JP5286497B1 - 合成樹脂製容器 - Google Patents
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Abstract
本発明は、内圧の変化における底部の変形が均一かつ緩やかでありながら、大きな内圧変化にも確実に対応可能な減圧吸収性能を有する底部構造の合成樹脂製容器に関するものであり、胴部から連なる外周壁及び接地部並びに内周壁から成る環状の脚部、及び該脚部の内周壁よりも内側に前記接地部よりも上方に位置する上げ底部が、底部に形成された合成樹脂製容器であって、前記上げ底部は、前記脚部の内周壁との付け根よりも下方に突出していると共に、前記上げ底部の中央部外縁から外周側に向かう複数の弧状凸部が渦巻き状に形成され、且つ隣り合う弧状凸部の間に弧状凹部が形成されていることを特徴とする。
Description
本発明は、底部に減圧吸収性能を有する合成樹脂製容器に関するものであり、より詳細には、内圧の変化によって変形可能な底部構造を有する合成樹脂製容器に関する。
合成樹脂製の容器は、軽量性及び耐衝撃性に優れていることから、各種液体に対する包装容器として広く使用されている。特にポリエチレンテレフタレート(PET)を延伸ブロー成形して成る延伸成形容器は、透明性、ガスバリヤー性、軽量性、耐衝撃性、適度な剛性等の組合せを有し、液体内容物を収容させるための包装容器として広く使用されており、従来ガラス瓶に充填されていた調味料等においても合成樹脂製容器への移行が進んでいる。
内容物の保存性を高めるために、内容物を熱間充填することは、ポリエステル等の合成樹脂製容器においても広く行われているが、冷却による内容物の容積収縮により、合成樹脂製容器においては減圧変形が必ず生じる。これを防止するために、一般に容器胴部にリブ部を介してパネル部を設け、このパネル部で減圧変形を吸収させることが行われている(特許文献1等)。
しかしながら、上述したような調味料等の内容物においては、ガラス瓶にロールラベルを貼付するという、長年使用されてきた商品外観のイメージを維持することが要求されており、胴部に減圧吸収のためのパネル部を設けることはラベル貼付ができないことから望ましくない。また減圧のために胴部が不正変形すると、一見して変形がわかることから、外観に影響を与えることなく内圧変化に対応できることが望まれている。
しかしながら、上述したような調味料等の内容物においては、ガラス瓶にロールラベルを貼付するという、長年使用されてきた商品外観のイメージを維持することが要求されており、胴部に減圧吸収のためのパネル部を設けることはラベル貼付ができないことから望ましくない。また減圧のために胴部が不正変形すると、一見して変形がわかることから、外観に影響を与えることなく内圧変化に対応できることが望まれている。
このような要求を満足するために、胴部に減圧吸収パネルを設けることなく、底部に減圧吸収性能を付与した合成樹脂製容器も種々提案されている(特許文献2,3)。
上記特許文献2及び3に記載された底部形状を有する合成樹脂製容器は、底部に形成された支点を軸に底部傾斜面が反転することにより内圧の変化に対応するものであるが、減圧吸収能を発揮する際、底部中心部から放射線上に偏肉箇所が存在してしまうと、底部傾斜面上にて強度差が生じて不均一な変形を招き、安定して所望の減圧吸収能を発揮できないおそれがある。
また上記特許文献3に記載された底形状では、自立搬送に際して、底部の反転傾斜部を上方に押し込むための装置が別途必要である。さらに、底部の反転傾斜部を上方に押し込まずにグリッパー等で容器を保持搬送する場合には、装置が複雑になり、生産性に劣るおそれがある。
また上記特許文献3に記載された底形状では、自立搬送に際して、底部の反転傾斜部を上方に押し込むための装置が別途必要である。さらに、底部の反転傾斜部を上方に押し込まずにグリッパー等で容器を保持搬送する場合には、装置が複雑になり、生産性に劣るおそれがある。
従って本発明の目的は、底部に減圧吸収性能を有する合成樹脂製容器において、内圧の変化における底部の変形が均一かつ緩やかであり、大きな内圧変化にも確実に対応可能な減圧吸収性能を有する底部構造の合成樹脂製容器を提供することである。
本発明の他の目的は、容器の内圧変化による胴部変形が防止される共に、容器の自立性が維持されて搬送性や生産性にも優れた合成樹脂製容器を提供することである。
