JP3510415B2 - 感熱転写記録媒体 - Google Patents

感熱転写記録媒体

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JP3510415B2
JP3510415B2 JP05389096A JP5389096A JP3510415B2 JP 3510415 B2 JP3510415 B2 JP 3510415B2 JP 05389096 A JP05389096 A JP 05389096A JP 5389096 A JP5389096 A JP 5389096A JP 3510415 B2 JP3510415 B2 JP 3510415B2
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aromatic polyamide
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aromatic
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雅則 末岡
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘッドダメージが
殆ど無く過酷な条件下においても良好な印刷特性を有
し、工業的に簡便に得られかつ再生利用も可能である感
熱転写記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリアミドはその高い耐熱性、電
気絶縁性から工業材料として有用な高分子体である。特
に、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)
に代表されるようなパラ配向性芳香核からなる芳香族ポ
リアミドは、その剛直性から上記特性に加え強度、弾性
率に優れた成形体を与えるのでその利用価値は高い。
【0003】しかしながらPPTAのごときパラ配向性
芳香族ポリアミドは高い弾性率を有しているので、薄物
としても十分な剛性を有したフィルムとして得ることが
できるものの、感熱転写記録媒体として用いたときには
吸湿率が大きいために高熱がかかると気泡が生じ印刷特
性に悪影響が生じる等の問題を有している。また、PP
TAの如き芳香族ポリアミドは、溶媒に対する溶解性が
低く、硫酸等の極めて限定された溶媒にしか溶解しない
ために、フィルムを生産するプロセスにおいて使用可能
な素材の限定、厳しい工程管理、作業上の問題などプロ
セス上の制約が大きく、労働衛生、経済的に好ましくな
い。また、PPTAはその溶液が光学異方性を与えるの
で、特殊な製膜法を採らなければ裂けやすく脆いフィル
ムしか得られないので極めてプロセス上の制約が強い。
【0004】一方、低い吸湿率を有し、有機溶媒に可溶
な芳香族ポリアミドとして、特公昭56-45421号公報、特
公昭55-34494号公報等には芳香核に塩素原子やニトロ基
を導入した芳香族ポリアミドが提案されている。しかし
ながら、かかる芳香族ポリアミドは、使用されるモノマ
が高価な上に、高熱がかかると分解して塩素化合物ある
いは窒素化合物を生じ、サーマルヘッドを腐蝕する懸念
やフィルムの廃棄、焼却時に同様の有害物を生成する懸
念があり、地球環境上好ましくない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる問題点
を解決し、芳香族ポリアミド本来の優れた耐熱性、機械
特性等を損なうことなく、有害物によるヘッドダメージ
の懸念が無く、印刷特性に優れ、環境・労働衛生上好ま
しい感熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、有機
溶媒に可溶であって、芳香核上の水素を置換するハロゲ
ン基及びニトロ基の置換割合が15%未満であり、一般
式化5で示される互いに異なった芳香核を有する構造単
位からなるA群、一般式化6で示される互いに異なった
芳香核を有する構造単位からなるB群、及び、一般式化
7で示される互いに異なった芳香核を有する構造単位か
らなるC群から少なくとも3種以上選択される構造単位
(但し、基本芳香核を異にする少なくとも2種の構造単
位は同じ群から選択される。)を主たる構造単位とする
パラ配向性芳香族ポリアミドを主成分とし、かつ、少な
くとも一方向のヤング率が7.8GPa以上、吸湿率が
2.5%以下である芳香族ポリアミドフィルムの一面に
感熱転写記録層を設けたことを特徴とする感熱転写記録
媒体である。
【0007】
【化5】
【0008】
【化6】
【0009】
【化7】
【0010】ここでAr1 、Ar2 、Ar3 はパラ配向
性の芳香核であり、各群の化合物はRa、Rb、Rcで
示されるハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜
4のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、トリア
ルキルシリル基、オキシアリール基、チオアリール基か
ら選ばれる官能基で置換されていても構わない。ここ
で、k、l、mはそれぞれ0〜4の数である。また、A
群、B群は実質的に等モルである。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に用いる芳香族ポリアミド
フィルムは、硫酸、発煙硫酸、トリフルオロメタンスル
ホン酸等の強酸に溶解させた製膜原液から得ることも可
能であるが、有機溶媒に溶解させた製膜原液は光学等方
性溶液を与えるので、これから得ることが好ましい。つ
まり、本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、好
ましくは有機溶媒溶液から製膜されるべきである。特に
有機溶媒系溶液から得られるフィルムは優れた表面性を
有するためサーマルヘッドや被記録体との密着性が優れ
るので良好な印刷特性を有し、また、複雑な製法による
こともなくプロセス上極めて好ましい。ここで用いられ
る有機溶媒は、該芳香族ポリアミドが溶解し、かつ安定
な溶液を形成できれば特に制限はないが、N−メチルピ
ロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミ
