JP5290196B2 - シリカマスターバッチ - Google Patents

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Description

本願は、2007年11月16日に日本国に出願された特願2007−297689号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本発明は、湿式シリカ及びオルガノポリシロキサンからなるシリカマスターバッチ、並びに、当該マスターバッチを含むシリコーンゴム組成物に関する。
シリコーンゴム組成物には、従来より、補強又は増量を目的とした充填剤が添加されており、当該充填剤としては、シリカが汎用されている。
シリカを含むシリコーンゴム組成物は、通常、バッチ式製造方法によりオルガノポリシロキサン及びシリカ粉末を加熱条件下で混合することにより製造されてきた。しかし、このバッチ式製造方法は、原料の仕込み、混合、加熱及び冷却工程に時間がかかり生産効率が低いという問題点があった。
一方、需要が多く、大量生産可能な場合は2軸押出機等でシリコーンゴム組成物を連続生産することも行われていたが、このような連続式製造方法は、ユーザーからの様々な要請に基づくシリコーンゴム組成物の多品種少量生産には向いていない。
そこで、少量のオルガノポリシロキサンにシリカを高濃度に分散させたシリカマスターバッチを予め製造し、当該マスターバッチをオルガノポリシロキサンに配合し、必要に応じてその他の添加剤を更に配合した上で、バッチ式製造を行い、多品種少量生産に対応する技術が提案されている。
特開昭50−25650号公報には、ジオルガノポリシロキサンを細分化した後にシリカと混合して自由流動性の粒状混合物を製造する方法が記載されている。
特開平2−102007号公報には、ジオルガノポリシロキサン、無機質充填剤、加工助剤を高速の機械的剪断方法によって均一に分散し、細分化して、流動性のある粉粒体を製造する方法が記載されている。
特開平5−262983号公報には、高コンシステンシージオルガノポリシロキサン、強化フィラーからなる易流動性粉末状のオルガノシロキサン組成物が記載されている。
特開昭50−25650号公報 特開平2−102007号公報 特開平5−262983号公報
しかし、この度、これらのシリカマスターバッチを用いて得られるシリコーンゴム組成物は、通常のバッチ式製造方法に基づいてオルガノポリシロキサン及び湿式シリカを加熱混合して得られるシリコーンゴム組成物と比較して可塑度が高く、また、硬さが高く、反発弾性率が低いシリコーンゴム硬化物を与えるという問題点が存在することが見出された。
すなわち、従来のシリカマスターバッチを使用して得られるシリコーンゴム組成物は、通常のバッチ式製造方法により得られるシリコーンゴム組成物とは物理特性が異なるために、後者がこれまで使用されてきた用途にそのままでは使用できないおそれがある。
本発明の目的は、湿式シリカをオルガノポリシロキサンに良好に分散可能であり、短時間に湿式シリカ配合シリコーンゴム組成物を製造でき、しかも、通常のバッチ式製造方法で得られるシリコーンゴム組成物と同等の物理特性を達成することのできるシリカマスターバッチ、及び、当該シリカマスターバッチを含むシリコーンゴム組成物を提供することをその目的とする。
本発明の目的は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部、及び、(B)湿式シリカ60〜200質量部からなるシリカマスターバッチであり、下記条件:
(1)目開き420μmの平織り金網のふるい残分が前記シリカマスターバッチの65〜85質量%
(2)前記ふるい残分に含まれるオルガノポリシロキサンの90質量%以上がトルエンに不溶
の少なくとも1つを満たすことを特徴とするシリカマスターバッチによって達成される。
本発明のシリカマスターバッチは、前記条件(1)及び(2)の全てを満たすことがより好ましい。
本発明のシリカマスターバッチは、(B)湿式シリカの3〜20質量%の(C)シリカ表面処理剤を更に含むことが好ましい。また、本発明のシリカマスターバッチは、(B)湿式シリカの0.001〜3質量%の(D)シリカ処理助触媒を更に含むことが好ましい。
(A)オルガノポリシロキサンとしては、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンが好ましい。
(C)シリカ表面処理剤としては、分子鎖両末端水酸基封鎖低分子量ジオルガノポリシロキサンが好ましい。
本発明のシリカマスターバッチはオルガノポリシロキサンと配合されて本発明のシリコーンゴム組成物とすることができる。
本発明のシリカマスターバッチは、オルガノポリシロキサンへの湿式シリカの分散が良好である。したがって、オルガノポリシロキサン中に湿式シリカを迅速且つ均一に分散させることができ、湿式シリカ配合シリコーンゴム組成物の生産効率を改善することができる。そして、本発明のシリカマスターバッチは、様々な種類のシリコーンゴム組成物の多品種少量生産に好適に使用することができる。
本発明のシリカマスターバッチを使用して得られる本発明のシリコーンゴム組成物は、従来のシリカマスターバッチを使用して得られるものと比較して可塑度が低く、また、その硬化物は、硬さが低く、反発弾性率が高い。すなわち、本発明のシリコーンゴム組成物は、通常のバッチ式製造方法に基づいて、ニーダーミキサー等の混練手段を用いてオルガノポリシロキサン及び湿式シリカを加熱混合して得られるシリコーンゴム組成物と同等の物理的特性を備えている。