本発明の他の目的は、容器の内圧変化による胴部変形が防止される共に、容器の自立性が維持されて搬送性や生産性にも優れた合成樹脂製容器を提供することである。
本発明によれば、底部に、胴部から連なる外周壁、接地部及び内周壁から成る環状の脚部、該脚部の内周壁よりも内側に前記接地部よりも上方に位置する上げ底部が形成された合成樹脂製容器であって、該上げ底部は、前記脚部の内周壁との付け根よりも下方に突出していると共に、前記上げ底部の中央部外縁から外周側に向かう複数の弧状凸部が渦巻き状に形成され、且つ隣り合う弧状凸部の間に弧状凹部が形成されており、該弧状凹部が、径方向外周側において渦巻き方向と略反対方向、且つ外周に向かって延びる分岐凹部を有し、該弧状凹部と分岐凹部の間に分断凸部が形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器が提供される。
本発明の合成樹脂製容器においては、
1.前記弧状凸部及び弧状凹部に、前記中央部と同心状の下方に湾曲する複数の環状湾曲部が形成されていること、
2.前記弧状凹部及び分岐凹部の外方端部における幅方向の中央が、上げ底部の外周側端部に等間隔に配置されていること、
3.前記上げ底部の中央部が下方又は上方に突出していること、
4.前記弧状凹部及び分岐凹部の表面が粗面であること、
5.前記弧状凸部の表面が粗面であること、
6.前記脚部の内周壁の表面が粗面であること、
が好適である。
1.前記弧状凸部及び弧状凹部に、前記中央部と同心状の下方に湾曲する複数の環状湾曲部が形成されていること、
2.前記弧状凹部及び分岐凹部の外方端部における幅方向の中央が、上げ底部の外周側端部に等間隔に配置されていること、
3.前記上げ底部の中央部が下方又は上方に突出していること、
4.前記弧状凹部及び分岐凹部の表面が粗面であること、
5.前記弧状凸部の表面が粗面であること、
6.前記脚部の内周壁の表面が粗面であること、
が好適である。
本発明の合成樹脂製容器においては、容器底部に形成された環状の脚部の内側に、下方に突出する上げ底部、及びこの上げ底部に所定形状の凹凸を形成することにより、内圧の変化に対応して上げ底部が上方又は下方(内方又は外方)に移動することが可能になる。また、所定形状の凹凸が形成されて上げ底部の面積が増加して薄肉化されることによって、大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保することが可能になる。
また、この上げ底部に形成される所定形状の凹凸が、渦巻き状に形成される複数の弧状凸部及び弧状凹部であるので、例えば中央部から放射状に凹凸が形成される場合と比べて、内圧変化に対応して上げ底部が均一かつ緩やかに撓んで移動することが可能になり、上げ底部の不均一な変形や急激な反転が有効に防止されている。
また、減圧吸収に寄与しない環状の脚部が底部に形成されていることから、内圧変化が生じても容器の高さを常に一定に維持することが可能になり、更に容器の自立性が維持されると共に、搬送性にも優れている。また、胴部に減圧吸収のためのパネルを形成する必要がないことから、外観特性を維持できると共に、ラベルの貼付も可能である。
また、この上げ底部に形成される所定形状の凹凸が、渦巻き状に形成される複数の弧状凸部及び弧状凹部であるので、例えば中央部から放射状に凹凸が形成される場合と比べて、内圧変化に対応して上げ底部が均一かつ緩やかに撓んで移動することが可能になり、上げ底部の不均一な変形や急激な反転が有効に防止されている。
また、減圧吸収に寄与しない環状の脚部が底部に形成されていることから、内圧変化が生じても容器の高さを常に一定に維持することが可能になり、更に容器の自立性が維持されると共に、搬送性にも優れている。また、胴部に減圧吸収のためのパネルを形成する必要がないことから、外観特性を維持できると共に、ラベルの貼付も可能である。
また、前記弧状凸部及び弧状凹部に、前記中央部と同心状の下方に湾曲する複数の環状湾曲部が形成されていることにより、容器の減圧吸収時に発生する上げ底部への圧縮力を緩和して、上述した渦巻き状に形成された弧状凸部及び弧状凹部と相俟って、容器内方に向かって緩やかに移動することが可能となって、安定して所望の減圧吸収能を発揮することができる。また、上げ底部全体の保形性が向上するため、容器内に内容物が熱間充填されて、内容物の自重による荷重を受けつつ容器が暖められた場合でも、或いは充填された内容物の蒸気圧等により、容器内が大気圧を超える陽圧となった場合でも、上げ底部が容器外方に異常に膨出することが有効に防止されている。
