JP5277023B2 - ステアリングコラム装置 - Google Patents

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Description

本発明は、所定値を越える過大な衝撃力が加わった際にジャケットの大きな移動ストロークを備えたステアリングコラム装置に関する。
従来、ステアリングコラム装置として、ステアリングシャフトを回動可能に支承するジャケットと、このジャケットの長手方向、あるいは傾きを調整するロック機構と、所定値を越える過大な衝撃力がジャケットに加わった際に、上記ジャケットの軸方向への移動を可能とする破断部材とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このステアリングコラム装置100は、図24に示すように、軸方向上端にステアリングホイール(図示せず)が固定されるステアリングシャフト101と、このステアリングシャフト101を回動可能に支承するジャケット102と、このジャケット102を案内する案内部材103と、この案内部材103に対してジャケット102をロックするロック機構104とを備えている。このロック機構104は、ジャケット102内に設けられる一対の歯部105と、ジャケット102のテレスコ長孔110に設けられた歯部106と、これらのうちの可動側歯部106に頭部107aが連結されるボルト107を有するクランプ部材108と、このクランプ部材108を作動させる操作レバー109とから主として構成されている。ボルト107には、ジャケット102および案内部材103の間に位置するくびれ部107bが設けられている。
上記構成では、操作レバー109をロック解除方向に回動させると、ボルト107がステアリングシャフト101の方向に移動して一対の歯部105,106の噛合状態が解除されるので、ジャケット102は軸方向へ移動可能となる。また、操作レバー109をロック方向に回動させると、ボルト107がステアリングシャフト101から離れる方向に移動して一対の歯部105,106が互いに噛み合うので、ジャケット102は案内部材103に対してロックされて軸方向への移動が阻止される。このとき、車両の衝突でステアリングホイールに運転者が突き当たるなどにより、ステアリングシャフト101を介して所定値を越える過大な軸方向の衝撃力がジャケット102に加わった際に、ボルト107が剪断力を受けてくびれ部107bで破断し、ボルト107の頭部107aが離脱されるので、ステアリングシャフト101とジャケット102は軸方向へ移動可能となる。
また、図25に示す他のステアリングコラム装置120では、一対の分割部材121,122と、この分割部材121に設けられた可動側歯部106とテレスコ用長孔110に設けられた固定側歯部105と、ボルト107に沿って延設され、分割部材121,122を連結するシャーピン123とから構成されている。
上記構成では、一対の歯部105,106が互いに噛み合い、ジャケット102がロックされた状態で、ステアリングシャフト101を介して所定値を越える過大な軸方向の衝撃力がジャケット102に加わった際に、シャーピン123が剪断力により破断し、一方の分割部材121が他方の分割部材122より離脱されるので、ステアリングシャフト101とジャケット102は軸方向へ移動可能となる。
特開平10−157634号公報
ところで、特許文献1に記載の技術にあって図24に示す構成では、クランプ部材108のボルト107にくびれ部107bを設けることでステアリングシャフト101とジャケット102が軸方向へ移動可能となる衝撃力が設定されているため、ボルト107の締付力を大きくして、可動側歯部106と固定側歯部105との係合を強め、通常の車両運転時等でのステアリングコラム装置のガタ付きを防止しようとすると、くびれ部107bが強度不足のために破断するおそれがある。逆に、上記締付力を大きくするためにくびれ部107bの径を太くした場合、ステアリングシャフト101を介して所定値を越える過大な軸方向の衝撃力がジャケット102に加わった際に、くびれ部107bが破断しにくくなり、ステアリングシャフト101とジャケット102の軸方向の移動が阻まれてしまう。つまり、くびれ部107bに設定される衝撃力の大きさと、ガタ付きを防止するために必要なボルト107の締付力の大きさとは相反する要求であり、両立させることが非常に困難である。
