JP5282297B2 - 中間転写体 - Google Patents

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Description

本発明は電子写真方式の画像形成装置に使用する中間転写体に関する。
複写機、レーザープリンタなどの画像形成装置における画像形成方法として、感光ドラム上に小径トナーを用い形成されたトナー画像を、中間転写体へ一次転写後、中間転写体から転写材(例えば紙)へ二次転写する転写方式が知られている。
又、近年ではカラー化が進められており、特にカラー画像形成装置では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを使用し、感光体に形成された各トナー画像を中間転写体へ一次転写し形成させれた4色のトナー画像を、4色同時に転写材(例えば紙)へ二次転写するため、高画質化、高速化が求められている。中間転写体としては、基材に無端のベルトを使用した中間転写体ベルト及び、基材に金属ロールを使用した中間転写体ロールが知られている。
転写方式の場合、中間転写体は高画質化、高速化を達成するための代表的な項目として以下に示す項目が知られている。
1)中間転写体の表面に感光体から転写されて形成されたトナー画像の転写材への高転写率が要求されている。
転写率とは、中間転写体の表面に形成されたトナー画像の転写材への割合を言う。転写率が低いと転写材へ転写された画像に抜けが生じたり、濃度ムラが発生し高画質化が出来ない。
2)中間転写体の高耐久性が要求されている。
耐久性とは、長時間の転写材への転写が可能となる性能を言う。中間転写体の表面は転写材(例えば紙)へ二次転写した後、残存するトナーを除去するためクリーニングブレードで擦りクリーニングされるのである、クリーニングブレードとの接触で表面の平滑性がなくなったり、ヒビ割れが発生し感光体からの安定したトナー画像の転写が出来なくなる。又、中間転写体が無端のベルトの場合は、引き回しでクラック(ヒビ割れ)が発生する。
3)フィルミングが発生しないことが要求されている。
フィルミングとは、転写材(例えば紙)へ二次転写した後、中間転写体の表面をクリーニングブレードでクリーニングを行うのであるが、除去されずに残るトナーが徐々に集積される現象を言う。トナーが残る原因としては、中間転写体の表面に発生したクラックにトナーが入り込む、クリーニングブレードとの接触等で表面に出来た凹部に溜まったトナーが残る。フィルミングが発生した場所では転写率が低下したり、画像スジやムラが発生し高画質化が出来ない。更に、省エネルギーという観点から、近年、低温定着トナーが用いられるようになってきた。低温定着トナーはガラス転移点が低いことからよりフィルミングが発生し易く、フィルミング発生が大きな問題となってきている。フィルミングが発生した場所では転写率が低下したり、画像スジやムラが発生し問題となる。
4)ブリードが発生しないことが要求されている。
ブリードとは、中間転写体を構成している下層に含まれている親油性分(例えば、可塑剤等)が表面層に浸み出してくる現象を言う。中間転写体の表面に親油性分が浸み出した場合、中間転写体と接触している感光体へ親油性分が転写し、感光体のトナー像形成に影響が出る。又、中間転写体にクラック発生した場合は、クラックに沿って親油性分が浸み出してくる。
中間転写体は感光体から感光体の表面に形成されているトナー画像を中間転写体表面に転写される時及び、中間転写体表面に形成されているトナー画像を転写材(例えば紙)へ転写する時の転写率を上げ、トナー画像を均一に転写するためトナー画像への集中荷重が掛けられることで発生する像抜けを防止するため、集中荷重防止策が採られている。集中荷重防止策は、クリーニングブレードによるクリーニング時の中間転写体表面への応力分散、中間転写ベルトの引き回し時に中間転写ベルトに掛かる応力分散にも効果を示すとされている。
集中荷重防止策としては、例えば中間転写体ベルトの場合は基材に弾性体を使用したり、基材の上に弾性層を設けたりする方法、中間転写体ロールの場合は基材の上に弾性層を設ける方法が知られている。
中間転写体への1)〜4)の要求に対してこれまでに多くの検討が成されて来た。
例えば、ブリードの発生防止、高耐久性、高品質の画像形成のため、ベルト基材に弾性材であるクロロプレンゴム(CR)とエチレン−プロピレンゴムに第3成分としてジエン系モノマーを添加したEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)を使用し、表層にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を形成した中間転写体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1の中間転写体は、確かに短時間の間ではブリードの発生防止、高耐久性、高品質の画像形成には効果を示すが、特許文献1の中間転写体が中間転写体ベルトの場合では、表層が硬いため基材との間に中間層を設けても長時間(例えば、30万枚コピー)使用した場合、表層にクラックが発生し、発生したクラックが原因でフィルミング、ブリードが発生し高品質の画像形成が出来ないことが判った。
基体としてポリアミド系樹脂を使用し、その上に弾性層/酸化ケイ素を設けてトナー離型性を向上させる中間転写ベルトが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2の中間転写ベルトは、表面層を酸化ケイ素層で構成することで、中間転写ベルトから転写材へのトナー画像の転写率はよいが、表層が硬いため長時間使用した場合、表層にクラックが発生し、発生したクラックが原因でフィルミング、ブリードが発生し高品質の画像形成が出来ないことが判った。
この様な状況から、長時間の使用で、クラックの発生、クリーニングブレードによる表面の劣化がなく、フィルミングの発生がない高転写効率、高耐久性の電子写真方式の画像形成装置に使用する中間転写体高耐久性を有する中間転写体を開発することが望まれている。
特開2006−259581号公報 特開2001−347593号公報
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は転写効率、耐久性が高く、フィルミングの発生がない電子写真方式の画像形成装置に使用する中間転写体を提供することである。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
1.電子写真方式の画像形成装置に使用する中間転写体であって、基材の上に少なくとも、弾性層、樹脂層、無機化合物層をこの順に設け、前記無機化合物層が少なくとも2層から構成されており、下層の無機化合物層の炭素含有率が、隣接する上層の該無機化合物層の炭素含有率よりも高いことを特徴とする中間転写体。
2.前記樹脂層がフッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリレート系樹脂の中から選ばれる樹脂、又はこれらを混合した樹脂で形成されていることを特徴とする前記1に記載の中間転写体。
3.前記樹脂層がフッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする前記1または2に記載の中間転写体。
4.前記弾性層の弾性率が0.1MPa〜10MPa、樹脂層の弾性率が0.1GPa〜10GPa、無機化合物層の弾性率が0.3GPa〜50GPaであることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の中間転写体。
5.前記無機化合物層が金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物の中から選ばれる少なくとも1種から形成されていることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載の中間転写体。
6.前記無機化合物層がAl、Si、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物から形成されていることを特徴とする前記1〜5の何れか1項に記載の中間転写体。
7.前記無機化合物層を構成する無機化合物が酸化珪素または炭素を含有する酸化珪素であることを特徴とする前記1〜5の何れか1項に記載の中間転写体。
.前記無機化合物層が大気圧プラズマCVD法によって形成されたことを特徴とする前記1〜の何れか1項に記載の中間転写体。
我々は、高転写率性を有する無機化合物層を表面層に有する中間転写体を使いこなすために検討した結果次のことが判った。高転写率性を有する無機化合物層を表面層に有する中間転写体を使用し、長時間する時に発生するフィルミング、ブリードは、何れも無機化合物層に発生するクラックによるものであると推定した。