ド、ヘキサメチルホスホルアミド等の非プロトン性有機
極性溶媒が好ましく用いられる。もちろんこれら有機溶
媒は混合溶媒であってもよく、後述する重合時に予め添
加されるまたはポリマの再溶解時に用いられる溶解助剤
は3重量%以下までなら含まれていても構わないが、含
まれていない方がフィルム中の不純物を低減する上で好
ましい。
【0012】また、本発明に用いる芳香族ポリアミド
は、芳香核上の水素を置換するハロゲン基及びニトロ基
の置換割合が15%未満のパラ配向性芳香族ポリアミド
を主成分とする。ここで言う置換割合とは、パラ配向性
芳香族ポリアミドの主鎖を構成する芳香核に対するモル
分率であって、好ましくは5%未満、更に好ましくは0
%、つまり置換されていないことが好ましい。後述する
がここでは、ハロゲン基またはニトロ基でない置換基の
置換割合について規定するものではない。近年カラー印
刷やマルチユース等の目的のためサーマルヘッドは高温
化する傾向にあるが、ハロゲン基及びニトロ基の置換割
合が15%以上であれば加熱時の分解挙動により有害な
物質が発生し、サーマルヘッドを腐蝕するので好ましく
ない。
【0013】また、パラ配向性芳香族ポリアミドとは、
パラ配向性芳香核がアミド結合により直接連結される構
造単位からなり、ここでパラ配向性芳香核とは2価の結
合鎖が互いに同軸あるいは平行にある芳香核で定義さ
れ、例えば、化8のようなものが挙げられるがこれに限
定されるわけではない。
【0014】
【化8】
【0015】このパラ配向性芳香族は、力学的要求上必
要な要因である。従って、本発明の芳香族ポリアミドは
このような芳香核を60モル%以上、好ましくは70モ
ル%以上、更に好ましくは75モル%以上含んでいるも
のが良い。60モル%未満であれば、成形物としたとき
に強度、伸度、剛性、耐熱性等のフィルムとしての十分
な機能を全うできない。そして、このような条件を満た
すとき薄膜化が可能になって熱伝達効率が改善され良好
な印刷特性が可能になる。
【0016】また、ポリマの固有粘度(ポリマ0.5g
を硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した
値)は、0.5以上であることが好ましい。
【0017】また、本発明においては、芳香族ポリアミ
ドとして、次のような構造単位からなるものが、本発明
の要件を兼ね備え、かつ後述する好ましい特性をも兼ね
備えることのできるフィルムを与えるために用いられ
る。
【0018】すなわち、一般式化9で示される互いに異
なった芳香核を有する構造単位からなるA群、一般式化
10で示される互いに異なった芳香核を有する構造単位
からなるB群、及び、一般式化11で示される互いに異
なった芳香核を有する構造単位からなるC群から少なく
とも3種以上選択される構造単位である(但し、基本芳
香核を異にする少なくとも2種の構造単位は同じ群から
選択される。)。
【0019】
【化9】
【0020】
【化10】
【0021】
【化11】
【0022】前述したように、ここでAr1 、Ar2
Ar3 はパラ配向性の芳香核であり、各群の化合物はR
a、Rb、Rcで示されるハロゲン基、ニトロ基、シア
ノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のアル
コキシ基、トリアルキルシリル基、オキシアリール基、
チオアリール基から選ばれる官能基で置換されていても
構わない。ここで、k、l、mはそれぞれ0〜4の数で
ある。また、A群、B群は実質的に等モルである。
【0023】この芳香族ポリアミドは、上記の一般式化
9、化10、化11の3群から少なくとも3種選択さ
れ、かつその内の少なくとも2種は同一群から選択され
た基本芳香核(官能基、置換基を除いた残りの部分とし
て定義する。)を異にする構造単位からなることでポリ
マの溶解性、ポリマ溶液の安定性が劇的に改善され、有
機溶媒に可溶であって、有機溶媒溶液系からの製膜が可
能となる。このとき、一般式化9、化10、化11の3
群からは少なくとも4種以上、更に好ましくは5種以上
選択されることが望ましく、また、2種以上の基本芳香
核の異なる構造単位が選択される群は2群以上であるこ
とが好ましい。また、2種以上の基本芳香核の異なる構
造単位が選択される群における各基本芳香核の存在割合
(AR)は該群における基本芳香核の種類をN種とした
とき、 1/N×0.7≦AR≦1/N×1.3 好ましくは、 1/N×0.8≦AR≦1/N×1.2 更に好ましく
は、 1/N×0.9≦AR≦1/N×1.1 であれば優れた有機溶媒溶解性を有するばかりか、機械
特性にも優れたフィルムを得ることができる。
【0024】ここで、Ar1 、Ar2 及びAr3 は互い
に異なったパラ配向性芳香核であり、先述の化学式で定
義される。また、「互いに異なった」とは、基本芳香核
または、置換基の種類あるいは数を異にすると言う意味
である。
【0025】また、好ましくは、上述の芳香族ポリアミ
ドは異なった基本芳香核を2種以上含有する。好ましく
は3種以上、より好ましくは4種以上である。これらの
中でも基本芳香核の組み合わせとして、フェニレン基、
ビフェニレン基、ナフチレン基から選ばれる少なくとも
2種、特にビフェニレン基とフェニレン基の組み合わせ
は力学的特性、有機溶媒への溶解性に優れるので好まし
い。
【0026】さらに上述の芳香族ポリアミドは、一般式
化9〜化11の構造単位に加え、好ましく一般式化12
で示されるD群の構造単位を含有することができる。
【0027】
【化12】
【0028】ここでAr4 、Ar5 はパラ配向性の芳香
核であり、X、Yは互いに同じか異なっていてもよい−
CO−または−NH−基。Zはブリッジ原子団。また、
Rd、Reはシアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭
素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、オ
キシアリール基、チオアリール基から選ばれる官能基で
あり、n、pはそれぞれ0〜4の数である。但し、この
ときは、X、Yが共に−CO−の時はA群と(B群、D
群)、X、Yが共に−NH−のときは(A群、D群)と
B群、互いに異なるときはA群、B群は実質的に等モル