また、図25に示す構成では、固定側歯部106がジャケット102のテレスコ用長孔102aの縁部に一体の構造であるため、シャーピン123が剪断力により破断し、一方の分割部材121が他方の分割部材122よりが離脱した後、ボルト107の移動ストロークはテレスコ用長孔102aの縁部に当接するまでに限定されてしまい、充分な移動ストロークを確保することができない。逆に、充分な移動ストロークを確保するために、テレスコ用長孔102aをボルト107の移動方向へ延長して端部を開口した場合には、ジャケット102のテレスコ範囲(軸方向の位置調整範囲)を規制できなくなるので、規制部材を追加して設ける必要があった。
本発明は、上記事情を考慮し、通常時には、ステアリングシャフトを回動可能に支承するジャケットを強固に固持することができるとともに、所定値を越える過大な衝撃力が加わった際には、ジャケットの大きな移動ストロークを得ることができるステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、車体に固定される固定部と、固定部から垂下する懸架部とからなるマウントブラケットと、軸方向上端にステアリングホイールが固定されるステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトを回動可能に支承するジャケットと、該ジャケットの外周面に一体に形成され、該ジャケットの軸方向に延設される摺接部と、該ジャケットの軸方向に沿って形成され車体後方に向かって開放するスリットとを備えたジャケットブラケットと、該マウントブラケットと該ジャケットの間に配置され、該摺接部に対向、当接する当接部を具備するジャケットガイドと、該マウントブラケットに支持され、且つ該ジャケットブラケットの該スリット、および該ジャケットガイドを貫通する軸部を有するクランプ用ボルトと、該スリットを横切るように配置され、該クランプ用ボルトの該スリット内の移動範囲を規定する規制部と、該規制部を該ジャケットブラケットに固定し、且つ所定値を越える力が加わった際に、連結を解除する剪断部とを具備する離脱部材とを備え、該クランプ用ボルトを締上げることで、該摺接部を該当接部に押付け、該ジャケットを該マウントブラケットに締結、固持し、該クランプ用ボルトを締上げた状態で所定値を越える力が該ジャケットの軸方向に加わった際に、該剪断部が破断することによって該規制部による移動範囲の規制が解除され、該ジャケットが移動することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載のステアリングコラム装置であって、前記当接部が軸方向に沿って延びる凹溝形状を備え、前記ジャケットブラケットが該当接部の凹溝内をスライドすることで、前記ジャケットが移動する際に軸方向に誘導されることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1、または請求項2に記載のステアリングコラム装置であって、前記離脱部材は、樹脂製のガイド板と板状部材からなる保持板を備え、前記剪断部は、該ガイド板から突設され、前記ジャケットブラケットに設けられる貫通孔からなるブラケット側連係孔と、該保持板に設けられる保持板側連結孔とを貫通するシャーピンからなり、前記規制部は、前記保持板とガイド板に形成され、前記ジャケットのテレスコ移動寸法と同等の長さ寸法を有する長孔からなることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項3に記載のステアリングコラム装置であって、前記離脱部材は、前記クランプ用ボルトの前記軸部が挿通される挿通孔と、ラック状に複数の歯状突起が前記ガイド板に向けて並列された可動側歯部と、弾性材からなり前記本体部へ向けて突設される付勢手段とを具備する噛合駒と、前記ガイド板に、該ガイド板の前記長孔に沿ってラック状に複数の歯状突起が該可動歯部と噛合可能に並列された固定側歯部と、を備え、前記クランプ用ボルトを締上げた際には、固定側歯部と可動側歯部とが噛合し、該クランプ用ボルトを緩めた際には、該付勢手段の付勢力によって固定側歯部と可動側歯部とが離間することを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステアリングコラム装置であって、前記ジャケットガイドは、前記当接部の外縁から前記摺接部の外縁に向かって、且つ前記ジャケットの軸方向に沿って突設されるとともに、該ジャケットが収縮した状態における該摺接部の裏面側へ巻込まれる巻込み支持部を備えたことを特徴としている。
