本発明は、ドライバの操舵に対して操舵補助力を付与するようにしたパワーステアリング装置に関する。
この種の技術としては、特許文献1に記載の技術が開示されている。
この公報では、ピニオン軸を収納した円筒部の一部内面に土手状の凸部を、円筒部の全周に亙って形成しているものが開示されている。
特開2005−112037号公報
上記従来技術にあっては、ピニオン軸の中間部外周面と凸部の内周面とは、ピニオンとラックとの間で動力の伝達を行わない状態で、微小隙間を介して対向している。そのため、ピニオン軸と凸部が当接するまでは、ピニオン軸は上側と下側に設けた玉軸受で支持されることとなり支持位置間距離が長くなるため、ピニオン軸の曲げ剛性が低くなりラック歯とピニオン歯との噛み合い不良が生じるおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、ラック歯とピニオン歯との噛み合い不良を抑制するパワーステアリング装置を提供することである。
上記目的を達成するため、第1の発明では、ピニオン歯に対して操舵入力軸とは反対側に設けられ、ハウジングに対して前記ピニオン軸を軸支する第1軸受と、ピニオン歯に対して操舵入力軸側に設けられ、ハウジングに対してピニオン軸を軸支し、コロ軸受または滑り軸受によって構成される第2軸受と、第2軸受に対して操舵入力軸側に設けられ、ハウジングに対して前記ピニオン軸を軸支する第3軸受と、を有し、ハウジングまたはピニオン軸と前記第2軸受との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分における径方向隙間は、ハウジングまたはピニオン軸と第3軸受との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間の周方向の何れかの部分よりも小さくした。
また第2の発明では、ハウジング内に回転自在に設けられ、ラック軸に対して直行する位置からずれた状態でラック歯と噛み合うと共に鍛造または転造によって形成されるピニオン歯を有するピニオン軸と、ピニオン歯に対して操舵入力軸とは反対側に設けられ、ハウジングに対してピニオン軸を軸支する第1軸受と、ピニオン歯に対して操舵入力軸側であって、ハウジングに対してピニオン軸を軸支する第2軸受と、第2軸受に対し操舵入力軸側に設けられ、ハウジングに対してピニオン軸を軸支する第3軸受と、を有し、ハウジングまたはピニオン軸と第2軸受との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分における径方向隙間は、ハウジングまたはピニオン軸と第3軸受との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間の周方向の何れかの部分よりも小さくした。
そのため、ピニオン歯に近い第1軸受、第2軸受が荷重を受けることとなり、ピニオン軸の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯とラック歯の噛み合い状態を良好に保つことができる。
以下、第1の発明、第2の発明のパワーステアリング装置を実現する最良の形態を、実施例1ないし実施例8において説明する。
実施例1のパワーステアリング装置1の構成について説明する。
[パワーステアリング装置の概要]
図1は、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1のシステム構成図である。
パワーステアリング装置1は、ドライバが操舵を行うステアリングホイール30と、ステアリングホイール30から操舵力が入力されるステアリングシャフト31と、ステアリングシャフト31に自在継手32を介して接続される中間軸33と、中間軸33に自在継手34を介して接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7が伝達した回転方向の操舵力を車幅方向の力に変換するラックアンドピニオン部27およびモータ21によってドライバの操舵力に対してアシスト力を付与するパワーアシストユニット28を備えたギヤボックス29とを有する。
ラックアンドピニオン部27は、ピニオン軸8の下側に形成したピニオン歯9と、ラック軸10に形成したラック歯10aとが、ラック軸10の軸方向に対してピニオン軸8の軸方向がねじれ方向に噛み合っている。
パワーアシストユニット28は、操舵入力軸7に作用するトルクを検出するトルクセンサ4と、ピニオン軸8と一体に回転するウォームホイール19と、モータ21の出力軸に固定されウォームホイール19と噛み合うウォームシャフト20とを有する。トルクセンサ4が検出したトルクを電子コントロールユニット(Electronic Control Unit:以下、ECU)22に入力し、ECU22は入力したトルク情報によってモータ21の出力トルクを制御している。
ドライバによりステアリングホイール30に入力された操舵力は、ステアリングシャフト31、自在継手32、中間軸33、自在継手34、操舵入力軸7、ピニオン軸8の順に伝達される。モータ21において発生したアシストトルクは、ウォームシャフト20、ウォームホイール19の順にピニオン軸8に伝達される。ピニオン軸8に伝達されたドライバの操舵力およびモータ21のアシストトルクは、ピニオン軸8、ラック軸10、ラックエンド35、自在継手36、タイロッド37、タイロッドエンド38、ナックルアーム39を介して転舵輪40に伝達される。
[ギヤボックスの構成]
図2はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6と、ウォームホイール19、ウォームシャフト20、操舵入力軸7、トルクセンサ4等を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図2において操舵入力軸7、ピニオン軸8の軸方向であって、ピニオン軸8側を下側とし、操舵入力軸7側を上側とする。
(操舵入力軸の構成)
操舵入力軸7の上側にはスプライン溝7aが形成されており、自在継手34とスプライン結合をする。
操舵入力軸7のスプライン溝7aよりも下側には、スプライン溝7aの外径よりも大径の第4軸受嵌合部7bが形成されている。
操舵入力軸7の第4軸受嵌合部7bよりも下側には、第4軸受嵌合部7bの外径よりも大径の中筒係合部7cが形成されている。
操舵入力軸7の中筒係合部7cよりも下側には、一部を切り欠いたピニオン軸挿入部7eが形成されている。
操舵入力軸7には中空のトーションバー収容部7dが形成され、トーションバー収容部7dの上側にはトーションバー収容部7dよりも小径のトーションバー嵌合部7fが形成されている。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側にはピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は切削により形成されており、根本側に切り上がり部9aが形成されている。
ピニオン軸8の下側の先端には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径の第3軸受挿入部8cが形成されている。
ピニオン軸8の第3軸受挿入部8cよりも上側には、第3軸受挿入部8cよりも大径のフランジ部8dが形成されている。このフランジ部8dは、後述する第3軸受16のインナレース16cの外周とほぼ同径に形成されている。また第3軸受挿入部8cの外周側面上であって、フランジ部8dの下側側面から後述する第3軸受16の軸方向厚さ分離れた位置付近に第3軸受挿入部8cよりも小径な凹溝状のリング係止部8iが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第3軸受挿入部8cよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
ピニオン軸8の上端には、ピニオン軸8の上側に開口した有底カップ状に中空部が形成され、該中空部に操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの形状に沿って形成された操舵入力軸挿入部8hが形成されている。
ピニオン軸の開口部の底部にはトーションバー嵌合部8gが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側が開口部、下側が底となった有底カップ状の中空のピニオン軸収容部41を有し、底部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも大径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の第2軸受保持部6cよりも上側は、曲面状に拡径した後に、軸方向に垂直の段部6mが形成されている。この段部6mの内径は後述する第3軸受16のアウタレース16aの内径とほぼ同径に形成され、外径はアウタレース16aの外径とほぼ同径に形成されている。
この段部6mに連続して、段部6mの外径と同径の第3軸受保持部6dが形成されている。
第1ハウジング6の第3軸受保持部6dよりも上側には、第3軸受保持部6dよりも大径の係止リング嵌合部6eが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。この第2ハウジング係合部6gの外周側側面には、凹状のシール部材挿入部6hが形成されている。このシール部材挿入部6hにシール部材94が挿入されている。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(第2ハウジングの構成)
第2ハウジング5は軸方向に貫通孔を有し、第2ハウジング5の下側開口部には、第1ハウジング6の第2ハウジング係合部6gの外周とほぼ同径の内周面を有する第1ハウジング係合部5hが形成されている。
第2ハウジング5の第1ハウジング係合部5hの上側に、第1ハウジング係合部5hよりも小径のウォームホイール収容部5aが形成されている。このウォームホイール収容部5aは、ウォームホイール19よりも大径に形成されている。
第2ハウジング5には、ウォームホイール収容部5aの軸方向に対して垂直方向にウォームシャフト収容部5bが形成されている。このウォームシャフト収容部5bは、ウォームシャフト20よりも大径に形成されている。
第2ハウジング5のウォームホイール収容部5aよりも上側には、ウォームホイール収容部5aより小径の係止板収容部5cが形成されている。
第2ハウジング5の係止板収容部5cよりも上側には、係止板収容部5cよりも小径のトルクセンサ収容部5dが形成されている。
第2ハウジング5のトルクセンサ収容部5dよりも上側には、トルクセンサ収容部5dよりも小径であって、後述するトルクセンサ4の外筒4dよりも大径の係止部5eが形成されている。この係止部5eは、後述する第4軸受17のアウタレース17aの内径よりも小径に形成されている。
第2ハウジング5の係止部5eよりも上側には、係止部5eよりも大径の第4軸受収容部5fが形成されている。
第2ハウジング5には、第1ハウジング6と第2ハウジング5とを組み合わせたときに、第1ハウジング6のボルト挿入部6fと連通する位置にボルト挿入部5gが形成されている。
(トルクセンサの構成)
トルクセンサ4は、第1コイル4a、第2コイル4b、中筒4c、外筒4dを有する。
第1コイル4aと第2コイル4bとは軸方向に並んで配置されている。中筒4cは操舵入力軸7と一体に回転し、外筒4dはピニオン軸8と一体に回転する。また中筒4cと外筒4dの周側面には、第1コイル4a、第2コイル4bと対向する位置に開口窓が設けられている。
操舵入力軸7とピニオン軸8とが相対回転することにより中筒4cと外筒4dの開口窓の重なり量が変化し、この変化に応じた磁力の変化を第1コイル4aと第2コイル4bにより検出する。第1コイル4aと第2コイル4bが検出した磁力は、通信線4e、4fを介してECU22に送信される。
(ギヤボックスの組み付け)
ラジアル玉軸受である第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入し、第3軸受挿入部8cに嵌合させる。このとき第3軸受16の上側側面は、フランジ部8dの下側側面に当接する。またリング96をピニオン軸8の下側から挿入し、リング係止部8iに係合させる。このリング96の上側は第3軸受16のインナレース16cの内径よりも大径に形成されており、第3軸受16はリング96によって軸方向の移動が規制される。
ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。
ラジアルコロ軸受である第1軸受14をピニオン軸8の下側から挿入し、第1軸受挿入部8aに嵌合させる。
第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16を取り付けた状態のピニオン軸8を、第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入すると、第1軸受14は第1軸受保持部6a、第2軸受15は第2軸受保持部6cに、第3軸受16は第3軸受保持部6dに保持される。このとき第3軸受16の下側面は、段部6mに当接する。
ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入した後、係止リング88を係止リング嵌合部6eに挿入して嵌合させる。このとき係止リング88の下側面は第3軸受16のアウタレース16aの上側面に当接する。そのため、段部6mと係止リング88によってアウタレース16aを挟持し、第3軸受16は軸方向移動を規制される。
その後、ピニオン軸8の上側からウォームホイール19を挿入し、ウォームホイール嵌合部8eに嵌合させる。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、押圧部材11を押圧部収容部6jに挿入する。この押圧部材11のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面11aが形成され、この当接面11aをラック軸10に当接させる。また押圧部材11の当接面11aの反対側には、中空のスプリング挿入部11bが形成され、このスプリング挿入部11bにスプリング13を挿入する。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には、中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13を挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
操舵入力軸7とピニオン軸8とは、トーションバー26を介して連結されている。このトーションバー26は、中間部に対して両端が大径に形成され、上端に操舵入力軸嵌合部26a、下端にピニオン軸嵌合部26bが形成されている。
トーションバー26を操舵入力軸7のトーションバー収容部7dに挿入し、操舵入力軸嵌合部26aがトーションバー嵌合部7fに嵌合させる。
操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eをピニオン軸8の操舵入力軸挿入部8hに挿入し、トーションバー26のピニオン軸嵌合部26bはトーションバー嵌合部8gに嵌合される。操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの外周と、ピニオン軸8の操舵入力軸挿入部8hの内周との間には、一部にシール部材97が設けられている。
操舵入力軸7の中筒係合部7cにトルクセンサ4の中筒4cを係合し、ピニオン軸8の外筒係合部8fに外筒4dを係合する。外筒係合部8fと外筒4dとの間にはシール部材95が設けられている。
トルクセンサ4の第1コイル4a、第2コイル4bが第2ハウジング5のトルクセンサ収容部5dに挿入される。第1コイル4a、第2コイル4bの外径より小径であって外筒4dの外径よりも大径の貫通孔を有する係止板91を、第2ハウジング5の係止板収容部5cに挿入し、この係止板91はねじ90によって第2ハウジング5に固定される。係止板91によりトルクセンサ4の第1コイル4a、第2コイル4bに軸方向の移動を規制している。
