JP2009160802A - 被記録媒体の製造方法 - Google Patents

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宗克 砂田
Yasuyuki Ishida
康之 石田
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喬紘 筒井
Hitoshi Kanda
仁志 神田
Satoshi Nagashima
聡 永嶋
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Abstract

【課題】優れた写像性と高い印字濃度、及び紙のコシを有するリウェットキャスト法を用いると共に、操業開始時に高い発生率の点状窪みを抑制し歩留まりを向上させることで、コストを抑えた高品位な被記録媒体を提供する。
【解決手段】少なくとも、工程(2−1)の工程を実施している時から、工程(2−2)の開始時までの間、前処理液供給部より、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水性インクを使用した記録に適する被記録媒体の製造方法に関する。より詳しくは、被記録媒体をリウェットキャスト処理する際に発生する点状窪みを改善する被記録媒体の製造方法に関するものである。
インクジェット記録方法は、インク等の記録用液体(記録液)の微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの被記録媒体に付着させて画像、文字などの記録を行うものである。このインクジェット記録方法は、高速低騒音、多色化が容易で、記録パターンの融通性が大きく、現像が不要であるなどの特徴を有する。このため、プリンター単体への展開をはじめとして、複写機、ワープロ、ファクシミリ、プロッター等の情報機器における出力部への展開が行なわれており、急速に普及している。また、近年、高性能のデジタルカメラ、デジタルビデオ、スキャナー等が安価に提供されつつある。このため、パーソナル・コンピューターの普及と相まって、これらの機器から得た画像情報の出力にインクジェット記録方法を採用したプリンターが極めて好適に用いられるようになってきている。
このような背景において、銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色のない画像を、手軽にインクジェット記録方法で出力することが求められるようになってきた。そこで、従来からインクジェット記録方法で記録を行う被記録媒体の特性を制御することによって、画像特性の優れた記録画像を得る試みがなされている。
このような被記録媒体としては、支持体として紙などの透気性支持体を用いたものや、樹脂被覆された非吸水性支持体を用いたものが提案されている。また、支持体上に親水性樹脂からなるインク受容層を有するものや、無機顔料及びバインダー等を含有する多孔質性インク受容層を有するものなどが提案されている。
また、特に近年、被記録媒体には画像特性の一つとして、高い表面光沢性が求められるようになってきている。そこで、被記録媒体に表面光沢を付与する方法として、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、キャスト法等の種々の方法が使用されている。これらの方法の中でも、特に表面光沢とインク吸収性を同時に満たすために、インク受容層の細孔径を潰すことの少ないキャスト法を用いることが多くなってきている。
特許文献1には、基紙上に設ける被覆層中に特別な材料を用い、光沢処理としてキャスト法を用いた被記録媒体が開示されている。そして、この被記録媒体は、インク吸収性に優れ、プリント速度の高速化が可能であり、かつ、銀塩系写真と遜色の無い優れた染料の発色性、高い表面光沢性、高い解像性を有する画像を提供することができるとしている。
特許文献2には、再湿潤液にアミド化合物を含有させた特徴を有し、点状窪みの発生を伴うことがなく、高速度で製造可能な被記録媒体が開示されている。この特許文献2には、坪量100g/m2前後の紙を使い、インク受容層の膨潤時間が3秒以下の一般的なリウェットキャスト法を用いた表面処理方法が開示されている。
特許文献3には、鏡面ドラム面を離型処理することによりキャストドラムとの剥離性が良好であり、白紙光沢を低下させることなく安定して長時間、連続操業が可能なキャスト法が開示されている。
特許第3368101号明細書 特開昭59−192797号公報 特開平11−279987号公報
高い表面光沢性を付与するためにリウェットキャスト法を使用すると共に、優れた写像性と高い印字濃度、及び紙のコシ等の特性を有した高品位な被記録媒体を低コストで製造するためには、従来技術に関して下記の課題を解決する必要があった。
すなわち、特許文献2では、坪量100g/m2前後の紙を使用し、比較的、短時間の膨潤時間によってインク受容層を処理すると共に、高速で点状窪みの発生を抑えた方法を使用していた。このため、近年の高級感の向上をねらった紙厚を厚くした被記録媒体や、手に持った場合にしっかり感や耐曲げ性を有する被記録媒体に対しての応用は困難であった。特に、紙厚を厚くした被記録媒体に対して特許文献2の方法を適用すると、生産効率を維持できなくなり、コスト面で問題が発生する場合があった。
また、特許文献3の方法は、処理スピードが速く坪量が130g/m2以上と厚い支持体を使用し且つ写像性に優れ高い印字濃度を有した被記録媒体への適用は困難であった。すなわち、特許文献3の方法では、リウェットキャスト法の操業開始時に発生率の高い点状窪み(ピンホール状に見える窪み)を抑制できなかった。
以上のように、従来の製造方法では、表面光沢性及び生産性に関して十分に満足な結果が得られない場合があった。このため、新規な思想に基づく、高い生産性を有した点状窪みの発生を防止できるリウェットキャスト法が求められていた。
そこで、本発明者は、従来技術及びその未達成な課題について、多方面から再度、検討を行った。この結果、被記録媒体のリウェットキャスト法において、基紙の坪量を大きくした場合(例えは、坪量130g/m2以上)、また、被記録媒体の処理スピードを上げた場合(例えば、20m/min以上)に点状窪みが発生しやすくなることを発見した。また、特に、操業開始時(例えば、連続的に被記録媒体を搬送してリウェットキャスト法を実施する場合において、0から200mまでの部分)に、このような点状窪みが発生しやすくなることを発見した。
より具体的には、基紙の坪量を大きくした場合、坪量と同量程度の水分を多孔質性インク受容層に塗布すると多孔質性インク受容層の可塑化が可能となる。しかしながら、この一方で坪量の増加と共に、紙の強度が増加して点状窪みも増加する結果となった。つまり、従来のように、坪量100g/m2前後の被記録媒体では問題がなかったが、坪量を大きくすることで点状窪みが発生しやすくなるという問題が発生していた。この理由は、紙の強度が増し、下塗り層があった場合においても、紙本来が持つ地合に強く影響を受けるようになるためである。
このため、この紙の強度増加への一つの対策としては、多孔質性インク受容層側の面から、基紙の坪量よりも多い十分な水分量を付与すると共に、鏡面ドラムの外周面に多孔質性インク受容層が貼り付くまでの時間を3秒以上と長くする方法がある。これにより、基紙の紙強度を、坪量100g/m2相当の紙強度へ緩和して点状窪みを抑えることが可能となる。
しかしながら、生産性の向上を図る為に処理スピードを上げた場合(例えば、20m/min以上)には、処理スピードの増加と共に被記録媒体と鏡面ドラムの接触時間が短くなり、乾燥不足が生じていた。
そこで、この対策の一つとして、鏡面ドラムの表面温度を高くする方法が考えられる。しかしながら、ここで、鏡面ドラムの表面温度を高くすると(例えば、100℃以上の場合)、多孔質性インク受容層に付与された、可塑化を目的とした処理液が、瞬時に沸騰して急激に多孔質性インク受容層の剥離エネルギーが生じていた。この結果、多孔質性インク受容層を鏡面ドラムの鏡面(外周面)に十分に密着させることができず、点状窪みが生じていた。
以上のように、従来のリウェットキャスト法では、多孔質性インク受容層の坪量を大きくした場合には、塗布する水分量を多くする必要があった。また、この一方で、リウェットキャスト法の生産性を上げるために処理スピードを大きくして、鏡面ドラムの表面温度を可能な限り高温に設定する必要があった。
しかしながら、このような条件変更による対応には限界があった。具体的には、坪量を130g/m2以上、処理スピードを20m/min以上とした場合には、被記録媒体に点状窪みの発生率が高く、経時的に写像性も下がってしまうなどの問題が生じていた。
本発明者は、この理由について以下のように検討、推測を行なった。
まず、最初に多孔質性インク受容層に対して再湿潤液を供給せずに所定時間、被記録媒体を搬送させて鏡面ドラムに圧接させた後、再湿潤液を被記録媒体の多孔質性インク受容層上に供給してリウェットキャスト法を行なった。
そして、このように再湿潤液を供給した被記録媒体の部分が最初に鏡面ドラムに接し始めた時(0m地点)から、しばらくの間(約200mまで)の被記録媒体については、リウェットキャスト処理後に点状窪みが発生して光沢感を損ねる場合があった。そして、このように発生した点状窪みは、そのまま長時間、被記録媒体を搬送してリウェットキャスト法を行なっていると消える傾向にあった。このような事実から、本発明者は点状窪みの発生抑制には装置安定性が関係しているものと推測した。
