JP5280889B2 - 芳香族ポリアミドの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリアミドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族ポリアミドを経済的かつ効率的に製造する方法に関するものである。
芳香族ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのような脂肪族ポリアミド(ナイロン)に対して、高い耐熱性や剛性を発現する。
これらの特性を活かして、例えば繊維として、プラスチックの補強、船体、飛行機、自転車などに使用されている。また、フィルムとして、磁気テープ、プリンターリボン、コンデンサー、電気絶縁材、スピーカー、太陽電池などの用途への適用が提案されている。
従来、芳香族ポリアミドは、工業的には、芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸クロライドの溶液中での重縮合により合成されるが、工業的に使用できる芳香族カルボン酸クロライドの数が少なく、合成できる芳香族ポリアミドは限定されていた。また、重合時に発生する塩化水素は中和等によって除去されるが、どうしても微量の塩素イオンが残留し、用途によっては問題となることがあった。例えば、回路材料のベースフィルムとして使用された場合、絶縁性が損なわれたり、銅箔が錆びたりする問題が発生することがある。
これに対して、芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸から芳香族ポリアミドを直接合成する方法が、例えば、非特許文献1、特許文献1〜6に開示されている。しかし、これらの方法で合成できる芳香族ポリアミドは、分子主鎖中に長い脂肪族を持つもので、耐熱性や剛性、耐加水分解性などが十分とは言えなかった。更に、減圧などの複雑な操作を伴うことがあり、工業化に困難が伴う方法であった。
特開昭60−163928号公報 特開昭61−228022号公報 特開平7−228693号公報 特開平8−311198号公報 特開平11−228690号公報 特開2000−186142号公報
D.A.Holmer,O.A.Pickett,Jr.,J.H.Saunders, J.Polym.Sci.,A-1,10,1547(1972)
本発明の目的は、上記のような従来技術における問題点を解決しようとするものであって、ハロゲンイオンを実質的に含有しない芳香族ポリアミドの製造方法を提供することにある。あわせて、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから溶融重合工程を経て芳香族ポリアミドを製造する際に、モノマーの分解や副反応を防ぎ、高重合度かつ高い耐熱性や剛性を発現し、ハロゲンイオンを実質的に含有しない芳香族ポリアミドを容易に得ることができる芳香族ポリアミドの製造方法を提供することにある。
本発明は、上記の目的を達成するため、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから芳香族ポリアミドを合成するに際し、窒素雰囲気下で以下の工程1〜3をこの順に経て合成する、ハロゲンイオンの含有量が100ppm以下である芳香族ポリアミドの製造方法を提供する。
工程1:芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのみを130〜180℃で1〜2時間撹拌する。
工程2:200〜230℃に昇温し、1〜2時間攪拌する。
工程3:300〜330℃に昇温し、2〜7時間攪拌する。
本発明により、ハロゲンイオンを実質的に含有せず、かつ高分子量で耐熱性の優れた芳香族ポリアミドを減圧などの複雑な操作を行うことなく、容易に得ることができ、かつ、得られた芳香族ポリアミドは、回路基板のベースフィルム等に好適に用いることができる。
本発明に用いる芳香族ジアミン及び芳香族カルボン酸は、次の化学式(1)及び化学式(2)で示されるモノマーを用いることが好ましい。
Figure 0005280889
Figure 0005280889
ここで、R1、R2は、次の化学式(3)から選ばれる構造単位を有することが好ましい。
Figure 0005280889
ここで、X、Y、Zは芳香環の結合基であって、芳香環と結合する方向に炭素が2個以上つながるアルキレン鎖を含有しないものからなり、−O−、−CH2−、−CO−、−S−、−C(CH32−などから選ばれる。このような例として、R1、R2が、次の化学式(4)で示される構造が挙げられ、このような構造を50モル%以上含有すると、重合が速やかに進み、かつ耐熱性の高いポリマーが得られることから好ましい。
Figure 0005280889
更に、化学式(3)に記す結合基X、Y、Zが炭素を含有しない構造、及び結合基X、Y、Zを含有しない構造をとると(これらの構造をとるポリマーは、一般に全芳香族ポリアミドと呼ばれる)、耐熱性及び剛性がより向上するため、最も好ましい。
