JP2009046768A - 被記録媒体の製造方法 - Google Patents

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喬紘 筒井
Yasuyuki Ishida
康之 石田
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仁志 神田
Satoshi Nagashima
聡 永嶋
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Abstract

【課題】優れた高い表面光沢性有し、かつ高い生産性を達成しつつ多数枚積載での搬送性が可能となる被記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも一層以上のインク受容層を設けた被記録媒体を準備する工程と、被記録媒体にキャスト処理を行う工程と、被記録媒体の支持体側より、液滴径が10μm以上30μm以下の水を、水付け時間が10sec以内の条件で付与することにより、被記録媒体の含水率を7質量%以上とする水付与工程と、を有することを特徴とする被記録媒体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクを使用した記録に適する被記録媒体の製造方法を提供するものである。特に、本発明は、優れた高い表面光沢性を有し、かつ電子写真装置内での多数枚積載時に良好な搬送性を有する被記録媒体の製造方法に関するものである。
(1)インクジェット記録方法は、インク等の記録用の液体(記録液)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させ、紙などの被記録媒体に付着させて画像、文字などの記録を行うものである。このインクジェット記録方法は、高速低騒音、多色化が容易で記録パターンの融通性が大きく、現像が不要であるなどの特徴を有する。このため、プリンター単体への展開をはじめとして、複写機、ワープロ、ファクシミリ、プロッター等の情報機器における出力部への展開が行なわれており、様々な分野で急速に普及している。
また、近年、高性能のデジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナー等が安価に提供されつつある。このため、パーソナルコンピューターの普及と相まって、これらの機器から得た画像情報の出力にインクジェット記録方法を採用したプリンターが好適に用いられるようになってきている。
このような背景下において、インクジェット記録方法では、銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色のない高画質を手軽に出力できるという特性が求められるようになってきた。
そこで、従来から、被記録媒体の特性を制御することによる画像の高画質化が検討されている。このインクジェット記録等に用いられる被記録媒体としては、支持体として紙などの透気性支持体を用いたものや、樹脂被覆された非吸水性支持体を用いたものが提案されている。また、支持体上に親水性樹脂からなるインク受容層を有するものや、支持体上に無機顔料およびバインダーなどからなる多孔質性インク受容層を有するものが提案されている。
具体的には、特許文献1及び2には、インク吸収性に優れ、プリント速度の高速化が可能な被記録媒体が開示されている。これらの被記録媒体では、銀塩系写真と遜色の無い、優れた染料の発色性、高い表面光沢性、高い解像性、を有する画像を提供できるとしている。
また、近年では高い表面光沢性を有し、特に優れた写像性を有する被記録媒体に注目が集まっている。被記録媒体に高い表面光沢を付与する方法としては、スーパーカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用い、圧力や温度をかけたロール間に通紙することで塗工層表面を平滑化する方法がある。また、一般にキャストコート紙と呼ばれる印刷用強光沢塗工シートの製造方法(以下、「キャスト処理法」と略す)が知られている。このキャスト処理法としては、直接法、凝固法及びリウェット法が考えられる。
この直接法とは、支持体上に塗工したインク受容層を鏡面ドラム上に圧接して光沢処理を行った後、乾燥、凝固させるものである。
凝固法は、支持体上に塗工したインク受容層が湿潤状態にあるうちにインク受容層に凝固液を塗工してゲル化状態にし、この後、これを加熱された鏡面ドラムに圧接して光沢処理を行うものである。特許文献3及び4には、凝固法を用いた製造した被記録媒体が開示されている。
また、リウエット法は湿潤状態の塗工層を一旦、乾燥させた後、この塗工層を再湿潤液に接触させ、更にこの塗工層を加熱ドラムに接触させて強光沢仕上げを行うものである。この方法は、直接法や凝固法に比べ、高温に加熱されたドラムに圧接しても塗工層が破壊されず、前述の両方法に比べて乾燥速度を上げることができる。
(2)前述のように、従来から、紙などの透気性を有する支持体を用い、支持体上に無機顔料及びバインダーなどからなる多孔質性インク受容層を設けた、いわゆる隙間吸収タイプの被記録媒体が提案されている。この被記録媒体は、銀塩系写真に匹敵する表面光沢性を得ることができる。
ところで、近年、プリンター自体の性能向上によるプリント速度の高速化に伴い、一度に多数枚の被記録媒体をプリンターにセットして連続印字するケースが増えてきている。そこで、プリンター内で多数枚積載による給紙時の良好なピックアップによる優れた搬送性といった特性が求められるようになってきている。
ここで、上記隙間吸収タイプの被記録媒体は、電子写真装置内での多数枚積載による給紙時において、印刷時の温度や湿度などの外部環境によって紙づまり、斜行、重送などの搬送性の不良を生じる場合があった。そして、この場合、安定した連続記録ができないという問題点を有していた。これは、以下の原因によるものと考えられる。すなわち、キャストコート紙のような透気度の低い被記録媒体は、加圧により、多数枚積載時の紙間の空気が層間から押し出されて紙同士が密着しやすくなる。そして、この状態で被記録媒体が、高湿度の特定環境下に暴露されると、用紙の断裁面からの吸湿によって急激にシート周辺部が膨潤する。このため、被記録媒体同士の密着状態が維持されて、給紙不良や走行不良が発生し紙詰まりの原因になるものと推定される。
そこで、上記のような問題を解決するためには、高湿度の特定環境下においても吸湿が起こらないよう、被記録媒体の製造時に予め水を付与する必要がある。被記録媒体に水分を付与する方法としては、以下のようなものが提案されている。
特許文献5には、支持体の片面にインク受理層を有する被記録媒体の製造方法として、インク受理層を塗工、乾燥後にインク受理層が設けられていない面に飽和水蒸気と加熱空気の混合気体を用いて加湿処理を行う方法が開示されている。この製造方法では、加湿処理により被記録媒体の重量に対して、0.5〜2.5質量%の範囲の水分量を付与している。
特許文献6の製造方法では、原紙の片面に、顔料及び結着剤を主成分とする塗工液を塗工した後、湿潤状態にある塗工層を加熱した鏡面仕上げ面に圧着させ、乾燥することによりキャスト塗工層を形成している。そして、この後、この被記録媒体を、20〜80℃、50〜90%RHに調節された空気中に20秒以上、保持し、加湿することにより水分を付与して電子写真用転写紙を製造している。
また、特許文献7には、アプリケーターロールを使用して被記録媒体に水分を付与する被記録媒体の製造方法が提案されている。
特許文献8には、裏面に裏面塗工層を形成した支持体の表面にキャスト用組成物を塗工した後、支持体表面を鏡面のキャストドラムに圧接、乾燥してキャスト層を仕上げ形成するキャストコート紙の製造方法が開示されている。そして、この製造方法では、裏面塗工層に対して、遠心力を使用して液滴状にした液体粒子を噴霧塗布するキャスト紙の製造方法が提案されている
特許第3368101号明細書 特開2004−209651号公報 特開2005−271442号公報 特開2004−276422号公報 特開平09−263040号公報 特開2006−98910号公報 特開平62−133198号公報 特開2004−360105号公報
上記のような従来の被記録媒体の製造方法に関して、特に優れた高い表面光沢性を有し、かつ電子写真装置内での多数枚積載時に良好な搬送性を示す被記録媒体を製造するためには以下の課題を解決する必要があった。
すなわち、特許文献5は、優れた搬送性を達成する以外に、水性インクを用いてインクジェット記録をするために必要な高い記録濃度、優れた粉落ち性能などの諸性能を備えることを目的としている。このため、表面光沢性に関しては着想も、具体的な検討も行っていなかった。また、特許文献5の製造方法では加湿による水分付与を行っているため、適切な水分量を付与するようにライン上に調湿ゾーンを設ける必要があった。この場合、長い調湿ゾーン内に長いパスラインを設けて調湿時間を長く設定する必要があり、生産性が低いものとなっていた。
