以下、本発明を実施するための実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光体を備えたものであり、該感光体の同一層内に、少なくとも、バインダー樹脂、電荷発生材料、電子輸送材料、および、正孔輸送材料を含有している。
感光層の具体的な構成は、電荷発生材料、電荷輸送材料、および、正孔輸送材料とが同一層内に存在し、バインダー樹脂中に分散又は溶解された型(単層型、または、分散型)となっている。以下、同一層内に存在し、且つ、感光層を構成している、電荷輸送材料、電荷発生材料、正孔輸送材料、および、バインダー樹脂について説明する。
(電子輸送材料)
本発明に用いることのできる電子輸送材料としては、少なくとも下記式(1)〜(3)で表されるいずれかの化合物を有する。なお、式(1)〜(3)で表される化合物は、二種以上を混合して使用してもよい。
式(1)〜(3)中、R1はHammett則に基づく置換規定数σpが0.450以上である置換基を表し、Yは置換基を有していてもよい炭素数4以上8以下の脂環式構造を表し、Zは置換基を有していてもよい分子量400以下の芳香族性を有する環式構造を表し、M1は分子量300以下の連結基を表す。
式(1)〜(3)中のR1について説明する。Hammett則は、芳香族化合物における置換基が芳香環の電子状態に与える効果を説明するために用いられる経験則である。置換ベンゼンの置換規定数σpの値は、水素原子の場合を0とし、電子吸引性が高くなるに従い、正の大きな値となり、電子供与性が高くなるに従い負の大きな値となる。よって、この置換規定数σpを用いることにより、置換基を有している芳香族化合物の電子状態を、電子密度を予測・表現することが可能となる。代表的な置換基についてのHammett則における置換ベンゼンの置換規定数σpの値を下に示す(日本化学会編「化学便覧 基礎編II 改訂4版」(平成5年9月30日、丸善(株)発行))。
式(1)〜(3)中のR1のσpは通常0.450以上であるが、電子輸送材料としての電子輸送性能、電子写真感光体としての特性を考慮すると、0.500以上が好ましく、より好ましくは、0.550以上である。σpが0.450以上の置換基の例としては、アルキルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等のエステル基;ケトン基;ニトリル基;ニトロ基;フルオロアルキル基;アルコキシスルホニル基、アラルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基のスルホニル基等が挙げられる。中でも、電子輸送能、電子写真感光体特性を考慮すると、R1としては、好ましくはニトリル基、ニトロ基、フルオロアルキル基、スルホニル基であり、より好ましくはニトリル基、フルオロアルキル基、スルホニル基であり、更に好ましくはニトリル基である。
式(1)〜(3)中のR1が複数の炭素原子から構成される場合、R1を構成する炭素数は通常10以下である。炭素数が多すぎると置換基の嵩高さが増し、電子輸送能が低下する可能性があることから、R1を構成する炭素数は、好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下であり、更に好ましくは4以下である。
上記式(1)〜(3)中、Yは置換基を有していても良い炭素数4以上8以下の脂環式構造を表す。脂環式構造の炭素数が少なすぎると炭素−炭素間の結合角が小さくなり、環状構造の歪みが大きくなり化合物の安定性が低下する可能性があることから、脂環式構造の炭素数は好ましくは5以上である。また脂環式構造を構成する炭素数が多すぎると分子体積が大きくなり、感光層中での電子輸送材料同士の分子間相互作用が低下し、電子輸送能が低下する可能性があることから、炭素数は好ましくは7以下であり、より好ましくは6以下である。化合物の安定性、電子輸送能の両面を考慮すると、脂環式構造の炭素数は5であることが特に好ましい。
上記式(1)〜(3)中、Zは置換基を有していてもよい分子量400以下の芳香族性を有する環式構造を表す。Zの分子量は通常400以下であるが、大きすぎると溶解性が低下し、塗布液安定性に悪影響を与える可能性があることから、好ましくは350以下であり、より好ましくは300以下であり、更に好ましくは250以下であり、特に好ましくは200以下である。芳香族性を有する環式構造としては、ベンゼノイド芳香族環、非ベンゼノイド芳香族環、複素芳香環等が挙げられ、そのうちベンゼノイド芳香族環又は複素芳香環が好ましい。芳香族性を有する環式構造が有する環の数は5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。ベンゼノイド芳香族環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン等が挙げられ、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、より好ましくはベンゼンである。また、非ベンゼノイド芳香族環としては、アズレン、フェロセン等が挙げられる。また、複素芳香環としては、ピリジン、チオフェン、ピロール、キノリン、インドール等が挙げられ、ピリジン又はキノリンが好ましい。
上記Y、Zは置換基を有していても構わない。置換基としては、原子数20以下で構成される置換基が好ましく、原子数15以下で構成される置換基がより好ましい。具体的には、アルキル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ホルミル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等の置換オキシカルボニル基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;メトキシスルホニル、エトキシスルホニル等の置換スルホニル基;アセチル基、メシル基等のアシル基;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アゾ基等が挙げられる。
上記式(2)〜(3)中のM1は分子量300以下の連結基を表す。M1の分子量が大きすぎると単位数量当たりの電子輸送ユニットの量が減少し、電子写真感光体の特性が低下する可能性があることから、M1の分子量は好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下、特に好ましくは100以下である。
連結基であるM1の例としては、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基から構成される連結基が挙げられる。中でも、置換基を有していても良いアルキレン基、置換基を有していても良いアリーレン基、酸素原子、カルボニル基から構成される連結基が好ましく、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していても良いアリーレン基、カルボニル基から構成される連結基がより好ましい。
式(1)〜(3)で示される電子輸送材料は、より好ましくは下記式(4)〜(6)で表される。
式(4)〜(6)中、R2はHammett則に基づく置換規定数σpが0.450以上である置換基を表し、R3〜R5は同一でも異なっていてもよい有機基を表し、M2は分子量300以下の連結基を表し、
Xは、以下の(X1)〜(X3)のいずれかを表し、
(R
6、R
7は同一でも異なっていてもよいHammett則に基づく置換規定数σ
pが0.450以上である置換基を表す)nは0〜4の整数を表す。
R2は、上記した式(1)〜(3)におけるR1と同様である。
上記式(4)〜(6)中、R3からR5は同一でも異なっていてもよい有機基である。有機基は通常炭素数30以下であり、より好ましくは20以下であり、更に好ましくは15以下であり、特に好ましくは10以下である。
R3は芳香族環に直接結合しており、芳香環の電子状態、電子輸送材料の電子輸送能に影響を与えることから、Hammett則に基づく置換規定数σpが0.200以上であること好ましく、0.450以上であることがより好ましい。また、電子輸送材料としての電子輸送性能、電子写真感光体としての特性を考慮すると、0.500以上であることがさらに好ましく、0.550以上であることが特に好ましい。σpが0.450以上の置換基の例としては、上記した式(1)〜(3)のR1の例と同様ものが挙げられる。
式(4)〜(6)中、nは0〜4の整数を表す。nの数が多すぎると原料の汎用性が低下することからnは3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1以下が更に好ましい。
