は強くない。第2の有機溶媒はさらに溶解性が弱い。そのため、前記2種の有機溶媒を併用した混合溶媒は、共析被膜等を短期間で劣化させるおそれがない。
しかも前記混合溶媒においては、第1の有機溶媒によるポリ塩化ビニル樹脂の溶解性を、第2の有機溶媒による膨潤作用によって補うことができ、ポリ塩化ビニル樹脂の溶解性を、非プロトン性極性溶媒と同等程度まで向上させることができる。
そのため、前記第1および第2の有機溶媒の分子構造が互いに近似していることと相まって、非水性インクジェットインクの保存安定性を向上させて、ポリ塩化ビニル樹脂や顔料が短期間で凝集したり沈降したりするのを防止できる。
またポリ塩化ビニルシート等に対する非水性インクジェットインクの浸透性を高めて、前記ポリ塩化ビニル樹脂や顔料を、前記ポリ塩化ビニルシート等の表面に強固に定着させることもできる。
さらに第3の有機溶媒を併用して、非水性インクジェットインクの表面張力や粘度等を、インクジェット印刷に適した範囲に調整することもできる。
前記第1および第2の2種の有機溶媒を併用した混合溶媒において、第1の有機溶媒の含有割合は、前記混合溶媒の総量の5質量%以上、特に8質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下、特に40質量%以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、第1の有機溶媒による、ポリ塩化ビニル樹脂の溶解性を向上させて、非水性インクジェットインクの保存安定性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。また浸透性を高めて、ポリ塩化ビニル樹脂や顔料を、ポリ塩化ビニルシート等の表面に強固に定着させる効果が十分に得られないおそれもある。
一方、含有割合が前記範囲を超える場合には、混合溶媒の溶解性が強くなり過ぎて、特にポリ塩化ビニルシート等の表面にベタ印刷をした際に、前記表面が荒らされて印刷の光沢性、平滑性等が低下するおそれがある。
第1ないし第3の3種の有機溶媒を併用した混合溶媒において、第1の有機溶媒の含有割合は、前記混合溶媒の総量の5質量%以上、特に8質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下、特に40質量%以下であるのが好ましい。この理由は、先に説明した2種の有機溶媒を併用した混合溶媒の場合と同じである。
また第3の有機溶媒の含有割合は、混合溶媒の総量の1質量%以上、特に2質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下、特に40質量%以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、第3の有機溶媒を含有させることによる、表面張力や粘度等を調整する働きが十分に得られないおそれがある。
また第1および第2の有機溶媒の種類と含有割合によっては混合溶媒の溶解性が強くなり過ぎて、特にポリ塩化ビニルシート等の表面にベタ印刷をした際に前記表面が荒らされて印刷の光沢性、平滑性等が低下するおそれがある。
一方、含有割合が前記範囲を超える場合には、相対的に第1および第2の有機溶媒の含有割合が少なくなり過ぎる。そのため、前記第1の有機溶媒を含有させることによる、ポリ塩化ビニル樹脂の溶解性を向上させる効果や、第2の有機溶媒を含有させることによる、前記第1の有機溶媒の働きを補助する効果が不十分になるおそれがある。
そしてその結果として、非水性インクジェットインクの保存安定性を向上する効果や、浸透性を高めてポリ塩化ビニル樹脂や顔料をポリ塩化ビニルシート等の表面に強固に定着させる効果が十分に得られないおそれがある。
なお、非水性インクジェットインクを構成する各種成分のうち、有機溶媒等の、それ自体が液体である成分のpHは、ガラス電極法によって測定した値でもって表すこととする。
すなわち温度25±1℃の環境下、ガラス電極と比較電極とを、測定対象である液体に浸漬した際に、両電極間に生じる電位差からpHを求めることとする。ガラス電極の内部液としては3mol/lのKCl水溶液を用いる。
固体の成分のpHは、水溶性である場合は純水に溶解した5%水溶液の状態で、同様に温度25±1℃の環境下、ガラス電極法によって測定した値でもって表すこととする。ガラス電極の内部液としては3mol/lのKCl水溶液を用いる。
前記ガラス電極法によるpHの測定装置(pHメータ)としては、例えば東亜電波工業(株)製のHM−40V等が挙げられる。
具体的な測定方法としては、前記ガラス電極と比較電極とを、測定対象である液体に浸漬して1分間経過後のpH値を読み取る。特に有機溶媒系の場合はpH値が安定しないことがあり、その場合には、pH値の振れのセンター値をpH値として求めることとする。
前記混合溶媒の好ましい例としては、例えば第1の有機溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテルと、下記の好ましい第2の有機溶媒のうちの少なくとも1種との混合溶媒が挙げられる。
(好ましい第2の有機溶媒)
ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル。
また前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、および好ましい第2の有機溶媒の少なくとも1種に、さらに下記の好ましい第3の有機溶媒のうちの少なくとも1種を加えた混合溶媒も、好ましい例として挙げられる。
(好ましい第3の有機溶媒)
エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル。
〈顔料〉
顔料としては、任意の無機顔料および/または有機顔料が挙げられる。
このうち無機顔料としては、例えば酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物や、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された中性、酸性、塩基性等の種々のカーボンブラックが挙げられる。
有機顔料としては、例えばアゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、およびアニリンブラック等が挙げられる。
このうちアゾ顔料としては、例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、およびキレートアゾ顔料等が挙げられる。
多環式顔料としては、例えばフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロン顔料等が挙げられる。
さらに染料キレートとしては、例えば塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等が挙げられる。