トルクセンサ4の第1コイル4a、第2コイル4bが取り付けられた第2ハウジング5を操舵入力軸7の上側から挿入して、第1ハウジング6の第2ハウジング係合部6gと第1ハウジング係合部5hとが係合させる。
操舵入力軸7の上側からボールベアリングである第4軸受17を挿入し、第4軸受嵌合部7bと嵌合させる。第4軸受17は、第2ハウジング5の第4軸受収容部5fによって保持され、係止部5eによって軸方向に位置決めされている。また、操舵入力軸7の上側からシール部材18を挿入し、このシール部材18によって操舵入力軸7の第4軸受嵌合部7bと、第2ハウジング5の第4軸受収容部5fとの間をシールしている。
ウォームシャフト収容部5bにウォームシャフト20を挿入し、ウォームシャフト20とウォームホイール19が噛み合わす。
第1ハウジング6と第2ハウジング5が組み合わされた後に、ボルト挿入部6fおよびボルト挿入部5gにボルト92を挿入して、第1ハウジング6と第2ハウジング5とを固定する。
[軸受の構成]
図3は第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の軸方向断面図および周方向断面図である。
第3軸受16は、図3(a)に示すように、アウタレース16a、ボール16b、インナレース16cから構成されている。インナレース16cの内周にピニオン軸8の第3軸受挿入部8cが嵌合される。またアウタレース16aの外周は第1ハウジング6の第3軸受保持部6dに保持されている。そのため、アウタレース16aは第1ハウジング6に対して相対回転せず、インナレース16cはピニオン軸8に対して相対回転しないようになっている。ボール16bはゲージによって周方向にほぼ等間隔に並べられて、アウタレース16aおよびインナレース16cに対してボール16bの公転方向の回転としてはゲージとともに相対回転する。第3軸受16は、ラジアル玉軸受であるがスラスト荷重も受けることができる。
第2軸受15は、図3(b)に示すように、アウタレース15a、コロ15bから構成されている。アウタレース15aの内周側にコロ15bが周方向にほぼ等間隔に並べられ、回動可能に支持されている。周上に並んだコロ15bの内側にピニオン軸8の第2軸受挿入部8bが挿入されている。またアウタレース15aの外周は、第1ハウジング6の第2軸受保持部6cに保持されている。そのため、アウタレース15aは第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。コロ15bはアウタレース15aに支持されているため、コロ15bの公転方向の回転としては第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。
第1軸受14は、図3(c)に示すように、アウタレース14a、コロ14bから構成されている。アウタレース14aの内周側にコロ14bが周方向にほぼ等間隔に並べられ、回動可能に支持されている。周上に並んだアウタレース14aの内側にピニオン軸8の第1軸受挿入部8aが挿入されている。この第1軸受14の外径は、第2軸受15の外径よりも小さく形成されている。またアウタレース14aの外周は、第1ハウジング6の第1軸受保持部6aに保持されている。そのため、アウタレース14aは第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。コロ14bはアウタレース14aに支持されているため、コロ14bの公転方向の回転としては第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。
ここで第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16のうちピニオン歯9に近い、第1軸受14と第2軸受15によってピニオン軸8を支持するためには、第3軸受16の径方向隙間よりも、第1軸受14、第2軸受15の径方向隙間が小さい必要がある。そのためには、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の径方向隙間を設定した範囲に設計する必要がある。第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の径方向隙間とは、第1ハウジング6またはピニオン軸8と相対回転する部材(以下、相対回転部材)と、相対回転部材に対向する部材(以下、対向部材)との径方向隙間のことを示す。
第3軸受16において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はボール16b、インナレース16cであり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はボール16b、アウタレース16aである。第3軸受16において、ボール16bに対する対向部材はアウタレース16a、インナレース16cであり、アウタレース16aとインナレース16cに対する対向部材はボール16bである。
すなわち、第3軸受16の径方向隙間とは、アウタレース16aとボール16bとの径方向隙間、インナレース16cとボール16bとの径方向隙間のことを示す。ここでアウタレース16aとボール16bとの径方向隙間およびインナレース16cとボール16bとの径方向隙間のうち、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをAとする。
第2軸受15において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はピニオン軸8であり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はコロ15bである。第2軸受15において、ピニオン軸8に対する対向部材はコロ15bであり、コロ15bに対する対向部材はピニオン軸8である。
すなわち、第2軸受15の径方向隙間とは、コロ15bとピニオン軸8との径方向隙間のことを示す。ここでコロ15bとピニオン軸8との径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをBとする。
第1軸受14において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はピニオン軸8であり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はコロ14bである。第1軸受14において、ピニオン軸8に対する対向部材はコロ14bであり、コロ14bに対する対向部材はピニオン軸8である。
すなわち、第1軸受14の径方向隙間とは、コロ14bとピニオン軸8との径方向隙間のことを示す。ここでコロ14bとピニオン軸8との径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをCとする。
このとき、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16は、各径方向隙間の大きさが「A≧B」、「A≧C」となるように形成されている。すなわち、ピニオン軸8のラジアル方向の荷重を常に第1軸受14と第2軸受15によって受けている。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例1のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例1のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側、すなわちピニオン歯9よりも下側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第1軸受14を設けた。また、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側、すなわちピニオン歯9よりも上側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持するラジアルコロ軸受である第2軸受15を設けた。また、第2軸受15に対して操舵入力軸7側、すなわち第2軸受15の上側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第3軸受16を設けた。
さらに、第2軸受15のコロ15bとピニオン軸8との径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをBは、アウタレース16aとボール16bとの径方向隙間およびインナレース16cとボール16bとの径方向隙間のうち、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをAよりも小さいようにした。
そのため、ラック軸10側からの力の入力やモータ21側からの力の入力に対して、ピニオン歯9に近い第1軸受14、第2軸受15が荷重を受けることとなる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また、第2軸受15を径方向寸法の小さいラジアルコロ軸受としたため、第2軸受15をピニオン歯9に近づけることが可能となる。そのため、第1軸受14と第2軸受15との間を短くすることが可能となり、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、第1ハウジング6内に第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16を保持する第1軸受保持部6a、第2軸受保持部6c、第3軸受保持部6dを設けた。
よって、第1ハウジング6にピニオン軸8を支持する軸受を全て保持させることが可能となり、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の組み付け精度を向上させることができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、第1ハウジング6は操舵入力軸7側、すなわち上側に開口部を有し、第2軸受保持部6cの内径は第1軸受保持部6aの内径よりも大きく形成され、第3軸受保持部6dの内径は第2軸受保持部6cの内径よりも大きく形成した。
よって、第1軸受保持部6a、第2軸受保持部6c、第3軸受保持部6dを全て上側から加工することができ、第1軸受保持部6a、第2軸受保持部6c、第3軸受保持部6dの加工作業性を向上することができる。また、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16を全て上側から組み付けることができ、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の組み付け作業性を向上することができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、第1軸受14をコロ軸受によって構成した。
コロ軸受は外径の大きさに対する耐荷重が大きいため、第1軸受14の外径を第2軸受15の外径を小さくしつつ、第1軸受14の耐荷重を十分に確保することができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、第3軸受16にラジアル玉軸受を用いてスラスト方向の荷重も受けることができることとした。
よって、第1軸受14、第2軸受15はラジアル方向の荷重のみを受ける軸受とすることが可能となり、ピニオン歯9に近い第1軸受14、第2軸受15の選択自由度が高くなるため、外径の小さい軸受を選択することができる。そのため、第1軸受14と第2軸受15をピニオン歯9に近づけることが可能となり、第1軸受14と第2軸受15との距離を小さくしてピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16は、ピニオン軸8に第1軸受14側、すなわち下側から挿入されるようにした。
よって、ピニオン軸8を支持する全ての軸受を同じ方向から挿入することが可能となり、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の組み付け作業性を向上することができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、ピニオン軸8に設けたウォームホイール19と、モータ21からウォームホイール19に操舵アシスト力を伝達するウォームシャフト20とを備え、ウォームホイール19は、操舵入力軸7側、すなわち上側からピニオン軸に挿入するようにした。
ウォームホイール19をピニオン軸8の上側から挿入し、また前述のように第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入するようにしたため、ピニオン軸8にフランジ部8dを1箇所設けることにより、このフランジ部8dがウォームホイール19と第3軸受16の両方の突き当て部を兼ねることができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、第1軸受14、第2軸受15は車両が直進時および転舵時において常時、ラジアル方向の荷重を受けるようにした。
よって、ピニオン歯9に近い第1軸受14と第2軸受15によって常時、ラジアル方向の荷重を受けるためピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また実施例1のパワーステアリング装置1では、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第2軸受15との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分は、ピニオン軸8とこのピニオン軸8と対向する部材同士が常時接触するように組み付けられるようにした。すなわち、ピニオン軸8と第2軸受15のコロ15bとの間に形成される径方向隙間であって、円周方向に最も小さい部分において、ピニオン軸8とコロ15bが常時接触するようにした。
よって、ピニオン歯9に近い第1軸受14と第2軸受15によって常時、ラジアル方向の荷重を受けるためピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
[効果]
以下に、実施例1のパワーステアリング装置1の効果を列記する。
(1)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、車両の転舵輪40に接続されるラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直行する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8と接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受14と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支し、コロ軸受によって構成される第2軸受15と、第2軸受15に対して操舵入力軸7側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第3軸受16と、を有し、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第2軸受15との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分における径方向隙間は、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第3軸受16との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間の周方向の何れかの部分よりも小さいようにした。