式(4)〜(6)中のR4、R5の有機基の好適な例としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基が挙げられる。置換基を有していても良いアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。嵩高い置換基を有すると隣接する分子との相互作用が低下し、電子輸送能が低下する恐れがあるため、これら置換基の中でも、直鎖状のアルキル基がより好ましい。また、直鎖状のアルキル基の中でも、炭素数10以下のものが好ましく、炭素数7以下のものがより好ましく、炭素数5以下のものがさらに好ましい。
置換基を有していてもよい芳香族基としては、ベンゼノイド芳香族基、非ベンゼノイド芳香族基、複素芳香環基等が挙げられる。中でも、ベンゼノイド芳香族基又は複素芳香環基が好ましい。芳香族基が有する環の数は5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。ベンゼノイド芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン等が挙げられ、中でも、ベンゼン又はナフタレンが好ましい。また、非ベンゼノイド芳香族基としては、アズレン、フェロセン等が挙げられる。また、複素芳香環基としては、ピリジン、チオフェン、ピロール、キノリン、インドール等が挙げられ、中でも、ピリジン又はキノリンが好ましい。縮合多環基としては、縮合している環の数が5以下のものが好ましく、3以下のものがより好ましい。具体的には、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、テトラリン、カルバゾール、アントラキノン等が挙げられ、ナフタレン又はアントラキノンが好ましい。
置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良い芳香族基の置換基の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基、ビフェニル基、フルオレニル基等のアリール基;チオフェニル基、ピロリル基、フラニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾピロリル基、ベンフラニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フェナントロリル基等の複素環アリール基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基等に代表されるアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;ジフェニルメチル基等のジアリールアルキル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基等の置換アミノ基等が挙げられる。これら置換基の中でも、アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基が好ましく、アルキル基、アリール基、アリル基がより好ましい。
前記式(4)〜(6)中、Xとしては、試薬の汎用性等を考慮すると、上記(X1)または(X2)が好ましく、さらに電子輸送能を考慮すると、上記(X2)がより好ましい。
式(X2)中のR6、R7は、上記した式(1)〜(3)におけるR1と同様である。
式(4)〜(5)中のM2は、上記した式(2)〜(3)中のM1と同様である。
上記した式(1)〜(3)、好ましくは式(4)〜(6)で表される電子輸送材料の具体例を以下に挙げる。なお、本発明に係る電子輸送材料は、以下に例示する化合物に限定されるものではない。
電子輸送材料として、式(1)〜(6)で表される化合物以外の他の電子輸送材料を併用することも可能である。併用される電子輸送材料としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質が挙げられる。
(電荷発生材料)
電荷発生材料としては、例えば、セレニウムおよびその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用できる。中でも、特に、有機顔料が好ましく、フタロシアニン顔料、アゾ顔料がより好ましい。
フタロシアニン顔料としては、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等が配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。中でも、フタロシアニン環の中心に金属を含有する含金属フタロシアニンが好ましく、含金属フタロシアニンの中でもA型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等がより好ましく、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニンが更に好ましい。
特に、オキシチタニウムフタロシアニンとしては、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
また、該オキシチタニウムフタロシアニンとしては、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
アゾ顔料としては、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。
電荷発生材料として使用される顔料の種類は、使用される露光波長により決められる場合がある。露光波長が380nm〜500nm程度の短波長領域の場合には、上記アゾ顔料が好適に用いられる。一方、630nm〜780nm程度の近赤外光を使用する場合には、その領域にも高感度を有するフタロシアニン顔料と、一部のアゾ顔料が好適に使用される。一方、環境特性、例えば湿度依存性が小さいことが求められる場合は、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に明瞭な回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンは湿度依存性が大きいため、上記アゾ顔料が好適に使用される。
用いる電荷発生材料の粒子径は十分小さいことが好ましく、具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
単層型感光層中の電荷発生材料の量は、単層型感光層全体を基準(100質量%)として、下限が通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、上限が通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下である。感光層中に分散される電荷発生材料の量は少なすぎると十分な感度が得られない可能性があり、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害の虞がある。
(正孔輸送材料)
正孔輸送材料としては特に限定されず、任意の公知の正孔輸送材料を用いることが可能である。公知の正孔輸送材料の例としては、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、およびこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。なお、正孔輸送材料は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用しても良い。
正孔輸送材料として好ましい構造を下記式(7)に示す。
式(7)において、Ar1〜Ar6は置換基を有しても良い芳香族残基、または、置換基を有しても良い脂肪族残基を表し、X’は有機残基を表し、R1‘〜R4’は、有機基を表し、n1ないしn6は、0ないし2の整数を表す。
式(7)において、Ar1〜Ar6は置換基を有しても良い芳香族残基、または、置換基を有しても良い脂肪族残基を表す。具体的な芳香族残基には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族炭化水素残基、チオフェン、ピロール、カルバゾール、イミダゾール等の芳香族複素環残基等が挙げられる。これら芳香族残基の炭素数としては、5〜20が好ましく、上限が16以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。下限は、電気特性の観点から、6以上がより好ましい。芳香族残基としては、芳香族炭化水素残基が好ましく、中でも、ベンゼン残基が特に好ましい。