そして、本発明者は様々な検討を行なった結果、この点状窪みの消滅にはリウェットキャスト法用の鏡面ドラム表面の温度が関係していることを発見した。この理由は、鏡面ドラムの表面温度は操業開始直後に高く、その後、低い温度に落ち着いて安定化するため、この安定化が点状窪みの減少に寄与しているものと考えられるためである。
そこで、本発明者は、上記のようにして得られた知見を元にして、操業開始時に発生率の高い点状窪みを抑制し、処理スピードが高速で一定の高い生産性を維持できる被記録媒体の製造方法の検討を行った。この結果、予め再湿潤液を供給しない状態で被記録媒体を連続的に搬送している際に、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する。そして、一定時間経過後に、再湿潤液を供給した被記録媒体を鏡面ドラムに圧接させる。そして、これらの工程を実施することによって、リウェットキャスト法の開始時に発生率の高い点状窪みを抑制し、且つ写像性に優れ高い印字濃度を有すると共に、高い生産性を経時的に維持できることを発見するに至ったものである。
すなわち、本発明の目的は、優れた写像性を経時的に維持し、高い印字濃度、及び紙のコシを有すると共に、操業開始時に高い発生率の点状窪みを抑制し歩留まりを向上させた被記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有することを特徴とする。
再湿潤液供給部と、前処理液供給部と、鏡面ドラムとを有する処理装置を用いて、リウェットキャスト法を行う被記録媒体の製造方法であって、
(1)透気性支持体上に多孔質性インク受容層を設けた被記録媒体を準備する工程と、
(2)前記処理装置内を、前記被記録媒体を連続的に搬送しながら、
(2−1)前記再湿潤液供給部から再湿潤液を供給せずに前記被記録媒体を、前記多孔質性インク受容層側が前記鏡面ドラムの外周面に接するように圧接、加熱させる工程と、
(2−2)前記工程(2−1)の後、前記被記録媒体の多孔質性インク受容層側に前記再湿潤液供給部より再湿潤液を供給し、前記被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が前記鏡面ドラムの外周面に接するように、前記被記録媒体を圧接、加熱させる工程と、
を有し、
少なくとも、前記工程(2−1)を実施している時から、前記工程(2−2)において前記被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が最初に前記鏡面ドラムの外周面に接する時までの間、前処理液供給部より、前記鏡面ドラムの前記被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する前処理液供給工程と、
を有することを特徴とする被記録媒体の製造方法。
本発明によれば、優れた写像性と高い印字濃度、及び紙のコシを有するリウェットキャスト法を用いると共に、操業開始時に高い発生率で発生する点状窪みを抑制して歩留まりを向上させることができる。この結果、コストを抑えた高品位な被記録媒体の製造方法を提供することができる。
本発明は、透気性支持体上に少なくとも一層以上の多孔質性インク受容層を有する被記録媒体の製造方法である。また、再湿潤液供給部と、前処理液供給部と、鏡面ドラムとを有する処理装置を用いて、リウェットキャスト法を行う被記録媒体の製造方法である。本発明の被記録媒体の製造方法は、以下の工程を有する。
(1)透気性支持体上に多孔質性インク受容層を設けた被記録媒体を準備する工程、
(2)処理装置内を、被記録媒体を連続的に搬送しながら、下記工程(2−1)及び(2−2)を実施する工程、
(2−1)再湿潤液供給部から再湿潤液を供給せずに被記録媒体を、多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように圧接、加熱させる工程と、
(2−2)工程(2−1)の後、被記録媒体の多孔質性インク受容層側に再湿潤液供給部より再湿潤液を供給し、被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように、被記録媒体を圧接、加熱させる工程。
また、少なくとも、工程(2−1)を実施している時から、工程(2−2)において被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が最初に鏡面ドラムの外周面に接する時までの間、前処理液供給部より、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する(前処理液供給工程)。
すなわち、本発明の製造方法の工程(2−1)では、一定時間、被記録媒体の多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように、被記録媒体を圧接、加熱させる。この工程(2−1)では、再湿潤液供給部から被記録媒体に対して再湿潤液は供給されておらず、低含水率の被記録媒体が鏡面ドラムによって圧接、加熱させる。
そして、工程(2−2)では、工程(2−1)の一定時間が経過した後、被記録媒体の多孔質性インク受容層側に、再湿潤液供給部より再湿潤液を供給する。また、この被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように、被記録媒体を圧接、加熱させる。
そして、少なくとも、工程(2−1)の工程を実施中(被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が最初に鏡面ドラムの外周面に接する前)から、工程(2−2)の開始時(被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が最初に鏡面ドラムの外周面に接する時)までの間は、前処理液供給部より、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する(前処理液供給工程)。
ここで、被記録媒体は、鏡面ドラムの外周面の一部に圧接されているため、鏡面ドラムには被記録媒体と接していない外周面が存在する。このため、低含水率の被記録媒体を鏡面ドラムで圧接している間に、前処理液供給部より、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給することができる。
すなわち、前処理液供給工程における前処理液の供給時間は、下記表1の通りとなる。
Figure 2009160802
この理由は、被記録媒体の再湿潤液を供給した部分が最初に鏡面ドラムの外周面上に到達する前に、鏡面ドラムの外周面上への前処理液の供給を停止した場合には、鏡面ドラム表面の温度及び水分量が安定化せず、操業開始時に発生する点状窪みを抑える効果が少なくなるためである。
なお、前処理液の供給開始時期は、工程(2−1)を実施している時であれば特に限定されない。工程(2−1)を開始した時であっても、工程(2−1)を実施している途中であっても、工程(2−1)の終了間際であっても良い。
また、前処理液の供給停止時期は、工程(2−2)の開始時以降であれば特に限定されない。工程(2−2)の開始直後であっても、工程(2−2)を実施している途中であっても良い。この鏡面ドラムの外周面上へ前処理液の供給を停止する時期は特に限定されず、被記録媒体の構成材料、処理装置の操作条件(処理スピード、鏡面ドラムの表面温度)等によって適宜、調節することができる。
このように、本発明の製造方法では、工程(2−2)で被記録媒体のリウェットキャスト法を実施する前に予め、鏡面ドラムの外周面上に前処理液を供給する。これによって、鏡面ドラムの外周面の温度環境を安定化させることができる。また、工程(2−1)から(2−2)に移行するに従って、鏡面ドラムの外周面上に圧接させる被記録媒体が再湿潤液を供給されていないものから、再湿潤液を供給されたものに変わった場合であっても、鏡面ドラムの外周面の温度環境をほとんど変わらないものとすることができる。この結果、操業開始時の高い発生率の点状窪みを抑制すると共に、写像性を経時的に安定させて歩留まりを向上させることができる。また、コストを低減して高品位な被記録媒体を製造することができる。
以下、本発明の製造方法の各工程について、より詳細に説明する。
1.被記録媒体を準備する工程(1)
被記録媒体を準備する工程(1)は例えば、以下の工程を有する。
(A)透気性支持体の表面処理工程
この工程ではまず、始めに透気性支持体を準備する。この透気性支持体としては、透気性支持体用の材料から所望の特性を有する透気性支持体を作成しても、市販品の透気性支持体を用いても良い。
本発明に用いる透気性支持体としては、不透明材料からなり、且つ透気性を有するものである。特に、繊維状支持体、即ち、紙からなる透気性支持体は、この支持体上に多孔質性インク受容層を形成後にキャストなどの光沢処理を施すことにより、銀塩系写真に匹敵する高い表面光沢性を得ることができるため好ましい。