請求項1の発明において、クランプ用ボルトを締上げると、ジャケットガイドの当接部とジャケットブラケットの摺接部が圧接係合され、マウントブラケットへジャケットが締結、固持されるので、ジャケットブラケットおよびジャケットの移動が規制される。また、クランプ用ボルトを緩めると、当接部と摺接部との圧接係合状態が解除されるので、ジャケットブラケットおよびジャケットは移動可能となる。そして、クランプ用ボルトを締上げた状態でステアリングシャフトを介して所定値を越える過大な軸方向の衝撃力がジャケットに加わった際に、ジャケットブラケットが移動してクランプ用ボルトが規制部に当たり、剪断部が破断して離脱部材がジャケットブラケットから離脱することにより、圧接係合によるジャケットブラケットのジャケットガイドへの締結、固持が解除されるので、ジャケットは軸方向に移動可能となる。
これにより、従来例のようなクランプ用ボルトの軸部にくびれ部を設ける構成よりも、クランプ用ボルトの引張り強度を向上させることができるので、該クランプ用ボルトによってマウントブラケットへジャケットブラケットを強固に圧接係合させて締結、固持できる。
クランプ用ボルトによる締結力は、ジャケットブラケットの摺動部とジャケットの当接部との圧接係合にて受けるため、離脱部材が受ける締結力は弱くて済み、要求に応じた離脱荷重特性を設定できる。
さらに、ジャケットブラケットにジャケットの軸方向に延びて車体後方に向かって開口するスリットを備えたので、所定値を越える過大な衝撃力が加わった際に、ジャケットがジャケットブラケットのスリットに沿ってジャケットの軸方向に移動するので、ジャケットの大きな移動ストロークを得ることができる。
請求項2の発明において、ジャケットブラケットが当接部の凹溝内を誘導されつつ、スライドすることで、ジャケットが軸方向へ移動する際の引っ掛かり、およびジャケットの脱落を防止できる。
請求項3の発明において、ジャケットはテレスコ移動時にジャケットブラケットの長孔に沿って移動し、この離脱部材の保持板とガイド板の長孔(規制部)の端部にクランプ用ボルトが当接し、ジャケットの移動が規制される。一方、所定値を越える過大な衝撃力がジャケットに加わり、クランプ用ボルトが保持板とガイド板の長孔の端部に突き当たった場合には、シャーピンが破断してジャケットが保持板とガイド板から離脱する。
請求項4の発明において、クランプ用ボルトの軸部が挿通される噛合駒の可動側歯部がガイド板の固定側歯部と噛合うことにより、ジャケットガイドとガイド板との間が滑らないため、設定された離脱荷重特性で確実に剪断部を破断することができる。また、クランプ用ボルトを緩めた際には、付勢手段の付勢力によって固定側歯部と可動側歯部とが離間することにより、可動側歯部および固定側歯部の噛合い状態が完全に解除されるので、ジャケットが軸方向へ移動する際の引っ掛かりを防止できる。
請求項5の発明において、巻込み支持部が、当接部の外縁から摺接部の外縁に向かって、且つジャケットの軸方向に沿って突設されるとともに、ジャケットが収縮した状態における摺接部の裏面側へ巻込まれることにより、ジャケットブラケットをジャケットの軸方向へ移動可能な状態で保持でき、これにより、ジャケットの脱落を防止できる。
本発明の第1実施形態を示し、ステアリングコラム装置の横断面図である。 本発明の第1実施形態を示し、ステアリングコラム装置の縦断面図で、(a)はステアリングシャフトが伸長した状態を示す縦断面図、(b)は離脱カプセルが離脱した状態を示す縦断面図である。 本発明の第1実施形態を示し、図1のIII−III矢視断面図である。 本発明の第1実施形態を示し、ガイド板と保持板の取付状態を示す正面図である。 本発明の第1実施形態を示し、図4のV−V矢視断面図である。 本発明の第1実施形態を示し、保持板の正面図である。 本発明の第1実施形態を示し、ガイド板の正面図である。 本発明の第1実施形態を示し、ジャケットとジャケットブラケットの正面図である。 本発明の第1実施形態を示し、ジャケットガイドの平面図である。 本発明の第1実施形態を示す断面図である。 本発明の第1実施形態を示し、ジャケットガイドの側面図である。 