第2軸受15とピニオン軸8との径方向隙間のうち最も小さい部分(大きさB)は、第3軸受16のボール16bとインナレース16cとの径方向隙間のうち最も小さい部分(大きさA)よりも小さく設定されている。そのため、ラック軸10側からの力の入力やモータ21側からの力の入力に対して、ピニオン歯9に近い第1軸受14、第2軸受15が荷重を受けることとなる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また、第2軸受15を径方向寸法の小さいラジアルコロ軸受としたため、第2軸受15をピニオン歯9に近づけることが可能となる。そのため、第1軸受14と第2軸受15との間を短くすることが可能となり、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(2)上記(1)に記載の構成に加え、第1ハウジング6は、単一のブロックである第1ハウジング6内に第1軸受14,第2軸受15および第3軸受16を保持する第1軸受保持部6a,第2軸受保持部6cおよび第3軸受保持部6dを有するようにした。
よって、単一のブロックである第1ハウジング6にピニオン軸8を支持する軸受を全て保持させることが可能となり、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の組み付け精度を向上させることができる。
(3)上記(2)に記載の構成に加え、第1ハウジング6は、操舵入力軸7側に開口部を有し、第2軸受保持部6cの内径は、第1軸受保持部6aの内径よりも大きく形成され、第3軸受保持部6dの内径は、第2軸受保持部6cの内径よりも大きく形成した。
よって、第1軸受保持部6a、第2軸受保持部6c、第3軸受保持部6dを全て上側から加工することができ、第1軸受保持部6a、第2軸受保持部6c、第3軸受保持部6dの加工作業性を向上することができる。また、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16を全て上側から組み付けることができ、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の組み付け作業性を向上することができる。
(4)上記(3)に記載の構成に加え、第1軸受14をコロ軸受によって構成した。
コロ軸受は外径の大きさに対する耐荷重が大きいため、第1軸受14の外径を第2軸受15の外径より小さくしつつ、第1軸受14の耐荷重を十分に確保することができる。
(5)上記(1)に記載の構成に加え、第3軸受16をスラスト方向の荷重を受けることができる玉軸受とした。
よって、第1軸受14、第2軸受15はラジアル方向の荷重のみを受ける軸受とすることが可能となり、ピニオン歯9に近い第1軸受14、第2軸受15の選択自由度が高くなるため、外径の小さい軸受を選択することができる。そのため、第1軸受14と第2軸受15との距離を小さくしてピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(6)上記(1)に記載の構成に加え、第1軸受14,第2軸受15および第3軸受16は、ピニオン軸8に第1軸受14側から挿入するようにした。
よって、ピニオン軸8を支持する全ての軸受を同じ方向から挿入することが可能となり、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の組み付け作業性を向上することができる。
(7)上記(6)に記載の構成に加え、ピニオン軸8に設けられたウォームホイール19と、モータ21からウォームホイール19に操舵アシスト力を伝達するウォームシャフト20と、を更に備え、ウォームホイール19は、操舵入力軸7側からピニオン軸8に挿入するようにした。
ウォームホイール19をピニオン軸8の上側から挿入し、また前述のように第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入するようにしたため、ピニオン軸8にフランジ部8dを1箇所設けることにより、このフランジ部8dがウォームホイール19と第3軸受16の両方の突き当て部を兼ねることができる。
(8)上記(1)に記載の構成に加え、第1軸受14はコロ軸受によって構成した。
コロ軸受は外径の大きさに対する耐荷重が大きいため、第1軸受14の外径を第2軸受15の外径を小さくしつつ、第1軸受14の耐荷重を十分に確保することができる。
(9)上記(1)に記載の構成に加え、第1軸受14および第2軸受15は常時ラジアル荷重を受けるようにした。
よって、ピニオン歯9に近い第1軸受14と第2軸受15によって常時、ラジアル方向の荷重を受けるためピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(10)上記(1)に記載の構成に加え、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第2軸受15との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分は、ピニオン軸8とこのピニオン軸8と対向する部材同士が常時接触するように組み付けた。
よって、ピニオン歯9に近い第1軸受14と第2軸受15によって常時、ラジアル方向の荷重を受けるためピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
実施例2のパワーステアリング装置1の構成について説明する。実施例1のパワーステアリング装置1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9よりも上側に設けたが、実施例2のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9にオーバラップさせて設けた。
[ギヤボックスの構成]
図4はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6とウォームホイール19、ウォームシャフト20、操舵入力軸7、トルクセンサ4等を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図4において操舵入力軸7、ピニオン軸8の軸方向であって、ピニオン軸8側を下側とし、操舵入力軸7側を上側とする。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側にはピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は切削により形成されており、根本側に切り上がり部9aが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも下側には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8の第1軸受挿入部8aよりも下側には、第1軸受挿入部8aよりも小径のストッパ挿入部8jが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径のフランジ部8dが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第2軸受挿入部8bよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
ピニオン軸8の上端には、ピニオン軸8の上側に開口した有底カップ状に中空部が形成され、該中空部に操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの形状に沿って形成された操舵入力軸挿入部8hが形成されている。
ピニオン軸の開口部の底部にはトーションバー嵌合部8gが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側と下側に開口部を有するピニオン軸収容部41を有し、下側開口部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも小径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。この第2ハウジング係合部6gの外周側側面には、凹状のシール部材挿入部6hが形成されている。このシール部材挿入部6hにシール部材94が挿入されている。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(ギヤボックスの組み付け)
第2ハウジングへの操舵入力軸7、トルクセンサ4等の組み付けは実施例1と同様であるため、以下では、第1ハウジング6へのピニオン軸8の組み付けについてのみ記載する。
筒状部材24をピニオン軸8の下側から圧入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。筒状部材24は第2軸受挿入部8bに嵌合された状態で、下側部分がピニオン歯9の形成部分とオーバラップしている。筒状部材24は硬化処理されており、筒状部材24の軸方向長さは後述する第2軸受15の軸方向長さよりも長く形成されている。
この筒状部材24を圧入した後に、ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、筒状部材24の外周に嵌合させる。第2軸受15は、筒状部材24と嵌合した状態で、ピニオン歯9の形成部分の一部分とオーバラップしている。
また、ピニオン軸8の上側からウォームホイール19を挿入し、ウォームホイール嵌合部8eに嵌合させる。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
第2軸受15、ウォームホイール19が取り付けられた状態のピニオン軸8を、第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入すると、第2軸受15は第2軸受保持部6cにより保持される。
ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入した後に、ラジアル玉軸受である第1軸受23を第1ハウジング6の下側の開口部から挿入し、第1軸受挿入部8aに嵌合させる。このとき第1軸受23は、第1ハウジング6の第1軸受保持部6aに保持される。また第1軸受23のアウタレース23aの上面は第1軸受保持部6aとピニオン歯収容部6bとの間の段部6kと、インナレース23cの上面はピニオン歯9の下側端面9cと当接する。
第1軸受23をピニオン軸8に挿入した後に、ストッパ89をピニオン軸8の先端に第1ハウジング6の下側開口部から挿入し、ピニオン軸8のストッパ挿入部8jに嵌合させる。このストッパ89の外径は、第1軸受23のインナレース23cの外径とほぼ同径に形成され、ピニオン歯9の下側端面9cとの間で第1軸受23を挟持する。
ストッパ89をピニオン軸8に挿入した後に、封止部材98を第1ハウジング6の下側開口部に挿入する。この封止部材98は係止部材99によって第1ハウジング6に係止される。封止部材98の上側の面は第1軸受23のアウタレース23aに当接し、第1ハウジング6の段部6kとの間で第1軸受23を挟持する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、押圧部材11を押圧部収容部6jに挿入する。この押圧部材11のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面11aが形成され、この当接面11aをラック軸10に当接する。また押圧部材11の当接面11aの反対側には、中空のスプリング挿入部11bが形成され、このスプリング挿入部11bにスプリング13を挿入する。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には、中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13を挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例2のパワーステアリング装置1のようにピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例2のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側、すなわちピニオン歯9よりも下側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第1軸受23設けた。また、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側、すなわちピニオン歯よりも上側であって、ピニオン歯9の切り上がり部9aとオーバラップする位置に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第2軸受15を設けた。
よって、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また実施例2のパワーステアリング装置1では、ピニオン軸8の外周側であって、ピニオン歯9の切り上がり部9aとオーバラップするように筒状部材24を設け、第2軸受15を筒状部材24の外周側であって、軸方向範囲内に設けた。
よって、第2軸受15は軸方向全体においては筒状部材24によって保持されるため、第2軸受15の保持性能を向上することができる。
また実施例2のパワーステアリング装置1では、筒状部材24の一部分はピニオン歯9の形成部分とオーバラップし、他の部分はピニオン歯9の非形成部分、すなわちピニオン歯9より上側のピニオン軸8にオーバラップするように設けた。
よって、筒状部材24はピニオン軸8に嵌合することが可能となり、筒状部材24の保持性を向上させることができる。
また実施例2のパワーステアリング装置1では、筒状部材24をピニオン軸8に圧入した。
よって、簡素な構造で筒状部材24を組み付けることが可能となり、組み付け作業を向上させることができる。
また実施例2のパワーステアリング装置1では、筒状部材24を硬化処理した。
よって、ラジアル方向の荷重に対して高い荷重が作用する第2軸受15の耐荷重性を確保することができる。
また実施例2のパワーステアリング装置1では、第1軸受23をスラスト方向の荷重も受けることができるラジアル玉軸受を用いた。
よって、第2軸受15はラジアル方向の荷重のみを受ける軸受とすることが可能となり、第2軸受15の選択自由度が高くなるため、外径の小さい軸受を選択することができる。そのため、第2軸受15をピニオン歯9側に設けて第1軸受23と第2軸受15の距離を小さくすることが可能となる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また実施例2のパワーステアリング装置1では、第1軸受23を第1軸受23側、すなわち下側から第1ハウジング6に挿入するようにした。
よって、第1軸受23の外径を第2軸受15の外径よりも大きい軸受を選択することが可能となり、第1軸受の耐荷重を十分に確保することができる。
また実施例2のパワーステアリング装置1では、第2軸受15をコロ軸受によって構成した。
よって、第2軸受14の径方向寸法を小さくすることが可能となるため、第2軸受14をピニオン歯9に近づけて第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
[効果]
以下に、実施例2のパワーステアリング装置1の効果を列記する。
(11)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、転舵輪40に接続されるラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直交する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8と接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受23と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側であって、このピニオン歯9の形成部分と少なくとも一部がオーバラップするように設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第2軸受15と、を有するようにした。
よって、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(12)上記(11)に記載の構成に加え、ピニオン軸8の外周側であって、ピニオン歯9の形成部分と少なくとも一部がオーバラップするように設けられた筒状部材24を更に備え、第2軸受15は、筒状部材24の外周側であって軸方向範囲内に設けられるようにした。
