JP5276671B2 - ポリオレフィンナノ複合材料 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン及び少なくとも1種類のナノサイズのハイドロタルサイト無機充填剤を含むポリオレフィンナノ複合材料、及びかかる材料の製造方法に関する。また、かかる材料から形成される物品、特に繊維、並びにフィルム、シート、及びブリスター、並びにカップ及び容器、熱成形、ブロー押出、及び射出成形(IM)物品、並びにパイプにも関する。
特に、本発明は、テナシティー及び破断点伸びの良好なバランスを示す繊維に関する。また、良好なバリヤ特性、良好な剛性及び光学特性を示す熱成形又はブリスター用のフィルム又はシートにも関する。また、改良された熱機械特性を示すパイプにも関する。本発明のポリオレフィンナノ複合材料は、スメクタイトクレー及びナノゼオライトをベースとする同等のナノ複合体に対して改良された加工性を示す。スメクタイトクレーとしては、例えばモンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、ベーマイト、及びスティーブンサイトが挙げられる。
ここで用いる「ナノサイズの充填剤」という用語は、約0.2〜約500nmの範囲の少なくとも1つの寸法(長さ、幅、又は厚さ)を有する充填剤を意味する。
繊維の定義としては、スパンレイド法及びスパンボンド不織法によって製造される連続繊維、ステープル繊維、及び/又はフィラメント;テープ;並びにモノフィラメントが挙げられる。
本発明によるポリオレフィン繊維は、建築、工業、農業、衣類などの用途、及び衛生用品において用いるのに特に適している。
フィルムの定義としては、食品及びタバコの包装並びにテープにおいて用いるのに適した、注型、ブロー、及び二軸配向フィルム、特に二軸配向ポリプロピレンフィルム(BOPP)が挙げられる。
射出成形物品の定義としては、ボトルのような射出延伸ブロー成形物品が挙げられる。
熱成形物品としては、カップ及び蓋のような剛性及び半剛性の全ての包装用途が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂及び少量のナノサイズの無機充填剤を含む複合体は既に公知である。ポリオレフィンナノ複合材料の機械特性、熱特性、及びバリヤ特性を向上させるためにこの異なる化学的性質の2つの成分の間の相溶現象を増加させる努力が行われている。
例えば、米国特許5910523においては、半結晶性ポリオレフィン及びナノサイズの無機充填剤を含み、充填剤の表面が官能化化合物によって変性されているポリオレフィンナノ複合材料が記載されている。
WO01/96467においては、グラフトコポリマーを含むポリオレフィンナノ複合材料が記載されている。グラフトコポリマーの製造は有機クレーの存在下で行い、これにより生成物の機械特性の大きな向上が達成されている。
しかしながら、今日まで繊維用に用いられているポリオレフィン複合材料は、上述の特性のバランスを有するポリオレフィン繊維を与えることはできなかった。繊維用途における従来技術のナノ複合材料によって示される最も重大な問題は、これらを紡糸するのが困難であることである。
本発明は、今日まで用いられている複合材料のものとは異なる物理的−化学的特性を有するポリオレフィン複合材料を提供することによって、繊維の製造において上述のポリオレフィンナノ複合材料を使用することに関係する欠点を克服する。
本発明のポリオレフィン複合材料の大きな更なる有利性は、かかる材料が非常に良好な紡糸挙動と共に良好な延伸性を示すことである。
また、フィルムを製造するためにポリオレフィン複合材料を用いることも公知である。これらのフィルムに関する主要な欠点は、これらが、充填剤粒子含量が10〜30重量%であり、約0.5〜40μmの範囲の平均径を有するヨーロッパ特許0659815におけるように、特に破断しやすいことである。国際特許出願WO9903673におけるように、充填剤を加えると空孔が形成される可能性があり、これはワックスを充填しない場合にフィルムの透過性を増加させることも同様に公知である。したがって、充填剤を加えるとそのフィルムの空孔、脆性、及び不透明性を与えると考えられている。
充填剤がナノサイズの充填剤である場合には、同じ効果を有すると考えられる。特に二軸配向フィルムに関しては、ナノサイズの充填剤の良好な分散を得てゲルの形成又はフィルムの破断を回避することは未だ困難である。
本発明のポリオレフィン複合材料を用いて製造されるフィルムは、驚くべきことに普通の加工挙動、非常に良好な光学特性及び物理−機械特性、並びに改良されたバリヤ特性を示す。
モンモリロナイト又はベーマイト族のクレーのような充填剤又はナノサイズの充填剤(ナノ充填剤)をポリオレフィン組成物に加えると、充填剤又はナノ充填剤を加えることによって起こる組成物の粘度上昇のために加工性が低下すると考えられている。
本発明の充填剤を用いると、驚くべきことに、同等の充填又はナノ充填材料に対して加工性が改良されることが見出された。同等の温度においてより短いサイクル時間が可能であり、或いは同等のサイクル時間に関してより低い運転温度が可能である。これは、ポリオレフィンとブレンドしたハイドロタルサイトの成核効果と関係する可能性がある。この点に関して、ポリオレフィンブレンドの0.02〜1重量部の量でポリオレフィンとブレンドした本発明のハイドロタルサイトの成核剤としての更なる用途が考えられる。成核中心は、ポリマーが結晶化及び固化する温度を上昇させ、それによって特に成形用途に関するサイクル時間を減少させ、生産性を増加させることが知られている。本発明のハイドロタルサイトナノ充填剤を加えることによってより高いTcが測定され、材料のより良好な温度抵抗性と関連するより高い熱撓み温度(HDT)も観察される。本発明の量のハイドロタルサイトの存在下においては、5℃超の上昇が観察される。したがって、本発明のハイドロタルサイトナノ充填剤は、成核剤の有利性を、医療滅菌用品、熱水と接触する食品包装、120℃以下の温度に曝露される工業用品などの用途のために望ましいナノ充填剤の有利性と組み合わせて有する。
