JP5288598B2 - 色素増感太陽電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記表側透明基板に隙間を有して対向配置され、内側には導電膜が形成された裏側基板と、
前記表側透明基板と前記裏側基板との間で、前記表側透明基板の内側に配置された色素が担持された酸化チタン及び酸化チタン以外の半導体物質のいずれか一方又は双方からなる光起電層と、
前記光起電層の内側に配置されたポーラスチタン層と、
前記表側透明基板及び前記裏側基板の間にあって、絶縁体又は絶縁体と導体の組み合わせからなって、前記光起電層及び前記ポーラスチタン層を囲む部屋を形成する非導電セパレータと、
前記ポーラスチタン層に電気的に接続され、前記非導電セパレータの外部まで延長形成されたチタン電極と、
前記非導電セパレータ、前記表側透明基板、及び前記裏側基板で囲まれる空間に充填される電解質とを有している。
ここで、該ポーラスチタン層における厚みの下限値は、好ましくは0.5μm、より好ましくは1μmで、上限値は、好ましくは100μm、より好ましくは50μmである。下限値の限定理由は、該ポーラスチタン層の厚みを0.1μm以上とすることで、光起電層の内側に配置する該ポーラスチタン層の電気抵抗値が低下するため、該ポーラスチタン層に連続化した導電性を付与できる。他方、上限値は、該ポーラスチタン層の厚みを200μm以下とすることで、光起電層の内側と裏側基板の導電膜との距離を一定範囲内、例えば、1〜100μm、好ましくは10〜50μmに保つことができ、本願発明の色素増感太陽電池を大型化しても、電気抵抗値の小さい電池を得ることができる。
酸素、及び窒素のガス成分は、通常ポーラスチタン層には、不純物として微少量が含まれる。しかしこれらのガス濃度では上限値を超えない限り、ポーラスチタン層の導電性は確保することができるので、ガス濃度の上限値のみを規定する。酸素濃度の上限値は15%、好ましくは10%、より好ましくは8%で、窒素濃度の上限値は1.5%、好ましくは1%、より好ましくは0.8%である。酸素濃度が上限値を超えるとTiOやTiO2等の酸化物が、窒素濃度が上限値を超えるとTiN0.3等の窒化物がそれぞれ生成し、ポーラスチタン層の電気抵抗値が上昇するため好ましくはない。酸素濃度が15%以下、及び窒素濃度が1.5%以下存在しても、太陽電池へ及ぼす影響は小さいので、ポーラスチタン層の形成、取扱いを酸素が存在する雰囲気、例えば、大気中でも溶射施工を行うことができる。
ここで、シート抵抗は低ければ低いほど、色素増感太陽電池の内部抵抗が減少するので、電池としては有効である。このため、シート抵抗の上限値を10Ω(好ましくは8Ω、より好ましくは5Ω)とすることで、色素増感太陽電池の内部抵抗の増大を抑制することができる。しかし、シート抵抗を一定値以上とすることで、電解質を介して、裏側基板の導電膜とポーラスチタン層が短絡するのを防止して、該導電膜と該ポーラスチタン層を接近させることができるので、シート抵抗の下限値は0.002Ωとする。
R=ρ・L/S=ρ・L/wt ・・・・・(1)
と求まる。ここで、ポーラスチタン層のシート抵抗Rsは、L=wのときの電気抵抗値であるから、
Rs=ρ/t ・・・・・(2)
一方、緻密チタン(バルク状のチタン)の比抵抗値ρは、55×10−8Ω・m程度の値であるため、厚みtが200μmでは、
Rs=55×10−8Ω・m/2×10−4m=0.00275Ω ・・・・・(3)
厚みtが100μmでは、
Rs=55×10−8Ω・m/1×10−4m=0.0055Ω ・・・・・(4)
厚みtが0.1 μmでは、
Rs=55×10−8Ω・m/1×10−7m= 5.5Ω ・・・・・(5)
となる。従って、(3)〜(5)の算定結果から、前記ポーラスチタン層のシート抵抗Rsを0.002〜10Ωと規定することができる。
これにより、電解質が接触しても導電膜の腐食を防止できる。
また、前記ポーラスチタン層の周縁部が前記チタン電極と前記光起電層との間に配置されて該ポーラスチタン層と該チタン電極を電気的に接続することもできる。
ここで、前記チタン電極は、チタン箔を前記ポーラスチタン層の周囲の一部又は全部に貼着したものとすることができる。
あるいは、前記チタン電極は、チタンを真空蒸着して形成してもよい。