よって、第2軸受15は軸方向全体においては筒状部材24によって保持されるため、第2軸受15の保持性能を向上することができる。
(13)上記(12)に記載の構成に加え、筒状部材24は、この筒状部材24の一部分がピニオン歯9の形成部分とオーバラップし、残余の部分がピニオン歯9の非形成部分とオーバラップするように設けた。
よって、筒状部材24はピニオン軸8に嵌合することが可能となり、筒状部材24の保持性を向上させることができる。
(14)上記(12)に記載の構成に加え、筒状部材24はピニオン軸8に圧入されることとした。
よって、簡素な構造で筒状部材24を組み付けることが可能となり、組み付け作業を向上させることができる。
(15)上記(12)に記載の構成に加え、筒状部材24は硬化処理されることとした。
よって、ラジアル方向の荷重に対して高い荷重が作用する第2軸受15の耐荷重性を確保することができる。
(16)上記(11)に記載の構成に加え、第1軸受23はスラスト軸受であることとした。
よって、第2軸受15はラジアル方向の荷重のみを受ける軸受とすることが可能となり、第2軸受15の選択自由度が高くなるため、外径の小さい軸受を選択することができる。そのため、第2軸受15をピニオン歯9側に設けることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15の距離を小さくすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(17)上記(16)に記載の構成に加え、第1軸受23はピニオン歯9に対して第1軸受23側から第1ハウジング6に挿入されることとした。
よって、第1軸受23の外径を第2軸受15の外径よりも大きい軸受を選択することが可能となり、第1軸受の耐荷重を十分に確保することができる。
(18)上記(11)に記載の構成に加え、第2軸受15はコロ軸受によって構成されることとした。
よって、第2軸受14の径方向寸法を小さくすることが可能となるため、第2軸受14をピニオン歯9に近づけて第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
実施例3のパワーステアリング装置1の構成について説明する。実施例1のパワーステアリング装置1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1のパワーステアリング装置1ではピニオン歯9を切削により形成するようにしていたが、実施例3のパワーステアリング装置1ではピニオン歯9を鍛造または転造によって形成した。また実施例1のパワーステアリング装置1では第1軸受14としてラジアルコロ軸受を用いていたが、実施例3のパワーステアリング装置1では第1軸受23としてラジアル玉軸受を用いた。
[ギヤボックスの構成]
図5はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6とウォームホイール19、ウォームシャフト20、操舵入力軸7、トルクセンサ4等を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図5において操舵入力軸7、ピニオン軸8の軸方向であって、ピニオン軸8側を下側とし、操舵入力軸7側を上側とする。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側には偶数枚のピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は鍛造または転造により形成されており、切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合に比べて小さく形成されている。
ピニオン軸8の下側の先端には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径の第3軸受挿入部8cが形成されている。
ピニオン軸8の第3軸受挿入部8cよりも上側には、第3軸受挿入部8cよりも大径のフランジ部8dが形成されている。このフランジ部8dは、後述する第3軸受16のインナレース16cの外径とほぼ同径に形成されている。また第3軸受挿入部8cの外周側面上であって、フランジ部8dの下側側面から後述する第3軸受16の軸方向厚さ分離れた位置付近に第3軸受挿入部8cよりも小径な凹溝状のリング係止部8iが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第3軸受挿入部8cよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
ピニオン軸8の上側に開口した有底カップ状に中空部が形成され、開口部に操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの形状に沿って形成された操舵入力軸挿入部8hが形成されている。
ピニオン軸の開口部の底部にはトーションバー嵌合部8gが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側と下側に開口部を有するピニオン軸収容部41を有し、下側開口部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも小径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の第2軸受保持部6cよりも上側は、曲面状に拡径した後に、軸方向に垂直の段部6mが形成されている。この段部6mの内径は後述する第3軸受16のアウタレース16aの内径とほぼ同径に形成され、外径はアウタレース16aの外径とほぼ同径に形成されている。
この段部6mに連続して、段部6mの外径と同径の第3軸受保持部6dが形成されている。
第1ハウジング6の第3軸受保持部6dよりも上側には、第3軸受保持部6dよりも大径の係止リング嵌合部6eが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。この第2ハウジング係合部6gの外周側側面には、凹状のシール部材挿入部6hが形成されている。このシール部材挿入部6hにシール部材94が挿入されている。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(ギヤボックスの組み付け)
第2ハウジング5への操舵入力軸7、トルクセンサ4等の組み付けは実施例1と同様であるため、以下では、第1ハウジング6へのピニオン軸8の組み付けについてのみ記載する。
ラジアル玉軸受である第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入し、第3軸受挿入部8cに嵌合させる。このとき第3軸受16の上側側面は、フランジ部8dの下側側面に当接する。またリング96をピニオン軸8の下側から挿入し、リング係止部8iに係合させる。このリング96の上側は第3軸受16のインナレース16cの内径よりも大径に形成されており、このリング96によって第3軸受16の軸方向の移動を規制する。
ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。
ピニオン軸8に第2軸受15、第3軸受16を取り付けた状態で、ピニオン軸8を第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8が第1ハウジング6に挿入されると、第2軸受15は第2軸受保持部6cに、第3軸受16は第3軸受保持部6dに保持される。このとき第3軸受16の下側面は、段部6mに当接する。
ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入した後、ラジアル玉軸受である第1軸受23を第1ハウジング6の下側の開口部から挿入し、第1軸受挿入部8aに嵌合させる。このとき第1軸受23は第1ハウジング6の第1軸受保持部6aに保持され、また第1軸受23のアウタレース23aの上面は、第1軸受保持部6aとピニオン歯収容部6bとの間の段部6kに当接する。
封止部材98を第1ハウジング6の下側開口部に挿入する。この封止部材98は係止部材99によって第1ハウジング6に係止される。封止部材98の上側の面は第1軸受23のアウタレース23aに当接し、第1ハウジング6の段部6kとの間で第1軸受23を挟持する。
次に、係止リング88を係止リング嵌合部6eに挿入して嵌合させる。このとき、係止リング88の下側面は第3軸受16のアウタレース16aの上側面に当接する。よって、段部6mと係止リング88によってアウタレース16aを挟持して、第3軸受16の軸方向移動を規制する。
その後、ウォームホイール19をピニオン軸8の上側から挿入し、ウォームホイール嵌合部8eに嵌合させる。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、押圧部材11が押圧部収容部6jに挿入する。この押圧部材11のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面11aが形成され、この当接面11aをラック軸10に当接させる。また押圧部材11の当接面11aの反対側には、中空のスプリング挿入部11bが形成され、このスプリング挿入部11bにスプリング13が挿入される。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には、中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13が挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
[軸受の構成]
図6は第1軸受23、第2軸受15、第3軸受16の軸方向断面図および周方向断面図である。
第3軸受16は、図3(a)に示すように、アウタレース16a、ボール16b、インナレース16cから構成されている。インナレース16cの内周にピニオン軸8の第3軸受挿入部8cが嵌合される。またアウタレース16aの外周は第1ハウジング6の第3軸受保持部6dに支持されている。そのため、アウタレース16aは第1ハウジング6に対して相対回転せず、インナレース16cはピニオン軸8に対して相対回転しないようになっている。ボール16bはゲージによって周方向にほぼ等間隔に並べられて、アウタレース16aおよびインナレース16cに対してボール16bの公転方向の回転としてはゲージとともに相対回転する。第3軸受16は、ラジアル玉軸受であるがスラスト荷重も受けることができる。
第2軸受15は、図3(b)に示すように、アウタレース15a、コロ15bから構成されている。アウタレース15aの内周側にコロ15bが周方向にほぼ等間隔に並べられ、回動可能に支持されている。周上に並んだコロ15bの内側にピニオン軸8の第2軸受挿入部8bが挿入されている。またアウタレース15aの外周は、第1ハウジング6の第2軸受保持部6cに保持されている。そのため、アウタレース15aは第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。コロ15bはアウタレース15aに支持されているため、コロ15bの公転方向の回転としては第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。
第1軸受23は、図6(c)に示すように、アウタレース23a、ボール23b、インナレース23cから構成されている。インナレース23cの内周にピニオン軸8の第1軸受挿入部8aが嵌合される。またアウタレース23aの外周は第1ハウジング6の第1軸受保持部6aに保持されている。そのため、アウタレース23aは第1ハウジング6に対して相対回転せず、インナレース23cはピニオン軸8に対して相対回転しないようになっている。ボール23bはゲージによって周方向にほぼ等間隔に並べられて、アウタレース23aおよびインナレース23cに対してボール23bの公転方向の回転としてはゲージとともに相対回転する。第1軸受23は、ラジアル玉軸受であるがスラスト荷重も受けることができる。
ここで第1軸受23、第2軸受15、第3軸受16のうちピニオン歯9に近い、第1軸受23と第2軸受15によってピニオン軸8を支持するためには、第3軸受16の径方向隙間よりも、第1軸受23、第2軸受15の径方向隙間が小さい必要がある。そのためには第1軸受23、第2軸受15、第3軸受16の径方向隙間を設定した範囲に設計する必要がある。第1軸受23、第2軸受15、第3軸受16の径方向隙間とは、第1ハウジング6またはピニオン軸8と相対回転する部材(以下、相対回転部材)と、相対回転部材に対向する部材(以下、対向部材)との径方向隙間のことを示す。
第3軸受16において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はボール16b、インナレース16cであり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はボール16b、アウタレース16aである。第3軸受16において、ボール16bに対する対向部材はアウタレース16a、インナレース16cであり、アウタレース16aとインナレース16cに対する対向部材はボール16bである。
すなわち、第3軸受16の径方向隙間とは、アウタレース16aとボール16bとの径方向隙間、インナレース16cとボール16bとの径方向隙間のことを示す。ここでアウタレース16aとボール16bとの径方向隙間およびインナレース16cとボール16bとの径方向隙間のうち、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをDとする。
第2軸受15において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はピニオン軸8であり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はコロ15bである。第2軸受15において、ピニオン軸8に対する対向部材はコロ15bであり、コロ15bに対する対向部材はピニオン軸8である。
すなわち、第2軸受15の径方向隙間とは、コロ15bとピニオン軸8との径方向隙間のことを示す。ここでコロ15bとピニオン軸8との径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをEとする。
第1軸受23において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はボール23b、インナレース23cであり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はボール23b、アウタレース23aである。第1軸受23において、ボール23bに対する対向部材はアウタレース23a、インナレース23cであり、アウタレース23aとインナレース23cに対する対向部材はボール23bである。
すなわち、第1軸受23の径方向隙間とは、アウタレース23aとボール23bとの径方向隙間、インナレース23cとボール23bとの径方向隙間のことを示す。ここでアウタレース23aとボール23bとの径方向隙間およびインナレース23cとボール23bとの径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをFとする。
このとき、第1軸受23、第2軸受15、第3軸受16は、各径方向隙間の大きさが「D≧E」、「D≧F」となるように形成されている。すなわち、ピニオン軸8のラジアル方向の荷重を常に第1軸受14と第2軸受15によって受けている。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例3のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例3のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9を鍛造または転造により形成するようにした。