顔料は、非水性インクジェットインクの色目に応じて、1種または2種以上を用いることができる。また顔料は、非水性インクジェットインク中での分散安定性を向上するために表面を処理してもよい。
顔料の具体例としては、下記の各種顔料が挙げられる。
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
顔料の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.4質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に8質量%以下であるのが好ましい。
顔料は、任意の溶媒に分散させて調製した顔料分散液の状態で、非水性インクジェットインクの製造原料として使用するのが好ましい。
顔料分散液を構成する溶媒としては、非水性インクジェットインクを構成する有機溶媒に可溶性で、しかも顔料を良好に分散させることができる種々の溶媒が使用可能である。例えば有機溶媒が、前記第1〜第3の3種の有機溶媒のうちの2種以上の併用系である場合、前記3種の有機溶媒のうちの1種または2種以上が、顔料分散液を構成する溶媒として好適に使用される。
また顔料分散液には、顔料を良好に分散させるために、分散剤等の種々の添加剤を含有させることもできる。
前記顔料分散液は、未反応のモノマーのラジカル重合反応を促進したり、あるいはラジカル重合禁止剤の機能を阻害したりするのを防止するため、やはりそのpHが2〜9程度であるのが好ましい。顔料分散液のpHを前記範囲内に調整するためには溶媒、顔料、および分散剤等の種類や量、あるいは組み合わせ等を適宜選択すればよい。
〈ラジカル重合禁止剤〉
ラジカル重合禁止剤としては、ラジカルを捕捉することで、ポリ塩化ビニル樹脂中に含まれる未反応のモノマーのラジカル重合反応を禁止する機能を有する種々の化合物が、いずれも使用可能である。
ただし、非水性インクジェットインクの吐出適性を阻害せず、しかも重合禁止効果の効率に優れたラジカル重合禁止剤が好ましい。
重合禁止効果の効率とは、未反応のモノマーのラジカル重合反応を禁止する効果を一定のレベルで発現させるために要するラジカル重合禁止剤の含有割合のことである。前記含有割合が小さいほど、重合禁止効果の効率に優れているといえる。
できるだけ少量を含有させるだけでモノマーのラジカル重合反応を効率よく禁止して、ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化を抑制できるラジカル重合禁止剤が好ましい。
特に有機溶媒として、先に説明したように非プロトン性極性有機溶媒ほど溶解性が強くない第1および第2の2種の有機溶媒の混合溶媒、または第1〜第3の3種の有機溶媒の混合溶媒を使用する場合は、前記重合禁止効果の効率に優れ、できるだけ少量の添加で高い重合禁止効果が得られるラジカル重合禁止剤を選択して使用するのが望ましい。
これにより、ラジカル重合禁止剤を含有させることによる、前記混合溶媒の含有割合の減少を極力少なくして、ポリ塩化ビニル樹脂の良好な溶解を維持することができる。
これらの条件を満足するラジカル重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、および縮合芳香族環のキノン類等の1種または2種以上が挙げられる。
このうちハイドロキノン類としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチロールハイドロキノン、および2−tert−ブチルハイドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。
カテコール類としては、例えばカテコール、4−メチルカテコール、および4−tert−ブチルカテコール等の1種または2種以上が挙げられる。
ヒンダードアミン類としては、重合禁止効果を有する任意のヒンダードアミン類が挙げられ、中でも分子中にテトラメチルピペリジニル基を有するヒンダードアミンの1種または2種以上が好ましい。
フェノール類としては、例えばフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸アルキルエステル、およびヒンダードフェノール類等の1種または2種以上が挙げられる。
フェノチアジン類としては、例えばフェノチアジン等が挙げられる。
さらに縮合芳香族環のキノン類としては、例えばナフトキノン等が挙げられる。
これらの中でも、特に重合禁止効果の効率に優れたヒンダードアミン類、および/またはヒンダードフェノール類が、ラジカル重合禁止剤として好適に使用される。
ヒンダードアミン類としては、特に4,4′−[(1,10−ジオキソ-1,10−デカンジイル)ビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリニルオキシ〔別名:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ−4−イル)セバケート、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガスタブ(IRGASTAB、登録商標)UV10またはその同等品〕等が好ましい。
またヒンダードフェノール類としては、例えばα,α′,α″−1,2,3−プロパントリイルトリス[ω−[(1−オキソ−2−プロペン−1−イル)オキシ]−ポリ[オキシ(メチル−1,2−エタンジイル)]に、有効成分として2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジン−1−オンを混合した混合物〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガスタブUV22、前者の割合が76〜90質量%、後者の有効成分の割合が24〜10質量%の混合物〕等が好ましい。
なお重合禁止効果の効率は、ラジカル重合禁止剤の種類だけでなく、前記ラジカル重合禁止剤と組み合わせる他の成分、特に顔料の種類によっても大きく変動する。その理由は明らかではないが、顔料中に含まれる発色基等の構造が影響しているものと考えられる。
すなわち、ラジカル重合反応を禁止するメカニズムは、ラジカル重合禁止剤の種類によって異なっており、その異なるメカニズムに対して好影響を及ぼすか悪影響を及ぼすかが、顔料の種類ごとに、つまり発色基等の構造ごとに異なっていると考えられる。
そのため、使用する顔料の種類に応じて、当該顔料と組み合わせた際に重合禁止効果の効率が最も高くなるラジカル重合禁止剤を、最適な範囲で含有させるのが好ましい。
例えば、ポリ塩化ビニルシート等の表面にフルカラーの画像を形成するために組み合わせて用いられるシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色のインクにおいては、下記の顔料とラジカル重合禁止剤の組み合わせが考えられる。
〈シアンインク〉