また、具体的な脂肪族残基としては、炭素数1〜20の脂肪族残基が好ましく、炭素数16以下の脂肪族残基がより好ましく、炭素数10以下の脂肪族残基がさらに好ましい。また、飽和脂肪族残基の場合は、炭素数6以下が特に好ましく、不飽和脂肪族残基の場合は、炭素数2以上が特に好ましい。飽和脂肪族残基としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、イソブタン等の分岐、直鎖アルキル残基が挙げられる。また、不飽和脂肪族残基としては、エチレン、ブチレン等のアルケン類残基が挙げられる。
また、これら芳香族残基または脂肪族残基が有する置換基としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基が挙げられる。また、これら置換基は、置換基同士が結合して環を形成しても良い。
Ar1〜Ar6の芳香族残基または脂肪族残基に、上記の置換基を導入することにより、分子内電荷を調節し、電荷移動度を増大させる効果がある。しかし一方で、嵩が大きくなりすぎると、分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げる。よって、置換基の炭素数は、下限が好ましくは1以上であり、上限が好ましくは6以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは2以下である。
また、Ar1〜Ar6の芳香族残基または脂肪族残基が置換基を有する場合、複数の置換基を有するのは、結晶析出をさけるので、好ましい。しかし、置換基が多すぎると分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げる。このため、Ar1〜Ar6が芳香族残基である場合、置換基の数は一つの芳香族残基につき、2個以下であることが好ましい。そして、感光層中における安定性を向上させ、電気特性を向上させるため、置換基は立体的に嵩高くないものが好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基であることが好ましい。
特に、Ar1〜Ar4がベンゼン残基である場合は、Ar1〜Ar4が置換基を有することは好ましく、この場合好ましい置換基はアルキル基であり、中でもエチル基、メチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。また、Ar5〜Ar6が、ベンゼン残基である場合、Ar5〜Ar6の好ましい置換基はメチル基、エチル基、メトキシ基であり、より好ましい置換基はメチル基、メトキシ基である。
また、X’は、有機残基であり、例えば、置換基を有しても良い、芳香族残基、飽和脂肪族残基、複素環残基、エーテル構造を有する有機残基、ジビニル構造を有する有機残基等が挙げられる。中でも、炭素数1以上15以下の有機残基であることが好ましく、芳香族残基、飽和脂肪族残基、エーテル構造、または、ジビニル構造を有する炭素数1以上15以下の有機残基が好ましく、芳香族残基、飽和脂肪族残基、または、エーテル構造を有する炭素数1以上15以下の有機残基がより好ましい。芳香族残基の場合、その炭素数は6以上14以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。また、飽和脂肪族残基の場合、その炭素数は1以上10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。ジビニル構造を有する有機残基の場合、その炭素数は6以上14以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。また、エーテル構造を有する有機残基の場合、その炭素数は1以上10以下であることが好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
有機残基X’は、置換基を有していても良い。置換基としては、特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基が挙げられる。
また、X’の置換基は、置換基同士が結合して環を形成しても良い。また、X’の置換基の炭素数は、下限が好ましくは1以上であり、上限は好ましくは10以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは3以下である。より具体的には、置換基はメチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基等が好ましい。
また、X’が置換基を有する場合、複数の置換基を有するのは、結晶析出をさけるので、好ましい。しかし、置換基の数が多すぎると分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げてしまう。よって、X’の置換基は、一つのX’につき2個以下であることが好ましい。
n1〜n4は、0〜2の整数を表す。n1は好ましくは1であり、n2は好ましくは、0または1である。
式(7)中のR1'〜R4'は、有機基である。該有機基の炭素数は、通常30以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは15以下であり、特に好ましくは13以下である。R1'〜R4'として好ましい有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、または、下記構造で表される有機基が挙げられる。
R1’’〜R15’’は同一でも、それぞれ異なっていても構わない。R1’’〜R15’’は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等であることが好ましく、メチル基、フェニル基であることがより好ましい。
n5またはn6は、0〜2の整数を表す。n5が0の場合は直接結合を表し、n6が0の場合はn5は0が好ましい。
n5およびn6がともに1の場合、X’はアルキリデン基、アリーレン基、またはエーテル構造を有する有機残基であることが好ましい。アルキリデン基としては、フェニルメチリデン、2−メチルプロピリデン、2−メチルブチリデン、シクロヘキシリデン等が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン等が好ましい。また、エーテル構造を有する有機残基としては、−O−(CH2)n7−O−等が好ましく、n7は1であることが好ましい。
n5およびn6がともに0である場合、Ar5は、ベンゼン残基、フルオレン残基であることが好ましい。ベンゼン残基である場合、アルキル基、アルコキシ基を置換基として有することが好ましく、メチル基、メトキシ基を置換基として有することがより好ましい。また、置換基の置換位置は、窒素原子のパラ位であることが好ましい。
n6が2の場合は、X’は、ベンゼン残基であることが好ましい。
n1〜n6の具体的な組合せの例を、以下の表2にまとめる。
一般式(7)の好ましい構造を以下に示す。
上記一般式(7−1)〜(7−17)において、Qは同一でも、それぞれ異なっていてもよく、具体的には、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基であることが好ましく、メチル基、フェニル基であることがより好ましい。n8〜n10は、0〜2の整数である。
一般式(7)の好ましい具体例を以下に、C−1〜C−27として示す。
これらの正孔輸送材料のうち、モノスチルベン系のC−12〜C−17は露光後の電位が高くなる傾向が有る。よって、正孔輸送材料としては、ジスチルベン系のC−18、C−20、あるいはブタジエン系のC−19、C−21,C−22を用いることが好ましい。また、ベンジジン系のC−1〜C−5は、単独で用いた場合、塗布液あるいは感光層中で結晶が析出する恐れがあるため、2種以上を混合して用いることが好ましい。
正孔輸送材料の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、感光層中のバインダー樹脂100質量部に対して、下限が通常30質量部以上、好ましくは40質量部以上であり、上限が通常200質量部以下、好ましくは150質量部以下である。正孔輸送材料の量が少なすぎると電気特性が悪化する可能性があり、多すぎると塗布膜が脆くなり耐摩耗性が悪化する可能性がある。
(バインダー樹脂)