また、前記弧状凹部の径方向外周側に、渦巻き方向と略反対方向且つ外周に向かって延びる分岐凹部が形成されていることにより、前記圧縮力を緩和することができ、上述した上げ底部の移動がよりスムーズとなる。更に、前記弧状凹部及び分岐凹部の外方端部における幅方向の中央が、上げ底部の外周側端部に等間隔に配置されていることにより、前記圧縮力を緩和して、上述した上げ底部の移動がより一層スムーズとなる。
また、前記上げ底部の中央部が、上げ底部の下方又は上方(外方又は内方)に突出するように形成することで、前記中央部及びその近傍をさらに薄肉とすることが可能となり、より大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保すると共に、更に容易に変形することが可能になる。
更に上げ底部に形成された、弧状凹部及び分岐凹部、弧状凸部、環状の脚部の内側面の表面が粗面に形成されていること、すなわち本発明の合成樹脂製容器を成形する際に用いる底金型に、粗面加工が施されていることにより、複雑な形状の底部であっても離型性を向上することができ、生産性にも優れている。
本発明の合成樹脂製容器の好適態様を添付図面に示す具体例に基づいて説明する。
図1に示す本発明の合成樹脂製容器1(以下、容器1とも称する)は、口部2、肩部3、胴部4及び底部5から成り、胴部4は、肩部3から連なる上部胴部4a、底部に連なる下部胴部4b、上部胴部4a及び下部胴部4bの間に位置する中央胴部4cから成っている。
中央胴部4cは、周方向リブ6,6,6が平行且つ等間隔に3本形成され、胴部の機械的強度及び内圧変形に対する保形性が確保されている。またリブ6の部分を除いた外周面が軸方向にストレートに形成されており、ラベル(図示せず)を胴部に一周巻きつけることも可能である。
図に示す具体例では、下部胴部4bと底部5の間にもリブ7が形成され、胴部4及び底部5を明確に区画しているが、胴部及び底部は必ずしも明確に区画されていなくてもよい。
図1に示す本発明の合成樹脂製容器1(以下、容器1とも称する)は、口部2、肩部3、胴部4及び底部5から成り、胴部4は、肩部3から連なる上部胴部4a、底部に連なる下部胴部4b、上部胴部4a及び下部胴部4bの間に位置する中央胴部4cから成っている。
中央胴部4cは、周方向リブ6,6,6が平行且つ等間隔に3本形成され、胴部の機械的強度及び内圧変形に対する保形性が確保されている。またリブ6の部分を除いた外周面が軸方向にストレートに形成されており、ラベル(図示せず)を胴部に一周巻きつけることも可能である。
図に示す具体例では、下部胴部4bと底部5の間にもリブ7が形成され、胴部4及び底部5を明確に区画しているが、胴部及び底部は必ずしも明確に区画されていなくてもよい。
底部5は、環状の脚部8及びこの環状の脚部8の内側に位置する上げ底部9から成っている。環状の脚部8は、リブ7より下方に位置し、下方に行くに従って容器外径が減少するように胴部4から連なる外周壁8a,接地部8b,接地部8bから上方に立ち上がりを形成する内周壁8cから成っている。これにより、内圧変化が生じても容器1の高さを常に一定に維持することが可能になり、更に容器1の自立性が維持されると共に、搬送性にも優れている。
図1及び図3(A)から明らかなように、上げ底部9は、接地部8bよりも上方に位置し、且つ、環状の脚部8の付け根8dから上げ底部9の中央部10に向かって下方に突出した形状を有している。また図2及び図3(A)から明らかなように、上げ底部9の中央部10はほぼ平坦に形成されており、さらに中央部10の中心部分には、中央部10の肉厚寸法よりも厚肉に形成された厚肉部11が形成されている。
図1及び図3(A)から明らかなように、上げ底部9は、接地部8bよりも上方に位置し、且つ、環状の脚部8の付け根8dから上げ底部9の中央部10に向かって下方に突出した形状を有している。また図2及び図3(A)から明らかなように、上げ底部9の中央部10はほぼ平坦に形成されており、さらに中央部10の中心部分には、中央部10の肉厚寸法よりも厚肉に形成された厚肉部11が形成されている。