顔料として、例えばC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34等のフタロシアニン顔料を用いるシアンの非水性インクジェットインクにおいては、ラジカル重合禁止剤としてヒンダードアミン類を用いるのが好ましい。
またヒンダードアミン類としては、前記イルガスタブUV10もしくはその同等品を用いるのが好ましい。
前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.2質量%以上、特に0.5質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に1.5質量%以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、ヒンダートアミン類による、ラジカル重合反応を禁止して、ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化を防止する効果が十分に得られないおそれがある。
一方、前記範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、過剰のヒンダードアミン類が顔料の発色を阻害して、ポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷される画像や文字の色相を変化させるおそれがある。
また、前記ヒンダードアミン類の多くは常温で褐色のパウダー状を呈する。
そのため、前記ヒンダードアミン類を、前記範囲を超えて多量に含有させると非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、前記非水性インクジェットインクを、インクジェットプリンタのノズルを通して液滴として良好に吐出できないおそれもある。
さらに過剰のヒンダードアミン類が析出して印刷の定着性を低下させたり、画質を低下させたりするおそれもある。
〈マゼンタインク〉
顔料として、例えばC.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン顔料を用いるマゼンタの非水性インクジェットインクにおいては、ラジカル重合禁止剤としてヒンダードフェノール類を用いるのが好ましい。
またヒンダードフェノール類としては、前記イルガスタブUV22を用いるのが好ましい。
前記ヒンダードフェノール類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、特に0.1質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に1質量%以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、ヒンダートフェノール類による、ラジカル重合反応を禁止して、ポリ塩化ビニル樹脂のゲル化を防止する効果が十分に得られないおそれがある。
一方、前記範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、過剰のヒンダードフェノール類が顔料の発色を阻害して、ポリ塩化ビニルシート等の表面に印刷される画像や文字の色相を変化させるおそれがある。
また、前記ヒンダードフェノール類の多くは常温で黄色の粘稠な液状を呈する。
そのため、前記ヒンダードフェノール類を、前記範囲を超えて多量に含有させると非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、前記非水性インクジェットインクを、インクジェットプリンタのノズルを通して液滴として良好に吐出できないおそれもある。
さらに過剰のヒンダードフェノール類が析出して印刷の定着性を低下させたり、画質を低下させたりするおそれもある。
〈イエローインク〉
顔料として、例えばC.I.ピグメントイエロー150等のキレートアゾ顔料を用いるイエローの非水性インクジェットインクにおいては、ラジカル重合禁止剤としてヒンダードアミン類を用いるのが好ましい。
またヒンダードアミン類としては、前記イルガスタブUV10もしくはその同等品を用いるのが好ましい。
前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、特に0.1質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に0.5質量%以下であるのが好ましい。
ヒンダードアミン類の含有割合が前記範囲内であるの好ましい理由は、シアンの非水性インクジェットインクの場合と同様である。
〈ブラックインク〉
顔料としてカーボンブラックを用いるブラックの非水性インクジェットインクにおいては、ラジカル重合禁止剤としてヒンダードアミン類を用いるのが好ましい。
またヒンダードアミン類としては、前記イルガスタブUV10もしくはその同等品を用いるのが好ましい。
前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、特に0.1質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に0.5質量%以下であるのが好ましい。
ヒンダードアミン類の含有割合が前記範囲内であるの好ましい理由は、シアンの非水性インクジェットインクの場合と同様である。
〈金属配位化合物〉
本発明の非水性インクジェットインクには、金属配位化合物としてベンゾトリアゾール類を含有させる
記ベンゾトリアゾール類は、金属配位化合物としての機能に優れている上、塩基性を呈しないためラジカル重合反応を促進するおそれもない。
前記ベンゾトリアゾール類の具体例としては、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等が挙げられる。かかる化合物は水溶性の固体であって、純水に溶解した5%水溶液の状態で測定したpHが7.5である。
前記ベンゾトリアゾール類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.3質量%以上であるのが好ましく、5質量%以下、特に3質量%以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、前記ベンゾトリアゾール類を含有させることによる、有機溶媒に対する共析被膜の耐性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。
一方、含有割合が前記範囲を超える場合には、非水性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、前記非水性インクジェットインクを、インクジェットプリンタのノズルを通して液滴として良好に吐出できないおそれがある。
また過剰のベンゾトリアゾール類が析出して印刷の定着性を低下させたり、画質を低下させたりするおそれもある。
〈その他〉