この紙からなる透気性支持体としては、澱粉、ポリビニルアルコール等のサイズプレスを原紙上に施したものや、原紙上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙等の塗工紙等を用いても良い。好ましくは、紙からなる透気性支持体としては、基紙上に、基紙(原紙)のセルロースパルプ繊維や地合いが覆われるような厚みのコート層を設けることが好ましい。この場合、このコート層は下塗り層となる。このコート層の材料や塗工液組成は、基紙(原紙)を覆うことができるようなものであれば特に限定されない。この下塗り層上に更に多孔質性インク受容層、裏面層や、表面処理液による表面処理を行なうことができる。このように透気性支持体がコート層で覆われていない場合、多孔質性インク受容層用の塗工液の塗工時に、透気性支持体の繊維や地合いに起因する塗りムラ(スジ状ムラ等)が生じ易くなる。また、多孔質性インク受容層の内部・表面近傍や表面にセルロースパルプ繊維が存在することとなる。このため、被記録媒体の表面にリウェットキャスト法を施したとしても、良好且つ均質なキャスト面、即ち、写真調の高光沢面を得ることが困難となる場合がある。紙からなる透気性支持体のセルロースパルプを覆うためには、コート層の乾燥塗工量が10g/m2以上、更には13g/m2以上であることが好ましい。
紙からなる透気性支持体の透気度としては6000秒以下であることが好ましく、後述する光沢処理工程における光沢処理適性の観点から、5500秒以下であることがより好ましい。
また、紙からなる透気性支持体を用いる場合には、ステキヒトサイズ度100秒以上400秒以下、ベック平滑度100秒以上500秒以下、水中伸度1.2%以上4.0%以下とすることが好ましい。また、銀塩写真と同様の質感、高級感のある被記録媒体を得るためには、坪量130g/m2以上400g/m2以下、ガーレー剛度(J. Tappi No.40、縦目)7〜15mNとすることが好ましい。
そして、この透気性支持体上に表面処理液を塗布する。この工程では、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を含む表面処理液を、透気性支持体(場合によっては、コート層を設けた透気性支持体)上に塗工する。この表面処理液の塗工量は、ホウ酸及びホウ酸塩の固形分換算で0.05g/m2以上3.0g/m2以下であることが好ましい。
また、この表面処理液中には、バインダーと架橋反応を起こして硬化する架橋剤を含んでいても良い。この架橋剤を用いることにより、後に透気性支持体上に形成する多孔質性インク受容層を、より効果的に所望の構造に形成することができるため、使用することが好ましい。
この表面処理液中の架橋剤の含量は1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、表面処理液のぬれ性向上のため、表面処理液中に界面活性剤、アルコール等を添加して、表面張力及び吸水度の調整を行っても良い。
なお、この表面処理は支持体の片面にのみ行っても、両面に行っても良い。透気性支持体の裏面側(多孔質性インク受容層を設ける側と反対側)に裏面層を設ける場合、透気性支持体の両面に表面処理を行うことが好ましい。
表面処理液の塗工には、適正塗工量が得られるよう各種塗工装置を使用できる。この塗工装置としては、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドビード方式を用いたコーター等を使用することができる。また、これらの塗工装置は適宜、選択してオンマシン、オフマシンで使用することができる。また、サイズプレス等の塗工時に、表面処理液の粘度調製等を目的として表面処理液を加温しても良く、コーターヘッドを加温することも可能である。
また、塗工後の表面処理液の乾燥には、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブ・エアフロート・ドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を適宜、選択して用いることができる。
なお、上記「(A)透気性支持体の表面処理工程」では表面処理を行った例を記載したが、透気性支持体、多孔質性インク受容層の構成材料によっては表面処理を行わなくても良い。
(B)多孔質性インク受容層形成工程
次に、例えば、表面処理された透気性支持体上に、少なくとも顔料とバインダーを含有する多孔質性インク受容層用の塗工液を塗工、乾燥することにより多孔質性インク受容層を形成する。
本発明で用いる多孔質性インク受容層の形成材料について、以下に説明する。
多孔質性インク受容層は、透気性支持体上に、顔料とバインダーを含む塗工液を塗工することで形成できる。
例えば、無機顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム等、有機顔料としては、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等である。この顔料としては、上記顔料から選択された1種、又は必要に応じて選択された2種以上を組み合わせて用いることができる。
この顔料としては、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、及び光沢性の点で、下記一般式(X)により表されるアルミナ水和物を好適に利用できる。
Al23-n(OH)2n・mH2O ・・・・(X)
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mH2Oは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る)。
このアルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型の水酸化アルミニウムからγ、σ、η、θ、α型のアルミニウム酸化物に転移していくことが知られている。本発明では、これらいずれの結晶構造のアルミナ水和物も使用可能である。
本発明で使用するのに好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造、又は非晶質を示すアルミナ水和物を挙げることができる。具体的には、このようなアルミナ水和物として特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物を挙げることができる。
このアルミナ水和物は、製造過程において細孔物性の調整をすることができる。具体的には、多孔質性インク受容層を所望のBET比表面積、細孔容積とするために、細孔容積が0.3ml/g以上1.0ml/g以下のアルミナ水和物を用いることが好ましい。また、細孔容積が0.35ml/g以上0.9ml/g以下のアルミナ水和物を用いることがより好ましい。これらの範囲の細孔容積を有するアルミナ水和物を用いることで、多孔質性インク受容層の細孔容積を所望の範囲として、インク吸収性及びインク定着性に優れた多孔質性インク受容層とすることができる。
また、BET比表面積については、50m2/g以上350m2/g以下のアルミナ水和物を用いることが好ましく、100m2/g以上250m2/g以下のアルミナ水和物を用いることがより好ましい。これらのBET比表面積の範囲のアルミナ水和物を用いることにより、多孔質性インク受容層の比表面積を所望の範囲として、インク吸収性及びインク定着性に優れた多孔質性インク受容層とすることができる。
なお、本発明で云う「BET法」とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。この吸着気体としては、通常、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧又は容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ、比表面積決定に広く用いられている。BET法では、このBET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積を得ることができる。
また、アルミナ水和物の形状としては、平板状で平均アスペクト比が3以上10以下、平板面の縦横比0.6以上1.0以下のものが好ましい。なお、この「平均アスペクト比」は、特公平5−16015号公報に記載されている方法で求めることができる。すなわち、上記平均アスペクト比とは、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を表す。上記平板面の縦横比は、平均アスペクト比と同様、粒子を顕微鏡で観察したときの平板面の最小値を示す直径と最大値を示す直径の比である。平均アスペクト比が3未満のアルミナ水和物を使用した場合、多孔質性インク受容層の構成材料によっては多孔質性インク受容層の細孔分布範囲が狭くなる場合がある。また、平均アスペクト比が10を超えるアルミナ水和物を使用した場合、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる場合がある。また、縦横比が0.6以上1.0以下を満たさないアルミナ水和物を使用した場合、多孔質性インク受容層の細孔径分布が狭くなる場合がある。
Rocek J.,et al.、Applied Catalysis、74巻、p29〜36、1991年に記載されているように、アルミナ水和物の中には、繊毛状と、平板状のものがあることが一般に知られている。ここで、アルミナ水和物としては平板状のアルミナ水和物を用いることが好ましい。平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のアルミナ水和物よりも分散性が優れている。また、繊毛状のアルミナ水和物は、塗工時に透気性支持体の表面に対して平行に配向する傾向があり、この場合、多孔質性インク受容層の細孔が小さくなって多孔質性インク受容層のインク吸収性が小さくなる場合がある。これに対して、平板状のアルミナ水和物は配向する傾向が小さく、多孔質性インク受容層の細孔径が小さくなったり、インク吸収性が小さくなったりすることがない。