特許文献6は、白紙光沢と、複写機内での走行性、特に高湿度環境下における走行性に優れた電子写真用転写紙の製造方法に関するものである。しかしながら、ラインの高速化に対応した生産性を考えた場合には、まだ十分に検討されているとはいえなかった。すなわち、加湿による水分付与の際、適切な水分量を付与するためにライン上に長いパスラインの調湿ゾーンを設ける必要があり、生産性が低かった。
特許文献7の方法は付着水分量が非常に多くその液滴径が大きいため、被記録媒体表面への水の付着状態が不均一となっていた。この結果、被記録媒体の表面に、水の分布が不均一なことに起因する凹凸が発生して表面光沢性の低下を引き起こしていた。
また、特許文献8の方法では、遠心力を使用した液体粒子の液滴径が40μm以上と大きく、被記録媒体表面への水の付着状態が不均一となっていた。この結果、被記録媒体の表面に、水の分布が不均一なことに起因する凹凸が発生して表面光沢性の低下を引き起こしていた。
上記のように、従来の水分付与方法は、加湿による場合は被記録媒体への水の付着率が低く、ラインの高速化を行う場合は設備を大きくする必要があり生産性に問題があった。また、アプリケーターロールや粒子径の大きい粒子を付与する液体の水分付与方法は、支持体の裏面側から水分が浸透するより先に水分同士が凝集してしまうため、被記録媒体への水分の付着が不均一となっていた。この結果、被記録媒体が変形して歪みが生じ印字面の表面光沢性が劣るという問題点があった。
以上のように、従来の水分付与方法では、水分を効率的に付与して高生産性を維持しながら、表面光沢性と搬送性を同時に両立することは困難であった。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた。この結果、キャスト処理により光沢面を形成した被記録媒体に対して、水分付与時の水の液滴径を10μm以上30μm以下、水付け時間を10sec以内とすれば、短時間で被記録媒体に均一に水分を付与できることを発見した。すなわち、本発明の目的は、優れた表面光沢性を有し、かつ電子写真装置内での多数枚積載時の搬送性が良好な被記録媒体を、高い生産性で製造可能な製造方法を提供することにある。
上記課題は、以下の構成を有する本発明によって解決することができる。
1.支持体上に少なくとも一層以上のインク受容層を設けた被記録媒体を準備する工程と、
前記被記録媒体にキャスト処理を行う工程と、
前記被記録媒体の支持体側より、液滴径が10μm以上30μm以下の水を、水付け時間が10sec以内の条件で付与することにより、前記被記録媒体の含水率を7質量%以上とする水付与工程と、
を有することを特徴とする被記録媒体の製造方法。
2.前記水付与工程において、
圧搾空気及び水を混合して水を液滴径が10μm以上30μm以下の液滴とする2流体ノズルにより、水を付与することを特徴とする上記1に記載の被記録媒体の製造方法。
3.前記支持体が透気性支持体であることを特徴とする上記1又は2に記載の被記録媒体の製造方法。
本発明の製造方法によれば、キヤスト工程後の被記録媒体の裏面に、均一に水を付着させることが可能となる。このため、裏面上での水分の凝集より先に水分が被記録媒体内へ浸透し、紙の変形を起こさずに高い表面光沢性を保ったまま水分を付与することが可能となる。また、水分付与を、ライン速度や調湿スペースによらずに短時間で行うことができるため、生産効率を高くすることができる。この結果、電子写真装置内での多数枚積載時の搬送性を満足するだけの水を効率的に付与でき、表面光沢性と搬送性を同時に両立させることが可能となる。
本発明は、支持体上に少なくとも一層以上のインク受容層を有する被記録媒体の製造方法であり、以下の工程を有する。
(A)支持体上に少なくとも一層以上のインク受容層を設けた被記録媒体を準備する工程。
(B)被記録媒体にキャスト処理を行う工程。
(C)被記録媒体の支持体側より、液滴径が10μm以上30μm以下の水を、水付け時間が10sec以内の条件で付与することにより、被記録媒体の含水率を7質量%以上とする水付与工程。
以下に、リウェット法を用いた被記録媒体の製造方法の一例を説明する。
図1に示すように、1の送出装置には、支持体上に多孔質性インク受容層を設けた被記録媒体が備え付けられている。そして、1の送出装置から送り出された被記録媒体に、2で再湿潤液を多孔質性インク受容層側に塗工する。2において湿潤させた多孔質性インク受容層を有する被記録媒体を、3の圧接ロールにより5の鏡面ドラムに圧接させて乾燥する。この5の鏡面ドラムにより湿潤した多孔質性インク受容層を乾燥する過程において、4の水塗布ロールにより支持体の裏面側に水を塗工する。このようにして被記録媒体を一定時間、圧接後、6の剥離ロールにより鏡面ドラムから剥離する。この後、7の水付与装置により支持体側から水を付与した後、8の裁断部により所望の被記録媒体の大きさに裁断する。
2で多孔質性インク受容層を湿潤させる再湿潤液としては水や、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸セッケン、カルシウムステアレート、マイクロクリスタリンワックス、界面活性剤、ロート油等の離型剤を含有する水溶液を使用できる。中でも、再湿潤液としてはエマルジョン等が用いるのが好ましい。
以下に本発明の各工程についてさらに具体的に説明する。
1.被記録媒体を準備する工程(A)
被記録媒体を準備する工程(A)は例えば、以下の工程を有する。
(1)支持体の表面処理工程
この工程ではまず、始めに支持体を準備する。この支持体としては、支持体用の材料から所望の特性を有する支持体を作成しても、市販品の支持体を用いても良い。
本発明に用いる支持体としては、不透明材料からなり、且つ透気性を有する透気性支持体を用いることが好ましい。特に、繊維状支持体、即ち、紙からなる透気性支持体は、この支持体上にインク受容層を形成後にキャストなどの光沢処理を施すことにより、銀塩系写真に匹敵する高い表面光沢性を得ることができるため好ましい。
この紙からなる透気性支持体としては、澱粉、ポリビニルアルコール等のサイズプレスを原紙上に施したものや、原紙上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙等の塗工紙等を用いても良い。好ましくは、紙からなる透気性支持体には、紙(原紙)のセルロースパルプ繊維や地合いが覆われるような厚みのコート層を、インク受容層、表面処理液の下塗り層として設けるのが良い。このように透気性支持体がコート層で覆われていない場合、インク受容層用塗工液の塗工時に、透気性支持体の繊維や地合いに起因する塗りムラ(スジ状ムラ等)が生じ易くなる。また、インク受容層の内部・表面近傍や表面にセルロースパルプ繊維が存在することとなる。このため、被記録媒体の表面にキャスト処理を施したとしても、良好且つ均質なキャスト面、即ち、写真調の高光沢面を得ることが困難となる場合がある。紙からなる透気性支持体のセルロースパルプを覆うためには、コート層の乾燥塗工量が10g/m2以上、更には13g/m2以上であることが好ましい。
紙からなる透気性支持体の透気度としては6000秒以下であることが好ましく、後述する光沢処理工程における光沢処理適性の観点から、5500秒以下であることがより好ましい。
また、紙からなる透気性支持体を用いる場合には、ステキヒトサイズ度100秒以上400秒以下、ベック平滑度100秒以上500秒以下、水中伸度1.2%以上2.5%以下とすることが好ましい。また、銀塩写真と同様の質感、高級感のある被記録媒体を得るためには、紙からなる透気性支持体を、以下の物性を有するものとすることが好ましい。
・坪量160g/m2以上230g/m2以下、
・ガーレー剛度(J. Tappi No.40、縦目)7〜15mN。
そして、この支持体上に表面処理液を塗布する。この工程では、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を含む表面処理液を、支持体(場合によっては、コート層を設けた支持体)上に塗工する。この表面処理液の塗工量は、ホウ酸及びホウ酸塩の固形分換算で0.05g/m2以上3.0g/m2以下であることが好ましい。
また、この表面処理液中には、バインダーと架橋反応を起こして硬化する架橋剤を含んでいても良い。この架橋剤を用いることにより、後に支持体上に形成する多孔質性インク受容層を、より効果的に所望の構造に形成することができるため、使用することが好ましい。
この表面処理液中の架橋剤の含量は1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、表面処理液のぬれ性向上のため、表面処理液中に界面活性剤、アルコール等を添加して、表面張力及び吸水度の調整を行っても良い。
なお、この表面処理は支持体の片面にのみ行っても、両面に行っても良い。支持体の裏面側(インク受容層を設ける側と反対側)に裏面層を設ける場合、支持体の両面に表面処理を行うことが好ましい。
表面処理液の塗工には、適正塗工量が得られるよう各種塗工装置を使用できる。この塗工装置としては下記のものを適宜、選択して用いオンマシン、オフマシンで塗工できる。
・各種ブレードコーター。
・ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター。
・エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドビード方式を用いたコーター。
また、サイズプレス等の塗工時に、塗工液の粘度調製等を目的として塗工液を加温しても良く、コーターヘッドを加温することも可能である。
また、塗工後の表面処理液の乾燥には下記の乾燥機を適宜、選択して用いることができる。
・直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機。
・赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等。
なお、上記「(1)支持体の表面処理工程」では表面処理を行った例を記載したが、支持体、インク受容層の構成材料によっては表面処理を行わなくても良い。
(2)インク受容層形成工程
次に、表面処理された支持体上に、少なくとも顔料とバインダーを含有するインク受容層用塗工液を塗工、乾燥することによりインク受容層を形成する。このインク受容層としては、多孔質性インク受容層を形成することが好ましい。
本発明で用いる多孔質性インク受容層の形成材料について、以下に説明する。
多孔質性インク受容層は、支持体上に、顔料とバインダーを含む塗工液を塗工することで形成できる。
例えば、無機顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム等、有機顔料としては、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等である。
顔料としては、上記顔料から選択された1種、又は必要に応じて選択された2種以上を組み合わせて用いることができる。
この顔料としては、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、及び光沢性の点で、下記一般式(X)により表されるアルミナ水和物を好適に利用できる。
Al23-n(OH)2n・mH2O ・・・・(X)
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mH2Oは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る)。
このアルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型の水酸化アルミニウムからγ、σ、η、θ、α型のアルミニウム酸化物に転移していくことが知られている。本発明では、これらいずれの結晶構造のアルミナ水和物も使用可能である。
本発明で使用するのに好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造、又は非晶質を示すアルミナ水和物を挙げることができる。具体的には、このようなアルミナ水和物として特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物を挙げることができる。
このアルミナ水和物は、製造過程において細孔物性の調整をすることができる。具体的には、多孔質性インク受容層を所望のBET比表面積、細孔容積とするために、細孔容積が0.3ml/g以上1.0ml/g以下のアルミナ水和物を用いることが好ましい。また、細孔容積が0.35ml/g以上0.9ml/g以下のアルミナ水和物を用いることがより好ましい。これらの範囲の細孔容積を有するアルミナ水和物を用いることで、多孔質性インク受容層の細孔容積を所望の範囲として、インク吸収性及びインク定着性に優れた多孔質性インク受容層とすることができる。
また、BET比表面積については、50m2/g以上350m2/g以下のアルミナ水和物を用いることが好ましく、100m2/g以上250m2/g以下のアルミナ水和物を用いることがより好ましい。これらのBET比表面積の範囲のアルミナ水和物を用いることにより、多孔質性インク受容層の比表面積を所望の範囲として、インク吸収性及びインク定着性に優れた多孔質性インク受容層とすることができる。
なお、本発明で云う「BET法」とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。この吸着気体としては、通常、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧又は容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ、比表面積決定に広く用いられている。BET法では、このBET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積を得ることができる。
また、アルミナ水和物の形状としては、平板状で平均アスペクト比が3以上10以下、平板面の縦横比0.6以上1.0以下のものが好ましい。なお、この「平均アスペクト比」は、特公平5−16015号公報に記載されている方法で求めることができる。すなわち、上記平均アスペクト比とは、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を表す。上記平板面の縦横比は、平均アスペクト比と同様、粒子を顕微鏡で観察したときの平板面の最小値を示す直径と最大値を示す直径の比である。平均アスペクト比が3未満のアルミナ水和物を使用した場合、多孔質性インク受容層の構成材料によっては多孔質性インク受容層の細孔分布範囲が狭くなる場合がある。また、平均アスペクト比が10を超えるアルミナ水和物を使用した場合、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる場合がある。また、縦横比が0.6以上1.0以下を満たさないアルミナ水和物を使用した場合、多孔質性インク受容層の細孔径分布が狭くなる場合がある。
Rocek J.,et al.、Applied Catalysis、74巻、p29〜36、1991年に記載されているように、アルミナ水和物の中には、繊毛状と、平板状のものがあることが一般に知られている。ここで、アルミナ水和物としては平板状のアルミナ水和物を用いることが好ましい。平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のアルミナ水和物よりも分散性が優れている。また、繊毛状のアルミナ水和物は、塗工時に支持体の表面に対して平行に配向する傾向があり、この場合、多孔質性インク受容層の細孔が小さくなって多孔質性インク受容層のインク吸収性が小さくなる場合がある。これに対して、平板状のアルミナ水和物は配向する傾向が小さく、多孔質性インク受容層の細孔径が小さくなったり、インク吸収性が小さくなったりすることがない。
多孔質性インク受容層用のバインダーとしては、上記顔料を結着し被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわないものであれば、特に制限なく利用することができる。このバインダーとしては例えば、以下のものを使用できる。
・酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体。
・カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体。
・カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体。
・ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス
・アクリル酸エステルの重合体、メタクリル酸エステルの重合体又はアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系重合体ラテックス。
・エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス
・上記各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス
・上記各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコールで重合し、重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの。
・カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの。
・メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性合成樹脂等の水性バインダー。
・ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂。
・ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー。上記バインダーは、単独、又は複数種を混合して用いることができる。