本発明における単層型感光層は、電荷発生材料、電荷輸送材料、正孔輸送材料、および、バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を、導電性支持体上に、塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これら樹脂は珪素試薬等で修飾されていてもよい。
特に、本発明においては、バインダー樹脂は、界面重合で得られた一種類以上のポリマーを含有していることが好ましい。界面重合とは、互いに混ざり合わない2つ以上の溶媒(多くは、有機溶媒−水系)の界面で進行される重縮合反応を利用する重合法である。例えば、ジカルボン酸塩化物を有機溶媒に、グリコール成分をアルカリ水等に溶かして、常温で両液を混合させて、2相にわけ、その界面で、重縮合反応を進ませて、ポリマーを生成させる。他の2成分の例としては、ホスゲンとグリコール水溶液等が挙げられる。また、ポリカーボネートオリゴマーを界面重合で縮合する場合のように、2成分をそれぞれ、2相に分けるのではなく、界面を重合の場として、利用する場合もある。
界面重合の反応溶媒としては、有機相と、水相の二層を使用するのが好ましく、有機相としてはメチレンクロライド、水相としてはアルカリ性水溶液が好ましい。
界面重合の反応時には、触媒を使用することは好ましく、使用する触媒の添加量は、ジオール成分に対して0.005mol%〜0.1mol%程度、好ましくは0.03mol%〜0.08mol%である。0.1mol%を超えると、重縮合後の洗浄工程で触媒の抽出除去に多大の労力を要し好ましくない。
界面重合の反応温度は、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは10℃〜50℃の範囲である。また反応時間は反応温度によっても左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。反応温度が高すぎると、副反応の制御ができず、一方、低すぎると、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大して、その分コストアップとなり好ましくない。
また、有機相中の濃度は、得られる組成物が可溶な範囲であればよく、具体的には、10質量%〜40質量%程度である。
また、重縮合によって得られる有機相中の生成樹脂の濃度は、有機相全体を基準(100質量%)として、5質量%〜30質量%となるように溶媒の量が調整されるのが好ましい。しかる後、新たに水およびアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、さらに重縮合条件を整えるために好ましくは縮合触媒を添加して界面重縮合法に従い、所期の重縮合を完結させる。重縮合時の有機相と水相の割合は容積比で有機相:水相=1:0.2〜1程度が好ましい。
バインダー樹脂としては、上記界面重合により得られる、ポリカーボネート樹脂、および/または、ポリエステル樹脂(特に、ポリアリレート樹脂が好ましい。)を含有するものであることが好ましい。
該ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂は、下記式(8)で表される芳香族ジオール成分由来の単量体単位を含むものであることが好ましい。
式(8)中Lは、下記(L1)〜(L5)
(式(L1)中、R
5’およびR
6’は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を表す。)
又は、単結合を表し、Y1〜Y8は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を表す。
式(8)中Lは、感光層の表面性の面から、(L1)、(L2)または単結合であることが好ましく、より好ましくは(L1)または、単結合である。
式(8)中、R5’およびR6’は同一でも異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を表す。これら構造の中でも水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基が好ましい。R5’、R6’がアルキル基である場合、アルキル基は、直鎖アルキル基でも分岐を有するアルキル基でも、シクロアルキル基等の環状アルキル基でもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基が更に好ましい。R5’、R6’がアルキル基である場合、炭素数は通常1〜20の範囲であるが、8以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。R5’、R6’がアルキル基である場合の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基等が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。炭素数が多くなりすぎると、本発明により得られる効果が減少する可能性があるからである。また、R5’、R6’は互いに結合してシクロヘキシリデンのような環構造を形成することが可能であるが、環構造を形成すると感光層の表面滑り性が悪化する傾向があるため、環構造を形成しない方が好ましい。
R5’およびR6’の置換基を有していても良いアリール基としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられ、これらの構造の中でも塗布液安定性の面からフェニル基がより好ましい。置換基を有していてもよいアリール基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。また、これら置換基は、置換基同士が結合して環を形成しても良い。また、これらの置換基は、好ましくは炭素原子数1以上であって、好ましくは炭素原子数10以下、より好ましくは炭素原子数6以下、特には炭素原子数3以下である。より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基等が好ましい。
式(8)中、Y1〜Y8は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を示す。これら構造の中でも電子写真感光体の特性の面から水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基が好ましい。Y1〜Y8がアルキル基である場合、アルキル基は鎖状アルキル基でもシクロアルキル基でもよく、また、直鎖アルキル基でも分岐を有するアルキル基でもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基が特に好ましい。Y1〜Y8におけるアルキル基の炭素数は特に限定はないが、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、2以下が特に好ましい。Y1〜Y8におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基等が挙げられる。炭素数が多くなりすぎると、感光層の耐摩耗性が低下する恐れがあることから、Y1〜Y8がアルキル基である場合、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
Y1〜Y8の置換基を有していても良いアリール基としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられるが、これらの構造の中でも塗布液安定性の面からフェニル基がより好ましい。アリール基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。また、これら置換基は、置換基同士が結合して環を形成しても良い。また、これらの置換基の炭素数は、下限が好ましくは1以上であり、上限が好ましくは10以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは3以下である。該置換基として、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基等が好ましい。
Y1〜Y8のうち、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基の占める割合が大きくなると、バインダー樹脂の塗布溶媒への溶解性の低下等が起きる可能性があることから、Y1〜Y8のうち少なくとも2つは水素原子であることが好ましく、4つ以上が水素原子であることがより好ましく、6つ以上が水素原子であることがさらに好ましい。