多孔質性インク受容層用のバインダーとしては、上記顔料を結着し被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわないものであれば、特に制限なく利用することができる。このバインダーとしては例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス、アクリル酸エステルの重合体、メタクリル酸エステルの重合体又はアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、上記各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、上記各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコールで重合し、重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性合成樹脂等の水性バインダー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー等を用いることができる。上記バインダーは、単独、又は複数種を混合して用いることができる。
多孔質性インク受容層中のバインダー含有量としては、顔料100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下とするのが好ましい。バインダー含有量が5質量部未満の場合、多孔質性インク受容層にクラックが発生し易くなり、多孔質性インク受容層の機械的強度が不十分となって粉落ちが生じ易くなる。また、バインダー含有量が50質量部を超える場合、インク吸収性の低下(例えば、インク溢れ、画像滲みの発生)や、インク染料の吸着性の低下が生じる場合がある。更に、高温高湿下においても十分なインク吸収性を得るためには、バインダー含有量を顔料100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下とするのがより好ましい。
多孔質性インク受容層中にホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を含有することは、多孔質性インク受容層の形成上、極めて有効である。このホウ酸としては、オルトホウ酸(H3BO3)や、メタホウ酸やジホウ酸等を挙げることができる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましく、具体的には例えば、ホウ酸のナトリウム塩(Na247・10H2O、NaBO2・4H2O等)や、カリウム塩(K247・5H2O、KBO2等)等のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩(NH449・3H2O、NH4BO2等)、ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩等を挙げることができる。
これらのホウ酸及びホウ酸塩の中でも、塗工液の経時安定性とクラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。また、多孔質性インク受容層中のホウ酸及びホウ酸塩の含量は、多孔質性インク受容層中のバインダー100質量部に対して、ホウ酸及びホウ酸塩の固形分換算で1.0質量部以上15.0質量部以下の範囲で用いることが好ましい。15.0質量部を超える場合は、塗工液の経時安定性が低下する場合がある。すなわち、塗工液を長時間に渡って使用した場合、その間に塗工液の粘度上昇やゲル化物が発生し、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等が頻繁に必要となって被記録媒体の生産性が著しく低下する場合がある。
また、多孔質性インク受容層中には色材劣化防止剤を添加しても良い。この色材劣化防止材とは、多孔質性インク受容層中に染料とともに存在してガス及び光などによる染料の劣化を防止し、染料の耐候性を向上させる化合物のことを言う。この色材劣化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、チオウレア系化合物、チウラム系化合物、ホスファイト系化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの色材劣化防止剤の中でもヒンダードアミン系化合物を好ましく用いることができる。
被記録媒体へのこの色材劣化防止剤の添加方法としては、予め透気性支持体上に形成した多孔質性インク受容層上に、色材劣化防止剤及びこの色材劣化防止剤を溶解させる溶剤を含有する調製液をオーバーコートする方法が好ましい。この溶剤としては、色剤劣化防止剤を溶解させるものであれば特に限定されず、各種溶剤を使用できる。例えば、有機溶剤として、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等のエーテル類、イソプロパノール、メタノール、エタノール等のアルコール類等を挙げることができる。
また、この色材劣化防止剤を含有する調製液を、多孔質性インク受容層上にオーバーコートする時期は、多孔質性インク受容層の形成後であれば、特に限定されない。ただし、多孔質性インク受容層の表面に塗工部材が接触する方式でオーバーコートを行う場合、このオーバーコート工程時に、多孔質性インク受容層の表面に傷が付く可能性がある。このため、リウェットキャスト法において鏡面ドラムにより光沢処理を行なう前に、オーバーコートを行なうことが好ましい。
多孔質性インク受容層用の塗工液中には、pH調整剤として例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸、上記酸の塩等を適宜、添加することができる。
また、その他の多孔質性インク受容層用の塗工液用の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候性材料を、必要に応じて適宜含有させることができる。
多孔質性インク受容層用の塗工液は例えば、下記のようにして調製できる。すなわち、まず、アルミナ水和物及び必要に応じて架橋剤を含む分散液を準備する。次に、この分散液にホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を混合して得られた混合液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液とを塗工直前で混合して多孔質性インク受容層用の塗工液とする。この混合液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液の混合には、ミキシング装置を使用することが好ましい。上記手順で多孔質性インク受容層用の塗工液を調製することにより、製造工程中での塗工液の粘度の経時的上昇やゲル化を低減させて生産効率を向上させることができる。
なお、実際の工程での塗工液の連続的な調製方法としては、顔料やバインダーなどをそれぞれ別々のラインから供給し、これをスタティックミキサーなどの連続混合装置を用いて混合する方法を挙げることができる。この塗工液の調製方法では、塗工・乾燥時にクラック発生を防止するとともに、多孔質性インク受容層の結着強度を高くすることができる。また、塗工液中に架橋剤などを添加する場合、塗工液の調製/送液時に増粘しやすくなるため、上記方法を好ましく用いることができる。
なお、ここで、スタティックミキサーとは中空円筒状をなすフレームの中にミキシングユニットが収納されて構成されたものを示す。このミキシングユニットは複数のエレメントが長手方向に連接されてなり、1エレメントは板状体を長手方向に進むにしたがって周方向に例えば180度捩ったような形状をなしている。そして、隣り合うエレメントの捩れ方向が互いに逆方向になっている。この装置では、多孔質性インク受容層用の塗工液がフレームの中を流れる間に各エレメントによって均一に混合されるものである。
上記分散液中のアルミナ水和物の固形分濃度は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。アルミナ水和物の固形分濃度が30質量%を超えると分散液の粘度が高くなり、塗工液の粘度が高くなるため塗工性に問題が生じる場合がある。
次に、このようにして調製した多孔質性インク受容層用の塗工液を、透気性支持体の表面処理を行った面上に塗工する。この多孔質性インク受容層用の塗工液の塗工装置としては、上記「(A)透気性支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の塗工装置を使用できる。
また、この塗工液を塗工後の乾燥装置としては、上記「(A)透気性支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の乾燥装置を使用できる。
多孔質性インク受容層用の塗工液の塗工は、透気性支持体上に表面処理液を塗工後、乾燥させずに透気性支持体の表面がある程度の湿潤状態(表面処理液の状態や増粘状態でも良い)を保った状態で行うことが好ましい。
本発明の多孔質性インク受容層は、インクの高速吸収性、高発色性、高解像性等の目的及び効果を達成する上で、その細孔物性が、下記の条件を満足するものであることが好ましい。
・多孔質性インク受容層の細孔径分布において、少なくとも細孔半径5nm以上20nm以下の範囲にピークを有することが好ましい。細孔半径5nm未満の範囲にピークを有する場合、インクの高速吸収性に劣る場合がある。また、細孔半径20nmを超える範囲にピークを有する場合、発色性や解像性の点で十分な性能が得られない場合がある。