である。
【0029】Ar4 、Ar5 はパラ配向性の芳香核であ
り先述のAr1 〜Ar3 と同様に定義される。
【0030】またZはブリッジ原子団であって、−O
−,−CH2 −,−CO−,−SO2 −,−S−,−C
(CH3 2 −,−C(CF3 2 −,−O−Ar−O
−(ここで、Arはアリール基)等の2価のフレキシブ
ルな原子団から選ばれるが、これに限定されるものでは
ない。
【0031】このD群の構造単位を含有した芳香族ポリ
アミドは、例えば有機溶媒への溶解性及び溶液の安定性
に非常に優れ、製膜性が格段に改良されたものとなる。
また、適度な柔軟性を付与することが可能であり、伸度
特性を大きく改善できる。
【0032】しかしながら、かかる構造単位の導入は成
形体の機械特性をそこねることもあり、好ましくは、全
芳香族ポリアミド構造単位の2〜40%、より好ましく
は5〜30%、更に好ましくは10〜25%の範囲内で
用いるのが良い。
【0033】本発明の芳香族ポリアミドは、ハロゲン
基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、
炭素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、
オキシアリール基、チオアリール基から選ばれる置換基
で置換されていると芳香族ポリアミドの有機溶媒への溶
解性、溶液の安定性に優れたものが得られ、かつ本発明
の吸湿率を満足せしめるので好ましく用いられるが、吸
湿率の低減には適度な大きさの官能基がより好ましく、
シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3の
アルコキシ基、トリメチルシリル基から選ばれる官能基
が好ましい。
【0034】本発明の芳香族ポリアミドの隣接位置換率
は、60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましく
は80%以上、特に好ましくは90%以上であれば有機
溶媒への溶解性、溶液の安定性が向上するため製膜性に
優れ、かつ、吸湿率を低減することができる。この隣接
位置換率S0 は下式により定義され、使用する原料から
確率的計算で求めたり、分光学的手法により求めること
ができる。また、ここで言う隣接位はアミド基が結合し
た芳香核炭素原子に隣接する芳香核炭素原子を指す。
【0035】本発明の芳香族ポリアミドは、目的に合わ
せて、例えばエステルあるいはイミドの構造を有する構
造単位が共重合、またはブレンドされていても差し支え
ない。もちろんこれら構造単位に含まれる芳香核にも、
シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3の
アルコキシ基、トリアルキルシリル基、オキシアリール
基、チオアリール基などの置換基を有していても構わな
い。特に、一般式化13および/または一般式化14で
示される芳香族ポリイミドは、機械特性の改善に効果が
あり好ましく用いられる。
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】ここでAr6 、Ar8 は少なくとも1個の
芳香環を含み、イミド環を形成する2つのカルボニル基
は芳香環上の隣接する炭素原子に結合している。このA
6 は、芳香族テトラカルボン酸あるいはこの無水物に
由来する。代表例としては次の様なものが挙げられる。
【0039】
【化15】
【0040】ここでZ’は−O−,−CH2 −,−CO
−,−SO2 −,−S−,−C(CH3 2 −等から選
ばれるが、これに限定されるものではない。
【0041】また、Ar8 は無水カルボン酸あるいはこ
のハライドに由来する。Ar7 、Ar9 としては例えば
化16等が挙げられ、X’、Y’は−O−,−CH
2 −,−CO−,−SO2 −,−S−,−C(CH3
2 −等から選ばれるが、これに限定されるものではな
い。
【0042】
【化16】
【0043】更にこれらの芳香環上の水素原子の一部
が、ハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、炭素数1〜4
のアルキル基(特にメチル基)、炭素数1〜3のアルコ
キシ基などの置換基で置換されているものも含み、ま
た、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基
によって置換されているものも含む。
【0044】本発明に用いられる芳香族ポリアミドに
は、基材フィルムの物性を損なわない程度に粒子、滑
剤、酸化防止剤その他の添加剤等がブレンドされていて
もよい。
【0045】また、本発明の芳香族ポリアミドフィルム
の少なくとも一方向の、例えば長手方向の引張りヤング
率(20℃、相対湿度60%)E20は、E20≧7.8G
Paであることが必要であり、好ましくはE20≧8.8
GPa、更に好ましくはE20≧9.8GPaである。ヤ
ング率が7.8GPa未満では張力下に変形を生じ易く
なることを意味し、しわや折れなどを生じ印刷特性を大
きく害することとなる。また、E20≧7.8GPaであ
れば該フィルムを薄膜化できる為、伝熱効率が良好であ
り鮮明な印刷を可能ならしめる。
【0046】また、本発明の芳香族ポリアミドフィルム
は伸度が好ましくは10%以上、更に好ましくは20%
以上、特に好ましくは30%以上であれば柔軟で取り扱
いの容易な感熱転写記録媒体として得ることができる。
【0047】本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルム
の吸湿率は2.5%以下、好ましくは2%以下、更に好
ましくは1.7%以下である。2.5%を越えると熱時
フィルム中で気泡を発生して印刷特性を害する可能性が
ある。この吸湿率は先述の構造的特徴や後述する製膜上
の工夫等によって達成できる。また、本発明の芳香族ポ
リアミドはその末端をアニリン、フタル酸無水物、ベン
ゾイルクロリド等で処理すると更に吸湿率の低減がはか
れるので好ましい。
【0048】本発明の芳香族ポリアミドフィルムの20
0℃における熱収縮率は好ましくは2%以下、更に好ま
しくは1%以下である。2%を越えるフィルムは印刷時
に寸法変動を生じ、シワや傷を生じ印刷特性を悪化させ