上記した式(8)で示される芳香族ジオール成分由来の単量体単位を含むポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂の中でも、下記構造式を有する芳香族ジオール成分由来の単量体単位を含むポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が感度、残留電位の点から好ましい。中でも、移動度の面から、下記構造式を有する芳香族ジオール成分由来の単量体単位を含むポリカーボネート樹脂がより好ましい。
また、本願のポリアリレート樹脂に使用するジカルボン酸成分としては、以下の構造のものを用いることが好ましい。
また、上記テレフタル酸とイソフタル酸を併用する際は、テレフタル酸とイソフタル酸の合計量を基準(100モル%)として、テレフタル酸の比率が40モル%以上であることが好ましく、テレフタル酸の比率が50モル%以上であることがより好ましい。また、特に以下構造のジカルボン酸成分を用いることが感光体の耐久性の観点から好ましい。
感光層は、添加剤を含有していても良い。これらの添加剤は成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するために用いられるもので、例えば、可塑剤、残留電位を抑制するための残留電位抑制剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤(例えば、シリコ−ンオイル、フッ素系オイル等)、界面活性剤等が挙げられる。なお、添加剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組合せおよび比率で併用しても良い。
また、本発明の感光体において感光層の膜厚に制限は無く本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下である。
なお、本願の感光体は正帯電用の単層型感光体であり、光照射によって、主として感光体表面近傍深さ位置で電荷対が発生する。そのため、電子が表面の正電荷を打ち消すために必要な移動距離が短く、移動中の横方向の拡散が小さくなる。このため、膜厚が厚くなったとしても画像ボケしにくい特長を有する。また、レーザーのような可干渉光を用いた場合でも、基体まで光が到達し難いことから、干渉縞等の欠陥を生じ難い。また、基体に欠陥が有っても画像に影響し難い点も特長として挙げられる。一方、特開平5−210253号公報の実施例記載の積層型(基体上に電荷発生層と電荷輸送層をこの順に有する。)感光体は、上記の電荷の拡散による画像ボケが膜厚が厚くなるほど発生し易くなり、干渉縞、基体の欠陥の観点でも不利である。
一方で、単層型感光体の場合は、電荷発生材料と電子輸送材料の好適な組合せが少なく、積層型感光体と比較しても、材料の選定が困難なケースが多い。これは、正帯電用の積層型感光体(基体上に電荷発生層と電荷輸送層をこの順で有する場合)では、電荷発生材料で発生した正孔が、すぐに基体に逃れるため、正孔輸送材料が必要無いのに対し、正帯電用の単層型感光体では、感光層表面からある程度深い位置(例えば、膜厚25μmの感光体の表面から5μm位置)にある電荷輸送材料で発生した正負の電荷対それぞれを輸送する必要が有り、正孔輸送材料と電子輸送材料の両方が必要である。この場合、正孔輸送材料の運ぶ正孔と、電子輸送材料の運ぶ電子がそれぞれ基体、感光層表面に移動し終わる前に再結合するとその分感度が低下するので、再結合し難い組合せの選定が必要となる。
また、正帯電用の単層型感光体に新規の電子輸送材料を選定する際には、電荷発生材料で発生した電子を電子輸送材料が高効率で受容する必要があり、両者のLUMOレベルが重要となる。この場合、電子輸送材料のLUMO準位が、電荷発生材料のLUMO準位より低いことが好ましい。
(導電性支持体)
導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料やアルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100g/l〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2g/l〜15g/l、液温は15℃〜30℃、電解電圧は10V〜20V、電流密度は0.5A/dm2〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことは好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケル等の金属塩を含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25℃〜40℃、好ましくは30℃〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは、4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、中でも、酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5g/l〜20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80℃〜100℃、好ましくは90℃〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは15分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。更に、実質上塩類を含まない高温水や高温水蒸気で処理しても構わない。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
下引き層としては、樹脂層、あるいは、樹脂に金属酸化物粒子を分散した層等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、平均一時粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成された層であることが好ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独でも二種以上を混合して用いてもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で用いてもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
金属酸化物粒子の含有割合は、特に限定されないが、下引き層に用いるバインダー樹脂全体を基準(100質量%)として、0質量%から1000質量%の範囲が分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。更には10質量%から700質量%の範囲がより好ましく、100質量%から400質量%の範囲が特に好ましい。
また、本発明のような同一層内に少なくともバインダー樹脂、電荷発生材料、電子輸送材料、および、正孔輸送材料を含有する感光体の場合は、導電性支持体上に該感光層のみを設けた形態であると支持体と感光層との接着性が悪く、使用時に感光層が剥離してしまう可能性がある。これを防ぐため、電荷発生材料を有する層を下引き層として代用とすることができる。この場合は、該下引き層として、フタロシアニン顔料やアゾ顔料をバインダー樹脂中に分散して塗布したもの等が好適に用いられる。この場合、特に電気特性が優れる場合があり、好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体の特性および塗布性から、0.1μm〜20μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等が含まれていても良い。
(その他の層)
本発明の正帯電型電子写真感光体には、上記した下引き層、単層型感光層の他にも、他の層がさらに設けられていてもよい。例えば、単層型感光層の上に、単層型感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による単層型感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層が設けられていてもよい。また、最表面層には、単層型感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含有させても良く、さらに、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させても良い。