・多孔質性インク受容層の細孔容積は、0.1cm3/g以上1.0cm3/g以下の範囲内にあることが好ましい。細孔容積が0.1cm3/g未満の場合、十分なインク吸収性能が得られずインク吸収性が劣った多孔質性インク受容層となり、インクが溢れて画像滲みが発生する場合がある。また、細孔容積が1.0cm3/gを超える場合、多孔質性インク受容層内にクラックや粉落ちが生じ易くなる場合がある。
・多孔質性インク受容層のBET比表面積は、20m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積が20m2/g未満の場合、十分な光沢性が得られず、ヘイズが増加して(透明性が低下して)画像が白く靄がかかったようになる場合がある。また、この場合、染料の発色性が低下するだけでなくインク中の染料吸着性が低下する場合がある。一方、BET比表面積が450m2/gを超えると、多孔質性インク受容層にクラックが生じ易くなる場合があるので好ましくない。尚、細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求められる。
多孔質性インク受容層の乾燥塗工量は30g/m2以上50g/m2以下となるようにすることが好ましい。乾燥塗工量を30g/m2以上とすることにより、高温高湿環境下においても十分なインク吸収性を示す多孔質性インク受容層を得ることができる。また、乾燥塗工量が50g/m2以下の場合、多孔質性インク受容層の塗工ムラが生じにくくなり、安定した厚みの多孔質性インク受容層を製造できる。
一方、乾燥塗工量が30g/m2未満の場合、この被記録媒体に、プリンターを用いてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクの他、複数の淡色インクにより記録した場合、十分なインク吸収性が得られない場合がある。また、インク溢れが生じてブリーディングが発生したり、透気性支持体にまでインク染料が拡散して印字濃度が低下する場合がある。更に、乾燥塗工量が50g/m2を超える場合、クラックの発生を抑え切れない場合がある。
また、多孔質性インク受容層は1層であっても、2層以上であっても良い。
(C)裏面形成工程
必要に応じて、透気性支持体の多孔質性インク受容層を設けた側と反対側(裏面側)の面に、裏面層用の塗工液を塗工する。この裏面層用の塗工液は、少なくとも顔料とバインダーを含むことが好ましい。また、この裏面層用の塗工液中には、バインダーと架橋反応を起こして硬化する架橋剤を含んでいても良い。多孔質性インク受容層用の塗工液と裏面層用塗工液は、透気性支持体の両面に同時に塗工することができる。
このように透気性支持体の裏面側に裏面層を設けることによって、透気性支持体のカールを効果的に防止することができる。なお、必要に応じて、透気性支持体の多孔質性インク受容層を形成する側の面に表面処理を行う際に、同時に透気性支持体の裏面側にも表面処理を行っても良い。
この裏面層用の塗工液は、上記多孔質性インク受容層用の塗工液の調製工程で説明した、顔料の分散液と、バインダー水溶液を混合することにより調製できる。ここで、裏面層用の塗工液中に含有させる顔料としては上記と同様の理由により、アルミナ水和物を使用することが好ましい。このアルミナ水和物としては上記一般式(X)で表されるものを用いるのがより好ましい。また、バインダーとしては、上記と同様の理由によりポリビニルアルコールを用いるのが好ましい。
この裏面層用の塗工液には、必要な場合、架橋剤やpH調整剤を添加することができる。このpH調整剤としては例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸、これらの酸の塩等を使用することができる。これらの酸は単独で、又は複数種を混合して使用できる。
また、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候性材料等を、必要に応じて適宜、含有させることができる。。
裏面層用の塗工液は例えば、下記のようにして調製できる。すなわち、まず、アルミナ水和物及び必要に応じて架橋剤を含む分散液を準備する。次に、この分散液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液とを塗工直前で混合して塗工液とする。この分散液と、バインダー水溶液又はバインダー分散液の混合には、ミキシング装置を使用することが好ましい。上記手順で塗工液を調製することにより、製造工程中での塗工液粘度の経時的上昇やゲル化を低減して生産効率を向上させることができる。
上記分散液中のアルミナ水和物の固形分濃度は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。アルミナ水和物の固形分濃度が50質量%を超えると分散液の粘度が高くなり、裏面層の粘度が高くなるため塗工性に問題が生じる場合がある。
また、裏面層用の塗工液の塗工装置としては、上記「(A)透気性支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の塗工装置を使用できる。なお、工程中での塗工装置への塗工液の連続的な供給方法としては、上記「(B)多孔質性インク受容層形成工程」に記載の方法を挙げることができる。また、この塗工液を塗工後の乾燥装置としては、上記「(A)透気性支持体の表面処理工程」に記載の表面処理液の乾燥装置を使用できる。
2.再湿潤液を供給していない被記録媒体の圧接工程(2−1)、再湿潤液を供給した被記録媒体の圧接工程(2−2)、前処理液供給工程
本発明の製造方法では、工程(2)では再湿潤液供給部と、前処理液供給部と、鏡面ドラムとを有する処理装置内を、被記録媒体を連続的に搬送する。また、工程(2−1)では、一定時間、被記録媒体の多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように、被記録媒体を圧接、加熱させる。この工程(2−1)では、再湿潤液供給部から被記録媒体に対して再湿潤液は供給されておらず、低含水率の被記録媒体が鏡面ドラムによって圧接、加熱させる。
そして、工程(2−2)では、工程(2−1)の一定時間が経過した後、被記録媒体の多孔質性インク受容層側に、再湿潤液供給部より再湿潤液を供給する。また、この被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように、被記録媒体を圧接、加熱させる。
また、少なくとも、上記工程(2−1)の実施中から、上記工程(2−2)の開始時までの間は、前処理液供給部より、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する(前処理液供給工程)。
このように本発明の製造方法では、予め処理装置内を、連続的に再湿潤液を供給していない低含水率の被記録媒体を搬送させて鏡面ドラムに圧接、加熱させる。そして、この際に、前処理液供給部より、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する。そして、この後、被記録媒体の多孔質性インク受容層側に再湿潤液を供給すると共に、この被記録媒体を鏡面ドラムに圧接、加熱させてリウェットキャスト法を実施する。そして、本発明の製造方法では、少なくとも、このように再湿潤液を供給した被記録媒体が最初に鏡面ドラムの外周面上に接する時まで鏡面ドラムの外周面上に前処理液を供給する。
このように工程(2−2)で被記録媒体のリウェットキャスト法を実施する前に予め、鏡面ドラムの外周面上に前処理液を供給することによって、鏡面ドラムの外周面の温度環境を安定化させることができる。また、工程(2−1)から工程(2−2)に移行するに従って、鏡面ドラムの外周面上に圧接される被記録媒体が再湿潤液を供給されていないものから、再湿潤液を供給されたものに変わった場合であっても、鏡面ドラムの外周面の温度環境をほとんど変わらないものとすることができる。この結果、リウェットキャスト法を用いた場合であっても、操業開始時の高い発生率で発生する点状窪みを抑制して歩留まりを向上させることができる。また、コストを低減して高品位な被記録媒体を製造することができる。
なお、この前処理液供給部からの鏡面ドラムの外周面上への前処理液の供給を停止する時期は特に限定されず、被記録媒体の構成材料、処理装置の操作条件(処理スピード、鏡面ドラムの表面温度)等によって適宜、調節することができる。
本発明の製造方法では、リウェットキャスト法により、被記録媒体の表面に光沢面を形成することができる。このリウェットキャスト法では再湿潤液を付与することにより、湿潤状態、又は可塑性を有している状態にある多孔質性インク受容層を、フィルムや加熱された鏡面状の鏡面ドラム(キャストドラム)面の外周面に圧接させる。そして、このように圧接させた状態で被記録媒体を乾燥させて、そのフィルム面や鏡面を多孔質性インク受容層の表面に写し取ることができる。
図1は、本発明の被記録媒体の製造方法を実施する処理装置の一例を表したものである。図1に示すように、送出位置1から連続的に被記録媒体を送り出し、搬送する(工程(1)、(2))。そして、圧接ロール3により、このようにして搬送された被記録媒体の多孔質性インク受容層側が鏡面ドラム6の外周面に接するように導き、被記録媒体を鏡面ドラム6に圧接させる(工程(2−1))。この鏡面ドラム6により、被記録媒体を圧接させている間に水塗布ロール5によって、被記録媒体の裏面側(多孔質性インク受容層を設けた側と反対側)に水を塗布する。なお、この水塗布ロール5による水塗布工程は設けても、設けなくても良い。