多孔質性インク受容層中のバインダー含有量としては、顔料100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下とするのが好ましい。バインダー含有量が5質量部未満の場合、多孔質性インク受容層にクラックが発生し易くなり、多孔質性インク受容層の機械的強度が不十分となって粉落ちが生じ易くなる。また、バインダー含有量が50質量部を超える場合、インク吸収性の低下(例えば、インク溢れ、画像滲みの発生)や、インク染料の吸着性の低下が生じる場合がある。更に、高温高湿下においても十分なインク吸収性を得るためには、バインダー含有量を顔料100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下とするのがより好ましい。
多孔質性インク受容層中にホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を含有することは、多孔質性インク受容層の形成上、極めて有効である。このホウ酸としては、オルトホウ酸(H3BO3)や、メタホウ酸やジホウ酸等を挙げることができる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましく、具体的には例えば、下記の塩等を挙げることができる。
・ホウ酸のナトリウム塩(Na247・10H2O、NaBO2・4H2O等)や、カリウム塩(K247・5H2O、KBO2等)等のアルカリ金属塩。
・ホウ酸のアンモニウム塩(NH449・3H2O、NH4BO2等)
・ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩等。
これらのホウ酸及びホウ酸塩の中でも、塗工液の経時安定性とクラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。また、多孔質性インク受容層中のホウ酸及びホウ酸塩の含量は、多孔質性インク受容層中のバインダー100質量部に対して、ホウ酸及びホウ酸塩の固形分換算で1.0質量部以上15.0質量部以下の範囲で用いることが好ましい。15.0質量部を超える場合は、塗工液の経時安定性が低下する場合がある。すなわち、塗工液を長時間に渡って使用した場合、その間に塗工液の粘度上昇やゲル化物が発生し、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等が頻繁に必要となって被記録媒体の生産性が著しく低下する場合がある。また、点状の表面(キャスト面)が生じ易くなり、均質で良好な光沢面が得られない場合がある。
また、多孔質性インク受容層中には色材劣化防止剤を添加しても良い。この色材劣化防止材とは、多孔質性インク受容層中に染料とともに存在してガス及び光などによる染料の劣化を防止し、染料の耐候性を向上させる化合物のことを言う。この色材劣化防止剤としては下記のものを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
・ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、チオウレア系化合物、チウラム系化合物、ホスファイト系化合物。
これらの色材劣化防止剤の中でもヒンダードアミン系化合物を好ましく用いることができる。
多孔質性インク受容層用の塗工液中には、pH調整剤として例えば、下記の酸を適宜、添加することができる。
・蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸。
・フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸。
・塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸。
・上記酸の塩。
また、その他の多孔質性インク受容層用塗工液用の添加剤として、下記の材料を必要に応じて適宜含有させることができる。
・顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候性材料。
多孔質性インク受容層用の塗工液は例えば、下記のようにして調製できる。すなわち、まず、アルミナ水和物及び必要に応じて架橋剤を含む分散液を準備する。次に、この分散液にホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を混合して得られた混合液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液とを塗工直前で混合して多孔質性インク受容層用の塗工液とする。この混合液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液の混合には、ミキシング装置を使用することが好ましい。上記手順で多孔質性インク受容層用の塗工液を調製することにより、製造工程中での塗工液の粘度の経時的上昇やゲル化を低減させて生産効率を向上させることができる。
なお、実際の工程での塗工液の連続的な調製方法としては、顔料やバインダーなどをそれぞれ別々のラインから供給し、これをスタティックミキサーなどの連続混合装置を用いて混合する方法を挙げることができる。この塗工液の調製方法では、塗工・乾燥時にクラック発生を防止するとともに、多孔質性インク受容層の結着強度を高くすることができる。また、塗工液中に架橋剤などを添加する場合、塗工液の調製/送液時に増粘しやすくなるため、上記方法を好ましく用いることができる。
なお、ここで、スタティックミキサーとは中空円筒状をなすフレームの中にミキシングユニットが収納されて構成されたものを示す。このミキシングユニットは複数のエレメントが長手方向に連接されてなり、1エレメントは板状体を長手方向に進むにしたがって周方向に例えば180度捩ったような形状をなしている。そして、隣り合うエレメントの捩れ方向が互いに逆方向になっている。この装置では、多孔質性インク受容層用の塗工液がフレームの中を流れる間に各エレメントによって均一に混合されるものである。
上記分散液中のアルミナ水和物の固形分濃度は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。アルミナ水和物の固形分濃度が30質量%を超えると分散液の粘度が高くなり、塗工液の粘度が高くなるため塗工性に問題が生じる場合がある。
次に、このようにして調製した多孔質性インク受容層用塗工液を、支持体の表面処理を行った面上に塗工する。この多孔質性インク受容層用塗工液の塗工装置としては、上記「(1)支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の塗工装置を使用できる。
また、この塗工液を塗工後の乾燥装置としては、上記「(1)支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の乾燥装置を使用できる。
多孔質性インク受容層用塗工液の塗工は、支持体上に表面処理液を塗工後、乾燥させずに支持体の表面がある程度の湿潤状態(表面処理液の状態や増粘状態でも良い)を保った状態で行うことが好ましい。
本発明の多孔質性インク受容層は、インクの高速吸収性、高発色性、高解像性等の目的及び効果を達成する上で、その細孔物性が、下記の条件を満足するものであることが好ましい。
・多孔質性インク受容層の細孔径分布において、少なくとも細孔半径5nm以上20nm以下の範囲にピークを有することが好ましい。細孔半径5nm未満の範囲にピークを有する場合、インクの高速吸収性に劣る場合がある。また、細孔半径20nmを超える範囲にピークを有する場合、発色性や解像性の点で十分な性能が得られない場合がある。
・多孔質性インク受容層の細孔容積は、0.1cm3/g以上1.0cm3/g以下の範囲内にあることが好ましい。細孔容積が0.1cm3/g未満の場合、十分なインク吸収性能が得られずインク吸収性が劣った多孔質性インク受容層となり、インクが溢れて画像滲みが発生する場合がある。また、細孔容積が1.0cm3/gを超える場合、多孔質性インク受容層内にクラックや粉落ちが生じ易くなる場合がある。
・多孔質性インク受容層のBET比表面積は、20m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積が20m2/g未満の場合、十分な光沢性が得られず、ヘイズが増加して(透明性が低下して)画像が白く靄がかかったようになる場合がある。また、この場合、染料の発色性が低下するだけでなくインク中の染料吸着性が低下する場合がある。一方、BET比表面積が450m2/gを超えると、多孔質性インク受容層にクラックが生じ易くなるので好ましくない。尚、細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求められる。
多孔質性インク受容層の乾燥塗工量は30g/m2以上50g/m2以下となるようにすることが好ましい。乾燥塗工量を30g/m2以上とすることにより、高温高湿環境下においても十分なインク吸収性を示す多孔質性インク受容層を得ることができる。また、乾燥塗工量が50g/m2以下の場合、多孔質性インク受容層の塗工ムラが生じにくくなり、安定した厚みの多孔質性インク受容層を製造できる。