チタン電極に対しても、前記ポーラスチタン層のシート抵抗と全く同様に、上記(1)及び(2)式の関係が成立するので、電気抵抗値が低ければ低いほど、色素増感太陽電池の内部抵抗が減少するので好ましい。ここで、電解質を介して、裏側基板の導電膜とチタン電極が短絡するのを防止するため、チタン電極のシート抵抗の下限値を0.002Ωとすることが好ましく、チタン電極の厚みの上限値は200μm程度と見積もることができる。一方、色素増感太陽電池の内部抵抗を減少させる観点からは、チタン電極のシート抵抗値を10Ω以下とすることが好ましく、チタン電極の厚みの下限値は0.1μm程度と見積もることができる。この結果、表側透明基板の内側と裏側基板の導電膜との距離を、一定範囲内、例えば、0.1〜200μmに保つことができる。
更に、前記チタン電極は、前記ポーラスチタン層を延長して形成することもでき、この場合にも、ポーラスチタン層は0.1〜200μmの厚みで形成される。
また、前記チタン電極の代わりにタングステン電極又はニッケル電極を使用することもできる。
ここで、ポーラスタングステン層、タングステン電極は、スパッタリング法を用いて形成する。
ここで、高速フレーム溶射法とは、例えば、特開2005−068457号公報で示す装置を用いて、チタン粒子を加熱して溶融もしくは軟化させながら、これを微粒子状にしてガス、又は圧縮エアーにより加速して、噴射ノズル先端から100mmの距離におけるフレーム温度を800〜2000℃に加熱して光起電層に衝突させ、扁平に潰れたチタン粒子を凝固し堆積させるコーティング方法(皮膜形成方法)である。
また、コールドスプレー法では、ヘリウム、窒素、又は空気等のガスを電気抵抗(ジュール)熱によりチタンの融点又は軟化温度より低い温度に加熱して、先細末広(ラバル)ノズルから超音速流にして噴出させ、その流れの中にチタン粒子を投入して加速させ、固相状態のまま基材に高速で衝突させて皮膜を形成する方法である。ここで、ガスの加熱温度は、先細末広ノズルの先端から5mmの距離で100〜800℃である。
ここで、成膜速度の下限値は、好ましくは50μm/分、より好ましくは80μm/分であり、上限値は、好ましくは250μm/分、より好ましくは200μm/分である。成膜速度を30μm/分以上とすることで、ポーラスチタン層内に連通する孔を形成することができ、成膜速度を300μm/分以下とすることで、ポーラスチタン層内のチタン粒子同士の連結を確実にして電気抵抗の増大を抑制できる。
ポーラスチタン層の酸素濃度が0又は0を超え15%以下で、窒素濃度が0又は0を超え1.5%以下である場合、例えば、特開2005−068457号公報に記載した温度可変型の高速フレーム溶射法を使用すれば、ポーラスチタン層の形成、取扱いを酸素が存在する雰囲気、例えば、大気中で行うことができ、色素増感太陽電池の製造が容易になる。
ポーラスチタン層のシート抵抗が0.002〜10Ωである場合、色素増感太陽電池を大型化しても電池内抵抗の増大を抑制することができる。
ポーラスチタン層が、加熱されたチタン粒子の衝突によって形成される場合、ポーラスチタン層の厚み方向に連通する孔を容易に形成することができる。
導電膜が、白金、導電性高分子、カーボンのいずれか1種又は2種以上からなる場合、電解質による導電膜の腐食を防止して、電解質中の酸化したイオンを還元することができる。
また、チタン電極が、チタン箔をポーラスチタン層の周囲の一部又は全部に貼着したものである場合、色素増感太陽電池を大型化した際にチタン電極の形成を容易に行うことができると共に、ポーラスチタン層との電気的接続も確実に行うことができる。
チタン電極が、チタンを真空蒸着して形成された場合、チタン電極の形成が容易になると共に、ポーラスチタン層との電気的接続を行うことができる。
チタン電極の厚みが0.1〜200μmである場合、チタン電極の抵抗増加を抑制すると共に、表側透明基板の内側と裏側基板の導電膜との距離の増大も抑制でき、発電性能を高めることができる。
チタン電極が、ポーラスチタン層を延長して形成した場合、チタン電極及びポーラスチタン層の形成を同時に行うことができ、製造工程を短縮することができる。
ここで、高速フレーム溶射法による成膜速度を、光起電層の表面積を1000cm2に換算して30〜300μm/分とする場合、シート抵抗が0.002〜10Ωで、色素が溶解した溶液及び電解質が通過可能な孔が形成されたポーラスチタン層を形成することができる。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る色素増感太陽電池の断面図、図2(A)〜(E)は同色素増感太陽電池の製造方法の説明図、図3はポーラスチタン層の形成に使用する低温高速フレーム溶射装置の説明図、図4は本発明の第2の実施の形態に係る色素増感太陽電池の断面図、図5(A)〜(E)は同色素増感太陽電池の製造方法の説明図である。