る。熱収縮率は所定の長さのフィルムを無張力下熱処理
を行い、処理前後の寸法変動率で求められる。熱収縮率
は製膜、延伸後にガラス転移点温度から数十℃の範囲で
熱処理を行ったり、リラックス処理を行うこと等での手
段により好ましい範囲内とすることができる。
【0049】次に本発明の芳香族ポリアミドフィルムを
製造する例を説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。芳香族ポリアミドを得る方法は例えば、低
温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法な
どが挙げられるが、低温溶液重合法つまり酸クロリドと
ジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン(N
MP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチル
ホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶
媒中で合成される。ポリマ溶液は、単量体として酸クロ
リドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、こ
れを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウ
ム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオ
キサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエ
チルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミ
ンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネ
ートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶
媒中、触媒の存在下で行なわれる。
【0050】これらのポリマ溶液はそのまま成形体を得
るための原液として使用してもよく、あるいはポリマを
一度単離してから上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶媒
に再溶解して原液を調製してもよい。
【0051】この重合時において、高純度の原料を用
い、水等の不純物の除去された溶媒を用いることはもち
ろんであるが、特に工業的なスケールでの実施には、重
合時に溶液に適当なせん断応力を与え効率的に混ぜるこ
とが極めて重要である。芳香族ポリアミドの生成反応は
反応初期において非常な発熱を伴う。この反応熱によっ
て溶媒分子との反応や活性末端の失活がおこり、オリゴ
マ分子が生成する。従って重合初期には高速で混ぜ、局
所的蓄熱が生じないよう除熱を図ることが重要である。
また、反応に伴い重合溶液の粘度は上昇するが、かかる
状況下で高速に混合するとかえって不均一な混合状態と
なり、反応不十分なオリゴマ成分が生成する。従って、
重合初期から終了にかけて溶液の粘度上昇に合わせ混合
速度を低下させてゆくように制御することが好ましい。
上記手段はまた、ポリマの分子量分布もシャープに制御
でき機械特性及び吸湿率に好ましい影響を与える。
【0052】本発明に用いる芳香族ポリアミドを得るた
めの原液には溶解助剤として無機塩例えば塩化カルシウ
ム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムな
どの添加を特に必要としないが、本発明の目的を損なわ
ない限り添加されていても良いし、また、重合原液をそ
のまま用いても構わないが一旦水等で再沈後溶媒に溶解
し用いても構わない。原液中のポリマ濃度は好ましくは
2〜40重量%、更に好ましくは5〜35重量%であ
る。かかる範囲を下回れば吐出を大きく取る必要があり
経済的に不利であり、越えれば吐出量あるいは溶液粘度
の関係で薄もののフィルムを得ようとするときの困難性
が高い。
【0053】また、必要に応じ例えばSiO2 、TiO
2 、TiN、Al2 3 、ZrO2 、ゼオライト、その
他の金属微粉末などの無機粒子や有機粒子等の粒子を含
有量としてポリマ重量当たり0.01〜40重量%、好
ましくは1〜20重量%添加する。これら粒子に着色さ
れた成分が含まれていれば印刷後フィルムからの情報の
漏洩が防止できるので好ましい。
【0054】粒子の添加方法は特に制限はないが、粒子
の分散度、凝集度の調整が必要なら撹拌分散器、ボール
ミル、超音波分散器等を用いて調整することが好まし
い。
【0055】この分散された粒子は前記ポリマ溶液に混
合するが、混合にあたっては重合前の溶媒に添加あるい
は重合後に添加あるいはポリマ溶液調整時に添加しても
よく、さらには吐出直前でも構わない。
【0056】次にフィルム化について説明する。上記の
ように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によ
りフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、
乾式法、湿式法などがありいづれの方法で製膜されても
差し支えないが、乾式法では金属塩等の不揮発性不純物
を除去し得ず、再沈等事前に不純物が除かれている場合
等を除き通常用いない。ここでは乾湿式法を例にとって
説明する。
【0057】乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金か
らドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して
薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜
が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、
室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができ
る。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレス
ベルトの表面はなるだけ平滑であれば表面の平滑なフィ
ルムが得られる。乾燥後のフィルムは自己支持性を有す
るが過度の乾燥は高次構造の劣化を誘起し、吸湿率の悪
化、フィルム表面構造を粗し、またフィルム中の金属塩
等の不純物の除去に不利であり、感熱転写記録媒体とし
て好ましくないため、乾燥後のフィルム中の溶媒残留量
は30〜70%、好ましくは40〜60%とするべきで
ある。この乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離
されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわ
れ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムと
なる。この工程において湿式工程、延伸、熱処理工程は
重要な役割を持つ。
【0058】この工程には水を脱溶媒としても構わない
が、水と有機溶媒との混合媒を好ましく用いる。有機溶
媒は水溶性であり、好ましくは重合溶媒同様、N−メチ
ルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DM
Ac)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロト
ン性有機極性溶媒が好ましく、組成比を変化させた複数
の浴を用いることが実用的であり、フィルム中の金属塩
等を効率的に除去できる。また、温度は任意に選びうる
が、40℃以上であればより容易に目的を達することが
できる。
【0059】延伸は延伸倍率として面倍率で0.8〜8
(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルム
の面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを意
味する。)の範囲が通常用いられるが、本発明の吸湿率
とするには結晶性を高めることが効果的であるので好ま
しくは1.3〜8、更に好ましくは1.4〜最大延伸倍
率の80%程度で実施する。また、熱処理温度としては
150℃〜500℃の範囲の温度が通常用いられるが、
本発明の吸湿率を達成するために、好ましくポリマのガ
ラス転移点温度(Tg)〜Tg+50℃の温度で数秒か
ら数分間定長あるいは若干リラックスさせて熱処理を実
施する。さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐
冷する事は極めて有効であり、50℃/秒以下の速度で
冷却する事が有効である。
【0060】本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルム
は優れた機械特性を有しているので特に薄物のフィルム
としたときに他素材には見られない優れた効果を発揮す
る。好ましい厚みは0.5〜50μm、より好ましくは
1〜20μm、更に好ましくは2〜10μmである。
【0061】本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルム
はもちろん単層フィルムでも、積層フィルムであっても
よい。積層フィルムとする時のそれぞれの成分は同じ種
類でも異なるものでもよい。例えば2層の場合には、重
合した芳香族ポリアミド溶液を二分し、それぞれ異なる
粒子を添加した後、積層する。さらに3層以上の場合も
同様である。これら積層の方法としては、周知の方法た
とえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層
を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などが
ある。
【0062】本発明の芳香族ポリアミドフィルム中の分
子量1000以下のオリゴマの含有量は好ましくは1重
量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下であること
が望ましい。ここで言うオリゴマは本発明の芳香族ポリ
アミドの構造単位を部分的にでも含有するものであり、
例えば溶媒との反応物等も含む。このオリゴマの含有量
が1重量%を越えるとフィルムの機械的、熱的特性を損
ねたり、あるいは使用時の滲み出し等でローラなどに巻
き付いたり、感熱転写記録層等が剥離したりすることが
ある。
【0063】また、本発明に用いる芳香族ポリアミドフ
ィルム中の金属イオン(特に周期表のIA族、IIA族の
イオン)は好ましくは3000ppm以下、更に好まし
くは100ppm以下、特に好ましくは30ppm以下
であればサーマルヘッドの腐蝕等の影響を及ぼさない優
れた感熱転写記録媒体とできる。ここで言う金属イオン
はイオン化された金属成分であって、外部粒子等の、溶
液から濾別あるいは遠心分離可能な固形体を構成する金
属成分は除かれる。
【0064】これは例えば溶媒を含めた原料の純度を高
くすることはもちろんであるが、フィルム化の際製膜用
溶媒及び無機塩を抽出する工程において表面に急激に緻
密な層が形成されないようすることが好ましく、先述の
ように製膜用溶媒と同種の溶媒が凝固溶媒に対しある傾
斜比をもって配合されてなる抽出槽を用いたり、抽出温
度の調整例えば複数の抽出層で温度勾配を設けたりする
こと等を好適な方法として達成できる。
【0065】次に、感熱転写記録媒体とするには上記の
芳香族ポリアミドフィルムに感熱転写記録層を形成す
る。記録層の形成に先立って基材フィルムの表面にグロ
ー処理やコロナ処理を行っても構わない。感熱転写記録
層を形成する方法は、フィルムの表面にホットメルト塗
工したり、溶剤に溶解せしめてグラビア、リバース、ス
リットダイコーター等の汎用的塗工を行う等の公知の方
法で行うことができ、また、該層は染料あるいは顔料と
ワックス等溶融型バインダーの混合物からなる溶融転写
型、昇華性染料とバインダー樹脂との混合物からなる昇
華型、モノクロ、カラーいずれの方式でもよく、公知の
マルチユース化処理がなされていても構わない。
【0066】また、本願発明は感熱ヘッドを用いての記
録に特に好適であるが、感熱ヘッド以外の手段、例えば
熱印版、レーザー光、基材フィルム中での発熱等の手段
を用いての記録にも用いることができる。
【0067】