本発明の第2実施形態を示し、ステアリングコラム装置の横断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、ステアリングコラム装置の縦断面図で、(a)はステアリングシャフトが伸長した状態を示す縦断面図、(b)は離脱カプセルが離脱した状態を示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、図12のXVIII−XVIII矢視断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、ロック機構の分解斜視図である。 本発明の第2実施形態を示し、固定側歯部の正面図である。 本発明の第2実施形態を示し、図16のXXI−XXI矢視断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、可動側歯部を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。 本発明の第2実施形態を示し、図18(a)のXXIII−XXIII矢視断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、固定側歯部および可動側歯部の噛合状態を示す断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、固定側歯部および可動側歯部のハーフロック状態を示す断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、固定側歯部の変形例を示す正面図である。 本発明の第2実施形態を示し、可動側歯部の変形例を示す正面図である。 ステアリングコラム装置の従来例を示す断面図である。 ステアリングコラム装置の他の従来例を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図1では説明のためジャケットガイドとマウントブラケットを二点鎖線で示し、図2ではジャケットガイドとマウントブラケットとチルトブラケットを二点鎖線で示してある。
図1〜図3に示すように、第1実施形態のステアリングコラム装置1は、軸方向上端(図1の右端)にステアリングホイール(図示せず)が固定されるステアリングシャフト2を回動可能に支承するジャケット3と、このジャケット3を案内するジャケットガイド4と、車体5に固定されるマウントブラケット6と、ジャケット3をジャケットガイド4に対してロックするロック機構7とを備えている。
ステアリングシャフト2は、アッパシャフト20とロアシャフト21からなり、軸方向に相対摺動可能に嵌合されている。
ジャケットガイド4は、ステアリングシャフト2およびジャケット3の軸方向に沿って延設されるとともに、ジャケットガイド4の長手方向下端部40は、電動ステアリング装置41を介してロアサポートブラケット42に連結されることで、チルト軸を介して車体5に支持されている。これにより、ジャケットガイド4およびジャケット3の全体がチルト軸の周りに回動可能となっている。また、ジャケットガイド4は、図11に示すように、後述するマウントブラケット6のチルトブラケット60と摺接する摺接部材46と、後述するジャケットブラケット70をガイドするガイド部材47からなる断面略凹字形状を具備し、軸方向に沿って延びるガイド部材47の先端には当接部43が設けられ、当接部は後述するジャケットブラケット70の摺接部70aに当接する。また、ジャケットガイド4には、後述するクランプ用ボルト72が挿通される丸孔44が設けられている。ジャケットガイド4の長手方向上端に突起片45が設けられ、この突起片45とマウントブラケット6との間に張設されるバネ部材46によって、ジャケットガイド4がマウントブラケット6の方向に付勢されつつ、懸架されている。
マウントブラケット6は、車体に固定される固定部6aから懸架されるチルトブラケット60(懸架部)が垂下され、チルトブラケット60は、車両上下方向に沿った円弧形状を有するチルト用長孔61を備え、ジャケットガイド4と当接する。
ロック機構7は、ジャケット3に溶接付けされ、ジャケット3の軸方向へ延びるジャケットブラケット70と、このジャケットブラケット70に形成されたスリット71とジャケットガイド4に回動自在に支承された軸部72aを有するクランプ用ボルト72と、このクランプ用ボルト72を作動させる操作レバー73とを有している。