(各層の形成方法)
下引き層、単層型感光層、保護層等の各層の形成方法に制限は無い。例えば、形成する層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、導電性支持体の上に、直接又は他の層を介して順次塗布する等の公知の方法が適用できる。例えば、単層型感光層は、以下の方法により形成することが可能である。即ち、電子輸送材料、電荷発生材料、バインダー樹脂、正孔輸送材料、並びに、必要に応じて溶剤、併用するバインダー樹脂、添加剤等を含有する塗布液を用意する。そして、当該塗布液を、導電性支持体の上に、直接、または、下引き層を設ける場合は下引き層上に、塗布する。その後、乾燥により溶剤を除去することにより、単層型感光層を形成することができる。
この際、塗布方法は限定されず任意であり、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ノズル塗布法、バーコート法、ロールコート法、ブレード塗布法等を用いることができる。この中でも、生産性の高さから浸漬塗布方法が好ましい。なお、これらの塗布方法は、1つの方法のみを行なってもよいし、2以上の方法を組み合わせてもよい。
(感光体の帯電型)
本発明の感光体は、後述する画像形成装置に用いられることにより、画像形成の用途に使用されるものである。ただし、本発明の感光体は正帯電型の感光体であり、電子写真プロセスの帯電工程において、正に帯電されて使用されるものである。
(感光体の露光波長)
本発明の感光体は、画像形成の際には、露光手段から書き込み光によって露光が行われて静電潜像が形成される。この際に用いられる書き込み光は静電潜像の形成が可能である限り任意であるが、露光波長が好ましくは380nm以上、より好ましくは400nm以上、また、好ましくは800nm以下、より好ましくは700nm以下、より更に好ましくは500nm以下の単色光が用いられる。中でも、高品質の画像を得たい際に480nm以下の単色光で露光することは好ましい。この場合、感光体をより小さなスポットサイズの光で露光することができ、高解像度で高階調性を有する高品質の画像を形成することができる。
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の画像形成装置は、正帯電型電子写真感光体1、帯電装置(帯電手段)2、露光装置(露光手段;像露光手段)3及び現像装置(現像手段)4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置(転写手段)5、クリーニング装置(クリーニング手段)6及び定着装置(定着手段)7が設けられる。
正帯電型電子写真感光体1は、上述した本発明の正帯電型電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した単層型感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この正帯電型電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、正帯電型電子写真感光体1を正に帯電させるもので、正帯電型電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。
なお、正帯電型電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(本発明の電子写真感光体カートリッジ。以下、「感光体カートリッジ」という場合がある。)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。ただし、帯電装置2は、カートリッジとは別体に、例えば、画像形成装置の本体に設けられていてもよい。そして、例えば、正帯電型電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーがすべて備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、正帯電型電子写真感光体1に対し露光(像露光)を行なって、正帯電型電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、一般に単色光が好ましく、例えば、波長(露光波長)が700nm〜850nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長300nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、正帯電型電子写真感光体1および供給ローラ43に各々当接している。ただし、現像ローラ44と電子写真感光体1とは当接せず、近接していてもよい。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、通常、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は0.05N/cm〜5N/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦によりトナーTを帯電する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は必要に応じて設けられ、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを撹拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉砕法のほか、懸濁重合法や乳化重合法等による重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には、径が4μm〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々なものを使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化の必要がある場合に好適に用いられる。中でも、使用するトナーの平均円形度は、好ましくは0.95以上であり、より好ましくは0.96以上であり、より更に好ましくは0.98以上である。
<平均円形度の測定方法と定義>
本発明における「平均円形度」は、以下のように測定し、以下のように定義する。すなわち、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720〜7140個/μLの範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製、FPIA2100)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。本発明においては、同様の測定を3回行い、3個の「平均円形度」の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
以下は、上記装置で測定され、上記装置内で自動的に計算されて表示されるものであるが、「円形度」は下記式で定義される。
[円形度]=[粒子投影面積と同じ面積の円の周長]/[粒子投影像の周長]
そして、HPF検出個数である2000〜2500個を測定し、この個々の粒子の円形度の算術平均(相加平均)が「平均円形度」として装置に表示される。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。図1では、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体、被転写体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72としては、ステンレス、アルミニウム等の金属素管にシリコーンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材が使用できる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させるためにシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際に、溶融状態まで加熱される。そして、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