チーグラー・ナッタ触媒から生成する抗酸中和塩素残留物として、ハイドロタルサイト(塩基性炭酸アルミニウムマグネシウム)をポリプロピレン又はポリエチレン組成物における中和剤として用いることは公知である。米国特許6270209においては中和効果が開示されているが、成核効果については記載されていない。実際、開示されている組成物は成核剤としてソルビトール誘導体も含んでいる。ハイドロタルサイトは、少量で、具体的にはポリプロピレン又はポリエチレン組成物の0.005〜1.5重量%の範囲で用いられる。米国特許4611024においては、ハイドロタルサイトをポリプロピレンポリマー中においてアルジトール(Millad)の清澄化−成核効果の増強剤として用いることが開示されている。ハイドロタルサイトは、非常に少量で、具体的にはポリマーの重量を基準として0.01〜0.5重量%、好ましくは約0.02〜0.15重量%の範囲で用いられる。ハイドロタルサイトは、また、Miyataらの米国特許4,299,759(1981年11月10日)において熱可塑性樹脂(オレフィン系以外)の紫外線熱分解の抑制剤として用いることが当該技術において公知である。また、WO0190235のように、ポリマー組成物中において通常の充填剤として多量に用いることも公知である。
WO03059917(Sunoco)においては、合成ハイドロタルサイトの製造、並びにポリオレフィン及びマレイン酸エステル化ポリオレフィンとのブレンドを製造するためのこれらの使用が開示されている。スラリー中でハイドロタルサイトの自己剥離が得られ、これを更にポリマーと混合及び加熱して、スラリー中に3%以上の量で存在するハイドロタルサイトの分散液が得られる。
国際特許出願WO2006/131450においては、有益な特性のバランスを有するナノ充填ポリオレフィンにおいて、層状無機物、特に層状シリケートを用いることが開示されている。
公知の材料の欠点は、ナノ複合体の所望の特性を生成するポリマーマトリクス中での充填剤の剥離及びナノ分散を得るためにはナノサイズの充填剤の有機予備処理が必要であることである。有機変性の結果として、有機クレー材料をベースとするポリマーナノ複合体は食品に接触させるのには好適でない。
米国特許第5910523号明細書 国際公開第01/96467号 欧州特許第0659815号明細書 国際公開WO9903673 米国特許第6270209号明細書 米国特許第4611024号明細書 米国特許第4,299,759号明細書 国際公開第0190235号明細書 国際公開第03059917号明細書 国際公開第WO2006/131450号
改良された特性のバランスを示し、更に食品に接触させるのに好適な、繊維、並びにフィルム、シート、並びに、ブリスター及びカップ及び蓋及びボトルのような熱成形、ブロー成形、及び射出成形(IM)物品のための新規なポリオレフィン材料の継続する必要性が存在する。
したがって、本発明は、以下の成分:
(A)結晶性又は半結晶性ポリオレフィン樹脂;及び
(B)ハイドロタルサイトを含むか又はハイドロタルサイトから実質的に構成されるナノサイズの無機充填剤;
を含み;
ハイドロタルサイトの量がナノ複合材料100重量部あたり0.02〜6、好ましくは0.03〜3、より好ましくは0.05〜1重量部であり、ポリオレフィンナノ複合材料のメルトフローレート値:MFR(2)に対する成分(A)のメルトフローレート値:MFR(1)の比:MFR(1)/MFR(2)が少なくとも1.02、好ましくは1.02〜1.5であり;
ポリオレフィンナノ複合材料が相溶化剤を含み;そして
30〜300秒−1、好ましくは30〜200秒−1、より好ましくは30〜150秒−1剪断混合速度においてポリオレフィン樹脂中の無機充填剤及び相溶化剤の分散液を形成する、ポリオレフィンナノ複合材料を提供する。
本発明の複合材料は、通常は以下の特性を示す:
・成分(A)に関して測定される値に対して少なくとも1乃至40%、好ましくは10%〜40%の曲げ弾性率の上昇;
・成分(A)に関して測定される値に対して5〜25℃、好ましくは10〜25℃の熱撓み温度の上昇;
・成分(A)に関して測定される値に対して1〜15℃、好ましくは10〜15℃の結晶化温度(Tc)の上昇;特に、組成物のTcは成分(A)がポリプロピレンホモポリマーである場合に115℃より高い;
・成分(A)に関して測定される値に対して少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃の熱撓み温度(HDT)の上昇;
・成分(A)に関して測定される値に対して少なくとも5乃至40%、好ましくは10〜40%のガスバリヤ特性の向上;
・1〜800dg/分、好ましくは1.5〜40dg/分のMFR(2)値。
成分(A)、則ち出発ポリオレフィン樹脂マトリクスは、好ましくは、プロピレンホモポリマー、或いはプロピレンと、エチレン及び線状又は分岐のC〜C−α−オレフィンから選択されるα−オレフィンとのヘテロ相コポリマー又はランダム共重合体、例えばプロピレンのコポリマー及びターポリマーのいずれかであるプロピレンポリマーである。成分(A)は、またかかるポリマーの混合物であってもよく、この場合には混合比は重要ではない。好ましくは、α−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び4−メチル−1−ペンテンからなる群から選択される。コモノマー含量の好ましい量は0.5〜15重量%の範囲である。好ましいポリオレフィン樹脂はプロピレンホモポリマーである。
かかるプロピレンポリマーはアイソタクチックタイプの立体規則性を示す。雰囲気温度においてキシレン中に不溶のポリマーの重量%は、ポリマーのアイソタクチックインデックスとみなされる。この値は、定義によればポリプロピレンのアイソタクチックインデックスを構成する、沸騰n−ヘプタンで抽出することによって測定されるアイソタクチックインデックスに実質的に相当する。
成分(A)のアイソタクチックインデックス(上述のように測定)は、好ましくは60〜99%である。特に、成分(A)がプロピレンのホモポリマー又はランダムコポリマーである場合には、アイソタクチックインデックスは好ましくは80〜99%である。成分(A)がプロピレンのヘテロ相コポリマーである場合には、アイソタクチックインデックスは好ましくは60〜85%である。また、成分(A)はポリエチレン及びポリブテン−1から有利に選択することができる。特に、フィルム、ブリスター、又は蓋のためには、成分(A)はLDPEであってもよい。