ジャケットブラケット70は、それぞれジャケット3の近傍に配置されるとともに、ジャケットガイド4と対向する一対の摺接部70aと、これらの摺接部70aの間に介設され、当接部43間の凹溝内にジャケット3より所定の間隔をおいて配置されてジャケットガイド4と摺接する平坦部70b、および図9に示すように軸方向に延びるスリット71が形成された側壁部70cとを有している。一対の摺接部70aには、ジャケットガイド4の当接部43先端がそれぞれ当接するとともに、当接部43間に平坦部70bの両端部が挟まれた状態で、ジャケット3がジャケットガイド4により案内されて軸方向に移動可能である。また、一対の摺接部70aは、ジャケット3の軸方向の下端から中間部にわたって設けられ、平坦部70cは、上記摺接部70aより軸方向の上端側へ長めに設けられており、平坦部70cに形成されたこのスリット71は軸方向の下端側が閉じて、軸方向の上端側に開口71aが車体後方に向かって形成されている。
スリット71の軸方向の下端近傍には、図4〜図7に示す、樹脂製のガイド板74と、保持板75とからなる離脱部材としての離脱カプセルが装着されている。これらのガイド板74および保持板75には、それぞれスリット71と対向し、クランプ用ボルト72が挿通されるとともにステアリングシャフト2、およびジャケット3のテレスコ移動寸法と同等の長さ寸法を有し、縁部がスリット71を横切るように配置された長孔74a,75a(規制部)が設けられている。ガイド板74と一体に成形される4本のシャーピン74b(剪断部)がジャケットブラケット70に設けられる貫通孔からなるブラケット側連係孔70dを貫通して、各先端が保持板75に設けられる保持板側連結孔75cに係止される。保持板75は、平坦部70cの内側(ジャケット3の側)に配置され、クランプ用ボルト72の頭部72bと当接する。ガイド板74は、平坦部70cとジャケットガイド4との間に介設されており、さらにジャケットガイド4とは微小な隙間を有している。
また、クランプ用ボルト72の軸部72aは、操作レバー73に装着される可動カム76と、この可動カム76およびチルトブラケット60間に介設される固定カム77と、ニードルベアリング78とに挿通され、クランプ用ボルト72の先端72cに螺合するナット79によりニードルベアリング78が軸方向に付勢される。
上記構成では、車両の運転者が操作レバー73をロック方向に回動させて、クランプ用ボルト72を締上げる(ロック状態)と、クランプ用ボルト72の頭部72bがジャケット3から離れる方向に移動して保持板75に圧接して、ジャケットブラケット70はジャケットガイド4およびチルトブラケット60に対して締結、固持(ロック)されるので、ジャケット3の上下方向(チルト)、および軸方向(テレスコ)の移動が規制される。また、操作レバー73をロック解除方向に回動させて、クランプ用ボルト72を緩める(ロック解除状態)と、クランプ用ボルト72の頭部72bがジャケット3の方向に移動してジャケットブラケット70の締結、固持が解除されるので、ジャケット3は上下方向(チルト)、および軸方向(テレスコ)に移動可能となる。
ロック機構7をロックさせた状態で、車両の衝突でステアリングホイールに運転者が突き当たったことなどにより、ステアリングシャフト2を介して所定値を越える過大な軸方向の衝撃力がジャケット3に加わった際に、ステアリングシャフト2、およびジャケット3が車体前方に軸移動することで、クランプ用ボルト72がガイド板74の長孔74aと保持板75の長孔75aの車体後方側の縁部に当たる。その後、ガイド板74のシャーピン74bが剪断力によって破断して、ガイド板74と保持板75がジャケットブラケット70から離脱するとともに、クランプ用ボルト72がジャケットブラケット70のスリット71内に留まる。これにより、ジャケットブラケット70のジャケットガイド4への締結、固持が解除されるので、ステアリングシャフト2、およびジャケット3は軸方向に移動可能となり、ステアリングシャフト2、およびジャケット3が図示しないエネルギー吸収構造により、収縮して衝撃エネルギを吸収する。
この第1実施形態によれば、従来例のようにクランプ用ボルト72の軸部にくびれ部を設けた場合と比べて、クランプ用ボルト72の引張り強度を向上させることができるので、クランプ用ボルト72によりジャケットブラケット70をジャケットガイド4およびチルトブラケット60に対して強固に圧接係合させて締結、固持できる。