そして、この被記録媒体を搬送中に、鏡面ドラム6の外周面に対向する位置に設けられた水塗布ロール(前処理液供給部)4から、鏡面ドラム6の外周面上に水を塗工する。このようにして鏡面ドラム6により圧接された被記録媒体は、一定時間、圧接後、剥離ロール7により鏡面ドラムの外周面から剥離される。この後、剥離された被記録媒体は、巻取、裁断機8へと搬送される。
次に、一定時間の経過後、再湿潤液供給部2より再湿潤液を、搬送中の被記録媒体の多孔質性インク受容層側に塗布する。そして、圧接ロール3により、この被記録媒体の多孔質性インク受容層側が鏡面ドラム6の外周面に接するように導き、被記録媒体を鏡面ドラム6に圧接させる(工程(2−2))。
そして、このように再湿潤液供給部2より再湿潤液を供給した被記録媒体を鏡面ドラム6の外周面上に圧接中に、水塗布ロール4から鏡面ドラム6の外周面上への前処理液の供給を停止する。
この前処理液の供給を停止する時期は少なくとも、工程(2−2)の開始時以降であれば特に限定されるわけではなく、被記録媒体の構成材料、処理装置の操作条件(処理スピード、鏡面ドラムの表面温度)等によって適宜、調節することができる。
この処理装置において、再湿潤液供給部2としては図1の再湿潤液供給部に限定されるわけではなく、例えば、スプレー、ローターダンプ、ロールによる転写方法などを用いることができる。
また、工程(2−2)で使用する再湿潤液とは、光沢を発現させる多孔質性インク受容層上に塗布される処理液であり、主に多孔質性インク受容層の可塑化を目的とするものである。この再湿潤液としては水や、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸セッケン、カルシウムステアレート、マイクロクリスタリンワックス、界面活性剤、ロート油等の離型剤を含有する水溶液を使用できる。また、再湿潤液中には、離型剤、光沢付与剤、浸透剤、着色料、pH調整剤、カチオン剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、高沸点溶剤、防バイ剤等を適宣配合することもできる。
被記録媒体の多孔質性インク受容層側に再湿潤液を供給する際の液温は、例えば、0℃以上180℃以下が好ましい。再湿潤液が0℃よりも低いと再湿潤液として水溶性のものを用いた場合、凍ってしまい被記録媒体上に付与できなかったり、多孔質性インク受容層の可塑化に十分な量を付与できない場合がある。一方、再湿潤液が180℃よりも高いと取扱いが困難であったり、被記録媒体の特性を劣化させてしまう場合がある。
また、再湿潤液の液温は30℃以上100℃以下がより好ましい。液温が30℃以上100℃以下であることによって、再湿潤液の管理が容易になると共に、短時間で多孔質性インク受容層の可塑化を行うことができる。この結果、リウェットキャスト法の処理装置をコンパクトにすることができるなどの利点がある。
また、処理装置において、前処理液供給部より鏡面ドラムの外周面上に前処理液を供給する位置は、圧接ロール3よりも上流側の位置となっている。この鏡面ドラムの外周面上の部分には被記録媒体が接しておらず、鏡面ドラムの外周面上に直接、前処理液を供給することができる。前処理液供給部4としては図1の前処理液供給部に限定されるわけではなく、例えば、スプレー、ローターダンプ、ロールによる転写方法などを用いることができる。好ましくは、前処理液供給部がスロットダイヘッド、又はスプレーノズルであるのが良い。スロットダイヘッド、又はスプレーノズルを用いることによって、鏡面ドラムの外周面上の搬送方向及び幅方向の前処理液の塗布ムラを少なくすることができる。
前処理液供給工程で使用する前処理液とは、鏡面ドラムの外周面上に直接、供給するものである。この前処理液の成分としては、再湿潤液と同様の成分を用いることができる。
ここで、前処理液供給工程では、工程(2−1)を実施している時に前処理液供給部より鏡面ドラム上に前処理液を供給する。また、工程(2−2)において、被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が、最初に鏡面ドラムの外周面に接した時から10秒以内に、前処理液供給部から鏡面ドラムへの前処理液の供給を停止することが好ましい。この理由は、液消費量が多くなるため、乾燥負荷が高くなると共にコスト的に好ましくないためである。
なお、本発明の製造方法では、上記のようなリウェットキャスト法の工程(2−2)における再湿潤液の付与、鏡面ドラムによる圧接の回数は限定されるわけではなく、これらの回数は1回であっても、複数回であっても良い。
(点状窪み)
ここで、本発明における点状窪み発生の抑制効果について説明する。
点状窪みの発生原因はいくつか考えられる。この一つの原因としては、多孔質性インク受容層の可塑化が十分に行われないまま鏡面ドラムの外周面に押し付けられる場合が考えられる。そして、多孔質性インク受容層の表面が鏡面ドラムの鏡面(外周面)に、十分に密着しないまま乾燥されることが考えられる。
また、他の原因としては、鏡面ドラム温度が高くなり過ぎて、多孔質性インク受容層に付与された再湿潤液を瞬時に沸騰させて剥離エネルギーが急激に生じる場合が考えられる。そして、多孔質性インク受容層の表面が鏡面ドラムの鏡面(外周面)に十分に密着する時間がないことが考えられる。
すなわち、このように点状窪みとは、多孔質性インク受容層が十分に鏡面ドラムの外周面に密着しなかったため、被記録媒体の凹凸の内の凹部が残った部分を表している。また、この点状窪みとは、キャスト処理時に起こるドラムピックとは異なり、被記録媒体のインク吸収性へ影響を及ぼさない美観を損ねる窪みである。この点状窪みは、図2に示すように、直径が約0.01〜10mmであり、平均的なものは丸状の単体で直径が約0.2mmであり、やや丸みを帯びた形をしている。また、大きな点状窪みは丸状の複合体形状をなしており、ブドウの房の様に見える場合がある。この点状窪みは、後述する実施例に記載の方法によって確認することができる。
(写像性)
次に、本発明における写像性について詳細に説明する。
一般的に、被記録媒体の表面光沢性は、鏡面光沢度として評価される。この鏡面光沢度は反射光強度をもって表現され、客観的光沢度とも称される。この鏡面光沢度の一般的な測定方法であるJIS P−8142では、60度鏡面光沢度、又は75度鏡面光沢度を採用しており、キャスト紙の様な強光沢紙への適用は除外されている。また、一般的な強光沢紙の光沢度の比較に推奨されている20度鏡面光沢度は、光沢感の比較が十分できない。
一方、被記録媒体の光沢面の画像の美観・清潔感は、顧客の購買意欲に直結すると言われている。そして、被記録媒体の光沢面の美観・清潔感は、光沢や汚れ具合だけではなく、光沢面に天井の蛍光灯が写っている状態、印字画像を見る部屋の写り込み状態の善し悪し等で、感覚的に判断されている。今までは、このような表面光沢を数値で評価する方法がなかったため、光沢度で表せない美観を「ウエットルック感」、「スッキリ感」、「クリア感」等の目視による表現を加えて判断してきた。
本発明では、こららの光沢度では表せない美観を「像鮮明度」として、写像性により数値化、判定することにより、より見た目の光沢感に近い指標を用いて評価している。この「像鮮明度」とは本来、自動車の外板塗装技術に適用される美観・仕上がり具合を判定する手法である。
すなわち、この「像鮮明度」とは、塗膜表面に物体が映った時、その像がどの程度、鮮明に歪(ゆが)みなく映し出されるかを表す指標である。特に、自動車ボディー塗装の美観要素を決定づける重要な特性である。像鮮明度の測定方法はJIS H 8686に規定されており、光学的装置を使用して、光学くしを通して得られた光量の波形から写像性を像鮮明度として求める方法である。光学くしは暗部と明部の比が1:1で、その幅は0.125、0.5、1.0及び2.0mmの各種のものがある(本発明では、実施例に記載のように、光学くしの幅2.0mm、反射角度60度で測定する)。この測定は、光学くしを移動させ、記録紙上の最高波形(M)及び最低波形(m)を読み取り、次式により像鮮明度を求める。
C=(M−m)/(M+m)×100
(ここで、C:像鮮明度(%)、M:最高波形、m:最低波形である)。
すなわち、従来の光沢度計での測定では、「反射光の量」を測定するものであったが、本発明の写像性測定器での測定は、「反射光の質」(写像性)を測定することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
先ず、本発明において使用した各種の物性値の測定方法について説明する。
<ステキヒトサイズ度>
被記録媒体をA4サイズに断裁し、その5枚をそれぞれ、気温23℃及び湿度50%の条件下に2時間以上、放置した。この後、JIS P8122に準拠して、各1枚毎にステキヒトサイズ度の測定を行い、5枚の平均値として求めた。
<透気度>
上記ステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、JIS P8177に準じて、各1枚毎に測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
<ベック平滑度>
上記ステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、JIS P8119に準じて、各1枚毎に測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