また、化学式(3)に示す芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素などのハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基(特にメチル基)、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基などの置換基で置換されていてもよい。
更に、本発明における芳香族ポリアミドには、本発明の目的を阻害しない範囲で、芳香族ジアミン及び芳香族カルボン酸以外に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、無機または有機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核生成剤などが添加されていてもよい。
本発明の芳香族ポリアミドの製造方法は、芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸とから芳香族ポリアミドを合成するに際し、窒素雰囲気下で以下の工程1〜3をこの順に経て合成することが好ましい。
工程1:芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸とのみを130〜180℃で1〜2時間攪拌する。
工程2:200〜230℃に昇温し、1〜2時間攪拌する。
工程3:300〜330℃に昇温し、2〜7時間攪拌する。
本発明では、工程1で芳香族ジアミンを融解させ、芳香族ジアミンを擬似溶媒として芳香族カルボン酸を溶解、混合させる。次に、工程2で200〜230℃に昇温することで、混合した芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸とを反応させ、オリゴマーを合成する。最後に、工程3で、重合度が十分に上がるように更に高温に昇温し、オリゴマー同士を重縮合させて、高分子量のポリマーが得られる。工程3では、300℃以上に昇温するが、工程2で一定の重合度まで上昇していることから副反応を抑制することができる。また、工程1から高温で攪拌したり、工程2を経ずに300℃まで昇温すると、モノマーの昇華や分解が起こったり、重合途中で副反応が起こり、ポリマーの収率が低下したり、重合度が十分に上昇しないことがある。
また、本発明の芳香族ポリアミドの製造方法は、上記工程1〜3を少なくとも含むもので、昇温を更に段階的に行うと、副反応をより抑制することができ、より好ましい。ただし、合計した時間が工程1、工程2では2時間、工程3では7時間を超えると重合反応に対して分解反応が進み易くなることがある。
更に、本発明の芳香族ポリアミドの製造方法では、酸化を防止するために、上記3工程を窒素雰囲気下で行うことが好ましいが、発生する水を除去するために脱気しながら窒素フローを行うことがより好ましい。
本発明では、上記製造方法を採用することにより、水以外の副生物が無いことから、得られる芳香族ポリアミドは不純物の含有量を少なくすることができ、重合後、特に処理をせずに、そのまま用いることができる。酸クロライド法では、発生する塩化水素を中和や水洗などにより除去する必要があり、リン酸エステルなどの触媒を使用する場合は、これらの触媒をアラミドが不溶で触媒のみ溶解する溶媒で抽出する必要がある。
本発明の芳香族ポリアミドは、ハロゲンイオンの含有量が100ppm以下(質量基準、以下同じ)であることが好ましい。ハロゲンイオン、特に塩素イオンが100ppmを超えて存在すると、例えば、回路材料のベースフィルムとして使用された場合、絶縁性が損なわれたり、銅箔が腐食したりすることがある。腐食性がより改善されることから、ハロゲンイオンの含有量は10ppm以下であることがより好ましく、2ppm以下であることが更に好ましい。さらに好ましくは1ppm以下であり、実質的に存在しないこと(検出できないこと)が最も好ましい。
本発明の芳香族ポリアミドの数平均分子量Mn、及び質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnは下式を同時に満足することが好ましい。
2×104 ≦Mn≦2×105
1.5≦Mw/Mn≦4.5
Mnが2×104未満では、繊維やフィルムに加工した場合の伸度や強度が十分でなく、脆くなることがある。また、Mnが2×105を超えると、加工工程で溶液とした時に、粘度が高くなりすぎてハンドリングが困難になったり、ポリマー濃度を下げる必要が生じ、生産効率が低下したりすることがある。ポリマーが強靱で、かつ加工工程でのハンドリング性がより良くなることから、3×104≦Mn≦1×105であることがより好ましい。