また、図2から明らかなように、本発明の合成樹脂製容器1においては、中央部10の外縁から外周側に向かって複数の弧状凸部12,12・・・(以下、弧状凸部12と称す)が時計回りの渦巻き状に形成されている。また、隣り合う弧状凸部12の間には、中央部10の外縁から外周側に向かって複数の弧状凹部13,13・・・(以下、弧状凹部13と称す)が形成されている。本実施形態では、それぞれ6個の弧状凸部12及び弧状凹部13が配置されており、底部中央部側及び外周側の両端部は、その中央部分に比して幅が狭く、略尖状に形成されている。
このように所定形状の凹凸を形成することで、上げ底部9の表面積が増加して、上げ底部9が薄肉となり、内圧の変化に対応して上げ底部9が上方又は下方に移動することが可能になる。また、大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保すると共に容易に変形することが可能になる。また、この上げ底部に形成される所定形状の凹凸が、渦巻き状に形成される複数の弧状凸部12及び弧状凹部13であるので、例えば中央部10から放射状に形成される凹凸に比べて、内圧変化に対応して上げ底部9が均一かつ緩やかに撓んで移動することが可能になり、上げ底部9の不均一な変形や急激な反転が有効に防止されている。
このように所定形状の凹凸を形成することで、上げ底部9の表面積が増加して、上げ底部9が薄肉となり、内圧の変化に対応して上げ底部9が上方又は下方に移動することが可能になる。また、大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保すると共に容易に変形することが可能になる。また、この上げ底部に形成される所定形状の凹凸が、渦巻き状に形成される複数の弧状凸部12及び弧状凹部13であるので、例えば中央部10から放射状に形成される凹凸に比べて、内圧変化に対応して上げ底部9が均一かつ緩やかに撓んで移動することが可能になり、上げ底部9の不均一な変形や急激な反転が有効に防止されている。
また、図3(A)から明らかなように、上述した弧状凸部12及び弧状凹部13が形成された上げ底部9が、中央部10の外縁と同心円状の周方向の溝10a,10bによって区切られて、径方向にかけて複数の環状湾曲部14a,14b,14c(本実施形態では3個)が形成されている。尚、環状湾曲部14aは中央部10の外縁に、環状湾曲部14cは付け根部8dにそれぞれ接続している。
これにより、容器1の減圧吸収時に上げ底部9に作用する圧縮力を緩和して、上述した渦巻き状に形成された弧状凸部12及び弧状凹部13と相俟って、容器1の上方(内方)に向かって緩やかに移動することが可能となって、安定して所望の減圧吸収能を発揮することができる。また、上げ底部9全体の保形性が向上するため、容器1内に内容物が熱間充填されて、内容物の自重による荷重を受けつつ容器1が暖められた場合や、或いは充填された内容物の蒸気圧等により、容器1内が大気圧を超える陽圧となった場合でも、上げ底部9が容器1の下方(外方)に異常に膨出することが有効に防止されている。
これにより、容器1の減圧吸収時に上げ底部9に作用する圧縮力を緩和して、上述した渦巻き状に形成された弧状凸部12及び弧状凹部13と相俟って、容器1の上方(内方)に向かって緩やかに移動することが可能となって、安定して所望の減圧吸収能を発揮することができる。また、上げ底部9全体の保形性が向上するため、容器1内に内容物が熱間充填されて、内容物の自重による荷重を受けつつ容器1が暖められた場合や、或いは充填された内容物の蒸気圧等により、容器1内が大気圧を超える陽圧となった場合でも、上げ底部9が容器1の下方(外方)に異常に膨出することが有効に防止されている。
本発明の合成樹脂製容器1においては、図3(A)乃至(E)に示す内圧変化に対応した底部の挙動から明らかなように、容器1内が減圧状態になったときに、複数の弧状凸部12及び弧状凹部13を有する上げ底部9は、均一かつ緩やかに撓み、容器1内方にせり上がるよう移動して、減圧吸収性能を発揮する。
また、周方向の溝10a,10bが、前述の上げ底部9が撓む際の支点となることから、前記周方向の溝10a,10bの部分の肉厚を低減させて薄肉に形成することが望ましい。これにより、上げ底部9が更に撓み易くなって、上げ底部9を容器1の上方に向かって移動させることがより容易になる。