<ガーレー剛度>
上記ステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、J. Tappi No.40に準じて、各1枚毎に縦目方向の測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
<水中伸度>
水中伸度の測定は、emco社DDPM動的変位測定モジュールを用いて行った。測定条件は、クランプ式を用いスプリングテンション20gでサンプル幅50mm、水温23℃、浸漬時間を10分間とした。
<アルミナ水和物のBET比表面積、細孔容積>
アルミナ水和物を十分に加熱脱気してから、窒素吸着脱離法を用いた装置(カンタクローム社製、オートソーブ1)を用いて測定した。BET比表面積の計算には、Brunauerらの方法を用いた(J.Am.Chem.Soc.,60巻、309、1938年参照)。細孔容積の計算には、Barrettらの方法を用いた(J.Am.Chem.Soc.,73巻、373、1951年参照)。
<点欠陥の抑制>
被記録媒体をA4サイズに断裁し、この内、5ポイントをそれぞれ顕微鏡で観察した。そして、まず、予備評価として、以下の基準に従って点状窪みをランク別に判定した。点状窪みの大きさは、図2に示すように、0.2mm以上の単体、もしくは複合体を1個単位とした。
A:5ポイントの平均が、1cm2中に10個未満のもの
B:5ポイントの平均が、1cm2中に10個以上30個未満のもの
C:5ポイントの平均が、1cm2中に30個以上50個未満のもの
D:5ポイントの平均が、1cm2中に50個以上のもの。
被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が、最初に鏡面ドラムの外周面に接した部分(0m地点)から100m後のサンプル(100mサンプル)と、200m後のサンプル(200mサンプル)に関して、上記A〜Dの判定基準に従い、最終的な判定を行なった。
○:200mサンプルがA判定であり、100mサンプルがA判定であったもの
△:200mサンプルがA判定であり、100mサンプルがB判定であったもの
×:200mサンプルがA判定であり、100mサンプルがC判定又はD判定であったもの
××:200mサンプルがB判定、C判定又はD判定であったもの(100mサンプルの判定結果は問わない)。
<写像性>
JIS H8686で規定される像鮮明度(C)として求めた。写像性測定装置(スガ試験機製ICM−1DP)を用いて、光学くしの幅は2.0mmのものを用い、反射角度60度で最高波形(M)及び最低波形(m)を読み取り、下記式に従って像鮮明度を求めた。
C=(M−m)/(M+m)×100
なお、写像性測定用のサンプルとしては、以下の2つのサンプルを用いた。
・被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が、最初に鏡面ドラムの外周面に接した部分(0m地点)から200m後のサンプルS
・終了時の再湿潤液供給停止位置にマーキングして、該マーキングから上流側へ100mさかのぼったサンプルE(鏡面ドラムでの圧接済)。
また、以下の基準に従って評価した。
○:像鮮明度C値が、サンプルS、E共に90%超える
△:サンプルS及びEのうち、像鮮明度C値が低いサンプルの像鮮明度C値が80%以上90%以下
×:サンプルS及びEのうち、像鮮明度C値が低いサンプルの像鮮明度C値が80%未満。
なお、写像性の像鮮明度が90%を超えると見た目の光沢感が高く、印画紙ライクな美観要素に優れていることを示し、80%以上であれば実用上、見た目の光沢感が優れていることを示す。一方、80%未満では見た目の光沢感が低く像の歪みが見られ、鈍い光沢感となるため実用的に好ましくない。
<印字濃度>
iP8600(キヤノン社製)を用いて、被記録媒体に対してブラックの3cm四方の100%印字部を印刷した。この印字部をマクベス反射濃度計(商品名:RD−918、Kollmorgen Corporation社製)を用いて測定した。
<紙のコシ>
被記録媒体(A4サイズ)の短辺を、紙の表面が上を向くようにして幅210mm×長さ50mmに渡り板で挟み込んで水平となるように持ち、この時の手と反対側の一辺がどの方向を向いているか、を以下の基準に従って判定した。なお、測定環境は温度23℃/湿度50%とした。
A:45°以上の角度を保っていた。
B:30°以上45°未満の角度があった。
C:30°未満で、真下に向かって、垂れ下がっていた。
<前処理液の消費量>
前処理液の供給停止のタイミングによって、液消費量を以下の基準で判定した。ただし、被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が、最初に鏡面ドラムの外周面に接した時(0m地点)から10秒後までに、一定流量で供給された前処理液の量を評価の基準消費量とした。
A:基準消費量より少なく、コスト的に好ましい。
B:基準消費量と同じ。
C:基準消費量より多く、コスト的に好ましくない。
[実施例1]
(透気性支持体の作製)
先ず、下記のようにして透気性支持体を作製した。
最初に下記パルプスラリーを準備した。
濾水度450ml CSF(Canadian Standarad Freeness)の広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP) 80質量部
濾水度480ml CSFの針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)
20質量部。
次に、上記パルプスラリーを用いて下記組成の紙料を調整した。
パルプスラリー 100質量部
カチオン化澱粉 0.60質量部
重質炭酸カルシウム 10質量部
軽質炭酸カルシウム 15質量部
アルキルケテンダイマー 0.10質量部
カチオン性ポリアクリルアミド 0.03質量部。
次に、この紙料を長網抄紙機で抄造した後、3段のウエットプレスを行い、更に多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、サイズプレス装置を用いて酸化澱粉水溶液を固形分換算で1.0g/m2となるように含浸させた後、乾燥させた。この後、マシンカレンダー仕上げをして坪量155g/m2、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙Aを得た。
次に、上記で得た基紙A上に、以下のようにして下塗り層を形成した。
先ず、下塗り層の形成に使用する塗工液として、カオリン(ウルトラホワイト90、Engelhard社製)/酸化亜鉛/水酸化アルミニウムの、質量比が65/10/25からなる填量を準備した。次に、この填量100質量部と、市販のポリアクリル酸系分散剤0.1質量部とから固形分濃度70質量%のスラリーを調製した。
次に、このスラリーに対して、市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7質量部を添加して、固形分60質量%となるように調整して組成物を得た。次に、この組成物を乾燥塗工量が15g/m2となるように、ブレードコーターで、基紙Aの両面上に塗工した後、乾燥させた。この後、マシンカレンダー仕上げをして(線圧150kgf/cm)、坪量185g/m2、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付き透気性支持体1を得た。
<被記録媒体の製造>
上記で得た透気性支持体1の下塗り層に対して、下記の工程からなる表面処理を行った。
先ず、30℃に加温した下記組成の表面処理液を、エアーナイフコーターでウェット塗工量16g/m2(乾燥させた場合の塗工量は0.8g/m2である)となるよう、毎分30mで塗工した。
(表面処理液)
四硼酸ナトリウム:5g
イソプロパノール:0.15g
イオン交換水を加えて総量100gに調整。
次に、多孔質性インク受容層を形成した。上記の表面処理工程での塗工後、即ち、表面処理液が下塗り層中に含浸されてからすぐに、多孔質性インク受容層用の塗工液を塗工、乾燥して多孔質性インク受容層を形成した。この際、多孔質性インク受容層用の塗工液及び塗工方法等は、以下の通りとした。
アルミナ水和物AとしてDisperal HP13(サソール社製)を純水中に、固形分質量が5質量%となるように分散させた。次いで、これに塩酸を加えてpH値を4に調整して、しばらく攪拌した。この後、この分散液を攪拌しながら95℃まで昇温し、この温度で4時間、保持した。
次に、この温度を保持したまま、苛性ソーダによりpH値を10に調整して10時間、攪拌を行った。この後、分散液の温度を室温に戻して、pH値を7〜8に調整した。次に、脱塩処理を行った後、続いて酢酸を添加して解膠処理を行なってコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを乾燥して得られたアルミナ水和物BをX線回折により測定したところ、ベーマイト構造を示すもの(擬ベーマイト)であった。また、この時のBET比表面積は143g/m2、細孔容積は0.8cm3/gであり、電子顕微鏡での観察ではその長さが約30nm×約15nmで、厚みが約5〜7nmの平板状であった。
上記で調製したアルミナ水和物Bのコロイダルゾルを濃縮して22.5質量%の分散液を作製した。次に、この分散液中に3質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物Bの固形分100質量部に対してホウ酸固形分換算で0.50質量部となるように添加してホウ酸含有アルミナ水和物分散液を得た。