一方、Mw/Mnが4.5を超えると、低分子量成分の影響が無視できなくなり、繊維やフィルムに加工後に内部可塑化や低分子量成分のにじみ出し等の現象が生じることがある。また、この値に特に下限はないが、本発明の重合方法で合成する場合は1.5程度である。低分子量成分の影響がより小さくなることから、1.5≦Mw/Mn≦3.5であることがより好ましい。
本発明の芳香族ポリアミドのガラス転移温度Tg(℃)は下式を満足することが好ましい。
180≦Tg≦400
Tgが180℃未満の場合、耐熱性が不十分で、加工工程や製品として使用する際に、熱による変形が起こることがある。耐熱性がより良くなることから、Tgは200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることが更に好ましい。また、この値に特に上限はないが、芳香族ポリアミドの場合は一般に400℃程度である。
本発明の芳香族ポリアミドの質量が5%減量する温度Td(℃)は下式を満足することが好ましい。
350≦Td≦600
Tdが350℃未満の場合、フィルムに加工して回路材料に使う場合などに、ポリマーの一部が分解し、他の部材へ悪影響を及ぼすことがある。高温での分解をより抑制できることから、Tdは400℃以上であることがより好ましく、450℃以上であることが更に好ましい。また、この値に特に上限はないが、芳香族ポリアミドの場合は一般に600℃程度である。
本発明の芳香族ポリアミドを繊維に加工する場合、例えば、次のような方法で製造できる。
まず、芳香族ポリアミドを硫酸などの強酸やN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性有機極性溶媒に溶解し、製糸原液を得る。
次に、公知の芳香族ポリアミド繊維の紡糸方法に従って凝固液中に押し出し、凝固糸とする。紡糸用ドープには、必要に応じ、着色剤、難燃剤、安定剤等の添加剤を含んでもよい。紡糸工程では、紡糸口金直下にエアーギャップと呼ばれる短い空間を設け、この空間を通過した未凝固繊維(ポリマードープ)を直ちに凝固液中に導入する方法が好ましいが、通常の湿式紡糸でも差し支えない。
凝固液は、一般に、アミド系溶媒と水との2成分からなる水溶液で構成される。ここで使用するアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等が使用可能であるが、取扱い性、安定性及び該溶媒の毒性等の点から、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましく使用される。
凝固液となる水溶液中のアミド系溶媒の濃度は、濃度10〜50質量%であることが好ましい。濃度が50質量%を超えると、紡出した芳香族ポリアミドドープの凝固が進まず、繊維状物同士の密着が発生し、連続的に製糸することが困難となる。また、濃度が10質量%未満であると、可塑化が十分に進まず、続いて行なわれる可塑延伸時の延伸性が低下することがある。凝固浴の温度は凝固浴組成と密接な関係があるが、あまり高温にすると紡糸した繊維同士の密着が激しくなる上、作業性も悪くなるため。好適な温度は0〜50℃である。
次に、凝固浴から引き取られた芳香族ポリアミド糸条は、延伸浴中で通常、2.3〜4.5倍の延伸倍率に可塑延伸される。
延伸浴としてアミド系溶媒の水溶液を使用する。ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等を例示することができるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。延伸浴を構成する水溶液のアミド系溶媒の濃度は30〜80質量%が好ましい。濃度が80質量%を超えると芳香族コポリアミド糸条が該水溶液中に溶解するため、連続的に製糸することが困難となる。また、濃度が30質量%未満であると繊維の可塑化が十分に進まず、上記延伸倍率を確保することが困難である。該水溶液の温度は、あまり高温にすると繊維同士の密着が激しくなる上、作業性も悪くなるため、0〜50℃が好適である。
延伸に続いて、該芳香族ポリアミド繊維は水洗工程にて溶媒を十分に除去し、乾燥工程にて充分に乾燥したのち熱処理を行う。本発明における繊維の熱処理温度は300〜550℃の範囲が好ましい。熱処理温度が300℃未満の場合には、繊維が充分に配向結晶化を起こさせることができないために、充分な引っ張り強度、初期モジュラスが得られないことがある。また、熱処理温度が550℃を超える場合には、繊維が熱劣化を引き起こすために、充分な引っ張り強度、初期モジュラスが得られないことがある。この熱処理は、定長下又は処理前の原長に対し15%以内の伸張下又は制限収縮下で行うのが適当である。
本発明の芳香族ポリアミドをフィルムに加工する場合、例えば、次のような方法で製造できる。
まず、芳香族ポリアミドを硫酸などの無機溶媒やN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性有機極性溶媒に溶解し、製膜原液を得る。