本発明のシリカマスターバッチの主剤を構成する(A)オルガノポリシロキサンの種類は、特に限定されるものではないが、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基等が例示され、アルケニル基以外の有機基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等で例示されるアルキル基;フェニル基、トリル基等で例示されるアリール基;β−フェニルエチル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフロロプロピル基、3−クロロプロピル基等で例示されるハロゲン置換アルキル基等が挙げられる。また、分子鎖末端などに少量の水酸基を有していてもよい。
(A)オルガノポリシロキサンの分子構造は直鎖状、分岐状、環状、網目状のいずれであってもよく、特に限定されるものではないが、直鎖状のものが好ましい。また、(A)オルガノポリシロキサンは単一種類のものであってもよく、又は、2種類以上のオルガノポリシロキサンを併用してもよい。(A)オルガノポリシロキサンの粘度は特に限定されるものではないが、25℃での粘度が1000mm2/s以上であることが好ましく、半固体状の生ゴム状であることがさらに好ましい。(A)オルガノポリシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は100,000〜1,000,000であることが好ましく、500,000〜1,000,000であることがより好ましい。本発明のシリカマスターバッチのオルガノポリシロキサンへの分散性が優れる傾向にあるからである。
本発明のシリカマスターバッチに配合される(B)湿式シリカは、本発明のシリコーンゴム組成物を架橋して得られるシリコーンゴム硬化物に優れた機械的強度を付与するための補強剤である。湿式シリカの種類は特に限定されるものではないが、粒子径が50μm以下であるものが好ましく、また、比表面積が50m/g〜400m/gであるものが好ましい。より好ましい比表面積は100〜400m/gである。2種類以上の湿式シリカを併用してもよい。
本発明のシリカマスターバッチにおける(B)湿式シリカの配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して60〜200質量部であり、好ましくは80〜200質量部、より好ましくは85〜150質量部である。
本発明のシリカマスターバッチは、(C)シリカ表面処理剤を含むことができる。シリカ表面処理剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、分子鎖両末端水酸基封鎖低分子量ジオルガノポリシロキサンなどのケイ素原子結合水酸基含有低分子量ジオルガノポリシロキサン;分子鎖両末端アルコキシ基封鎖低分子量ジオルガノポリシロキサンなどのケイ素原子結合アルコキシ基含有低分子量ジオルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合水酸基含有シラン;ケイ素原子結合アルコキシ基含有シラン;ヘキサメチルジシラザンのようなシラザンを使用することが使用できる。特に、分子鎖両末端水酸基封鎖低分子量ジオルガノポリシロキサンなどのケイ素原子結合水酸基含有低分子量ジオルガノポリシロキサンが好ましい。シリカ表面処理剤の粘度は1〜300mm2/sであることが好ましく、5〜100mm2/sであることが好ましい。2種類以上のシリカ表面処理剤を併用してもよい。
本発明のシリカマスターバッチにおける(C)シリカ表面処理剤の配合量は(B)湿式シリカ成分の3〜20質量%が好ましい。3質量%未満であると(B)湿式シリカのオルガノポリシロキサンへの分散性が劣り、20質量%を超えるとオルガノポリシロキサンに本発明のシリカマスターバッチを分散させて得られたシリコーンゴム組成物の硬化物の特性が悪化するおそれがある。
本発明のシリカマスターバッチは、更に(D)シリカ表面処理助触媒を含むことができる。シリカ表面処理助触媒の種類は特に限定されるものではなく、(C)シリカ表面処理剤による(B)湿式シリカの表面処理を促進する公知の物質を使用することができる。(D)シリカ表面処理助触媒としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸、 エイコサペンタエン酸などの脂肪酸;前記脂肪酸のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属などの金属塩;塩化テトラエチルアンモニウム、テトラエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミン化合物またはその塩;ジメチルホルムアミドなどのアミド化合物;アンモニア、炭酸アンモニウム;これらの2種類以上の混合物が例示される。中でも炭素原子数10以上の脂肪酸および脂肪酸金属塩が好ましい。
本発明のシリカマスターバッチにおける(D)シリカ表面処理助触媒の配合量は、(B)湿式シリカ成分の0.001〜3質量%が好ましい。0.001質量%未満であると(C)シリカ表面処理剤による(B)湿式シリカの表面処理を促進する効果が劣り、3質量%を超えるとオルガノポリシロキサンに本発明のシリカマスターバッチを分散させて得られたシリコーンゴム組成物の硬化物の特性が悪化するおそれがある。
本発明のシリカマスターバッチは、
(1)目開き420μmの平織り金網のふるい残分がシリカマスターバッチの65〜85質量%
(2)前記ふるい残分に含まれるオルガノポリシロキサンの90質量%以上がトルエンに不溶
の少なくとも1つの条件を満たすものである。