一方、ポリビニルアルコールPVA117(クラレ(株)製)をイオン交換水に溶解して、固形分質量が9質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。この後、先に調製したホウ酸含有アルミナ水和物分散液と、ポリビニルアルコール水溶液を、スタティックミキサーでアルミナ水和物固形分と、ポリビニルアルコール固形分の比が100:9となるように混合した。この直後に、これを多孔質性インク受容層用の塗工液としてダイコーターにより乾燥塗工量が35g/m2となるように、毎分30mで塗工した。そして、170℃で乾燥して多孔質性インク受容層を形成した。
次に、透気性支持体の多孔質性インク受容層を設けた側とは反対側の面の下塗り層上に、以下のようにして裏面層を形成した。
アルミナ水和物としてDisperal HP13(サソール社製)を純水中に固形分質量が18質量%となるように分散させ、その後、遠心分離処理を施した。この分散液と、多孔質性インク受容層の形成に用いたのと同様のポリビニルアルコール水溶液とをスタティックミキサーで、アルミナ水和物固形分とポリビニルアルコール固形分の比が100:9となるように混合した。この後、すぐにダイコーターで乾燥塗工量が23g/m2となるように毎分35mで塗工した。そして、170℃で乾燥し、裏面層を形成した。
次に、図1に示した処理装置により、上記のように形成した多孔質性インク受容層の表面の光沢処理を行い、最終的に被記録媒体を得た。すなわち、まず、上記のように準備した被記録媒体(工程(1))を、処理装置内を、連続的に搬送させた(工程(2))。次に、30秒間、再湿潤液を供給していない被記録媒体を、多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように圧接、加熱させた(工程(2−1))。そして、前処理液供給部より、鏡面ドラムの被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給した(前処理液供給工程)。前処理液の供給開始から10秒後、被記録媒体の多孔質性インク受容層側に、再湿潤液供給部より再湿潤液を供給した。そして、この被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が鏡面ドラムの外周面に接するように、被記録媒体を圧接、加熱させた(工程(2−2))。次に、再湿潤液を供給した被記録媒体が最初に鏡面ドラムの外周面に接してから、表3に記載の時間が経過した後に前処理液供給部から鏡面ドラムの外周面上への前処理液の供給を停止した。
この時の操作条件及び液処方を以下に示す。
リウェットキャスト条件
・処理スピード:30m/min
・再湿潤液の供給条件:スロットダイヘッドで塗布。液温25℃。
・再湿潤液の種類:ポリロンL−788(離型剤;中京油脂株式会社製)とサーフィノール465(界面活性剤(アセチレングリコールEO付加物);日進化学株式会社製)、イオン交換水を下記表2の組成となるように使用した。
Figure 2009160802
各成分の特性を以下に示す。
(A)ポリロンL−788:外観は淡褐色液状、不揮発分31質量%、粘度30mPa・s(25℃)、pH10(10倍希釈時)、アニオン性、主成分滴点(110℃)
(B)サーフィノール465:不揮発分100質量%、粘度30mPa・s(25℃)
なお、表3において、再湿潤液の種類が「A」と記載されている場合は、表2の組成の再湿潤液を用いたものとする。
・前処理液の供給条件:液温25℃で、スプレーノズルで供給。
・前処理液の種類:再湿潤液と同様の組成のものを用いた。なお、表3において、前処理液の種類が「A」と記載されている場合は、上記再湿潤液と同様の組成のものを用いたものとする。
・鏡面ドラムの表面温度:98℃。
[実施例2〜7]
実施例1において、基紙Aの坪量を127g/m2に変更し、処理スピード、前処理液の塗布方法及び供給停止時間を下記の表3の様に条件を変えて行った。
[実施例8]
実施例1において、基紙Aの坪量を400g/m2、処理スピードを10m/minに変更し、表3に記載の供給停止時間に変更して行った。
[実施例9]
実施例1において、基紙Aの坪量を420g/m2、処理スピードを10m/minに変更し、表3に記載の供給停止時間に変更して行った。
[参考例1]
実施例2において、供給停止時間を600秒に条件を変えて行った。
[参考例2]
実施例2において、下塗り層を設けなかった。
[参考例3]
実施例2において、処理スピードを30m/minに落とした。
[参考例4]
実施例8において、下塗り層を設けなかった。
[参考例5]
実施例1において、基紙Aの坪量を100g/m2、処理スピードを75m/minに変更し、表3に記載の供給停止時間に変えて行った。
[参考例6]
参考例5において、下塗り層を設けなかった。
[参考例7]
参考例5において、処理スピードを70m/minに落とし、前処理液の供給をせずにリウェットキャスト法を行なった。
[参考例8]
参考例5において、処理スピードを80m/minに上げて、前処理液の供給をせずにリウェットキャスト法を行なった。
[比較例1]
実施例1において、前処理液を使用せずにリウェットキャスト法を行なった。
[比較例2〜5]
比較例1において、基紙の坪量と処理スピードを下記表3の様に変更して行った。
Figure 2009160802
なお、上記表3において、前処理液の「供給停止」とは、再湿潤液を供給した被記録媒体が最初に鏡面ドラムの外周面に接してから、前処理液供給部から鏡面ドラムの外周面上への前処理液の供給を停止するまでの時間を示す。
この時の結果を表4に示す。
Figure 2009160802
実施例では、本発明の製造方法を使用し、再湿潤液を供給した被記録媒体を鏡面ドラムの外周面上に圧接させる前から鏡面ドラムの外周面上に前処理液を供給した。表4の結果より、実施例では「点欠陥の抑制」、「写像性」、「印字濃度」、「紙のコシ」及び「前処理液の消費量」が良好な結果となっていることが分かる。特に、「点欠陥の抑制」、が「○」又は「△」となっており、点状窪みの発生を効果的に抑制できていることが分かる。
一方、鏡面ドラムの外周面上に前処理液を供給しなかった比較例では、「点状窪みの抑制」が「×」又は「××」となっており、点状窪みが多数、発生していることが分かる。また、「写像性」、「印字濃度」、「紙のコシ」及び「前処理液の消費量」の何れかが悪い結果となっていることが分かる。
図1はリウェット法キャスト装置の概略図である。 図2は点状窪みの模式図である。
符号の説明
1 送出位置
2 再湿潤液供給部
3 圧接ロール
4 前処理液供給部
5 水塗布ロール
6 鏡面ドラム
7 剥離ロール
8 裁断機

Claims (6)

  1. 再湿潤液供給部と、前処理液供給部と、鏡面ドラムとを有する処理装置を用いて、リウェットキャスト法を行う被記録媒体の製造方法であって、
    (1)透気性支持体上に多孔質性インク受容層を設けた被記録媒体を準備する工程と、
    (2)前記処理装置内を、前記被記録媒体を連続的に搬送しながら、
    (2−1)前記再湿潤液供給部から再湿潤液を供給せずに前記被記録媒体を、前記多孔質性インク受容層側が前記鏡面ドラムの外周面に接するように圧接、加熱させる工程と、
    (2−2)前記工程(2−1)の後、前記被記録媒体の多孔質性インク受容層側に前記再湿潤液供給部より再湿潤液を供給し、前記被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が前記鏡面ドラムの外周面に接するように、前記被記録媒体を圧接、加熱させる工程と、
    を有し、
    少なくとも、前記工程(2−1)を実施している時から、前記工程(2−2)において前記被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が最初に前記鏡面ドラムの外周面に接する時までの間、前処理液供給部より、前記鏡面ドラムの前記被記録媒体が接していない外周面上に前処理液を供給する前処理液供給工程と、
    を有することを特徴とする被記録媒体の製造方法。
  2. 前記前処理液供給工程において、
    前記工程(2−2)の被記録媒体の再湿潤液を供給した多孔質性インク受容層側が、最初に前記鏡面ドラムの外周面に接した時から10秒以内に、前処理液供給部から前記鏡面ドラムへの前処理液の供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の被記録媒体の製造方法。
  3. 前記透気性支持体は、基紙上に下塗り層を設けたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の被記録媒体の製造方法。
  4. 前記基紙の坪量が130g/m2以上400g/m2以下である請求項3に記載の被記録媒体の製造方法。
  5. 前記被記録媒体は、前記透気性支持体の前記多孔質性インク受容層を設けた側と反対側に下塗り層を有することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
  6. 前記前処理液供給部がスロットダイヘッド、又はスプレーノズルであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
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