非水性インクジェットインクには、前記各成分に加えてさらに、ポリ塩化ビニル樹脂の脱塩酸反応によって生じる塩素を捕捉するためのエポキシ化物や、あるいは高分子分散剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防かび剤、殺生剤当の種々の添加剤を、必要に応じて任意の割合で含有させてもよい。
《インクセット》
本発明は、インクジェットプリンタに使用して、ポリ塩化ビニルシート等の表面に、例えばフルカラー画像等を形成するために使用する、少なくともシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色の非水性インクジェットインクを含むインクセットであって、前記各色のうち少なくとも1色の非水性インクジェットインクは、前記本発明の非水性インクジェットインクであることを特徴とする。
これにより、前記非水性インクジェットインク中に含まれる、懸濁重合法または乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂が、例えばアルミニウムラミネート材等からなる袋体内に真空充てんして保存した際等に、短期間でゲル化して吐出不良や目詰まり等を生じるのを防止することができる。
前記ゲル化は、特にフタロシアニン顔料を含むシアンの非水性インクジェットインクにおいて最も生じやすく、キレートアゾ顔料を含むイエローの非水性インクジェットインクにおいて最も生じにくい。その理由は明らかではないが、やはり顔料の構造が影響しているものと考えられる。
したがってインクセットは、少なくともシアンが、前記本発明の非水性インクジェットインクであればよい。すなわちシアンの非水性インクジェットインクに、ラジカル重合禁止剤を含有させるのがよい。
しかし、その他の色の非水性インクジェットインクにおいてもゲル化を確実に防止して、ポリ塩化ビニルシート等の表面に、画質や色再現性に優れた画像、特にフルカラー画像を形成することを考慮すると、前記4色の全てにラジカル重合禁止剤を含有させて、本発明の非水性インクジェットインクとするのが好ましい。
またインクセットには、前記4色に加えて、さらにライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、グレー等の淡色系の非水性インクジェットインクを組み合わせてもよい。
その場合、前記淡色系の非水性インクジェットインクは、いずれも顔料やポリ塩化ビニル樹脂の量が少ないため、イエローよりもさらにゲル化を生じにくいため、ラジカル重合禁止剤を含有させなくても良い。ただしゲル化を確実に防止することを考慮すると、これら淡色系の非水性インクジェットインクに、ラジカル重合禁止剤を含有させても良い。
以下の実施例、比較例の非水性インクジェットインクの調製、測定、および試験を、特記した以外は温度25±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈シアンインク〉
(実施例1)
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E、pH=7.6)18質量部をかく拌しながら、バインダ樹脂としての、乳化重合法によって合成された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔ワッカーケミカル社製のVINNOL(登録商標)E15/45、重量平均分子量Mw:45000〜55000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%〕4質量部を加えて分散させた後、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E、pH=4.0)25.3質量部を加えて前記共重合体を膨潤させた。
次にかく拌を続けながらジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM、pH=6.8)22質量部を加えて前記共重合体を溶解させた後、ヒンダードアミン類(ラジカル重合禁止剤)としての4,4′−[(1,10−ジオキソ-1,10−デカンジイル)ビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリニルオキシ〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製のイルガスタブ(登録商標)UV10の同等品〕0.2質量部、および金属配位化合物としての1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(5%の水溶液の状態で測定したpH=7.5)0.5質量部を加えて樹脂溶液を調製した。
また、フタロシアニン顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:3をジエチレングリコールジエチルエーテルに分散させた顔料分散液(顔料濃度15質量%、pH=8.6)を調製し、前記顔料分散液30質量部を、先に調製した樹脂溶液70質量部に加えて均一相を形成するようにさらにかく拌して非水性インクジェットインクを製造した。
(実施例2)
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を0.5質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテの量を25質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
(実施例3)
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を1質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテの量を24.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
(実施例4)
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を1.5質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテの量を24質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
(実施例5)
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を2質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテの量を23.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
(比較例1)
樹脂溶液にヒンダードアミン類を加えず、かつジエチレングリコールジエチルエーテの量を25.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
〈保存性試験〉