【実施例】本発明の物性の測定方法、効果の評価方法は
次の方法による。 (1)吸湿率 基材フィルム数グラムを真空乾燥器中で100Pa以
下、180℃の条件下、恒量になるまで乾燥し、その重
量をW1とする。次いで、該フィルムを25℃、75%
RHの環境下に48時間置き、その後測定した重量をW
2とする。吸湿率は、〔(W2−W1)/W1〕×10
0(単位:%)として求めた。
【0068】(2)ヤング率、伸度 オリエンテック社製テンシロンを用い、試長50mm、
引張速度300mm/分で実施した。
【0069】(3)隣接位置換率 十分大きな相対粘度を有する芳香族ポリアミドの場合、
投入原料の全てが反応したと見なし、投入原料の種類及
び量から前記(式1)を用いて確率的な単純計算で求め
た。また、フィルムが計算で求めた隣接位置換率となっ
ているかC13NMR及びH1NMRスペクトルによっ
て確認を行った。
【0070】(4)オリゴマの重量分率 フィルムを溶媒中に溶解し、ゲル浸透クロマトグラフ
(GPC)に低角度レーザー光散乱光度計(LALL
S)及び示差屈折率計(RI)を組み入れ、GPC装置
でサイズ分別された分子鎖溶液の光散乱強度及び屈折率
差を溶出時間を追って測定することにより、溶質の分子
量とその含有率を順次計算し最終的には高分子量物質の
絶対分子量分布を求め算出した。絶対分子量の校正には
ジフェニルメタンを用いた。簡便な方法としては単にサ
イズ分別された溶液の分子量1000以下のフラクショ
ンを集め、溶媒を除去して求めることもできる。
【0071】(5)金属イオン含有量 芳香族ポリアミドフィルムを溶媒に溶解し、遠心分離器
や濾過により粒子等を除去する。ついで、溶液から芳香
族ポリアミド成分を回収、定量し、燃焼、灰化させ、硝
酸、フッ化水素酸に溶解し、ついで希硝酸で定溶化し
た。次に、原子吸光分析装置を用い、予め作成した検量
線に基づいて定量した。ここで、単位ppmは(μg/
g)である。
【0072】(6)熱分解発生物 少量のフィルムサンプルを熱減量質量分析計を用い、ア
ルゴン気流中室温から400℃まで昇温させた際の気体
状分解生成物を分析した。
【0073】(7)印刷特性 フィルムにイエロー、シアン、マゼンダ、黒の4種の昇
華性染料−バインダー混合物からなる塗料を塗布乾燥
し、4色の感熱転写記録層を形成した。乾燥後の転写層
厚みは3μmである。 染料 :10重量部 ポリビニルブチラール樹脂 :20重量部 トルエン :90重量部 メチルエチルケトン :90重量部 このシートを用い市販の印刷機でフルカラー印刷を行っ
て、印刷特性を判定した。
【0074】実施例1〜6、比較例1〜4 以下の実施例あるいは比較例で用いた各原料の略記号は
それぞれ次の通りである。 芳香族ジアミン成分: DPX:2,5 −ジメチルパラフェニレンジアミン DMB:3,3'−ジメチルベンジジン DOB:3,3'−ジメトキシベンジジン DPE:4,4'−ジアミノジフェニルメタン TDM:3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェ
ニルメタン 酸クロリド成分: TPC:テレフタル酸ジクロリド CPC:2-クロルテレフタル酸ジクロリド MPC:2-メチルテレフタル酸ジクロリド BPC:4,4'- ビフェニルジカルボン酸ジクロリド DPC:4,4'- ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロ
リド 酸無水物成分: PAH:ピロメリット酸無水物
【0075】実施例1 槽径1.8mの冷却ジャケット付き反応槽に脱水したN
−メチルピロリドン(以下NMPと略す)に50モル%
のDOB、50モル%のDPXを溶解させ溶液を冷却す
る。ついで、100モル%のTPCを添加し周速度を4
m/秒から2m/秒に変化させながら2時間撹拌後水酸
化リチウムで中和して重合物を得た。重合物は透明な溶
液として得られた。
【0076】この溶液に平均粒径0.2μmに分散した
シリカ粒子のスラリーを粒子がポリマ当たり2重量%添
加し、脱泡後5μmカットのフィルターを通し、ステン
レスベルト上に流延し、170℃で溶媒含量が55%に
なるまで蒸発後、自己支持性を得たフィルムをベルトか
ら剥離して40℃に保ったNMP/水比がそれぞれ30
/70、20/80、10/90、0/100の抽出浴
中に順次導入して残存溶媒等を抽出した。ついで、テン
ター中で310℃で乾燥、熱処理し、この時長手方向に
1.1倍、幅方向に1.2倍延伸し、20℃/秒の速度
で常温に冷却して厚さ6μmのフィルムを得た。このフ
ィルムの吸湿率は1.6%、伸度、長手方向のヤング率
はそれぞれ25%、11.76GPa、熱収縮率は0.
1%、金属イオン含有量は15ppmであった。このフ
ィルムはNMPに溶解する。また、熱分解生成物にハロ
ゲン化合物、窒素酸化物は認められなかった。このフィ
ルムを用いた感熱転写記録媒体は良好なフルカラー印刷
特性を示した。
【0077】実施例2 実施例1と同様にNMPに40モル%のDMB、40モ
ル%のDPX、20モル%のDPE、100モル%のT
PCを用いて重合物を得た。重合物は透明な溶液として
得られた。この溶液に実施例1同様にシリカ粒子を添加
し、製膜した。なお、テンター中で285℃で乾燥、3
00℃で熱処理を行った。この時長手方向に1.1倍、
幅方向に1.2倍延伸し、20℃/秒の速度で常温に冷
却して、厚み6μmのフィルムを得た。このフィルムの
吸湿率は1.6%、伸度、長手方向のヤング率はそれぞ
れ35%、11.27GPa、熱収縮率は0.2%、金
属イオン含有量は24ppmであった。このフィルムは
NMPに溶解する。また、熱分解生成物にハロゲン化合
物、窒素酸化物は認められなかった。このフィルムを用
いた感熱転写記録媒体は良好なフルカラー印刷特性を示
した。
【0078】実施例3 実施例2の方法で重合したポリマ溶液に平均一次粒径1
6nmのシリカ粒子をポリマ当たり2重量%添加し、つ
いで5μmカットのフィルターを通した後、ステンレス
ベルト上に流延し、170℃で溶媒含量が55%になる
まで蒸発後、自己支持性を得たフィルムをベルトから剥
離して常温の水浴中に導入して残存溶媒等を抽出し、つ
いで、テンター中で285℃で乾燥、295℃で熱処理
を行った。この時長手方向に1.25倍、幅方向に1.