成分(A)がポリプロピレンである場合には、結晶性又は半結晶性のポリオレフィン樹脂は、雰囲気温度、則ち約25℃において55重量%より高いキシレン中の不溶分を有する。成分(A)は好ましくは1〜50g/10分のメルトフローレート値を有する。また、ポリオレフィンナノ複合体をペルオキシドによる化学分解にかけて、メルトフローレートを上昇させることもできる。成分(A)がポリエチレンである場合には、これは好ましくは0.1〜10g/10分のメルトフローレート値を有する。成分(A)がポリブテン−1である場合には、これは好ましくは0.2〜50g/10分のメルトフローレート値を有する。
メルトフローレート(MFR)値は、適当なISO−1133法にしたがって、特にプロピレンポリマーに関してはISO法1133にしたがって、230℃、2.16kgにおいて、ブテン−1又はエチレンポリマーに関してはISO法1133にしたがって、190℃、2.16kgにおいて測定する。かかるポリオレフィン樹脂は、高立体特異性チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒のような好適な触媒の存在下で関係するモノマーを重合することによって製造する。特にこれは、例えば塩化マグネシウム上に担持されているTiCl又はチタンのハロゲン化化合物(特にTiCl)、及び好適な共触媒(特にアルミニウムのアルキル化合物)をベースとする触媒を用いる低圧チーグラー・ナッタ重合によって得ることができる。
成分(B)、則ち層状ナノサイズ無機充填剤は、ハイドロタルサイトである。
本特許において用いるハイドロタルサイトの一般式は:
Mg2xAl(OH)4x−4CO・nH
(式中、x>0、n>0である)
である。
本発明のナノ複合材料を製造するために用いるハイドロタルサイトは、一般に、表面層上及び内部層中のCO 2−又はOHアニオンを部分的に置換する有機成分フラクションを含む。
ハイドロタルサイトが適当な有機処理を受ける場合には、式は
Mg2xAl(OH)(4x+4)−z1(CO1−z2(Am−・nH
(式中、x>0、(z)×(m)=z1+2・z2、n>0であり、Aはmの価数を有する有機アニオンである)
によって表すことができる。
有機成分フラクションの量は広く変化させることができ、0.5重量%〜45重量%、好ましくは20重量%〜45重量%の範囲であってよく、0.5〜6ミリ当量/gの範囲のアニオン交換能(AEC)によって表すことができる。
層状ナノサイズ無機充填剤の重量に関する上述の量は全て、脱水形態に基づく。
有機成分フラクションは、アニオン性張力活性剤のアニオン部分、或いはより一般的には金属有機塩(MeA)の有機アニオンである。MeAは充填剤の異なる層の間の層間距離を増加させ、ポリマーマトリクス中におけるハイドロタルサイトの分散を向上させる。
有機アニオンは、有機酸(HA)の共役塩基の群から選択することができる。好適な有機酸の排他的でない例は、カルボン酸、脂肪酸、スルホン酸、ホスホン酸、及び硫酸であり、これらのアニオンの組み合わせを用いることもできる。
ステアリン酸、エルカ酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、安息香酸、ロジン酸、酒石酸、セバシン酸、及びアジピン酸アニオンのような、ポリマー中で食品に接触させるのに適した有機物質のアニオンが好ましい。
相溶化剤を加えて無機充填剤をポリオレフィン樹脂中により良好に分散させる。好ましい相溶化剤は、特許EP−0747322(Toyota)に開示されているもののような、極性モノマーを含むポリオレフィンコポリマー、及び極性基を有するグラフト化剤をグラフトしたポリオレフィンのような変性ポリオレフィンである。本発明においては、グラフト化剤は、好ましくは、カルボキシル基及び無水物のようなそれらの誘導体から選択される少なくとも1つの官能基を含むものから選択される。上述の1つ以上の官能基を有する極性モノマーは、好ましくは、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、及びオレフィン性極性モノマーを含む群から選択される。
不飽和ジカルボン酸の無水物、特に無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び無水テトラヒドロフタル酸、無水フマル酸、対応する酸、及びかかる酸のC〜C10の線状及び分岐のジアルキルエステルが、グラフト化剤として特に好ましい。無水マレイン酸が好ましい。骨格ポリマー鎖がエチレン及び/又はC〜C10−α−オレフィンから選択されるオレフィンのポリマーであるグラフトコポリマーが更に特に好ましい。
相溶化剤として作用する変性ポリオレフィンの骨格ポリマー鎖は、好ましくは、成分(A)のものと同一であっても又は異なっていてもよい1種類又は複数のオレフィンモノマーで構成される。
グラフト化剤は、一般に、変性するポリオレフィンの骨格上に、グラフトポリオレフィンの全重量に対して0.4〜1.5重量%の範囲の量でグラフトする。
更に、相当量の遊離形態の極性モノマーも存在させることができる。
好適なグラフトコポリマーの例はポリプロピレングラフト無水マレイン酸である。
極性モノマーは、変性ポリオレフィンのポリマー鎖中に、変性ポリオレフィンコポリマーの全重量に対して5〜25重量%の量で存在する。
極性モノマーを含む好適なコポリマーの例はエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)である。
相溶化剤は、好ましくは、ナノ複合体の重量に対して0.02〜10重量%、好ましくは0.05〜7重量%、より好ましくは0.05〜2重量%の範囲の量で用いる。
繊維用途においては、相溶化剤の低い含量が好ましい。実際、特に良好な結果は、ナノ複合体の重量に対して0.1〜1重量%、特に0.2〜0.5重量%の範囲のグラフトポリオレフィンの量によって得られる。
本発明のポリオレフィンナノ複合材料中に存在する更なる成分は、酸化防止剤、耐酸剤、光安定剤、熱安定剤、静電防止剤、難燃剤、充填剤、クレー、成核剤、顔料、防汚剤、感光剤のような当該技術において通常用いられる添加剤である。
本発明の更なる態様は、かかるポリオレフィンナノ複合材料の製造方法である。