(1)目開き420μmの平織り金網のふるい残分がシリカマスターバッチの65〜85質量%、とは、本発明のシリカマスターバッチを、目開き420μm且つ直径200mmの、円形の平織り金網上でふるいにかけた後に、当該金網上に残存するシリカマスターバッチが、ふるいにかける前のシリカマスターバッチの65〜85質量%を占めることを意味する。前記ふるい残分は65〜85質量%であることが好ましく、70〜85質量%であることがより好ましい。前記ふるい残分が65質量%未満であると、本発明のシリカマスターバッチを分散させて得られたシリコーンゴム組成物及びその硬化物の特性が劣り、85質量%を超えると、シリコーンゴム組成物への分散性が悪化する。
(2)前記ふるい残分に含まれるオルガノポリシロキサンの90質量%以上がトルエンに不溶、とは、本発明のシリカマスターバッチを、目開き420μm且つ直径200mmの、円形の平織り金網上でふるいにかけた後に、当該金網上に残存するシリカマスターバッチ(ふるい残分)に含まれる(A)オルガノポリシロキサンの90質量%以上がトルエンに不溶であることを意味する。前記ふるい残分に含まれる(A)オルガノポリシロキサンのトルエン不溶分が90質量%未満の場合は、本発明のシリカマスターバッチを分散させて得られたシリコーンゴム組成物及びその硬化物の特性が劣る。
前記ふるい残分に含まれる(A)オルガノポリシロキサンのトルエン不溶分は、下記手順(I)〜(III)を順に実行することにより決定することができる。
(I)前記ふるい残分中のオルガノポリシロキサン量を、熱重量測定装置を用いて測定する(W0)。
(II)前記ふるい残分を5倍量のトルエンに分散し、10分間振とう、2000rpm/30分遠心分離後沈殿物を回収する操作を3回繰り返し、沈殿物を回収して乾燥し、沈殿物中のオルガノポリシロキサン量を、熱重量測定装置を用いて測定する(W1)。
(III)式:W1/W0×100により、前記ふるい残分中の(A)オルガノポリシロキサンのトルエン不溶分(%)を決定する。
本発明のシリカマスターバッチは、前記条件(1)、(2)の両方を満たすことがより好ましい。
本発明のシリカマスターバッチの製造方法は、特に限定されるものではなく、(A)オルガノポリシロキサン、及び、(B)湿式シリカを任意の公知の混合手段によって混合する方法を採用することができるが、(A)オルガノポリシロキサンに(B)湿式シリカの一部を添加して加熱混合(第1の混合工程)し、得られた混合物に(B)湿式シリカの残部を添加して更に加熱混合(第2の混合工程)する方法が好ましい。第1の混合工程及び第2の混合工程における加熱温度は異なってもよいが、同一であることが好ましい。例えば、(A)オルガノポリシロキサン、及び、(B)湿式シリカの40〜80質量%、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは60〜80質量%、並びに、必要に応じて(C)シリカ表面処理剤、及び、(D)シリカ表面処理助触媒を、ニーダーミキサーのような低速(攪拌翼回転速度100rpm以下)混合機、プラネタリーミキサー、2軸押出機等に投入して、70〜250℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃の加熱条件下で混合し、次いで残余の(B)湿式シリカを配合し、さらに、70〜250℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃の加熱条件下で、混合を継続する方法によって、本発明のシリカマスターバッチを得ることができる。なお、(B)湿式シリカは、(C)シリカ表面処理剤、又は、(C)シリカ表面処理剤及び(D)シリカ表面処理助触媒と共に(A)オルガノポリシロキサンに配合されてもよく、或いは、(B)湿式シリカは、(C)シリカ表面処理剤、又は、(C)シリカ表面処理剤及び(D)シリカ表面処理助触媒によって予め処理されていてもよい。
本発明のシリカマスターバッチは、(A)オルガノポリシロキサン中に(B)湿式シリカが高濃度に配合されている。本発明のシリカマスターバッチの物理的形態は特に限定されるものではないが、取り扱いの容易性の点で、粉粒状であることが好ましい。
本発明のシリカマスターバッチは、オルガノポリシロキサンと均一に混合されることにより本発明のシリコーンゴム組成物となる。混合手段は特に限定されるものではなく、2本ロール、ニーダーミキサー、プラネタリーミキサー、2軸押出機等の公知の混合手段を使用することができる。前記混合時に加熱を行う必要はないが、必要に応じて加熱下で混合してもよい。
本発明のシリコーンゴム組成物のマトリックスを構成するオルガノポリシロキサンの種類は、特に限定されるものではないが、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基等が例示され、アルケニル基以外の有機基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等で例示されるアルキル基;フェニル基、トリル基等で例示されるアリール基;β−フェニルエチル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフロロプロピル基、3−クロロプロピル基等で例示されるハロゲン置換アルキル基等が挙げられる。また、分子鎖末端などに少量の水酸基を有していてもよい。
