JP5283188B2 - 全固体二次電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、本発明者らは、LLZ結晶構造を有し、アルミニウムを含有するセラミックス(以下、LLZ−Alという。)を用いたペレットと、電極材料として用いるリチウム(Li)を主成分とする金属電極(以下、リチウム系金属電極という。)との接合を試みた。その結果、固体電解質とリチウム系金属電極から構成される二次電池の抵抗を低減するために固体電解質とリチウム系金属電極との接触性を改善し、その界面抵抗を小さくしようとすると、固体電解質にLiが侵入してショートが発生し易くなるという不都合があることがわかった。
本発明の全固体リチウム二次電池は、正極と、負極と、リチウム(Li)とランタン(La)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)からなるガーネット型もしくはガーネット型類似の結晶構造を有し、アルミニウム(Al)を含有する固体電解質と、を備えることができる。正極と負極のうち、少なくともいずれか一方は、リチウム(Li)を主成分とする金属電極である。リチウム(Li)を主成分とする金属電極と固体電解質との間には、リチウム(Li)を含む合金層が形成されている。例えば、図1に示すように、固体電解質1の正極3および負極5としてリチウム(Li)を主成分とする金属電極を用いる場合には、固体電解質1と正極3との間に、リチウムを含む合金層2が形成され、固体電解質1と負極5との間に、リチウムを含む合金層4が形成された接合体10を用いることができる。本発明の全固体リチウム二次電池は、耐リチウム性に優れる固体電解質を備えており従来に比して実用的な二次電池となっている。
本発明で用いるセラミックスは、LiとLaとZrとOを含むガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造(以下、LLZ結晶構造とする。)を有している。LLZ結晶構造は、実質的に、Li、La、Zr及びOからなっていてもよい。本発明で用いるセラミックス材料の化学組成は、非特許文献1に記載のLi7La3Zr2O12(LLZ)になるようにLaとZrを調合している。しかし、実際には合成粉末の粉砕、回収時のロス等が生じるため、LiとLaとZrとO各元素とも非特許文献1の化学式の組成からずれることがわかっている。
本発明で用いるセラミックス材料の製造方法は、リチウム(Li)成分、ランタン(La)成分及びジルコニウム(Zr)成分を含む原料を焼成して、リチウム(Li)とランタン(La)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)を含むセラミックス合成用の一次焼成粉末を得る第1の焼成工程と、前記第1の焼成工程で得られた前記一次焼成粉末を焼成して、リチウム(Li)とランタン(La)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)を含むガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有するセラミックスを合成する第2の焼成工程と、を備え、前記第1の焼成工程及び前記第2の焼成工程のいずれかあるいは双方の工程をアルミニウム(Al)成分の存在下に実施することにより、前記結晶構造を有し、かつアルミニウムを含有するセラミックス材料を製造することができる。
本発明で用いるセラミックス材料の原料としては、Li成分、La成分及びZr成分並びにAl含有化合物が挙げられる。
これらの各種成分は、特に限定されないで、それぞれの金属成分を含む、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩など各種金属塩を適宜選択して用いることができる。例えば、Li成分としてはLi2CO3又はLiOHを用い、La成分としてはLa(OH)3又はLa2O3を用い、Zr成分としてはZrO2を用いることができる。