クラックが何故発生するのか更に検討した結果、中間転写ロールの場合は転写後のクリーニングブレードの押圧による応力集中、又中間転写ベルトの場合はクリーニングブレードの押圧による応力集中と引き回しによる圧縮・延ばしによる応力集中に対して無機化合物層の耐久性、及び下層との追従性が低いことが判った。
耐久性を上げるためには、弾性層から無機化合物層にいたる膜厚方向での弾性率をコントロールすること、および無機化合物層の密着性をあげ、下地層との追従性を良好とするため、弾性層および無機化合物層間に樹脂層形成することが効果的であることが判明し本発明に至った次第である。樹脂層は単に表面の無機化合物層にかかる応力を分散させる機能のみでなく、弾性層と比較して無機化合物層との密着性を向上する目的も有している。
転写効率、耐久性が高く、フィルミングの発生がない電子写真方式の画像形成装置に使用する中間転写体を提供することが出来た。
本発明の実施の形態を図1〜図6を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、中間転写体として中間転写ベルトを使用した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。尚、本図はフルカラー画像形成装置の場合を示している。
図中、1はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1は、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体形成ユニット7と、記録媒体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としてのベルト式定着装置24とを有する。フルカラー画像形成装置1の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Y、感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。
又、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。
又、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。
又、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成ユニット10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラ5K、クリーニング手段6Kを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体として無端の中間転写ベルト70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端の中間転写ベルト70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体として用紙等の記録媒体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5Aに搬送され、記録媒体P上にカラー画像が一括転写される。
カラー画像が転写された記録媒体Pは、熱ローラ定着器270が装着された定着装置24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、二次転写ローラ5Aにより記録媒体Pにカラー画像を転写した後、記録媒体Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラ5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
二次転写ローラ5Aは、ここを記録媒体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
又、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とを有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端の中間転写ベルト70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとを有している。
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
この様に感光体1Y、1M、1C、1Kの外周面上を帯電、露光し外周面上に潜像を形成した後、現像によりトナー像(顕像)を形成し、無端ベルト状の中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録媒体Pに転写し、ベルト式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。尚、本発明で像形成時とは潜像形成、トナー像(顕像)を記録媒体Pに転写し最終画像を形成することを含む。
トナー像を記録媒体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、各感光体1Y、1M、1C、1Kに配設されたクリーニング手段6Y、6M、6C、6Kで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
上記カラー画像形成装置では、中間転写体をクリーニングするクリーニング手段6Aのクリーニング部材として、弾性ブレードを用いる。又、各感光体に脂肪酸金属塩を塗布する手段(11Y、11M、11C、11K)を設けている。尚、脂肪酸金属塩としては、トナーで用いたと同じものを用いることが出来る。
図2は中間転写体として中間転写ロールを使用した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。
1′はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1′は、現像ユニット2′と、感光体3′と、転写ユニット4′と、定着器5′と、給紙カセット6′とを有している。現像ユニット2′はマゼンタトナーMを有するマゼンタ現像ユニット2′Mと、シアントナーCを有するシアン現像ユニット2′Cと、イエロートナーYを有するイエロー現像ユニット2′Yと、ブラックトナーKを有するブラック現像ユニット黒2′Kとを有し、感光体3′の周囲に配設されている。
感光体3′は矢示の方向に所定の周速度で回転駆動される様に配設されている。感光体3′は回転過程で、感光体3′の周囲に配設された一次帯電器(コロナ放電器)7′により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで画像露光手段(不図示)による画像露光8′を受けることにより目的のカラー画像の第1の色成分像、例えばマゼンタ成分像に対応した静電潜像が形成される。次いでその静電潜像がマゼンタ現像ユニット2′Mにより第1色であるマゼンタトナーMにより現像される。
転写ユニット4′は中間転写ローラ401′と、中間転写ローラクリーナ402と、転写ローラ403とを有している。中間転写ローラ401′は感光体3′と逆方向(図中の矢印方向)に感光体3′と同じ周速度をもって回転駆動される様になっている。
感光体3′の上に形成担持された上記第1色のマゼンタトナー画像は、感光体3′と中間転写ローラ401′とのニップ部N1(一次転写部)を通過する過程で、電源(不図示)から中間転写ローラ401′に印加される一次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写ローラ401′の外周面に順次中間転写されていく。
中間転写ローラ401′に対する第1色のマゼンタトナー画像の転写を終えた感光体3′表面は、感光体3′の周囲に配設されたクリーニング装置(不図示)により清掃される。以下同様に、第2色目のシアントナー画像、第3色目のイエロートナー画像、第4色目のブラックトナー画像が感光体3′に順次に形成され、それらのナトー画像が順次に中間転写ローラ401′の上に重畳転写され、中間転写ローラ401′の上に第1〜第4色のトナー画像が重ね合わせられ、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