オルガノポリシロキサンの分子構造は直鎖状、分岐状、環状、網目状のいずれであってもよく、特に限定されるものではないが、直鎖状のものが好ましい。また、オルガノポリシロキサンは単一種類のものであってもよく、又は、2種類以上のオルガノポリシロキサンを併用してもよい。オルガノポリシロキサンの粘度は特に限定されるものではなく、粘度の低い液状のものから粘度の高い生ゴム状のものまで使用できるが、硬化してゴム状弾性体になるためには25℃での粘度が100mPa・s以上であることが好ましく、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000〜1,000,000の範囲の生ゴム状であることがより好ましい。
本発明のシリコーンゴム組成物のマトリックスを構成するオルガノポリシロキサンは、相溶性の点から、本発明のシリカマスターバッチの主剤である(A)オルガノポリシロキサンと同じ種類のケイ素原子結合有機基を有することが好ましい。
本発明のシリコーンゴム組成物は、硬化剤を含むことができる。硬化剤は、本発明のシリコーンゴム組成物を必要に応じて加熱して架橋又は硬化させるための成分であり、有機過酸化物、又は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応触媒との組み合わせ、或いは、これらの混合物が好ましい。
有機過酸化物としては、公知の化合物を用いることができる。特に、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキシンが好ましい。2種類以上の有機過酸化物を併用してもよい。有機過酸化物の配合量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。本発明のシリコーンゴム組成物に有機過酸化物を硬化剤として配合すると、当該組成物を加熱硬化性とすることができる。
本発明のシリコーンゴム組成物にマトリックスとして含まれるオルガノポリシロキサンが分子中に2個以上のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサンである場合、硬化剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応触媒との組合せを使用することができる。前記組合せは付加反応硬化剤であるので、本発明のシリコーンゴム組成物に前記組合せを配合すると、当該組成物を室温硬化性とすることも加熱硬化性とすることもできる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、前記ヒドロシリル化反応触媒存在下、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が、ジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合アルケニル基と付加反応することでシリコーンゴム組成物を架橋し、硬化させる架橋剤である。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するものが好ましい。ケイ素原子結合水素原子以外の有機基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等で例示されるアルキル基;フェニル基、トリル基等で例示されるアリール基;3,3,3−トリフロロルロピル基、3−クロロプロピル基等で例示される置換アルキル基等が挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては直鎖状、分岐を含む直鎖状、環状、網目状のいずれでもよく、2種類以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用してもよい。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量は特に限定されるものではないが、25℃における動粘度が3〜10,000mm/sの範囲であることが好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、本発明のシリコーンゴム組成物中のケイ素原子結合水素原子のモル数とケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が(0.5:1)〜(20:1)となるような量が好ましく、(1:1)〜(3:1)となる量がより好ましい。これは、本発明のシリコーンゴム組成物中のケイ素原子結合アルケニル基のモル数1に対してケイ素原子結合水素原子のモル数が0.5よい小さいとシリコーンゴム組成物が充分に硬化することができないおそれがあり、一方、20より大きいと硬化物が発泡するおそれがあるからである。
ヒドロシリル化反応触媒は公知のものを使用することができ、例えば、塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との錯化合物、白金黒、白金を固体表面に担持させたもの等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒が例示される。中でも白金系触媒であることが好ましい。2種類以上のヒドロシリル化反応触媒を併用してもよい。ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、オルガノポリシロキサンの100万質量部に対して触媒金属元素換算で0.1〜500質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。0.1質量部未満では硬化が充分に進行しないおそれがあり、500質量部を超えると経済的でないおそれがある。