一方、乾燥塗工量が30g/m2未満の場合、この被記録媒体に、プリンターを用いてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクの他、複数の淡色インクにより記録した場合、十分なインク吸収性が得られない場合がある。また、インク溢れが生じてブリーディングが発生したり、支持体にまでインク染料が拡散して印字濃度が低下する場合がある。更に、乾燥塗工量が50g/m2を超える場合、クラックの発生を抑え切れない場合がある。
なお、上記「(2)インク受容層形成工程」では、多孔質性インク受容層を形成する例を記載したが、顔料を含有しないインク受容層を形成しても良い。また、インク受容層は1層であっても、2層以上であっても良い。
(3)裏面形成工程
必要に応じて、支持体のインク受容層を設けた側と反対側(裏面側)の面に、裏面層用の塗工液を塗工する。この裏面層用の塗工液は、少なくとも顔料とバインダーを含むことが好ましい。また、この裏面層用の塗工液中には、バインダーと架橋反応を起こして硬化する架橋剤を含んでいても良い。インク受容層用塗工液と裏面層用塗工液は、支持体の両面に同時に塗工することができる。
このように支持体の裏面側に裏面層を設けることによって、支持体のカールを効果的に防止することができる。なお、必要に応じて、支持体のインク受容層を形成する側の面に表面処理を行う際に、同時に支持体の裏面側にも表面処理を行っても良い。
この裏面層用の塗工液は、上記多孔質性インク受容層用の塗工液の調製工程で説明した、顔料の分散液と、バインダー水溶液を混合することにより調製できる。ここで、裏面層用の塗工液中に含有させる顔料としては上記と同様の理由により、アルミナ水和物を使用することが好ましい。このアルミナ水和物としては上記一般式(X)で表されるものを用いるのがより好ましい。また、バインダーとしては、上記と同様の理由によりポリビニルアルコールを用いるのが好ましい。
この裏面層用の塗工液には、必要な場合、架橋剤やpH調整剤を添加することができる。このpH調整剤としては例えば、下記のものを使用できる。
・蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸。
・フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸。
・塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸。
・これらの酸の塩。
これらの酸は単独で、又は複数種を混合して使用できる。
また、その他の添加剤として、下記の材料を必要に応じて適宜、含有させることができる。
・顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候性材料等。
裏面層用の塗工液は例えば、下記のようにして調製できる。すなわち、まず、アルミナ水和物及び必要に応じて架橋剤を含む分散液を準備する。次に、この分散液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液とを塗工直前で混合して塗工液とする。この分散液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液の混合には、ミキシング装置を使用することが好ましい。上記手順で塗工液を調製することにより、製造工程中での塗工液粘度の経時的上昇やゲル化を低減して生産効率を向上させることができる。
上記分散液中のアルミナ水和物の固形分濃度は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。アルミナ水和物の固形分濃度が50質量%を超えると分散液の粘度が高くなり、裏面層の粘度が高くなるため塗工性に問題が生じる場合がある。
また、裏面層用の塗工液の塗工装置としては、上記「(1)支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の塗工装置を使用できる。なお、工程中での塗工装置への塗工液の連続的な供給方法としては、上記「(2)インク受容層形成工程」に記載の方法を挙げることができる。また、この塗工液を塗工後の乾燥装置としては、上記「(1)支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の乾燥装置を使用できる。
2.光沢処理工程(B)
次に、被記録媒体にキャスト処理を行うことにより、インク受容層の表面に光沢面を形成することができる。この製造方法について以下に説明する。
キャスト法とは、湿潤状態又は可塑性を有する状態にあるインク受容層を、フィルムや加熱された鏡面状のドラム(キャストドラム)面に圧着させ、このように圧着させた状態で乾燥し、そのフィルム面や鏡面をインク受容層表面に写し取る方法である。
このキャスト法の代表的な方法としては直接法、リウェット法(間接法)、凝固法の3つの方法がある。本発明では、これらのキャスト法を何れも利用できるが、リウェット法を用いることが好ましい。このリウェット法を用いることによってインク受容層の表面を高光沢性とすることができる。また、透気性支持体を用いる場合には、フィルムキャスト法を用いることにより強光沢面を得ることができる。なお、典型的には、光沢処理工程の後の被記録媒体の含水率は7質量%未満となっている。
3.水付与工程(C)
次に、水付与工程(C)では、被記録媒体の支持体側より、液滴径が10μm以上30μm以下の水を、水付け時間が10sec以内の条件で付与することにより、被記録媒体の含水率を7質量%以上とする。
本発明では、被記録媒体に付与する水の液滴径は10μm以上30μm以下とする必要がある。水の液滴径が30μmを超える場合、被記録媒体の表面に不均一に水が付着してしまう。そして、この被記録媒体の表面へ付着する水の不均一性は、支持体の細孔構造・表面性状との関係上、30μmを超えた場合に顕著となる。このように水が不均一に付着すると、局所的に被記録媒体の変形を引き起こして被記録媒体の表面に微少な凹凸が生じてしまう。この結果、被記録媒体の表面光沢性が低下してしまう。
一方、水の液滴径が10μm未満の場合、水の液滴の気化が起こったり、気流の影響により水の液滴の飛散が起こり易くなる。例えば、液滴径がrの水の蒸気圧pは下記式(1)のケルビン式で表される。
Figure 2009046768
(p*はバルク状の水の飽和蒸気圧、γは水の表面張力[N/m]、Vmは水のモル体積[m3/mol]、Rは気体定数[J/mol・K]、Tは温度[K]、rは水の液滴径[m]を表す。)。
上記ケルビン式で表されるように、液滴状の水の蒸気圧はバルク状の水の蒸気圧よりも高くなっている。例えば、25℃で液滴径が1μmの水のp/p*は1.001、液滴径が10nmの水のp/p*は1.11、液滴径が1nmの水のp/p*は2.84となっている。従って、これら小さな液滴径の水はバルク状になっている時と比べて蒸発しやすくなっている。
更に、水が液滴径10μm未満の液滴の場合、霧粒子(エアロゾル)となっており径が非常に小さいため、水蒸気に相変化するものと、支持体に付着するものとの平衡関係にある。この結果、支持体に付着する水の量が小さくなる。
また、被記録媒体へ水を水蒸気として付与する場合、主に被記録媒体表面への水分子の吸着過程を経て被記録媒体へ水分が付与されることとなる。この被記録媒体への水の吸着過程は、被記録媒体に付着した水の脱着過程と競合するため、水の被記録媒体への吸着速度は非常に遅くなる。従って、被記録媒体への水の付着速度が非常に遅くなってしまう。また、このように水蒸気として被記録媒体へ付着した水は一部、被記録媒体の表面上で熱を放出して凝縮するものと考えられる。この凝縮過程は、外気の温度や被記録媒体の温度などによる熱収支の影響を大きく受けるため、不安定となり被記録媒体中の水の分布の不均一性及び表面光沢性低下の原因となる場合がある。
これに対して本発明では、被記録媒体に付与する水の液滴径が10μm以上30μm以下であるため、被記録媒体に早い速度で均一に水が付着する。この結果、運転速度を早くして高い生産性を達成できると共に、被記録媒体の表面光沢性を優れたものとすることができる。
本発明では、被記録媒体に付与する水の液滴径は10μm以上30μm以下であれば特に限定されないが、水の液滴径は10μm以上20μm以下が好ましい。水の液滴径を10μm以上20μm以下とすることにより、より短時間で均一に被記録媒体に水を付与することができる。
なお、本発明では、水の液滴径は、液浸法により求めることができる。この液浸漬ではまず、シリコーンオイルを塗布したプレートグラス上に水の液滴を受け止めた後、すばやくこの液滴の拡大写真を撮影する。次に、撮影した写真の画像より所定の粒子サイズの範囲の区間ごとに粒子数をカウントし、下記一般式(1)によりザウダー平均粒子径を算出した。
i=ΣNii 3/ΣNii 2
(ここで、diは平均粒子径、Diは粒子数をカウントした1つの区間の粒子径の中央値、Niは中央値がDiとなる1つの区間でカウントした粒子数を示す。)