本発明の画像形成方法は、上記した本発明の正帯電型電子写真感光体を正に帯電させる帯電工程、帯電された該正帯電型電子写真感光体に対し露光を行い静電潜像を形成する露光工程、該静電潜像をトナーで現像する現像工程、および、トナーを被転写体に転写する転写工程を備えてなる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の正の電位(例えば+600V)に帯電される(帯電工程)。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、感光体に対して露光を行い静電潜像を形成する(露光工程)。即ち、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。
そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される(転写工程)。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、本発明の画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行う工程である。除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
<電子写真感光体カートリッジ>
なお、正帯電型感光体1は、上記のように帯電装置2と組み合わせて電子写真感光体カートリッジとして構成することができる他、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、および定着装置7からなる群から選ばれる1つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真感光体カートリッジ)として構成することもできる。電子写真感光体カートリッジは、複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成される。また、感光体1は、帯電装置2、露光装置3、現像装置4および転写装置5からなる群から選ばれる1つ以上と組み合わせて一体型のカートリッジとすることが好ましい。この場合も、上記実施形態で説明したカートリッジと同様に、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下、実施例を示して本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。以下の製造例、実施例、及び比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「質量部」を示す。また、以下の実施例で使用する電子輸送物質は、例えば、特開平5−210253号公報記載の方法に基づいて合成することができる。
<感光体シートの製造>
(感光体製造例1(P−1))
まず、以下のようにして調製した下引き層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が約0.3μmになるようにワイアバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。
下引き層形成用塗布液の調整方法を説明する。CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示すY型オキシチタニウムフタロシアニン10部を、1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて1時間粉砕分散処理を行い、顔料分散液を調整した。次に、ポリビニルブチラール(電気化学工業社製、商品名デンカブチラール#6000C)を10部を、1,2−ジメトキシエタン100部に溶解して、バインダー溶液を調整した。上記顔料分散液160部を、上記バインダー溶液100部に混合し、適量の1,2−ジメトキシエタンを加え最終的に固形分濃度4.0%の下引き層形成用塗布液(分散液)を調製した。
単層型感光層の形成方法を説明する。まず、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン(CG−1)4部、および、トルエン100部をサンドグラインドミルにより分散して顔料分散液を調整した。また、上記構造式(C−1)で表される正孔輸送材料70部、上記構造式(A−1)で表される電子輸送材料16部、下記構造式(B−1)で表されるバインダー樹脂(m:n=51:49,粘度平均分子量30,000)100部、および、酸化防止剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製:商品名IRGANOX1076)8部を、テトラヒドロフラン500部に溶解し、さらに、レベリング剤としてシリコーンオイル(信越シリコーン社製:商品名KF96)0.05部を加えた。そして、これに上記の顔料分散液を加え、ホモジナイザーにより均一になるように混合して、単層型感光層形成用塗布液を調整した。この塗布液を、上述の下引き層上に、乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布し、正帯電単層型電子写真感光体P−1を得た。
(感光体製造例2(P−2))
正孔輸送材料として、C−1に代えて、C−12を用いた以外は、感光体製造例1と同様にして、感光体P−2を得た。
(感光体製造例3(P−3))
バインダー樹脂として、B−1に代えて、下記B−2で表されるモノマーユニットのみを繰り返し単位とするバインダー樹脂(粘度平均分子量40,000)を使用した以外は、感光体製造例2と同様にして、感光体P−3を得た。
(感光体製造例4(P−4))
バインダー樹脂として、B−1に代えて、下記B−3で表されるモノマーユニットを有するバインダー樹脂(粘度平均分子量35,000、m:n=20:80)を使用した以外は、感光体製造例2と同様にして、感光体P−4を得た。
(感光体製造例5(P−5))
バインダー樹脂として、B−1に代えて、下記B−4で表されるモノマーユニットを有するバインダー樹脂(粘度平均分子量30,000、m:n=90:10)を使用した以外は、感光体製造例2と同様にして、感光体P−5を得た。
(感光体製造例6(P−6))
バインダー樹脂として、B−1に代えて、下記B−5で表されるモノマーユニットを有するバインダー樹脂(粘度平均分子量40,000)を使用した以外は、感光体製造例2と同様にして、感光体P−6を得た。
(感光体製造例7(P−7))
バインダー樹脂として、B−1に代えて、下記B−6で表されるモノマーユニットを有するバインダー樹脂(粘度平均分子量43,000)を使用した以外は、感光体製造例2と同様にして、感光体P−7を得た。
(感光体製造例8〜17(P−8〜P−17))
電子輸送材料として、A−1に代えて、A−2,A−3,A−6,A−11,A−15,A−16,A−25,A−26,A−27,A−31を使用した以外は、感光体製造例1と同様に、それぞれ感光体P−8〜P−17を作製した。
(感光体製造例18(P−18))
正孔輸送材料として、(C−1)70部に代えて、(C−1)35部、および、(C−2)35部を混合して用いた以外は、感光体製造例1と同様にして、感光体P−18を得た。
(感光体製造例19(P−19))
正孔輸送材料として、(C−1)70部に代えて、(C−6)50部、および、(C−13)10部を混合して用いた以外は、感光体製造例1と同様にして、感光体P−19を得た。
(感光体製造例20〜26(P−20〜P−26))
正孔輸送材料として、C−1に代えて、C−16,C−18,C−19,C−20,C−22,C−24,C−26を使用した以外は、感光体製造例1と同様にして、それぞれ感光体P−20〜P−26を得た。
(感光体製造例27(P−27))
単層型感光層におけるオキシチタニウムフタロシアニン(CG−1)に代えて、下記構造式を有するアゾ顔料(CG−2)を使用した以外は、感光体製造例1と同様に感光体P−27を得た。
(感光体製造例28(P−28))
単層型感光層におけるオキシチタニウムフタロシアニン(CG−1)に代えて、下記構造式を有するアゾ顔料(CG−3)を使用した以外は、感光体製造例1と同様に感光体P−28を得た。
(感光体製造例29(P−29))
単層型感光層におけるオキシチタニウムフタロシアニン(CG−1)に代えて、下記構造式を有するアゾ顔料(CG−4)を使用した以外は、感光体製造例1と同様に感光体P−29を得た。
(感光体製造例30(P−30))
単層型感光層におけるオキシチタニウムフタロシアニン(CG−1)に代えて、τ型無金属フタロシアニン(CG−5)を使用した以外は、感光体製造例1と同様に感光体P−30を得た。
(比較感光体製造例1(AP−1))
電子輸送材料として、A−1に代えて、下記のE−1を使用した以外は、感光体製造例1と同様に比較感光体AP−1を作製した。