実施例1〜5、比較例1で製造した非水性インクジェトインク約50gを、アルミニウムラミネート材からなる袋体(縦約8cm×横約9cm)内に注入して真空充てん、すなわち袋体内を脱気したのちヒートシールした。
次いで前記袋体を、ラジカル重合反応開始の引き金の1つになっていると考えられる保管時の熱履歴を再現するため90±1℃の環境下に静置し、4日後に開封してラジカル重合反応の有無を非水性インクジェットインクの粘度変化から求めた。すなわち袋体に充てんする前と袋体から取り出した後に、それぞれ非水性インクジェットインクの粘度を25±1℃、20rpmの条件で測定してその差を求め、下記の基準でラジカル重合反応の有無を評価した。
◎:粘度の差は1.0mPa・s未満であり、ラジカル重合反応は全く進行していないと判断した。
○:粘度の差は1.0mPa・s以上、1.5mPa・s未満であり、ラジカル重合反応は殆ど進行していないと判断した。
△:粘度の差は1.5mPa・s以上、2.0mPa・s未満であり、僅かにラジカル重合反応が進行したものの実用上差し支えないと判断した。
×:粘度の差が2.0mPa・s以上、またはポリ塩化ビニル系樹脂のゲル化が生じており、ラジカル重合反応が進行したと判断した。
〈色相差評価〉
実施例、比較例で製造した非水性インクジェトインク約0.5mlをポリ塩化ビニルシートの表面に滴下し、ワイヤーバー(直径0.1mm)を用いて前記ポリ塩化ビニルシートの表面に塗布した後、ヘアドライヤーを用いて約20秒間、温風を吹き付けたのち25±1℃で10分間静置して引き見本を作製した。
次いで前記引き見本の色相を、ハンディ型分光色差計〔日本電色工業(株)製のNF999〕を用いて測定した。測定は1つの引き見本上の3箇所で行ってその平均値を求めた。そして重合禁止剤を含有していない比較例1の非水性インクジェットインクを用いて形成した引き見本との色相差ΔEを求め、下記の基準で色相のずれの大小を評価した。
○:ΔEは1.0未満であり、色相のずれはないと判断した。
△:ΔEは1.0以上、1.5未満であり、色相が僅かにずれたものの実用上差し支えないと判断した。
×:ΔEは1.5以上であり、色相のずれが生じたと判断した。
以上の結果を表1に示す。
Figure 0005748995
表1の実施例1〜5、比較例1の結果より、顔料としてフタロシアニン顔料を用いたシアンの非水性インクジェットインクに、ラジカル重合禁止剤としてのヒンダードアミン類を含有させることで、未反応のモノマーのラジカル重合反応と、それに伴うポリ塩化ビニル系樹脂のゲル化とを防止できることが判った。
また実施例1〜5の結果より、前記シアンの非水性インクジェットインクにおいては、前記ヒンダードアミン類の含有割合が、前記非水性インクジェットインクの総量の0.2質量%以上、特に0.5質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に1.5質量%以下であるのが好ましいことが判った。
(実施例6)
バインダ樹脂として、乳化重合法によって合成された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に代えて、懸濁重合法によって合成された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔日信化学工業(株)製のSOLBIN(登録商標)CL、数平均分子量Mn:25000、酢酸ビニル含量:14質量%〕を使用した。
そして樹脂溶液に、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体4質量部を加えるとともに、ヒンダードアミン類の量を1質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテの量を24.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
(比較例2)
樹脂溶液にヒンダードアミン類を加えず、かつジエチレングリコールジエチルエーテの量を25.5質量部としたこと以外は実施例6と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例7
ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに代えて、N−メチル−2−ピロリドン(pH=11.7)を使用した。
そして樹脂溶液に、前記N−メチル−2−ピロリドン22質量部を加えるとともに、ヒンダードアミン類の量を1質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を24.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
前記実施例6、7、比較例2で製造した非水性インクジェットインクについて、先の保存性試験、および色相差評価を実施した。結果を表2に示す。
Figure 0005748995
先の表1の実施例1〜5、比較例1、および表2の実施例6、比較例2の結果より、ポリ塩化ビニル系樹脂としては懸濁重合法によって合成されたものと乳化重合法によって合成されたもののいずれを用いても同等の結果が得られることが判った
さらに、実施例1〜5と実施例7の結果より、有機溶媒としてはいずれもそのpHが2〜9であるアルキレングリコール誘導体を組み合わせて用いるのが好ましいこと、特にジエチレングリコールエチルメチルエーテルと、前記好ましい第2の溶媒であるジエチレングリコールジエチルエーテルと、前記好ましい第3の溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルとを併用するのが好ましいことが判った。
実施例8
ラジカル重合禁止剤として、ヒンダードアミン類に代えて、ヒンダードフェノール類としての、α,α′,α″−1,2,3−プロパントリイルトリス[ω−[(1−オキソ−2−プロペン−1−イル)オキシ]−ポリ[オキシ(メチル−1,2−エタンジイル)]に、有効成分として2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジン−1−オンを混合した混合物〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガスタブUV22、前者の割合が76〜90質量%、後者の有効成分の割合が24〜10質量%の混合物〕を使用した。
そして樹脂溶液に、前記ヒンダードフェノール類1質量部を加えるとともに、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を24.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例9
樹脂溶液におけるヒンダードフェノール類の量を1.5質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を24質量部としたこと以外は実施例8と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例10