よって、ピニオン歯9の切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合にくらべて小さくすることが可能となる。そのため、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また実施例3のパワーステアリング装置1では、第1軸受23にラジアル玉軸受を用いてスラスト方向の荷重も受けることができることとした。
よって、第2軸受15はラジアル荷重のみを受ける軸受とすることが可能となり、外径の小さいラジアルコロ軸受を選択することができる。そのため、第2軸受15をピニオン歯9に近づけて、第1軸受23と第2軸受15との距離を小さくすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
また実施例3のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9を周方向において偶数枚設けることとした。
よって、ピニオン歯9を転造によって形成することができる。
[効果]
以下に、実施例3のパワーステアリング装置1の効果を列記する。
(19)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、転舵輪40に接続され、ラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直行する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うと共に鍛造または転造によって形成されるピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8と接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受23と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側であって、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第2軸受16と、第2軸受16に対し操舵入力軸7側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第3軸受16と、を有し、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第2軸受15との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分における径方向隙間は、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第3軸受23との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間の周方向の何れかの部分よりも小さいようにした。
よって、ピニオン歯9の切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合にくらべて小さくすることが可能となる。そのため、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(20)上記(19)に記載の構成に加え、第1軸受23をスラスト方向の荷重を受けることができる玉軸受とした。
よって、第2軸受15はラジアル荷重のみを受ける軸受とすることが可能となり、外径の小さいラジアルコロ軸受を選択することができる。そのため、第2軸受15をピニオン歯9に近づけて、第1軸受23と第2軸受15との距離を小さくすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(21)上記(19)に記載の構成に加え、ピニオン歯9は周方向において偶数枚設けられることとした。
よって、ピニオン歯9を転造によって形成することができる。
実施例4のパワーステアリング装置1の構成について説明する。実施例1乃至実施例3のパワーステアリング装置1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9よりも上側に設けたが、実施例4のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9にオーバラップさせて設けた。
[ギヤボックスの構成]
図7はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6とウォームホイール19、ウォームシャフト20、操舵入力軸7、トルクセンサ4等を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図7において操舵入力軸7、ピニオン軸8の軸方向であって、ピニオン軸8側を下側とし、操舵入力軸7側を上側とする。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側にはピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は切削により形成されており、根本側に切り上がり部9aが形成されている。
ピニオン軸8の下側の先端には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8の第3軸受挿入部8cよりも上側には、第3軸受挿入部8cよりも大径のフランジ部8dが形成されている。このフランジ部8dは、後述する第3軸受16のインナレース16cの外径とほぼ同径に形成されている。また第3軸受挿入部8cの外周側面上であって、フランジ部8dの下側側面から後述する第3軸受16の軸方向厚さ分離れた位置付近に第3軸受挿入部8cよりも小径な凹溝状のリング係止部8iが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径の第3軸受挿入部8cが形成されている。
ピニオン軸8の第3軸受挿入部8cよりも上側には、第3軸受挿入部8cよりも大径のフランジ部8dが形成されている。このフランジ部8dは、後述する第3軸受16のインナレース16cの外径とほぼ同径に形成されている。また第3軸受挿入部8cの外周側面上であって、フランジ部8dの下側側面から後述する第3軸受16の軸方向厚さ分離れた位置付近に第3軸受挿入部8cよりも小径な凹溝状のリング係止部8iが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第3軸受挿入部8cよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
ピニオン軸8の上側に開口した有底カップ状に中空部が形成され、該中空部に操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの形状に沿って形成された操舵入力軸挿入部8hが形成されている。
ピニオン軸の開口部の底部にはトーションバー嵌合部8gが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側と下側に開口部を有するピニオン軸収容部41を有し、下側開口部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも小径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の第2軸受保持部6cよりも上側は、曲面状に拡径した後に、軸方向に垂直の段部6mが形成されている。この段部6mの内径は後述する第3軸受16のアウタレース16aの内径とほぼ同径に形成され、外径はアウタレース16aの外径とほぼ同径に形成されている。
この段部6mに連続して、段部6mの外径と同径の第3軸受保持部6dが形成されている。
第1ハウジング6の第3軸受保持部6dよりも上側には、第3軸受保持部6dよりも大径の係止リング嵌合部6eが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。この第2ハウジング係合部6gの外周側側面には、凹状のシール部材挿入部6hが形成されている。このシール部材挿入部6hにシール部材94が挿入されている。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(ギヤボックスの組み付け)
第2ハウジングへの操舵入力軸7、トルクセンサ4等の組み付けは実施例1と同様であるため、以下では、第1ハウジング6へのピニオン軸8の組み付けについてのみ記載する。
ラジアル玉軸受である第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入し、第3軸受挿入部8cに嵌合させる。このとき第3軸受16の上側側面は、フランジ部8dの下側側面に当接する。またリング96をピニオン軸8の下側から挿入し、リング係止部8iに係合させる。このリング96の上側は第3軸受16のインナレース16cの内径よりも大径に形成されており、第3軸受16はこのリング96によって軸方向の移動が規制される。
筒状部材24をピニオン軸8の下側から圧入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。筒状部材24は第2軸受挿入部8bに嵌合された状態で、下側部分がピニオン歯9の形成部分とオーバラップしている。筒状部材24は硬化処理されている、筒状部材24の軸方向長さは後述する第2軸受15の軸方向長さよりも長く形成する。
この筒状部材24が挿入された後に、ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、筒状部材24の外周に嵌合させる。第2軸受15は、筒状部材24と嵌合した状態で、ピニオン歯9の形成部分の一部分とオーバラップしている。
第2軸受15、第3軸受16が取り付けられた状態のピニオン軸8を、第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入すると、第2軸受15は第2軸受保持部6cに、第3軸受16は第3軸受保持部6dに保持される。このとき第3軸受16の下側面は、段部6mに当接する。
ピニオン軸8が第1ハウジング6に挿入された後、係止リング88を係止リング嵌合部6eに挿入し嵌合させる。係止リング88の下側面は第3軸受16のアウタレース16aの上側面に当接する。よって、段部6mと係止リング88にアウタレース16aを挟持して、第3軸受16の軸方向移動を規制する。
その後、ピニオン軸8の上側からウォームホイール19を挿入し、ウォームホイール嵌合部8eに嵌合させる。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、押圧部材11を押圧部収容部6jに挿入する。この押圧部材11のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面11aが形成され、この当接面11aをラック軸10に当接する。また押圧部材11の当接面11aの反対側には、中空のスプリング挿入部11bが形成され、このスプリング挿入部11bにスプリング13を挿入する。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には、中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13を挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例4のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例4のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側、すなわちピニオン歯9よりも下側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第1軸受23設けた。また、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側、すなわちピニオン歯よりも上側であって、ピニオン歯9の切り上がり部9aとオーバラップする位置に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第2軸受15を設けた。
よって、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
[効果]
以下に、実施例4のパワーステアリング装置1の効果を記載する。
(22)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、転舵輪40に接続されるラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直交する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8と接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受23と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側であって、このピニオン歯9の形成部分と少なくとも一部がオーバラップするように設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第2軸受15と、を有するようにした。
よって、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
実施例5のパワーステアリング装置1の構成について説明する。実施例1乃至実施例4のパワーステアリング装置1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9よりも上側に設けたが、実施例5のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9にオーバラップさせて設けた。
[ギヤボックスの構成]
図8はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6とウォームホイール19、ウォームシャフト20、操舵入力軸7、トルクセンサ4等を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図8において操舵入力軸7、ピニオン軸8の軸方向であって、ピニオン軸8側を下側とし、操舵入力軸7側を上側とする。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側にはピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は切削により形成されており、根本側に切り上がり部9aが形成されている。
ピニオン軸8の下側の先端には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径の第3軸受挿入部8cが形成されている。
ピニオン軸8の第3軸受挿入部8cよりも上側には、第3軸受挿入部8cよりも大径のフランジ部8dが形成されている。このフランジ部8dは、後述する第3軸受16のインナレース16cの外径とほぼ同径に形成されている。また第3軸受挿入部8cの外周側面上であって、フランジ部8dの下側側面から後述する第3軸受16の軸方向厚さ分離れた位置付近に第3軸受挿入部8cよりも小径な凹溝状のリング係止部8iが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第3軸受挿入部8cよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
ピニオン軸8の上側に開口した有底カップ状に中空部が形成され、該中空部に操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの形状に沿って形成された操舵入力軸挿入部8hが形成されている。