また、周方向の溝10a,10bが、前述の上げ底部9が撓む際の支点となることから、前記周方向の溝10a,10bの部分の肉厚を低減させて薄肉に形成することが望ましい。これにより、上げ底部9が更に撓み易くなって、上げ底部9を容器1の上方に向かって移動させることがより容易になる。
本発明の合成樹脂製容器の内圧変化に応じた底部の変動を説明するための図3において、(A)は空の状態、(B)は準高温充填(例えば72℃)直後の状態、(C)は(B)の充填後減圧状態、(D)は高温充填(例えば85℃)直後の減圧状態をそれぞれ示す一部断面図であり、(E)は(A)〜(D)を重ね合わせた図である。なお、この一部断面図は、中央部10を基点として対称的に配置される弧状凸部12及び弧状凹部13に沿った中央の断面を示している。
本発明の合成樹脂製容器においては、充填温度にかかわらず、内容物が充填された直後(B)においては、上げ底部9は内容物の自重により空の状態(A)よりも下方に移動するが、72℃という準高温で充填・密封された後に冷却され、減圧状態になった場合(C)には、上げ底部9は、空の状態(A)よりもやや上方に移動しているが、下方に突出した状態を維持している。また85℃という高温で充填・密封された後に冷却され、減圧状態になった場合(D)には、上げ底部9の中央部10は、環状の脚部8の付け根8dよりも上方に位置し、且つ、付け根8dよりも内側が大きく上方にせり上がった形状となっている。
従って、これらの図を重ね合わせてなる図3(E)から明らかなように、本発明の合成樹脂製容器1が減圧吸収能を発揮する際に、上げ底部9の弧状凸部12及び弧状凹部13自体が反転することなく、更に上げ底部9の中心側の環状湾曲部14aから14cにかけて、上げ底部9が容器1の内方にせり上がるように変形することで、従来の底部減圧吸収能を有する合成樹脂製容器に比して上げ底部9の移動は緩やかなものとなると共に、上げ底部9を上方に大きく移動させることができ、大きな内圧変化に対応し得る。これにより、底部変形による容器底部の負荷を軽減しつつ、所望の減圧吸収能を発揮することができる。
本発明の合成樹脂製容器においては、充填温度にかかわらず、内容物が充填された直後(B)においては、上げ底部9は内容物の自重により空の状態(A)よりも下方に移動するが、72℃という準高温で充填・密封された後に冷却され、減圧状態になった場合(C)には、上げ底部9は、空の状態(A)よりもやや上方に移動しているが、下方に突出した状態を維持している。また85℃という高温で充填・密封された後に冷却され、減圧状態になった場合(D)には、上げ底部9の中央部10は、環状の脚部8の付け根8dよりも上方に位置し、且つ、付け根8dよりも内側が大きく上方にせり上がった形状となっている。
従って、これらの図を重ね合わせてなる図3(E)から明らかなように、本発明の合成樹脂製容器1が減圧吸収能を発揮する際に、上げ底部9の弧状凸部12及び弧状凹部13自体が反転することなく、更に上げ底部9の中心側の環状湾曲部14aから14cにかけて、上げ底部9が容器1の内方にせり上がるように変形することで、従来の底部減圧吸収能を有する合成樹脂製容器に比して上げ底部9の移動は緩やかなものとなると共に、上げ底部9を上方に大きく移動させることができ、大きな内圧変化に対応し得る。これにより、底部変形による容器底部の負荷を軽減しつつ、所望の減圧吸収能を発揮することができる。
さらに、本発明の他の具体例を示す図4では、弧状凹部13の径方向外周側に、渦巻き方向と略反対方向且つ外周に向かって延びる分岐凹部16,16・・・(以下、分岐凹部16と称す)が形成されている。この分岐凹部16によって、弧状凸部12が分断されて、弧状凹部13及び分岐凹部16の間に分断凸部15が形成される。このような構成とすることで、容器1の減圧吸収時に発生する上げ底部9への圧縮力を緩和することができ、上述した上げ底部9の移動がよりスムーズとなる。尚、前記渦巻き方向とは、渦巻き状に形成された弧状凸部12及び弧状凹部13の外周側から中央部10に達した際の方向を意味している。