この水付与装置の先端から被記録媒体までの距離は、100mm以上200mm以下が好ましい。水付与装置の先端から被記録媒体までの距離が100mm未満になると、水付与装置の噴霧幅が狭くなって被記録媒体への水の付与が不均一になる場合がある。また、水付与装置の先端から被記録媒体までの距離が200mmを超えると水の噴霧距離が長くなって、水の液滴が被記録媒体まで到達する前に拡散し、被記録媒体への水の付着率が低下する場合がある。
本発明では、水付与工程により被記録媒体の含水率を7質量%以上にする必要がある。被記録媒体の含水率が7質量%未満の場合、キャストコート紙のような透気度の低い被記録媒体を電子写真装置内で多数枚、積載した時に、紙間の空気が加圧により層間から押し出されて紙同士が密着しやすくなる。そして、この状態で被記録媒体が高湿度など特定の環境下に暴露されると、被記録媒体の断裁面からの吸湿によって急激にシート周辺部が膨潤することとなる。この結果、被記録媒体の密着状態が維持されて、給紙不良や走行不良が発生し紙詰まりが起こることとなる。
被記録媒体への水付与工程は、例えば、図1の6で示す剥離ロールにより、鏡面ドラムから被記録媒体が剥離した後から裁断部8までの間の位置であれば、どの位置でも良いが、図1中の7の位置が好ましい。
また、この際に使用する水付与装置としては、水の液滴径を10μm以上30μm以下とできるものであれば特に限定されない。水付与装置としては、圧搾空気と水を混合して、水を液滴径を10μm以上30μm以下の微粒子とする2流体ノズルを使用することが好ましい。この2流体ノズルはその内部又は外部で圧搾空気と水が混合されるようになっており、この混合時に圧搾空気の高速気流により水を液滴状に分割するものである。そして、この際、圧搾空気と水の混合比、衝突角度や水の供給量等を調節することによって、水の液滴径を10μm以上30μm以下とするものである。このように2流体ノズルを使用して被記録媒体への水の付与を行うことにより、短時間で容易に水の液滴径を10μm以上30μm以下とすることができる。
この2流体ノズルの構成としては例えば、図2(a)の内部混合型、図2(b)の外部混合型、図2(c)の衝突型の3つのタイプに代表されるが、これらの方式に限定されるものではない。図2(a)の内部混合型の2流体ノズルは、ノズル内部で圧搾空気と水を混合して水を微粒子化するものである。図2(b)の外部混合型の2流体ノズルは、ノズル外に圧搾空気と水を排出する際にこれらを混合して微粒子化するものである。また、図2(c)の衝突型の2流体ノズルは、ノズル外に圧搾空気と水を排出する際にこれらを混合して微粒子化し、更に微粒子した水の液滴同士をさらに衝突させて均質化、微粒子するものである。
本発明の水付与装置は、運転ラインの被記録媒体の幅方向、流れ方向に複数個、併設して使用しても良い。
本発明の水付け時間は、水付け時間=水を付与する区間の距離/ライン速度で求めることができる。なお、運転ラインの被記録媒体の流れ方向に水付与装置を複数個、併設する場合、上記「水を付与する区間の距離」は、流れ方向において、最初の水付与装置で水が付与される位置から最後の水付与装置で水が付与される位置までの距離となる。
本発明では、上記のようにして表される水付け時間が10sec以内となっている必要がある。従来の調湿により被記録媒体に水分を付与する方法等では、水付け時間が10secよりも長くなり被記録媒体の生産効率が低下するため、製造コストが高くなってしまう。この理由は、調湿により水分を付与する方法では、被記録媒体への水分の付着速度が遅いため、被記録媒体を適切な水分量とするために下記方法を採用する必要があるためである。
(a)ライン速度が速い場合には、ライン上の調湿ゾーンを長くして調湿区間を長く設定する。
(b)調湿ゾーンの距離が短い場合には、ライン速度を遅くして調湿ゾーン内の被記録媒体の滞留時間を長くする。
ここで、ライン速度としては一般的には20m/s以上のかなり早いライン速度が採用されているため、(a)の方法を採用した場合には、調湿ゾーンは非常に長いものとなってしまう。また、このような長い調湿ゾーン内で湿度を一定範囲に制御すること、被記録媒体中の含水率を均一にすることは非常に困難であった。更に、一般的な被記録媒体の製造ラインではスペース上の制約があり、調室ゾーンを設けることができるスペースが小さかった。
そこで、一般的には、被記録媒体に水分を付与する際には、上記(b)の方法が採用されている。しかしながら、(b)の方法ではライン速度が数cm/s程度まで遅くなって被記録媒体の生産性が非常に低くなってしまっていた。
これに対して、本発明の製造方法では、短時間かつ高精度で、被記録媒体の含水率を7質量%以上にすることができる。このため、ライン速度を小さくせずに、狭いスペースの調湿ゾーン内で効率よく被記録媒体に水を付与することができる。また、水の付与量を高精度で任意にコントロールできることから、被記録媒体の含水率の調製が容易となり、スペースやライン速度に応じた水の付与が可能となる。
本発明では、水付け時間は5sec以下が好ましく、3sec以下がより好ましい。これらの水付け時間とすることによって、より高い生産性を達成することができる。
本発明の水付与工程では、被記録媒体の支持体側から水を付与している。この「被記録媒体の支持体側」とは、被記録媒体のインク受容層を設けた側と反対側のことを表している。例えば、支持体のインク受容層と反対側の面上に他の層を設けない場合は支持体に水を付与することを表し、支持体のインク受容層と反対側の面上に裏面層等の他の層を設ける場合は裏面層等の他の層に水を付与することを表す。
被記録媒体の表面光沢性は、写像性により評価することができる。この写像性とは、被記録媒体の表面に物体が映った時、その像がどの程度、鮮明に歪みなく映し出されるかを表す指標であり、光沢性の美観要素を決定付ける指標の一つである。すなわち、同じ表面光沢を持つ被記録媒体であっても、歪みがないほど高い光沢度が知覚され、美感要素は高いということができる。
この写像性はJIS H8686で規定される像鮮明度(C)として求めることができる。本発明では、写像性測定装置(スガ試験機製ICM−1DP)を用いて、光学子の幅2.0mmのものを用い、反射角度60度で最高波形(M)及び最低波形(m)を読み取り、下記式により像鮮明度を得ることができる。
C=(M−m)/(M+m)×100。
本発明の被記録媒体の表面光沢性は、水分付与前後における、上記写像性の差により評価できる。すなわち、水分付与前後の写像性の差が2以上3未満の時、被記録媒体の表面光沢は良好と評価でき、1以上2未満の時、表面光沢は優れていると評価でき、1未満の時、表面光沢は非常に優れていると評価できる。このように水分付与前後の写像性の差が3未満の時、支持体の変形が起こらないため、被記録媒体を、光沢感が高く像が鮮明で美観要素に優れたものとすることができ、実用的に優れている。
一方、この水分付与前後の写像性の差が3以上4未満になると、支持体の若干の変形が起こって見た目の光沢感が低くなる。また、水分付与前後の写像性の差が4以上6未満になると、蛍光性が低下して実用上、問題となる場合がある。更に水分付与前後の写像性の差が6以上になると、支持体の変形がひどくなり、見た目の光沢感が低く像の歪み、鈍い光沢感となり実用上、問題となる場合がある。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。先ず、各種の物性値の測定方法について説明する。
<ステキヒトサイズ度>
被記録媒体をA4サイズに断裁し、そのうちの5枚をそれぞれ、気温23℃及び湿度50%の条件下に2時間以上、放置した。この後、JIS P8122に準拠して、各1枚毎にステキヒトサイズ度の測定を行い、5枚の平均値として求めた。
<透気度>
被記録媒体を上記ステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、JIS P8177に準じて各1枚毎に測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
<ベック平滑度>
被記録媒体を上記ステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、JIS P8119に準じて、各1枚毎に測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
<ガーレー剛度>
被記録媒体を上記ステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、J. Tappi No.40に準じて、各1枚毎に縦目方向の測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
<水中伸度>
被記録媒体の水中伸度の測定は、emco社DDPM動的変位測定モジュールを用いて行った。この際の測定条件は、クランプ式を用いスプリングテンション20gでサンプル幅50mm、水温23℃、浸漬時間を10分間とした。
<BET比表面積、細孔容積>
被記録媒体のBET比表面積、細孔容積は、アルミナ水和物を十分に加熱脱気してから、窒素吸着脱離法を用いた装置(カンタクローム社製、オートソーブ1)で測定した。BET比表面積の計算は、Brunauerらの方法を用いた(J.Am.Chem.Soc.,60巻、309、1938年参照)。細孔容積の計算は、Barrettらの方法を用いた(J.Am.Chem.Soc.,73巻、373、1951年参照)。