ピニオン軸の開口部の底部にはトーションバー嵌合部8gが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側が開口部、下側が底となった有底カップ状の中空のピニオン軸収容部41を有し、底部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも大径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の第2軸受保持部6cよりも上側は、曲面状に拡径した後に、軸方向に垂直の段部6mが形成されている。この段部6mの内径は後述する第3軸受16のアウタレース16aの内径とほぼ同径に形成され、外径はアウタレース16aの外径とほぼ同径に形成されている。
この段部6mに連続して、段部6mの外径と同径の第3軸受保持部6dが形成されている。
第1ハウジング6の第3軸受保持部6dよりも上側には、第3軸受保持部6dよりも大径の係止リング嵌合部6eが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。この第2ハウジング係合部6gの外周側側面には、凹状のシール部材挿入部6hが形成されている。このシール部材挿入部6hにシール部材94が挿入される。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(ギヤボックスの組み付け)
第2ハウジングへの操舵入力軸7、トルクセンサ4等の組み付けは実施例1と同様であるため、以下では、第1ハウジング6へのピニオン軸8の組み付けについてのみ記載する。
ラジアル玉軸受である第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入し、第3軸受挿入部8cに嵌合させる。このとき第3軸受16の上側側面は、フランジ部8dの下側側面に当接する。またリング96をピニオン軸8の下側から挿入し、リング係止部8iに係合させる。このリング96の上側は第3軸受16のインナレース16cの内径よりも大径に形成されており、第3軸受16はリング96によって軸方向の移動が規制される。
筒状部材24をピニオン軸8の下側から圧入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。筒状部材24は第2軸受挿入部8bに嵌合された状態で、下側部分がピニオン歯9の形成部分とオーバラップしている。筒状部材24は硬化処理されている、筒状部材24の軸方向長さは後述する第2軸受15の軸方向長さよりも長く形成する。
この筒状部材24が挿入された後に、ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、筒状部材24の外周に嵌合させる。第2軸受15は、筒状部材24と嵌合した状態で、ピニオン歯9の形成部分の一部分とオーバラップしている。
ラジアルコロ軸受である第1軸受14をピニオン軸8の下側から挿入し、第1軸受挿入部8aに嵌合させる。
第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16を取り付けた状態のピニオン軸8を、第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入すると、第1軸受14は第1軸受保持部6a、第2軸受15は第2軸受保持部6cに、第3軸受16は第3軸受保持部6dに保持される。このとき第3軸受16の下側面は、段部6mに当接する。
ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入した後、係止リング88を係止リング嵌合部6eに挿入して嵌合させる。このとき係止リング88の下側面は第3軸受16のアウタレース16aの上側面に当接する。そのため、段部6mと係止リング88によってアウタレース16aを挟持し、第3軸受16は軸方向移動を規制される。
その後、ピニオン軸8の上側からウォームホイール19を挿入し、ウォームホイール嵌合部8eに嵌合させる。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、押圧部材11を押圧部収容部6jに挿入する。この押圧部材11のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面11aが形成され、この当接面11aをラック軸10に当接させる。また押圧部材11の当接面11aの反対側には、中空のスプリング挿入部11bが形成され、このスプリング挿入部11bにスプリング13を挿入する。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には、中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13を挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例5のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例5のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側、すなわちピニオン歯9よりも下側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第1軸受23設けた。また、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側、すなわちピニオン歯よりも上側であって、ピニオン歯9の切り上がり部9aとオーバラップする位置に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第2軸受15を設けた。
よって、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
[効果]
以下に、実施例5のパワーステアリング装置1の効果を記載する。
(23)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、転舵輪40に接続されるラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直交する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8と接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受23と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側であって、このピニオン歯9の形成部分と少なくとも一部がオーバラップするように設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第2軸受15と、を有するようにした。
よって、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。そのため、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
実施例6のパワーステアリング装置1の構成について説明する。実施例1乃至実施例5のパワーステアリング装置1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9よりも上側に設けたが、実施例5のパワーステアリング装置1では第2軸受15をピニオン歯9にオーバラップさせて設けた。
実施例1のパワーステアリング装置1ではピニオン歯9を切削により形成するようにしていたが、実施例6のパワーステアリング装置1ではピニオン歯9を鍛造または転造によって形成している。
[ギヤボックスの構成]
図9はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6とウォームホイール19、ウォームシャフト20、操舵入力軸7、トルクセンサ4等を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図9において操舵入力軸7、ピニオン軸8の軸方向であって、ピニオン軸8側を下側とし、操舵入力軸7側を上側とする。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側には偶数枚のピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は鍛造または転造により形成されており、切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合に比べて小さく形成されている。
ピニオン軸8の下側の先端には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径の第3軸受挿入部8cが形成されている。
ピニオン軸8の第3軸受挿入部8cよりも上側には、第3軸受挿入部8cよりも大径のフランジ部8dが形成されている。このフランジ部8dは、後述する第3軸受16のインナレース16cの外径とほぼ同径に形成されている。また第3軸受挿入部8cの外周側面上であって、フランジ部8dの下側側面から後述する第3軸受16の軸方向厚さ分離れた位置付近に第3軸受挿入部8cよりも小径な凹溝状のリング係止部8iが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第3軸受挿入部8cよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
ピニオン軸8の上側に開口した有底カップ状に中空部が形成され、開口部に操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの形状に沿って形成された操舵入力軸挿入部8hが形成されている。
ピニオン軸の開口部の底部にはトーションバー嵌合部8gが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側が開口部、下側が底となった有底カップ状の中空のピニオン軸収容部41を有し、底部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも大径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の第2軸受保持部6cよりも上側は、曲面状に拡径した後に、軸方向に垂直の段部6mが形成されている。この段部6mの内径は後述する第3軸受16のアウタレース16aの内径とほぼ同径に形成され、外径はアウタレース16aの外径とほぼ同径に形成されている。
この段部6mに連続して、段部6mの外径と同径の第3軸受保持部6dが形成されている。
第1ハウジング6の第3軸受保持部6dよりも上側には、第3軸受保持部6dよりも大径の係止リング嵌合部6eが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。この第2ハウジング係合部6gの外周側側面には、凹状のシール部材挿入部6hが形成されている。このシール部材挿入部6hにシール部材94が挿入される。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(ギヤボックスの組み付け)
第2ハウジングへの操舵入力軸7、トルクセンサ4等の組み付けは実施例1と同様であるため、以下では、第1ハウジング6へのピニオン軸8の組み付けについてのみ記載する。
ラジアル玉軸受である第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入し、第3軸受挿入部8cに嵌合させる。このとき第3軸受16の上側側面は、フランジ部8dの下側側面に当接する。またリング96をピニオン軸8の下側から挿入し、リング係止部8iに係合させる。このリング96の上側は第3軸受16のインナレース16cの内径よりも大径に形成されており、第3軸受16はリング96によって軸方向の移動が規制される。
ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。
ラジアルコロ軸受である第1軸受14をピニオン軸8の下側から挿入し、第1軸受挿入部8aに嵌合させる。
第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16を取り付けた状態のピニオン軸8を、第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入すると、第1軸受14は第1軸受保持部6a、第2軸受15は第2軸受保持部6cに、第3軸受16は第3軸受保持部6dに保持される。このとき第3軸受16の下側面は、段部6mに当接する。
ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入した後、係止リング88を係止リング嵌合部6eに挿入して嵌合させる。このとき係止リング88の下側面は第3軸受16のアウタレース16aの上側面に当接する。そのため、段部6mと係止リング88によってアウタレース16aを挟持し、第3軸受16は軸方向移動を規制される。
その後、ピニオン軸8の上側からウォームホイール19が挿入されウォームホイール嵌合部8eに嵌合される。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、押圧部材11を押圧部収容部6jに挿入する。この押圧部材11のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面11aが形成され、この当接面11aをラック軸10に当接させる。また押圧部材11の当接面11aの反対側には、中空のスプリング挿入部11bが形成され、このスプリング挿入部11bにスプリング13を挿入する。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には、中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13を挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例6のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例6のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9を鍛造または転造により形成するようにした。
よって、ピニオン歯9の切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合にくらべて小さくすることが可能となる。そのため、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
[効果]
以下に、実施例6のパワーステアリング装置1の効果を記載する。
(24)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、転舵輪40に接続され、ラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直行する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うと共に鍛造または転造によって形成されるピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8と接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受23と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側であって、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第2軸受16と、第2軸受16に対し操舵入力軸7側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第3軸受16と、を有し、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第2軸受15との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分における径方向隙間は、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第3軸受23との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間の周方向の何れかの部分よりも小さいようにした。