中間転写ローラ401′の上に重畳転写された合成カラートナー画像の、転写材9′への転写(二次転写)は、それまで離間していた転写ローラ402′がシフト手段(不図示)により中間転写ローラ401′に当接されると共に、給紙カセット6′から転写材9′が給紙ローラ601′により1枚分離給送され、レジストローラ602′により中間転写ローラ401′と転写ローラ403′との当接ニップ部N2(二次転写部)に所定のタイミングで給送され、同時に二次転写バイアスがバイアス電源(不図示)から転写ローラ403′に印加される。この二次転写バイアスにより中間転写ローラ401′から転写材9′へ合成カラートナー画像が転写される。
合成カラートナー画像が転写された転写材9′は中間転写ローラ401′から分離されてガイドで定着器5′へ導入され熱ローラ501′と加圧ローラ502′により加熱定着される。
転写材9′への合成カラートナー画像が転写終了後、中間転写ローラ401′の上の転写残トナーは中間転写ローラ401′に対して中間転写ローラクリーナ402′がシフト手段(不図示)により当接(図中の矢印方向)されることで除去される。
本発明において中間転写体とは図1に示す無端の中間転写ベルト70及び図2に示す中間転写ロール401′を言い、本発明は図1に示す無端の中間転写ベルト70及び図2に示す中間転写ロール401′に関するものである。
図3は図1に示す中間転写体の中間転写ベルトの拡大概略断面図である。
図中、70は中間転写体を示す。中間転写体は、基体70aの上に順次弾性層70bと、樹脂層70cと、無機化合物層70dとを積層した構成を有している。Eは基体70aの厚さを示す。厚さEは、機械的強度、画質、製造コスト等を考慮し、50μm〜1000μmが好ましい。Fは弾性層の厚さを示す。厚さFは、50μm〜500μmが好ましい。また100〜300μが更に好ましい。
弾性層はJIS A硬度で40°〜70°、弾性率は、基材および樹脂層の弾性率にもよるが、強度およびニップ性等を考慮し、引張り弾性率1×10〜1×10Pa(JIS K7161)であることが好ましい。
樹脂層の膜厚は、1μm〜100μmが好ましく、更に2μm〜30μmが好ましい。樹脂層の弾性率は弾性層よりも高く、0.1GPa〜5GPaであることが好ましい。樹脂層には弾性率の調整、あるいは後述する無機化合物との密着性向上のために樹脂粒子及び/又は無機微粒子を5質量%〜300質量%含有してもよい。
更に樹脂層は弾性層と無機化合物層間に少なくとも1層あればよく、弾性率あるいは組成の異なる2層以上の樹脂層を積層した構成をとることもできる。この場合、樹脂層の弾性率は積層後の弾性率を示すが、下層の樹脂層弾性率がそれよりも上層の樹脂層弾性率より低いことが好ましい。
Hは無機化合物層の厚さを示す。厚さHは、耐久性、表面強度、樹脂層との密着性、屈曲耐性、成膜時間等を考慮し、50nm〜1000nmが好ましい。より好ましくは200nm〜500nmである。
無機化合物層の弾性率は樹脂層よりも高く、10GPa〜50GPaであることが好ましく、又、硬度は、摩耗、傷の発生等を考慮し、0.5GPa〜10GPa、好ましくは1GPa〜5GPaであることが好ましい。
ここで樹脂層、無機化合物層の弾性率および無機化合物層の硬度とは、基体Eに対してそれぞれ直接弾性層、樹脂層、無機化合物層を積層時と同じ条件で形成し、ナノインデンテーション法によって測定した値を示す。
ナノインデンテーション法によるヤング率の測定方法は、微小なダイヤモンド圧子を薄膜に押し込みながら荷重と押し込み深さ(変位量)の関係を測定し、測定値から塑性変形硬さを算出する方法である。
測定条件
測定機:NANO Indenter XP/DCM(MTS Systems社製)
測定圧子:先端形状が正三角形のダイヤモンドBerkovich圧子
測定環境:20℃、60%RH
測定試料:5cm×5cmの大きさに中間転写体を切断して測定試料を作製
最大荷重設定:25μN
押し込み速度:最大荷重25μNに5secで達する速度で、時間に比例して加重を印加する
尚、測定は各資料ともランダムに10点測定し、その平均値をナノインデンテーション法により測定した弾性率、硬度とする。
又、無機化合物層の膜厚は、「MXP21」(マックサイエンス社製)を用いて測定して得られた値である。具体的な膜厚の測定は、以下の方法で行うことができる。X線源のターゲットには銅を用い、42kV、500mAで作動させる。インシデントモノクロメータには多層膜パラボラミラーを用いる。入射スリットは0.05mm×5mm、受光スリットは0.03mm×20mmを用いる。2θ/θスキャン方式で0から5°をステップ幅0.005°、1ステップ10秒のFT法にて測定を行う。得られた反射率曲線に対し、マックサイエンス社製Reflectivity Analysis Program Ver.1を用いてカーブフィッティングを行い、実測値とフィッティングカーブの残差平方和が最小になるように各パラメータを求める。各パラメータから積層膜の膜厚を求める。
無機化合物層は少なくとも2層で形成してもよい。2層の場合、上層の厚さは、10nm〜300nmであることが好ましい。下層の厚さは、50nm〜500nmであることが好ましい。この様にすることで、更なる耐久効果が得られる。
無機化合物層が2層から構成されている場合、弾性率は基材上に下層、上層を形成した後、前述したナノインデンテーション法により測定した値を無機化合物層の弾性率とするが、下層の弾性率は上層の弾性率よりも小さいことが好ましい。
下層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.5原子数濃度%〜 10原子数濃度%、最上層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.1原子数濃度%以下であることが好ましい。
本発明でいう炭素含有率を示す原子数濃度とは、下記のXPS法によって算出されるもので、以下に定義される。
原子数濃度%(atomic concentration)=炭素原子の個数/全原子の個数×100
XPS表面分析装置は、本発明では、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。具体的には、X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5eV〜1.7eVとなるように設定した。
測定としては、先ず、結合エネルギー0eV〜1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。
得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピュータの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、各分析ターゲットの元素(炭素、酸素、ケイ素、チタン等)の含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。
定量処理をおこなう前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションをおこない、5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。このShirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
次に本発明の中間転写体を構成している材料と製造方法に付き説明する。
(中間転写ベルトの基体)
本発明に用いられる基体としては、樹脂に導電剤を分散させてなるシームレスのベルトを用いることが好ましい。
〈樹脂基体〉
樹脂基体は、クリーニング部材であるクリーニングブレードから中間転写ベルトに加わる負荷で中間転写体が変形することを回避し、転写部への影響を低減させる剛性を有するものである。樹脂基体は、ナノインデンテーション法により測定したヤング率が5.0GPa〜15.0GPaの範囲内の材料を用いて形成することが好ましく、8.0GPa〜15.0GPaの範囲内の材料がより好ましい。
この様な性能を発現する材料として、例えば、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテル、エーテルケトン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド及びポリフェニレンサルファイド等のいわゆるエンジニアリングプラスチック材料を用いることが出来、等の樹脂材料が挙げられ、これらの中ではポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドが好ましい。これらの樹脂材料のナノインデンテーション法により測定したヤング率は5.0GPaを超えるものであり、厚み50〜200μmで、樹脂基体としての機械特性を満足する。更に、前述の樹脂材料と下記の弾性材料とをブレンドした材料を使用することも可能である。前記弾性材料としては、例えば、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