更に、弧状凹部13の外周側端部13a, 13a,・・・及び分岐凹部16の外周側端部16a,16a・・・は、上げ底部9の外周側端部(付け根8d)と接しており、各々の外周側端部13a及び16aの幅方向中央の位置が、上げ底部9の外周側端部(付け根部8d)に等間隔(本具体例では12等分)に配置されていることが特に好適であり、これにより、前記圧縮力を緩和することができ、上述した上げ底部9の移動がよりスムーズとなる。
また、前記上げ底部9の中央部10が、前記上げ底部9の下方又は上方(外方又は内方)に突出していることにより、前記上げ底部9をさらに薄肉とすることが可能となり、より大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保すると共に、更に容易に変形することが可能になる。
更に、弧状凹部13の外周側端部13a, 13a,・・・及び分岐凹部16の外周側端部16a,16a・・・は、上げ底部9の外周側端部(付け根8d)と接しており、各々の外周側端部13a及び16aの幅方向中央の位置が、上げ底部9の外周側端部(付け根部8d)に等間隔(本具体例では12等分)に配置されていることが特に好適であり、これにより、前記圧縮力を緩和することができ、上述した上げ底部9の移動がよりスムーズとなる。
また、前記上げ底部9の中央部10が、前記上げ底部9の下方又は上方(外方又は内方)に突出していることにより、前記上げ底部9をさらに薄肉とすることが可能となり、より大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保すると共に、更に容易に変形することが可能になる。
本発明の合成樹脂製容器においては、上述した具体例に限定されず、種々の変更が可能である。
すなわち、図に示した具体例では、弧状凸部及び弧状凹部は、それぞれ6個、環状湾曲部は3個形成されていたがこれに限定されるものではなく、上げ底部の径にもよるが、弧状凸部及び弧状凹部はそれぞれ4乃至8個、環状湾曲部は2乃至6個の範囲にあることが、上げ底部の表面積を増加すると共に薄肉化することによって、大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保すると共に、成形性の点から望ましい。
ここで、弧状凸部及び弧状凹部の個数がそれぞれ4個未満であると、上記範囲にある場合に比して上げ底部が撓み難くなり、減圧吸収能が低下するおそれがある。また、弧状凸部及び弧状凹部の個数が8個を越える、又は環状湾曲部の個数が6個を越えると、上記範囲にある場合に比して上げ底部に形成された形状の自由度が高くなり、減圧変形時に不均一な(例えば非対称な)変形を招くおそれがある。
また、複数の環状湾曲部の径方向の幅は、均一な変形を生じさせるために、ほぼ同一であることが望ましい。
すなわち、図に示した具体例では、弧状凸部及び弧状凹部は、それぞれ6個、環状湾曲部は3個形成されていたがこれに限定されるものではなく、上げ底部の径にもよるが、弧状凸部及び弧状凹部はそれぞれ4乃至8個、環状湾曲部は2乃至6個の範囲にあることが、上げ底部の表面積を増加すると共に薄肉化することによって、大きな内圧変化にも対応し得る可動領域を確保すると共に、成形性の点から望ましい。
ここで、弧状凸部及び弧状凹部の個数がそれぞれ4個未満であると、上記範囲にある場合に比して上げ底部が撓み難くなり、減圧吸収能が低下するおそれがある。また、弧状凸部及び弧状凹部の個数が8個を越える、又は環状湾曲部の個数が6個を越えると、上記範囲にある場合に比して上げ底部に形成された形状の自由度が高くなり、減圧変形時に不均一な(例えば非対称な)変形を招くおそれがある。
また、複数の環状湾曲部の径方向の幅は、均一な変形を生じさせるために、ほぼ同一であることが望ましい。
上げ底部は、底部の接地部径の85乃至95%の外径を有することが、容器の自立性を確保すると共に減圧吸収性能を確保する上で好ましい。また上げ底部の中央部は上げ底部の外径の20乃至35%の外径を有することが好ましい。
また、図に示した具体例では、上げ底部の中央部は、ほぼ平坦に形成されているが、上げ底部の下方又は上方(外方又は内方)に突出していてもよく、これにより、中央部をより薄肉化することが可能となって、より大きな減圧吸収性能を発揮することができる。
更に、本発明の合成樹脂製容器においては、底部の厚みが、胴部の最も薄い部分における厚みと同等或いはそれ以下であることが、好適であり、上げ底部の径にもよるが、0.2乃至0.3mmの範囲に薄肉化されていることが望ましい。