(比較感光体製造例2(AP−2))
電子輸送材料として、A−1に代えて、下記のE−2を使用した以外は、感光体製造例1と同様に比較感光体AP−2を作製した。
(比較感光体製造例3(AP−3))
感光体製造例1と同様に下引き層を形成し、その上に、下記のようにして単層型感光層を形成し感光体を作製した。
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン4部をトルエン70部と共にサンドグラインドミルにより分散し、分散液を調整した。同様に、下記構造式(E−3)で表される電子輸送材料8部およびトルエン112部をサンドグラインドミルにより分散して分散液を調整した。
また、上記構造式(C−1)で表される正孔輸送材料70部と、上記構造式(B−1)で表されるバインダー樹脂(m:n=51:49,粘度平均分子量30,000)100部、および酸化防止剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製:商品名IRGANOX1076)8部をテトラヒドロフラン400部に溶解し、レベリング剤としてシリコーンオイル(信越シリコーン社製、商品名:KF96)0.05部を加え、さらに、これに上記の2種の顔料分散液を加え、ホモジナイザーにより均一になるように混合した。このようにして調製した塗布液を、下引き層上に、乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布し、比較感光体AP−3を作製した。
(比較感光体製造例4(AP−4))
以下のようにして積層型感光層を形成した。
まず、電荷発生層を形成した。CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示すY型オキシチタニウムフタロシアニン10部を、1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて1時間粉砕分散処理を行い、顔料分散液を調整した。次に、ポリビニルブチラール(電気化学工業社製、商品名デンカブチラール#6000C)を10部を、1,2−ジメトキシエタン100部に溶解して、バインダー溶液を調整した。そして、顔料分散液160部を、バインダー溶液100部に混合し、適量の1,2−ジメトキシエタンを加え最終的に固形分濃度4.0質量%の分散液を調製した。
このようにして得られた電荷発生層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が約0.3μmになるようにワイアバーで塗布、乾燥して電荷発生層を設けた。
次に電荷輸送層を形成した。 電子輸送材料A−1を40部、バインダー樹脂B−2を100部、ジクロロエタン500部に溶解し、上記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布、乾燥して比較感光体AP−4を作製した。
<感光体の評価>
作製した感光体シートP−1〜P−30、AP−1〜AP−4ついて、以下の電気特性試験と摩耗試験とを行った。電気特性試験の結果を表3に、摩耗試験の結果を表4にまとめた。
<電気特性試験1>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートを直径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、感光体の初期表面電位が+700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.5μJ/cm2で露光したときの露光後表面電位(以下、VL1と呼ぶ。)を測定した。VL1測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。測定結果を表3に示す。
<電気特性試験2>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートを直径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、感光体の初期表面電位が+700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで405nmの単色光としたものを2.0μJ/cm2で露光したときの露光後表面電位(以下、VL2と呼ぶ。)を測定した。VL2測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行った。測定結果を表3に示す。
表3中のVL1およびVL2は、低い方が好ましい。また、「光減衰なし」は、露光による帯電量の低下が観察されなかったことを意味する。
<摩擦試験>
動摩擦摩耗試験機(協和界面化学社製、DFPM−SS)に感光体シートをセットし、感光体表面にトナー(ヒュレットパッカード社製、LaserJet4用トナー)を0.1mg/cm2となるように均一に乗せた後、ウレタンゴム製クリーニングブレード(シャープ社製、SF−7800用クリーニングブレードを1cm幅に切断したもの)を45度の角度で試料に当て、加重200g、速度5mm/秒、ストローク20mmで該ブレートを移動させた時の感光体の動摩擦係数を測定した。この測定を100回繰り返した時の動摩擦係数の測定結果を表4に示す。
表4より、本発明の感光体P1〜P7の動摩擦係数は、比較例の感光体AP−4に比べて小さく、本発明の感光体は、クリーニングブレードとのマッチングが良好であることがわかった。
<画像試験1>
直径3cm、長さ24.7cmの表面を切削処理されたアルミニウムチューブ上に、感光体製造例1で作製した下引き層(接着層)用塗布液を使用して、乾燥後の膜厚が0.3μmとなるよう浸漬塗布、乾燥して下引き層を形成した。この上に感光体製造例1と同様に作製した単層型感光体用の塗布液を浸漬塗布法により塗布し、乾燥後の感光層膜厚が25μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、ブラザー工業製モノクロレーザープリンタ HL1240のドラムカートリッジに搭載して画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、2万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、安定した画像が形成された。
なお、当該プリンタに使用されているトナーをシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000によって形状解析したところ、50%円形度は1.00であった。また、ベックマン・コールター社製の精密粒度分布測定装置コールター・カウンター マルチサイザー3を使用して粒径解析を行ったところ、体積平均粒径(Dv)は9.1μm、個数平均粒径(DN)は7.7μm、Dv/DNは1.19であった。以上のように、本トナーは形状が真球状で粒径もそろっていたことから、懸濁重合法で製造されたトナーであることが分かる。
<画像試験2>
アルミニウムチューブを、無切削で直径2.4cm、長さ24.5cmのものに変更した以外は、上記画像試験1で作製した場合と同様に、電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、ブラザー工業製タンデムカラー型レーザープリンタHL4040のドラムカートリッジに搭載して画像試験を行ったところ、どの色でも画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、2万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、安定した画像が形成された。
<画像試験3>
単層型感光層を、上記AP−3に変更した以外は、上記画像試験2と同様に画像試験を実施した。露光部分の電位が十分下がらずに初期から画像濃度が薄く、更に5000枚印刷後にポジゴーストが発生した。
<画像試験4>
感光層を、上記積層型のAP−4に変更した以外は、上記画像試験1と同様に画像試験を実施した。露光部分の電位が十分下がらずに初期から画像濃度が薄く、微小黒点や細線がボケることが確認された。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う正帯電型電子写真感光体、該感光体を備えた電子写真感光体カートリッジおよび画像形成装置、ならびに、画像形成方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。