この中でも、ポリフェニレンサルファイド或いはポリイミド樹脂を含有することが好ましい。ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の加熱により形成される。又、ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物や、その誘導体とジアミンのほぼ等モル混合物を有機極性溶媒に溶解させ、溶液状態で反応させることにより得られる。
尚、本発明では、樹脂基体にポリイミド系樹脂を使用する場合、樹脂基体におけるポリイミド系樹脂の含有率が51%以上であることが好ましい。
本発明に係る樹脂基体は、樹脂材料に導電性物質を添加して、電気抵抗値(体積抵抗率)を10Ω・cm〜1011Ω・cmに調整したシームレスベルトやドラムが好ましい。
樹脂材料に添加する導電性物質としては、カーボンブラックを使用することが出来る。カーボンブラックとしては、中性又は酸性カーボンブラックを使用することが出来る。導電性物質の使用量は、使用する導電性物質の種類によっても異なるが中間転写体の体積抵抗値及び表面抵抗値が所定の範囲になるように添加すればよく、通常、樹脂材料100質量部に対して10質量部〜20質量部、好ましくは10質量部〜16質量部である。
本発明に用いられる基体は、従来公知の一般的な方法により作製することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイを使用したインフレーション法により筒状に成形した後、輪切りにすることで環状の無端ベルト状の基体を作製することが出来る。
(弾性層)
弾性層としては、特に限定されるものではなく、任意のゴム材料、熱可塑性エラストマーを用いることができる。例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム及びノルボルネンゴム等から選ぶことができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン− ブタジエントリブロック系、ポリオレフィン系などを用いることができる。
又、弾性層は基体に使用する樹脂材料と弾性材料とをブレンドした材料を用いて形成した層でもよい。
例えばシリコーンゴムの素材としては、ビニル基を含有したポリオルガノシロキサン組成物が用いられる。シリコーンゴムとしては、付加反応触媒により硬化可能な2液性の液状シリコーンゴムや過酸化物からなる加硫剤により加硫(硬化)可能な熱加硫型シリコーンゴムが用いられる。又、弾性体層には、シームレスベルトの使用目的、設計目的などに応じて、充填剤、増量充填剤、加硫剤、着色剤、導電性物質、耐熱剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。また、配合剤の添加量などにより合成樹脂の可塑度は変化するが、硬化前の剛性樹脂の可塑度としては、120以下のものが好適に用いられる。
弾性層は、弾性材料に導電性物質を分散させて、電気抵抗値(体積抵抗率)を10〜1011Ω・cmに調製することができる。
弾性層に添加する導電性物質としては、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ、炭化ケイ素等を使用することができる。カーボンブラックとしては、中性又は酸性カーボンブラックを使用することができる。導電性物質の使用量は、使用する導電性物質の種類によっても異なるが弾性層の体積抵抗値及び表面抵抗値が所定の範囲になるように添加すれば良く、通常、弾性材料100質量部に対して10〜20質量部、好ましくは10〜16質量部である。
弾性体層の形成方法
弾性体層は、公知の塗布方法、例えば特開2006−255615号公報に記載の浸漬塗布、特開平10−104855号公報に記載の円形量規制型塗布、特開2007−136423号公報に記載の環状塗布方法、或いは浸漬塗布と円形量規制型塗布を組み合わせて塗膜を設けて作製することが出来るが、これに限定されるものではない。
具体的には、無端ベルト状の樹脂基体の上に弾性体層を形成する方法としては、例えば弾性層用の塗布液が収容されている槽中に、円筒の芯材に環状の無端ベルト状の樹脂基体をセットし、垂直に立てた状態で入れて浸漬させる。この時、浸漬を数回繰り返して所定の厚さの塗膜を形成させた後、塗布液中から引上げる。次に、乾燥し溶剤を除去した後、加熱処理(例えば60〜150℃×60分間)を行い、弾性層を作製する。
金属円筒状の基体の上に弾性体層を形成する方法も無端ベルト状の樹脂基体の場合と同様に、ゴム、エラストマー、樹脂等を金属ロール上に溶融成形、注入成形、浸漬塗工あるいはスプレー塗工等により成形することによって設けることが可能である。
(樹脂層)
樹脂層としては、上記弾性層よりも高い弾性率を有する樹脂であれば特に限定はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アルコール可溶性ナイロン、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノール、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリホスファゼン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラバン酸、ポリアリルフェノール、フッ素、ポリ尿素、アイオノマー、シリコーン等の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂、およびこれら2種以上からなる混合物または共重合体等を挙げることが出来る。特にフッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が好ましい。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキビニルエーテル(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフロライドの共重合体(THV)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)などを使用することができる。上記フッ素樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
ウレタン樹脂としては塗料の分野において公知のポリウレタン樹脂が使用可能である。特に水系ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂を構成するポリオール化合物としては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール(ポリジエン系ポリオールを水素添加したポリオールを含む。)、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、アクリル樹脂系ポリオールなどがある。
ウレタン樹脂の硬化剤としては、ウレタン樹脂の原料として一般的に用いられているイソシアネート化合物を用いることができる。この場合、イソシアネート化合物とは、分子中に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物であり、このようなイソシアネート化合物として具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、リジンエステルジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート(LDI)、ウンデカントリイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、および上記イソシアネート化合物の重合体、誘導体、変性体、水素添加体等が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、2官能性(D単位)、3官能性(T単位)のシロキサン単位を10mol%以上、好ましくは主骨格として構成している公知の樹脂で、フェニル系シリコーン樹脂、メチル系シリコーン樹脂、メチルフェニル系シリコーン樹脂などが用いられるが、これらに限定されるものではない。さらに硬化機構も加熱硬化型,室温硬化型に限定されるものではない。さらにシリコーンゴムからなる層を用いることもできる。シリコーンゴム層としては、公知のメチルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴムなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。さらにシリコーンゴムと添加物による過酸化反応、縮合反応、付加反応物を行うことによって、架橋構造を持たせても良い。さらにシリカなどの添加剤によって補強することも可能である。