また、図に示した具体例では、上げ底部の中央部は、ほぼ平坦に形成されているが、上げ底部の下方又は上方(外方又は内方)に突出していてもよく、これにより、中央部をより薄肉化することが可能となって、より大きな減圧吸収性能を発揮することができる。
更に、本発明の合成樹脂製容器においては、底部の厚みが、胴部の最も薄い部分における厚みと同等或いはそれ以下であることが、好適であり、上げ底部の径にもよるが、0.2乃至0.3mmの範囲に薄肉化されていることが望ましい。
本発明において、上げ底部の形状は、容器の大きさなどによって一概に決めることができないが、例えば、容器高さ176mm、肩部及び底部最外径φ65.5mm、中央胴部外径φ60.5mmに二軸延伸ブロー成形された容量400mlの図1に示す合成樹脂製容器においては、図3に示すように、環状の脚部8の接地部8bから付け根8dまでの垂直距離h1が9mm、容器1が空の状態で、前記接地部8bから上げ底部9の中央部10までの垂直距離h2が4mmとなるように上げ底部9を形成する。そして、垂直距離h1は3乃至15mmの範囲、容器1が空の状態で、垂直距離h2は2乃至10mmの範囲にあることが好適である。
ここで、垂直距離h1が3mm未満であると、熱間充填時の熱変形により、上げ底部が接地部より突出してしまうおそれがあり、また、垂直距離h1が15mmを越えると、底部成形が困難となるおそれがある。
また、垂直距離h2が2mm未満であると、前述の場合と同様に、熱間充填時の熱変形により、上げ底部が接地部より突出してしまうおそれがあり、また、前記垂直距離h1と垂直距離h2の距離を5mm以上確保することが上げ底部9が減圧吸収能を発揮するために好適であることから、垂直距離h2が10mmを越えないことが好ましい。
ここで、垂直距離h1が3mm未満であると、熱間充填時の熱変形により、上げ底部が接地部より突出してしまうおそれがあり、また、垂直距離h1が15mmを越えると、底部成形が困難となるおそれがある。
また、垂直距離h2が2mm未満であると、前述の場合と同様に、熱間充填時の熱変形により、上げ底部が接地部より突出してしまうおそれがあり、また、前記垂直距離h1と垂直距離h2の距離を5mm以上確保することが上げ底部9が減圧吸収能を発揮するために好適であることから、垂直距離h2が10mmを越えないことが好ましい。
本発明の合成樹脂製容器においては、上述した底部形状を有する限り、従来公知の合成樹脂製容器の製造方法により成形することができるが、容器の内圧変化による上げ底部の上下動を可能にする上で、上げ底部が薄肉であることが重要であることから、上げ底部を薄肉に成形可能な延伸ブロー成形法により成形することが好ましい。
延伸ブロー成形においては、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂から成るプリフォームを上述した底部形状を容器底部に賦形可能な底金型を用いて成形する。
この際、渦巻き状に形成される弧状凸部12及び弧状凹部13、及び環状湾曲部14a,14b,14c等、複雑且つ微細な凹凸形状が底部に賦形されることから、底金型の離型性を向上するために底金型は粗面を有していることが好適である。特に底部の弧状凹部13及び分岐凹部16、或いは弧状凸部12及び分断凸部15の表面、更には環状の脚部8の内周壁8cに相当する部分が、凹凸が入り組み、型抜きが困難になるおそれがあることから、少なくとも底部の弧状凹部13に対応する部分、好適には更に上記箇所に対応する底金型の部分を粗面とすることが離型性の点から好ましい。従って、成形された合成樹脂製容器においても、かかる底金型と接触する、弧状凹部13及び分岐凹部16の表面、弧状凸部12及び分断凸部15の表面、環状脚部8の内周壁8cの表面が粗面に形成される。
延伸ブロー成形においては、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂から成るプリフォームを上述した底部形状を容器底部に賦形可能な底金型を用いて成形する。