また、第1実施形態によれば、ジャケット3に所定値を越える過大な軸方向の衝撃力が加わり、ガイド板74と保持板75がジャケットブラケット70から離脱することにより、ジャケット3およびジャケットブラケット70は、図2(b)に示すように軸方向の下端側へ移動するとともに、クランプ用ボルト72がジャケットブラケット70のスリット71に対して軸方向の上端側へ移動可能であるので、ジャケット3の移動ストロークを大きく確保することができる。さらに、ジャケット3がチルトブラケット60に対して軸方向の下段側へ移動しても、クランプ用ボルト72がスリット71内に留まるので、ジャケット3の脱落を防止できる。
また、第1実施形態によれば、クランプ用ボルトによる締結力は、ジャケットブラケット70の摺接部70aとジャケットガイド4の当接部43で受けるとともに、上記離脱カプセルのガイド板74はジャケットガイド4との間に微小の隙間を有しているため、クランプ用ボルト72の締結時において離脱カプセルはジャケットブラケット70とジャケットガイド4とに挟まれないことから、クランプ用ボルト72の締結力が作用しない。したがって、ガイド板74は、車体5へ取付ける際のクランプ用ボルトの締結力による影響を受けることなく、要求に応じた離脱荷重特性に設定できる。
図12〜図23は本発明の第2実施形態を示している。なお、図12では説明のためジャケットガイドとマウントブラケットを二点鎖線で示し、図13ではジャケットガイドとマウントブラケットとチルトブラケットを二点鎖線で示してある。また、図12〜図23において前述した図1〜図11に示すものと同様のものには同一符号を付してある。
図14に示すように、第2実施形態のステアリングコラム装置1Aでは、ジャケットガイド4の一対の当接部43の外縁からそれぞれジャケット3の方向に巻き込み支持部43aが突出し、この巻き込み支持部43aによりジャケットガイド4の短手方向の両側からジャケットブラケット70の摺接部70aの外縁70dの裏面側に巻き込むことにより、ジャケットガイド4でジャケットブラケット70は軸方向へ移動可能な状態で保持されている。巻き込み支持部43aは、ジャケットガイド4の長手方向下端部40からチルトブラケット60近傍まで設けられている。
また、ジャケットブラケット70のスリット71には、離脱カプセルが装着されている。離脱カプセルは、図16、図17に示すように、ガイド板80(本体部)と保持板75、および噛合駒84とから構成されている。ガイド板80は、長板状の樹脂材からなり、クランプ用ボルト72が挿通されるとともにステアリングシャフト2、およびジャケット3のテレスコ移動寸法と同等の長さ寸法を有する長孔81(規制部)がジャケットブラケット70のスリット71と対向して設けられている。ガイド板80の表面側には、ジャケット3の軸方向と直交する方向にラック状に延びる複数の歯状突起からなる固定側歯部82が、軸方向に向かって並列されるとともに、裏面側の四隅には4本のシャーピン83(剪断部)が一体成形されている。各シャーピン83は、(剪断部)が平坦部70cに設けられる貫通孔からなるブラケット側連係孔70dを貫通して、各先端が保持板75に設けられる保持板側連結孔75cに係止される。ガイド板80は、ジャケットブラケット70の平坦部70cとジャケットガイド4との間に介設されている。
噛合駒84は、図15に示すように、ジャケットガイド4の摺接部材46とガイド部材47の間にてガイド板80と対向するように装着されている。噛合駒84には、図18、図19に示すように、クランプ用ボルト72が挿通される丸孔85が設けられ、表面側には、固定側歯部82と噛合可能に形成され、ジャケット3の軸方向と直交する方向にラック状に延びる複数の歯状突起からなる可動側歯部86が軸方向に向かって並列されている。さらに、噛合駒84には、ジャケットガイド4のガイド部材47に向かって突設され、先端がガイド部材47に当接するアーム部88を有する一対のバネ部材87(付勢手段)が設けられ、この一対のバネ部材87により噛合駒84がガイド板80から離れる方向へ付勢される。
また、バネ部材87には、アーム部88をつなぐ連結部89が形成されており、丸孔85の中心に向かって両側から凹んだ形状をしている。