本発明のシリコーンゴム組成物には、この他に、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、乾式シリカ等の湿式シリカ以外の補強性充填剤;けいそう土、石英粉末、炭酸カルシウム、クレイ、ケイ酸ジルコニウム等の増量性充填剤;酸化チタン、カーボンブラック、弁柄等の顔料;金属粉末、金属ドーピング金属酸化物粉末、アセチレンブラック等の導電性付与剤:酸化セリウム等の耐熱性付与剤:アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボアミド等の有機発泡剤:ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸及びそれらの金属塩などの金型離型剤;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の受酸剤;等の架橋性官能基を含まないジオルガノポリシロキサン(組成物中0.5〜10質量%配合することが好ましい);3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−オクチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3・5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等のヒドロシリル化反応硬化遅延剤が例示される。なお、乾式シリカ等の湿式シリカ以外の補強性充填剤は、当該補強性充填剤を含む別のシリカマスターバッチに由来するものであってもよい。
本発明のシリカマスターバッチを使用することにより、湿式シリカを良好にオルガノポリシロキサンに分散させることができる。すなわち、本発明のシリカマスターバッチは、オルガノポリシロキサンをマトリックスとするシリコーンゴム組成物の原料又は添加剤として好適に使用することができる。この他に、本発明のシリカマスターバッチは、他の有機ゴム組成物の添加剤、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂への添加剤としても有用である。
本発明のシリコーンゴム組成物は、従来のシリカマスターバッチを使用して得られるものと比較して可塑度が低いので、混練時間等を短縮して、製造効率を改善することができる。また、本発明のシリコーンゴム組成物は湿式シリカを含むので、その硬化物は強度に優れる一方、従来のシリカマスターバッチを使用して得られるシリコーンゴム組成物の硬化物に比較して硬さが低く、反発弾性率が高い。すなわち、本発明のシリコーンゴム組成物の硬化物は、通常のバッチ式製造方法で得られる湿式シリカ配合シリコーンゴム組成物の硬化物と同等の硬さ、反発特性を備えている。
[実施例1]
分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(Vi基含有量0.07質量%、重量平均分子量およそ700,000)100質量部、湿式シリカ(ニプシルLP、BET比表面積200m2/g、東ソー・シリカ(株)製)60質量部、分子鎖両末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサン(動粘度40mm2/s)11.7質量部、及び、ステアリン酸カルシウム0.56質量部をニーダーミキサーに投入し、攪拌翼回転速度40rpm、温度175℃30分混練した後、湿式シリカ(ニプシルLP、BET比表面積200m2/g、東ソー・シリカ(株)製)40質量部を投入し、さらに30分混練後、冷却して粉粒状混合物を得た。
[比較例1]
分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(Vi基含有量0.07質量%、重量平均分子量およそ700,000)100質量部、湿式シリカ(ニプシルLP、東ソー・シリカ(株)製)100質量部、分子鎖両末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサン(動粘度40mm2/s)11.7質量部、ステアリン酸カルシウム0.56質量部をヘンシェルミキサーに投入し、攪拌翼回転速度2000rpmで30分間攪拌した。得られた粉粒状混合物をニーダーミキサーに移し、温度175℃で30分混練した後、冷却して粉粒状混合物を得た。
[比較例2]
分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(Vi基含有量0.07質量%、重量平均分子量およそ700,000)100質量部、湿式シリカ(ニプシルLP、東ソー・シリカ(株)製)100質量部、分子鎖両末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサン(動粘度40mm2/s)11.7質量部、ステアリン酸カルシウム0.56質量部をニーダーミキサーに投入し、攪拌翼回転速度40rpm、温度175℃で60分混練した後、冷却して粉粒状混合物を得た。
[比較例3]
分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(Vi基含有量0.07質量%、重量平均分子量およそ700,000)100質量部、湿式シリカ(ニプシルLP、BET比表面積200m2/g、東ソー・シリカ(株)製)60質量部、分子鎖両末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサン(動粘度40mm2/s)25質量部、及び、ステアリン酸カルシウム0.56質量部をニーダーミキサーに投入し、攪拌翼回転速度40rpm、温度175℃30分混練した後、湿式シリカ(ニプシルLP、BET比表面積200m2/g、東ソー・シリカ(株)製)40質量部を投入し、さらに30分混練後、冷却して粉粒状混合物を得た。