35倍延伸して、厚み4.5μmのフィルムを得た。こ
のフィルムの吸湿率は1.8%、伸度、長手方向のヤン
グ率はそれぞれ42%、12.25GPa、熱収縮率は
0.2%、金属イオン含有量は120ppmであった。
このフィルムはNMPに溶解する。また、熱分解生成物
にハロゲン化合物、窒素酸化物は認められなかった。こ
のフィルムを用いた感熱転写記録媒体は良好なフルカラ
ー印刷特性を示した。しかし、長時間の運転において感
熱ヘッド及び転写媒体においてかすかに変色が認めら
れ、耐久性に若干の問題があるよう思われた。
【0079】実施例4 実施例1と同様にNMPに50モル%のD0B、50モ
ル%のDPX、80モル%のTPC、20モル%のDP
Cを用いて重合物を得た。重合物は透明な溶液として得
られた。以下実施例2と同様に厚み6μmのフィルムを
得た。このフィルムの吸湿率は1.5%、伸度、長手方
向のヤング率はそれぞれ34%、11.76GPa、熱
収縮率は0.2%、金属イオン含有量は16ppmであ
った。このフィルムはNMPに溶解する。また、熱分解
生成物にハロゲン化合物、窒素酸化物は認められなかっ
た。このフィルムを用いた感熱転写記録媒体は良好なフ
ルカラー印刷特性を示した。
【0080】実施例5 NMPに45モル%のDMB、45モル%のDPX、1
0モル%のTDM、50モル%のMPC、50モル%の
BPCを用い実施例1と同様の方法で重合物を得た。重
合物は透明な溶液として得られた。この溶液に以下実施
例2と同様の方法で厚み6μmのフィルムを得た。この
フィルムの吸湿率は1.4%、強度、伸度、長手方向の
ヤング率はそれぞれ36%、12.25GPa、熱収縮
率は0.0%、金属イオン含有量は16ppmであっ
た。このフィルムはNMPに溶解する。また、熱分解生
成物にハロゲン化合物、窒素酸化物は認められなかっ
た。このフィルムを用いた感熱転写記録媒体は極めて良
好なフルカラー印刷特性を示した。
【0081】実施例6 槽径1.8mの冷却ジャケット付き反応槽に脱水したN
MPに45モル%のDOB、45モル%のDPX、10
モル%のDPEを溶解させ、ついで、6モル%のPAH
を加え30分間撹拌後溶液を冷却する。ついで、94モ
ル%のTPCを添加し周速度を4m/秒から2m/秒に
変化させながら2時間撹拌後水酸化リチウムで中和して
重合物を得た。重合物は透明な溶液として得られた。こ
の溶液を延伸、熱処理温度を285℃、315℃とした
以外は実施例2と同様にして厚み4.5μmのフィルム
を得た。このフィルムの吸湿率は1.5%、伸度、長手
方向のヤング率はそれぞれ25%、13.23GPa、
熱収縮率は0.2%、金属イオン含有量は19ppmで
あった。このフィルムはNMPに溶解する。また、熱分
解生成物にハロゲン化合物、窒素酸化物は認められなか
った。 このフィルムを用いた感熱転写記録媒体は良好
なフルカラー印刷特性を示した。
【0082】比較例1 NMPにポリマ当たり100重量%の臭化リチウムを溶
解させ、次にDMB80モル%、DPE20モル%を溶
解し、溶液を冷却する。ついでTPC100モル%を添
加し反応を行った。生成物は重合開始後まもなく透明性
を失いゲルを生じた。本例から得られるフィルムが有機
溶媒に溶解しないことは明らかである。
【0083】比較例2 NMPにポリマ当たり100重量%の臭化リチウムを溶
解させ、次にDPX80モル%、DPE20モル%を溶
解し、溶液を冷却する。ついでTPC100モル%を添
加し反応を行った。生成物は重合開始後まもなく透明性
を失いゲルを生じた。本例から得られるフィルムが有機
溶媒に溶解しないことは明らかである。
【0084】比較例3 実施例1と同様の方法でDMB50モル%、DPE50
モル%、TPC100モル%から重合物を得た。重合物
は透明な溶液として得られた。以下、延伸、熱処理温度
を275℃、290℃とした以外は実施例2と同様の方
法で厚み6μmのフィルムを得た。このフィルムの吸湿
率は2.8%、伸度、長手方向のヤング率はそれぞれ4
8%、7.35GPa、熱収縮率は0.5%、金属イオ
ン含有量は21ppmであった。このフィルムを用いた
感熱転写記録媒体は使用中しわやおれを生じ、また、印
刷むらやかすれが認められた。
【0085】比較例4 実施例1と同様の方法でCPA80モル%、DPE20
モル%、CPC100モル%から重合物を得た。ポリマ
濃度は12重量%であり、重合物は透明な溶液として得
られた。以下、延伸、熱処理温度を285℃、300℃
とした以外は実施例2と同様の方法で厚み6μmのフィ
ルムを得た。このフィルムの吸湿率は1.6%、伸度、
長手方向のヤング率はそれぞれ35%、10.78GP
a、熱収縮率は0.5%、金属イオン含有量は18pp
mであった。このフィルムはNMPに溶解する。しか
し、熱分解生成物中に塩化水素の発生が認められ、熱時
下サーマルヘッドを腐蝕する懸念のあることが判った。
このフィルムを用いた感熱転写記録媒体は良好なフルカ
ラー印刷特性を示したものの、長時間印刷を実施した後
ヘッドを観察すると変色が認められ、更なる長期使用に
耐えうるものではないことが示唆された。
【0086】
【発明の効果】本発明の芳香族ポリアミドフィルムを基
材とする感熱転写記録媒体は、その本来の優れた機械特
性、耐熱性等の種々の性能を維持しつつ、特に芳香族ポ
リアミドにおいて問題であった有機溶媒への溶解性を確