ここで、白金膜12はヨウ素溶液18に腐食されないため、ヨウ素イオンI−の酸化還元反応を継続して発生させることができる。なお、白金膜12の変わりに、ヨウ素溶液18に腐食されない導電性高分子(例えば、ポリフェニレンビニレン)又はカーボンを用いて導電膜を形成することもできる。
図2(A)に示すように、表側透明基板11の内側に、チタンを真空蒸着して枠形状のチタン電極17(厚みが0.1〜200μm)を形成する。次いで、図2(B)に示すように、枠形状のチタン電極17の内側に露出している表側透明基板11上に酸化チタン層19を、例えば、酸化チタンの高速フレーム溶射で形成する。低温高速フレーム溶射は、例えば、特開2005-068457号公報に開示されている装置及び手法を用いて行うことができ、白灯油等の燃料を、酸素と空気を混合した燃焼支援ガスと共に燃焼室で燃焼して高速フレームを発生させ、燃焼室と直結した噴射ノズル内で霧化した酸化チタン粒子のスラリーと高速フレームを混合し酸化チタン粒子の表層部を部分的に溶融させながら高速フレームの流れで搬送して、高速フレームの流れに対して垂直に配置された表側透明基板11に形成された枠形状のチタン電極17の内側の表側透明基板11上に堆積させる。
シアニン色素、スチリル色素、オキサジン色素、キサンテン色素、クマリン色素、オキサゾール色素、オキサチアゾール色素等を使用できる。
なお、電解質には、ヨウ素溶液をゲル状とすることもできる。
図5(A)に示すように、表側透明基板11の内側に酸化チタン層34を、例えば、酸化チタンの高速フレーム溶射で矩形状に形成する。なお、酸化チタンの高速フレーム溶射は、第1の実施の形態に係る色素増感太陽電池10の場合と同様の方法で行う。そして、図5(B)に示すように、酸化チタン層34の上に、高速フレーム溶射法によりポーラスチタン層32を、酸化チタン層34の裏面側及び周縁部を覆うように、平面視して矩形状に形成する。なお、ポーラスチタン層32の高速フレーム溶射は、第1の実施の形態に係る色素増感太陽電池10の場合と同様の方法で行う。
であった。なお、形成された酸化チタン層中のアナターゼ型結晶構造の残存率は99.9%であった。
であり、ポーラスチタン層の成膜速度は、下地となる酸化チタン層の表面積を1000cm2に換算して50μm/分であった。なお、形成されたポーラスチタン層の酸素濃度は6%であり、窒素濃度は0.7%であった。
作製した色素増感太陽電池を、100mW/cm2のソーラーシミュレータによる照射の下でその発電性能を測定すると、太陽光エネルギー変換効率は7%であった。
例えば、第1の実施の形態でチタン電極をチタンの真空蒸着で形成したが、チタン箔を表側透明基板の内側に貼着することでチタン電極を形成することも、第2の実施の形態で、チタン電極をチタン箔で形成したが、表側透明基板の内側にチタンを真空蒸着することでチタン電極を形成することもできる。
また、ポーラスチタン層を酸化チタン層の外側に延長して形成することにより、ポーラスチタン層の外側領域をチタン電極とすることができる。なお、電解質が液体の場合、電解質がポーラスチタン層を通過して外部に流出できるので、ポーラスチタン層の孔を、例えば、樹脂等の充填材で封止する必要がある。
そして、非導電セパレータを絶縁体であるアイオノマー樹脂で形成したが、絶縁体(例えば、アイオノマー樹脂)と導体(例えば、導電性樹脂)を組み合わせて非導電セパレータを形成することもできる。非導電セパレータを絶縁体と導体を組み合わせて形成する場合、導体がチタン電極と裏側基板の導電膜の両者と同時に接続しないように、導体はチタン電極及び導電膜のいずれか一方とは絶縁体を介して接続するようにする。
また、裏側基板に形成する導電膜を白金で形成したが、導電性高分子又はカーボンで形成することも、白金、導電性高分子、及びカーボンのいずれか2種以上を用いて形成することもできる。
更に、ポーラスチタン層の形成に、コールドスプレー法を用いることもできる。
Claims (16)
- 光が当たる表側透明基板と、
前記表側透明基板に隙間を有して対向配置され、内側には導電膜が形成された裏側基板と、