本発明によるポリオレフィンナノ複合材料は、ポリオレフィン成分(A)、成分(B)、及び相溶化剤、並びに場合によっては更なる成分を機械的にブレンドすることによって製造する。ナノ充填剤成分(B)は、純粋な(非希釈)形態で相溶化剤の存在下でポリオレフィン成分(A)とブレンドすることができ(1工程プロセス)、或いは好ましくは層間挿入マスターバッチの一部としてブレンドすることができ(2工程プロセス)、かかる場合には、成分(B)を、相溶化剤の存在下において、ポリオレフィン成分(A)と同一であっても異なっていてもよいポリマー樹脂(A’)中に予め分散する。かくして製造されるマスターバッチを、次にポリマー成分(A)とブレンドする。本発明によるナノ複合体組成物は、Buss押出機のような押出機、或いは18以上、好ましくは18〜40の長さ/直径比を有する二軸押出機、或いはBanburyミキサーのようなミキサーなどの通常の装置を用いる溶融混合プロセスによって製造することができる。好ましい押出機は、低い値の剪断応力を生成することのできるスクリューを備える。特にかかる押出機を用いる場合には、より低い値の長さ/直径比は排除されず、実際、特に良好な結果は15以上の長さ/直径比によって既に得ることができる。
本発明によってポリオレフィンナノ複合材料を製造するための2工程プロセスは、少なくとも以下の2つの工程を含む:
(1)成分(A)と同一であっても又は異なっていてもよいポリオレフィン樹脂(A’)を相溶化剤の存在下において無機充填剤(B)と混合することによって層間挿入された(部分的に剥離した)マスターバッチを製造し;そして
(2)工程(1)で製造された層間挿入マスターバッチをポリオレフィン樹脂成分(A)と混合する。
ナノサイズの充填剤は、好ましくは、ポリオレフィン樹脂にそれが溶融状態である時に加える。
押出機内において、ポリマーの溶融箇所の後に配置されているフィーダーを用いて無機充填剤を加える。
上記記載の他の添加剤は、2工程プロセスにおいては、工程(1)、工程(2)、又は両方のいずれかの間に加えることができる。相溶化剤は、工程(1)中において、無機充填剤(B)を加える前に加える。好ましくは、相溶化剤及び他の添加剤は、工程(1)中において、ポリオレフィン樹脂にそれが未だ固体状態である時に加える。
かかるプロセスによって、無機充填剤がポリオレフィンマトリクス中に均一に分散され、無機充填剤(B)の高い剥離度を有するナノ複合体が導かれる。
脱水形態の層状ナノサイズ無機充填剤の量は、好ましくはマスターバッチの全重量に対して2〜40重量%、より好ましくは2〜26重量%である。相溶化剤は、工程(1)において得られるマスターバッチの全重量に対して好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜26重量%の量で存在させる。層間挿入マスターバッチは、通常は、出発ポリオレフィン樹脂に対して10〜100%の曲げ弾性率の上昇を示す。0.2〜50g/10分、好ましくは3〜20g/10分のメルトフローレート値(190/2.16、ISO−1133)、及び90〜130℃、好ましくは110〜128℃の溶融温度を有するブテン−1ポリマーが、工程1において層間挿入された(部分的に剥離した)マスターバッチを製造するための予め剥離させたポリオレフィン樹脂(A’)として好ましい。工程1においてマスターバッチを製造するために好ましいブテン−1ポリマーは、ブテン−1のホモポリマー、又はこれとコモノマーとしてエチレン、プロピレン、及び線状又は分岐のC〜C−α−オレフィンから選択される1種類以上のα−オレフィンとのコポリマーである。好ましくは、α−オレフィンコモノマーは、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び4−メチル−1−ペンテンからなる群から選択される。ブテン−1コポリマー中のコモノマー含量の好ましい量は0.5〜15重量%の範囲である。特に好ましいポリオレフィン樹脂(A’)はブテン−1ホモポリマーである。
上記のプロセス工程(1)及び(2)は、好ましくは、以下の条件下で行う。
・30〜300秒−1、好ましくは30〜150秒−1の範囲の剪断混合速度;
・ポリマーの軟化温度より高く、特に少なくとも180℃、好ましくは180〜250℃の混合温度;
・80秒を超える混合機内での滞留時間。
また、ポリオレフィンマトリクス中におけるかかる充填剤の高い剥離度を有するナノサイズの充填剤の均一な分散は1工程プロセスによっても得ることができる。
1工程プロセスは、非希釈の無機充填剤成分(B)を溶融ポリオレフィン樹脂成分(A)上に直接加えることを含む。相溶化剤及び場合によって加えることができる他の添加剤は、好ましくは、層状無機充填剤成分(B)の添加工程の前で、ポリオレフィン成分(A)が未だ固体状態である時に成分(A)に加える。
1工程プロセス及び2工程プロセスの両方において、溶融ポリマー上にナノ充填剤を加えることによって、充填剤プレートレットのアスペクト比の悪化が防止される。
上記の2工程プロセスに関して報告されている同じ好ましい押出条件が1工程プロセスに関しても示される。
本発明の他の態様は、上述のポリオレフィンナノ複合材料から製造され、したがってかかる材料を含むか又は実質的にこれから構成される繊維である。繊維用のポリオレフィンナノ複合材料中の層状ナノサイズ無機充填剤の量は、ナノ複合材料の全重量に対して、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%、更により好ましくは0.2〜0.5重量%の脱水形態のナノサイズ無機充填剤である。繊維用のポリオレフィンナノ複合材料は、好ましくは2工程プロセスを用いて製造する。本発明のナノ複合材料を用いて製造される繊維は、バルク連続フィラメント及びスパンボンド不織を含む任意の通常のプロセスによって製造することができる。したがって、本発明の他の更なる態様は上述の繊維を含む不織布である。
本発明による非延伸フィラメント(繊維)は、通常は以下の特性のバランス:22cN/texより高いテナシティー値、及び200%より高い破断点伸び値:を示す。
繊維用のナノ複合材料の製造のために用いるポリオレフィン材料は、通常は2〜10の範囲のGPCによって測定されるM/M値、及び8〜800g/10分の範囲のMFRを有する。
本発明の更なる態様は、上述のポリオレフィンナノ複合材料から製造され、したがってかかる材料を含むか又は実質的にこれから構成される、二軸配向、ブローン、又はキャストフィルムである。