製膜原液中のポリマー濃度は2〜40質量%であることが好ましい。ポリマー濃度が2質量%を下回る場合、生産性が悪く、十分な剛性を有するフィルムが得られ難くなることがあり、ポリマー濃度が40質量%を超える場合、ポリマー溶液の粘度が高すぎるために、製膜工程でのハンドリング性が悪化することがある。
フィルムへの易滑性付与を目的として、無機および/または有機粒子(以下、単に粒子という)を製膜原液に添加する場合、これらの粒子は、超音波ホモジナイザーなどで十分に分散させた粒子ゾルの状態で添加すると、粒子の分散性が良好となり易いため好ましい。また、粒子ゾルの粒子濃度は、粒子ゾルの安定性の観点から2〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核生成剤などの無機および/または有機の添加剤を溶液に添加してもよい。
次に、本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムの成型法について説明する。製膜方法としては、乾式法や湿式法、または乾湿式法などの溶液製膜でフィルム化される。具体的には、乾式法の場合は、少なくともキャスト、乾燥、熱処理(必要な場合は延伸)の各工程を、また湿式法の場合は、少なくともキャスト、湿式浴による溶媒抽出、熱処理(必要な場合は延伸)の各工程を、また乾湿式法の場合は、少なくともキャスト、乾燥、湿式浴による溶媒抽出、熱処理(必要な場合は延伸)の各工程を経てフィルム化される。
以下、乾湿式法を例にとって、詳しく説明する。
上記ポリマー溶液を口金からドラムやエンドレスベルトなどの支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜を乾燥する。
このとき、脱溶媒速度は、3〜30質量%/分で乾燥することが好ましい。脱溶媒速度が3質量%/分未満では生産性が悪く、また、脱溶媒速度が30質量%/分を超えると急激な溶媒蒸発でフィルム表面が粗れたり、表面にスキン層が形成されて溶媒の乾燥が進みにくくなることがある。乾燥温度は100〜210℃であることが好ましく、120〜180℃であるとより好ましい。また、乾燥時間は、2〜12分が好ましく、5〜10分がより好ましい。
次いで、乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて、湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれる。この湿式工程を通さずにそのまま剥離したゲルフィルムに延伸および熱処理を行うと、塩が析出して粗大突起を生じさせたり、カールが発生することがある。湿式工程の溶媒は一般的に水系であるが、水の他に少量の無機、有機の溶剤や無機塩などを含有していてもよい。なお溶媒温度は通常0〜100℃で使用される。さらに必要に応じて、湿式工程中でフィルムを長手方向に延伸してもよい。この後、延伸、熱処理が行なわれて芳香族ポリアミドフィルムとなる。
延伸温度は200〜400℃の温度範囲内で行うことがフィルムの機械特性向上に有効であり、より好ましくは220〜350℃、さらに好ましくは240〜300℃であり、幅方向の延伸倍率は0.9〜3倍の範囲内とすることが好ましい。幅方向の延伸倍率が0.9倍未満の場合には、製膜の安定性は向上するものの優れた機械物性のフィルムが得られ難い。また、幅方向の延伸倍率が3倍を超える場合には、フィルム破れが多発するなど製膜が不安定となることがある。幅方向の延伸倍率は、より好ましくは1〜2倍の範囲内である。なお延伸倍率とは、延伸後のフィルム幅を延伸前のフィルム幅で除した値で定義する。
また、フィルムの延伸中あるいは延伸後に熱処理が行なわれるが、熱処理温度は200〜350℃の範囲内にあることがフィルムの寸法安定性を向上させる点で好ましい。
さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが、フィルムの平面性を向上させるために有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
本発明の芳香族ポリアミドは、繊維として使用する場合、高剛性及び高耐熱性といった特徴の活かせる補強剤として使用することが好ましく、特に、プラスチックの補強や、船体、飛行機、自転車などの部材に使用することができる。
また、本発明の芳香族ポリアミドは、フィルムとして使用する場合、高剛性の活かせる薄膜用途として、磁気テープ、プリンターリボン、コンデンサー、電気絶縁材、スピーカー、太陽電池などのベースフィルムとして好適に使用することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ハロゲンイオン含有量
ポリマー10mgを希硝酸20mlに溶解し、ミリポアフィルターで濾過した。ろ液について、ダイオネックス社製イオンクロマトグラフDX−320Jを用い、イオンクロマトグラフ法で、以下の条件で測定した。