前記表側透明基板と前記裏側基板との間で、前記表側透明基板の内側に配置された色素が担持された酸化チタン及び酸化チタン以外の半導体物質のいずれか一方又は双方からなる光起電層と、
前記光起電層の内側に配置されたポーラスチタン層と、
前記表側透明基板及び前記裏側基板の間にあって、前記光起電層及び前記ポーラスチタン層を囲む部屋を形成する非導電セパレータと、
前記ポーラスチタン層に電気的に接続され、前記非導電セパレータの外部まで延長形成されたチタン電極と、
前記非導電セパレータ、前記表側透明基板、及び前記裏側基板で囲まれる空間に充填される電解質とを有することを特徴とする色素増感太陽電池。 - 請求項1記載の色素増感太陽電池において、前記ポーラスチタン層の厚みが0.1〜200μmの範囲にあることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1又は2記載の色素増感太陽電池において、前記ポーラスチタン層の酸素濃度が0又は0を超え15%以下で、窒素濃度が0又は0を超え1.5%以下であることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記ポーラスチタン層のシート抵抗が0.002〜10Ωであることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記ポーラスチタン層は、加熱されたチタン粒子の衝突によって形成されることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記導電膜は、白金、導電性高分子、及びカーボンのいずれか1種又は2種以上からなることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記チタン電極は前記表側透明基板の内側に前記光起電層の周縁部を取囲んで形成され、該チタン電極に前記ポーラスチタン層の周縁部が被さって該チタン電極と該ポーラスチタン層は電気的に接続されていることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記ポーラスチタン層の周縁部が前記チタン電極と前記光起電層との間に配置されて該ポーラスチタン層と該チタン電極が電気的に接続されていることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項8記載の色素増感太陽電池において、前記チタン電極は、チタン箔を前記ポーラスチタン層の周囲の一部又は全部に貼着したものであることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記チタン電極は、チタンを真空蒸着して形成したことを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記チタン電極の厚みは0.1〜200μmであることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記チタン電極は、前記ポーラスチタン層が延長して形成されていることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記ポーラスチタン層の代わりにポーラスタングステン層又はポーラスニッケル層が使用されていることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池において、前記チタン電極の代わりにタングステン電極又はニッケル電極が使用されていることを特徴とする色素増感太陽電池。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池の製造方法において、前記ポーラスチタン層の形成には、高速フレーム溶射法又はコールドスプレー法を用いて形成することを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。
- 請求項15記載の色素増感太陽電池の製造方法において、前記高速フレーム溶射法による成膜速度は、前記光起電層の表面積を1000cm2に換算して30〜300μm/分であることを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。
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