<写像性>
被記録媒体の写像性は、JIS H8686で規定される像鮮明度(C)として求めた。具体的には、写像性測定装置(スガ試験機製ICM−1DP)を用いて、光学子の幅2.0mmのものを用い、反射角度60度で最高波形(M)及び最低波形(m)を読み取り、C=(M−m)/(M+m)×100として像鮮明度を求めた。
(支持体の作製)
下記のようにして支持体を作製した。
すなわち、まず、下記組成のパルプスラリーを調製した。
濾水度450mlCSF(Canadian Standarad Freeness)の広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP) 80質量部
濾水度480mlCSFの針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)20質量部。
次に、このパルプスラリーに下記材料を外添して、紙料を得た。
カチオン化澱粉 0.60質量部
重質炭酸カルシウム 10質量部
軽質炭酸カルシウム 15質量部
アルキルケテンダイマー 0.10質量部
カチオン性ポリアクリルアミド 0.03質量部。
上記紙料を調整後、長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行って、多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、このようにして乾燥したものに、サイズプレス装置で酸化澱粉水溶液を固形分で1.0g/m2となるように含浸し、乾燥した。この後、マシンカレンダー仕上げをして坪量155g/m2、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙Aを得た。
次に、上記で得た基紙A上に、以下のようにして下塗り層を形成した。先ず、下記のようにして下塗り層の形成に使用する塗工液を調製した。
カオリン(ウルトラホワイト90、Engelhard社製)/酸化亜鉛/水酸化アルミニウムの、質量比65/10/25からなる填量 100質量部
市販のポリアクリル酸系分散剤 0.1質量部。
上記組成の固形分濃度70質量%のスラリーに、市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7質量部を添加して、固形分60質量%となるように調整して組成物を得た。次に、この組成物を、乾燥塗工量が15g/m2となるように、ブレードコーターで、基紙Aの両面に塗工し、乾燥させた。
この後、この両面に塗工した基紙Aにマシンカレンダー仕上げをした(線圧150kgf/cm)。そして、最終的に、坪量185g/m2、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3,000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付き支持体1を得た。
<被記録媒体の製造>
上記で得た支持体1の一方の下塗り層に対して、下記工程により表面処理を行なった。先ず、30℃に加温した下記組成の表面処理液を、エアーナイフコーターで、ウェット塗工量16g/m2(乾燥させた場合の塗工量は0.8g/m2である)となるよう毎分30mで塗工した。
(表面処理液)
四硼酸ナトリウム:5g
イソプロパノール:0.15g
イオン交換水を加えて総量100gに調整。
次に、この支持体1の下塗り層上に表面処理液を塗工後、即ち、表面処理液が下塗り層内に含浸されてすぐに、この表面処理液を塗工した面上に多孔質性インク受容層用塗工液を塗工、乾燥して多孔質性インク受容層を形成した。この際、多孔質性インク受容層用塗工液の調製方法、及び塗工方法は、以下の通りである。
純水中に、アルミナ水和物AとしてDisperal HP13(サソール社製)の固形分が5質量%となるように分散させ、次いで、これに塩酸を加えpH値を4に調整してしばらく攪拌した。この後、この分散液を攪拌しながら95℃まで昇温し、この温度で4時間、保持した。そして、この温度を保持したまま苛性ソーダによりpH値を10に調整して10時間、攪拌を行ない、この後、分散液の温度を室温に戻し、pH値を7〜8に調整した。
この後、更に脱塩処理を行い、続いて酢酸を添加して解膠処理してコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを乾燥して得られたアルミナ水和物BをX線回折により測定したところ、ベーマイト構造を示すもの(擬ベーマイト)であった。また、この時のBET比表面積は143g/m2、細孔容積は0.8cm3/gであり、電子顕微鏡での観察では長さが約30nm×約15nmで厚みが約5〜7nmの平板状であった。次に、上記で調製したアルミナ水和物Bのコロイダルゾルを濃縮して22.5質量%の分散液を作製した。次に、これに3質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物Bの固形分に対してホウ酸固形分換算で0.50質量%となるように添加してホウ酸含有アルミナ水和物分散液を得た。
一方、ホウ酸含有アルミナ水和物分散液とは別に、ポリビニルアルコールPVA117(クラレ(株)製)をイオン交換水に溶解して、固形分9質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。この後、得られたホウ酸含有アルミナ水和物分散液と、先に調製したポリビニルアルコール水溶液を、スタティックミキサーでアルミナ水和物固形分と、ポリビニルアルコール固形分の比が質量基準で100:9となるように混合した。これを多孔質性インク受容層用塗工液とし、ダイコーターにて乾燥塗工量が35g/m2となるように、支持体の表面処理液を塗工後、即ち、表面処理液が下塗り層内に含浸されてすぐに、毎分30mで、支持体の表面処理液を塗工した面上に塗工した。この後、170℃で乾燥して多孔質性インク受容層を形成した。
この多孔質性インク受容層の細孔径分布を測定したところ、細孔径分布のピークは、細孔半径で約9nmであった。また、多孔質性インク受容層中のバインダー成分であるポリビニルアルコールの塗工量は2.9g/m2であった。
次に、上記多孔質性インク受容層を形成した支持体の、多孔質性インク受容層を設けた面と反対側の面の下塗り層に対して、下記の工程からなる表面処理を行なった。先ず、30℃に加温した下記組成の表面処理液を、エアーナイフコーターでウェット塗工量10g/m2(乾燥させた場合の塗工量は0.5g/m2である)になるよう、毎分30mで塗工した。
(表面処理液)
四硼酸ナトリウム:5g
イソプロパノール:0.15g
イオン交換水を加えて総量100gに調整。
次に、支持体の多孔質性インク受容層を設けた面と反対側の面であって、表面処理をした下塗り層上に裏面層を形成した。この裏面層の形成は、上記表面処理液の塗工後(塗工液が下塗り層内に含浸されて)すぐに、裏面層用の塗工液を塗工、乾燥することにより形成した。この際、裏面用の塗工液の調製方法、及び塗工方法は、以下の通りである。
上記多孔質性インク受容層の形成工程で調製したアルミナ水和物Bのコロイダルゾルを濃縮して20.0質量%のアルミナ水和物分散液を作製した。一方、このアルミナ水和物分散液とは別にポリビニルアルコールPVA117(クラレ(株)製)をイオン交換水に溶解して、固形分9質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。
この後、得られたアルミナ水和物分散液と、ポリビニルアルコール水溶液を、スタティックミキサーでアルミナ水和物固形分と、ポリビニルアルコールの固形分比が質量基準で100:13にとなるように混合した。そして、これを裏面層用の塗工液として、ダイコーターにて乾燥塗工量が25g/m2となるよう、表面処理液が下塗り層内に含浸してすぐに毎分40mで塗工した。この後、170℃で乾燥して裏面層を形成した。この裏面層中のバインダー成分であるポリビニルアルコールの塗工量は2.9g/m2であった。この時、多孔質性インク受容層のバインダーの塗工量Cと裏面層のバインダー量の塗工量Dの比率D/Cは質量基準で1.0となった。
<光沢処理>
上記で得た多孔質性インク受容層に対して、再湿潤液塗工、鏡面ドラム上での乾燥の順で光沢処理を行った。先ず、再湿潤液塗工では、60℃に加温した下記組成の再湿潤液を塗工速度35m/minで、塗工量60g/m2となるように塗工して多孔質性インク受容層を可塑化した。続いて、表面温度が98℃の鏡面ドラムにプレス圧200Kg/cmで圧接した後、剥離ロールで鏡面ドラムから剥離することにより、被記録媒体を得た。このときの被記録媒体の含水率は6.5%であった。
なお、再湿潤液の組成は以下の通りとした。
ポリエチレンエマルジョン[商品名:ポリロン618 (中京油脂(株)製)]
2質量部
界面活性剤[商品名:サーフィノール465 (日信化学(株)製)]
0.2質量部
水 100質量部。