樹脂溶液におけるヒンダードフェノール類の量を2質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を23.5質量部としたこと以外は実施例8と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例11
ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに代えてN−メチル−2−ピロリドン(pH=11.7を使用した。
そして樹脂溶液に、前記N−メチル−2−ピロリドン22質量部を加えるとともに、ヒンダードフェノール類の量を1.5質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を24質量部としたこと以外は実施例8と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
前記実施例8〜11で製造した非水性インクジェットインクについて、先の保存性試験、および色相差評価を実施した。結果を表3に示す。
Figure 0005748995
先の表1の実施例1〜5、および表3の実施例8〜11の結果より、シアンの非水性インクジェットインクでは、ラジカル重合禁止剤としてヒンダードフェノール類も使用可能であるが、未反応のモノマーのラジカル重合反応を禁止してポリ塩化ビニル系樹脂のゲル化を防止する効果の点では、ヒンダードアミン類の方がより効果的であることが判った。
また実施例8〜10実施例11の結果より、ヒンダードフェノール類を用いた非水性インクジェットインクにおいても、やはり有機溶媒としてはいずれもそのpHが2〜9であるアルキレングリコール誘導体を組み合わせて用いるのが好ましいこと、特にジエチレングリコールエチルメチルエーテルと、前記好ましい第2の溶媒であるジエチレングリコールジエチルエーテルと、前記好ましい第3の溶媒であるジエチレングリコールモノエチルエーテルとを併用するのが好ましいことが判った。
〈マゼンタインク〉
実施例12
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E、pH=7.6)18質量部をかく拌しながら、バインダ樹脂としての、乳化重合法によって合成された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔ワッカーケミカル社製のVINNOL(登録商標)E15/45、重量平均分子量Mw:45000〜55000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%〕4質量部を加えて分散させた後、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E、pH=4.0)25.45質量部を加えて前記共重合体を膨潤させた。
次にかく拌を続けながらジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM、pH=6.8)22質量部を加えて前記共重合体を溶解させた後、ヒンダードフェノール類(ラジカル重合禁止剤)としての、α,α′,α″−1,2,3−プロパントリイルトリス[ω−[(1−オキソ−2−プロペン−1−イル)オキシ]−ポリ[オキシ(メチル−1,2−エタンジイル)]に、有効成分として2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジン−1−オンを混合した混合物〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガスタブUV22、前記エステル76〜90質量%とメチルキノン24〜10質量%との混合物〕0.05質量部、および金属配位化合物としての1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(5%の水溶液の状態で測定したpH=7.5)0.5質量部を加えて樹脂溶液を調製した。
また、キナクリドン顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をジエチレングリコールジエチルエーテルに分散させた顔料分散液(顔料濃度15質量%、pH=7.6)を調製し、前記顔料分散液30質量部を、先に調製した樹脂溶液70質量部に加えて均一相を形成するようにさらにかく拌して非水性インクジェットインクを製造した。
実施例13
樹脂溶液におけるヒンダードフェノール類の量を0.1質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25.4質量部としたこと以外は実施例12と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例14
樹脂溶液におけるヒンダードフェノール類の量を0.5質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25質量部としたこと以外は実施例12と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例15
樹脂溶液におけるヒンダードフェノール類の量を1質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を24.5質量部としたこと以外は実施例12と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例16
樹脂溶液におけるヒンダードフェノール類の量を2質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を23.5質量部としたこと以外は実施例12と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例17
ラジカル重合禁止剤として、ヒンダードフェノール類に代えて、ヒンダードアミン類としての4,4′−[(1,10−ジオキソ-1,10−デカンジイル)ビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリジニルオキシ〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製のイルガスタブ(登録商標)UV10の同等品〕を使用した。
そして樹脂溶液に、前記ヒンダードアミン類1質量部を加えるとともに、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を24.5質量部としたこと以外は実施例12と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
前記実施例12〜17で製造した非水性インクジェットインクについて、先の保存性試験、および色相差評価を実施した。なお色相差評価には、別に調製した、重合禁止剤を含有していないマゼンタの非水性インクジェットインクを用いて形成した引き見本を基準として用いた。結果を表4に示す。