よって、ピニオン歯9の切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合にくらべて小さくすることが可能となる。そのため、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
実施例7のパワーステアリング装置1の構成について説明する。実施例1乃至実施例6のパワーステアリング装置1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1のパワーステアリング装置1ではピニオン歯9を切削により形成するようにしていたが、実施例3のパワーステアリング装置1ではピニオン歯9を鍛造または転造によって形成した。
[ギヤボックスの構成]
図10はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6とウォームホイール19、ウォームシャフト20、操舵入力軸7、トルクセンサ4等を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図4において操舵入力軸7、ピニオン軸8の軸方向であって、ピニオン軸8側を下側とし、操舵入力軸7側を上側とする。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側には偶数枚のピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は鍛造または転造により形成されており、切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合に比べて小さく形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも下側には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8の第1軸受挿入部8aよりも下側には、第1軸受挿入部8aよりも小径のストッパ挿入部8jが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径のフランジ部8dが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第2軸受挿入部8bよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
ピニオン軸8の上端には、ピニオン軸8の上側に開口した有底カップ状に中空部が形成され、該中空部に操舵入力軸7のピニオン軸挿入部7eの形状に沿って形成された操舵入力軸挿入部8hが形成されている。
ピニオン軸の開口部の底部にはトーションバー嵌合部8gが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側と下側に開口部を有するピニオン軸収容部41を有し、下側開口部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも小径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。この第2ハウジング係合部6gの外周側側面には、凹状のシール部材挿入部6hが形成されている。このシール部材挿入部6hにシール部材94が挿入される。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(ギヤボックスの組み付け)
第2ハウジングへの操舵入力軸7、トルクセンサ4等の組み付けは実施例1と同様であるため、以下では、第1ハウジング6へのピニオン軸8の組み付けについてのみ記載する。
ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。
また、ピニオン軸8の上側からウォームホイール19を挿入し、ウォームホイール嵌合部8eに嵌合させる。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
第2軸受15、ウォームホイール19が取り付けられた状態のピニオン軸8を、第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入すると、第2軸受15は第2軸受保持部6cにより保持される。
ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入した後に、ラジアル玉軸受である第1軸受23を第1ハウジング6の下側の開口部から挿入し、第1軸受挿入部8aに嵌合させる。このとき第1軸受23は、第1ハウジング6の第1軸受保持部6aに保持される。また第1軸受23のアウタレース23aの上面は第1軸受保持部6aとピニオン歯収容部6bとの間の段部6kと、インナレース23cの上面はピニオン歯9の下側端面9cと当接する。
第1軸受23をピニオン軸8に挿入した後に、ストッパ89をピニオン軸8の先端に第1ハウジング6の下側開口部から挿入し、ピニオン軸8のストッパ挿入部8jに嵌合させる。このストッパ89の外径は、第1軸受23のインナレース23cの外径とほぼ同径に形成され、ピニオン歯9の下側端面9cとの間で第1軸受23を挟持する。
ストッパ89をピニオン軸8に挿入した後に、封止部材98を第1ハウジング6の下側開口部に挿入する。この封止部材98は係止部材99によって第1ハウジング6に係止される。封止部材98の上側の面は第1軸受23のアウタレース23aに当接し、第1ハウジング6の段部6kとの間で第1軸受23を挟持する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、押圧部材11を押圧部収容部6jに挿入する。この押圧部材11のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面11aが形成され、この当接面11aをラック軸10に当接する。また押圧部材11の当接面11aの反対側には、中空のスプリング挿入部11bが形成され、このスプリング挿入部11bにスプリング13を挿入する。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には、中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13を挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例7のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例7のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9を鍛造または転造により形成するようにした。
よって、ピニオン歯9の切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合にくらべて小さくすることが可能となる。そのため、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
[効果]
以下に、実施例7のパワーステアリング装置1の効果を記載する。
(25)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、転舵輪40に接続され、ラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直行する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うと共に鍛造または転造によって形成されるピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8と接続される操舵入力軸7と、操舵入力軸7、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受23と、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側であって、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第2軸受16と、第2軸受16に対し操舵入力軸7側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第3軸受16と、を有し、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第2軸受15との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分における径方向隙間は、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第3軸受23との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間の周方向の何れかの部分よりも小さいようにした。
よって、ピニオン歯9の切り上がり部9bはピニオン歯9を切削により形成した場合にくらべて小さくすることが可能となる。そのため、第2軸受15をピニオン歯に近づけることが可能となり、第1軸受23と第2軸受15との間を短くすることができる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることが可能となり、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
実施例8のパワーステアリング装置1の構成について説明する。
[パワーステアリング装置の概要]
図11は、ステアバイワイヤのパワーステアリング装置1のシステム構成図である。
パワーステアリング装置1は、ドライバが操舵を行うステアリングホイール30と、ステアリングホイール30から操舵力が入力されるステアリングシャフト31と、ドライバの操舵トルクを検出するトルクセンサ3と、回転方向の力を車幅方向の力に変換するラックアンドピニオン部27およびドライバの操舵トルクに応じて転舵トルクを出力するパワーアシストユニット28を備えたギヤボックス29とを有する。
ラックアンドピニオン部27は、ピニオン軸8の下側に形成したピニオン歯9と、ラック軸10に形成したラック歯10aとが、ラック軸10の軸方向に対してピニオン軸8の軸方向がねじれ方向に噛み合っている。
パワーアシストユニット28は、ピニオン軸8の回転位置を検出するレゾルバ2と、ピニオン軸8と一体に回転するウォームホイール19と、モータ21の出力軸に固定されウォームホイール19と噛み合うウォームシャフト20とを有する。トルクセンサ3が検出したトルクと、レゾルバ2が検出したピニオン軸8の回転位置をECU22に入力し、ECU22は入力したトルク情報と回転位置情報によってモータ21の出力トルクを制御している。
ドライバによりステアリングホイール30に入力された操舵トルクに応じて、モータ21により転舵トルクを発生させる。発生させた転舵トルクは、ウォームシャフト20、ウォームホイール19の順にピニオン軸8に伝達される。ピニオン軸8に伝達されたドライバの操舵力およびモータ21のアシストトルクは、ピニオン軸8、ラック軸10、ラックエンド35、自在継手36、タイロッド37、タイロッドエンド38、ナックルアーム39を介して転舵輪40に伝達される。
[ギヤボックスの構成]
図12はギヤボックス29の部分断面図である。ギヤボックス29は、ピニオン軸8、ラック軸10等を収容する第1ハウジング6とウォームホイール19、ウォームシャフト20を収容する第2ハウジング5とを有する。
以下の説明では、図12においてピニオン軸8の軸方向であって、第1ハウジング6側を下側とし、第2ハウジング5側を上側とする。
(ピニオン軸の構成)
ピニオン軸8の下側にはピニオン歯9が形成されている。ピニオン歯9は切削により形成されており、根本側に切り上がり部9aが形成されている。
ピニオン軸8の下側の先端には、ピニオン歯9の外径よりも小径の第1軸受挿入部8aが形成されている。
ピニオン軸8のピニオン歯9よりも上側には、ピニオン歯9の外径よりも大径の第2軸受挿入部8bが形成されている。
ピニオン軸8の第2軸受挿入部8bよりも上側には、第2軸受挿入部8bよりも大径の第3軸受挿入部8cが形成されている。
ピニオン軸8の第3軸受挿入部8cよりも上側には、第3軸受挿入部8cよりも大径のフランジ部8dが形成されている。このフランジ部8dは、後述する第3軸受16のインナレース16cの外径とほぼ同径に形成されている。また第3軸受挿入部8cの外周側面上であって、フランジ部8dの下側側面から後述する第3軸受16の軸方向厚さ分離れた位置付近に第3軸受挿入部8cよりも小径な凹溝状のリング係止部8iが形成されている。
ピニオン軸8のフランジ部8dよりも上側には、フランジ部8dよりも小径であって、第3軸受挿入部8cよりも大径のウォームホイール嵌合部8eが形成されている。
ピニオン軸8の上側先端には外筒係合部8fが形成されている。
(第1ハウジングの構成)
第1ハウジング6は上側が開口部、下側が底となった有底カップ状の中空のピニオン軸収容部41を有し、底部には第1軸受保持部6aが形成されている。
第1ハウジング6の第1軸受保持部6aよりも上側には、第1軸受保持部6aよりも大径のピニオン歯収容部6bが形成されている。このピニオン歯収容部6bは、ピニオン歯9の外径よりも大きく形成されている。
第1ハウジング6のピニオン歯収容部6bよりも上側には、ピニオン歯収容部6bよりも大径の第2軸受保持部6cが形成されている。
第1ハウジング6の第2軸受保持部6cよりも上側は、滑らかに拡径した後に軸方向に垂直の段部6mが形成されている。この段部6mの内径は後述する第3軸受16のアウタレース16aの内径とほぼ同径に形成され、外径はアウタレース16aの外径とほぼ同径に形成されている。
この段部6mに連続して、段部6mの外径と同径の第3軸受保持部6dが形成されている。
第1ハウジング6の第3軸受保持部6dよりも上側には、第3軸受保持部6dよりも大径の係止リング嵌合部6eが形成されている。
第1ハウジング6の上端には上側に凸状の第2ハウジング係合部6gが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン軸8の軸方向に対してねじれ方向に伸びて形成されたラック軸収容部6iが設けられている。ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bが交わる位置において、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通している。
第1ハウジング6には、ラック軸収容部6iとピニオン歯収容部6bとが連通する位置において、ピニオン軸8の軸方向に対して垂直方向に押圧部収容部6jが形成されている。
第1ハウジング6には、ピニオン歯収容部6b等から径方向に離れた位置にボルト挿入部6fが形成されている。
(第2ハウジングの構成)
第2ハウジング5は下側が開口した有底カップ状に形成されており、第2ハウジング5の下側開口部には、第1ハウジング6の第2ハウジング係合部6gの外周とほぼ同径の内周面を有する第1ハウジング係合部5hが形成されている。
第2ハウジング5の第1ハウジング係合部5hの上側に、第1ハウジング係合部5hよりも小径のウォームホイール収容部5aが形成されている。このウォームホイール収容部5aは、ウォームホイール19よりも大径に形成されている。
第2ハウジング5には、ウォームホイール収容部5aの軸方向に対して垂直方向にウォームシャフト収容部5bが形成されている。このウォームシャフト収容部5bは、ウォームシャフト20よりも大径に形成されている。
第2ハウジングの上側の底部には、レゾルバ固定部5iとボルト挿入部5jが形成されている。
第2ハウジング5には、第1ハウジング6と第2ハウジング5とを組み合わせたときに、第1ハウジング6のボルト挿入部6fと連通する位置にボルト挿入部5gが形成されている。
(レゾルバの構成)