本発明にしたがって製造すると、通常は、O、CO、及び水蒸気のような気体に対して改良されたバリヤ特性を示すBOPPフィルム及びポリエチレンブローンフィルムが特に好ましい。特に、PPホモポリマーを用いると、ナノサイズの充填剤を用いない対照材料に対して少なくとも20%のOバリヤ活性の向上が観察される。
その代わりにLDPEナノ複合体を用いて製造されるフィルムに関しては、5〜15%のバリヤ性の向上が観察される。
本発明によるフィルムの延伸性は、ナノサイズのハイドロタルサイトを加えることで、延伸プロセスの温度において対照材料に対して悪化しない。光学特性、特に曇り度及び光沢も、ナノサイズのハイドロタルサイトを加えることで対照材料に対して悪化しない。
BOPPプロセス用のナノ複合材料を製造するために用いるポリオレフィン材料は、通常は、4〜8のM/M値、及び1.5〜5g/10分のMFR値を有する。本発明によるBOPP用途用のナノ複合体におけるナノ充填剤成分(B)の量は、通常は、ナノ複合材料の全重量に対して0.5〜3重量%の脱水形態のナノサイズ無機充填剤である。本発明によるLDPEフィルム用途用のナノ複合体中のナノ充填剤成分(B)の量は、通常は、ナノ複合材料の全重量に対して0.3〜6重量%の脱水形態のナノサイズ無機充填剤である。
本発明の更なる態様は、上述のポリオレフィンナノ複合材料から製造され、したがってかかる材料を含むか又は実質的にこれから構成されるパイプである。パイプ用のナノ複合材料の製造のために用いるポリオレフィン材料は、通常は、ポリブテン−1ホモポリマー、又はブテン−1と少なくとも1種類の他のα−オレフィンとのコポリマーである。ポリオレフィン材料がブテン−1とエチレンとのコポリマーである場合には、通常は、エチレンコモノマーの量は、コポリマーの重量に対して0.3〜2重量%、好ましくは0.5〜1重量%である。本発明によるパイプ用途用のナノ複合体中のナノサイズ無機充填剤成分(B)の量は、ナノ複合材料の全重量に対して通常は0.1〜1.5、好ましくは0.2〜1.2重量%の脱水形態のナノサイズ無機充填剤である。ナノ複合体によって示される物理的−機械的特性の向上、特に曲げ弾性率の向上によって、耐クリープ性の向上、及び材料の使用量の削減の可能性が導かれ、例えば特性を犠牲にすることなくパイプの厚さを減少させることができる。
本発明の他の更なる態様は、熱成形ブリスター用のポリエチレンフィルム又はシート、或いはカップ及び容器用途用の射出成形物品、並びに吹き込み成形ボトルである。
本発明を限定することなく例示するために与える以下の実施例において詳細を与える。
詳細な説明及び実施例において報告する特性を求めるために以下の分析法を用いた。
・メルトフローレート(MFR):異なって示されていない場合には、ISO法1133(230℃、2.16kg、ポリプロピレンに関する)にしたがった。
・25℃においてキシレン中に可溶及び不溶のフラクション:2.5gのポリマーを、135℃、撹拌下で250mLのキシレン中に溶解した。20分後、未だ撹拌下において溶液を25℃に冷却し、次に30分間沈降させた。濾紙を用いて沈殿物を濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残渣を真空下80℃において一定の重量に達するまで乾燥した。室温において可溶及び不溶のポリマーの重量%を算出した。
・曲げ弾性率:ISO−178にしたがった。
・密度:ISO−1183にしたがった。
・熱撓み温度(HDT):ISO−75にしたがった。
・引張特性(引張弾性率、破断点応力、破断点伸び、降伏点応力、降伏点伸び):ISO−527−1、−2にしたがった。
・結晶化温度Tc:ISO−11357にしたがい、DSCによった(20℃/分の冷却での第2操作)。
・フィラメントの繊度:長さ10cmの粗糸から50本の繊維をランダムに選択し、秤量した。かかる50本の繊維の合計重量(mgで表す)に2をかけることによって繊度(dtex)を得た。
・フィラメントのテナシティー及び伸び(破断点):500mの粗糸から長さ100mmのセグメントを切断した。このセグメントから試験する単繊維をランダムに選択した。それぞれの試験する単繊維をInstron動力計(モデル1122)のクランプに固定し、クランプ間の初期距離を20mmとして、100%より低い伸びに関しては20mm/分、100%より大きい伸びに関しては50mm/分の引張速度で破断するまで引っ張った。極限強さ(破断時の負荷)及び破断点伸びを測定した。
・以下の等式を用いてテナシティーを求めた。
テナシティー=極限強さ(cN)10/繊度(dtex)
・フィルムの曇り度:ASTM−D1003にしたがった。
・フィルムの光沢:ISO−2813にしたがった。
・フィルムの透過性(ガス透過速度):ASTM−D1434−82(2003)にしたがった。
実施例1及び比較例1(1c):
17の長さ/直径比を有する単軸Buss 70押出機内で、以下の成分を混合することによってブレンド(層間挿入マスターバッチ)を調製した。
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することによって製造した、約3重量%の25℃におけるキシレン中の溶解度を有するアイソタクチックプロピレンホモポリマー(MFR12)から構成されるポリオレフィンマトリクス95重量%;
(2)AKZO NOBELによってPERKALITE F100の商標で販売されている、変性剤として飽和脂肪酸を含む有機ハイドロタルサイト(成分(B))2.5重量%;及び
(3)0.7重量%の無水マレイン酸をポリプロピレン上にグラフトした無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(相溶化剤)2.5重量%。
押出機内において以下の条件下で、成分3を成分1にそれが未だ固体状態である時に加え、成分(1)及び(3)の溶融体に成分(2)を加えて押出を行った:
・押出温度:220℃;
・押出機内での滞留時間:1.5分;
・剪断混合:100秒−1
比較例1(1c)は充填剤及び相溶化剤を用いない対照材料(ポリオレフィンマトリクス(1))であった。
表1に、最終ポリオレフィンナノ複合材料中の成分1及び2並びに充填剤及び相溶化剤の量、並びにISO−294にしたがって製造した射出成形試料について測定した材料の特性を報告する。
Figure 0005276671
実施例2〜4及び比較例2(2c)−繊維:
工程(1):マスターバッチの製造:
実施例1で製造したブレンドを、これらの実施例においてマスターバッチとして用いた。
工程(2):ポリオレフィンナノ複合材料の製造:
実施例(1)で用いたものと同じタイプの押出機内において、以下の成分を異なる量で混合することによってポリオレフィンナノ複合材料を調製した:
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することによって製造した、約3重量%の25℃におけるキシレン中の溶解度を有し、CIBAによって販売されている繊維用の通常の安定剤配合物:Irganox B215を含むアイソタクチックプロピレンホモポリマー(MFR28.4)(成分(A));及び
(2)実施例1において製造したブレンド。
実施例(1)に関するものと同じ条件下で押出を行った。
繊維の製造:
かくして得られたポリオレフィンナノ複合材料をLeonardパイロットプラント内で紡糸して連続繊維を調製した。紡糸プロセスは、280℃の温度、及び1500m/分の紡糸速度、並びに0.4g/分−孔の一定の産出量で行った。次に、繊維を、1:15の延伸比において、2250m/分の最終巻き取り速度で延伸した。最大紡糸可能速度は3900m/分であった。
比較例2(2c)は、他の試料として処理した充填剤及び相溶化剤を用いない対照材料(成分(A))であった。
表2に、最終ポリオレフィンナノ複合材料中の成分1及び2並びに充填剤及び相溶化剤の量、並びに材料それ自体の特性、及びポリオレフィンナノ複合材料を用いて製造した繊維の特性を報告する。
Figure 0005276671
実施例5〜7及び比較例5(5c)−BOPPフィルム:
工程(1):マスターバッチの製造:
27の長さ/直径比を有する二軸押出機内において、以下の成分を混合することによってマスターバッチを調製した。
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することによって製造した、約4重量%の25℃におけるキシレン中の溶解度を有し、通常の安定剤配合物を含み、1.9(dg/分)のMFRを有する、アイソタクチックプロピレンホモポリマーから構成されるポリオレフィンマトリクス;
(2)ハイドロタルサイト(成分(B));及び
(3)0.7重量%の無水マレイン酸をポリプロピレン上にグラフトした無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(相溶化剤)。
AkzoによってPekalite F100の商品名で販売されているハイドロタルサイト(F100)を用いてマスターバッチaを調製した。
AkzoによってPerkalite P100Sの商品名で販売されている異なる市販のハイドロタルサイト(P100S)を用いてマスターバッチb及びcを調製した。Perkalite P100SはPerkalite F100よりも高い有機処理を有している。マスターバッチbにはグラフトPP相溶化剤は加えなかった。
以下の条件下でマスターバッチの押出を行った。
・押出温度:230℃;
・押出機内での滞留時間:2分;
・剪断混合:130秒−1
表3aに、マスターバッチ中の成分1、2、及び3の量を報告する。
Figure 0005276671
工程(2):ポリオレフィンナノ複合材料の製造:
マスターバッチを製造した後、工程(1)で用いたものと同じタイプの押出機内で、以下の成分を混合することによってポリオレフィンナノ複合材料を調製した:
(1)マスターバッチにおけるマトリクスのために用いたものと同じタイプのアイソタクチックプロピレンホモポリマー(成分(A))90重量部(pw);及び
(2)先に製造したマスターバッチ10重量部。
工程(1)に関するものと同じ条件下で押出を行った。
BOPPフィルムの製造:
かくして得られたポリオレフィンナノ複合材料を、CARVER機上で200℃において圧縮成形して、厚さ1mmで60×60mmのプラークを得て、次にこれをTM-Long機を用いて150℃のオーブン温度において両方の方向において7×7の延伸比で延伸して、厚さ21〜23μmのBOPPフィルムを得た。
比較例5(5c)は、他の試料として処理した充填剤及び相溶化剤を用いない対照材料(成分(A))であった。
表3bに、最終ポリオレフィンナノ複合材料中の成分(1)及び(2)の量、ナノ充填剤及び相溶化剤のタイプ及び量、並びにポリオレフィンナノ複合材料及び比較用の対照材料を用いて製造したBOPPフィルムの特性を報告する。
Figure 0005276671
実施例8〜10並びに比較例8及び10(8c−10c)−射出成形:
工程(1):マスターバッチの製造:
27の長さ/直径比を有する二軸押出機内において、以下の成分を混合することによってマスターバッチを調製した。
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することによって製造した、約3.5重量%の25℃におけるキシレン中の溶解度を有し、射出成形用の通常の安定剤配合物を含むアイソタクチックプロピレンホモポリマー(MFR12)から構成されるポリオレフィンマトリクス52重量%;
(2)SasolによってPural MG63HTの商標で販売されている、2重量%の有機成分(脂肪族カルボン酸)を含むハイドロタルサイト(MG63HT)20重量%;及び
(3)0.7重量%の無水マレイン酸をポリプロピレン上にグラフトした無水マレイン酸グラフトポリプロピレン28重量%。
実施例1と同じ条件下で押出を行った。
・押出温度:230℃;
・押出機内での滞留時間:1.5分;
・剪断混合:100秒−1
工程(2):ポリオレフィンナノ複合材料の製造:
マスターバッチを製造した後、プロセス工程(1)で用いたものと同じタイプの押出機内で、以下の成分を混合することによってポリオレフィンナノ複合材料を調製した:
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することによって製造した、約3.5重量%の25℃におけるキシレン中の溶解度を有し、射出成形用の通常の安定剤配合物を含む、工程(1)で用いたものと同じアイソタクチックプロピレンホモポリマー(MFR12)(成分(A))95重量%;
(2)本実施例の工程(1)で先に製造したマスターバッチ5重量%。
工程(1)に関するものと同じ条件下で押出を行った。