アクリル系樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて形成される。特にバインダーとしてアクリル系の活性エネルギー線硬化樹脂を主成分とすることが好ましい。活性エネルギー線硬化アクリレート系樹脂としては、例えば、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂等が挙げられる。
アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることができる。例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部と、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
これらの中で、バインダーの主成分として、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレートから選択されるアクリル系の活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。
活性光線硬化樹脂層の塗布組成物は、固形分濃度は10質量%〜100質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、または混合して使用できる。好ましくは、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、さらに好ましくは5質量%〜80質量%含有する溶媒が用いられる。
樹脂層には、必要に応じて樹脂または無機の微粒子を含有させることができる。これら微粒子には各種の材料を使用することができる。たとえばフッ素ゴム、フッ素エラストマー、および、PTFE、PVDF、ETFE、PFA等のフッ素樹脂微粒子、シリコーン樹脂粒子、PE、PP、PS、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂微粒子、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化鉄などの無機粉体などであり、これらを単独または複数混合して使用することもできる。
微粒子の形状や粒径も特に限定されるものではなく球状、繊維状、板状、不定型などどのような形状でも使用できる。微粒子の粒径は制限はないものの分散性や諸特性を考慮すると0.01μm〜30μmの範囲が望ましい。また、諸特性に問題を与えない範囲で分散剤を使用することもできる。
樹脂層には導電剤を含んでいても良い。導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素系物質:アルミニウム、銅合金等の金属または合金:更には酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等の少なくとも1種の微粉末が用いられる。
これらの樹脂層形成材料の中で、後述する無機化合物層との密着性および弾性率の面からフッ素樹脂またはウレタン樹脂またはシリコーン樹脂あるいはこれらの混合物が好ましい樹脂として挙げられる。好ましくは、少なくともフッ素樹脂粒子を含んでなるウレタン系樹脂塗料組成物であり、樹脂層中に含まれるフッ素樹脂の含有量は特に限定されないが、ウレタン樹脂100質量部に対して30質量部〜70質量部の範囲内にあることが好ましく、40質量部〜60質量部の範囲内にあることがより好ましい。また樹脂層中には、フッ素樹脂以外からなる他の樹脂成分も含まれてもよい。
フッ素樹脂としては、先にあげたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合(ECTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体及びフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体などの樹脂を挙げることができる。これらを単独、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
樹脂層の形成方法
無端ベルト状の基体の上に形成された弾性体層の上に樹脂層を形成する方法としては、弾性体層の形成方法と同じ方法で形成することが可能である。例えば樹脂層用の塗布液が収容されている槽中に、円筒の芯材に弾性層までが形成された環状の無端ベルト状の樹脂基体をセットし、垂直に立てた状態で入れて浸漬させる。この時、浸漬を数回繰り返して所定の厚さの塗膜を形成させた後、塗布液中から引上げる。次に、乾燥し溶剤を除去した後、加熱処理(例えば60℃×60分間〜150℃×60分間)を行い、樹脂層を作製する。
金属円筒状の基体の上に樹脂層を形成する方法も無端ベルト状の樹脂基体の場合と同じ方法で樹脂層を形成することが可能である。
(無機化合物層)
無機化合物層はIn、Sn、Cd、Zn、Al、Sb、Ge、W、Mo、Si、Zr、Ce、Mg、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物から形成されていることが好ましく、特にAl、Si、Tiが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化チタン、酸化窒化チタン、窒化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。更に酸化珪素または炭素を含有する酸化珪素が最も好ましい。
無機化合物層の形成方法は特に限定はなく、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法(物理蒸着法)、CVD法(化学蒸着法)、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法等が挙げられる。これらの形成方法の中で樹脂層との密着性を考慮し大気圧プラズマCVD法が特に好ましい。
次に、ベルト状の本発明の中間転写体に係る無機化合物層を大気圧プラズマCVD法により形成する装置について次に説明する。本発明でいう大気圧もしくはその近傍の圧力というのは、20kPa〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには90kPa〜110kPa程度であり、特に93kPa〜104kPaが好ましい。
図4は、ベルト状の中間転写体である中間転写ベルトの無機化合物層を大気圧プラズマCVD法により形成する製造装置の模式図である。
図中、9は製造装置を示す。製造装置9は大気圧プラズマCVD装置9aと材料供給装置9bとを有している。大気圧プラズマCVD装置9aは、ロール電極9a1と、ロール電極9a1の外周に沿って配列された少なくとも1式の固定電極9a2と、混合ガス供給装置9a3と、放電容器9a4と、高周波電源9a5と、排気管9a6とを有している。9a7は固定電極9a2とロール電極9a1との対向領域で、且つ放電が行われる放電空間を示す。図示しないが、安定な放電を行うために固定電極9a2、ロール電極9a1のうち少なくとも一方の放電領域に対する表面には誘電体を配置することが必要であり、両方に配置することがより好ましい。誘電体は酸化アルミニウムや、酸化チタンなどのセラミックを適宜選定することができる。尚、固定電極9a2のロール電極9a1と対向する面はロール電極9a1との距離を一定にするためロール電極9a1の表面の曲率と同じにすることが好ましい。
混合ガス供給装置9a3からは、少なくとも原料ガスと放電ガスとの混合ガスGを生成して放電容器9a4に混合ガスGが供給される。放電容器9a4により放電空間9a8等に空気の流入することが軽減されている。
高周波電源9a5は固定電極9a2に接続され、排気管9a7からは使用済みの排ガスG′が排気される。
混合ガス供給装置9a3からは無機化合物層の膜を形成する原料ガスと、窒素ガス或いはアルゴンガス等の希ガスを混合した混合ガスが放電容器9a4に供給される。又、酸化還元反応による反応促進のための酸素ガス又は水素ガスを混合することがより好ましい。
高周波電源に電圧を印加することにより、固定電極9a2とロール電極9a1との電極間に混合ガスGがプラズマ化(励起)され、混合ガスGに含まれる原料ガスに応じた膜(無機化合物層70d(図3参照))が材料Fの樹脂層の上に堆積され、図3に示すベルト状の中間転写体である中間転写ベルト70が製造される。この様にして形成される無機化合物層は、炭素含有率が、最下層から最上層にかけて順次減少した複数層を形成することも可能である。