レゾルバ2は、固定子2a、回転子2b、固定子コイル2c、回転子コイル2dを有する。固定子2aは第2ハウジング5のレゾルバ固定部5iに設置され、ボルト87によって第2ハウジングに固定されている。固定子コイル2cは、第2ハウジング5に対して相対回転しないように固定子2aに取り付けられている。回転子2bは、ピニオン軸8に取り付けられた係合部材2eを介してピニオン軸8に固定されている。回転子コイル2dは、ピニオン軸8に対して相対回転しないように回転子2bに固定されている。
固定子コイル2cに電流が印加され、これにより磁束が発生する。発生した磁束により、磁気回路を構成する回転子コイル2dには電圧が励起されて電流が生じる。ピニオン軸8が回転すると、回転位置毎に回転子コイル2dの電圧が変化する。この電圧情報は、ECU22に送信される。
(ギヤボックスの組み付け)
ラジアル玉軸受である第3軸受16をピニオン軸8の下側から挿入し、第3軸受挿入部8cに嵌合させる。このとき第3軸受16の上側側面は、フランジ部8dの下側側面に当接する。またリング96をピニオン軸8の下側から挿入し、リング係止部8iに係合させる。このリング96の上側は第3軸受16のインナレース16cの内径よりも大径に形成されており、第3軸受16はリング96によって軸方向の移動が規制される。
ラジアルコロ軸受である第2軸受15をピニオン軸8の下側から挿入し、第2軸受挿入部8bに嵌合させる。
ラジアルコロ軸受である第1軸受14をピニオン軸8の下側から挿入し、第1軸受挿入部8aに嵌合させる。
第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16を取り付けた状態のピニオン軸8を、第1ハウジング6の上側開口部から挿入する。ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入すると、第1軸受14は第1軸受保持部6a、第2軸受15は第2軸受保持部6cに、第3軸受16は第3軸受保持部6dに保持される。このとき第3軸受16の下側面は、段部6mに当接する。
ピニオン軸8を第1ハウジング6に挿入した後、係止リング88を係止リング嵌合部6eに挿入して嵌合させる。このとき係止リング88の下側面は第3軸受16のアウタレース16aの上側面に当接する。そのため、段部6mと係止リング88によってアウタレース16aを挟持し、第3軸受16は軸方向移動を規制される。
その後、ピニオン軸8の上側からウォームホイール19が挿入されウォームホイール嵌合部8eに嵌合される。ウォームホイール19の下面側面は、フランジ部8dの上面側面に当接する。
次に、ラック軸10近傍について説明する。
ラック軸10を第1ハウジング6のラック軸収容部6iに挿入する。
ラック軸10をラック軸収容部6iに挿入した後、第1押圧部材42を押圧部収容部6jに挿入する。この第1押圧部材42の外周面には、凹溝状の2列のシール部材挿入部42aが形成され、このシール部材挿入部42aにシール部材86が挿入される。
また第1押圧部材42のラック軸10側の面には、ラック軸10のラック歯10aの背面の曲面に沿って当接面42bが形成される。また第1押圧部材42の当接面11aの反対側には中空部42cが形成され、当接面42bと中空部42cとを貫通する貫通孔42dが形成される。
中空部42cには、第2押圧部材43を挿入する。この第2押圧部材43は、軸部材43aとラジアル玉軸受である第5軸受43bとから構成されている。第2押圧部材43軸部材43aに第5軸受43bを挿入した状態で第2押圧部材43を中空部42cに挿入し、軸部材43aは中空部42cの底部で係止され、第5軸受43bは貫通孔42dに挿入される。
軸部材43aは、付勢部材44を介してスプリング13によってラック軸10側に付勢される。
次に、ストッパ12を押圧部収容部6jに挿入する。このストッパ12の押圧部材11側には中空のスプリング挿入部12aが形成され、このスプリング挿入部12aにスプリング13を挿入する。またストッパ12は係止部材93により第1ハウジング6に係止される。
これによりラック軸10に作用する小さな力は第2押圧部材43の第5軸受43bによって受け、大きな力は第1押圧部材42の当接面42bによって受けるようにしている。
ウォームシャフト収容部5bにウォームシャフト20を挿入し、ウォームシャフト20とウォームホイール19を噛み合わす。
第1ハウジング6と第2ハウジング5が組み合わされた後に、ボルト挿入部6fおよびボルト挿入部5gにボルト92を挿入して、第1ハウジング6と第2ハウジング5とが固定される。
[軸受の構成]
図3は第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の軸方向断面図および周方向断面図である。
第3軸受16は、図3(a)に示すように、アウタレース16a、ボール16b、インナレース16cから構成されている。インナレース16cの内周にピニオン軸8の第3軸受挿入部8cが嵌合される。またアウタレース16aの外周は第1ハウジング6の第3軸受保持部6dに保持されている。そのため、アウタレース16aは第1ハウジング6に対して相対回転せず、インナレース16cはピニオン軸8に対して相対回転しないようになっている。ボール16bはゲージによって周方向にほぼ等間隔に並べられて、アウタレース16aおよびインナレース16cに対してボール16bの公転方向の回転としてはゲージとともに相対回転する。第3軸受16は、ラジアル玉軸受であるがスラスト荷重も受けることができる。
第2軸受15は、図3(b)に示すように、アウタレース15a、コロ15bから構成されている。アウタレース15aの内周側にコロ15bが周方向にほぼ等間隔に並べられ、回動可能に支持されている。周上に並んだコロ15bの内側にピニオン軸8の第2軸受挿入部8bが挿入されている。またアウタレース15aの外周は、第1ハウジング6の第2軸受保持部6cに保持されている。そのため、アウタレース15aは第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。コロ15bはアウタレース15aに支持されているため、コロ15bの公転方向の回転としては第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。
第1軸受14は、図3(c)に示すように、アウタレース14a、コロ14bから構成されている。アウタレース14aの内周側にコロ14bが周方向にほぼ等間隔に並べられ、回動可能に支持されている。周上に並んだアウタレース14aの内側にピニオン軸8の第1軸受挿入部8aが挿入されている。この第1軸受14の外径は、第2軸受15の外径よりも小さく形成されている。またアウタレース14aの外周は、第1ハウジング6の第1軸受保持部6aに保持されている。そのため、アウタレース14aは第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。コロ14bはアウタレース14aに支持されているため、コロ14bの公転方向の回転としては第1ハウジング6に対して相対回転しないようになっている。
ここで第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16のうちピニオン歯9に近い、第1軸受14と第2軸受15によってピニオン軸8を支持するためには、第3軸受16の径方向隙間よりも、第1軸受14、第2軸受15の径方向隙間が小さい必要がある。そのためには、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の径方向隙間を設定した範囲に設計する必要がある。第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16の径方向隙間とは、第1ハウジング6またはピニオン軸8と相対回転する部材(以下、相対回転部材)と、相対回転部材に対向する部材(以下、対向部材)との径方向隙間のことを示す。
第3軸受16において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はボール16b、インナレース16cであり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はボール16b、アウタレース16aである。第3軸受16において、ボール16bに対する対向部材はアウタレース16a、インナレース16cであり、アウタレース16aとインナレース16cに対する対向部材はボール16bである。
すなわち、第3軸受16の径方向隙間とは、アウタレース16aとボール16bとの径方向隙間、インナレース16cとボール16bとの径方向隙間のことを示す。ここでアウタレース16aとボール16bとの径方向隙間およびインナレース16cとボール16bとの径方向隙間のうち、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをAとする。
第2軸受15において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はピニオン軸8であり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はコロ15bである。第2軸受15において、ピニオン軸8に対する対向部材はコロ15bであり、コロ15bに対する対向部材はピニオン軸8である。
すなわち、第2軸受15の径方向隙間とは、コロ15bとピニオン軸8との径方向隙間のことを示す。ここでコロ15bとピニオン軸8との径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをBとする。
第1軸受14において、第1ハウジング6に対する相対回転部材はピニオン軸8であり、ピニオン軸8に対する相対回転部材はコロ14bである。第1軸受14において、ピニオン軸8に対する対向部材はコロ14bであり、コロ14bに対する対向部材はピニオン軸8である。
すなわち、第1軸受14の径方向隙間とは、コロ14bとピニオン軸8との径方向隙間のことを示す。ここでコロ14bとピニオン軸8との径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをCとする。
このとき、第1軸受14、第2軸受15、第3軸受16は、各径方向隙間の大きさが「A≧B」、「A≧C」となるように形成されている。すなわち、ピニオン軸8のラジアル方向の荷重を常に第1軸受14と第2軸受15によって受けている。
[作用]
ピニオン軸8は短くした方がピニオン軸8の曲げ剛性が高く、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態が良好となるが、レイアウトの都合上ピニオン軸8を長くする必要がある。
例えば、実施例8のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8の軸方向とラック軸10の軸方向がねじれの位置にある。また、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置1は、ピニオン軸8付近にモータ21を設ける必要がある。しかし、モータ21は比較的嵩張るため、モータ21とラック軸10を収容するハウジングとが干渉しないように、ピニオン軸8を長くしてピニオン歯9とラック歯10aとの噛み合い位置からモータ21を離す必要がある。
そこで実施例8のパワーステアリング装置1では、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7とは反対側、すなわちピニオン歯9よりも下側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第1軸受14を設けた。また、ピニオン歯9に対して操舵入力軸7側、すなわちピニオン歯9よりも上側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持するラジアルコロ軸受である第2軸受15を設けた。また、第2軸受15に対して操舵入力軸7側、すなわち第2軸受15の上側に、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を支持する第3軸受16を設けた。
さらに、第2軸受15のコロ15bとピニオン軸8との径方向隙間であって、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをBは、アウタレース16aとボール16bとの径方向隙間およびインナレース16cとボール16bとの径方向隙間のうち、円周方向において最も小さい部分の径方向隙間の大きさをAよりも小さいようにした。
そのため、ラック軸10側からの力の入力やモータ21側からの力の入力に対して、ピニオン歯9に近い第1軸受14、第2軸受15が荷重を受けることとなる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
[効果]
以下に、実施例8のパワーステアリング装置1の効果を記載する。
(26)ピニオン軸収容部41を有する第1ハウジング6と、車両の転舵輪40に接続されるラック歯10aを有するラック軸10と、第1ハウジング6内に回転自在に設けられ、ラック軸10に対して直行する位置からずれた状態でラック歯10aと噛み合うピニオン歯9を有するピニオン軸8と、ピニオン軸8およびラック軸10から構成される操舵機構に対して操舵アシスト力を付与するモータ21と、ピニオン歯9の下側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第1軸受14と、ピニオン歯9に対して上側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支し、コロ軸受によって構成される第2軸受15と、第2軸受15に対して操舵入力軸7側に設けられ、第1ハウジング6に対してピニオン軸8を軸支する第3軸受16と、を有し、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第2軸受15との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間であって円周方向において最も小さい部分における径方向隙間は、第1ハウジング6またはピニオン軸8と第3軸受16との間に形成され且つ対向する部材同士が相対回転する側の径方向隙間の周方向の何れかの部分よりも小さいようにした。
第2軸受15とピニオン軸8との径方向隙間のうち最も小さい部分(大きさB)は、第3軸受16のボール16bとインナレース16cとの径方向隙間のうち最も小さい部分(大きさA)よりも小さく設定されている。そのため、ラック軸10側からの力の入力やモータ21側からの力の入力に対して、ピニオン歯9に近い第1軸受14、第2軸受15が荷重を受けることとなる。したがって、ピニオン軸8の曲げ剛性を高くすることができ、ピニオン歯9とラック歯10aの噛み合い状態を良好に保つことができる。
(他の実施例)
実施例1から実施例7のパワーステアリング装置1では、ピニオンアシスト式のパワーステアリング装置について説明したが、図13に示すようにコラムアシスト式のパワーステアリング装置に用いても良い。
また実施例1から実施例8のパワーステアリング装置1では、第2軸受15にラジアルコロ軸受を用いたが、滑り軸受を用いても良い。
実施例1のパワーステアリング装置のシステム構成図である。
実施例1のギヤボックスの部分断面図である。
実施例1の軸受の軸方向断面図および周方向断面図である。
実施例2のギヤボックスの部分断面図である。
実施例3のギヤボックスの部分断面図である。
実施例3の軸受の軸方向断面図および周方向断面図である。
実施例4のギヤボックスの部分断面図である。
実施例5のギヤボックスの部分断面図である。
実施例6のギヤボックスの部分断面図である。
実施例7のギヤボックスの部分断面図である。
実施例8のパワーステアリング装置のシステム構成図である。
実施例8のギヤボックスの部分断面図である。
他の実施例のパワーステアリング装置のシステム構成図である。
符号の説明
1 パワーステアリング装置
6 第1ハウジング
7 操舵入力軸
8 ピニオン軸
9 ピニオン歯
10 ラック軸
10a ラック歯
14、23 第1軸受
15 第2軸受
16 第3軸受
21 モータ(アクチュエータ)
40 転舵輪
41 ピニオン軸収容部