比較例8(8c)は、他の試料として処理した充填剤及び相溶化剤を用いない対照材料(成分(A))であった。
比較例10(10c)は、比較のために異なるナノ充填剤(Southern Clay ProductsによるCloisite 15A(C15A);43重量%の有機成分(有機アンモニウム塩)を含む)を用いて調製した。実施例10と同じ手順、並びに表4に要約する充填剤及び相溶化剤の量を用いて試料を調製した。
表4に、実施例8〜10並びに比較例8c及び10cに関する最終ポリオレフィンナノ複合材料中の充填剤及び相溶化剤の量、並びに射出成形したプラーク(ISO−294にしたがって形成)に関して測定した特性を報告する。
Figure 0005276671
実施例11及び比較例11b、11c−射出成形:
1工程プロセス:
27の長さ/直径比を有する二軸押出機内において、以下の成分を混合することによってナノ複合材料(試料11、表5)を調製した:
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することによって製造した、約3.5重量%の25℃におけるキシレン中の溶解度を有し、射出成形用の通常の安定剤配合物を含むアイソタクチックプロピレンホモポリマー(MFR12)(成分(A))88重量部(pw);
(2)SasolによってPural MG61HT MCの商品名で販売されている、15重量%の有機成分(ステアリン酸)を含むハイドロタルサイト5重量%;及び
(3)4重量%のアクリル酸及び7重量%のアクリル酸ブチルをポリエチレンと共重合した、エチレンとアクリル酸及びアクリル酸ブチルとのコポリマー(EBA)相溶化剤7重量%。
以下の条件下で押出を行った。
・押出温度:240℃;
・押出機内での滞留時間:2分;
・剪断混合:150秒−1
比較例11b及び11cは、同じ手順並びに表5に示す充填剤及び相溶化剤の量を用いて調製した。
実施例12及び比較例12c:
ナノ充填剤としてAkzoからのハイドロタルサイトPerkalite P100S(PS100)を用い、実施例11と同じ手順で実施例12を行った。
比較例12(12c)は、比較のために、異なるナノ充填剤(Southern Clay ProductsによるCloisite 15A(C15A);43重量%の有機成分(有機アンモニウム塩)を含む)を用いて調製した。実施例12と同じ手順、並びに表5に要約する充填剤及び相溶化剤の量を用いて試料を調製した。
表5に、実施例11〜12並びに比較例11b、11c、及び12cに関する最終ポリオレフィンナノ複合材料中の充填剤及び相溶化剤の量、並びに射出成形したプラーク(ISO−294にしたがって形成)に関して測定した特性を報告する。
Figure 0005276671
実施例13及び比較例13(13c)−LDPEフィルム:
1工程プロセス:
27の長さ/直径比を有する二軸押出機内において、以下の成分を混合することによってナノ複合材料を調製した:
(1)特許EP−449092又はEP−121756に記載の高圧管状反応器法(Lupotech Tプロセス技術)によって製造した、0.930g/cmの密度(ISO−1183)及び0.55のMFR(190℃/2.16kg、ISO−1133)を有する低密度PE(LDPE)から構成されるポリオレフィンマトリクス98.9重量%;
(2)AkzoからハイドロタルサイトPerkalite F100の商標で販売されている有機クレー0.5重量%;及び
(3)12重量%の酢酸ビニルをポリエチレンと共重合した、2.5のMFR/E(190℃、2.16kg)及び0.930g/cmの密度を有するエチレンと酢酸ビニルとのEVAコポリマー(DuPontによってElvax 3130の名称で販売されている)0.5重量%;
(4)通常の安定剤としてIrganox B215 0.1。
以下の条件下で押出を行った。
・押出温度:200℃;
・押出機内での滞留時間:2分;
・剪断混合:150秒−1
比較例13(13c)は、通常の安定剤を用いて他の試料として処理した充填剤及び相溶化剤を用いない対照材料(LDPE)であった。
実施例14〜16−LDPEフィルム:
ハイドロタルサイト及びEVAの量を表6に報告するように変化させた以外は実施例13を繰り返した。
LDPEフィルムの製造:
幅55mmで30の長さ/直径(L/D)比を有する単軸押出機を用いて、実施例13〜16及び比較例13cにおいて得られたポリオレフィンナノ複合材料を加工した。220℃の機械溶融温度、及び1:3のブローンアップ比、並びに22℃の空気温度において厚さ500μmのブローンフィルムが得られるように機械を設定した。
表6に、実施例13〜16及び実施例13cの比較用対照材料に関する最終ポリオレフィンナノ複合材料中の成分(1)及び(2)、(3)の量、及びポリオレフィンナノ複合材料を用いて製造したフィルムの特性、並びに、射出成形プラーク(ISO−294にしたがって形成)について測定した特性、及び最終LDPEフィルムの特性を報告する。
Figure 0005276671
実施例17及び比較例17c−パイプ:
1工程プロセス:
17の長さ/直径比を有する単軸Buss 70押出機内において、以下の成分を混合することによってナノ複合材料を調製した:
(1)パイプ用途に関して通常的に用いられている、国際特許出願WO2004/000895に記載の液体モノマー溶液法(バルク溶液法)によって製造した、0.914g/cmの密度(ISO−1183)及び0.4のMFR(190℃/2.16kg、ISO−1133)を有するポリブテン(PB−1)から構成されるポリオレフィンマトリクス99.35重量%;
(2)AkzoからハイドロタルサイトPerkalite F100の商標で販売されている有機クレー0.25重量%;及び
(3)0.7重量%の無水マレイン酸をポリプロピレン上にグラフトした、120のMFR/L(230℃、2.16kg)、0.930g/cmの密度を有する無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(CromptonによってPolybond 3200の名称で販売されている)(相溶化剤)0.25重量%;
(4)通常の安定剤としてIrganox B215 0.1。
以下の条件下で押出を行った。
・押出温度:230℃;
・押出機内での滞留時間:90秒;
・剪断混合:130秒−1