ガードカラム:IonPac AG4A−SC
分離カラム :IonPac AS4A−SC
溶離液 :1.8mM−Na2CO3/1.7mM−NaHCO3
流量 :1.5ml/分
検出器 :電気伝導度検出器
(2)数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw
ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)に、示差屈折率計(RI)を組み入れ、GPC装置でサイズ分別された分子鎖溶液の屈折率差を溶出時間にそって測定することにより、溶質の分子量とその含有率を順次計算し、最終的には、高分子物質の絶対分子量分布および絶対平均分子量値を求めた。測定条件を以下に示す。
A.GPC
装置 :JASCO PU−2080Plus
カラム :GMHHR−M(2本)(東レリサ−チセンタ−社製),
ShodexKD−802(1本)(昭和電工社製)
溶媒 :DMF(0.01N臭化リチウム添加)
流速 :1,000ml/min
温度 :60℃
試料
濃度 :0.101%(wt/vol)
溶解性:完全溶解
ろ過 :DISMIC−13JP(0.2μ)(ADVANTEC製)
注入量 :0.2ml
濃度検出器:示差屈折率検出器、RI−2031Plus(JASCO社製)
B.データ処理:BORWIN Chromatography Software
(JASCO社製)
(3)ガラス転移温度Tg
セイコーインスツルメント社製ロボットDSC「DSC6200」を用いて、昇温・降温速度:10℃/分で、25℃→350℃→25℃→350℃→25℃→350℃に変化させ、2回目の昇温時の変曲点からガラス転移温度Tgを求めた。
(4)5%質量減量温度Td
セイコーインスツルメント社製熱重量測定装置TG/DTA6300と解析装置サーマルアナライザー(TA−50)に、データ処理用のパーソナルコンピューターを組み合わせた装置を用いて測定を行った。サンプル約10mgを炉内にセットして、炉内を窒素雰囲気下とし、昇温速度10℃/分で室温から550℃まで加熱した。得られた熱重量曲線から、質量が5%減量した温度Td(℃)を求めた。
(5)腐食性テスト
得られた芳香族ポリアミドをN−メチル−2−ピロリドンに、ポリマー濃度が10質量%になるように溶解し、製膜原液を得た。この、製膜原液をガラス板上にアプリケーターを用いて厚み:約100μmで流延した。このガラス板を120℃の熱風オ−ブン中で、約7分間溶媒を蒸発させ、自己支持性(剥離した時にフィルムが粘着しない状態)を持つゲルフィルムを得た。次に、このゲルフィルムをガラス板より剥離して、15cm角の金属フレ−ムに固定し、流水中で溶媒抽出を10分間行った。この後、定長下、300℃のオ−ブン中で1分間、乾燥及び熱処理を行った。
次に、厚み18μmの圧延銅箔を3cm角に切り取り、上記フィルムの上に置き、更にその上に10gの重りを置いた状態で、200℃オーブンに48時間放置した。48時間放後、圧延銅箔を置いた部分のフィルム表面を観察し、以下の基準で判定した。
○:変化無し。
△:部分的に黒く変色した。
×:全体が黒く変色した。
(実施例1)
芳香族ジアミンとして、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリジン−ビス(パラフェノキシ)ジアニリンを、芳香族カルボン酸として4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリジン−ビス(ベンゾイックアシッド)を用い、180℃で1時間攪拌した。次に、200℃に昇温し、2時間攪拌した。更に、300℃に昇温し、7時間攪拌した。重合条件及びポリマーの物性を表1に示す。高収率で、高分子量かつ高耐熱性の芳香族ポリアミドポリマーが得られた。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(実施例2)
芳香族ジアミンとして、4,4’−(メタフェニレンジオキシ)ジアニリンを、芳香族カルボン酸として4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリジン−ビス(ベンゾイックアシッド)を用い、表1に示した、4つの工程を経て重合した。実施例1に対して、より高収率で、分子量及び耐熱性もより向上した芳香族ポリアミドポリマーが得られた。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(実施例3)
芳香族ジアミンとして、4,4’−(メタフェニレンジオキシ)ジアニリンを、芳香族カルボン酸として4,4’−(メタフェニレンジオキシ)−ビス(ベンゾイックアシッド)を用い、表1に示した、4つの工程を経て重合した。実施例1と同等の収率で、高分子量かつ高耐熱性の芳香族ポリアミドポリマーが得られた。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(実施例4)