上記構成では、操作レバー73がロック方向に回動すると、クランプ用ボルト72の頭部72bがジャケット3から離れる方向に移動し、図20に示すように、噛合駒84がガイド板80と噛合い、ジャケットブラケット70はジャケットガイド4およびチルトブラケット60に対して圧接係合(ロック)されるので、ステアリングシャフト2、およびジャケット3の上下方向(チルト)、および軸方向(テレスコ)の移動が規制される。また、操作レバー73をロック解除方向に回動させると、クランプ用ボルト72がジャケット3の方向に移動し、噛合駒84およびガイド板80の噛合状態が解除されて、一対のバネ部材87のバネ力により噛合駒84がガイド板80から離れる方向へ付勢されるので、ステアリングシャフト2、およびジャケット3は移動可能となる。
ロック機構7をロックさせた状態で、車両の衝突でステアリングホイールに運転者が突き当たったことなどにより、ステアリングシャフト2を介して所定値を越える過大な軸方向の衝撃力がジャケット3に加わった際に、第1の実施形態と同様に、ステアリングコラム2、およびジャケット3が車体前方に軸移動することで、ガイド板80のシャーピン83が剪断力で破断してガイド板80と保持板75がジャケットブラケット70から離脱し、クランプ用ボルト72がジャケットブラケット70のスリット71内に留まる。これにより、噛合駒84およびガイド板80の噛合状態、およびジャケットブラケット70のジャケットガイド4への締結、保持が解除されるので、ステアリングシャフト2、およびジャケット3は軸方向に移動可能となり、ステアリングシャフト2、およびジャケット3が収縮して図示しないエネルギー収縮構造により衝撃エネルギを吸収する。
この第2実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第2実施形態では、ジャケットガイド4の当接部43から突出する各巻き込み支持部43aが、当接部43の反対側で摺接部70aの外縁70dに係合するとともに、ジャケットブラケット70をジャケットガイド4の短手方向の両側から挟み込むように裏面側に巻き込むので、ジャケットブラケット70を軸方向へ移動可能な状態で保持でき、この点でもジャケット3の脱落を防止できる。
また、第2実施形態によれば、ロック機構7の噛合駒84がガイド板80と噛合うことにより、ジャケットガイド4とガイド板80との間が滑らないため、クランプ用ボルト72と離脱カプセルの間の空走がなくなることで、設定された離脱荷重特性で確実にシャーピン83を破断することができる。また図21に示すように、噛合駒84とガイド板80との噛合いが不充分なハーフロック状態が生じた場合、噛合駒84がバネ部材81の連結部89の付勢によりジャケットガイド4の方向に少し移動するので、ハーフロック状態でもジャケットガイド4とジャケットブラケット70とが当接してロック状態となる。そして、軸方向への過大な衝撃力によりジャケット3が動くことで、上記ハーフロック状態から充分な噛合い状態に移行することができる。
また、第2実施形態によれば、ロック機構7のロック解除状態では一対のバネ部材87のバネ力により噛合駒84がガイド板80から離れる方向へ付勢され、噛合駒84およびガイド板80の噛合い状態が完全に解除されるので、ジャケット3の軸方向への移動時の噛合駒84の引っ掛かりを防止でき、ステアリングシャフト2のテレスコ操作を円滑に行なうことができる。
なお、上記第2実施形態にあっては、ガイド板80を樹脂材で一体成形する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、図22に示すように、固定側歯部90を、歯状突起91を表面側に備えた金属板92を樹脂製本体93にインサート成形し、この本体93に、クランプ用ボルト72が挿通されるテレスコ用長孔93aと、本体93の裏面側に突出するシャーピン94とを設けてもよい。同様に、樹脂材で一体成形した噛合駒84の代わりに、図23に示すように、可動側歯部95を、歯状突起96を表面側に備えた金属板97を樹脂製本体98にインサート成形し、この本体98に、クランプ用ボルト72が挿通される丸孔98aと、先端がガイド板80に当接して噛合駒84をガイド板80から離れる方向へ付勢する一対のバネ部材99とを設けてもよい。
さらに、本実施の形態では、ステアリングシャフト2のチルト、およびテレスコ調整が可能な構造であるが、テレスコ調整のみの場合、チルト調整のみの場合、あるいはテレスコ、およびチルト調整が無い場合でも同様の作用効果を得ることができる。