この際、渦巻き状に形成される弧状凸部12及び弧状凹部13、及び環状湾曲部14a,14b,14c等、複雑且つ微細な凹凸形状が底部に賦形されることから、底金型の離型性を向上するために底金型は粗面を有していることが好適である。特に底部の弧状凹部13及び分岐凹部16、或いは弧状凸部12及び分断凸部15の表面、更には環状の脚部8の内周壁8cに相当する部分が、凹凸が入り組み、型抜きが困難になるおそれがあることから、少なくとも底部の弧状凹部13に対応する部分、好適には更に上記箇所に対応する底金型の部分を粗面とすることが離型性の点から好ましい。従って、成形された合成樹脂製容器においても、かかる底金型と接触する、弧状凹部13及び分岐凹部16の表面、弧状凸部12及び分断凸部15の表面、環状脚部8の内周壁8cの表面が粗面に形成される。
本発明の合成樹脂製容器は、従来、延伸ブロー成形に用いられていた熱可塑性ポリエステル樹脂、特にエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが有利に使用されるが、勿論、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの他のポリエステル、或いはポリカーボネートやアリレート樹脂等とのブレンド物を用いることもできる。
また上記熱可塑性ポリエステル樹脂の単層のみならず、上記熱可塑性ポリエステル樹脂とガスバリヤー性樹脂との多層構造であっても良く、高温での熱間充填に耐え得る耐熱性を付与すべく、用いるプリフォームの口部は熱結晶化されていることが好ましい。
また延伸ブロー成形条件も、上述した形状を底部に付与可能な底金型を使用し得る限り、従来公知の成形条件で成形でき、一段ブロー成形の他、二段ブロー成形によっても成形することができ、耐熱性の見地から熱固定されていることが好適である。
また上記熱可塑性ポリエステル樹脂の単層のみならず、上記熱可塑性ポリエステル樹脂とガスバリヤー性樹脂との多層構造であっても良く、高温での熱間充填に耐え得る耐熱性を付与すべく、用いるプリフォームの口部は熱結晶化されていることが好ましい。
また延伸ブロー成形条件も、上述した形状を底部に付与可能な底金型を使用し得る限り、従来公知の成形条件で成形でき、一段ブロー成形の他、二段ブロー成形によっても成形することができ、耐熱性の見地から熱固定されていることが好適である。
本発明の合成樹脂製容器においては、容器外観に影響を与えない底部に減圧吸収機能が付与されていることから、熱間充填により充填され、胴部にロールラベルを貼付する容器イメージが確立されている調味料等の容器として有効に利用できる。
またこのような内容物以外にも、比較的高温で熱間充填される内容物に対しても適用可能である。
またこのような内容物以外にも、比較的高温で熱間充填される内容物に対しても適用可能である。
1 合成樹脂製容器、2 口部、3 肩部、4 胴部、5 底部、6 リブ、8 脚部、9 上げ底部、10 中央部、12 弧状凸部、13 弧状凹部、14 環状湾曲部、15 分断凸部、16 分岐凹部
Claims (7)
- 底部に、胴部から連なる外周壁、接地部及び内周壁から成る環状の脚部、該脚部の内周壁よりも内側に前記接地部よりも上方に位置する上げ底部が形成された合成樹脂製容器であって、該上げ底部は、前記脚部の内周壁との付け根よりも下方に突出していると共に、前記上げ底部の中央部外縁から外周側に向かう複数の弧状凸部が渦巻き状に形成され、且つ隣り合う弧状凸部の間に弧状凹部が形成されており、該弧状凹部が、径方向外周側において渦巻き方向と略反対方向、且つ外周に向かって延びる分岐凹部を有し、該弧状凹部と分岐凹部の間に分断凸部が形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
- 前記弧状凸部及び弧状凹部に、前記中央部と同心状の下方に湾曲する複数の環状湾曲部が形成されている請求項1記載の合成樹脂製容器。
- 前記弧状凹部及び分岐凹部の外方端部における幅方向の中央が、上げ底部の外周側端部に等間隔に配置されている請求項1又は2記載の合成樹脂製容器。
- 前記上げ底部の中央部が下方又は上方に突出している請求項1乃至3の何れかに記載の合成樹脂製容器。
- 前記弧状凹部及び分岐凹部の表面が粗面である請求項1乃至4の何れかに記載の合成樹脂製容器。
- 前記弧状凸部の表面が粗面である請求項1乃至5の何れかに記載の合成樹脂製容器。
- 前記脚部の内周壁の表面が粗面である請求項1乃至6の何れかに記載の合成樹脂製容器。
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