Figure 0005748995
表4の実施例12〜16実施例17の結果より、顔料としてキナクリドン顔料を用いたマゼンタの非水性インクジェットインクでは、ラジカル重合禁止剤としてヒンダードアミン類も使用可能であるが、未反応のモノマーのラジカル重合反応を禁止してポリ塩化ビニル系樹脂のゲル化を防止する効果の点では、ヒンダードフェノール類の方がより効果的であることが判った。
また実施例12〜16の結果より、前記マゼンタの非水性インクジェットインクにおいては、前記ヒンダードフェノール類の含有割合が、前記非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、特に0.1質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に1質量%以下であるのが好ましいことが判った。
〈イエローインク〉
実施例18
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E、pH=7.6)18質量部をかく拌しながら、バインダ樹脂としての、乳化重合法によって合成された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔ワッカーケミカル社製のVINNOL(登録商標)E15/45、重量平均分子量Mw:45000〜55000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%〕4質量部を加えて分散させた後、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E、pH=4.0)25.45質量部を加えて前記共重合体を膨潤させた。
次にかく拌を続けながらジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM、pH=6.8)22質量部を加えて前記共重合体を溶解させた後、ヒンダードアミン類(ラジカル重合禁止剤)としての4,4′−[(1,10−ジオキソ-1,10−デカンジイル)ビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリニルオキシ〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製のイルガスタブ(登録商標)UV10の同等品〕0.05質量部、および金属配位化合物としての1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(5%の水溶液の状態で測定したpH=7.5)0.5質量部を加えて樹脂溶液を調製した。
また、キレートアゾ顔料としてのC.I.ピグメントイエロー150をジエチレングリコールジエチルエーテルに分散させた顔料分散液(顔料濃度15質量%、pH=6.5)を調製し、前記顔料分散液30質量部を、先に調製した樹脂溶液70質量部に加えて均一相を形成するようにさらにかく拌して非水性インクジェットインクを製造した。
実施例19
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を0.1質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25.4質量部としたこと以外は実施例18と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例20
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を0.3質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25.2質量部としたこと以外は実施例18と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例21
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を0.5質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25質量部としたこと以外は実施例18と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例22
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を2質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を23.5質量部としたこと以外は実施例18と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
前記実施例18〜22で製造した非水性インクジェットインクについて、先の保存性試験、および色相差評価を実施した。なお色相差評価には、別に調製した、重合禁止剤を含有していないイエローの非水性インクジェットインクを用いて形成した引き見本を基準として用いた。結果を表5に示す。
Figure 0005748995
表5の実施例18〜22の結果より、顔料としてキレートアゾ顔料を用いたイエローの非水性インクジェットインクにおいては、ラジカル重合禁止剤としてのヒンダードアミン類の含有割合が、前記非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、特に0.1質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に0.5質量%以下であるのが好ましいことが判った。
〈ブラックインク〉
実施例23
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2EG−1E、pH=7.6)18質量部をかく拌しながら、バインダ樹脂としての、乳化重合法によって合成された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〔ワッカーケミカル社製のVINNOL(登録商標)E15/45、重量平均分子量Mw:45000〜55000、酢酸ビニル含量:15.0±1.0質量%〕4質量部を加えて分散させた後、ジエチレングリコールジエチルエーテル(2EG−2E、pH=4.0)25.45質量部を加えて前記共重合体を膨潤させた。
次にかく拌を続けながらジエチレングリコールエチルメチルエーテル(2EG−EM、pH=6.8)22質量部を加えて前記共重合体を溶解させた後、ヒンダードアミン類(ラジカル重合禁止剤)としての4,4′−[(1,10−ジオキソ-1,10−デカンジイル)ビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリニルオキシ〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製のイルガスタブ(登録商標)UV10の同等品〕0.05質量部、および金属配位化合物としての1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(5%の水溶液の状態で測定したpH=7.5)0.5質量部を加えて樹脂溶液を調製した。