[実施例1]
上記光沢処理後、被記録媒体の裏面側(多孔質性インク受容層を設けた側と反対側)より、2流体ノズル(霧のいけうち社製、小型噴霧量扇型BIMV02(商品名))を用いて水を付与した。この際、空気圧及び液体圧を、それぞれ0.33Mpa、0.15Mpaとし、水の液滴径を10μmに調整した。また、この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間4secで、水付与後の被記録媒体の含水率は7.1質量%であった。
[実施例2]
空気圧及び液体圧を、それぞれ0.45Mpa、0.25Mpaとして、水の液滴径を12μmに調整した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間4secで、水付与後の被記録媒体の含水率は7.6質量%であった。
[実施例3]
空気圧及び液体圧を、それぞれ0.25Mpa、0.15Mpaとして、水の液滴径を20μmに調整した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間4secで、水付与後の被記録媒体の含水率は8.0質量%であった。
[実施例4]
空気圧及び液体圧を、それぞれ0.25Mpa、0.2Mpaとして、水の液滴径を30μm、噴霧スペースを3.0mに調整した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分25m、水付け時間7.2secで、水付与後の被記録媒体の含水率は8.6質量%であった。
[比較例1]
水付与装置を、2流体ノズルからローターダンプニング(ニッカ社製、WEKO ローターダンプニング(商品名))に変更し、水の液滴径を75μm、噴霧スペースを1.8mに調製した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間3secで、水付与後の被記録媒体の含水率は7.6質量%であった。
[比較例2]
比較例1のローターダンプニングの操作条件を変更することにより水の液滴径を85μmに変更した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間3secで、水付与後の被記録媒体の含水率は8.3質量%であった。
[比較例3]
比較例1のローターダンプニングの操作条件を変更することにより水の液滴径を100μmに変更した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分30m、水付け時間4secで、水付与後の被記録媒体の含水率は8.6質量%であった。
[比較例4]
水付与装置を、2流体ノズルからアプリケーターロール(YAMAUCHI社製、ハイトップロール(商品名))に変更して、水の付与を行った以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。なお、この際、アプリケーターロールにより付与される水は液滴状とはならないため、粒子径の測定はできなかった。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付与後の被記録媒体の含水率は9.0質量%であった。
[比較例5]
水付与装置を、2流体ノズルからアキミストD(霧のいけうち社製)に変更し、水の液滴径を7.5μmに調製した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間4secで、水付与後の被記録媒体の含水率は6.8質量%であった。
[比較例6]
空気圧及び液体圧を、それぞれ0.35Mpa、0.3Mpaとして、水の液滴径を40μmに調整した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間4secで、水付与後の被記録媒体の含水率は10.5質量%であった。
[比較例7]
空気圧及び液体圧を、それぞれ0.4Mpa、0.05Mpaとして、水の液滴径を7.5μmに調整した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分35m、水付け時間4secで、水付与後の被記録媒体の含水率は6.7質量%であった。
[比較例8]
空気圧及び液体圧を、それぞれ0.4Mpa、0.05Mpaとして、水の液滴径を7.5μmに調整した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分10m、水付け時間14secで、水付与後の被記録媒体の含水率は7.0質量%であった。本比較例では、ライン速度を非常に遅くして調湿ゾーンの滞留時間を長くすることにより、目的の含水率としているため、生産性が低下した。
[比較例9]
空気圧及び液体圧を、それぞれ0.4Mpa、0.05Mpaとして、水の液滴径を7.5μmに調整した以外は実施例1と同様にして被記録媒体に水を付与した。この時の被記録媒体のライン速度は毎分5.8m、水付け時間20secで、水付与後の被記録媒体の含水率は7.5質量%であった。本比較例では、ライン速度を非常に遅くして調湿ゾーンの滞留時間を長くすることにより、目的の含水率としているため、生産性が低下した。
<評価方法>
<表面光沢性>
水付与工前後の被記録媒体の表面光沢性を測定し、以下に示す基準で評価した。
◎ 水分付与前後において写像性の変化量が1未満
○ 水分付与前後において写像性の変化量が1以上2未満
△○ 水分付与前後において写像性の変化量が2以上3未満
△ 水分付与前後において写像性の変化量が3以上4未満
△× 水分付与前後において写像性の変化量が4以上6未満
× 水分付与前後において写像性の変化量が6以上。
<搬送性>
作成した被記録媒体をプリンターIP3300キヤノン社製に20枚積載し、RH30℃、80%の環境下において通紙試験を行い、以下に示す基準で搬送性を評価した。
○ すべての用紙が問題なく通紙される
△ 20枚の用紙のうち、1枚または2枚が斜めに搬送される
△× 20枚の用紙のうち3枚以上が斜めに搬送される
× 全ての用紙が通紙されない。
<生産性>
○ 運転速度が20m/min以上である
△ 運転速度が10m/min以上20m/min未満である
× 運転速度が10m/min未満である。
上記実施例1〜4、及び比較例1〜9の条件を表1、上記評価結果を表2に示す。
Figure 2009046768
Figure 2009046768
上記表2の実施例1〜4の結果より、何れの実施例も運転速度を25m/minと高速にできるため、生産性が「○」であり、高い生産性を達成できることが分かる。また、実施例1〜4では、表面光沢性は「△○」以上の良好な結果が得られ、プリンター内での搬送性は何れの実施例も「○」であった。この結果より、本発明では、水の液滴径を10μm以上30μm以下とすることにより、被記録媒体の裏面側に均一に水を付着できることが分かる。また、被記録媒体の裏面側への水分の凝集より先に、被記録媒体内へ水分が浸透し、紙の変形を起こさずに高い表面光沢性を保ったまま水分を付与することが可能となることが分かる。
これに対して、水の液滴径が30μmを超える比較例1〜3及び6や、液滴状の水の付与ができなかった比較例4では、表面光沢性が「△×」又は「×」となり、表面光沢性に劣ることが分かる。また、水の液滴径が10μm未満の比較例5及び7では搬送性が「△×」となり、良好な搬送性を達成できないことが分かる。更に、比較例8,9では、運転速度が10m/min以下となり、生産性が「△」又は「×」で低いものとなった。
本発明の製造方法に用いるリウェット法を用いた製造装置の一例を表す図である。 本発明の水付与工程に用いる2流体ノズルの例を表す図である。
符号の説明
1 送出位置
2 再湿潤液塗工部
3 圧接ロール
4 水塗布ロール
5 鏡面ドラム
6 剥離ロール
7 水分付与装置
8 裁断部

Claims (3)

  1. 支持体上に少なくとも一層以上のインク受容層を設けた被記録媒体を準備する工程と、
    前記被記録媒体にキャスト処理を行う工程と、
    前記被記録媒体の支持体側より、液滴径が10μm以上30μm以下の水を、水付け時間が10sec以内の条件で付与することにより、前記被記録媒体の含水率を7質量%以上とする水付与工程と、
    を有することを特徴とする被記録媒体の製造方法。
  2. 前記水付与工程において、
    圧搾空気及び水を混合して水を液滴径が10μm以上30μm以下の液滴とする2流体ノズルにより、水を付与することを特徴とする請求項1に記載の被記録媒体の製造方法。
  3. 前記支持体が透気性支持体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被記録媒体の製造方法。
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JP2016160548A (ja) * 2015-03-02 2016-09-05 日本製紙株式会社 キャストコータ及びキャストコート紙の製造方法

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