Al含有化合物は、特に限定されないで、Alを含む金属酸化物、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属有機物、金属単体など各種金属塩を適宜選択して用いることができる。例えば、Al2O3、Al(NO3)3・9H2O、Al(OH)3、Al、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムメトキシド、塩化アルミニウム、塩化アルウミニウム六水和物、塩化ジエチルアルミニウム、オレイン酸アルミニウム、酢酸アルミニウムn水和物、シュウ酸アルミニウム、臭化アルミニウム六水和物、ステアリン酸アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、硫酸アルウミニウム、ヨウ化アルミニウムなどを用いることができる。Al含有化合物は、LLZ結晶構造を維持でき、Alが含まれていることにより焼結性や伝導率に改善が得られる範囲でLi成分、La成分及びZr成分に対して存在される。すでに説明したように、当業者であれば、このようなAl含有化合物の量を、例えば、LLZ構成成分に対して各種量のAl含有化合物の存在下で焼成工程を実施して焼結体を得て密度等を測定することで取得できる。また、このようなAl含有化合物の量を、例えば、LLZ構成成分に対して各種量のAl含有化合物の存在下で焼成工程を実施して焼結体を得て伝導率を測定することで取得できる。なお、Al含有化合物の供給形態については後段で詳細に説明する。
本発明で用いるセラミックス材料の製造方法は、主としてリチウム(Li)とランタン(La)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)からなるセラミックス合成用の一次焼成粉末を得る第1の焼成工程と、一次焼成粉末を焼成して、LLZ構造を有するセラミックスを合成する第2の焼成工程とを備えている。そして、これらの工程のいずれか又は双方をAl含有化合物の存在下で実施することにより、LLZ結晶構造を有しかつアルミニウムを含有するセラミックス材料を得ることができる。以下、各工程について説明するとともに、それぞれの工程におけるAl含有化合物の供給(存在)形態について説明する。
第1の焼成工程は、少なくともLi成分やLa成分等の熱分解を行い第2の焼成工程でLLZ結晶構造を形成しやくするための一次焼成粉末を得る工程である。一次焼成粉末は、LLZ結晶構造をすでに有している場合もある。焼成温度は、好ましくは、850℃以上1150℃以下の温度である。第1の焼成工程は、上記温度範囲内において、より低い加熱温度で加熱するステップとより高い加熱温度で加熱するステップとを備えていてもよい。こうした加熱ステップを備えることで、より均一な状態なセラミックス粉末を得ることができ、第2の焼成工程によって良質な焼結体を得ることができる。このような複数ステップで第1の焼成工程を実施するときには、各焼成ステップ終了後、ライカイ機、ボールミル、および振動ミルなどを用いて混練・粉砕することが好ましい。また粉砕手法は乾式で行うことが望ましい。こうすることで、第2の焼成工程により一層均一なLLZ相を得ることができる。
一方で、出発原料を変更することにより第1の熱処理工程を短縮化することができる。例えば、LiOHを出発原料に用いる場合、LLZ結晶構造を得るには、Li、La、及びZrを含むLLZ構成成分を850℃以上950℃以下の熱処理ステップで最高温度での加熱時間を10時間以下にすることができる。これは、出発原料に用いたLiOHが低温で液相を形成するため、より低温で他の出発原料と反応しやすくなるからである。
第2の焼成工程は、前記第1の焼成工程で得られた一次焼成粉末を950℃以上1250℃以下の温度で加熱する工程とすることができる。第2の焼成工程によれば、第1の焼成工程で得た一次焼成粉末を焼成し最終的に複合酸化物であるLLZ結晶構造を有するセラミックスを得ることができる。
一方で、出発原料を変更することにより第2の熱処理工程を低温化することができる。例えば、Li原料としてLiOHを出発原料に用いる場合、LLZ結晶構造を得るには、Li、La、及びZrを含むLLZ構成成分を950℃以上1125℃未満の温度でも熱処理することができる。これは、出発原料に用いたLiOHが低温で液相を形成するため、より低温で他の出発原料と反応しやすくなるからである。
一方で、第2の熱処理工程においてLi原料としてLiOHを用いるなどして低温化した場合、一次焼成粉末の成形体を同じ粉末内に埋没させなくても焼結させることができる。これは、第2の熱処理工程が低温化したことで、Liの損失が比較的抑制され、またセッターとの反応を抑制することができるからである。
本発明の二次電池においては、好ましくは、本発明で用いるセラミックス材料の製造方法によって得られる焼結体をそのまま、あるいは粉砕することなく適宜加工して固体電解質として用いることが好ましい。なお、第2の焼成工程において粉末状態で焼成した粉末を用いてLi−La−Zr系セラミックス及び他の成分を含有する成形体を得て、この成形体を固体電解質としてもよい。成形体の製造方法は、従来公知のセラミックス成形体の製造方法を適用できる。例えば、プレス法、ドクターブレード法、ロールコーター法等の成形方法等が挙げられる。