またカーボンブラックをジエチレングリコールジエチルエーテルに分散させた顔料分散液(顔料濃度15質量%、pH=5.8)を調製し、前記顔料分散液30質量部を、先に調製した樹脂溶液70質量部に加えて均一相を形成するようにさらにかく拌して非水性インクジェットインクを製造した。
実施例24
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を0.1質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25.4質量部としたこと以外は実施例23と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例25
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を0.3質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25.2質量部としたこと以外は実施例23と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例26
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を0.5質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を25質量部としたこと以外は実施例23と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
実施例27
樹脂溶液におけるヒンダードアミン類の量を2質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテルの量を23.5質量部としたこと以外は実施例23と同様にして非水性インクジェットインクを製造した。
前記実施例23〜27で製造した非水性インクジェットインクについて、先の保存性試験、および色相差評価を実施した。なお色相差評価には、別に調製した、重合禁止剤を含有していないブラックの非水性インクジェットインクを用いて形成した引き見本を基準として用いた。結果を表6に示す。
Figure 0005748995
表6の実施例23〜27の結果より、顔料としてカーボンブラックを用いたブラックの非水性インクジェットインクにおいては、ラジカル重合禁止剤としてのヒンダードアミン類の含有割合が、前記非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、特に0.1質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に0.5質量%以下であるのが好ましいことが判った。

Claims (10)

  1. 懸濁重合法または乳化重合法によって合成されたポリ塩化ビニル樹脂、前記ポリ塩化ビニル樹脂を溶解させるための有機溶媒、顔料、ベンゾトリアゾール類、およびラジカル重合禁止剤を含むことを特徴とする非水性インクジェットインク。
  2. 前記ラジカル重合禁止剤は、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、および縮合芳香族環のキノン類からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の非水性インクジェットインク。
  3. 前記ポリ塩化ビニル樹脂は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であり、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は1質量%以上、36質量%以下である請求項1または2に記載の非水性インクジェットインク。
  4. 前記顔料はフタロシアニン顔料、ラジカル重合禁止剤はヒンダードアミン類であり、前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.2質量%以上、2質量%以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の非水性インクジェットインク。
  5. 前記顔料はキナクリドン顔料、ラジカル重合禁止剤はヒンダードフェノール類であり、前記ヒンダードフェノール類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、2質量%以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の非水性インクジェットインク。
  6. 前記顔料はキレートアゾ顔料、ラジカル重合禁止剤はヒンダードアミン類であり、前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、2質量%以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の非水性インクジェットインク。
  7. 前記顔料はカーボンブラック、ラジカル重合禁止剤はヒンダードアミン類であり、前記ヒンダードアミン類の含有割合は、非水性インクジェットインクの総量の0.05質量%以上、2質量%以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の非水性インクジェットインク。
  8. 前記有機溶媒は、
    ジエチレングリコールエチルメチルエーテルと、
    ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種との混合溶媒である請求項1ないしのいずれか1項に記載の非水性インクジェットインク。
  9. 前記混合溶媒は、さらにエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびトリプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種をも含んでいる請求項に記載の非水性インクジェットインク。
  10. 少なくともシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色の非水性インクジェットインクを含むインクセットであって、前記各色のうち少なくとも1色の非水性インクジェットインクは、請求項1ないしのいずれか1項に記載の非水性インクジェットインクであることを特徴とするインクセット。
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