比較例17cは、通常の安定剤Irganox B215を用いて他の試料として処理した充填剤及び相溶化剤を用いない対照材料(1)であった。
実施例18、19、20−PB−1パイプ:
ハイドロタルサイト及びMA−g−PPの量を表7に報告するように変化させた以外は実施例17を繰り返した。
実施例20は相溶化剤を用いない以外は実施例18と同様であった。
Figure 0005276671
実施例21:
段階(1):マスターバッチの製造:
直径70mm、長さ/直径比L/D=17の単軸Buss 70内において、以下の成分を混合することによってマスターバッチを調製した:
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でブテン−1を重合することによって製造し、通常の繊維用安定剤配合物を含む、127℃の溶融温度を有するポリブテンホモポリマー(MFR=4;190℃、2.16kgにおいて測定)から構成されるポリオレフィンマトリクス95重量%;
(2)AKZO NOBELによってPerkalite F100の商品名で販売されている、変性剤として飽和脂肪酸を含む有機ハイドロタルサイト(成分(B))5重量%;及び
(3)0.7重量%の無水マレイン酸をポリプロピレン上にグラフトした無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(好ましいものはChemturaによってPolybond 3200の商品名で販売されている)5重量%。
段階(2):ポリオレフィンナノ複合材料の製造:
マスターバッチを製造した後、27mmのスクリュー直径及び40の長さ/直径比を有する二軸押出機内において、以下の成分を混合することによってポリオレフィンナノ複合材料を調製した。
(1)チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンを重合することによって製造した、約3.9重量%の25℃におけるキシレン中の溶解度を有するアイソタクチックプロピレンホモポリマー(MFR25.8)94重量部(pw);
(2)先に製造したマスターバッチ6pw。
段階(1)及び(2)において、以下の条件下で押出を行った。
・押出温度:180℃;
・押出機内での滞留時間:1.5分;
平均剪断混合:100秒−1
繊維の製造:
かくして得られたポリオレフィンナノ複合材料をLeonardパイロットプラント内で紡糸して連続繊維を製造した。紡糸プロセスは、263℃の測定溶融温度(押出機ホッパーからヘッドまでで255℃〜260℃の温度に安定した)、及び2700m/分の紡糸速度、及び0.6g/分・孔の一定の産出量で行った。
比較例21(21c)及び対照例21(21r):
比較例21(21c)は、マスターバッチを加えないでそのまま紡糸したアイソタクチックプロピレンポリマー(MFR25.8)であった。
対照例21(21r)は、
・アイソタクチックプロピレンホモポリマー(MFR25.8)94pw;を
・マスターバッチの製造に用いたポリブテンホモポリマー(MFR4;190℃、2.16kgにおいて測定)6pw;
と混合することによって調製した。
表8に、最終ポリオレフィン材料中の充填剤及び相溶化剤の量、紡糸プロセス条件、材料それ自体の特性、及びポリオレフィン材料を用いて製造した繊維の特性を報告する。
Figure 0005276671

Claims (12)

  1. 以下の成分:
    (A)結晶性又は半結晶性ポリオレフィン樹脂;及び
    (B)下記式で表される、有機処理されたハイドロタルサイト
    Mg2xAl(OH)(4x+4)−z1(CO1−z2(Am−・nH
    (式中、x>0、(z)×(m)=z1+2・z2、n>0であり、Aはmの価数を有する有機アニオンであり、有機成分フラクションの量が20〜45重量%である);
    を含み;
    前記ハイドロタルサイトの量がナノ複合材料100重量部あたり0.02〜6重量部であり、ポリオレフィンナノ複合材料のメルトフローレート値:MFR(2)に対する成分(A)のメルトフローレート値:MFR(1)の比:MFR(1)/MFR(2)が少なくとも1.02であり;
    ポリオレフィンナノ複合材料が相溶化剤を含み;そして
    30〜300秒−1の剪断混合速度においてポリオレフィン樹脂中の前記ハイドロタルサイト及び相溶化剤の分散液を形成する、ポリオレフィンナノ複合材料。
  2. 相溶化剤が、極性モノマーを含むコポリマー及び極性基を有するグラフト化剤をグラフトしたポリオレフィンからなる群から選択される変性ポリオレフィンである、請求項1に記載のポリオレフィンナノ複合材料。
  3. ポリオレフィン樹脂成分(A)、前記ハイドロタルサイト(B)、及び相溶化剤を、30〜300秒−1の剪断混合速度で溶融混合することを含む、請求項1に記載の材料の製造方法。
  4. 非希釈の前記ハイドロタルサイト(B)を相溶化剤の存在下において溶融ポリオレフィン樹脂成分(A)に直接加える1つの工程を含む、請求項3に記載の方法。
  5. 以下の:
    (1)ポリオレフィン樹脂成分(A)と同一であっても又は異なっていてもよいポリオレフィン樹脂成分(A’)を相溶化剤の存在下において前記ハイドロタルサイト(B)と混合することによって層間挿入マスターバッチを製造し;
    (2)工程(1)で製造された層間挿入マスターバッチをポリオレフィン樹脂成分(A)と混合する;
    工程を含む、請求項3に記載の方法。
  6. 工程1において層間挿入マスターバッチを製造するために用いるポリオレフィン樹脂(A’)が、ブテン−1ホモポリマー、又はブテン−1と少なくとも1種類の他のα−オレフィンとのコポリマーである、請求項5に記載の方法。
  7. 工程(1)において、前記ハイドロタルサイト(B)をポリオレフィン樹脂にそれが溶融状態である時に加える、請求項5に記載の方法。
  8. 請求項1又は2のいずれかに記載のナノ複合材料を含む繊維。
  9. 請求項に記載の繊維を含む不織布。
  10. 請求項1又は2のいずれかに記載のナノ複合材料を含むフィルム。
  11. 請求項1又は2のいずれかに記載のナノ複合材料を含む射出成形品。
  12. 請求項1又は2のいずれかに記載のナノ複合材料を含むパイプ。
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