本発明の全固体リチウム二次電池の1対の電極は、正極、負極として用いられる。1対の電極は、酸化還元電位の互いに異なる活物質を材料に作製される。例えば、1対の電極は、互いに異なる活物質を用いて作製される。1対の電極のうち、より酸化還元電位が大きい活物質によって作製された電極は、正極として機能し、より酸化還元電位が小さい活物質によって作製された電極は、負極として機能する。本発明の全固体リチウム二次電池の1対の電極である正極、負極は、そのうちの少なくとも一方が、リチウム系金属電極である。
活物質としては特に制限はなく、従来公知の全固体電池に用いられる活物質を用いることができる。活物質として金属酸化物が用いられる場合には、二次電池の焼結を大気または酸素雰囲気下で行うことが可能となる。こうした活物質の具体例としては、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LixMn2O4又はLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えば、LiNi1−yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えば、LiMnyCo1−yO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えば、LixMn2−yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化合物(例えば、LixFePO4、LixFe1−yMnyPO4、LixCoPO4)、ナシコン構造を有するリチウムリン酸化合物(例えば、LixV2(PO4)3)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えば、V2O5)などを挙げることができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。なお、これらの化学式中、x,yは1<x<5,0<y<1の範囲であることが好ましい。これらのなかでは、LiCoO2、LixV2(PO4)3、LiNPO4、LiFePO4、LixNiO2が好ましい。
本発明の全固体リチウム二次電池のセルは、以上のようにして準備された正極材料又は正極、負極材料又は負極に固体電解質を組み合わせることにより作製される。
本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法は、リチウムを含む合金層を介して固体電解質とリチウム系金属電極とを接合する接合工程を含む。接合工程は、合金層とリチウム系金属電極とを圧着する工程を含んでいてもよいし、リチウム系金属電極を加熱する工程を含んでいてもよい。リチウムを含む合金層は、接合工程前にリチウムを含む合金層として形成されていてもよい。この場合、例えば、合金層は、合金層の材料となる合金をターゲットとして用いて蒸着等を行うことによって形成することができる。蒸着を行う場合には、例えば、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法や、スパッタ等の物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)法を用いることができる。
(原料の調製)
出発原料として、水酸化リチウム、水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)、酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)を用いた。これらの粉末をそれぞれモル比にて、LiOH:La(OH)3:ZrO2=7:3:2になるように秤量した。これらの粉末をライカイ機にて混合して原料粉末とした。
前記原料粉末をアルミナ坩堝に入れて600℃/hにて昇温し900℃にて6h保持した。
熱処理後、本粉末と玉石を混合し振動ミルを用いて3h粉砕した。粉砕後、本粉末を篩通しした後、本粉末に対しγ−Al2O3を、1.5質量%の濃度で添加し混合した。これらの粉末を金型を用いてプレス成形した後、そのペレットをアルミナセッター上に乗せ、セッターごとアルミナサヤ内に入れて、200℃/hで昇温し、1000℃にて36h保持することにより、φ約13mm、厚み約1mm、相対密度約90%の焼結体ペレットを得た。
得られた焼結体ペレットの表面および裏面にスパッタを行って、厚さ50nmのAu膜を成膜し、Ar雰囲気のグローブボックス内で、厚さ30μmのリチウム金属箔(本城金属製)をφ10mmの円形に成形したリチウム金属電極材料を、その正極側もしくは負極側となる面に形成されたAu膜に対して貼り付けた。その後、195℃に加熱したホットプレート上にCu箔を載せ、Cu箔上にリチウム金属電極材料が接するようにペレットを載せて、Cu箔を介して1kg重/cm2の荷重で5分間圧着した。ペレットの他方の面に形成されたAu膜に対しても、同様の手順によって、上記のリチウム金属電極材料を貼り付け、加熱し、圧着し、ペレット接合体を得た。