実施例1及び比較例1〜3で得られた粉粒状混合物の、目開き420μmの平織り金網ふるい残分、ふるい残分中のトルエン不溶ポリジメチルシロキサンの割合を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005290196
[評価]
実施例1及び比較例1〜3で得られたそれぞれの粉粒状混合物94.2質量部、及び、分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(Vi基含有量0.07質量%、重量平均分子量およそ700,000)55.6質量部を、2本ロールで均一になるまで混練してシリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物に、シリコーンゴム組成物100質量部に対して2,5−ジメチル-2,5-ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン0.3質量部の割合で、2,5−ジメチル-2,5-ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンを2本ロール上で配合し、170℃で10分間プレス加硫後、更に、200℃で4時間オーブン加硫を行い、試験片を得た。得られた試験片を用いて各種の物理特性を評価した。結果を表2に示す。
[参考例]
分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体(Vi基含有量0.07質量%、重量平均分子量およそ700,000)100質量部、湿式シリカ(ニプシルLP、東ソー・シリカ(株)製)44質量部、分子鎖両末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサン(動粘度40mm2/s)5.2質量部、ステアリン酸カルシウム0.25質量部をニーダーミキサーに投入し、攪拌翼回転速度40rpmで均一に混練した後、温度175℃で60分更に混練を行い、その後冷却して塊状のシリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物を2本ロールで更に混練しつつ、シリコーンゴム組成物100質量部に対して2,5−ジメチル-2,5-ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン0.3質量部の割合で2,5−ジメチル-2,5-ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンを2本ロール上で配合し、170℃で10分間プレス加硫を、更に、200℃で4時間オーブン加硫を行い、試験片を得た。得られた試験片を用いて各種の物理特性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005290196
<可塑度>
JIS K6249に準じて測定した。
<密度>
JIS K6268に準じて測定した。
<硬さ(JIS タイプ A)>
JIS K6253に規定されたタイプAデュロメーターを用いて測定した。
<圧縮永久歪み>
JIS K 6262に準じて、180℃、25%圧縮という条件で、22時間後の圧縮永久ひずみを測定した。
<反発弾性率>
JIS K6255に規定されたリュプケ式反発弾性試験装置を用いて、JIS K6255に準じて測定した。
[実施例2]
実施例1で得られた粉粒状混合物を50℃で180日間放置した後の目開き420μmの平織り金網ふるい残分は、78%、ふるい残分中のトルエン不溶ポリジメチルシロキサンの割合は、93%であった。また、実施例1で得られた粉粒状混合物を50℃で180日間放置した粉粒状混合物を上記と同様にしてシリコーンゴム組成物とし、試験片を得た。得られた試験片を用いて各種の物理特性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005290196

Claims (7)

  1. (A)オルガノポリシロキサン100質量部、及び、(B)湿式シリカ60〜200質量部からなるシリカマスターバッチであり、下記条件:
    (1)目開き420μmの平織り金網のふるい残分が前記シリカマスターバッチの70〜85質量%
    (2)前記ふるい残分に含まれるオルガノポリシロキサンの90質量%以上がトルエンに不溶
    の少なくとも1つを満たすことを特徴とするシリカマスターバッチ。
  2. 前記(1)及び(2)の条件の両方を満たすことを特徴とする、請求項1記載のシリカマスターバッチ。
  3. (B)湿式シリカの3〜20質量%の(C)シリカ表面処理剤を更に含むことを特徴とする請求項1又は2記載のシリカマスターバッチ。
  4. (A)オルガノポリシロキサンが1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のシリカマスターバッチ。
  5. (C)シリカ表面処理剤が分子鎖両末端水酸基封鎖低分子量ジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項3又は4記載のシリカマスターバッチ。
  6. (B)湿式シリカの0.001〜3質量%の(D)シリカ処理助触媒を更に配合することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のシリカマスターバッチ。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のシリカマスターバッチを含むシリコーンゴム組成物。
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