利用可能な高周波電源9a5としては特に限定はなく、例えばパール工業製CF−5000−13M等を使用することができる。
高周波電源9a5に供給する電力は、固定電極9a2に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、薄膜を形成する。固定電極9a2に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは1.2W/cmである。尚、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
尚、複数の固定電極9a2の内、ロール電極9a1の回転方向下流側に位置する複数の固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3で無機化合物層を積み重ねるように堆積し、無機化合物層の厚さを調整するようにしてもよい。
又、図示しないが、混合ガス供給装置9a3からの混合ガスを直接放電空間9a8に供給するようにし、ロール電極9a1の回転方向最下流側に位置する固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3で無機化合物層を堆積し、より上流に位置する他の固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3で、例えば無機化合物層と樹脂層との接着性を向上させる接着層等、他の層を形成してもよい。
又、無機化合物層70d(図3参照)と樹脂層70c(図3参照)との接着性を向上させるために、無機化合物層70d(図2参照)を形成する固定電極9a2と混合ガス供給装置9a3の上流に、アルゴンや酸素などのガスを供給するガス供給装置と固定電極を設けてプラズマ処理を行い、樹脂層70c(図3参照)の表面を活性化させるようにしてもよい。
材料供給装置9bは、従動ローラ9b1と、従動ローラ9b1を牽引(図中の矢印方向)する張力付与手段9b2とを有している。無端のベルト状の材料Fはロール電極9a1と従動ローラ9b1とで保持され、張力付与手段9b2により所定の張力が掛けられ、ロール電極9a1の回動(図中の矢印方向)に伴い従動ローラ9b1を介して回転するように張架された状態になっている。張力付与手段9b2は材料Fの掛け替え時等は張力の付与を解除し、材料Fの掛け替え等を容易にしている。本図に示す材料Fは、図3に示す中間転写ベルト70の樹脂層迄が形成(基体70a/弾性層70b/樹脂層70c)された状態の材料を示す。
図4に示す大気圧プラズマCVD法により形成する製造装置で使用する放電ガスとは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等及びそれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
又、無機層を形成するための原料ガスとしては、常温で気体又は液体の有機金属化合物、特にアルキル金属化合物や金属アルコキシド化合物、有機金属錯体化合物が用いられる。これら原料における相状態は常温常圧において必ずしも気相である必要はなく、混合ガス供給装置で加熱或いは減圧等により溶融、蒸発、昇華等を経て気化し得るものであれば、液相でも固相でも使用可能である。
原料ガスとしては、放電空間でプラズマ状態となり、薄膜を形成する成分を含有するものであり、有機金属化合物、有機化合物、無機化合物等である。
例えば、ケイ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51などが挙げられるがこれらに限定されない。
チタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどが挙げられるがこれらに限定されない。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムエトキシド、アルミニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、アルミニウムイソプロポキシド、4−ペンタンジオネート、ジメチルアルミニウムクロライドなどが挙げられるがこれらに限定されない。
又、これらの原料は、単独で用いてもよいが、2種以上の成分を混合して使用するようにしてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(中間転写ベルトの作製)
(無端ベルト状基体1の準備)
厚さ100μmの導電性物質を含有するポリイミド(PI)からなるシームレスレスベルトを準備し無端ベルト状基体1とした。
(無端ベルト状基体2の準備)
厚さ100μmの導電性物質を含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)からなるシームレスベルトを準備し無端ベルト状基体2とした。
〈中間転写ベルト1の作製〉
(弾性層の作製)
準備した無端ベルト状基体1の外周に、クロロプレンゴムからなる厚さ150μmの弾性層をディッピング塗布法により設け弾性層を形成した無端ベルト状基体No.1−aとした。
(樹脂層の形成)
準備した無端ベルト状基体No.1−aに芯材をはめ込み、フッ素系コート剤(大日本インキ工業社製「TR304」をMEK/酢酸ブチル混合溶剤で希釈し、ディッピング塗工した。塗工後130℃で1時間加熱乾燥させ厚さ5μmの樹脂層を形成し樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体No.1−bとした。
(無機化合物層の形成)
準備した樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体No.1−bの樹脂層の上に、図4に示す大気圧プラズマCVDによる製造装置を使用し以下に示す条件で厚さ150nmの1層の無機化合物(酸化珪素)層を形成し中間転写ベルト1を作製し試料No.101とした。尚、無機化合物(酸化ケイ素)層の膜厚は、「MXP21」(マックサイエンス社製)を用いて明細書本文中に記載の方法で測定して得られた値である。
無機化合物(酸化ケイ素)層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は0.1原子数濃度%であった。
炭素含有率(炭素原子数濃度)は、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200RXPS表面分析装置を使用して測定した値を示す。
無機化合物(酸化ケイ素)層の弾性率は、5GPaであった。弾性率は、明細書本文中に記載のナノインデーション法により測定した値を示す。
大気圧プラズマCVD条件
無機化合物層の形成材料としては、酸化ケイ素を用いた。この時のプラズマ放電処理装置の各電極を被覆する誘電体は対向する両電極共に、セラミック溶射加工によりアルミナを被覆したものを使用した。又誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。
各原料ガスは、加熱することで蒸気を生成し、予め原料が凝集しないように余熱を行った放電ガス及び反応ガスと混合・希釈した後、放電空間への供給を行った。
放電ガス:Arガス 98.6体積%
反応ガス:Oガスを全ガスに対し1.0体積%
原料ガス:テトラエトキシシラン(TEOS)を全ガスに対し0.4体積%
高周波電源電力(パール工業製高周波電源(13.56MHz)):10W/cm
(比較の中間転写ベルト1の作製)
試料No.101において樹脂層を形成しなかった以外は、全て同じ方法で比較の中間転写ベルト1を作製し比較試料No.102とした。
〈中間転写ベルト2の作製〉
(弾性層の作製)
準備した無端ベルト状基体2の外周に、ポリウレタン(大日本精化製、ME3218LP商品名)100部に導電性カーボン10部を加え、厚さ150μmの弾性層をディッピング塗布法により設け、弾性層迄を形成した無端ベルト状基体No.2−aとした。
(樹脂層の形成)
テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびビニリデンフロライドの共重合体の溶液を、準備した無端ベルト状基体No.2−aの弾性層上に、乾燥、アニール後の厚みが、5μmになるような条件で、スプレーコートした。その後、乾燥および150℃でのアニールを行い、樹脂層までを形成した無端ベルト状基体No.2−bとした。
(無機化合物層の形成)
準備した樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体No.2−bの樹脂層の上に、試料No.101と同じ方法で、厚さ150nmの1層の無機化合物(酸化珪素)層を形成し中間転写ベルト2を作製し試料No.103とした。尚、無機化合物(酸化ケイ素)層の膜厚は、試料No.101と同じ方法で測定して得られた値である。