保し、かつ吸湿率の低減を両立させ、カラー記録や高精
細化、マルチユースユース等の過酷な使用環境下におけ
る使用にも耐え、また、有害な物質を含有あるいは発生
しないのでサーマルヘッドを害する懸念も環境を汚染す
る危険もない極めて価値の高いものである。また、本発
明に用いられる芳香族ポリアミドフィルムは好ましく有
機溶媒系から得ることができるので、生産性にも優れ、
また再利用も可能な環境に優しいものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−107588(JP,A) 特開 昭63−98484(JP,A) 特開 昭61−237687(JP,A) 特開 昭60−174694(JP,A) 特開 平4−337324(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41M 5/38 - 5/40

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機溶媒に可溶で、芳香核上の水素を置
    換するハロゲン基及びニトロ基の置換割合が15%未満
    であり、一般式化1で示される互いに異なった芳香核を
    有する構造単位からなるA群、一般式化2で示される互
    いに異なった芳香核を有する構造単位からなるB群、及
    び、一般式化3で示される互いに異なった芳香核を有す
    る構造単位からなるC群から少なくとも3種以上選択さ
    れる構造単位(但し、基本芳香核を異にする少なくとも
    2種の構造単位は同じ群から選択される。)を主たる構
    造単位とするパラ配向性芳香族ポリアミドを主成分と
    し、かつ、少なくとも一方向のヤング率が7.8GPa
    以上、フィルムの吸湿率が2.5%以下である芳香族ポ
    リアミドフィルムの一面に感熱転写記録層を設けてなる
    感熱転写記録媒体。 【化1】 【化2】 【化3】 (ここでAr1 、Ar2 、Ar3 はパラ配向性の芳香核
    であり、各群の化合物はRa、Rb、Rcで示されるハ
    ロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキ
    ル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキルシリ
    ル基、オキシアリール基、チオアリール基から選ばれる
    官能基で置換されていても構わない。ここで、k、l、
    mはそれぞれ0〜4の数である。また、A群、B群は実
    質的に等モルである。)
  2. 【請求項2】 芳香族ポリアミドフィルム中に含有され
    る金属イオンが3000ppm以下である、請求項1に
    記載の感熱転写記録媒体。
  3. 【請求項3】 芳香族ポリアミドが前記一般式化1から
    一般式化3に示される構造単位に加え、一般式化4で示
    される構造単位からなるD群を含有することを特徴とす
    る請求項1または2に記載の感熱転写記録媒体。 【化4】 (ここでAr4 、Ar5 はパラ配向性の芳香核であり、
    X、Yは互いに同じか異なっていてもよい−CO−また
    は−NH−基。Zはブリッジ原子団。また、Rd、Re
    はハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のア
    ルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキル
    シリル基、オキシアリール基、チオアリール基から選ば
    れる官能基であり、n、pはそれぞれ0〜4の数であ
    る。但し、このときは、X、Yが共に−CO−の時はA
    群と(B群、D群)、X、Yが共に−NH−のときは
    (A群、D群)とB群、互いに異なるときはA群、B群
    は実質的に等モルである。)
  4. 【請求項4】 芳香族ポリアミドの2種以上の構造単位
    が選択される群において、パラ配向性の基本芳香核とし
    てフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基のうち
    少なくとも2種が用いられる請求項1ないし3のいずれ
    かに記載の感熱転写記録媒体。
  5. 【請求項5】 芳香族ポリアミドの2種以上の構造単位
    が選択される群において、パラ配向性の互いに異なった
    芳香核として、3,3’−ジ置換−4,4’−ビフェニ
    レン基及び/または2,2’−ジ置換−4,4’−ビフ
    ェニレン基と、2,5−ジ置換パラフェニレン基及び/
    または2,3−ジ置換パラフェニレン基とを用いる、請
    求項1ないし4のいずれかに記載の感熱転写記録媒体。
  6. 【請求項6】 芳香族ポリアミドフィルムが光学等方性
    を与える有機溶媒溶液から製膜されている、請求項1な
    いし5のいずれかに記載の感熱転写記録媒体。
  7. 【請求項7】 芳香族ポリアミドフィルムの200℃に
    おける熱収縮率が2%以下である、請求項1ないし6の
    いずれかに記載の感熱転写記録媒体。
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