1,1A ステアリングコラム装置
2 ステアリングシャフト
3 ジャケット
4 ジャケットガイド
43 当接部
43a 突出部
70 ジャケットブラケット
70a,70b 摺接部
71 スリット
71a 開口
72a 軸部
72 クランプ用ボルト
74,80 ガイド板(離脱カプセル)
74a,81 長孔
74b,83,94 シャーピン
82,91 固定側歯部
86,96 可動側歯部
84,95 噛合駒(離脱カプセル)
87 バネ部材(離脱カプセル)
90 ガイド板(本体部、離脱カプセル)
99 バネ部材(付勢手段)

Claims (5)

  1. 車体に固定される固定部と、固定部から垂下する懸架部とからなるマウントブラケットと、
    軸方向上端にステアリングホイールが固定されるステアリングシャフトと、
    前記ステアリングシャフトを回動可能に支承するジャケットと、
    該ジャケットの外周面に一体に形成され、該ジャケットの軸方向に延設される摺接部と、該ジャケットの軸方向に沿って形成され車体後方に向かって開放するスリットとを備えたジャケットブラケットと、
    該マウントブラケットと該ジャケットの間に配置され、該摺接部に対向、当接する当接部を具備するジャケットガイドと、
    該マウントブラケットに支持され、且つ該ジャケットブラケットの該スリット、および該ジャケットガイドを貫通する軸部を有するクランプ用ボルトと、
    該スリットを横切るように配置され、該クランプ用ボルトの該スリット内の移動範囲を規定する規制部と、該規制部を該ジャケットブラケットに固定し、且つ所定値を越える力が加わった際に、連結を解除する剪断部とを具備する離脱部材とを備え、
    該クランプ用ボルトを締上げることで、該摺接部を該当接部に押付け、該ジャケットを該マウントブラケットに締結、固持し、該クランプ用ボルトを締上げた状態で所定値を越える力が該ジャケットの軸方向に加わった際に、該剪断部が破断することによって該規制部による移動範囲の規制が解除され、該ジャケットが移動することを特徴とするステアリングコラム装置。
  2. 請求項1に記載のステアリングコラム装置であって、
    前記当接部が軸方向に沿って延びる凹溝形状を備え、
    前記ジャケットブラケットが該当接部の凹溝内をスライドすることで、前記ジャケットが移動する際に軸方向に誘導されることを特徴とするステアリングコラム装置。
  3. 請求項1、または請求項2に記載のステアリングコラム装置であって、
    前記離脱部材は、
    樹脂製のガイド板と板状部材からなる保持板を備え、
    前記剪断部は、該ガイド板から突設され、前記ジャケットブラケットに設けられる貫通孔からなるブラケット側連係孔と、該保持板に設けられる保持板側連結孔とを貫通するシャーピンからなり、
    前記規制部は、前記保持板とガイド板に形成され、前記ジャケットのテレスコ移動寸法と同等の長さ寸法を有する長孔からなること
    を特徴とするステアリングコラム装置。
  4. 請求項3に記載のステアリングコラム装置であって、
    前記離脱部材は、
    前記クランプ用ボルトの前記軸部が挿通される挿通孔と、ラック状に複数の歯状突起が前記ガイド板に向けて並列された可動側歯部と、弾性材からなり前記本体部へ向けて突設される付勢手段とを具備する噛合駒と、
    前記ガイド板に、該ガイド板の前記長孔に沿ってラック状に複数の歯状突起が該可動歯部と噛合可能に並列された固定側歯部と、を備え、
    前記クランプ用ボルトを締上げた際には、固定側歯部と可動側歯部とが噛合し、該クランプ用ボルトを緩めた際には、該付勢手段の付勢力によって固定側歯部と可動側歯部とが離間することを特徴とするステアリングコラム装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のステアリングコラム装置であって、
    前記ジャケットガイドは、
    前記当接部の外縁から前記摺接部の外縁に向かって、且つ前記ジャケットの軸方向に沿って突設されるとともに、該ジャケットが収縮した状態における該摺接部の裏面側へ巻込まれる巻込み支持部を備えたことを特徴とするステアリングコラム装置。
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