(比較の中間転写ベルト2の作製)
試料No.103において樹脂層を形成しなかった以外は全て同じ方法で比較の中間転写ベルト2を作製し、比較試料No.104とした。
評価
作製した試料No.101〜104について、転写効率、耐久性、フィルミングを以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
転写効率の測定
プリンタ(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製のmagicolor5440DL)を用い、内部の中間転写ベルトを外し、上記作製した試料No.101〜104をそれぞれ装着した。このプリンタに平均粒径が6.5μmの重合トナーをセットし、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色を最大トナー濃度でコニカミノルタCFペーパー(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)へ、プリントを行った。プリント紙上へ転写されたトナー付着量及びベルト上の残留トナー量を光学(反射)濃度測定し、測定結果を予め求めた光学濃度とトナー量との関係式に従ってトナー量へ換算し、下式によりトナー転写率(%)を求めた。
転写率(%)=(テストプリント紙上へ転写されたトナー量/(テストプリント紙上へ転写されたトナー量+ベルト上の残留トナー量))×100
評価ランク
◎:転写率が98%以上であった
○:転写率が95%以上、98%未満であった
△:転写率が90%以上、95%未満であった
×:転写率が90%未満であった
耐久性の測定
転写効率測定に使用したプリンタを用いて、コニカミノルタCFペーパー(A4)に各トナー色とも5%イメージ率のテストパターンで、23℃、50%RHの環境下で30万枚プリントを行った後、1枚目と30万枚目のプリントにおける画像品質の有無を目視観察した。
評価ランク
◎:1枚目及び30万枚目のプリント共に画像に変化なく、問題となる画像の故障も認められない
○:1枚目のプリントでは問題となる画像の故障が認められず、30万枚目のプリントでわずかに変化が認められるが、実用上許容される品質である
△:1枚目のプリントでは問題となる画像の故障が認められず、30万枚目のプリントでは変化が認められるが、実用上許容される品質である
×:1枚目のプリントでは問題となる画像の故障が認められず、30万枚目のプリントで明らかな故障が認められ、実用上問題となる品質である
××:1枚目のプリントでは問題となる画像の故障が認められず、30万枚目のプリントで強い画像の故障が認められ、実用に耐えない品質である
フィルミングの測定
耐久性を測定の際、30万枚プリント終了後に、中間転写ベルトを取り出し、その表面のフィルミング状態を目視で観察し評価した。
フィルミングの評価ランク
○:中間転写ベルトに全くフィルミングが見られず
△:中間転写ベルトに薄くフィルミングが見られるが、実用上問題ないレベル
×:中間転写ベルトの一周にフィルミングが見られ、実用上問題となるレベル
Figure 0005282297
基材の上に、弾性層、樹脂層、無機化合物層をこの順に設けて作製した試料No.101、103は転写効率、耐久性、フィルミング共に優れた結果を示した。基材の上に、樹脂層、無機化合物層をこの順に設けて作製した試料No.102、104は転写効率、耐久性、フィルミング、ブリード共に劣る結果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例2
(中間転写ベルトの作製)
(無端ベルト状基体の準備)
実施例1で準備した無端ベルト状基体1と同じ無端ベルト状基体を準備した。
(弾性層の形成)
実施例1の弾性層1と同じ弾性層を同じ方法で準備した無端ベルト状基体の上に形成した。
(樹脂層の形成)
準備した弾性層を形成した無端ベルト状基体の弾性層の上に、表2に示す樹脂層形成用塗布液No.1〜4を使用し下記に示す塗布方法で塗布し、無端ベルト状基体の弾性層の上に樹脂層を形成し無端ベルト状基体No.2−A〜2−Dとした。弾性率は実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
樹脂層形成用塗布液No.1の調製
ウレタン樹脂(ニッポラン3125(日本ポリウレタン社製)) 75.0質量部
トレレンジイソシアネート 0.42質量部
トルエン 23.0質量部
上記組成物を撹拌しながら溶解し樹脂層形成用塗布液No.1とした。調整した樹脂層形成用塗布液No.1をディッピング塗工した。塗工後130℃で1時間加熱乾燥させ厚さ5μの樹脂層を形成し無端ベルト状基体No.2−aとした。
樹脂層形成用塗布液No.2の調製
重量平均分子量58,000の末端シラノールポリジメチルシロキサンPS344.5(チッソ(株))100g、エチルトリアセトキシシランE6345(チッソ(株))1.6gをn−ヘプタンに溶解し、10時間混合した後、さらにn−ヘプタンにより濃度を7質量%に希釈し樹脂層形成用塗布液No.2とした。樹脂層形成用塗布液No.2を乾燥膜厚が5μmになるようにワイヤーバーを使用して塗布し、樹脂層を形成し無端ベルト状基体No.2−bとした。
樹脂層形成用塗布液No.3の調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
ジエトキシベンゾフェノン(UV光開始剤) 2質量部
メチルエチルケトン 50質量部
酢酸エチル 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
上記組成物を撹拌しながら溶解し樹脂層形成用塗布液No.3とした。樹脂層形成用塗布液No.3を乾燥膜厚が5μmとなるようにワイヤーバーで塗布し、80℃にて5分間乾燥した。次に80W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から4秒間照射して硬化させ、樹脂層を形成し無端ベルト状基体No.2−cとした。
樹脂層形成用塗布液No.4の調製
ポリエステルポリウレタンプレポリマー(溶媒含む) 100部(固型分40質量%)
硬化剤(溶媒含む) 50部(固型分60質量%)
PTFE粒子(粒径0.3μm) 150部
トルエン(溶媒) 80部
上記組成物を撹拌しながら混合し樹脂層形成用塗布液No.4とした。樹脂層形成用塗布液No.4をスプレー塗布して、厚み5μmの樹脂層を形成し、その後、100℃で1時間加熱することにより残存溶剤を除去し樹脂層を形成し無端ベルト状基体No.2−dとした。この樹脂層の全構成成分中に占めるPTFE粒子の割合は樹脂層形成用塗布液の全固型分量に対し約50質量%であった。
Figure 0005282297
(無機化合物層の形成)
準備した樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体No.2−A〜2−Dの樹脂層の上に、図4に示す大気圧プラズマCVDによる製造装置を使用し、実施例1の試料No.101と同じ方法、同じ条件で実施例1の試料No.101と同じ1層の無機化合物(酸化ケイ素)層を形成し中間転写ベルトを作製し試料No.201〜204とした。
評価
作製した試料No.201〜204について、転写効率、耐久性、フィルミングを実施例1と同じ方法で試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
Figure 0005282297
基材の上に、弾性層、樹脂層、無機化合物層をこの順に設ける際、樹脂層を形成する材料として、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂とフッソ樹脂の混合物を用いて作製した試料No.201〜204は転写効率、耐久性、フィルミング、ブリード共に優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例3
(中間転写ベルトの作製)
(無端ベルト状基体の準備)
実施例1で準備した無端ベルト状基体1と同じ無端ベルト状基体を準備した。
(弾性層の形成)
実施例1の弾性層1と同じ弾性層を同じ方法で準備した無端ベルト状基体の上に形成した。
(樹脂層の形成)
準備した弾性層を形成した無端ベルト状基体を使用し、実施例1の樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体No.1−bと同じ樹脂層を同じ方法で弾性層の上に形成した。
(無機化合物層の形成)
準備した樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体の樹脂層の上に、図4に示す大気圧プラズマCVDによる製造装置を使用し以下に示す条件で厚さ150nmの1層の表4に示す無機化合物層を形成し中間転写ベルトを作製し試料No.301〜303とした。