Ar雰囲気のグローブボックス内で、実施例1と同様の方法で準備したφ約13mm、厚さ約1mm、相対密度約90%の焼結体ペレットの正極側もしくは負極側に、実施例1と同様のリチウム金属電極材料を貼り付け、1kg重/cm2の荷重で5分間圧着した。ペレットの他方の面に対しても、同様の手順によって、上記のリチウム金属電極材料を貼り付け、加熱し、圧着し、ペレット接合体を得た。
Ar雰囲気のグローブボックス内で、実施例1と同様の方法で準備したφ約13mm、厚さ約1mm、相対密度約90%の焼結体ペレットの正極側もしくは負極側に、実施例1と同様のリチウム金属電極材料を貼り付けた。その後、195℃に加熱したホットプレート上にCu箔を載せ、Cu箔上にリチウム金属電極材料が接するようにペレットを載せて、Cu箔を介して1kg重/cm2の荷重で5分間圧着した。ペレットの他方の面に対しても、同様の手順によって、上記のリチウム金属電極材料を貼り付け、加熱し、圧着し、ペレット接合体を得た。
Ar雰囲気のグローブボックス内で、実施例1と同様の方法で準備したφ約13mm、厚さ約1mm、相対密度約90%の焼結体ペレットの正極側もしくは負極側に、実施例1と同様のリチウム金属電極材料を貼り付けた。その後、195℃に加熱したホットプレート上にCu箔を載せ、Cu箔上にリチウム金属電極材料が接するようにペレットを載せて、Cu箔を介して1kg重/cm2の荷重で15分間圧着した。ペレットの他方の面に対しても、同様の手順によって、上記のリチウム金属電極材料を貼り付け、加熱し、圧着し、ペレット接合体を得た。
得られたペレット接合体をAr雰囲気のグローブボックス内に導入し、本グローブボックス内にてCR2032コインセルに組み込んだ。本コインセルを大気中に取り出し、ソーラトロン社製電気化学測定システム(ポテンショ/ガルバノスタッド,周波数応答アナライザ)を用い、周波数1MHz〜0.1Hz、電圧10mVにて交流インピーダンス測定を行い、界面電荷移動抵抗を調べた。結果を表1に示す。
2、4 合金層
3 正極
5 負極
10 接合体
Claims (7)
- 少なくとも一方がリチウム(Li)を主成分とする金属電極である1対の電極と、
リチウム(Li)とランタン(La)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)を含むガーネット型もしくはガーネット型類似の結晶構造を有し、アルミニウム(Al)を含有するセラミックス焼結体である固体電解質と、
前記リチウム(Li)を主成分とする金属電極と前記固体電解質との間に形成された、リチウム(Li)を含む合金層と、
を備える、全固体リチウム二次電池。 - 前記合金層は、金(Au)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)からなる群から選択される1種又は2種以上と、リチウム(Li)との合金層である、請求項1に記載の二次電池。
- 少なくとも一方がリチウム(Li)を主成分とする金属電極である1対の電極と、
固体電解質と、
を備える、全固体リチウム二次電池の製造方法であって、
前記固体電解質は、リチウム(Li)とランタン(La)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)を含むガーネット型もしくはガーネット型類似の結晶構造を有し、アルミニウム(Al)を含有するセラミックス焼結体であり、
リチウム(Li)を含む合金層を介して前記固体電解質と前記リチウム(Li)を主成分とする金属電極とを接合する接合工程を含む、製造方法。 - 前記接合工程は、
前記固体電解質の表面に、リチウム(Li)と合金を形成する合金形成層を形成する第1工程と、
前記合金形成層と前記リチウム(Li)を主成分とする金属電極とを圧着して、リチウム(Li)を含む合金層を形成する第2工程とを含む、請求項3に記載の製造方法。 - 前記第1工程は、前記固体電解質の表面に前記合金形成層を蒸着もしくはスピンコートによって形成する工程である、請求項4に記載の製造方法。
- 前記合金形成層は、金(Au)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項3〜5に記載の製造方法。
- 前記第2工程は、前記リチウム(Li)を主成分とする金属電極を加熱する工程を含む、請求項4〜6に記載の製造方法。
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