芳香族ジアミンとして、4,4’−(メタフェニレンジオキシ)ジアニリンを、芳香族カルボン酸としてイソフタル酸を用い、表1に示した、4つの工程を経て重合した。実施例1に対して収率が大きく向上し、高分子量かつ高耐熱性の芳香族ポリアミドポリマーが得られた。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(実施例5)
芳香族ジアミンとして、3,4’−オキシジアニリンを、芳香族カルボン酸としてイソフタル酸を用い、表1に示した、3つの工程を経て重合した。実施例1に対して収率が大きく向上し、高分子量かつ高耐熱性の芳香族ポリアミドポリマーが得られた。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(実施例6)
実施例1と同様のモノマーを用い、表1に示した、2つの工程を経て重合した。実施例1に対して収率が大きく低下し、分子量も低くなった。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(実施例7)
実施例2と同様のモノマーを用い、表1に示した、3つの工程を経て重合した。実施例2に対して、分子量が低くなった。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(実施例8)
実施例2と同様のモノマーを用い、表1に示した、6つの工程を経て重合した。低温の時間が長すぎるため、実施例2に対して、収率、分子量が低下した。ハロゲン含有量は1ppm未満であり、腐食性は○であった。
(比較例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに、100モル%に相当する3,4’−オキシジアニリンを溶解させ、98.5モル%に相当するイソフタル酸クロライドを添加して、30℃以下温度で2時間の撹拌を行った。
次に、ポリマー溶液中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して5時間の中和を行った後、水と入れたミキサー中で粉砕し、ポリマーを単離した。
収率良く、高分子量かつ高耐熱性の芳香族ポリアミドポリマーが得られが、ハロゲン含有量が140ppmと多く、腐食性は×であった。
(比較例2)
実施例4と同様のモノマーを用い、表1に示した、1つの工程を経て重合した。最初から高温にしたため、モノマーの昇華が起こり、オリゴマーしか得られなかった。
(比較例3)
実施例4と同様のモノマーを用い、表1に示した、3つの工程を経て重合した。高温の時間が短かったため、重合度が高くならず、オリゴマーしか得られなかった。
Figure 0005280889

Claims (6)

  1. 芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから芳香族ポリアミドを合成するに際し、窒素雰囲気下で以下の工程1〜3をこの順に経て合成する、ハロゲンイオンの含有量が100ppm以下である芳香族ポリアミドの製造方法。
    工程1:芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのみを130〜180℃で1〜2時間撹拌する。
    工程2:200〜230℃に昇温し、1〜2時間攪拌する。
    工程3:300〜330℃に昇温し、2〜7時間攪拌する。
  2. ハロゲンイオンが塩素イオンである、請求項1に記載の芳香族ポリアミドの製造方法
  3. 芳香族ポリアミドの数平均分子量Mn、及び質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが、下式を同時に満足する、請求項1または2に記載の芳香族ポリアミドの製造方法
    2×104≦Mn≦2×105
    1.5≦Mw/Mn≦4.5
  4. ガラス転移温度Tg(℃)が下式を満足する、請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリアミドの製造方法
    180≦Tg≦400
  5. 質量が5%減量する温度Td(℃)が下式を満足する、請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリアミドの製造方法
    350≦Td≦600
  6. 芳香族ポリアミドを構成する芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸がいずれも、芳香環との結合方向に炭素が2個以上つながるアルキレン鎖を含有しない、請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリアミドの製造方法
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