尚、無機化合物層の膜厚は、実施例1と同じ方法で測定して得られた値である。無機化合物(酸化ケイ素)層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は、実施例1と同じ方法で測定して得られた値である。無機化合物(酸化ケイ素)層の弾性率は、実施例1と同じ方法で測定して得られた値である。
大気圧プラズマCVD条件
無機化合物層の形成材料としては、Si、Ti、Alの酸化物を用いた。この時のプラズマ放電処理装置の各電極を被覆する誘電体は対向する両電極共に、セラミック溶射加工によりアルミナを被覆したものを使用した。又、誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。
各原料ガスは、加熱することで蒸気を生成し、予め原料が凝集しないように余熱を行った放電ガス及び反応ガスと混合・希釈した後、放電空間への供給を行った。原料ガスとしては、テトラエトキシシラン(TEOS)、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、アルミニウムエトキシドをそれぞれ用い、放電ガス、反応ガスを以下の条件で変えて、酸化物を形成した。
Siの酸化物を形成する時の条件
放電ガス:Arガス 98.6体積%
反応ガス:Oガスを全ガスに対し1.0体積%
原料ガス:全ガスに対し0.4体積%
高周波電源電力(パール工業製高周波電源(13.56MHz)):10W/cm
Tiの酸化物を形成する時の条件
放電ガス:Arガス98.9体積%
反応ガス:Hガスを全ガスに対し0.8体積%
原料ガス:全ガスに対し0.3体積%
高周波電源電力(パール工業製高周波電源(27MHz)):8W/cm
Figure 0005282297
評価
作製した試料No.301〜303について、転写効率、耐久性、フィルミングを実施例1と同じ方法で試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表5に示す。
Figure 0005282297
基材の上に、弾性層、樹脂層、無機化合物層をこの順に設ける際、無機化合物層をTi、Si、Alの酸化物で形成して作製した試料No.301〜303は転写効率、耐久性、フィルミング共に優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。
実施例4
(中間転写ベルトの作製)
(無端ベルト状基体の準備)
実施例1の無端ベルト状基体1と同じ無端ベルト状基体を準備した。
(弾性層の形成)
実施例1の弾性層1と同じ弾性層を同じ方法で準備した無端ベルト状基体の上に形成した。
(樹脂層の形成)
準備した弾性層を形成した無端ベルト状基体を使用し、実施例1の樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体No.1−bと同じ樹脂層を同じ方法で弾性層の上に形成した。
(無機化合物層の形成)
準備した樹脂層迄を形成した無端ベルト状基体の樹脂層の上に、図4に示す大気圧プラズマCVDによる製造装置を使用し、表6に示す上層と下層とで炭素含有率(炭素原子数濃度)を変えた酸化ケイ素層を形成し中間転写ベルトを作製し試料No.401〜407とした。上層の膜厚は150nm、下層の膜厚は200nmとした。膜厚は実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
尚、無機化合物層を2層に分ける方法は下層を形成した後に、上層を積層することで形成した。又、炭素含有率(炭素原子数濃度)を変えた酸化ケイ素層は放電ガス、反応ガス、原料ガスの比を変えず、全ガスの供給速度を変えた他は実施例1の試料No.101と同じ方法で形成した。平均膜密度の測定は、測定装置としては、マックサイエンス社製MXP21を用いて、明細書本文に記載の方法で行った。尚、無機化合物層の膜厚は、実施例1と同じ方法で測定して得られた値である。無機化合物(酸化ケイ素)層の炭素含有率(炭素原子数濃度)は、実施例1と同じ方法で測定して得られた値である。無機化合物(酸化ケイ素)層の弾性率は、実施例1と同じ方法で測定して得られた値である。
Figure 0005282297
評価
作製した試料No.401〜407について、転写効率、耐久性、フィルミングを実施例1と同じ方法で試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表7に示す。
Figure 0005282297
基材の上に、弾性層、樹脂層、無機化合物層をこの順に設ける際、無機化合物層を炭素含有率(炭素原子数濃度)が0.1%原子数濃度未満の上層と、炭素含有率(炭素原子数濃度)が0.5原子数濃度%〜5原子数濃度%の下層との2層として酸化ケイ素で形成して作製した試料No.401〜407は転写効率、耐久性、フィルミング共に優れた結果を示した。本発明の有効性が確認された。
中間転写体として中間転写ベルトを使用した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。 中間転写体として中間転写ロールを使用した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。 図1に示す中間転写体の中間転写ベルトの拡大概略断面図である。 ベルト状の中間転写体である中間転写ベルトの無機化合物層を大気圧プラズマCVD法により形成する製造装置の模式図である。
符号の説明
1、1′ フルカラー画像形成装置
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
4′ 転写ユニット
401′ 中間転写ローラ
7 無端ベルト状中間転写体ユニット
70 中間転写ベルト
70a 基体
70b 弾性層
70c 樹脂層
70d 無機化合物層
9 製造装置
9a 大気圧プラズマCVD装置
9a1 ロール電極
9a2 固定電極
9a3 混合ガス供給装置
9a4 放電容器
9a5 第1電源(高周波電源)
9a6 第2電源(高周波電源)
9a7 排気管
9a8 放電空間
9b 材料供給装置

Claims (8)

  1. 電子写真方式の画像形成装置に使用する中間転写体であって、基材の上に少なくとも、弾性層、樹脂層、無機化合物層をこの順に設け、前記無機化合物層が少なくとも2層から構成されており、下層の無機化合物層の炭素含有率が、隣接する上層の該無機化合物層の炭素含有率よりも高いことを特徴とする中間転写体。
  2. 前記樹脂層がフッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリレート系樹脂の中から選ばれる樹脂、又はこれらを混合した樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の中間転写体。
  3. 前記樹脂層がフッ素樹脂微粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の中間転写体。
  4. 前記弾性層の弾性率が0.1MPa〜10MPa、樹脂層の弾性率が0.1GPa〜10GPa、無機化合物層の弾性率が0.3GPa〜50GPaであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の中間転写体。
  5. 前記無機化合物層が金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物の中から選ばれる少なくとも1種から形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の中間転写体。
  6. 前記無機化合物層がAl、Si、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、金属窒化物もしくは金属酸化窒化物から形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の中間転写体。
  7. 前記無機化合物層を構成する無機化合物が酸化珪素または炭素を含有する酸化珪素であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の中間転写体。
  8. 前記無機化合物層が大気圧プラズマCVD法によって形成されたことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の中間転写体。
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